「運も実力のうち」の本当の意味

よく「運も実力のうち」といいます。

スピリチュアルな感じもしますが、これをマジメに研究した人がいます。 英国の心理学者リチャード・ワイズマンです。

ワイズマンは、いつも運がいい人と運が悪い人がいることに興味を抱きました。そこで8年間かけて数百人の運がいい人と悪い人に対してインタビューを続けて、実験したのです。

当初ワイズマンは「もしかしたら、運は予知能力ではないか?」という仮説を考えました。

そこで、運がいい人と悪い人700名に宝くじの当選番号を予想してもらいました。結果は、当選率はまったく同じでした。運は予知能力ではなかったのですね。

しかし実験で発見がありました。運のいい人は、運の悪い人の2倍以上「当選する自信がある」と答えていたのです。

そこでワイズマンは「運は自信と関係があるのでは…」と仮説を変更。考え方や行動を分析し始めました。

その結果、発見した次の4つの法則を、著書『運のいい人の法則』(Kadokawa)にまとめています。(拙著『世界の起業家が学んでいるMBA経営理論の必読書50冊を1冊にまとめてみた』では43冊目で紹介しています)

【第1法則】チャンスを広げる … 運のいい人は、日常生活で「運のネットワーク」を広げています。多くの人と出会い、偶然のチャンスに出会う確率を高めているのです。要は人付き合いがよく、人から好かれる仕草や表情で人を惹き付けるということです。

【第2法則】直感を信じる … 運のいい人は自分の直感に頼ります。直感は驚くほど頼りになります。運の悪い人は自分の直感を無視して後で悔やみます。ここで必要なのは、「これ、何となくヤバいことになりそうだなぁ」という「虫の知らせ」を無視しないということです。「虫の知らせ」とは、いわば「ヤバそうなコトのセンサー」のことですね。

【第3法則】幸運を期待する … 運のいい人は楽観的です。「不運は長続きせず、すぐ終わる」と考え、少しでも可能性があれば努力し、手を替え品を替えて挑戦します。運の悪い人は、逆に「幸運な出来事はすぐ終わり、不運が起こる」と考え、悲観的です。失敗すると思い込み努力も工夫もせず、失敗が現実になります。

【第4法則】不運を幸運に変える … 著者の「銀行強盗に遭遇し腕を撃たれた。運がいいか?悪いか?」という質問に、運の悪い人は「質問が変だ。運が悪いに決まってる」と即答。しかし運のいい人は「幸運。頭だと即死だ。腕でよかった」と答えました。運のいい人は、悪いことがあってもより不運な可能性を考えてダメージを減らし、将来に高い期待を抱いて幸運になります。運の悪い人は、運のいい人と自分を比較して嘆き、ダメージを引きずります。

この4つを改めて眺めると、「あの人、何か持っているよね」という人は、大抵この通り行動している人が多いことに気付きます。

これら4つの法則は、マーケティング戦略の実践で、仮説検証を繰り返していく場合でも、大切な心得ですよね。

第2法則の「直感を信じる」のは非科学的に思えるかもしれません。しかしこれは、今年1月2日に当ブログ『商品開発では、お客様に問うな。自分に問え』で書いた、『自分に問い続けて直観を掘り下げろ』ということでもあります。

本書は自分の幸運のスコアを診断できるテストも付いています。私は第2〜4法則はハイスコア、第1法則は普通でした。「人付き合いを広げると、もっと運がよくなる」という診断でした。

私たちも意識して考え方や行動を変えることで、「運のいい人」になれるのです。

 

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サラリーマン起業は脱サラせず、ゆるく副業で始めよう

「生半可な覚悟で起業に挑戦するなんて論外だ。オレの経験では、自ら退路を断ち、いちばん乗りを目指し、アイデアを絞り込んで本気で取り組まない限り、起業は成功しないね」

このように自分の成功体験を語る起業家は、世の中に少なくありません。

しかし元々、起業とは成功確率が低いもの。

「退路を断って起業するぞ」と脱サラして、失敗して再就職しようとすると、なかなか就職できないのが現実です。日本では脱サラして起業に失敗した人が再就職するのは難しいのが、厳しい現実なのです。

サラリーマンの起業は、いわゆる起業家の起業とは若干事情が異なります。そこでぜひお勧めしたいのが、最近話題の「副業」による起業。

これは私自身の経験でもあります。

30代の頃から独立を考え、週末を使って写真家を目指したりと、色々とあれこれ試行錯誤していました。やっと具体的になったのが40代後半。会社の承認を得て、マーケティングの本を副業で書き始めたときです。

執筆を始めて3年目に『100円のコーラを1000円で売る方法』がベストセラーになりましたが、素人芸人が一発芸で話題になり独立後は全然売れないという話も多いので、「独立はまだ早いな」と思って会社員と執筆の二足のわらじを続けていました。

そのうち講演・研修依頼をいただくようになりました。平日の依頼は勤務中なので丁重に辞退しましたが、週末の依頼は会社と利益相反しない限り、無償で引き受けていました。

ある日、「ぜひ謝礼を払いたい」という会社がありました。 当時、私は人材育成部長として外部に社員研修を発注する立場。その発注額と同額でした。
「IBMを辞めても、私に依頼しますか」と尋ねると、「独立してくれると、お願いしやすくなるので助かる」というご返事。

ちょうど『100円のコーラ』第3弾の刊行直前でした。第2弾の感触から確実に売れると予想できましたし、著書刊行後に講演・研修依頼が急増することも予想できました。

そこでこのタイミングで独立。今年で起業9年目ですが、おかげさまでビジネスは常に順調です。

実はこの方法、「ハイブリッド起業」と名付けられています。

組織心理学者のアダム・グラントの著書『ORIGINALS 誰もが「人と違うこと」ができる時代』(三笠書房)で、成功する起業家は後発で、リスクを徹底的に避け、アイデアの量で勝負していることを、圧倒的な数の事例と研究で実証しています。

また経営学者の入山章栄教授は著書「ビジネススクールでは学べない世界最先端の経営学」で、スウェーデンのハイブリッド起業に関する研究結果を引用して、「会社勤務と並行して起業するハイブリッド起業は、起業リスクを軽減できる。現代の日本は、脱サラして起業に失敗した人が再就職するのは難しい。ハイブリッド起業は、起業の失敗リスクを大きく軽減できる可能性がある」と述べています。

起業で大事なのはリスクを取ることではありません。リスクのバランスを取ることです。ある分野で収入を確保しておくことで、別分野で大胆にオリジナリティを発揮する自由が得られます。中途半端な状態で焦ってビジネスを始めるプレッシャーからも逃れることができます。

一方で時間もかかるので、人生の中での時間を含めたリスクのバランスをどう考えるかも重要です。

このテーマは、2月2日の朝活永井塾でも取り上げます。もしよろしければ、ぜひどうぞ。

   

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永井さんは、なぜ強者が多い出版業界で勝負しているの?

ある企業様の講演会で、こんなご質問をいただきました。

『「自社の強みを探せ」ということですが、難しさも感じています。永井さんは出版業界という強者が多い業界で、どのようにご自分の強みや自分にしかできないことを見つけたのですか?』

実に的確なご質問で、しばし自分のこれまでを顧みてから、お答えしました。

結論から言うと、まず「これをやりたい」という気持ちが出発点で、試行錯誤を繰り返していくうちに気がついたら収まるところに収まっていた、という感じです。

まず現在までに至った経緯を簡単にまとめます。

■2006〜2008年頃…当時は日本IBM社員でした。IBMのマーケティング・プロフェッショナルとしてソリューションやソフトウェアビジネスに関わる一方、社内マーケティングコミュニティの活性化もしていました。そんな活動をするうちに、「マーケティングの本を出版したい」と考えるようになりました。しかし出版社には全て断られました。そこで『戦略プロフェッショナルの心得』を自費出版しました。自分がマーケティングの現場で学んだ事を理論で裏付けした本です。

■2009年頃…本を1冊書き上げて刊行したことで、「この人は一冊書き上げる力はありそうだな」と思って下さった出版社からお声が掛かりました。編集者と何度も話し合い、試案を何回か破棄した末に、「物語形式にしよう」ということになり、書き上げて出版しました。しかし残念ながら全く売れず、1年半で絶版になりました。

■2011年頃…出版社の担当編集者から、「絶版は残念でした。でもいい本なので、書き直して他出版社から出しては?」というアドバイスがありました。そこで中経出版(のちにKADOKAWAと統合)から全面的に書き直して出版しました。それが『100円のコーラを1000円で売る方法』。ありがたいことにシリーズ60万部を達成しました。

■2013〜15年頃…IBMを退職、独立しました。編集者と話していくうちに「永井の強みは、物語でマーケティングを語ることでは?」ということになり、100円のコーラ・シリーズ後も、ストーリー形式のマーケティング本を何冊か出版しました。マーケ理論を物語に落とす力量は恐らく徐々に向上していたと思います。しかしビジネス書分野でストーリー本が氾濫して「レッドオーシャン化」し始め、徐々にこの路線では売れないことがわかりました。(たった3-4年で市場が一変するのですから、世の中の流れは速いものです)

■2016年以降…さらに色々な編集者と話したり意見を伺っているうちに、『永井さんの強みは「難しい理論を噛み砕いて、面白く分かりやすく書ける」というように、もっと広く捉えた方がいい』というところに落ち着きました。おかげさまでその後、『これいったい、どうやったら売れるんですか』『なんで、その価格で売れちゃうの? 行動経済学でわかる「値づけの科学」』、さらにMBA50冊シリーズを出版するに至っています。

改めてふり返ると、「これ(=本の出版)を何としてもやりたい」と夢中になるものがあることが出発点だったことです。

本を書き始めた頃は、IBMのマネジャーとして会社では多忙な日々を過ごしつつ、夜は帰宅後毎日ブログを書き、週末は合唱団の事務局長として団の運営をしながら、1年1冊のペースを崩さずに執筆を続けました。

これもシンプルに、「どうしても本を書きたかったから」。

こうして夢中でやるうちに、自分ならではの「個性や強み」が徐々に見えてきます。ありていにいえば「実行した結果から学びが得られる」ということです。さらに私が様々な編集者と話し合いを繰り返したように、第三者の視点は実に参考になります。こうすることで、次第に自分の強みも見えてきます。

一方で強みには賞味期限があるので、常に見直しが必要です。私の場合も「マーケティングを物語形式で書く」という力の賞味期限は、3〜4年間と意外と短期間でした。

「自分の強みはコレ」と決め打ちするのもいいのですが、強みかどうかを判断するのはあくまでもお客様や市場状況なので、あまり強く拘らずに柔軟に見直していくことが必要ではないかと思います。

ところでご質問では「強者が多い出版業界で…」という部分があります。

実は私は、ライバルについてはあまり考えませんでした。これは当初からマーケティング発想で「自分のバリュープロポジションがあることが大事」と考えていたためです。

ライバルのことはそれなりにチェックしました。目的は「ライバルのやり方を取り込む」のではなく、「ライバルがやっていないことをやる」ためです。この発想の違いが生む結果は、実に大きいと思います。私はライバルが自分と同じことをし始めると「そろそろ河岸を変えるタイミングかなぁ」と警戒し始めるようにしています。

ですのでご質問にある「出版業界は、強者が多い業界」と言うことはほとんど意識はしませんでした。

おかげさまで強者が多いビジネス書の分野で出版した本はコンスタントに売れ続けて、現在は累計106万部を超えましたので、この戦略はそんなに間違っていないのではないかと思います。

企業が商品開発を考える際も、このパターンは同じではないかと思います。ご参考になれば幸いです。

   

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商品開発では、お客様に問うな。自分に問え

商品開発をする時、多くの人は「まず市場調査だ」とか「顧客に聞いて情報を集めよう」と考えます。しかしこのやり方は上手くいかないことが多いのです。

成功する商品開発では、お客様に質問しません。

ジョブズは顧客に聞いたり、市場調査しなかったことで有名です。彼自身が最も厳しいアップル商品のユーザーだったからです。自分が欲しい商品を作り続けました。

ソニーの盛田昭夫さんは、ウォークマン発売10周年のビデオでこう語っています。

『「カセットプレイヤーを持ち歩いて音楽を聴きたい。録音機能を外し軽いヘッドホンを作ったら楽しめるのでは?」と井深さんが言うんですよね。周囲は「録音機能のないプレイヤーは売れたためしがない」といっていましたけど、考えてみたらカーステレオも録音できない。「それならば持ち歩くステレオも、プレイヤーだけでいい」と考えたんですよ』

盛田さんも、お客様に質問しませんでした。

家電でヒット商品を連発するバルミューダの寺尾玄社長も、お客様に質問しません。競合商品のことも考えません。自分で「どんな商品が求められているか」をひたすら考え抜いて商品を開発し、商品発表会ではその物語を語ります。

彼らは必ずしも百発百中ではありません。しかしヒット商品を生み出す打率はライバルを圧倒しています。

彼らがライバルと違うのは、お客様に問うのではなく、自分に問い続けている点です。

「お客様に問うのが正しい」と考える人は、「答えはお客様が持っている」と考えて、「どんな商品欲しいですか?」「どうすれば買いますか?」と問い続けています。しかし現実にはお客様は答えを持っていないことが多いのです。

「自分に問い続けるのが正しい」と考える人は、「答えは自分が持っている」と考え、「なんで自分はそう考えたのか?」「どうすればいいのか?」と自分の直観を掘り下げます。顧客の情報は、考えるための一つのきっかけであり、材料なのです。

しかしこの方法は、商品アイデアを生み出す段階でのみ有効です。
商品を世の中に出した後は、モードを反転させる必要があります。

常にお客様の声に耳を澄ませて、果てしない商品改良が始まります。ただしここでも、そのお客様が正しいお客様なのかを判断することが重要になります。すべてのお客様に対応しようとすると、個性を失った商品になり果ててしまうのです。だからあえてお客様を切り捨てる判断も必要になります。

あなたは商品開発で、自分に徹底的に問い続けていますか?

