台湾出張で「やはり現場でしか学べないことがある」と実感

先週は講演のために台湾に4日間出張しました。(講演の詳しい内容はこちら

海外に行くのは久しぶりでしたが、「現地で実体験しないとわからないことが多い」と改めて感じたことばかりでした。いくつかご紹介したいと思います。

■レシートが宝クジになっている!
すべてのレシートには8桁の番号があります。これは宝くじになっていて、最高当選額は1000万元 (=3600万円)。国が当選金額を払っています。目的は納税を徹底させるため。こうすることで国民は必ず領収書を要求するようになり、脱税を減らすことを狙っています。行動経済学でいうところの「ナッジ」ですね。うまく出来ています。

私がスタバでエスプレッソを買ったレシートにも、ちゃんと64852131という番号が付いていました。

■日本人が知らない日本の店を、実によく知っている
日本に旅行に行く台湾の若い人は「こんな店があったんだ!」というようなコアな日本の普通の店を、実によく知っています。日本では話題にもならず、私もまったく知らない店ばかりでしたが、食べログにはちゃんと掲載されている店です。ブログで話題になり、人気になるそうです。
これは実際に聞いてみないとわからないですね。
「SNS時代はインフルエンサーに働きかけて、バズ(=注目を集めて拡散させる状態)を起こせ」とよく言われますが、このような話を聞くと、意図的に起こすバズよりも、自然発生的に起こったネットでのバズの威力を改めて思い知らされます。

■”We are Taiwanese”
30年前にアジアのIBM社員たちとよく仕事をしていたのですが、この時に台湾から来た人は「私たちは中国人だ。『台湾人』という言葉はない」といっていました。当時はこの考え方が多数派だったようです。しかし現在では、「私たちは台湾人だ」という人がとても増えています。「二つの中国」問題もあり、歴史的にも複雑な事情が絡んでいる問題ですが、この30年間でアジアの状況が大きく変わったことを実感しました。

■親日的
書店には日本人の著書が実に多くありました。(私の本もありました)
また百貨店では日本の屋台イベントを行っていて、東京から来た日本人女性が中国語を話しながら、元気に焼きそばを焼いて売っていました。台北市内にも日本人が実に多く、店内でも普通に日本語の会話が聞こえました。
20年前まで仕事で台湾に来る機会が多かったのですが、その時よりも親日度は大きく進んでいました。

■日本よりも暑い
「日本の夏の暑さは、東南アジアを越えた」という声を良く聞きますが、実際に暑いのは台湾の方です。出張したのは9月下旬で台北の気温は30度くらいでしたが、実際には日本の30度よりも湿度が高く、肌に粘り着くような暑さです。台北の真夏は39度になることもありますが、この蒸し暑さは変わらないとのこと。出張で通訳をサポートして下さった方もよく東京や大阪に行かれますが、やはり台湾の方が暑いそうです。結論としては、東京や大阪が暑くなったとはいえ、東南アジアほど暑くないようです。

やはり現場のことは現場でしかわからない。当たり前のことを改めて実感しました。

しかし考えてみると、お客様もまったく同様ですね。
会社のオフィスにいても、お客さんのことはわかりません。
実際にお客様がいる現場で、学び続けることの大切さも、改めて実感しました。

 

 

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台湾・台東県で講演しました

拙著「そうだ、星を売ろう」は台湾版も出版されています。

このご縁で台東県知事にお招きをいただき、2018年9月20日に台東市内で講演致しました。

台湾のメディアでも紹介いただきました。→中央通訊社の記事 →指傳媒の記事

資料も繁体字中国語版に変えました。

台東県知事とのプレゼント交換もしました。

県知事の黄健庭(Justine Huang)さんは、この若さで県知事をなんと8年も務められ、3ヶ月後にご退任だそうです。

黄さんは阿智村のことを知り、実際に阿智村に行って星空に感動し、姉妹都市として提携し、その結果今回の講演が実現しました。

 

サイン会の後、残った参加者で集合写真です。皆さんおい笑顔ですね。JTBで阿智村の挑戦にご尽力された武田さんにも参加いただきました。

講演後、台北に戻って書店を回ってみたら、「そうだ、星を売ろう」繁体字版が面積みになっていました。ありがたいことに売れているようですね。

写真は、一緒に日本から行ったJTBの武田さん(一番左)、講演をサポートして下さった通訳の李淑芳 (Lee Shu Fang)さん(左から二番目)、イベント会社の張孟芸 (Lova Chang)さん(一番右)です。

今回講演が成功したのも、とても真面目で誠実な仕事をするLovaさん、プロフェッショナルな通訳の李さん、そして実際に阿智村の挑戦を熟知しておられる武田さんおかげです。感謝です!

 

 

 

 

戦うべきは、敵か?自分か?

スポーツの中には、敵を倒さないと勝てない競技があります。

格闘技はその最たるもの。ボクシングでは相手をKOするか、出来るだけヒットさせてポイントを稼ぐ必要があります。
このような場合、目の前の敵に勝つ必要があります。

一方で、スコアを競う競技もあります。
ゴルフは、最も少ない打数で上がった者が勝者です。
マラソンも、最短時間で42.195Kmを走り抜いた者が勝者です。
一見、スコアで競い合うライバルに目が向かいがちですが、実際に戦っているのは自分自身です。

ほとんどのビジネスは、後者のケースが多いのではないでしょうか?
特に現代では、お客様の課題はきめ細かくなっています。
そのお客様の課題に、どれだけ自分たちが最適な解決策を提供できるかが勝負です。

ビジネスこそ、勝つべきは敵ではなく、自分なのだと思います。

 

 

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形容詞を使わずに、マーケティング戦略を考えよう

私が企業様向けにご提供している「お客様が買う理由を作るワークショップ」では、自社の強みや商品コンセプト・自社の売りを考えていただきます。

その時に、こんな内容を挙げる方が少なくありません。

・業界ダントツの高品質のサービス
・業界随一の人材
・最高性能
・顧客満足度ナンバーワンの商品
・他社を圧倒する品揃え
・どこよりも親切丁寧な接客
・徹底した顧客主義

これらは、ほとんど意味がありません。
お客様にとって、まったく意味がないからです。

お客様の立場に立つと、これはすぐにわかります。
たとえばいま、あなたが引っ越し先のアパートを探しているとしましょう。
これらのキーワードで、不動産会社を探すことはないと思います。
具体的な物件(たとえば駅徒歩5分で、3LDK、築浅のマンション、家賃は〇万円以内)を持つ不動産会社を探すのではないでしょうか?

 

具体的なお客様の価値を明確にすべきなのです。

 

「結果にコミットするRIZAP」は、お客様の価値が実に明確です。

もしRIZAPが「最高のスタッフによる親切丁寧な指導で、あなたのダイエットをお手伝い」と言ってたら、あの成功はありません。

ちなみにライザップは今年7月から「リバウンド保険」を開始し、「リバウンド防止にもコミット」するそうです。これも形容詞を使わずに明確。しかも「結局、RIZAPはリバウンドするのでは」という指摘が多い中、それを逆手に取ってさらに高価な付加価値サービスに仕立てる手腕はさすがです。

 

形容詞を使わずに、お客様の価値を具体的に表現するようにしましょう。

 

 

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よい売上 vs. 悪い売上

お金には、色はついていません。
100円は100円。「よい100円」も「悪い100円」もありません。
しかし売上には、「よい売上」「悪い売上」があります。

【事例1】
最近私は、こんな経験をしました。

「ちゃんと海外状況も把握しよう」と考えて、某英字ニュース(Web版)を購読することにしました。
購読申込みはとても簡単。すぐに購読開始できました。
「さすが、よく出来ているなぁ」と思いました。

その後、ついつい億劫で読まない日が続きます。
「購読停止しよう」と考えました。
しかし停止方法がなかなかわかりません。

調べた末、「購読停止はここに電話」と書いているのを発見。
電話すると、いきなり英語の音声案内が流れたので、すぐ電話を切ってしまいました。
その後も調べたのですが、電話以外に方法がなさそうなので、再度電話。
外人オペレータが登場し、英語でやり取りの末、やっと解約できました。

その後、私の周囲でも「契約が面倒なので続けている」という人が意外と多いことがわかりました。

この英字ニュース会社は、確かに売上も多いのですが、こんなカラクリで顧客の離脱率を下げているのです。

【事例2】
期末になるとよく見かける風景です。

営業 「数字が厳しいんです!お願いです!期末に契約いただくと、半額にします!」
顧客 「仕方ないなぁ。付き合いもあるし。予算も少し余ってるし。買うか…」

確かにその場では売れますが、必ずしも必要がないのに買っている状況です。(最近はどの会社もコスト意識が高いので、こんな状況はだいぶ減りましたが)

事例1・2とも、悪い売上です。

 

さて、御社の売上はどちらが多いですしょうか?

■よい売上
お客様の課題を解決し、満足したお客様が繰り返し買う。
売上は継続的に成長

■悪い売上
お客様は不満。仕方なく買っている。(課題は何も解決していない)
ある日、突然破綻する

 

明日の朝活勉強会「永井塾」のテーマは、「顧客満足を、どのように把握するか?」

この状況をどのように解決していくか、考えていきます。

 

 

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QBハウスの値上げ。顧客は離れるか?残るか?

 

QBハウスが値上げを発表しました。2019年2月から、こうなります。

通常価格 1,080円→1,200円
シニア価格 1,000円→1,100円

理容業界で価格破壊を起こしたQBハウス。一見すると、その売りである「安さ」を手放す値上げのようにも見えます。実際のところ、どうなのでしょうか。そしてお客さんは離れるのでしょうか?残るのでしょうか?

 

SNSの反応を見てみると…。

「まぁ、仕方ないよね」
「値上げしても行きます」

という意見が意外と多い中…

「競合店にお客さんが流れるのでは?」

という意見もあります。

実は私もQBハウスを使っています。
理由は「安さ」ではなく、「速いから」。普通の散髪だと、カット・洗髪で1時間、待たされたりして1時間。下手すると半日潰れます。QBハウスなら隙間時間でカットできます。

そして価格の割にサービスレベルも高く、衛生面でも配慮しています。

 

実際に、QBハウスに来た人の満足度は高いのです。(以下は、「キュービーネットホールディングス株式会社 2018年6月期 決算説明会資料」より抜粋)

87点は「必ず来たい」(100pt)と「また来たい」(80pt)の間です。理美容・外食の平均は80ptということなので、QBハウスに来ているお客さんは、顧客ロイヤルティが高いことがわかります。

顧客ロイヤルティが高いお客さんは、価格を気にしなくなります。

見込客は、比較的価格を気にします。
新規顧客になると、価格をあまり気にしなくなります。
そしてリピーターや贔屓客は、価格よりも価値を重視するようになります。

 

QBハウスは、2018年6月期 決算説明会で、値上げした理由を次のように述べています。

■価格改定の目的
–人材投資
 カット未経験スタイリストの採用強化・育成投資の強化
 スタイリストの労働環境改善・待遇改善
–店舗投資
 より快適に過ごしていただくためのお店づくりへの投資

■価格改定に対する外部要因
–新規の国家資格取得者数の減少(理容師・美容師)
–労働需給の逼迫を背景とした人件費の上昇

単に「儲からないから値上げする」のではなく、「理容師・美容師の資格取得者が減る中で、人材と店舗投資を強化したい」という値上げの目的も明確です。

「他社にお客が流れる可能性もある」との指摘もあります。

しかし理美容業界では、QBハウスは国内552店舗を展開する最大手。理美容業界最大規模です。「たくさん作ればコストが下がる」という「規模の経済」と、「仕事の経験量が多いほどコストが下がる」という「経験曲線」の観点で考えると、理美容業界では最高のコストリーダーシップを持っています。

最高のコストリーダーシップを持つ最大手が、コストが理由で値上げせざるを得ないという状況です。規模に劣り、恐らくより高コストの他ライバルが低価格勝負を続けるのは、恐らく難しいのではないでしょうか。

フィリップ・コトラーは著書「コトラーのマーケティング・コンセプト」の中で、アマゾンのジェフ・ペゾスCEOの言葉を紹介しています。

「わが社よりも5%安く売るところが出てきても、何の心配もいらない。私が気にしているのは、わが社よりも優れた経験を提供する企業が現れることである」

「低価格」は、あくまで顧客満足の一要素に過ぎません。安さだけを武器にせず、常により高い顧客体験を追求し続けることが必要なのです。

 

以上のことから、QBハウスは値上げ後も、意外と客離れは少ないのではないかと私は考えています。

 

 

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部下に「no chart」。IBMを救ったルー・ガースナー

1984年から2013年まで、私はIBMに勤めていました。
この30年間で、IBMは倒産しかけた時がありました。
危機を救ったのが、1993年にRJRナビスコ会長からIBM CEOに就任したルー・ガースナーでした。

CEO就任直後、ある事業部長が、部下に作らせた分厚い資料を用意してチャートを使って事業説明をしようとすると、ガースナーはこういいました。

「no chart。自分の言葉で説明しなさい」

当時はガースナー就任直後。彼が一体どんな人なのか、IBM社員はみな期待半分・畏れ半分でした。
この会議の様子は社内メールで流れてきて、私も読みました。
「今までとはまったく違うタイプのトップが来た」というのが、私の第一印象でした。

ガースナーが来日したとき、日本IBM社員約2000名を集め、大きなホールでタウンミーティングをしました。彼のプレゼンは10分と短いもの。その後は1時間、質疑応答でした。一般的にこのようなタウンミーティングでは、事前に質問者を仕組むことが少なくありません。しかしガースナーはそれを禁じていました。誰でも質問できました。ガースナーは難しい質問にも自分の言葉で正面から誠実に答えていました。

そして実に頻繁に、全社員に直接メールを出し、自分の言葉で、語りかけてきました。

2002年にCEOを退任する時、彼はIBMでの経営変革を書き綴った著書「巨像も踊る」を上梓しました。この時、彼は全社員に「この本を社費で購入するのは一切禁止。読みたいのであれば、自費で買ってください」と伝えて、IBMを去りました。各部門が購入し、お客様などに配付することを予想し、「それはフェアではない」と考えたのでしょう。

ガースナーは、社員に一切忖度させず、常に現場との生の対話を求め、かつ誠実でした。

残念ながら私はガースナーと直接話す機会はありませんでしたが、遠く離れた日本にいる一社員の私にも、ガースナーの人柄が伝わってきました。

そして大きな会社でも、トップ次第で大きく変わることを実体験しました。

ガースナー在任の9年間、素晴らしいトップが率いた経営変革のまっただ中で、一社員として過ごしたのは、とても幸せでしたし、私の大きな財産になっています。

 

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やはり「値引きは麻薬」である。

ここは皇族もお泊まりになったという由緒あるホテルです。決して安くはありませんが、風情があって落ち着きもあり、サービスも行き届いているので、私は特別な日によく泊まっていました。お客さんもゆったりと過ごす大人が多くいました。

ある日、宿泊予約サイトで、このホテルが格安で泊まれるというキャンペーンをやっていました。

「あれ、このホテル。だいぶ変わったなぁ」

ホテルに行くと雰囲気が一変していました。若者中心で、東南アジアからのお客さんも多く、ホテル内が混雑しています。従業員も頑張ってサービスしていますが、かつてのように細かいサービスまで手が回らないようです。以前は多数派だった「大人のお客さん」も、肩身が狭そうです。

その後も数回行ってみました。確かに格安です。でも特別な日に泊まるホテルではなくなってしまいました。

このホテルは大幅値下げをした結果、賑わうようになりましたが、100年かけて築いてきた「少々高くても、特別な日にゆったり過ごしたい」というお客さんが離れてしまったのです。

こうして離れたお客さんは戻りません。そして客単価は下がってしまったようです。

 

値引きで集まるのは、安さ目当てのお客さんだけです。
値引きすると、お客さんが集まって、一時的に売れるようになります。
しかし同時に、価格以外の価値を認めて下さるお客さんは、静かに離れていくのです。

こうなると、元の価格に戻しても、お客さんは戻りません。

 

このことが顕著に出ているのが、大塚家具です。

大塚家具は、経営主導権争いが一段落した後、「富裕層向けに高価格帯を売る」戦略から、「ファミリー層に中価格帯をお手頃価格で売る」という戦略に大転換。

2015年4月には、大々的に「おわび」セールを行いました。この月は前年比70%増のお客さんが来ました。
さらに2015年11月には、「売り尽くしセール」を行いました。この月は対前年比30%増のお客さんが来ました。

しかし対前年比二桁増の月は、この2回だけ。他の月はほとんど対前年比マイナスです。
特に「おわびセール」1年後の2016年4月は、対前年比45%のマイナス
また「売り尽くしセール」1年後の2016年11月も、対前年比40%のマイナスでした。
(以上、大塚家具「月次情報」より)

経営主導権争いの時には100億円あったといわれるキャッシュは、あっという間に目減りして、今は経営危機に瀕しています。

 

値引きは一時的にお客さんが集まり、賑わいますが、徐々に会社の体力を失わせます。
やはり、「値引きは麻薬」なのです。

お客様にとって、価格はあくまで「買う理由」の一要素。価格以外の価値を高めることが大切なのです。

 

 

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3ヶ月でサービス売上1兆円!リカーリングビジネス化するアップル

アップルの今年第三四半期(4-6月)の業績が発表になりました。
売上高は、前年同期比17%増の532億6500万ドル(5兆9558億円)。
純利益は、前年同期比32%増の115億1900万ドル(1兆2880億円)。
途方もない数字ですね。

この数字の裏にはアップルで静かに進んでいることが隠されています。

直近5年間の数字を分析してみました。

四半期毎の売上はこのようになります。季節変動が大きいですね。(縦軸の単位は百万ドル、以下同様)

ここで「サービス」と「サービス以外」を分けてみました。
青がサービス売上、赤がサービス以外の売上です。
サービスが成長しているように見えますね。

ちなみにサービス売上とは、iTunesやiCloud等のデータ管理サービス、AppleCare、Apple Pay、ソフトウェアやアプリなどです。

そこでサービス売上だけを取り出したのが、下記です。

この5年間で2倍以上に成長。
急速に成長しています。
今年4-6月の売上は、95.5億ドル(約1兆円)です。

もう一つ注目すべきは、売上が安定していること。
サービス以外の売上(iPhone、Mac、iPad等のハード)は、景気の変動や消費者の購買意欲、新商品のウケなど、日々の営業努力で大きく左右されます。
一方でサービス売上は、製品を使っている限り、継続して計上され続けます。だから安定して売上を稼ぐことができます。

このようなビジネスを「リカーリングビジネス」といいます。
リカーリング(recurring)とは、「繰り返し発生する」という意味。
まさに売上が継続して生まれるのが、リカーリングビジネスです。

アップルの全体売上の中に占めるサービス売上の比率は、2013年第三四半期は11.3%でしたが、2018年第三四半期は17.9%になりました。

今、ソニーや東芝など、多くの企業が「リカーリングビジネス」を目指して、売上げ構成のシフトを図っています。これはアップルのサービス売上のように、安定して収益が稼げるようになるからなのです。

つまり「売って儲ける」よりも、「使ってもらって儲ける」方が、安定して稼げるようになる、ということです。

御社は、将来の売上げ構成をどのようにデザインしておられますか?

 

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値下げは最終兵器。使わないことに意味がある

大胆な値下げをよく目にするようになりました。たとえば、

・350円弁当を300円に値下げしたら、売上が3割アップした弁当屋
・ヒール1杯400円を100円に値下げしたら、集客力がアップしたボーリング場
・ドリンク類を2割値下げしたら、お客さんが増えたパブ

このような話を聞くたびに、他人事ながら「本当に大丈夫なのだろうか?」と心配になります。

お客様は「安さ」をいつの間にか当たり前に感じるようになります。
だから一時的に安さで集客アップしても、長くは続きません。
そこで値下げ前の値段に戻すと、お客様は一気に離れていきます。

値下げ勝負で勝てるのは、一番安い会社です。
一番安くするには、業界で最低コストを実現することが必要です。
これができるの「は業界で1社だけ。他の会社はすべて敗者になります。
しかしこの「コストを下げる」という当たり前の努力をせず、安易に値下げする会社が多いように感じます。

お客様が買う理由は、「安さ」だけではありません。
他にもいろいろな理由があります。

他のあらゆる手段を尽くし、価格以外の考え得る限りの価値を訴求した上で、値下げを考えるべきです。

それでも値下げする場合はどうするか?
方法はあります。商品の価格自体を下げるのではなく、ターゲットのお客様を絞り込んで、時間・場所・お客様の状況などを限定して、値引きすべきです。(このようにお客様の状況にあわせた価格付けを、適応型プライシングといいます)

値引きで売るなら、誰でもできます。
値引きしないで売るのが、ビジネスです。

まずは、値引きをしないで、価値を上げることを考える。
そして値引きするのであれば、お客様を絞り込み、いかに売上を増やすかというシナリオを徹底的に考え抜くべきなのです。

 

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ライバルの値下げ攻撃に、値上げで対抗したスミノフ

やや時代をさかのぼり、1960年代、米国での出来事です。

ウォッカ「スミノフ」を販売するヒューブライン社は絶好調。米国国内シェアは20年間トップでした。そんなある日、ライバルのシーグラム社がこんな発表をしました。

「新商品ウォルフシュミットは、あのスミノフと同等品質。しかも1ドル安いんです!」

早速スミノフの関係者が集まり、対策を協議しました。

「当社もスミノフを1ドル値下げして対抗しましょう」
「それだと売上が下がるだけです。価格据え置きで、広告と販促で攻勢です」
「それってお金がかかりますよね。ここは放置、ってことでどうですか?」

でてきた案は、どれも一長一短。

悩み抜いた末に出した対抗策は3つでした。

その1:逆に、スミノフの価格を1ドル値上げする
その2:ライバルのウォルフシュミットと同価格で、新商品「レルスカ」を投入
その3:ライバルのウォルフシュミットよりも1ドル安い「ポポフ」を投入

結果、1980年代を通じてスミノフは米国のシェア1位を維持。
さらにポポフはシェア2位を獲得しました。

これはNorton Paleyの”The Manager’s Guide to Competitive Marketing Strategies 3rd Edition”という本にあった事例です。

スミノフを値上げすることで、ブランドイメージを向上したことに加えて、売上・利益も拡大し、さらに新商品ラインアップも増えたのです。

 

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「顧客満足度調査」の現実

顧客満足度調査というと、お客様にこんな質問をして…

 サービス(あるいは商品)にご満足いただけましたか?
 □とてもよかった □よかった □まあまあ □よくない □とてもよくない

集まってきたアンケートを「とてもよかった=100点」…「とてもよくない=0点」で換算して集計し、点数を出すことが多いと思います。

さて、あるイベントでお客様の満足度が「90点」だったとします。

一見いい数字です。
でも、これは本当にいいのでしょうか?悪いのでしょうか?
またこの結果をもって、何をすればいいのでしょうか?
なかなかわからないですよね。

中には顧客満足度は高いのに、低迷する会社もあります。
「お客様のご満足は大切だ」と言いつつも、顧客満足度の調査結果に興味を持たないトップも、決して少なくありません。

こんな状況の中で考え出されたのが、NPS (ネット・プロモーター・スコア)という方法です。

NPSでは、次の2つの質問をします。

Q1:当社を友人や同僚に勧める可能性は、0〜10段階でどのくらいありますか?