   

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ウィズ・コロナで自ら顧客体験を損なうサービス

コロナ禍の先行きは予断を許しませんが、そんな中でも苦しいのがサービス業。お客様がコロナ前まで戻らない中、売上確保に苦戦しておられます。

私がとても気になるのが、売上を確保しようとして、顧客体験を大きく損なっているサービス業があることです。それを実感したのが、妻が美容院から帰ってきた時のこの一言です。「もうあの美容室、行くのイヤかも」

この美容院はややお高めですが、ゆったりしたソファーで順番待ち。店の居心地も良く、リラックスして髪をいい感じにセットしてくれていました。

コロナ禍で妻はなかなか美容室に行けませんでしたが、先日久しぶりに髪をカットに行きました。

まず驚いたのが、それまでお客が座っていたソファがある場所に、美顔器や化粧品、シャンプー、ドライヤーなどの様々な商品がズラッと並んでいたこと。

お客は入口近くにあるパイプ椅子に座って順番待ちです。売り物の商品にお客が押し出されている感じがします。

順番が来てカットを始めると、美容師さんからの売り込みが始まります。

「このシャンプーお勧めですよ。当店でも売ってます」

「このドライヤーもいいですよ。当店で売ってますよ」

「こんど当店でアロマセラピーのお教室をやるんです。とてもいいですよ〜。ぜひどうですか?」

妻が「そのお教室、どんな感じなんですか?」と聞くと…

「…私は参加したことがないんです。でも、とってもいいそうです!」

販売は確率戦なので、こうして売り込むと、買うお客さんが一定数出てきます。数字だけ見ると一時的に売上は上がるでしょう。しかし「居心地が良く、リラックスして髪をいい感じにセットしてくれる」という顧客体験は、大きく損なわれています。

妻は「ずっとこの店でお世話になったけど、変わっちゃった。もう行きたくないかも」。こうして一定の確率で客離れも上昇するわけで、長期的に見ると客離れが増え、売上は下がっていきます。

ちなみにこの店で腕利きのある美容師スタッフは、お店から独立を決めました。しかもこの店から徒歩5分の場所に店を出します。このスタッフは自分のお客に「独立するので、ぜひ来て下さいね」としっかりと声をかけています。この店の様子を見て(チャンス)と思ったのかもしれません。

さて、売上データで見ると、この状況は次のように見えます。

①売上が激減する(コロナ禍で来店客が減ったため)
②一時的に平均顧客単価が上昇し、売上が上昇する(接客中の営業のおかげ)
③ゆっくり顧客数が減り、売上が減る(顧客体験を損なうことによる客離れ)
④腕のいいスタッフが辞め、顧客がゴッソリ消える(見切りを付けたスタッフ離れ+顧客の大規模離脱)

確かに顧客単価を上げることは必要なことです。しかし同時に大事なことは、絶対に顧客体験を損なわないことです。

ウィズ・コロナの時代は、むしろそれまで出来なかったより高い顧客体験を提供するチャンスです。髪のコンディションをいい感じに維持するための仕組みは、スマホやサブスクと連動させれば色々と実現できる可能性があります。

逆に顧客体験を犠牲にして、目の前の売上を追いかけてしまうと、奈落の底に落ちてしまうのです。

あなたの会社では、ウィズ・コロナで自ら顧客体験を損なっていませんでしょうか?

   

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「達成しやすい目標しか設定しないので、学びが得られない」

私は講演で、いつも「仮説検証の学びの大切さ」をお伝えしていますが、ある企業様の講演で、質疑時間にこんなご質問をいただきました。

「毎期、定量的な結果が査定されるので、どうしても達成しやすい目標を設定しがちです。これだと仮説検証サイクルからの学びも得にくいように感じています。評価という点で、ご提言はあるでしょうか?」

ご質問をいただいた点は、まさにPDCAサイクルの課題です。PDCAサイクルでは、全社目標を細かく分けて、社員毎に個人目標を与え、達成度を把握します。多くの場合、この達成度と給与を連動させます。誰でも給与が下がるのはイヤなので、目標は低めに設定します。

つまりこの仕組みでは、誰も失敗のリスクを取らないようになってしまうのです。

しかし仮説検証の仕組みは、PDCAだけではありません。他にも様々な仕組みがあります。

そこでヒントになるのが、50年前にこの問題を考えたインテル創業メンバーのアンディ・グローブです。

グローブは「インテルを偉大な企業にしたい」と考えて経営理論を徹底的に学びましたが、当時の経営理論の主流派は徹底管理する方法が中心。まさに質問された方と同じ状況でした。

「従来の経営管理手法は、役立たない」と考えたグローブは、さらに当時登場したばかりの行動経済学や認知心理学まで学びました。そんな中で「自己実現の欲求」を提唱した心理学者マズローの考え方に出会い、心酔していました。

インテルの経営幹部だったグローブは、誰に言われなくても常に自分の能力ギリギリの限界に挑戦し、ベストの結果を出す人がいることに気がついていました。まさにマズローが提唱した「自己実現の欲求」を日々の仕事で実践する人たちです。一方でグローブは、普通の人々はそんなことはなかなかやろうとしないことも理解していました。

そこで「普通の人々から最大の成果を引き出すには、背伸びした目標が有効だ」と考えました。そうして編み出したのが、OKRという手法です。(Objective, Key Resultの略です)

OKRでは、PDCAにありがちな「達成しやすい目標設定して100%達成を目指す」のではなく、四半期毎に「背伸びした目標設定をして、50%程度の達成」を目指し、毎週進捗をチェックしていきます。さらに結果は給与と連動させません。

こうすれば、社員は自らストレッチした目標を設定して、背伸びして思う存分挑戦し、結果から学ぶようになります。

OKRは創業2年目のグーグルで全社導入され、その後は毎四半期実施されています。

さらにツイッター、リンクトイン、オラクルなどのシリコンバレー企業に留まらず、BMW、ディズニー、サムソン、エクソンなどの大企業でも活用されており、日本企業でも、花王などの大企業が本格導入を始めています。

私が読んだ限りでOKRの手法が一番まとまっているのは、『Measure What Matters 伝説のベンチャー投資家がGoogleに教えた成功手法OKR』(ジョン・ドーア著、日本経済新聞出版)です。ご興味ある方はぜひご一読ください。

ちなみに先月出版した拙著『世界の起業家が学んでいるMBA経営理論の必読書50冊を1冊にまとめてみた』では、15冊目に紹介しています。

   

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「ウチはリピート客が多い。既存客に販促しよう」が、ジリ貧になる理由

ワークショップ研修でこんな意見をいただきました。

「当社は市場トップシェアです。市場調査すると、当社は競合よりもリピート客比率が多いんですよね。だから既存客を意識した販促を行いたいと思います」

このように考える会社はとても多いのですが、この考え方で販促すると、ジリ貧になって市場シェアが落ちます。

これはバイロン・シャープが著書「ブランディングの科学」で指摘していることです。この本は実に素晴らしい内容なのですが、内容がやや難しいので、なかなか理解が広まっていません。とても残念に思っています。

そこで噛み砕いてご説明します。

まず、業界トップシェアの会社ほど、顧客離反率が低くなります。

単純化して、市場に顧客が100人いて、A社が80名(シェア80%)、B社が20名(シェア20%)の顧客を持っていると仮定します。市場全体では、常に一定比率で顧客が入れ替わっています。仮に今年、顧客10人が入れ替わたとすればと、A社(シェア80%)の顧客離反率は10÷80=12.5%、B社(シェア20%)の顧客離反率は10÷20=50%になります。

このように市場をモデル化して考えると、市場シェアが高いと顧客離反率が低いことがわかります。でもこれは机上の計算。現実にはどうなのでしょうか?

バイロンシャープは著書の中で、米国の車ブランド、オーストラリアの金融機関、英国とフランスの車ブランドで市場シェアと顧客離反率を調査した詳細な結果を示しています。下記はそこからの一部抜粋です。

■米国車ブランド(1989-91年)
 1位 ポンティアック シェア 9%、顧客離反率 58%
 ↓
 9位 ホンダ シェア 4%、顧客離反率 71%

■オーストラリア金融機関
 1位 CBA シェア 32.0%、顧客離反率 3.4%
 ↓
 7位 Adelaide Bank シェア 0.8%、顧客離反率 7.0%

■英国車ブランド(1986-89年)
 1位 フォード シェア 27%、顧客離反率 31%
 ↓
 11位 ホンダ  シェア 1%、顧客離反率 53%

実際の市場データを調べても、トップシェアのブランドは顧客離反率が低いことがわかります。逆に言うと、トップシェアのブランドは顧客定着率も高いということです。

つまり冒頭の「リピート率が高い」のは、必ずしもその会社のお客様の特性ではなく、単にその会社の市場シェアがトップだからなのです。

では、なぜ既存客だけを意識した販促でジリ貧になるのでしょうか?

バイロン・シャープは著書でその理由も説明しています。

次の図は、バイロン・シャープの著書から引用したもので、英国のコーラ購買者の分析です。横軸に年間購入回数、縦軸に全体の人数の比率を取っています。

左側のユーザーがライトユーザー、右側のユーザーがヘビーユーザーです。

一般に「パレートの法則で、上位20%の購買客が売上の80%を占める」といわれますが、これはミスリーディングです。

実際に数年程度の長期間で調べると、売上の50%は稀に買うライトユーザーによるものです。そして実際に調べてみると、実に多くのブランドでは同じパターンになっています。

さらにこの分布の中で、ヘビーユーザーとライトユーザーは頻繁に入れ替わっています。つまりある特定のヘビーユーザーが、急にライトユーザーになったり、全く買わなくなったりするということです。

せっかく得意客を意識した販促をしていても、そのお客さんが離脱するのであれば、販促の効果は出ませんよね。

むしろ販促では、この図で左側に固まっているライトユーザーや、この図に現れない非ユーザーをターゲットにした方が、はるかに効果が出ます。

冒頭の「当社は競合よりもリピート客比率が多いので、既存客を意識した販促を行う」だと、市場のごく狭い範囲だけにしか販促できません。この結果、ジリ貧になって市場シェアが下がり続けるのです。

必要なのは、もっと市場全体に視野を広げたマーケティング戦略なのです。

   

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仮説検証、どこまでやるの?

ある企業の事業本部で講演と研修を行ったところ、後日、参加者からこんなご質問をいただきました。

 『「仮説検証は何度もやるものだ」ということですが、どこまでやれば良いのでしょうか?』

これはお近くにあるセブンの店舗をよく観察すると、わかります。

セブンの強みは「仮説検証」です。

コンビニでは一店舗に3000品目しか陳列できませんので、「その店で売れる商品」を発注することが収益を大きく左右します。言い換えれば、1日に数回行う商品発注が生命線なのです。

セブンではこの商品発注でも、毎回「何が売れるのか?」という仮説を立てて発注し、実際に発注して売り上げた結果を検証しています。

セブンのすごいところは、この商品発注を高校生のアルバイトでもできるように権限委譲していること。そのための仕組みも持っています。「何が売れそうか」という仮説を立てたり、売上結果をすぐに検証できるような発注端末を開発し、そこで必要なデータも用意しています。

そして店舗を運営する間は、四六時中この仮説検証プロセスを回しています。

このセブンの取り組みを見ると、このご質問の答えがわかると思います。

仮説検証はビジネスを行う以上は、常に行い続けるべきプロセスなのです。

   

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誰にも注目されない零細企業が、世の中に知られる方法

永井経営塾でこんな質問をいただきました。

「当社は零細企業で、メディアも注目してくれません。どうすればいいでしょうか?」

零細企業はお金もないので広告も打てません。しかしそもそも広告を一本打っただけでは、翌日には忘れられます。これではコスパは悪いですよね。

そこで必要なのがPR(パブリックリレーション)、つまり広報活動です。
新聞やWebニュース会社などのメディア各社にニュース価値がある情報を提供して、取り上げていただく方法です。

そこで2つの観点で、誰にも注目されない零細企業が、世の中に知られる方法をまとめたいと思います。かく言う私もIBM社員時代にやっていた方法なので、大企業の担当者もぜひ参考にして下さい。

①伝えるコンテンツ

絶対間違ってはいけないのは「メディアはお金がかからない広告だ」…とは考えないこと。

広告ならばメッセージを100%自分でコントロールできるので、伝えたいことをストレートに言えます。

しかしPRでは、メディア会社が自社視点でメッセージを作ります。自分が情報を提供した後は、メッセージを全くコントロールできません。「情報出したけど掲載してくれたメディアはゼロ」ということも多いですし、最悪の場合はネガティブ情報として掲載される場合すらあります。

メディア各社は「読者や視聴者にとって価値がある」と感じていただける情報を常に探しています。まずはメディア会社が持つ外部視点で、自分の会社にどんなニュースバリューがあるかを考えること。

メディアが欲しがるのはこんな具体的な情報です。

・世界、国内、業界で初
・世界、国内、業界で最大(又は最小)

一方で、こんな情報はメディアには無視されます。

・自社の新戦略や新しいビジョン

GAFA級の超大企業の全社戦略ならば別ですが、普通の会社の戦略やビジョンには、メディア会社は興味ありません。(ちなみに私もIBM社員時代、担当する事業の新戦略をメディアにお伝えしましたが、ほとんど掲載いただけませんでした)

②担当者リストを、リッチにしていく

あなたは連絡を取るべきメディア会社の担当者リストを持っているでしょうか?
メディア会社のリストではありません。個人名が入った担当者のリストです。

会社という組織は、判断しません。
情報掲載の可否を判断するのは、メディア会社の担当者です。
ですから、まずは担当者リストを作ることです。

「日本一の星空の村」として全国区ブランドになった長野県阿智村の仕掛け人である松下さんも、担当者リストを持っていました。この挑戦は2012年から始めましたが、新しい挑戦を始めると、メディアの視点で記事情報を整理し、マメに担当者リストに基づいて情報を配信。最初は信濃毎日新聞などの地方紙に取り組みを取り上げられました。

さらに新しいメディア担当者の名前を追加したり、担当者が異動したら新任担当者に差し替えたりしているうちに、担当者リストは次第にリッチになり、日経や朝日新聞などの全国紙、さらにテレビ局などにも取り上げられるようになりました。

①と②を地道に続けながら、メディアが取り上げたくなるような情報に加工した情報を、②の担当者にマメに発信することです。たとえば…

「今年、阿智村の『日本一の星空』を見るために、10万人が来場!」

メディア会社の担当者が「この分野は、この人からの情報が役立つ。手間と時間をかけてでも話を聞く価値がある」と思われるようになると、しめたもの。メディアで情報が掲載されるようになります。

正しい方向を決め、具体的な活動を地道に続けることが王道なのです。

   

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それは「日本特有の問題」ではなく「アナタの組織の問題」です

色々な方々から、こういうご相談をよくいただきます。

「これって、日本特有の問題ですよね」

たとえば「なかなか意見を言えない、言わない」「情報や不祥事の隠蔽」「新しいことに挑戦しない」。これらをすべて「日本特有の問題」で一括り。言外に(だからどうしようもないんですよ…)というニュアンスを匂わします。

東京電力・福島第一原発事故でも、黒川清委員長は事故報告書にこんな言葉を残しています。

「根本原因は日本文化に深く染みついた慣習──盲目的服従、権威に異を唱えないこと、『計画を何がなんでも実行しようとする姿勢』、集団主義、閉鎖性──のなかにある」

私は、これらはすべて真の原因から目を背けて、見たくないモノを見ようとしていない、「単なる言い訳」だと思います。

真の原因から目を背けている間は、問題は解決できません。

2018年刊行の著書”The Fearless Organization” (邦訳『恐れのない組織』英治出版)で「心理的安全性」という概念を提唱した組織心理学者のエイミー・エドモンドソンは、福島第一原発の事故報告書についてこう述べています。

「黒川が挙げた『深く染みついた慣習』は、いずれも日本文化に限ったものではない。それは、心理的安全性のレベルが低い文化に特有の慣習だ」

(エドモンドソンが提唱する「心理的安全性」については、東洋経済オンラインに寄稿した記事に詳しく書きましたのでご興味ある方はご一読下さい)

確かに中根千枝著『タテ社会の人間関係』や山岸俊男著『日本の「安心」はなぜ、消えたのか』にあるように、日本文化は特有の性格を持っています。しかしそれは様々な性格を持つ人間がいるのと同じであり、単なる「性格の特徴」でしかありません。

日本文化特有の性格を活かして好業績を上げ続ける企業もあります。トヨタはその筆頭でしょう。

トヨタは生産現場で問題があれば一作業員でも製造ラインを止める権限を与えられています。ボトムアップで社員の力を引き出し、積極的に失敗と改善策を見つけるトヨタ生産方式(TPS)も、かつて「日本型経営」と呼ばれていました。そしてこのTPSは、古いGM工場 + 元GM米国社員で構成されたGMとの合弁工場NUMMIでも見事に稼働して、生産性を大きくアップしました。いまやTPSは中国、東南アジア、欧州の工場でも現地社員により実践されています。日本型経営と言われたTPSは、世界的に普遍性があったのです。

「これは日本特有の問題だ」という単なる言い訳が、現在の日本企業の閉塞状態を生んでいるのです。

あまり精神論の話はしたくないのですが、この問題の本質は「やる気」の問題です。

日本特有の問題はありません。
その組織(=企業)に特有の問題があるだけなのです。

   

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お客様の声、聞くべきか? 聞かないべきか?


永井経営塾ライブで、獺祭を製造・販売する旭酒造の桜井会長にご登壇いただいたときのこと。桜井会長はこのようにおっしゃいました。

「お客様の声は、聞かないんですよ」

一見、常識外れに聞こえますが、お客様は「辛口がいい」「やっぱり自分は甘口だな」「美味しさよりも安い方がいい」というように色々なことをおっしゃったりします。こういう話を一つ一つ聞くと、酒造りがブレます。だから桜井会長は、あえてお客様の意見を聞かずに、自分たちが「これが最高のお酒」と納得できるお酒造りを追求しているのです。

このようなお話しを紹介すると、こう思う人もおられるかもしれません。

「なるほど。お客様の声は聞かなくてもいいんだな。やはりいい製品づくりに邁進しよう」

実は「お客様の声を聞かずにいい製品づくりに邁進する」という姿勢は、必ずしもあらゆる状況で正しいわけではありません。

日本酒のように、お客様に価値を提供する単体製品で「美味しさ」というシンプルな評価基準がある場合は、「最高の製品づくりを追求する」という姿勢が成功のカギです。

また全く新しい商品を創り出す時は、お客様の声は参考になりません。アステリアの平野社長も、永井経営塾ライブに登壇された時に「お客さんの声は聞かないで、先を見据えて自分たちが必要だと信じた商品を開発しますね」とおっしゃってます。

一方で、パナソニックの樋口泰行専務は日経ビジネスのインタビューでこのように語っています。

「2018年春ごろから、パナソニックはソフトも重視しなければ生き残れないことを社長の津賀一宏に言い続けてきました。…例えばソリューションビジネスでは、顧客から相談を受けた後でコンサルティングをして、システムを構築していくという流れです。ただし国ごとにビジネススタイルが異なるため、ノウハウを一朝一夕に蓄積することは難しい。この感覚は、いい製品さえ作れば、国境を越えて販売していけるというビジネスを経験してきたパナソニックの幹部には理解しづらいのです」(日経ビジネス 2021/10/25号)

現実に多くの製造業がサービス化しています。「製造業のサービス化」という流れです。たとえばGE。長年ジェットエンジンを製造していますが、今やジェットエンジンにセンサーを付けてモニタリングすることで、性能や故障を事前予測し、エンジンの稼働率向上を支援するサービスを提供しています。エンジンの稼働率向上は、顧客である航空会社の収益に直結します。

樋口専務がおっしゃっているのは、このようなソリューションビジネスでは、こちら側ではなかなかわからないお客様の課題把握が、成功のカギになっているということです。

そして残念ながら、お客様の課題について思い違いをしていることも多いのです。そのような場合は、お客様の声をちゃんと聞いて理解する必要があります。

ちなみに「全く新しい商品を開発する時は、お客様の声は聞かないですね」とおっしゃるアステリアの平野社長も、商品を出した後はお客様の声を真剣に聞いています。

ものづくりメーカーでも、今や好むと好まざるとに関わらずソリューションビジネスの分野に足を踏み入れています。しかしものづくりの成功体験が邪魔をして、本来はお客様の話を聞かなければいけないのに、お客様の話を聞こうとしないところに、ものづくりメーカーが陥っている低迷の原因があるのかもしれません。

  

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「うちは倍の16時間働く」の日本電産永守会長が、残業ゼロ宣言した理由

私は会社員時代、いわゆる「モーレツ型」といわれる上司の下で働いたことが何回かあります。

ビジネスで大事なことを色々と教えていただきましたが、一方で反面教師的なことも学びました。

モーレツ型上司に共通するのは「仕事は時間をかけて丁寧に仕上げるべきだ。時間は潤沢に使える」と信じ込んでいること。モーレツ型は抱える仕事量も多いので、残業でこなすしかありません。当然ながら部下の仕事も増えます。かく言う私も若い頃は「これが正しい」と信じ込んでいたので、徹夜もよくやっていました。

しかしある時、ふと気付きました。

「考えてみると、やらなくていいムダな仕事も随分やってるな…。それに時間をかけたからって、仕事のクオリティもたいして上がるわけでもないな…。時間をかけりゃいいって訳でもなさそうだ」

そこで考え方を変えました。

「『本当に必要な仕事は何か』を考えた上で、やると決めた仕事で求められる成果が何かを把握して、時間内に仕上げよう」

こうして残業はなくなり、仕事の品質も向上しました。

その後、管理職になって業務は増えましたが、就業時間外で「100円のコーラ」シリーズを執筆し、合唱団幹部の事務局長の仕事をし、毎日ブログを執筆し、月1回の朝活勉強会の運営もこなしながらも、睡眠時間も取れるようになりました。

超モーレツ型で知られる日本電産の永守会長が「残業ゼロ宣言」をしたのも、同じことだったようです。

永守会長は「松下電器が1日8時間働くなら、うちは倍の16時間働く」と考え、土日も休まず働くことで有名でした。しかし2016年に突然「2020年までに残業ゼロを達成する」と宣言し、大きな話題になりました。

しかし「ハードワークは止めよう」と考えたわけではありません。むしろその逆です。

永守会長が「残業ゼロ宣言」をしたきっかけは、買収したドイツの会社の生産性と比べて、日本企業の生産性がほぼ半分だと知り、衝撃を受けたこと。彼らは残業せず、夏休みも1ヶ月取りながら、利益も出していました。

こうして永守さんは「生産性が低いまま長時間働くことが問題だ。生産性を2倍に上げて、残業しないようにしないと、日本は世界で勝てない」と気がついたのです。

長時間労働でハードワークをするのではありません。
生産性を2倍にして、残業ゼロでハードワークをするのです。

「残業ゼロ=ハードワークしない」と考えがちですが、これでは競争力は落ちる一方。

「でも、どうすればいいの?」と思われるかもしれませんね。

試しに大量の仕事を抱えている日に、「今日は全部の仕事を定時までに片づけて帰ろう」と頑張ってみて下さい。意外と全部片づけられるものです。ただ夕方にはグッタリ疲れていると思います。人間、本気で集中できるのは一日8時間程度が限界なのだと思います。

しかしこれが出来るのならば、同じ事を毎日できるはず。まずはやってみましょう。

  

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「は? QB…って何?」という美容師さん

知人(女性)が美容室で体験した話です。美容室で髪をカットしてもらっている最中に、美容師さんからこう聞かれました。

「ご主人、最近いらっしゃらないですね」

かつて知人の夫は、その美容室の常連でした。その美容室は腕も確かでサービスもよかったのですが、予約制で、カットに1時間かかります。

知人の夫は多忙なビジネスマン。「1時間もかかるのは嫌だな」と思っていた数年前、自宅近くにQBハウスができました。10分でカットできます。どうもカットの品質もいいようです。(ちなみに料金は1200円)

彼が試しに近所にできたそのQBハウスで、以前美容室でカットした直後の写真を見せて、「こうして下さい」をお願いしてカットしてもらったところ、十分に満足いく仕上がりだったそうです。

その後、彼はQBハウスでカットするようになりました。店を変えた最大の理由は、1時間かかっていたカットが10分で済む点と、美容師さんとの煩わしい会話をせずに済む点だったそうです。

さて、美容師さんに聞かれた彼女は、正直にこう答えました。

「最近、QBハウスでカットしてますよ。結構忙しいので、家の近所だし、カットが10分だからいいそうですよ」

「は? QB…。それってなんですか?」

「10分カットの散髪屋さんですけど」

「はぁ…」

美容師さんは(よくわからない話ね)と思ったようで、別の話題を話し始めました。その美容師さんは、美容師を数十名抱える美容室チェーンで、その店を任された店長さんだったのでしたが、どうもQBハウスを知らなかったようです。

私はこの話を聞いて、こう思いました。

「色々な意味で、この店、ちょっとヤバいんじゃないかなぁ」

まず、美容師さんがQBハウスを知らない点。その美容室は男性もカットしています。多くの男性客は、知人の夫のようにQBハウスも選択肢に入れてカットする店を選んでいます。QBハウスはその美容室のかなり強力な競争相手なのです。しかしその強力な競争相手を、店長である美容師さんは認識していません。

もう一つは、知人が「10分カット」と言った時点で、全く興味を失っている点。

この美容師さんは、恐らくこう考えているのではないでしょうか?