  0 …まったく思わない
  ↓
  5 …どちらでもない
  ↓
  10 …非常にそう思う

Q2:その数字を選んだ理由をお教え下さい

この質問で、9と10を選んだのは「推奨者」、7と8を選んだのは「中立者」、6以下は「批判者」です。それぞれ次のように分けられます。

 ■推奨者(10/9)…再購入率が群を抜いて高い。他の客に推奨してくれる
 ■中立者 (8/7)…再購入率と推奨率は低い
 ■批判者(6以下)…否定的な口コミの源

その上で、以下の式でNPSというスコアを算出します。

 NPS =推奨者(10/9)の割合 − 批判者(6以下)の割合

なぜこのNPSが意味あるのでしょうか?
そのためには、顧客ロイヤルティ顧客生涯価値という考え方を理解する必要があります。

「お客様」にも種類があります。企業との関わり度合いに応じて、お客様は次のように変わっていきます。

 潜在客→見込客→新規顧客→リピーター→ご贔屓→ブランド信者

ブランド信者になると、顧客ロイヤルティが一番高くなり、その顧客が企業にもたらす価値である顧客生涯価値も一番高くなります。この顧客ロイヤルティを把握する一つの方法が、NPSなのです。

推奨者、中立者、批判者がわかれば、やるべきことは明確です。

 推奨者→増やす
 批判者→減らす

ここで役立つのが,二つ目の質問「その数字を選んだ理由」への答え。これが推奨者を増やし、批判者を減らすヒントになります。

しかし二つ目の質問への回答は未記入も多いものです。そこで批判者については、責任者がご本人と直接お話して、どのように不満を解消すればいいのかを話すことも必要になります。

推奨者が増えて、批判者が減れば、NPSも高くなります。
高いNPSは、企業にもメリットがあります。

 ・顧客離反率が下がり、既存顧客一人当たりの収益性が上がる
 ・口コミでよい評判が広がり、新規顧客が増えていく

逆にNPSがマイナスだと、企業は衰退していきます。

 ・顧客離反率が上がり、既存顧客一人当たりの売上も低下する
 ・口コミで「あそこはダメ」という悪評判が広がり、顧客はますます離れる

日本マクドナルドは、2015年から全店でこのNPSを把握しています。

マクドナルドは、KODOというスマホアプリでクーポン券を発行しています。この時、お客さんがNPSを入力するようにしています。このNPSは一貫して向上し続けています。(図は日本マクドナルド・2016年12月期通期決算発表資料から抜粋。2017年も向上し続けています)

拙著「売れる仕組みをいかに作るか トルネード式仮説検証」の執筆で、日本マクドナルドの下平篤雄副社長兼COOにお話しを伺った際、次のようにおっしゃっていました。

—(以下、引用)—

大切なのは店舗に「評価には一切使いません。お客様のコメントはよく見て、改善できるところはすぐ改善してください」と伝えたこと。

店舗もスコアは隠すことはしませんが、透明性を確保してオープンにしています。14万人のクルー全員がKODOを知っています。

店へのコメントはクルールームに貼り出して全員で見ていますし、お客様のコメントヘのご返事も、店内に貼っています。

お客様の印象そのものなので、必ずビジネスに結びつきます。

—(以上、引用)—

 

私も、最近の講演ではNPSを必ず把握するようにしています。

最近の講演や研修のご依頼理由を聞くと、「永井さんの講演を聞いた人から、お勧めがあった」と言われます。書評でも、友人や同僚・上司に勧められたという人が結構いらっしゃいます。推奨者の方々による口コミのおかげなのですね。

NPSは即効性はありませんが、長期的に取り組むことでアクションも明確になり成果に繋がっていきます。

活用していきたいものです。

 

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1本1080円のカレー専用スプーン

近所のデパートで、食器の展示販売会をやっていました。
ここで見つけたのが、一本1080円の「カレー賢人・サクー」というカレー専用スプーン。
前から欲しいと思っていたので即購入しました。

イマドキ、安いスプーンは100均でも買えますよね。
なぜこんなに高いのでしょうか。

実際にカレーを食べてみるとわかります。実に使いやすいのです。

このスプーンは左右非対称です。先端は斜めに緩いカーブを描き、カレーの具材をサクッと切るためにカーブの部分は2ミリほどナイフ状になっています。さらにこの部分は、皿に残ったご飯粒やカレーのルーもすくい取りやすくなっています。

いつもよりカレーを美味しく感じたのは、決して気のせいではないと思います。

このスプーンを生み出したのは、新潟県燕市にある食器メーカー・山崎金属工業に勤める若手の開発担当です。

「カレーの聖地」といわれる神田神保町に通い詰め、店でカレーを食べる様子を実際に観察したり、実際に話を聞きました。中にはマイスプーンを持ち込む人もいたそうです。

そこで気がついたのは、スプーンをナイフ代わりにして具材を切る人が多いこと。ここで得られた発見を元に開発したのが、このカレー専用スプーンだったのです。

新潟県燕市の食器メーカーは高い加工技術を持っています。だからカレー好きの要望に応えることができたのです。

このカレースプーンは2017年7月に発売すると、1080円にも関わらず3ヶ月で1万本売れる大ヒット商品になりました。

お客様が買いたくなるヒントは、常に現場にあります。現場でお客さんのことをつぶさに観察し、徹底的に考え抜くことが、お客さんを絞り込み、高い価値を生み出すことに繋がる、ということを、「カレー賢人」が改めて教えてくれました。

 

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長野都市経営研究所様で、講演しました

6月12日に、NPO法人長野都市経営研究所(NUPRI)様で、『「ディズニーを超える」阿智村の挑戦に学ぶ  ~地域の強みを発掘し「コト」を提供する~』と題して講演しました。

長野都市経営研究所様は、長野市を中心に将来のあるべき姿を研究し、その実現に向けて提言・実践活動をしていく団体です。長野の企業経営者を中心に、各種研究部会と特別委員会によって組織されていて積極的な活動を行っておられます。

講演には長野市内に150名もの方々にお集まりいただきました。有り難うございました。

参加された皆様のご感想です。

■言葉では表現できないくらい感動を感じました。

■自身の課題に一方踏み出す機会となりました。

■非常にわかりやすい内容だった。

■ありがとうございました。仕事をしていく中での参考になりました。仮説検証を9割の方がしていないと言うことが頭に残りました。ワクワクするお話でした。

■確かに阿智村だけではなく、一般企業にも当てはまることが多かった。

■元気の出る講演、素晴らしかったです。ヒント・宝が満載でした。

■日頃、仮説検証が不十分であることを改めて面識しました。仕事の進め方を見直してみたいと思います。

■とても勉強になりました。

■今日はありがとうございました。自分の考え方がもっと素晴らしくなりそうです。

■外部視点を交えながら、社内地域の中で強みを見つめ直す機会とを作ることに挑戦したい。

■具体的で分かりやすかった。スタッフの皆様大変ありがとうございました。

■チャンスを掴むことが必要と思った。

■大変わかりやすいソフトな話し方で、時間が短く感じました。まずは本を読みます。

■大切な事は、つながっているんだなと思いました。今までいろんなことに参加し、大切だとそれぞれに感じていたことが、線となってつながった感じ。とても分かりやすいお話で面白かったです。

■本日は講演会ありがとうございました。色々なヒントをいただけました。

■大変わかりやすい有益な情報がいっぱい詰まった内容でした。声がとても聞きやすい。講演手順も参考になりました。有り難うございました。

■とてもわかりやすい論理と、はっきりした口調、具体例と論理化が、説得力があった。

■自社の強みを考えるという点から、自社の場合は…と考えながらお話しをお聞きしていました。仮説を立て、事実をもとに検証する。そしてそれを続けるということを、強く意識していきたいと思います。本日はありがとうございました。

■非常に勉強になりました。

■大変参考になりました。教育を売ることはとても難しいと感じておりましたが、学校の強みを理解し、組織を動かしてみたいと思いました。

■今の自身の現状と重なる話が多く、早速明日から実践していきたいと思いました。

■とてもわかりやすいご講演でした。

■マーケティング、仮説検証に関し、非常に勉強になりました。ありがとうございました。

■テンポがよく、わかりやすく、自分に当てはめて考えやすい話でした。早速実践していきます。ありがとうございました

■マーケティング基本的な考え方が学べました。ありがとうございました。

■非常にわかりやすい(=理解しやすい)ご講演でした。ありがとうございました。

■具体的な事例を織り込みいただき、話に実感がありました。意識は人が見えない。行動することが肝要と言うことに確信が持てました。

■考える→行動する→検証。失敗(挑戦)への概念を面白く感じました。

■学びが深くなりました。具体的な行動計画を立てられます。

■実例に基づき説得力があった。話がわかりやすく、組み立てもよく、引き込まれた。

■とても貴重な話をありがとうございました。仮説検証したいと思います。失敗をすることを恐れないで、挑戦したいと思います。

■自社でも抱える問題にメスを入れるヒントをいただけた。すべて上司でも部下でもなく自分に責任があることがわかる。問題起こして、ぶれないビジョンを確立していることが大切である。徹底して考えること。有り難うございました。

■「失敗を恐れず」という言葉をよく聞きますが、最初から成功することがなく、小さな失敗を繰り返して、その道へ進んでいくのだと感じました。貴重なお話、有り難うございました。継続は力なりですね。

■仮説検証のスパイラル、継続できるように社員とともに取り組んでいきます。本日はありがとうございました。

■非常に勉強になりました。自社の中に取り入れたいと思いました。

■「ビジョン」が大切。「人」が大切。「失敗」が大切。勉強になりました

■非常にわかりやすかった。

■とても参考になりました。

■楽しかったです。

■分かりやすかった。

■講演会のタイトル通り、阿智村が取り組んできたことがよくわかりました。学びの大切さ、実行結果、検証、新しい仮説を積み上げること。公民館事業にも取り入れてみたいと思います。

■初めて聴講しました。自社、社外でも仮説検証は耳にする機会が多い中、実際の事、やったこと、考えたことを知ることができてユニークで面白かったです。

■マジ、阿智村に行きたくなりました。商いはやっぱり「人」と実感した。

■阿智村だけの話ではなく、後半は様々な事例を交え(例:ルンバ)、わかりやすくかつ大変貴重なご講演をいただきました。また機会があればぜひ永井先生のお話をお聞きしたいです。

■「ディズニーを超えるってどういうこと?」という興味本位での参加でした。経済・経営といった面だと自分ではわからない話かも…と思いましたが、自分の仕事である福祉サービスの取り組みとしても、とても理解できる内容でした。

■元気が出ました。応用できると良いが、できることから始めています。

■現在、資産ビジネスの入り口にいます。なかなかうまくいかない店も多いのですが、「失敗は学び」と言う言葉で力をいただきましたので、モチベーション3.0で前へ進みます。

■自分が今やっている仕事にも活かしていこうと思える内容でしたので、ぜひ目標を立てて行動し、楽しみながらやっていこうと思いました。

■阿智村へ行きたくなりました。

■長野でワークショップをやりたい。

■タイトルから想像できないようなマーケティングの話だった。いい意味で裏切られた。聞いてるだけで話ではなく、自分に活かせることを考えて聞くことができた。

■強みと顧客への価値を考える必要性を改めて感じた。

■地域活性化に向けて検討していきたい。これからNPO法人を立ち上げるために役立った。

■阿智村の挑戦の話から、自分の会社に当てはめたらどうなるか考えていくプロセスが、大変参考になりました。強みを見つけることがいかに大切か。それをどう具体的に活かしていくか。

■わかりやすい話の内容だった。継続してことの大切さは改めて確認。地域に危機感が少なく、もう一度、今の日常を当たり前に思わず、見直していきたい

 

講演後は、長野都市経営研究所の皆様との懇親会もありました。

このようなご縁、本当に有り難いですね。

 

 

​困難に直面しても、正解にたどり着くには

日経ビジネスの「経営教室」で、LIXIL瀬戸社長が連載をしています。
今週の2018年6月18日号は、最終回の第5回目。

その中でこんな一節がありました。

何かをものすごく一生懸命考えると、それは脳みそのどこかに染み付くんですよね。だから意識的に考えなくても、潜在意識がそれを整理し直してくれます。そうすると、いい考えが思い付いたりするのです。

だから僕は、鈴木(雅哉、現MonotaRO社長)たちにいつも言ってきたんです。「追い詰められたらとにかく考え抜け。考えて考え抜いたら、必ず正解にたどり着くから」

まさに「我が意を得たり」と思いました。

瀬戸さんとは状況がまったく違いますが、私は本を書く際に、行き詰まることがしょっちゅうあります。

完全に追い詰められたときなどは、本当に書斎のじゅうたんに腹ばいに寝転んで、両手で頭を抱え、足をバタバタさせ、「ウーン、ウーン」と大きな唸り声をあげながら、大汗を流して悩むこともしばしばです。

とても人様にはお見せできない、あられもない姿です。

しかし、行き詰まっている原因は何か、どこに問題があるのか、解決するためのヒントは何なのか、徹底的に考えに考え抜くと、大抵は1〜2日で、「ふっ」とした瞬間に、正解が見つかるのです。

そうやって見つかった正解は、とても素晴らしいモノになることも多いのです。

 

瀬戸さんは次のように締め括っています。

読者の皆さんも、脳みそから血が出るほど、考えて下さい。

あなたの顕在意識で、脳みそから血が出るほど徹底的に考えることで、いつも隠れているあなたの潜在意識が助けてくれるのです。

そして必死に考え抜いて正解にたどり着く経験を繰り返すことで、あなたは着実に成長しているのです。

 

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全然売れないお土産品。価格を変えたら即完売

米国にあるインディアン・ジュエリーの土産店でのお話しです。
この土産店では、インディアンのアクセサリーであるターコイズ(トルコ石)を売っていました。

来店客は多かったのですが、ターコイズは値段の割に高品質にも関わらず売れませんでした。
陳列を変えたり、店員に勧めさせたりしても効果なし。
頭に来た店主は(損していいから、全品処分しよう)と考え、「全部価格を1/2にして!」という殴り書きを売り場主任に残し、買い付けに出張。数日後、店に戻ると商品は売り切れていました。

しかし確認してみたら、売上がものすごく多いのです。
実は主任はメモの殴り書きを「1/2」でなく「2」と読み違え、倍の価格で売っていたのです。

これは社会心理学者ロバート・チャルディーニが、著書「影響力の武器」で紹介している逸話です。
何が起こったのでしょうか?