「は? 10分カット? そんなQBなんとか言うのなんて、敵じゃないわ。だって10分カットって、髪を切るだけでしょ。ウチの美容室の方がずっとサービスが豊富だし。ウチはカットだけじゃなくって、シャンプー、整髪、マッサージ、ドライヤーの仕上げもあるし、マッサージも念入りだし、お客様との会話も気をつかっているわ」

確かに店が提供するサービスだけを比較すると、確かにQBハウスは一見はるかに見劣りします。しかしこれは機能中心にサービスを見ているからです。言い換えれば製品中心の視点で見ているのです。

顧客である知人の夫から見ると、まったく違う風景が見えてきます。

「あの美容院、確かにサービスは素晴らしいんだけどね…。シャンプーとか整髪とかは過剰サービスで、いらないんだよね。疲れているから寝ていたいのに、話しかけられるのも面倒だし。そもそも予約しなきゃいけないとか、1時間もカットにかかるとか、ほんとカンベンして欲しい。QBハウスなら、好きな時に行って10分でカットできるから、もし料金が高くても、こっちの方がいいね」

知人の夫の視点は、顧客中心の視点です。

どんなに店がゴージャスで高級サービスを提供していても、顧客中心視点がなければ、お客は質素でも顧客中心の店を選ぶのです。

自分が気がつかないうちに、美容師さんのような製品中心の視点で考えている人は、私も含めて、意外と多いかもしれません。気をつけたいですね。

  

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本気でお客様を考えれば、自ずから最強のマーケティングになる

先週土曜の朝は、月1回の永井経営塾ゲストライブ。獺祭で有名な旭酒造の桜井博志会長にお話しをお伺いしました。

冒頭、桜井会長は「ウチはマーケティングやらないんですよ」。「マーケティング=販促」とお考えだったのでこのご発言だったのですが、実は桜井会長は最強のマーケターでした。

社長就任の1984年に9700万円だった売上を、社長退任の2016年に108億円と100倍以上にした桜井会長の挑戦は、先週のブログでも書きました。

ゲストライブでは素晴らしいお話しを沢山伺いましたが、その中の一つがチャネル戦略です。

獺祭が世の中で急に人気になった時のことです。どの酒屋も品薄になって品切れするようになりました。品薄で人気な状況だと、登場するのが転売ヤー。定価の3〜4倍で売られるようになりました。

「獺祭を飲みたいお客さんが、こんな価格で買わなければいけないのは問題だ」

そう思った桜井会長は、問屋に「獺祭はもっと出荷できます。品薄の酒屋に獺祭を卸してもらえませんか」とお願いしました。すると問屋は「他の造り酒屋さんとのお付き合いもあるので、獺祭だけを売るわけにはいきません」とやんわり断られました。

でもこれでは、困りますよね。

そこでこれをきっかけに、桜井会長は旭酒造で、問屋を通さずに小売店と直取引を始めました。当時の日本酒業界では、小売店との直取引は非常識でしたが、今では造り酒屋と小売店の直取引は一般的になりました。

桜井会長は、「流通と生産者の間には、どうしても溝があるものです。そこで必要なのは、どうしたらお客様に一番快適にモノをお届けできるかを、一緒に探ること。よく私が酒屋さんに申し上げているのは、『ウチとあなたはイコールパートナーです。お客様は、お酒を飲む人たちですよね。だからお客様にお届けして両者が利益を出せるようにしましょう』と言ってます。ちょっと偉そうかもしれませんけどね」とおっしゃっているそうです。

でも普通に考えると「お客様=消費者」は当たり前ですよね。ですので、もしかしたら桜井会長の「お客様は消費者です」というお話しは、流通ビジネスに関わっていない方には、「それって当たり前じゃないの?」と思われるかもしれません。でも、現実にはそうなっていないことがとても多いのです。

数年前に、私がある食品メーカー関係者が集まる会で講演を行い、その後に懇親会をした時のこと。ある食品メーカーの部長さんからお叱りをいただきました。

「永井さんは『価値で勝負しろ』っておっしゃいますが、私に言わせればそれって理想論です。現実は値引きばかりですよ」

そこで、私はこんな質問をさせていただきました。

「なるほど…。ところで御社の商品の品質はどうなんでしょうか?」
「絶品ですよ。いまの人は本物を知りません。ウチの商品を食べると、皆が驚きますよ」
「御社の商品は本物で美味しいのに、値引きする理由は何ですか?」
「あれ…。うーん、そう言えば……ナゼナンダロウ……」

詳しくお話しを伺うと、部下のセールスの方々は、消費者にはほとんど会わないそうです。普段の商談相手は問屋。この会社のセールスにとって、「お客様=問屋」なのです。このようなメーカーって、意外に多いのですよね。

桜井会長は、チャネル関係者を巻き込み、パートナーとして、一直線で消費者に価値を提供しています。

ハーバードビジネススクールで、V・カストゥーリ・ランガン教授という流通チャネルの専門家がいます。ランガン教授はこうおっしゃっています。

「チャネル戦略のすべての始点は、顧客ニーズだ。チャネルメンバー全員が一体となり、レーザービームのように消費者に焦点を当てて、顧客価値最大化を考え、顧客ニーズを満たすためにチャネルを構築せよ」

桜井会長が行っていることは、まさにランガン教授が提唱するチャネル戦略を実践しておられることがわかります。

ただ意外なことに、桜井会長はマーケティング理論は学んだことはないそうです。

桜井会長の全て活動の出発点にあるのは、「より美味しいお酒を、お客様にお届けしたい」という強い想いです。

桜井会長のお話しをお伺いして、マーケティングとは決して複雑なことではなく、「本気でお客様を考えれば、自ずからマーケティングになる」というとてもシンプルで単純なことであることが、改めて実感できました。

そしてこのシンプルで単純なことを、徹底的に首尾一貫して実践し続けられるかどうかが、私たちに問われているのですね。

  

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常識を疑い、売上9700万円から100倍以上に成長した獺祭・旭酒造

先日、獺祭で有名な桜酒造の桜井博志会長が書かれた著書「獺祭の口ぐせ」を読み感銘を受けました。

桜井会長はお父様が亡くなられた1984年、旭酒造の社長を継ぎました。この時、売上9700万円。しかし2016年の売上は108億円。なんと100倍以上の成長です。日本酒業界は1973年をピークに売上規模が1/3に縮小していることを考えると、これは凄いことです。

あえて一言で言えば、これは「お客様が幸せになる酒造り」「もっと美味しいお酒をお客さんにお届けしたい」を出発点に、あらゆる業界の常識を疑ったこと。同社のあらゆる活動は、この出発点に繋がっています。

旭酒造が行っていることは、業界の常識を大きく外していることがとても多いのです。

たとえば日本酒造りは、酒造りの最高製造責任者である杜氏(とうじ)が中心になって行うのが常識です。しかし旭酒造には杜氏がいません。

桜井会長が社長に就任した時、酒造りに色々と口を出すほうでした。高品質な酒造りを求めたからです。しかし旭酒造がある事業で経営危機に陥った時、杜氏は会社に見切りを付けて辞めてしまいました。そこで桜井会長は「自分たちで酒を造ろう」と考えました。

杜氏は60〜70代が多いのですが、この時に同社で酒造りに挑戦したのは、桜井会長以外には4人。全く酒造りに経験がない若手社員ばかり。そこで精米、洗米、蒸米、麹作り、仕込み、上槽、瓶詰めといった酒造りの各プロセスの様々な情報をデータ化。酒造りを徹底的に「見える化」しました。そうして作った日本酒は吟醸酒らしい香りが出ました。「今にして振り返れば、杜氏に逃げられてよかった」と桜井会長はおっしゃいます。

また従来の日本酒造りの常識は、冬場に行われるものでした。しかし獺祭を仕込む旭酒造では、四季醸造。発酵室は365日24時間、5度に保って、春夏秋冬どの季節も同じ環境で酒造りをしています。「勘と経験」に頼らない酒造りのおかげで、純米大吟醸を安定的に通年で造ることができるようになりました。加えて需要変動にも柔軟に対応できるようになりました。

こうして獺祭は徐々に人気になってきましたが、品薄になることが増え、取引がない店で獺祭が定価の3−4倍の価格で売られるようになりました。「獺祭を飲みたい」というお客さんに商品がスムーズに届かなくなってしまったのです。

問屋が獺祭を積極的に売らなくなったためでした。一つの理由は、問屋は一つのブランドが突出して売れると、他の酒蔵から文句を言われるために、都合が悪いこと。そこで旭酒造は問屋を通さずに、直接小売店とお付き合いするようにしました。すると小売店は取引を維持してくれただけでなく、逆に多くの注文がはいるようになり、販売が増え、品切れの問題は徐々に解消に向かいました。

一升2500円という値付けも、お客様視点で決めました。居酒屋で2000円でお酒を飲むには、お酒はとっくり2本で1000円に抑える必要があります。一本(0.8号)で価格500円にするには、0.8合の原価を200円にする必要があります。だからまず一升2500円という価格を先に決めました。

このような桜井さんの様々な戦略は、

「お客様が幸せになる酒造り」
「もっと美味しいお酒をお客さんにお届けしたい」

これが出発点なのです。

市場規模が1/3に縮小する中、徹底的な顧客目線で常識を根本的に疑って、100倍以上に成長した旭酒造を見ていて、感じることがあります。

伝統に固執し、低迷する業界は、逆に大きなチャンスが眠っている。

そのような業界では、多くの場合、顧客目線を失っています。 その古い常識を見直して、新しいことをやれば、大きく成長できるのです。

これは、まさに今の日本で求められていることだと思います。

10月23日(土)の永井経営塾のゲストライブでは、その旭酒造の桜井博志をお招きして、1時間お話しを伺う予定です。永井経営塾の会員の方は、ぜひご参加ください。桜井会長へのご質問も大歓迎です。

  

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AIで、店舗の出来事を全て把握できるか?

先週水曜朝の朝活永井塾は「ショッピングの科学」でした。テキストはパコ・アンダーヒル著「なぜこの店で買ってしまうのか ショッピングの科学」です。

ショッピングの科学とは、買い物客が購入したくなるように店や商品を変えていく考え方です。著者のパコさんは、店舗で何が起こっているのかを調査員に全て記録させ、膨大な記録を分析し、商品を買うヒントを炙り出します。このためパコさんは「ショッピング界のシャーロック・ホームズ」とも評されています。

たとえばパコさんが会社を創業した頃、こんな話がありました。

百貨店の入口で買い物客を観察していました。特に人通りが多い所にネクタイ売場があったのですが、パコさんは、ネクタイの品定めをする客が後ろから他の客に少し押されると、そこでネクタイ探しを諦めることに気がつきました。売り場の売り上げも低い状態でした。

そこでパコさんは「売上が低いのは、尻がぶつかるからだ」と報告。驚いた店長が、即刻ネクタイの棚を移動したところ、売上は急上昇。パコさんは、後ろから押されると買い物を諦めるこの現象を「尻こすり効果」と名付けました。

朝活永井塾では、このショッピングの科学について、様々な事例を交えてご紹介しました。するとプレゼン後のQ&Aで、こんな質問をいただきました。

「最近はAIのおかげで、店舗の色々なことがわかるようになりました。AIの登場で、ショッピングの科学は変わるのでしょうか?」

今回は、この時にお答えした内容をご紹介したいと思います。

確かにAIカメラやスマートショッピングカートの登場で、店舗内のお客さんの様々な行動がわかるようになりました。しかしながら、「尻こすり効果」のような現象をAIが発見できるかどうかは、まだ難しいのではないかと思います。

パコさんは「ショッピング界のシャーロック・ホームズ」と呼ばれていますが、仮にAIに名探偵ホームズが持つ様々なデータを読み込ませて、ホームズと同じ結論を導き出せるかというと、恐らくムリでしょう。なぜなら、ホームズは膨大な知識を元に様々なデータの相関関係を読み解き、さらに直観を働かせて仮説を導き出しているからです。そして導き出した仮説を容疑者や関係者にぶつけて検証し、真犯人をあぶり出します。

おそらくショッピングの科学も同じです。データを元に仮説を考えて検証するのは人間しかできません。

一方で「ショッピングの科学」の作業の中で、AIやITが代替できることもあります。たとえば従来調査員が手間をかけて行っていた店舗の入店人数や性別・年齢層・店内の導線などの記録作業は、AIが自動的に記録してくれるようになるので、人手が大幅に削減できる可能性があります。おかげで、人間は仮説を考えて検証する作業に集中できるようになります。

このように考えると、AIのおかげでショッピングの科学はさらに進化していくのではないかというのが、私の結論です。

皆様はどのように考えますでしょうか?

  

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経営陣が悪い戦略を指示してきた。マネジャーはどうする?

先日のオンラインセミナーで、「良い戦略、悪い戦略」(ルメルト著)をテーマにお話しをところ、こんなご質問をいただきました。

「自社の経営陣が悪い戦略を指示してきた時、現場部門の管理職はどのように行動すればいいのでしょうか?」

講義の時にお答えした内容と、その後に考えたことをまとめたいと思います。

まず良い戦略と悪い戦略について、ザックリご説明します。(講義では数十分かけてご説明したのですが、さわりの部分です)

良い戦略は、単純明快です。非常に複雑で錯綜している状況の中で、1つか2つの決定的要素を見極め、狙いを絞り込んで、全リソースを投入し、首尾一貫した行動で攻めます。

ただ単純明快ですが、考え抜くことが必要です。

ルメルトが良い戦略の例として紹介しているのが、1805年の英国海軍の戦い。この時期、欧州を制覇したフランスのナポレオンは英国侵攻を計画し、英仏海峡で物量に勝るフランス・スペイン艦隊が、英国艦隊と戦うことになりました。この艦隊決戦で英国が負けると、港で待ち構えている35万人のフランス軍が、一気に英国本土に上陸します。

海戦では物量に勝る艦隊が圧倒的有利です。英国、絶体絶命です。

ここで英国海軍のネルソン提督は、従来の艦隊決戦の常識を覆し、「少数の艦隊で敵の真ん中を突き破る」というシンプルな戦略を立てました。「敵の練度は低いし、当日は荒波なので、正確に打てない。先頭は危険だが、被弾は少ないはず」と考え抜いた末の結論です。

結果は、英国艦隊の大勝利。英国は危機を脱しました。ただ、先頭で戦い続けたネルソン提督は銃撃で戦死。亡くなる際に、ネルソンは兵士たちへの感謝の言葉を述べたそうです。ネルソンは英国の歴史上、祖国を救った英雄になりました。

このネルソンの戦略は、良い戦略の代表例です。

一方で悪い戦略は、一言で言うと狙いが絞り込めていません。たとえば、目標と戦略を取り違えている(例:「当社の戦略は売上1兆円達成。皆で頑張りましょう」)。あるいは、重要な問題を無視する(例:各部門に資料を作らせて立派な戦略資料を作ったけど、資料のどこにも問題や解決策が書いていない)。こんな戦略で成功する訳がありません。

そこで冒頭の話に戻ります。ご質問の内容は、「では経営陣が悪い戦略を指示してきたら、どうすればいいのか?」ということです。

まず最もダメな方法は、「そんな戦略、ぜんぜんダメです。こっちの方がいいですよ」というパターン。これでは何も解決しません。その上、お声もかからなくなります。(ちなみにこれ、私が若い頃によくやらかしていたパターンでもあります。今から思えば、とてもイタい奴でした)