来店する観光客はみな裕福です。でもターコイズの知識はほとんどありません。よく知らないターコイズを買う場合は、「高い宝石は、高い品質」「安い宝石は、低い品質」という常識に基づいて考え、「これは安いから買うのを止めよう」と判断していたのです。

そして価格を2倍にした途端、「このターコイズは高品質なのだろう」と判断するようになり、売り切れたのです。

私たち日本人は、これまで「良い物を安く提供しよう」と考え、あまり価格戦略のことは考えてきませんでした。
しかし価格戦略はビジネス戦略そのもの。
行動経済学など、価格戦略で活用できる考え方も出てきています。

あらためて価格戦略について理解していくことが必要なのです。

 

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仮説検証サイクルは、無限に回せるか?

私は「トルネード式仮説検証」を提唱しています。簡単にまとめると…

(1) まず「あるべき姿」を決め、「現状」を把握する
(2) 両者のギャップを「解決すべき問題」として決める
(3) この「解決すべき問題」を、仮説検証をトルネード(竜巻)のように回して学びを積み重ねて成長することで解決し、「あるべき姿」を実現していく

仮説検証サイクルを1回回し、新しい仮説を立てると、1段進化しています。
さらに1回回すと、2段進化しています。
このように仮説検証サイクルの本質は、学びの蓄積です。
ですから仮説検証サイクルを沢山回し、学びを積み重ねることが大切です。

一方で、人が持つ時間は有限です。
仮説検証サイクル1回の期間は、人や状況によって違います。
1日、1週間、1ヶ月、色々とあるでしょう。

私が日本IBMで人材育成責任者だった時は、予算が3ヶ月毎だったので、人材育成プログラムの仮説検証サイクルを3ヶ月で回し、効果を検証しながら、予算を取り、成果を挙げていきました。すべての人材育成プログラムについて検証するので、3ヶ月毎でもあまりノンビリできません。

仮に3ヶ月毎に仮説検証サイクルを行うとしたら、10年間で40回回せることになります。
多いような、少ないような感じですね。

もっと短いサイクルで回す人もいるでしょうし、あるいはもっと長めのスパンで回す人もいるでしょう。

いずれにしても重要なことは、「仮説検証サイクルは、無限に回すことができない」という当たり前の事実です。

かけがえのない限られた時間。
有効に使っていきたいものです。

 

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ウォークマンは、原価割れで売っていた!?

今月の朝活勉強会「永井塾」で、こんなご質問がありました。

「永井さんがお話しした、『これまで他社が300万円で提供していたサービスを、ムダを省いて5万円で提供するようにした』という事例がとても面白いなと思いました。でも、なんで3万円とか10万円でなく、5万円なのですか?」

ご指摘の通り、新商品や新サービスで悩むのは、価格ですよね。

ここで大切なのは、「値ごろ感」です。

ソニーが1979年に発売したウォークマンは定価32,000円でした。
実は原価は48,000円。最初は売れば売るほど赤字だったのです。

ではなぜ赤字なのに32,000円にしたのでしょうか?
この価格を決断したソニーの盛田昭夫さんの言葉が、「ソニー 盛田昭夫」(森健二著で紹介されています。

盛田は価格設定のツボについて語りはじめた。

「こういう全く新しい商品、見本も参考にするモノもない、こういう商品には〝値頃感〟というのが特に大切だ。このモノだったら、いくらなら売れるのか。モノには値頃感がある。ついでに言えば、どんないいモノでも『いいけど高い』、これは買わないよ。『高いけど、さすがだな』というのは買ってくれる。このニュアンスは、月とスッポンだぞ。値付けはこの呼吸が勝負なんだ」

結果、ウォークマンは1億台以上売れて、時代を大きく変えました。
大量生産により原価も大きく下がり、ソニーに莫大な利益をもたらしました。

当時のソニーは、このように価格を戦略的に考えていたのです。

『いいけど高い』
『高いけど、さすがだな』

似ているようで、この差は実に大きいのです。
これをわけるのが「値ごろ感」。

「コスト」と「価格」は混同されがちですが、全く違います。

「コスト」は「事実」。企業がコスト削減努力した結果です。
「価格」は「戦略」。考え方次第でいかようにも変えられます。

高く売るのも戦略ですし、コスト割れで売るのも戦略です。
そして価格戦略次第で、売れるのか、そして儲かるのかが決まります。

 

御社の商品には、「値ごろ感」があるでしょうか?

 

 

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嶋口・内田研究会で講演をしました

昨日5月22日の夜、嶋口・内田研究会で講演をしました。

六本木にあるマーケティング学会のオフィスに60名のビジネスパーソンの皆様が集まりました。
とても光栄なことに、尊敬するマーケティングの大家である嶋口充輝先生、内田和成先生も同席されました。

皆様のご感想です。実際に現場で仕事に取り組まれている方々のお悩み、大きいですね。

■商品企画のコンサルティングをしていますが、チームウェアの中で壁にぶち当たることもあり、その壁も必要なことなのだと改めて実感することができました。方法論であることはもちろんですが、心のケアになりました。すごい!またお話伺いたいです。

■どうもありがとうございました。日ごろから「あるべき姿」について考える機会は多いのですが、「仮説を持っているか」と言う点が私自身に投げかけられたように感じました。時折失敗が怖くなることがありますが、チャレンジしてみようと思います。子供たちに伝えるべき重要な要素だと感じました。

■ジャパネットさんの具体的なお話を聞けてよかったです。仮説とは難しいものと思っていましたが、「暑い日、チラシで売れる→暑い日にチラシを撒けないか」のようなことから深掘りしていけば良いと知ったことで、自分の中で仮説検証のハードルが一気に下がりました。

■様々な事例を交えながら具体的でわかりやすい、しかもテンポも良いお話をありがとうございました。書籍も購入させていただき、続きを学ばせていただきます。貴重なお話をありがとうございました。

■やる気が出ました。失敗を楽しみたいと思います。

■スピードを持って仮説検証していこうと思いました。

■失敗の蓄積、参考になりました。恥じる事はないですね。

■今よりもっと速く、もっと多く挑戦しようと言う気にさせられよかった。

■実手を交えたお話で、とてもわかりやすく、楽しく聞かせていただきました。

■納得した。

■やりたいことをすぐやるという習慣をつけることの大事さを再確認した。

■仮説検証の必要性、具体的な取り組み方法について、具体的なイメージを持つことができた。明日から早速自分のチームで実践してみようと思う。

■テンポが素晴らしい。ストーリーを立ててワクワクさせられた。事例も適度に盛り込まれ、ストーリーとマッチしていた。

■大変勉強になりました。ありがとうございます。何をやる際にもリスクを最初に考えてしまいますが、仮説を持ちながらある程度リスク(失敗)をとって進み出す方が良いには良いのではないかと感じました。またマツダの失敗大賞は取り入れても良いなと思いました。

■大変参考になりました。

■仮説ではないものを仮説と呼んでいた。仮説を立てることを学ばなければならない。

■日々の業務に役立つような内容が多かったです。

■とても勉強になり、仮説と実行の有用性を再確認できました。

■「売れる仕組みをどう作るか」の本を読んでいたので、期待が大きかったです。本の内容にプラスαの話を聞けてよかったです。

■実行したいと思います。

■面白いお話ありがとうございました。 参考になりました。

■仮説検証大切さ、失敗の再定義について、事例を交えてご説明いただきましたのでイメージしやすかったです。不安が先立ってしまいますがまずやってみようと思います。

■ずっと営業やってる中であまり決まった考え方に基づいて実行していなかったことに気づきました。ある部分は仮説を立て、ある部分は思いつきなど、行動を紐解くとバラバラとありそうです。基本的な姿勢としてやってみようと思いました。

■このアンケートもご自身の検証になると思いますが…。個々のエピソードは楽しいが「トルネード式仮説検証」の素晴らしさを伝えるには寄り道が多いような気がしました。(聞いてる側の能力不足もありますが)先に本体を説明してから、事例紹介するが持ってわかりやすいのでは?

■トルネード式仮説検証とは?継続的な活動が不可欠と認識しました。仮設抽出のロジックをもう少し具体的に伺いたかった。本を読み込んでみます。

■「リスクがわかれば、対策できる」と言う話が印象に残りました。この言葉が頭にあると挑戦しやすいと感じました。

■スピード。やはりスピードが基本と再認識。

■「どうしても自分だけが違う」「私の会社は特別だから簡単にいかない」と思いがちで、既にできることはやっているような気がしていたが、永井先生に例示されてみると何もできてないことを思い知らされた。明日から失敗を恐れず小さい行動にうつそうと思いました。

■若干既視感あり。内田先生の仮説思考など。

■テストマーケティング名目という新しい取り組みを実施していましたが、仕事の姿について方向性が間違ってなかったという事の再確認ができてよかったです。「失敗は成功の母」という言葉は、なかなかよい言葉だなと思いました。

■大変参考になりました!継続して取り組む。心の折れなさも必要かと感じました。

 

このような機会をいただき感謝です。

上司に承認をもらうのは、昼食後がオススメ

組織で仕事をしていると、上司の承認が必要なときがありますよね。社長でも、お客さんや取引先の承認がないと進まない場合もあります。

こんな時、不思議と昼食前に承認のお願いをすると、却下されることが多いもの。
逆に昼食後だとOKされることが多いのです。

これを実験で試した人がいます。行動経済学者でノーベル賞も受賞したダニエル・カーネマンが著書「ファスト アンド スロー」でこんな実験を紹介しています。

イスラエルで、8人の仮釈放判定人にある実験をしました。この8人は一日中、仮釈放申請書類の審査をしています。判定人たちには実験していることを告げずにデータを取りました。

平均審査時間は6分。仮釈放申請は「却下」が前提で、通常は許可されるのは35%。判定人には朝昼午後と三回の食事休憩があり、次々と書類がやってきます。(部下が持ち込む案件を一日中レビューしている多忙なマネージャーの仕事に、どこか似ている感じもします)

許可率の推移を見ると、各休憩直後が最も高く65%。そして次の休憩までの2時間で許可率は一貫して下がり続け、休憩直前はゼロ近くになりました。

『疲れて空腹になった判定人は、「申請を却下する」という初期設定に回帰しがちである』というのが実験チームの結論でした。

カーネマンは、『人間の脳には、直感で瞬時に判断する「システム1」と、論理思考で時間をかけて判断する「システム2」がある。システム2を維持するには、強い意志と集中力が必要。そしてシステム2はすぐに消耗してしまう』と述べています。

 

以前、あるコミュニティ運営チームにいた時、運営メンバーの女性で、打合せの際には必ずおにぎりやお菓子を人数分持って来る人がいました。この人がいるといつも打合せはスムーズに進みました。実はこの方のご主人は経営者。ご自分の実体験で、この仕組みを知っておられたのですね。