経営学者アダム・グラントは、ハーバード・ビジネス・レビュー2021年8月号への寄稿論文「耳を貸さないリーダーに聞く耳を持たせる方法」で、アップルのジョブスを取り上げて一つの解決策を示しています。

ジョブスは頑固で気難しいことで有名です。実はiPhoneについても、何年間も「携帯電話は絶対に作らない」「スマホなんてダサいオタクの持ち物だよ」と言い続けて反対でした。

しかしiPhone開発チームは真正面から衝突しませんでした。その代わり、粘り腰で様々な質問をジョブスに投げかけて、ジョブスが「これはボクのアイデアだ」と思えるように働きかけたのです。

まず反対するジョブスに対して、部下たちは「確かにスマホ、ダサいですよね。でもアップルが携帯電話を作れば、美しく洗練されたものができるんじゃないですか?」と言ったり、「いずれウィンドウズを搭載した携帯電話が登場するのでは?」とジョブスのマイクロソフトへの闘争心を刺激しました。

その一方で秘かに試作品を作ってジョブスにデモしたり、デザインを練り直したりして、少しずつジョブスが賛成するように変えていきました。

一方でアップルが携帯電話ビジネスをするには大きな問題がありました。当時、通信会社が圧倒的に携帯電話メーカーに強い影響力を持っていました。彼らの言いなりになっていると、中途半端な携帯電話しか作れません。

そこでチームメンバーがジョブスにこう問いかけました。
「携帯電話会社に、こちらの希望を飲ませることなんてできますかね」

考えるジョブスに対して、チームリーダーがこのように畳みかけました。
「強力な製品があれば、こちらの言い分を全て相手に認めさせて、問題が一掃できるはずですよ」

iPhone開発チームは、時間をかけて様々な質問をジョブスに投げかけながら、ジョブスが「iPhoneはボクのアイデアで、ボクが育てたんだ」と考えるようにしたのです。ジョブスが強い当事者意識を持てるようにしたわけですね。その後のiPhoneの大成功は、ご存じの通り。

経営陣が悪い戦略を立てた場合でも、「真正面から敵対せずに、様々な質問を投げかけていく」というこの方法は有効だと思います。

必要なのは、忍耐力と強い当事者意識。じっくり時間をかけて、悪い戦略を良い戦略に変えていきたいものです。

 

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「努力はダサい」という言葉を本気にするな

「努力なんて、ダサいよ」
「努力はムダ」
「努力は最小限に。ラクしよう」

世の中にはこう言いながら、なぜか成功している人がいます。
彼らの言葉に騙されてはいけません。

彼らは、たしかに自分がイヤなことは絶対にしません。しかし実は努力はサボっていないのです。「自分が楽しい」と思う分野に絞り込み、努力を努力と感じることなく楽しんでいます。

ちょうど野球少年が毎日、日が暮れるまで夢中で練習するのと同じです。このことをウケのいい言葉で語っているにすぎません。こんな言葉を真に受けて、「努力しないでいいのか」と勘違いして、何もせずにいると、あとで痛い目に遭います。

人間の優劣は、どれだけ努力してきたかで決まります。
財産は親から譲り受けることもあります。
しかし知識やスキルは、他人から買い取れません。努力して自分で身につけるしかありません。すべては、自分で自分をどう支配するか次第です。

イチローや大谷翔平を天才と呼ぶ人は多いですよね。
野球少年だった彼らは、日々努力を重ねて世界的プレーヤーになりました。
「天才」と称賛される人物は、例外なく努力家です。

イギリスの著述家・サミュエル・スマイルズは、150年前に書いた著書『自助論』でこう述べています。

「世界に多大なる影響を与えた人間を見ても、……生まれつき聡明で輝かしい素質を備えた人物は数少ない。むしろ、並の能力にもかかわらず、ねばり強く努力と研究を重ねた末に名声を得た者のほうが多い。いくら才気あふれた人間でも、移り気で忍耐力に欠けていれば、才能に恵まれなくてもひたすら努力する人間には負けてしまう」

才能ある人が、気が向いたときだけガーッとやっても積み重ね効果を得られずに、意外と伸びません。成功するのは、才能がなくても毎日コツコツ愚直に積み重ねる人です。ひたすら積み上げることで、気がつくと、ものすごい量の努力の蓄積で成功に導かれます。

愚直に積み続けることで、時間を味方に付けることができるのです。

好きな分野で、努力を続けましょう。

 

 

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演じても、すぐバレる理由

人間には他者のわずかな感情や行動の表現を読み取る仕組みが備わっています。

瞬時かつ無意識に、他人の行動や感情に対して脳が反響するのです。

他人の笑顔を見ると無意識にこちらも笑顔になったり、つくり笑いを見ると無意識に不快な感じがしたりするのもこのためです。他の誰かが感情を押し殺し怒っていると、自分では気づかなくても血圧が上昇することもあります。

これは共鳴(レゾナンス)と呼ばれるプロセスです。

リーダーの中には「自分は完璧で、知的で、強いリーダーだ」とムリに見せようとする人がいます。しかしそんな人に対して私たちがビミョーな違和感を覚えるのも、この共鳴のおかげです。

私たちは相手を一瞬見るだけで無意識に本心を偽っている人がわかるのです。要は「ウソはすぐバレる」ということです。

逆に弱みを隠そうとしないリーダーと接すると、私たちは「この人はウソを言わない。誠実で信頼できる人だ」と敏感に察して、心地よさを感じるようになります。そして部下は、そんな上司を思い浮かべるだけで、ポジティブな感情がわいて絆も感じるようになります。

もちろん「弱みしかない」のリーダーはちょっと考えものです。しかしどんなに強い人でも必ず弱さはあるもの。その弱さは、必ずしも隠し続ける必要はない、ということです。

演じていても、すぐにバレます。 一方で首尾一貫した言動をする人に対しては、人は信頼感を持つようになります。 そのためにも、常に率直なコミュニケーションを心がけたいものです。

 

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チャネル戦略で、大きな差が付く

ある日本を代表するメーカーは、海外進出の販路確保のために数千億円を投資し、海外販社を買収しました。

しかし買収で難しいのが、買収後に買収した会社を自社に統合する作業。全く違う企業文化や社内業務、人事施策を持つ会社が一緒になるのはなかなか難しいものです。

このメーカーは数千億円を投じたものの、買収後の統合が上手くいきませんでした。結果、数千億円を投資したにもかかわらず海外進出は頓挫。会社は大きな損失を出しました。

世の中の買収は「成功確率は半分以下」と言われており、そもそもリスクが高いのです。

しかしここで「自社で販路を持とう」ということに固執するのはやめて、マーケティング発想で「自社で売らずに売上を拡大しよう」と考えれば、新たな可能性が見えてきます。

それは、チャネル戦略を考えること。

たとえば通信機器大手シスコシステムズは、優れたチャネル戦略で成長してきました。

創業直後は直販9割でしたが、付加価値再販業者(VAR)と呼ばれる販売パートナー経由で売上の9割をあげるようになりました。

そのシスコは、当初売上が大きな販売パートナーに対して値引率を高く設定していました。売れば売るほどシスコからの卸値が安くなり儲かるわけです。これでシスコは成長しました。

しかし2001年、ITバブルが崩壊して市場が縮小。同じシスコの販売パートナー同士で、売上を伸ばすために値引き合戦をするようになってしまいました。これってパートナー同士は消耗戦ですし、顧客も一見安くなりますがサポートレベルは下がりかねません。長期的に見てシスコも困ります。

そこでシスコは売上で販売パートナーの値引率を高くするのはやめて、新技術スキルを積極的に獲得する販売パートナーの値引率を高くするようにしました。

この結果、3年後には自社も販売パートナーも業績は回復しました。

シスコは、販売パートナーを育てる優れたチャネル戦略を構築し、常に変革し続けることで業績をあげたわけです。

日本から海外へ進出するメーカーの中にも、進出先で現地に合わせた優れたチャネル戦略を構築し、成果を挙げている会社もあります。

マーケティング戦略の中で、つい疎かになりがちなのがチャネル戦略です。

後回しにされがちな理由の一つは、チャネル戦略には利害関係者が多いためです。

たとえばシスコのように販売パートナーに「これから売上での値引きはやめて、新技術スキル獲得での値引きに変えます」と言ったりすると、販売パートナーから…

「儲けが減るじゃないか!」
「変えられると困るんだよ!」
「これまでのお付き合い、何だったのよ!」

というクレームが殺到しがちです。

そこで問われるのが、顧客価値最大化のために、

「それでもやる!」

という、迎合しない断固たるリーダーシップです。

ちなみにシスコが先に書いたチャネル戦略を変革した時は、販売パートナーの半分がパートナーを辞めてしまいました。しかし3年後、残った販売パートナーの運転資本利益率は3倍増。顧客満足度も大きくアップしました。「顧客の価値最大化」に賛同して新技術に投資したパートナーは利益を大きく上げ、顧客もそのことを高く評価したわけです。

後回しにされがちだからこそ、チャネル戦略はやる気次第で一気に差が付くのです。

明日9月8日(水)の朝活永井塾のテーマは、このチャネル戦略についてです。今回も多くの方々と、このテーマについて一緒に考えていきます。

 

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一番乗りを目指すな。後発を目指せ

多くの起業家は一番乗りを目指します。しかし「これは間違い」という研究があります。

組織心理学者のアダム・グラントは著書「ORIGINALS」で、マーケティング研究者ピーター・ゴールダーとジェラルド・テリスが「先発企業」と「後発企業」を比較した研究を紹介しています。

彼らが30以上のカテゴリーで数百のブランドを分析した結果はこうなりました。

■先発企業は、失敗率が6倍
先発企業…47%
後発企業…8%

■生き残った場合、後発企業の市場占有率は3倍近い
先発企業…10%
後発企業…28%

なんと先発企業は失敗率が後発企業よりも6倍高い上に、生き残ってもシェアも1/3に留まります。

先発企業でも、iPhoneのように大成功することもあります。「iPhoneは大成功した。だから一番乗りがいいんだ」と思いがちです。しかしこの研究が示しているのは、「市場全体を見た場合、確率的に言うと後発の方が圧倒的に有利」ということです。

先発者は未知の分野ですべてを自分で試行錯誤して学ぶ必要がある上に、市場参入時期が早すぎると失敗します。リスクは非常に高いのです。対して後発企業は先発者が試行錯誤した結果を学べます。タイミングも見計らえます。Googleもネット検索で13番目の後発でした。

一番乗りにこだわりすぎると、失敗するということです。
要は「顧客が求めるベスト・タイミングで、他よりも優れていればいい」のです。

「既に先発企業がいるから、この市場は諦めよう」と早々に結論を出さずに、じっくりとその市場を観察することが必要なのです。

 

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マネジャーは自分不在でも成功する仕組みを作れ

サラリーマンが独立して陥りがちなのが、仕事を全部一人でかかえて疲弊すること。

近所に店長一人で切り盛りするカフェがあります。ランチが美味しいのでよくテイクアウトをしていました。ある日、テイクアウトしようと行ってみたら、なんと「来月で閉店」という張り紙。妻がお気に入りの店なので閉店は困ります。ということで店長と話してみました。

「コーヒーを入れたり軽食を作るのが好きで3年前にこの店を始めたんですが、もう限界なんです…」

店長はうなだれていました。

「今朝も早くから起きて仕込み、店を開けてお客さんに対応して閉店後は売上精算、明日の仕込みの準備をしたらもう夜10時。3年間頑張りましたが、店は休めないし自分の時間も全く取れません。お客さんに喜んでもらって、独立することで自由も手に入ると思ったんですが…。今は店を営業するのが苦痛なんです…」

起業して同じ状況に陥っている人、とても多いですよね。

こんな店長のための本があります。

「はじめの一歩を踏み出そう―成功する人たちの起業術」 (マイケル・E・ガーバー著)

初版は1986年。世界20ヶ国以上で翻訳され、累計700万部のベストセラーです。

本書のメッセージは明快です。

「自分が不在でも、成長するビジネスを目指せ」

これは店長に限らず、すべての経営者やビジネスパーソンに必要な考え方でもあります。本書は独立した経営者が陥る罠を避ける考え方を示した一冊です。

頑張っている店長が報われないのは、根本的な勘違いをしていることが原因です。

「美味しいランチが作れれば、店は成功する」

専門的能力だけでは経営は成功しません。

美味しい食事を作ることと、カフェを経営することは、全く別です。経営を始めた途端に帳簿付け、従業員の雇用、集客など、人に雇われている時は見えなかった未経験の仕事が次々と降ってきます。経営に必要な能力のうち専門的能力はごく一部です。

著者のガーバーは「スモールビジネスの経営者の中では、起業家、マネジャー、職人という3つの人格の争いが起こっている」と言います。

この3つの人格は、お互いに対立しています。職人は名人芸を発揮したがりますが、マネジャーは標準化したがります。

スモールビジネスの経営者で圧倒的に多いのは職人型です。まさに店長のように一人で全部かかえてしまう人です。

この職人型の人がスモールビジネスの経営者をやると、必ず行き詰まります。一人で全部やろうとするので、仕事量が増えると休みも取らずに1日18時間働いても終わらないのです。

そこで、自分は不在でも成長するビジネスを目指すべきなのです。

これは経営者を目指す現場の会社員も同じです。「自分がいないとビジネスが回らない」と考えるのが、職人思考。「自分がいなくてもちゃんとビジネスが回る仕組みを作ろう」と考えるのが、経営者思考なのです。

もちろん職人思考を続けるのも、その人の選択肢です。その方向で素晴らしい仕事をしている人も多くおられます。

一方で、職人思考でマネジャーをやっていると、いずれ必ず店長のように限界が来ます。経営者を目指すならば、自分が不在でも成長するビジネスを目指すべきなのです。

 

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マネジャーは「テコ」を使い倒せ

IBMでマネジャー研修を受けた時のこと。「マネジャーの仕事とは何か?」という問いに対する答えとして、こんな言葉が心に残っています。

「人によるパフォーマンスの最大化」
Maximize performnance through people

ビジネスパーソンで必要なのは、マネジャーになる前ならば自分自身の仕事のパフォーマンス最大化です。

しかしマネジャーになると、部下を通して実務に関わります。
だから「人によるパフォーマンスの最大化」なのです。

では具体的に、いかにこれを実現すればいいのでしょうか?

インテル創設メンバーでありCEOや会長も務めたアンディ・グローブは、名著「HIGH OUTPUT MANAGEMENT」で「テコの原理を使え」と言っています。

テコは小さな力で大きなモノを動かすことができます。マネジャーが常にテコ作用を意識して日々活動することで、部下や関係者を通じて大きなアウトプットを生み出せます。

たとえば部下から相談を受けたら、「○○さんにお願いしておくよ」
あるいは部下が悩んでいたら、「こうしたらいいんじゃない?」
さらにはチームに声をかけて、「皆で集まって考えよう」

マネジャーのこんなちょっとした仕事で、部下の仕事のアウトプットが増幅されます。

このためにマネジャーは日々情報収集を欠かさず行う必要があります。グローブは本書で自分のある一日の仕事を紹介しています。

次々と人に会い、相談に乗り、会議に出席し、電話で話し、手紙やレポートを読んでいます。一日のほとんどの活動が情報収集。話し、電話し、読み、会議に出るのは、すべてよい意志決定をし、テコを使ってチームのアウトプットを最大化する上で、貴重な情報源なのです。

私がIBMのマーケッター修業時代に仕えた部長は、仕事のことは何でも熟知していました。彼は日頃から多くの人たちとちょっとした会話をして情報収集に余念がありませんでした。そうして得た深い知識に基づいた意志決定やアドバイスは実に的確。まず間違いがありませんでしたし、ちょっとしたひと言で、いつも助けていただきました。

逆にマネジャーが仕事を抱えるとテコが効きません。組織のアウトプットも低いままです。徹底的にテコを使い倒すべきなのです。

そしてテコの原理は、部下を持たなくても使えます。他人に影響を与えることができればいいのです。

あなたはテコを使っていますか?

 

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「日本人はなぜ平気でウソをつくんだ?」と相談された話

私は外資系企業に勤務していた時、米国人の同僚から真剣に相談されたことがあります。

「なんで日本人は、上のポジションの人間でも平気でウソをつくんだ?」

これは、日本企業で近年頻発する不祥事隠しや偽装問題と深い関係があるように思います。その理由を、社会心理学者である山岸俊男先生の著書『日本の「安心」はなぜ、消えたのか』を参考にしながら、考えてみたいと思います。

日本の組織は「ムラ社会」と言われています。江戸時代、山奥の農村の田植えや稲刈りの作業は村人が総出で行いました。困った時は「おたがいさま」と助け合い、戸締まりもしません。実に安心な社会です。

農村社会では悪いことや非協力的な行動は損をします。田植えを手伝わないと、困った時に誰も助けてくれません。最悪、村八分や追放です。協力し合う方がお互いにトク。そこで農村ではメンバーを互いを監視し合い、何かあると村八分などで制裁する仕組みを作りました。

同じ村の人間ならば「同じ村の衆だから、悪さはしないだろう」と安心できます。しかしヨソ者は警戒して、場合によっては村に入れずに追い返してしまいます。ムラ社会の人間は、アカの他人を信用しないのです。理由は村八分のような制裁システムが効かないからです。

言い換えればムラ社会は「安心社会」。たとえ個人同士では信頼がなくても、社会全体では制裁システムなどで信用を担保する仕組みがある安心な社会(「同じ村の衆なら安心」)でした。その延長である日本企業も「安心社会」でした。「安心社会」は「閉鎖社会」でもあります。

一方で、私たちのビジネス環境は、20年前から激変しました。いわゆる「経済のグローバル化」です。オープンな経営が求められるようになりました。

オープンな経営が求められる米国系の社会は、都会をイメージしてみるとわかると思います。都会はアカの他人ばかりです。ですので個人同士の信頼を確立する必要があります。そのために「フェアであること」が求められるので、オープンな経営をすることになります。言い換えれば、個人同士の信頼が前提となる「信頼社会」なのです。

いまや日本企業は「信頼社会」に合ったオープンでフェアな経営が求められています。でも日本企業は「安心社会」の考え方から変わっていません。安心社会ではアカの他人を信じません。だから都合の悪い情報は身内だけに留めて隠しがちです。

一方で信頼社会の大前提は、アカの他人を信じること。だから必要な場では、都合が悪い情報もあえてオープンにします。オープンにすべき時に都合の悪い情報を隠す行為は、不誠実でウソつきの行為なのです。

冒頭の米国人同僚の嘆きも、これが理由です。日本人が都合の悪い情報を共有せずに、自力解決を図ろうとするために「ウソつき」に見えてしまうのです。この結果、責任感が強く、真面目で努力家の日本人ほどウソつきに見えてしまいます。「ウソつき」と言われた日本人には実に不本意なことです。しかしこれが現実です。

本来は信頼社会では、都合の悪い情報もチームで共有し、解決策をオープンに議論すべきなのです。

不祥事隠しや偽装問題を起こす日本企業も、都合が悪い情報を隠す点で全く同じです。安心社会から信頼社会へのマインド・チェンジができていないのです。

信頼社会で生きるには、不信を出発点にするのはNG。不信の念を排除し、まず他人を信頼すること。まずは他人を信頼しない限り、信頼社会では自分も信頼されないのです。

 

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「パワポができる奴は戦略が立てられない」?

時々、こんなことを言い放つ部長さんがおられます。

「パワポ(パワーポイント)ができる奴は、確かに絵は描けるけどさ。戦略が立てられないんだよなぁ」

もしあなたが就活中で、転職希望先でこんな管理職に遭遇したら、その会社への就職はやめた方がいいと思います。

まずこう発言する部長さんは、自分でパワポを作っていません。パソコンが使えないからです。

そこで係長か主任クラスの若手社員に声をかけて、「こんな感じでさ。パワポ資料作ってよ」と依頼するわけですが、往々にして指示は曖昧です。従って、ちゃんとした資料ができません。

出来上がった資料を見て、「うーん。なんかこれ、違うんだよなぁ」
こうして何度も資料は突き返されて作り直し。これは元々の指示が曖昧なのがいけないのです。

実はこうして作り直している間に、部下のアイデアを取り込んで徐々に資料が出来上がっています。しかし当の部長さんはすべて自分が考えていると思っています。

その結果、この発言になります。

「パワポができる奴は、確かに絵は描けるけどさ。戦略が立てられないんだよなぁ」

自分でパワポ資料が作れず、そして周囲の部長さんたちも自分で作れません。社内のオフィスにこもってそんな世界しかみていないので、こんな発言になります。

これは二つの意味で問題です。

1つ目は、とても非効率であること。
自分でパワポを覚えれば、ずっと短時間でパワポ資料が作れます。管理職の社内資料は、別に凝った資料を作る必要はなくて、ロジックがしっかりしていれば、文章の箇条書きでOK。こんな資料だったら、最低限のパワポ操作を覚えれば自分で作れます。現場で仕事を抱えて頑張っている部下の貴重な時間を奪うこともなくなります。「パワポ資料くらい、自分でサクっと作ろうよ」という話です。

2つ目は、会社全体に広がっているITリテラシーの低さ
こんな部長さんなので、Zoom会議に一人で参加するのなんてまずムリ。
デジタル発想もできません。
会社を動かしているミドルマネジメントがデジタル音痴なので、DXもまったく進みません。

会社全体が非効率で、かつITリテラシーも低いので、将来性はありません
だからこんな会社には、就職はやめた方がいいと思います。

現実には、私の周囲でしっかり戦略を考えられる実力派ビジネスパーソンは、パワポも上手です。ITリテラシーが高いので自分で作った方がはるかに速く確実に作れます。そもそも部下は現場で大事な仕事を抱えて頑張っています。部下にはその仕事に集中して欲しいわけです。

もしパワポ資料作成を部下に任せていたとしたら、そろそろ自分で作りましょう。

      

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「方針を決めた。皆で頑張ろう」は戦略ではありません

時々、こんなトップを見かけます。

「経営陣で戦略を話し合った。2030年の目標を○○○とした。みんなで知恵を出し合って頑張ろう」

えーと。あのー。ちょっと待ってください。
それって戦略って言わないんですけど。

「戦略は明確だ。○○○を達成することだ。あとは現場に頑張ってもらう」

真剣にこう考えているトップをみかけます。
しかし目標設定は、戦略ではありません。
単なる願望です。

戦略とは、その目標をどのように達成するかという方法です。

でもこう言うと…

「それはキミ、明確だよ。2023年には□□□を達成して、2025年には◇◇◇を達成、2028年には◎◎◎、そして2030年には○○○を達成するんだ。しっかり決めているよ」

と真剣な顔をして反論する人もいます。

うーん。これも違います。これは目標を細分化しているだけ。
目標をどのように達成するかは、相変わらず何もありません。

でもこれは目標を細分化しているだけ。
目標をどのように達成するかは、相変わらず何もありません。

問題は、目標と戦略を取り違えていることです。
世の中ではこれを「希望的観測」と呼びます。
「いかに目標を達成するか」をトップが考えずに、部下に丸投げしている状態なのです。

戦略とは具体的で明確なものです。

たとえば、もはや古典的な事例になりましたが、私が在籍していたIBMが破綻寸前に陥っていた時にCEOに就任したガースナーは、戦略を明確に示しました。

ガースナーに与えられた課題は、破綻寸前のIBMを復活させ、成長させることでした。

当時、IBMは大型コンピュータ主体の会社でしたが、世の中の動きについて行けずに低迷していました。当時の圧倒的多数派の意見は「IBMは図体が大きすぎる。解体すべし」でした。これを受けて、IBMも分社化の準備を進めていました。

しかしガースナーはCEO就任前にIBMの大手ユーザー企業のトップでした。彼はこう考えました。

「コンピュータ業界では、ソフト、ハード、データベース、PCなど、様々な分野への細分化が進行中だ。みなバラバラで顧客は困っている。一方でIBMは全分野に通じている。これは顧客にとっていいことだ」

その上で、彼はこう考えました。

「IBMの問題はこの総合的なスキルを活かしてないことだ。むしろ統合化を進めるべきだ。バラバラなIT製品を統合する顧客向けソリューションを提供しよう」

そこでこんな方針を出しました。
「顧客向けにオーダーメイドのソリューションを提供する」

さらにこの方針を実現するために、こんな施策を立てて実行しました。
・既存のハードウェア事業部とは別に、新たサービス事業とソフトウェア事業を立ち上げる。
・従来のIBMのタブーを破って、他社製品も取り扱いを開始する
・これまでの地域別・製品別の組織では世界で展開したい大手顧客を支援できないので、顧客別の組織へ再編する

このように本来の戦略とは、課題を解決するために、具体的で、首尾一貫しており、さらにビジネスの場合は顧客目線であることです。

改めて言うと「方針決めたので皆で頑張ろう」は戦略ではありません。

最近気のせいか、色々なところでますます多く見かけるような気がします。特に政府の発表に多い気がします。

自分たちは気をつけたいものですね。

     

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「日本人は○○だから…」という発想のままでは、日本は変わらない

2011年以来、世界の経営思想家ランキングThinkers50に選出され続けている経営学者エイミー・エドモンドソンは、著書「恐れのない組織」で日本の組織について述べています。エドモンドソンの指摘は、私たち日本人にとって実に参考になります。

たとえば彼女は本書で福島第一原発事故を詳細に分析しています。そして調査委員会の黒川清委員長が事故報告書に記した言葉を引用しています。

『根本原因は日本文化に深く染みついた慣習─盲目的服従、権威に異を唱えないこと、「計画を何が何でも実行しようとする姿勢」、集団主義、閉鎖性──のなかにある』

この報告書について、エドモンドソンは著書でこう反論しています。

「黒川が挙げた「深く染みついた慣習」は、いずれも日本文化に限ったものではない。それは、心理的安全性のレベルが低い文化に特有の慣習だ」

心理的安全性とは、集団の大多数が「ここでは何でもいえるし、心おきなくリスクが取れる」と感じる雰囲気のことです。心理的安全性がある組織のメンバーは、「ここでは率直に意見してもOK」と感じ安心して活発に議論します。

たとえばクリーンディーゼルの不正問題が起こった当時のフォルクルワーゲンは、まさに心理的安全性がとても低い組織でした。不安と脅しにより社員を恐怖で支配する組織文化だったのです。そして誰も悪い報告を上げなくなり、不正が起こりました。

また「日本では率直な発言やミスの報告を促そうとしても、徒労に終わる」という意見に対して、彼女は「トヨタ生産方式は立場の上下を問わずに全従業員に積極的に誤りを指摘することを求める。…つまり、やろうと思えばできる、ということだ」と反論しています。

エドモンドソンの指摘は、まさに慧眼だと思います。

私たちは

「これは日本特有の問題」→(だから仕方ない)

と考えがちです。でもこうなると解決は難しいですよね。

「俺ってこんな性格だからさ。仕方ないんだよ」

と開き直る、どこかの偏屈で頑固なオジさんみたいです。

しかし「人間はどこの世界でも、さほど変わらない」と考えれば、必ず解決策があります。

組織の違いを生むのは、個人の特性よりも、むしろ社会構造なのかもしれません。

確かに日本社会は他の社会とは異なる構造をしています。しかし日本以外の全ての社会も、他の社会とは異なる構造をしているものです。社会構造の違いがあるのであれば、その違いが何なのかを見極めるべきなのです。