 

ということで、何が何でも重要案件を上司に承認してもらいたい時は、昼食後にするのがオススメです。

一つだけ注意点。このネタを上司にばらしてはいけません。ほとんどのマネージャーは「他の人はそうかもしれないが、私は空腹でも冷静に判断している」と自信を持っています。これは行動経済学で「自信過剰バイアス」といいます。ですので、逆に怒られて、却下されるかもしれません。(笑)

あなたが論理思考を必要とする仕事に集中する際にも、休憩充分な状態で臨むのがオススメですよ。

 

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「婚約指輪は給料3ヶ月分」は価格戦略だった

「世の中にはなかった新商品を発売します。お客さんの引き合いも多いのですが…、値付けをどうしようか、悩んでいます」

こんなことで悩む方は少なくありません。

最初の値付けはとても大切です。
つい「お客さんに聞いてみようか」と思いがちですが、これはダメ。

 

参考になるお話しがあります。

黒真珠といえば、高級ジュエリーです。しかし最初からそうではなかったのです。

数十年前にある宝石商が買ったタヒチの珊瑚島で、黒真珠が採れました。宝石商は「これは売れるかもしれない」と考えましたが、当時真珠と言えば日本産の美しい白真珠が常識。「黒い真珠?色も形もまるで鉄砲の弾みたいだ」と言われていました。ガラクタ扱いだったのです。

品質改良に努めた末、ニューヨークにいる旧友の宝石商に相談しました。彼のアドバイスで、店頭のショーウィンドウに並べて、同時に豪華グラビア雑誌に全面広告で、黒真珠のネックレスがダイヤモンドとルビーのブローチと一緒に光り輝いている写真を出しました。

すると、ニューヨークのセレブたちが黒真珠を付けるようになったのです。「黒真珠は高級ジュエリー」と認知され、世界に広がりました。

 

世の中にまだ認知されていない新商品の価格が高いのか安いのか、お客様は判断できません。

こんな時に「いくらだったら買いますか?」とお客様に聞くのは、愚の骨頂。必要なのは私たちが主導権を持ち、価格の基準を決めることです。

 

ちなみにこの基準のことを、行動経済学では「アンカリング」とも呼びます。アンカーとは船の錨のことです。大きな船がアンカーでつなぎ止められるように、私たちの心の中にも基準が作られてしまう現象が、アンカリングです。価格戦略を考える上で、アンカリングを理解することはとても大切です。

 

身近な例でもう一つ。

「婚約指輪は月給の三ヶ月分が目安」といわれます。実はこれ、冠婚葬祭の常識ではありません。高級宝石を扱うデビアスが、マーケティングプロモーションで作ったメッセージです。

婚約指輪の客観的な価格は、そもそも存在していません。そこでデビアスが、基準を作ったのです。新婚カップルにとって「給料3ヶ月分」が婚約指輪の価格の基準になりました。価格戦略とプロモーション戦略を組み合わせて、大きな成果を挙げた事例です。

ちなみにこのプロモーションが行われたのは1970年代から1980年代後半。でもいまの若い人も知っています。最初に価格の基準が出来ると、それはなかなか変わらない、ということですね。最初の価格はとても大事なのです。

郷ひろみが1987年に二谷友里恵と結婚した際に報道陣から婚約指輪の価格を聞かれ、「給料の3ヶ月分くらいです」と答えたのも、これが常識になる上で大きく影響しました。

 

商売が儲かるかどうかは、価格戦略次第。これまでになかった新商品の価格を決める時は、私たちが主導権を持って価格の基準を作っていきたいものです。

 

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グリズリー熊に出会った、二人の登山者の話

ある登山者二人が山を登っていたら、熊に出くわしました。

相手は凶暴なグリズリー熊。獲物の二人を見つけると、徐々に速度を上げて、こちらに向かってきました。
一人はすぐにリュックを降ろし、ハイキングシューズを脱いで、ランニングシューズに履き替えました。
それを見て、もう一人が言いました。

「何しているの?熊はキミよりずっと速いよ」

すると彼は靴を履き替える手を止めずに、答えました。

「熊よりも速く走る必要はないよ。キミより速く走れればいいんだからさ」

これは、MITのジョン・D・C・リトル教授が1984年に論文で紹介した逸話です。

 

このちょっとブラックな逸話は、競争について大切なことを教えてくれます。

競争に勝つか負けるかは、ほんの半歩の差で決まります。

ちょうど登山靴のままそこから駆け出すように、とりあえずその場で必死に頑張るのも、一つの方法です。
しかしリュックを降ろしランニングシューズに履き替えたように、ちょっと知恵を出し、相手に半歩先んずれば、消耗戦を避けて、競争に勝てるのです。

どうすれば相手に半歩先んずることができるか?
常に考えたいものです。

 

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売上が増える値下げと、売上が減る値下げ

「なかなか売れない…。値下げしよう!」

会社でよく見かける光景です。でもちょっと待って下さい。本当にその値下げで売上が伸びるのでしょうか?

たしかに販売の現場では、

値下げする
→お得感をアピール
→買ってくれる
→万々歳

となりますよね。でもマーケティングの視点では、もう少し考える必要があります。値下げには2種類あるのです。

「売上が増える値下げ」では、値下げにより、買うお客さんが増えます。売れる商品数も増えて、売上も増えます。(市場全体で見ると、値下げしたことで需要が増えていることになります)

「売上が減る値下げ」は、値下げしても買うお客さんが増えません。「え?そんなことあるの?」と思うかもしれませんが、これが意外と多いのです。たとえばタイヤメーカーがタイヤを自動車メーカーに売る場合、いくらタイヤを値下げしても、自動車の売れる数にあまり影響がありませんから、タイヤが売れる数も変わりません。こうなると、値下げしただけ売上が減ることになります。(市場全体で見ると、値下げしても需要はまったく増えていません)

今売っている商品が、どちらなのかを考えることが必要です。

 

ただし、前者の「売上が増える値下げ」でも、ライバルと値下げ合戦が始まれば消費者はライバルも選ぶようになるので、一気に収益性が下がります。

たった1%値下げしただけで、営業利益が8%下がります。これは簡単な計算でわかります。
売値が1000円で、利益が120円だったとします。
ここで1%値下げして990円で売ると、利益は110円に減ります。
1%の値下げで、利益は120円から110円と、8%も減るわけです。怖いですよね。

お客様が買う時は、価格はあくまで一つの要素でしかありません。
「高いけど、どうしても欲しい」と思ったら、お客様は財布を開きます。

安易な値下げは行わず、いかに価格以外の価値をアピールするかが大切なのです。

 

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行列が絶えないパン屋と、行列がないパン屋

近所に、行列が絶えないパン屋さんがあります。

普通のパン屋さんは、コッペパン、フランスパン、あんパン、コロッケパン、カレーパンなど…、様々な種類のパンを揃えて売っていますが、ここは1種類の食パンだけ。通常の食パンサイズは432円、その倍のサイズは864円。この2種類のみです。

11時の開店前には毎日十数名の奥様方が行列しています。夕方まで営業していて、常に食パンを焼いているのですが、予約しないとまず買えません。毎日完売です。

先日テレビを見ていたら、この店が『奇跡の「生」食パン』として紹介されていてビックリしました。

実際に私も買いました。『奇跡の「生」食パン』というだけあって、焼かずに生で食べると、これがまたもの凄く美味しいのです。さらに翌日や翌々日になると。さらに熟成して美味しく生で食べることができます。

この店は、最高に美味しい単品の食パンで、味にうるさい奥様たちをトリコにしているのです。

 

実はこの近くに老舗のパン屋チェーン店があります。

先日通りがかると、同じコンセプトの生食パンが、まったく同じ値段で売られていました。「マイスターが心を込めて焼き上げた」とのこと。ただ店頭で平積み状態のまま。並んでいる人はいませんでした。

実際に買っていないので、もしかしたら美味しいのかもしれません。ただ売れないのは、「単なるコンセプトの真似」と思われている可能性もあります。これでは、味にうるさい奥様たちは引きつけられないかもしれませんね。

 

売れている商品を見て「これは売れる!」と考え、形やコンセプトだけを真似しても、本当の強みまではなかなか真似できません。仮にかなりの程度真似ができても、先行ライバルが成功しているほど、二番煎じと思われてしまう。

私たちも気をつけたいですね。

 

 

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一人一人が仮説検証する組織に変革し、成長するジャパネット

今月の日経「私の履歴書」はジャパネットたかた創業者・高田明さん。
大評判ですね。私も毎朝楽しみです。

いまジャパネットの経営を担っているのは、2015年1月就任した高田旭人社長。創業者・高田明さんのカリスマ経営から、全員で仮説検証を徹底する経営に大きく舵を切り、成長を続けています。

4月の新刊「売れる仕組みをどうつくるか トルネード式仮説検証」では、髙田旭人社長への取材内容を紹介しています。4月の朝活勉強会「永井塾」でもお話ししました。

その永井塾で、こんなご質問をいただきました。

先代がカリスマ経営者だと、どうしても先代のやり方を継ごうとしがちと思います。旭人社長が仮説検証を重んじるようになったきっかけは何でしょうか?

創業者の高田明社長は、天才的経営者。社員は明社長の言うとおりに動いていたそうです。 旭人さんは証券会社に勤めた後、そんなジャパネットに入社しました。

旭人さんは入社前から「なぜジャパネットは急成長しているのか?」と興味を持っていました。

社長室長として明社長の傍らで意志決定に接し、色々考えると、「なるほど、これは合理的に考えている。ロジカルだな」と感じることが多かったそうです。

ただ明社長は意志決定は速かったのですが、意志決定の理由を説明しませんでした。そこで旭人さんは10年間、社員に明社長の意志決定の背景を「通訳」する役割をしていました。

2015年に旭人さんが二代目社長に就任した時、こう考えました。

「先代社長と同じスタイルでは持続性ある経営ができない。社員全員が、自分で仮説検証を実践する組織に変えていこう」

それまで常に明社長に判断を求めていたのを、社員自ら考えるように変えるのでなかなか大変ですが、時間をかけて取り組んでおられます。

たとえば、かつては明社長が「Aで行く」といえば、それに従うやり方に慣れていました。今でも旭人社長に「ABCどれがいいですか?」と聞く社員が多いのですが、徐々に「私はAで行きます。理由はこうです」という社員が増えてきています。

たとえば最近ジャパネットが始めた「クルーズ旅行販売」のアイデアは、幹部社員から出ました。

日本一周クルーズでは、横浜港を出港、翌日に富山に着いて夜8時まで観光。翌朝には金沢に着いて観光。これが10日間続きます。船内の食事は食べ放題。そして、ジャパネットのお客様は年齢が高めで、旅行ではゆったりしたいはず。一方でクルーズ人口はまだ10万人であまり知られていません。

「これは行ける。ジャパネットでこの良さを伝えたら、売れる」と仮説を立てて、実際に売り始めたらすぐ完売。船を一隻丸ごと買い上げて拡大販売したらまたすぐ完売。このため第一種旅行免許も取りました。

一方で、先代社長が反対していたプロジェクトを始めているケースもあります。 たとえば明社長は「商品修理はメーカーに任せればいい。ウチの仕事ではない」という方針でした。 しかし旭人社長は、ジャパネットで修理業務をすることにしました。結果、ジャパネット社員も販売する商品のことがよくわかるようになり、メーカーに商品改良の意見を言えるようになりました。

先代の明社長の意志決定スタイルを全員に広げながらも、今の最新状況に併せて、意志決定の内容は変えているのです。

 

取材では髙田旭人社長とは初対面でしたが、不思議なほど意気投合しました。髙田社長が目指す方向と、「トルネード式仮説検証」で提唱している方向が同じだからなのかもしれません。

 

 

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「幼稚園児は、MBA修了生やCEOよりも優秀?」という話

「マシュマロ・チャレンジ」というゲームをご存じでしょうか?