日米で比較研究を続けてきた社会心理学者の山岸俊男先生は著書『日本の「安心」はなぜ、消えたのか』で、「日本人は米国人より集団主義だ」という常識を日米の比較実験で確かめています。実験の結果、意外なことに日本人は赤の他人を信じない個人主義者でした。社会構造がムラ社会中心だった日本人は、逆にヨソ者を警戒するのです。

一方で移民の国・米国社会も19世紀までは、日本のムラ社会のように同じ出身地や宗教の人たちが集まる集団社会でした。米国では急速な工業化でこの集団社会が失われて法制度が進み、今のようなフェアな社会構造が生まれたのです。

「日本人はこうなっている。だから仕方ない」と考えずに、「どこに問題があるのか?どうすればいいのか?」と未来志向で考えたいものです。

     

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日本で憲法改正の議論が進まないのは、日本社会の仕組みのため

安倍前首相の悲願は憲法改正だった、といわれています。
しかし憲法改正の国民的な議論は、あまり進んでいません。

実はこれは、日本の組織構造にあるようです。そのことを教えてくれるのが、1967年刊行の中根千枝著「タテ社会の人間関係」と1978年刊行の同「タテ社会の力学」です。

日本社会はタテ社会です。日本人は自己紹介で「営業のヤマダです」ではなく「○○社のヤマダです」といいます。「○○社というタテ社会のメンバーであること」が重視されます。日本の「イエ」(家)発想が、現代の組織に受け継がれたためです。

しかし元々は異質な人たちなので、常に集団意識を高める仕組みが必要です。そこで重視するのが、組織の所属期間です。

学生時代は先輩後輩の上下関係が明確で、国会議員は当選回数が重要。お酒の席では上座から下座へとキレイに序列順に並びます。初対面同士のお酒の席で序列がわからないと、席に着けずに迷ってしまいます。会議で下の者が発言する時は「先輩を差し置いて僭越ですが…」と前置きし、上司は「○○部長」と役職名が付きます。

またタテ社会に新メンバーが加入する場合は、居場所は組織内の序列のどこかになり、その序列が定着します。

欧米・中国はヨコ社会。年齢に関わらず能力があれば若くても抜擢されます。新メンバーはルールに基づき加入が認められ、参加してしまえば他メンバーと同列。ヨコ社会は異民族同士の社会で価値観も全く異なるわけで、ルールが組織の行動基準になり、契約に基づいて動きます。

ヨコ社会では、憲法がないと国家という組織も動きません。だから憲法論議がとても大事。乱暴にいうと、時代に合わせて憲法をアップデートしないと国家は機能しなくなります。

一方のタテ社会は、契約よりも人間関係が優先します。「オレとお前の中だからさ。規則なんてどうでもいいよ」となるわけです。契約の精神が欠如しているのですが、逆の見方をすればルールがなくても組織がそれなりに動きます。ルールがなくてもが動けるのは、日本社会の圧倒的多数が同一民族で占められおり、基本的文化を共有するからです。乱暴にいうと、憲法が現状に合っていなくてもそれなりに解釈して国家が動いてしまうわけで、憲法論議の緊急性が低いわけですね。

タテ社会とヨコ社会のどちらがよいか、悪いか、という話ではありません。これはあくまで社会の特性に関する議論です。

最近の日本企業でルールがあってもトップ自ら無視したコンプライアンス違反が目立つ背景も、あるいは緊急事態になるとバラバラだった組織が急に一枚岩になって一糸乱れず動くようになるのも、こんな日本のタテ社会の行動原理にあるのでしょう。

     

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歴史上の天才的な創作者ほど、駄作が多い理由

史上最高の発明家といえば、エジソンでしょう。1000を超える特許の中には電話・白熱電球・蓄音機・映写機など世界を変えた発明もあります。しかし一方でエジソンの発明の中には、フルーツ保存技術、おしゃべり人形、電子ペンなど世に知られていない発明も実に多いのです。

現代でエジソンに比肩するのは、ジョブスでしょうか。Mac、iPod、iPhone、iPadなどで世の中を大きく変えましたが、ジョブスはGIZMODEが「スティーブジョブス失敗集」という記事で取り上げたように失敗作も実に多いのです。

エジソンやジョブスのような天才といえども、現実には悪いアイデアのオンパレードなのです。

実際に調査すると、ある分野の天才的創作者は他の人よりも必ずしも創作の質が優れているわけではありません。大量に制作しているだけなのです。

天才と称されるモーツァルトは600曲、ベートベンは650曲、バッハは1000曲以上作曲しています。ピカソは絵画1800点・彫刻1200点・陶芸2800点、デッサン12000点を制作しました。シェイクスピアは20年間で37の戯曲と154の短編詩を書きました。

これら膨大な作品の中で、傑作として世に知られているのはごく一部。彼らの多くの作品は、知られていません。

組織心理学者のアダム・グラントは著書『ORIGINALS 誰もが「人と違うこと」ができる時代』の中で、「いいアイデアを生む唯一の方法は、大量生産すること。ともかく沢山作り、大量に失敗することだ」と述べています。

理由は天才といえども自分で作ったモノを正しく評価できないからです。これが「確証バイアス」。作っている本人は、自分が作っているモノの長所ばかりが目に付き、欠点を過小評価してしまうのです。

かく言う私もそうです。おかげさまで拙著は多くの方に読んでいただいていますが、残念ながら私はあまり売れなかった本もたくさん書いています。でも書いている最中はどの本も例外なく、編集者と一緒に「これは、今までで最高の本になる!」といいながら書いています。やはり当事者になると、確証バイアスの罠からは逃れられないのですね。

この確証バイアスの罠から逃れる方法が、沢山作ることなのです。その結果、天才的な創作者は傑作も多いのですが、それ以上に駄作も多くなります。

日々仕事をするビジネスパーソンも同じです。仕事でより多くの挑戦をすれば、失敗の数も増えます。しかし同時に成功の数も増えていきます。

まずは打席に立つこと。そしてバットを振ることです。
バットを振ると必ず空振りの可能性があります。
しかしバットを振らないと、ヒットは出ません。

日々、より多く打席に立ち、より多くバットを振りましょう。

     

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ダブル・ループ学習でその大前提を疑え

米国でCEOが34人参加するセミナーがありました。このセミナーに「次期CEOを約束されていたけど、『自惚れが強くて横柄だ』という理由でCEOに就任できなかった」というある会社のCOO(実はセミナー指導員が演じる仕掛け人)が登場しました。

そしてセミナー主催者は、参加した34人のCEOたちに「彼の欠点を矯正するために相談相手になって欲しい」と求めました。

CEOたちはCOOに様々なアドバイスをしましたが、COOは「抽象的なので具体的にいって欲しい」などといい、なかなかCEOたちのアドバイスを受け容れません。

色々とアドバイスを試みたCEOたちは業を煮やして口々にこういいました。
「彼は強情だね。『自分を良くしたい』っていうけど、どうも怪しいもんだ」

するとセミナー主催者がこういいました。
「皆さんは誰一人として、『私があなたを助けたいと思っています。私の助言が役立たないと思われるのはなぜでしょうか?』とは尋ねませんでしたね」

CEOたちは一同沈黙してしまいました。確かに彼らは誰一人、自分のアドバイスが相手にどんな影響を与えているかを、相談を求めるCOOに尋ねませんでした。

この話は「組織学習論の父」と称され、世界的に最も影響力がある組織行動学の大家であるクリス・アージリスが、晩年に自身の研究の集大成として刊行した「組織の罠」という本に載っている事例です。

CEOたちは「シングル・ループ思考」に陥っていたのです。
シングル・ループ学習では大前提を微塵も疑わず、その大前提のもとで決められた目標を実現しようと、繰り返し挑戦します。

34人のCEOたちも「自分の経験を活かせば彼を変えられる」と考え、あの手この手で説得を試みましたが、受け容れられませんでした。

こんな時に必要なのが「ダブル・ループ思考」です。
ダブル・ループ学習では、大前提そのものを疑います。目標や戦略があっても「そもそもこれらは本当に正しいのか」と大前提を含めて疑ってかかります。そして大前提に反する事実が出てきたら、躊躇せず大前提を変え、それにあわせて目標や戦略も変えます。

34人のCEOたちも、彼が納得しないとしたら「なぜ彼は納得しないのか。もしかしたら自分が間違っているのではないか」を考えるべきでした。しかし彼らは自分の間違いの可能性は微塵も考えず、「彼は自分を良くしたいというけど、どうも怪しいもんだ」と相手を責めたのです。

このシングル・ループ学習の問題は、至る所で起こります。

例えば「製品売上10%増」という目標が与えられ、目標達成のために何が何でも目標を達成しようとするのも、シングル・ループ思考です。一見、勝ちに徹底的にこだわるので攻撃的に見えますが、実は大前提が変わっても目標や戦略を見直さずに大前提を守り抜こうとする「防御的思考」に陥っています。

ダブル・ループ思考では「製品の売上10%増」という目標が与えられても、「まてよ。製品単体売りでは売上変動が激しい。実はもっといい方法があるんじゃないか?」というように、その大前提そのものを疑います。そしてたとえば「製品を売らずにサブスク・サービスとして提供すれば、短期的に売上が落ちるけど、長期的に安定した収益基盤を築けるのではないか?」というように考えて、製品売りから撤退して新サービスに注力したりします。このようにあえて大前提を見直す「建設的思考」で考えていきます。

このようにダブル・ループ学習に移行するには、事実に基づいて考え、謙虚に学び続けて、大前提を躊躇せずに変えることが必要なのです。

 

    

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大谷翔平に一歩近づく方法

大谷翔平の活躍が止まりません。最近6試合でも、打者としてはホームラン6本、投手として1勝。しかもメジャーリーグです。

ついに米国メディアも「彼は宇宙人に違いない」というようになりました。

確かに大谷は並外れた素質の持ち主です。並み居る大リーグ選手の中でも目立つほど恵まれた大きい身体もあります。

しかし世界は広いですよね。大リーグにも彼と同じ素質を持つ選手は多いはず。
大谷の活躍は素質だけでは説明はつきません。
そんな中で、なぜ大谷は活躍しているのでしょうか?

実は大谷は無趣味を公言し、プライベートの時間もほとんど外出しません。彼のすべての行動は、首尾一貫して「二刀流をやり抜く」ことに集中しています。

大谷の強さの根源にあるのは、月並みな言葉で言うと「努力を続ける力」。もともと恵まれた才能に加えて超人的な努力を継続することで、目の肥えた米国メディアに「宇宙人に違いない」といわれるほどの活躍を見せているのです。

このことは、私たちに勇気を与えてくれます。

私たちは「成功には才能が必要不可欠」と考えがちです。
しかし世界を大きく変えた偉人でも、必ずしも天才的な才能の持ち主とは限りません。あのニュートンの推定知能指数は130です。確かに優秀です。でも130の持ち主は人口の2%程度。あなたが高校生だった時の同級生だった、あの優等生と同レベルです。

現実の偉人は、そこそこの才能の持ち主がコツコツ努力を重ねて、世界史に残るような偉大な成果を生んだケースが多いのです。

もちろん才能は重要です。しかしその恵まれた才能も、努力がないと宝の持ち腐れ。

そして人は誰でも、自分が得意なことがあるはず。そして得意なことは、大抵は人よりもちょっとだけ才能があるものです。

先日もこんな事例を紹介しました。

極上コーヒーは障がい者の「強み」から生まれた

得意なことに集中してコツコツ努力を続け、それを10年間継続すれば、どんな人でもその道で一流といわれる人物になるはずです。

私たちも、大谷翔平に一歩でも近づきましょう。

    

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「悪い癖」をやめよう

私、お恥ずかしいことですが悪い癖があります。いつもひと言多いのです。
たとえば何か言われると、必ず「よかれ」と思って

「○○するともっといいですよ」

と必ずひと言付け加えてしまうのです。

この癖、マネジャーとしてはちょっと問題です。「■■をしたい」という部下に、「○○するといいですよ」というと、数%程度はよくなるかもしれませんが、その瞬間に部下のアイデアは私のアイデアで「汚染」されてしまい、部下のやる気は50%下がってしまうかもしれません。

コンサルティングや研修担当の仕事ならば、これはある程度は必要なスキルかもしれません。しかし参加者が「これやりたい」と前向きに考えているのに過度に干渉すると、これはこれで考え物ですよね。

「なくて七癖」といいますが、このように私達は知らぬ間に悪い癖を身につけていて、自分の行動が相手の目にどう映るかを意外と知りません。

経営幹部になるような人たちは、現場社員や中間管理職時代に最適だった仕事のやり方が、経営幹部になると悪い癖に変わってしまうことがあります。

たとえばマネージャーの中には、「自分も意見を出して自由闊達にチームで議論する」という方法で業績を伸ばしてきた人がいます。

この方法は部長レベルでは最適だったかもしれませんが、社長になると組織を停滞させる可能性もあります。
経営トップの言葉の重みは、部長の言葉よりもはるかに重いからです。
意見のつもりでアイデアを出しても、社長の口から出るとそれは瞬間に指示となり、社員は黙って言いなりになります。でも部長時代のやり方が正しいと思い込んでいる本人は、これがわかりません。「成功のパラドックス」ってヤツですね。