4人一組のチームで、次の道具を使って、制限時間18分以内で、できるだけ高い塔を作り、てっぺんにマシュマロを乗っける、というゲームです。

マシュマロ1つ、スパゲティーの乾麺20本、長さ90センチの紐と粘着テープ

2010年、トム・ウージェックという人が、このマシュマロチャレンジについて、実に面白い結果をTEDプレゼンで紹介しています。

6チームが参加しました。結果は、

・1位は、建築家とエンジニアチーム。これは順当ですね。
・2位は、CEOと管理系役員チーム。これは指揮系統とファシリテーションの賜物です。
・3位は、何と幼稚園児チーム。
・4位はCEOチーム。以下、5位は弁護士チーム。最下位はなんとMBAを修了した直後の修了生チームでした。

幼稚園児が並み居る大人たちを圧倒しているのですね。

MBA修了生はどうやっているかというと、

・ゲームが始まると、まず4人で目的と課題について議論する
・最適な一つの解決策を求めて、設計して塔を組み立てていく
・制限時間18分の終了間際に、そっとてっぺんにマシュマロを乗せる
→しかしそこで全体が壊れてしまうことも多い。

MBA修了生の問題は、「正確な計画を作らなければ」と思い込み、計画に時間をかけすぎていること。
会社の中での仕事を考えてみると、身につまされることも多いですよね。

では、幼稚園児はどうやっているかというと、

・そもそも計画も、目的の確認も、解決策も、まったく議論しない。
・ゲームが始まると、マシュマロを一番上にのせて、どんどん作り、どんどん失敗を繰り返す。

「高い塔を作ろう」というシンプルな目標に向かって、試行錯誤を繰り返し、「あ、ダメだ」「じゃぁ、こうしてみよう」と夢中になって取り組んでいるうちに、大人たちよりもずっといい成績を残しているのです。

机上で色々と考えても、実際にやってみると間違っていることも多いもの。それならば、簡単に考えたことをサッサとやってみる。

シンプルな「あるべき姿」と素早い仮説検証

まさに「トルネード式仮説検証」です。子供たちから学べることは多いですね。

 

この「マシュマロチャレンジ」のTEDプレゼンは、下記サイトでもご覧になれます。7分程度の動画で、日本語字幕もあるので音がなくても理解できます。お時間がありましたらぜひご覧下さい。画面下の字幕アイコン(キーボードの形のようになっている部分)をクリックすると字幕が出ます。

 

 

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「上司がマイクロマネジメントで、困っています」

朝活勉強会「永井塾」で、こんなご質問をいただきました。

「『トルネード式仮説検証で、自発的に考え自由に動こう』ということですが、現実には、上司の中には、マイクロマネジメントが大好きでこと細かに指示しないと気が済まない人もいます。彼らにマイクロマネジメントをやめさせるのは、どうすればいいでしょうか?」

「マイクロマネジメントが好きな上司」…私も経験あります。何かしようとするたびに一つ一つ説明が求められ、「それダメ」「こうしなさい」とこと細かに指示があります。

マイクロマネジメントをする人にも、その人なりの理由があります。

たとえば過去、「ちょっと気になるけど、任せるか…」と考えていたら、やはり失敗。その経験で「やはり気になることは、徹底的にチェックしておこう」と考えるようになる人もいます。

つまりマイクロマネジメントな上司にも理由があり、実際にそれで成果が出ているから続けているわけです。そんな人にマイクロマネジメントをいきなり辞めさせるのは、ほぼムリです。

必要なのは、「ムリにやめさせること」ではありません。
「例外を認めさせること」。言い換えれば、「新しいことを、自由裁量で小さく始める」という例外ルールを認めてもらうことです。

「そうはいっても、ウチのマイクロマネジメント上司が、例外を認めてくれるワケない」

そう思いがちですが、今の時代、どの会社も「いかに新しい価値を生み出すか?」で悩んでいます。そのマイクロマネジメント上司も、例外ではありません。「現場が自発的に考え、自由に動くことで、新しい事業を生み出せる」ことをちゃんと納得すれば、例外を認める可能性も高いのです。

ちょうど「特区」と同じ考え方です。
厳しい規制の中では、新しいことはなかなか生まれません。
そこで公に規制では許されていないことを、特別に試行的に許す地区のことを「特区」といいます。日本政府も地域や分野を限定して「国家戦略特区」を作り、ここで多くの規制を大幅に緩めることで、経済活性化を図っています。(森本学園問題などでいい印象はないかもしれませんが、本来「特区」そのものは素晴らしい仕組みだと思います)

マイクロマネジメントな上司を変えるのではなく、特区を認めてもらうのです。

ちょっと大きな視点で考えてみると、社内の既存のやり方をすべて否定して、壊す必要はありません。確かに既存のやり方も問題があります。しかし一方で、機能している部分も多いものです。

企業の場合、既存事業から大部分の売上が上がっています。「すべてを変えよう」と考え、既存の仕組みを否定して壊してしまうと、企業として存続できなくなります。だから既存の仕組みはそのまま残した上で、その上でプロジェクトチームとして動かしてみることです。

ちょうど図のように、既存の仕組みの上に、新しい層を加えて、新しい層では別ルールを適用するイメージです。

プロジェクトチームを「特区」のように扱うことで、今の仕組みから新しい事業を生み出すことができるのです。

 

 

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やる気を失った元部長さんが活躍できる、即効性ある方法

朝活勉強会「永井塾」でこんな質問をいただきました。

当社は社員が高齢化していて、管理職も余っています。部下がいない元部長さんも多くて、やる気をなくしています。やる気をなくした方に活躍していただく上で、参考になる例はありますでしょうか?

この方は言葉を選んでおられますが、「成功体験の賞味期限切れを起こしている人をどうすべきか?」というご質問です。

実は即効性がある方法があります。
賞味期限切れを起こした成功体験でも、まったく違う場所に移ると、そこでは役立つ新しいスキルに変わることが多いのです。ですから社内で別部門に異動いただくことで、活躍できる可能性が高まります。

5年前に書いた「100円のコーラを1000円で売る方法 3」で、昭和の熱血営業マンだった清水元専務が、新しい営業変革に対応できずに、失意の中で駒沢商会を退社、外資系のガンジーネットに広報部長として転職した場面を描きました。清水元専務の「パッション一筋」という信念は、SNS上で若者から熱狂的に支持され、大活躍しました。これは清水元専務が持っていた営業としては賞味期限が切れた強みが、まったく違う場で花開いた例です。

これはフィクションですが、現実の世界でも同じです。

職場でも、「お客様第一主義」の営業部長が技術部門に異動してプロダクトアウトな製品作りをお客様志向に変革できるかもしれません。また逆に、「テクノロジー命」の技術部長が営業に変わることで、浪花節的な営業スタイルをロジカルな営業スタイルに変えられるかもしれません。

大切なのは、その異動の意味を、ご本人が心から納得するかどうかです。

実は私自身も経験しています。
私はマーケティング戦略の仕事を15年担当した後、人材育成の仕事に異動しました。事業本部長から「うちの事業部は、マーケティング戦略や営業戦略は徹底的にやった。人材育成はまだ不充分だ。事業部1000人の社員が、事業戦略に沿って動くようになって、生産性が20%上がれば、売上も20%上がるはずだ。だから事業戦略に沿って社員が動けるように、人材育成をして欲しい」と言われました。そして納得して、異動しました。人材育成はまったく未経験でしたが、マーケティング戦略で培ったスキルを活かして成果を挙げることができました。

このようにポイントは、異動する意味をご本人が納得していること。

本人が異動する意味を納得すれば、一見賞味期限切れした成功体験は、宝の山に変わるのです。

 

 

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白山市観光連盟様で講演しました

本日3月23日、石川県白山市にある白山市観光連盟様で、『「そうだ、星を売ろう」 阿智村から学ぶ『コト』発想への変革』というテーマで講演を行いました。

とても多くの皆様にお集まりいただきました。

皆様からのご感想です。

■「100円のコーラを1000円で売る方法」を読んでファンになり、今回参加しましたが、文章で読むのとはまた異なる印象を得ました。今回自身が永井さんのファンと言うことで参加しましたが、地域の方が多く参加されていて、今後もっと地域のセミナーに参加し、横のつながり作ることも大切だとも感じました。

■とても良いセミナーでした。「JTB武田さんとの出会いについて」の回答はよかったです。積極的に行動することの重要性が伝わる良い事例でした。

■危機意識や行動や志を推進していきたい

■経営理念はどんな場合でも共通点があり観光も経営をもとに成り立っていると思いました。

■とても良かったです。ドラッカーの言うやり方とよく似て面白かったです。

■とてもわかりやすかったです。本を読み返してきてよかった。とにかく行動ですね。

■大変勉強になりました。「恋のしらやまさん」とは関係のない企業からの参加でしたが一企業の企画担当者として自分ができることを少しずつ行っていき、地域一体となって盛り上がっていけるよう努力していきたい

■事業を実践していく上でのキモを学べたと思います。本日学んだことを活かして「恋のしらやまさん」のさらなる誘客に努めます。

■阿智村の事例から誘客を推進するためのたくさんのポイントを学ぶことができました。貴重な講演ありがとうございました。

■講演ありがとうございました。あっという間の2時間でした。「仕事=やりたいこと」を実現しようとを転職しました。思いをお客様にどう届けるか?強い後押しとなりました。

■わかりやすい内容であると同時に熱意が伝わってきた。

■勉強になりました。有り難うございました。本当の価値は「人」である、が考えと一致しました。正しい志、熱意が周りを変えていくのが共感しました。

■阿智村へいちど行ってみたいと思います。白山市の地域おこしの参考になると思います。

■非常に興味を持って聞かせていただきました。ありがとうございました

■これから強みについてさらに考えてみます。

■阿智村へ行って星を見たくなりました。「100円のコーラを1000円で売る方法」を一度読んでみたいと思います。行動や志が大事であるとのこと、最初の一歩が行動できれば思います。

■やはり「人」ですね

■大変分かりやすい講演であった。

■会社の意識改革で考えていることが当てはまり、合わせてその難しさも考えつつ、興味深くお話を聞くことができました。自分たちのイベントにも参考にしていきます。ありがとうございました。

■自分の会社の職員マネージメントに使えそうだと思いました。やはり人なんだなと感じました。

■とても興味深いお話で時間があっという間に過ぎました。「コト」を売るということは、自分の仕事にも大変役立つことなので、スタッフにも話して共通理解をしていこうと思います。

■次回機会があればブランディングの方法を教えて欲しいです。

■あるべき姿を目指すには危機意識に始まり現場の認識がポイント。ここから情熱ある少人数が無関心層動かしていくプロセスをいかに楽しみに変えていけるか、情熱というか「志」なんだなと感じています。

■「ビジョン」「こうありたい」という欲求がないと。「お客様の買う理由」を考えることが重要だということに今更ながら気づかされた

 

参加された皆様、有り難うございました。

現場の体験と強いパッションが、新規事業を生み出す

ヤマト運輸で「まごころ宅急便」というサービスがあります。65歳以上の要介護者向けに、地元スーパーが商品を揃えて、ヤマト運輸が届けるサービスです。配達時にはドライバーが体調を聞き取り、必要であれば関係各方面に連絡します。

このサービスが生まれたきっかけは2008年の岩手県。ヤマト運輸のある女性ドライバーの体験です。

担当地域に住む高齢者の女性に荷物を届けた時、いつもは笑顔で出てくるのに、その日は家の奥から声しか聞こえませんでした。しかし次の配達もあるので、そのままにしていました。

3日後、孤独死しているのが発見されました。

この時、女性ドライバーは「ひと言かけていれば救えたのでは?」と悔やんでも悔やみきれなかったそうです。

そして「二度とこんな思いはしたくない」「孤独死をなくしたい」との強い想いで、「まごころ宅急便」の事業化を提案しました。

社内では、

「儲かるのか?」
「そもそもヤマト運輸で行うべきことなのか?」

という反対もあったそうです。しかし、

「これはヤマト運輸だからこそできること。そして有料事業化するからこそ、次世代に引き継がれる」

という強い想いで、岩手県内で事業化にこぎつけます。その後、3.11の大震災で店舗がすべて失われて買い物ができなくなり、「まごころ宅急便」は他地区に広がりました。

今では各自治体と協定を結び、全社で取り組むようになりました。

これは、現場で日々現実と向き合っている人たちだからこそ、「コレやりたい!」という強いパッションを持って生み出せる事業です。

「低成長時代」と言われる現代ですが、現場には数多くの課題があります。
現場にいる人たちだからこそ、そんな課題が見つけられるはず。

そしてそんな課題に正面から取り組むことで、お客様の課題を解決し、新しいビジネスを生み出し、成長に繋がっていくのです。

 

 

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「今の仕組みは全然ダメ。破壊すべし」というご意見

こんなご意見を時々聞きます。

「今の会社の仕組みは全然ダメ。すべて破壊すべきだ」
「現経営陣は、全員入れ替えるべきだ」

たとえば第二次世界大戦では、旧日本軍の上層部は不合理な意志決定を繰り返し、負け戦を続け、日本は米国に惨敗しました。そしてすべて破壊された後に、高度成長が始まりました。

「今の仕組みが機能していないのだからすべて破壊すべし」というのは、一見正論に思えます。

しかし現実には、第二次世界大戦ですべてを破壊された日本は、昭和20年代前半に飢餓やハイパーインフレにより大混乱が起こり、日本国民はとても苦しみました。高度成長期はその後、朝鮮戦争特需がきっかけで始まりました。

破壊のデメリットは、とても大きいのです。

現実には、今の仕組みの上では今のビジネスが動いています。現行ビジネスを破壊してしまうと、会社そのものが破綻してしまう可能性もあります。

ちょうどターミナル駅のリニューアル工事と同じです。渋谷や新宿のようなターミナル駅では毎日何百万人も乗り降りしています。「これから1年間、工事のため駅を壊すので閉鎖」なんてやってしまうと、社会全体が大混乱になります。

会社の中で実際に現ビジネスに責任を持つ立場からすると、『「すべて破壊すべし」なんて言うけど、現実にそんなことをしたら大混乱だ』というのが、口に出せない本音ではないでしょうか?

組織は継続性も必要なのです。低迷した組織を「破壊すること」が自己目的化してしまい、さらに低迷してしまう事例は数多くあります。

問題は、今の仕組みが、新しい価値を生み出せなくなっていること。そして低迷する企業の多くが、個人の「コレやりたい!」という気持ちを活かせておらず(従って人材も活かしておらず)、仮説検証サイクルも回っていないことです。

ですので私は、むしろ今の仕組みは残したままで、まず小さなところから新しい取り組みを始めるべきだと思います。

たとえば「コレやりたい!」という強い気持ちを持った少人数チームに、予算や期間などの許容範囲を示した上で、自由意志を尊重して自律的なプロジェクト立ち上げを任せてしまう。

このプロジェクトでは仮説検証サイクルを高速で回し、試行錯誤を繰り返しながら、短期間での事業立ち上げを目指す。

この際、旧来型の管理ルールはすべて外す。ただし既存組織の仕組み(会計処理や業務システム)はそのまま使えるようにする。

そしてそのような取り組みを、様々なところで行う。

 

プロジェクトが成功し、新規事業に育つことで、既存ビジネスが徐々に置き換え変わっていくのです。

 

 

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朝活勉強会「永井塾」第13回『「売れる」仕組みを作る「トルネード式仮説検証」実践編』を行いました

本日3月7日(水)、第13回朝活勉強会「永井塾」を行いました。

今回は『「売れる」仕組みを作る「トルネード式仮説検証」実践編』。前回の基礎編を元に、実際にこの方法を行う際に、職場で直面する問題と対応策についてご紹介しました。

ちなみに今回から、大手町駅から徒歩数分という新会場での開催です。(便利になりました!)

皆様からは、こんなご感想をいただきました。

■前回からより具体的になりわかりやすかった。Q&Aで深掘りできた。次回の事例編が楽しみ。

■問題点で挙げられていた「議論しっぱなし」は組織でよく陥りがちな問題であり、解消するためには誰かがアクションプランを決めることをリードしなければならない。リードする人間にならないと物事を進めることができるビジネスパーソンになれないと思った。

■セミナーで学んだことを実際の仕事の現場で実施することは簡単なことではなく、しばしば挫折しますが、今回のように「実践編」として事例を示していただければ非常にありがたい。

■「人」のやる気を出させることは大切だと思うので、本人の納得があるとなしとでは違うなと感じました。異動の説明も、ちゃんと情を含めて配慮しないと、結果的に生産性は落ちますね。

■仮説検証の問題と対策がシンプルでわかりやすく、マネージャーとしての現業の進め方を見直す良いきっかけになりました。

■トルネード式仮説検証について、詳しくすることができ、良かったです。まずは新しい職場で、「思い込み」ではなく「仮説」を立てて、仕事に臨んでみます。

■もう少し具体的な事例、生々しい話をお聞かせいただけると嬉しいです。永井さんの社内試験のお話しは面白かったです。

■自分の部署で使いたい。

■現在の抱えている問題につながっている話で、大変勉強になりました。

■「問題と対策」で具体的な話を聞けて理解が深まりました。本の出版が楽しみです。

■いつも実例が多く、自分の置かれている現場に置き換えて講義が受けられるので勉強になっています。参加者の方々の質問も勉強になっております。

■前回のトルネード式仮説検証から、一歩踏み出して、いかに自分たちの仕事・ミッションと重ね合わせていくか、自分自身の課題も浮き彫りになったように思います、次回の事例編が楽しみです。

 

次回の朝活勉強会「永井塾」は2018年4月4日(水)開催。テーマは『「トルネード式仮説検証」事例編』です。実際に成長している企業3社のトップに、どのように仮説検証を社内で実践しているかをインタビューした結果をお話しします。規模も状況も異なる3社ですが、いずれも、個人の想いたパッションを大切にするとともに、事実も重視し、仮説検証から学び続けて成長していることがおわかりいただける内容になります。

詳しくはメルマガでご案内していますので、参加希望の方はメルマガにご登録下さい。ご参加をお待ちしております。

 

 

 

 

試験不合格は、あなたが悪いのではなく、回答を間違ったから

私はいつも「失敗から学ぼう」とご提唱していますが、講演でこんなご意見をよくいただきます。

『そうは言っても、失敗は怖いし、嫌なものです。「失敗から学ぶ」のは理想ですが、難しさも感じています。どのように考えればいいのでしょうか?』

誰もが「絶対に成功させる」という強い想いでプロジェクトに取り組んでいます。失敗して気持ちが落ち込むのは、人間として当たり前のことです。時には心が折れそうになることもあるでしょう。

ここで必要なのは、「失敗したのは、自分が悪いのではない」と考えることではないでしょうか?

失敗には必ず原因があります。
たとえば試験で不合格になったのは、自分が悪いからではありません。
試験の回答を間違ったからです。
だから間違った箇所を把握し、正しく回答できるようになれば、合格します。
「自分が悪かった」と自分を責めるだけでは、次も不合格ですよね。

できるだけ早く「自分が悪いのではなく、どこかに必ず原因がある」と気持ちを切り換えて、原因探しを始めることではないでしょうか?

原因探しを「成長の大きなチャンス」と考え、ゲーム感覚で楽しめるようになればしめたもの。そうして失敗を乗り越えれば、必ず成長します。

「あの人は失敗しても落ち込まない。楽しそうに再挑戦している」という人がよくいます。その人は、決して精神がタフなのではありません。失敗の捉え方が少し違うだけなのです。

その人も「絶対に成功させる」という強い想いでプロジェクトを進めています。しかし心のどこかで失敗を前提に考えて、「万が一失敗したら、こうしよう」と事前に対策も考えています。だから失敗からの立ち直りが早いのです。

 

 

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若い人の芽を育てるには、許容量を決める

朝活勉強会「永井塾」で仮説検証の考え方をお話しした後、こんなご質問をいただきました。

仮説づくりについて、質問です。自分はマネージャーですが、「若い人に余計なことをいうと、可能性の芽を摘んでしまうのではないか」と思っています。その辺りの「さじ加減」は、どのように考えればいいのでしょうか?

おっしゃる通りで、「経験が少ない」ことは必ずしも悪いことばかりではありません。

確かに経験が少ないと、経験者にとっては既知の落とし穴が見えず、失敗を重ねることもあります。
しかし経験が少ないからこそ、先入観に囚われず、斬新な発想で新しいことを始めることもできます。

ザッカーバーグが大学在学中に「女子生徒のランク付けサイト」を作り総スカンを受けて閉鎖し、そこから学んでFacebookの原型を作ったのも、江副浩正さんが東京大学在学中に「就職希望者と企業を広告で結びつけられないか?」と考えてリクルートを創業したのも、未経験だったからです。

既に過去の経験を蓄積した人にとっては、「それはダメでしょ」と思うことでも、時代が変わり大きな可能性があることが多いもの。一方で、既に失敗がわかっていることは事前に教えてあげたい。この狭間で悩んでいるマネージャーは少なくありません。

この方は、そのことを踏まえた上での質問です。

 

私は、1つの方法は「許容範囲を決めること」だと思います。たとえば、

「これだけの予算の範囲なら、自由に使っていいよ」
「いついつまでに、成果を出してね」

という感じです。

ある経営者に仮説検証をどのように実践しているかをインタビューした際に、こうおっしゃっていました。

「僕から見て『6割は間違っているな』と思っていても、本人が『6割は正しい』と思っていたら、『やらせよう』と判断します。チャレンジさせないと本人の成長はないからです」

この経営者はこの人なりの「許容範囲」を決めて、社員に任せています。

マネージャーの役割は、チームメンバーの力を増幅させ、組織として大きな力にすること。がんじがらめに管理すると、マネージャー個人の器以上のモノが出てこなくなります。

そのポイントの1つが、「許容範囲を決める」ことだと思います。

 

 

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あなたの「弱み」は、「強み」になる

 

ワークショップ後、こんな質問をいただきました。

『「強みを考えよう」ということですけど…。自分の弱みは沢山見つかるのに、強みなんて見つかりません。どのように考えればいいんですか?』

確かに「自分の強みガ見つからない」という人、とても多いのですよね。
実は強みと弱みは表裏一体です。どちらもあなたが持つ「資質」が生み出しています。

たとえば私は、事実に即して考えないと、どうもムズムズします。これが私の資質のようです。

マーケティング戦略を考える際には、現実的に考えますし、筋が悪い戦略に出会うと「この戦略の問題点は、コレ」、よい戦略に出会うと「この戦略はここが素晴らしい」と割とすぐに気がつきます。これは「事実に即して考えないとムズムズする」という資質が「強み」になった例です。

一方で若い頃は、この資質が弱みになっていました。

私は新卒で、日本IBMの製品開発研究所に配属になりました。研究所は機密保持のためにセキュリティ管理が厳重で、入口には守衛がいて社員証を一人一人チェックし、ドアというドアにはセキュリティバッジがないと入れないようになっていました。

入社数ヶ月後、地方の営業所に営業実習に行きました。研究所と違い、営業所は出入り自由。そこで営業実習日誌にこう書きました。

『今日、気がついたこと。営業所では、セキュリティ管理をしていない」

営業実習日誌は、営業所や所属部門の課長がチェックします。営業所の課長は「そんなことはない!」とやや怒りのコメント。数日後、私の上司から電話があり、「永井さん、ああいうことは書くものではないよ」。でも私はこう答えました。

「え?だってセキュリティ管理をしていないのは、事実ですけど」

これは「事実に即して考えないとムズムズする」という資質が「弱み」になっている例ですね。ちなみに「気配り」という言葉を覚えたのは、それからしばらく経ってからのこと。社会人としてはちょっと遅めでした。

資質を悪い面から見ると「弱み」になり、よい面から見ると「強み」になります。

ちょうど「火」の良い点が「ものを温める」、悪い点が「火事の原因になる」というのと同じで、本質的に人の資質は性質であり、「いい」も「悪い」もありません。

せっかくならば自分の資質に向き合い、「強み」を引き出したいものですね。

 

 

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浜松商工会議所様で、ワークショップを行いました

2月15日に浜松商工会議所様が主催された「浜松地域新産業創出会議」で、半日の「お客様が買う理由を、いかに作るか? 」ワークショップを行いました。(イベントのご案内文はこちら

浜松の企業様から、20名以上の方々が参加されました。

浜松は34年ぶりです。日本IBMの新入社員だった1984年、開発部門に配属された私は、ここ浜松で営業実習の機会をいただき、営業の先輩方について数週間お客様を回りました。思えば会社で「お客様」と初めて出会ったのが、ここ浜松でした。34年が経ってすっかり街の様子も変わっていました。

今回は、下記内容で進めました。

13:00-14:00 講義「お客様が買う理由をいかに作るか?」
14:00-14:30 ワークショップ「お客様が買う理由を作る」
14:30-14:45 (休憩)
14:45-15:45 各チーム代表から、ワークショップの成果発表
15:45-16:30 講義「お客様が買う理由を検証する」
16:30-17:00 質疑応答

皆様からのご感想です。

■敷居が高いと思っていたマーケティングの世界にようやく足を踏み込めた気がします!現状と照らし合わせて考えていけたので、とてもわかりやすかったです。早く職場に帰りたい!と、いい意味で思えました。いろいろとやりたいことが湧いてきました。有り難うございました。

■いいものを作っても売れないという疑問への解決方法のスタートが切れそうな気がしました。

■失敗の定義を変えるよう、社内でも働きかけたいと思いました。仮説検証のやり方を改めてみようと思いました。まずは実行!

■徹底的に顧客ニーズを理解すること。仮説を立てること(仮説と目標は違う)と検証すること。この2点は当たり前のようで、やはりできていないことを再認識し真下。今後、すぐにでも取り入れたいです。

■発表に対するアドバイス、有り難うございました。自社の強みを再認識して、ニーズとの組み合わせを変えていきたいと思います。

■徹底的に顧客ニーズを理解する。仮説を立てる。検証すること。など出来ていないことで再確認できた。今後すぐにでも取り入れたい。

■成果を出すため、重要な事を中途半端にしていた事に気づいた。

■自社の強みが自己満足の押しつけになっている事に気づいた

■「チャンスは雨のように降り注いでいる」意識レベルを高くし、チャンスを見落とさないようにします

■事前に本を読んでいたが、モチベーションの話やトルネード式仮説検証など載っていない内容も聞けてよかった。

■わかりやすくていねいな解説で非常に良かった

■始めはついていけるかと不安でしたがワークして行く上で理解が深まりよかった

 

ご参加いただいた皆様、有り難うございました!

 

 

 

間違いだらけの仮説検証。ダメな3パターン

「仮説検証に取り組みましょう」というと、こんな答えがよく返ってきます。

「仮説検証?そんなの当たり前にやっていますよ」

しかし実際にちゃんと仮説検証プロセスが回っているのは、驚くほど少ないのが現実です。

仮説検証プロセスは丸い円で描くことが多いのですが、実際にはらせんのようにグルグル回しながら、あたかもトルネード(たつまき)のように上に進化していくイメージです。

ダメなパターンでは、このトルネードが回っていません。大きくわけて3パターンあります。

■ダメ1:継続しない(1回しか回さない)

こんなパターンです。

「仮説検証、やってみましたけどね。ダメでしたね」
「何サイクル回しましたか?」
「1サイクル回しましたよ」

本来の仮説検証は、何回も回し続けることで学びが急速に蓄積していくもの。1回だけでは学びは溜まりません。

■ダメ2:やりっぱなし(半周しか回さない)

「100%完璧な計画を作ろう」とばかり、計画段階でプロジェクトの大部分のヒトモノカネを投入。根回しも完璧に実施。そしてやって実施します。しかし実際にやってみると問題百出。そこで計画を修正しようとすると、根回しした人たちから「話が違う」と言われたりしてなかなか修正できません。

■ダメ3:そもそも仮説がない(そもそも回っていない)

営業チームで前期の営業成績が悪かった場合の反省会がこうなりがちです。たとえば目標を10%下回った場合、こんな議論をするケースです。

「売上げ目標を達成できなかったのは、X社の案件落としたからだ。営業への指導を徹底しよう」

これは単なる反省会です。対症療法なので問題は再発します。そもそもの仮説がないからです。売上げ目標は仮説ではありません。「その売上げ目標をいかに達成するか」が仮説です。

 

本来の仮説検証はこうなります。

(仮説)現案件40件中、提案20件、成約10件を目指した。
(実行)提案30件、成約9件だった。
(検証)提案は5割増だったが成約が1割減。提案で課題把握が甘かった。
(対応)営業チームで課題把握の徹底を図ろう。

 

仮説検証をちゃんと回せば、問題を生み出している根本原因に近づくことができ、学びが確実に蓄積され、スピーディに成長していくのです。

 

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「義理チョコやめよう」というゴディバに、ブラックサンダーは?

2018年2月1日の日本経済新聞に掲載された1面広告。驚きました。

「日本は、義理チョコをやめよう」

あのゴディバジャパン、ジェームズ・シュシャン社長の署名入り広告です。
こんなメッセージが入っています。

 バレンタインが嫌いだ、という女性がいます。
 その日が休日だと、内心ホッとするという女性がいます。
 なぜなら、義理チョコを誰にあげるかを考えたり、
 準備をしたりするのがあまりにもタイヘンだから、というのです。
 (後略)

 バレンタインを、好きになってください。
 GODIVA

(実物の広告です)

2月14日に職場で義理チョコが飛び交うのは、もはや日常的な光景。
「チョコの会社なのに、立派な意見広告だなぁ…」と思っていたのですが、よくよく考えてみると、これは凄い差別化戦略だと気がつきました。

ゴディバは高級チョコレートです。
高価なゴディバは、本命チョコとして買われることが多いはず。

「義理チョコはやめて、本命チョコへ!」

実はこれがゴディバの狙いなのでしょう。”Share of wallet”(直訳は「(顧客の)財布のシェア」)という言葉があります。現代では、消費者の財布の中からどれだけ自社に使ってもらえるかが勝負。こう考えるとこの意見広告は、ゴディバのバリュープロポジションを周到に考え抜き、”Share of wallet”を最大化するための戦略なのですね。

 

「やるなぁ、ゴディバ」と思っていたら、さらに驚いたことが。

ブラックサンダーを製造・販売する有楽製菓の公式アカウント「ブラックサンダーさん(有楽製菓公式)@プレミアム義理チョコショップ」が、こんなことをつぶやいていてバズっています。

ブラックサンダーは、相手に「これって本命チョコ?」と誤解されるリスクは皆無。安心の義理チョコとして、ブラックサンダーならではのバリュープロポジションを考え抜いたメッセージで返すあたり、さすがです。

ターゲット顧客の心に響くメッセージをいかに発信するか?
ゴディバもブラックサンダーも、Share of Walletを獲得するためにバリュープロポジションを考え抜いているのです。

 

 

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人生100年時代!辛い?楽しい?

「人生100年時代」と言われます。
60歳定年でも、残り40年。年金も繰り上げ支給になりました。

「昔はよかった。定年後は年金支給で悠々自適だった。今は年金も頼れない」

本当にそうでしょうか?

 

国民皆年金が実現した1960年頃の平均寿命は、男性65歳、女性70歳。
60歳定年で引退し、仕事をせずに悠々自適な生活ができましたが、その期間はあまり長くはありませんでした。

 

いまは60歳で定年後、人生100年として残り40年もあります。一方で現在の40代・50代は「年金には頼れないかも」という漠然とした不安があります。60歳で定年を迎えても、仕事は続けざるを得ないわけです。

これを「辛い」と感じるか、「楽しい」と感じるか、です。

「仕事が苦痛」と感じる人にとっては、辛いですよね。

しかし「やりたい仕事をやっている」という人にとっては、こんなに「楽しい」ことはありません。
80歳まで仕事を続けるとしたら、プラス20年も楽しめるわけです。

そのために大切なのは、「自分という商品づくり」を常に考えること。

そして自分の商品価値の賞味期限が切れないように常に磨き続けることだと思います。

私はいま56歳ですが、まだ最低30〜40年は仕事を続けたいと思っています。今の仕事が大好きなので、とてもワクワクしています。

 

せっかく与えられた「人生100年時代」、大いに楽しみたいですね。

 

 

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あえて期待値を下げ、新ビジネスを生み出す

朝活勉強会「永井塾」で、こんなご質問をいただきました。

『永井さんはいつも、「顧客満足=提供価値−事前期待」といってますよね。
自分の業界ではお客様の期待値がどんどん上がり、現場での負担が多すぎるのが現実です。
「逆に期待値を下げて、顧客満足を高める」って、アリなのでしょうか?』

実はまさに最近、そんな経験をしました。

私は毎月、決まった理容室でカットします。まずカット数日前に理容室に電話して担当理容師さんを予約。「この日時がいいな」と思っても理容師さんがお休みのこともしばしば。数日後にカットします。軽くマッサージしてくれたり、洗髪や整髪料をつけたりして料金も結構します。1時間ほどかかります。行き帰りも1時間。

つまりサービスは、カット、洗髪(シャンプー・リンス・トリートメント)、整髪料、マッサージ。一方で私のコストは、数千円の料金+合計2時間の時間。手厚いサービスは料金に見合っているとは思いますが、「時間がもったいないなぁ」と感じることもしばしば。

ある日、近所にQBハウスがあるのを見つけました。ご存じの通り10分・1080円でカットしてくれます。
「技術はどうかな?」と思ったのですが、店の入口にある説明を読むとしっかりしているようです。
入口には緑・黄・赤のランプがあり、待ち時間もわかります。この日は黄色で待ち時間5〜10分。2名待ち。「ものは試し」と入ってみました。

まず自動券売機で1080円のチケットを購入。椅子に座り順番を待ちます。座った順番に散髪。場所取り不可という割り切り。店員は理容師さん2名だけなので順番管理はしていません。

すぐに私の順が来ました。以前カットした直後のスマホ自撮り写真を見せ「これでお願いします」。カットが始まりました。バリカン、はさみはすぐ手に届く所にあり効率的です。一通りカットが終わりスタイル確認。意外といい仕上がりです。この後、普通の理容室だと切った髪を洗い流すのですが、ここでは天井から下がっているエアシャンプーという強力掃除機で吸い取ります。ちゃんと吸い取り、切った髪は残りません。

12分ですべて終了。待ち時間込みで20分弱。

いつもの散髪と比べて数分の一の料金。しかも1時間40分も早く終わりました。
おかげでこの日、記事を一本余分に書けました。

QBハウスは「髪のカット」という理容室の本質的なサービスに特化し、カットに関しては必要十分な技術を持っています。そして「洗髪」「整髪」「マッサージ」「店員が待ち順番を調整」といった付随サービス(=過剰サービス)はすべてやめ、「レジ打ちする」作業も廃止、お客さんが自販機でチケット購入するなど徹底的に合理化しています。

さらに洗髪不要なので店の水回り工事が不要になり、出店コストを大きく下げ、出店場所の制約もなくなります。

QBハウスでは常にカット待ちのお客さんがいます。顧客回転数を上げて、数分の一の低価格でもビジネスが成り立っています。

2017年、QBハウスは独自性がある優れた戦略を実行し高い収益性を達成・維持している企業を表彰する「ポーター賞」を受賞しており、「投下資本利益率、営業利益率ともに5年間の業界平均を大幅に上回っている」と評価されています。→詳細はこちら

 

冒頭のご質問の通り、時代と共に、お客様の期待値は常に上がっています。
しかし同時に、時代と共に、お客様が不要と感じる過剰サービスもいつの間にか生まれています。それらについては、あえて期待値を下げてもいいはずです。

QBハウスは一見当たり前の過剰サービスを見直し、それらは顧客の期待値を下げ、「低料金で迅速なサービス」という新たな価値を提供しています。

 

あの旅館「加賀屋」も、かつては宿泊客が到着後、茶菓子・煎茶・浴衣・観光パンフレットと、客室係が一つ一つ、8回訪問して部屋に持ってきていました。1時間かかることもありました。「できるだけ部屋に伺い、お茶を差し上げるのが理想の接客」と考えられていたためです。しかし到着して早く温泉に行きたいお客さんにとっては過剰サービスです。そこで2017年から訪問は3〜4回程度に減らしています。(参考:日経ビジネス2018.1.22 特集『「おもてなし」のウソ やればやるほど顧客は逃げる』)

 

過剰サービスを見直すことは、新たなビジネスを生み出したり、既存ビジネスを強化するための切り口になり得るのです。

 

 

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