米国の大ベストセラー『コーチングの神様が教える「できる人」の法則』(マーシャル・ゴールドスミス著)では、この原因と対策が詳細に書かれています。

ちなみに本書では、「20の悪い癖」と各々の対策が書かれています。

①極度の負けず嫌い
②何かひとこと価値をつけ加えようとする
③善し悪しの判断をくだす。
④人を傷つける破壊的コメントをする
⑤「いや」「しかし」「でも」で文章を始める
⑥自分がいかに賢いかを話す
⑦腹を立てているときに話す
⑧否定、もしくは「うまくいくわけないよ。その理由はね」と言う
⑨情報を教えない
⑩きちんと他人を認めない
⑪他人の手柄を横どりする
⑫言い訳をする
⑬過去にしがみつく
⑭えこひいきする
⑮すまなかったという気持ちを表わさない
⑯人の話を聞かない
⑰感謝の気持ちを表わさない
⑱八つ当たりする
⑲責任回避する
⑳「私はこうなんだ」と言いすぎる

私はリストを見て、つい「うっ、ゴメンナサイ…」とつぶやいてしまいました。

「イタい。コレって自分のことですか」と思う人は多いのではないでしょうか? でも安心して下さい。ほとんどの人はどれか必ず当てはまります。

過去の成功体験は、立場が変わると「単なる迷信」に変わります。しかし多くの人は自分が迷信に囚われていることがわかりません。「このやり方のおかげで自分は成功した」と考えます。そして組織の上に行けば行くほど、この弊害が様々な面で出てしまうのです。

この本の原題(”What You Get Here Won’t Get You There”「今までのやり方では、この先うまくいきませんよ」)は、まさにこの状況を表現しています。

対策は、過去の成功してきた行動を見直すこと。試しに家族や同僚が嫌がるあなたの悪癖や行動を一つ取り上げ、自問自答してみてください。

それを続けるのは以前に何かいいことがあったからでしょうか?
その行動は現在、プラスの結果を出しているでしょうか?
もしマイナスの結果ならば、単なる迷信を正当化しているだけかもしれません。

ドラッカーはこういいました。

「私が今まで出会ったリーダーの半数は、何をすべきか学ぶ必要はない。彼ら学ぶ必要があるのは、何をやめるべきかだ」

私たちは新しいスキルを身につけようと努力しますが、自分の悪い癖はなかなか気がつかず、直そうとしません。

ある意味、単純なことです。
新しいことを始める必要はありません。
今やっていることを、やめるだけです。単純ですけど、なかなか難しいですよね。

たまには悪い癖を見直して感じがいい人になると、幸せになると思います。(…と、私も自戒をこめて反省を続けたいと思います)

   

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運のいい人と悪い人。宝くじの当選確率はどう違う?

世の中にはなぜか運がいい人と、なぜか運が悪い人がいます。

運がいい人は、幸運が次々舞い込みます。
逆に運が悪い人は、不運が次々と襲ってきます。

「なぜこんな違いが起こるんだろう?」と疑問に思ったのが、英国の心理学者リチャード・ワイズマン。ワイズマンは「運」について様々な実験をしています。

当初、彼は「運は予知能力ではないか?」と考え、運がいい人と悪い人に英国の国営宝くじの当選番号を予想してもらう実験をしてみました。

英国の国営宝くじは1〜49の異なる数字を6つ選ぶ仕組みです。実験ではこの数字を予想してもらいました。あわせて、自分が運がいい人か悪い人かを区別できる質問も入れました。この実験には700名以上の応募がありました。

では、結果は?

運のいい人も悪い人も当選率は全く同じでした。
運のいい人が、宝くじに当たるわけではなかったのです。
言い換えれば、運のいい人も、運の悪い人も、幸運を掴む確率は同じでした。

これって不思議ですよね。
実はこの実験で、この謎のヒントがありました。運のいい人は運の悪い人の2倍以上「当選する自信がある」と答えていたのです。

そこでワイズマンは「運は自信と関係があるのかも」と考え、両者の考え方や行動の違いを分析し、運のいい人の4つの法則を見つけました。

第1法則 チャンスを広げる…運のいい人は、人との関係をどんどん広げます
第2法則 直感を信じる…運のいい人は、自分の直感に従います
第3法則 幸運を期待する…運のいい人は、「今後はいいことがある」と楽観的に考えます
第4法則 不運を幸運に変える…運のいい人は、不運が起こるともっと不運な可能性を考えて不運のダメージを減らします

詳しくはリチャード・ワイズマン著「運がいい人の法則」に書いていますので、ご興味がある方はぜひご一読下さい。

前向きかつ楽観的に考えて、運がいい人になりたいですね。

  

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極上コーヒーは障がい者の「強み」から生まれた

美味しいハンドドリップ・コーヒーを淹れるコツがあります。

コーヒーの生豆には、実は虫食いや欠けた生豆が混入しています。これらは渋みやえぐみのもと。これを丹念に取り除いて選び抜いた生豆をロースターで焙煎し、焙煎したコーヒー豆を細かく挽いて、適温のお湯を丁寧に注ぐと、極上のコーヒーが出来上がります。実に様々な手順を経ますが、それぞれの段階に独特のワザが必要になります。

5月18日放映のテレビ東京「ワールド・ビジネス・サテライト」を見ていたら、このコーヒーを美味しく淹れる店の特集がありました。東京・神保町にある「Social Good Roasters千代田」というお店です。

ここは店内で豆を焙煎し、一杯ずつハンドドリップで丁寧にコーヒーを淹れています。お値段は一杯500円から。決して安くありませんが、お客さんからは「苦みや渋みを感じない。凄く素直に飲める。香りがいい」と好評です。

実はこの店で働いているほとんどの従業員には発達障害などがある障がい者です。彼らはここで働きながらコーヒー技術を学んでいます。彼らが作るコーヒーが、とても美味しいのです。

ポイントの一つは、冒頭で紹介した生豆の選別。

生豆に混入している虫食いや欠けた豆などを丁寧に取り除くのが、「ハンドソーティング」という工程。一粒ずつ、見た目だけでなく感触を確認しながら、丁寧に取り除いていきます。ついつい投げ出したくなる作業ですが、一つのモノゴトに徹底的に集中できるのは彼らの強み。ジックリと集中しながら高品質な生豆を選び抜いていきます。

そんな彼らは、この店で一流のバリスタを目指しています。

番組を見て、とても感動しました。

「一つのモノゴトに集中して周りのことが目に入らない」という彼らの特性は、この店ではお客様に高い価値を提供できる大きな強みになっているのです。

よく人の「強み」とか「弱み」といわれますが、これは状況次第。そこにあるのは「その人ならではの特性」でしかないのだと改めて思いました。

「弱点を克服しよう」と考えるのではなく、一見すると弱点に見えるかもしれない自分の特性を「強み」に活かせる居場所を多くの人たちが見つけられれば、人々がより幸せに暮らせる社会になっていくのではないか、と思いました。

 

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私がコンサルティングで、お客様から徹底的に教えていただく理由

   

たまにこんなコンサルタントを見かけます。

『お客さんから「どんな商品が売れるでしょうか?』ってよく聞かれるんですけど、売れるモノがわかっていたらオレ自分で作るよ、って話ですよ。そもそも自分で何やりたいのかわからない人が多いんですよね。いつも「で、どうしたいんですか?」って口から出かかってます』

これはとてももったいない話だな、と思います。

相談されている方は、困っています。必要なのはその人の悩みに寄り添い、一緒に悩み考えながら新しいアイデアを創り出していくことだと思います。

このケースでも、コンサルティングの切り口は、いくらでもあります。

たとえば私が「どんな商品が売れるでしょうか?」という同じご相談を受けた場合、まずお客様からこんなことを教えていただきながら、一緒に考えます。

「あなたは、どんな商品がいいとお考えですか?」
「御社の強みは、何だと思いますか?」
「いまの商品は、どんなお客様に売れていますか?」
「いまの商品で、あなたが想定もしなかったお客様はいますか?その方はどんなお客様ですか?」
「いまの商品で、あなたが想定もしなかった使い方をしているお客様はいますか?そのお客様は、どのように使っていますか?」
「これまで売ってきて、『これは意外だったなぁ』という発見って何かありますか?」

各質問はお客様の知識を引き出すための糸口です。それぞれに対して参考になる成功事例や理論を二重・三重に用意した上で、議論を深めていきます。

その相談をしているお客様しか持っていない知識(暗黙知)や経験、商品知識やお客様に関する知見は、私たちコンサルタントは逆立ちしても絶対に敵いません。中にはお客様ご自身も気付いていない暗黙知もあります。これらは徹底的に尊重して謙虚に教えていただき、できる限り引き出していくべきです。

一方でお客様が持っておらず私たちが持っているのは、様々な問題解決の方法論や、他業界での事例や経験、さらにお客様が知らない人とのコネクションです。

100年前にシュンペーターが喝破したように、イノベーションの本質は既存知と既存知の組合せです。

お客様が持つ現場の知識や経験という既存知と、私たちが持つコンサルタントの知識や経験という既存知を、深いレベルで組み合わせて相乗効果を生むことで、全く新しいイノベーションの種が生まれるのです。

「で、どうしたいの?」と突き放すコンサルタントは、せっかくのチャンスを手放しているように見えて、とてももったいないな、と思います。

 

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「あるべきリーダーの姿」は、実は存在しない

リーダーというと、私たちはどんなイメージを持つでしょうか?

強い決断力…
人間的魅力…
部下思い…
人間としての器の大きさ…

いろいろと思い浮かびそうですよね。

でも、実は世界のリーダーシップ研究結果のコンセンサスは、「あるべきリーダーの姿はない」というものです。

ピーター・ドラッカーは著書「経営者の条件」で、「65年間コンサルタントとして出会ったCEOのほとんどが、いわゆるリーダータイプの人ではなかった」と述べています。性格・姿勢・価値観・強み・弱みは千差万別でした。

また「オーセンティック・リーダーシップ」(ハーバード・ビジネス・レビュー編集部)という本があるのですが、本書によると「コレがあるべきリーダーの姿」と考えること自体が大間違い。そんなものがあればリーダーを目指す人はその姿を再現しようと頑張るハメに陥りますが、周囲は本能的に「それって演技でしょ」と見抜いてしまいますよね。

実際この半世紀、リーダーシップの研究者たちは1000以上の調査研究で「あるべきリーダーの姿」を探りましたが、理想のリーダーシップ像を突き止めた研究は一つもありませんでした。本書の執筆陣もリーダー125人を調査しましたが共通の特徴・特性・スキルは何一つ見いだせなかったといいます。

そこで米国で広がりつつあるのがオーセンティック・リーダーシップ(Authentic Leadership)という考え方です。オーセンティックとは「本心に偽りのない」「本物の」という意味。要は「自分らしさを貫くリーダー」のことです。

現代では、弱さを隠さず常に正直な自分であろうとする勇気を持って行動し、「自分らしさ」を貫く自然体で振る舞うリーダーに、人々は共感するのです。

   

 

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駒の配置は変えられない。大事なのは、次の一手

どうしようもない状況に追い込まれて八方塞がり…。
ビジネスでは往々にして、こんな状況に追い込まれることが少なくありません。

しかしその状況を嘆いていても、何も変わりません。
必要なのは何をするか?

「駒がいまどう配置されているのか、それを変える術はない。大事なのは、次の一手をどう指すか、だ」

これは「PIXAR〈ピクサー〉世界一のアニメーション企業の今まで語られなかったお金の話」(ローレンス・レビー著)にあった言葉です。

本書は全てCGで描いた3D映画で映画界に革命を起こしたピクサーのCFOである著者による本です。今でこそピクサーは超優良企業ですが、スティーブ・ジョブスに声をかけられたレビーがCFOに就任した頃のピクサーは、将来展望がないまま売上もほとんどなく、ジョブスの私財により何とか命脈を保っていました。

この言葉は当時、このピクサーのお金周りを任されたレビーの気持ちを代弁した言葉です。

過去は何も変えられません。
大事なのは次の一手をどう打つか。
「いまやらなければならないこと」に集中するしかないのです。

決して諦めずに必死になって次の一手を繰り出していくうちに、状況が変わっていくことも多いのです。

常に、次の一手を考えましょう。

  

 

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サブスクモデルだった火縄銃

火縄銃は、戦国時代の新兵器だ。1543年に種子島に漂着したポルトガル人が火縄銃を売った時は二丁で現在の価格に換算すると1億円。実に高価だった。その後、火縄銃は日本各地で生産されるようになった。

この火縄銃に早い時期から目を付けたのが、堺の新興商人・今井宗久だ。武器商人として、諸国大名に火縄銃を売り歩いて儲けていた。

ある日、今井宗久のもとへ部下が駆け込んできた。

「宗久様、大変ですわ。火縄銃の値下がりで、一丁10万円じゃないと売れまへんわ」

当時、火縄銃の価格は下落の一途。戦国時代中頃になると火縄銃は一丁で60万円。安いものは5万円。大量生産のおかげである。
しかし宗久はのんびりと答えた。

「そやろなぁ。いまどき火縄銃なんて誰でも作れるしな」
「…儲かりまへんがな」
「心配あらへん。ちゃんと手ぇ打っとるがな。火縄銃を使うのに必要なのは、何や?」
「…火薬ですな」
「そや。その火薬な、うちらしか売れへんねん」
「は?なんでですか?」
「火薬は、硝石・木炭・硫黄を調合して作るやろ?硝石は日本にはない。中国からの輸入や。硝石の輸入はな。ウチら堺商人の独占や」
「はぁ。確かにそうでしたな」
「だからウチらは鉄砲を売るだけでのうて、『鉄炮薬』ちゅう火薬商品もセット販売しているわけや」
「先を見てますなぁ」
「それにな。ヨソの鉄砲を買うた御武家さんにも、『鉄炮薬』を売っているんや」
「さすが、宗久様や」
「火縄銃一発の鉄炮薬は、米一升分の値段や。まぁ3000円ってとこやな。火縄銃本体で10万円としてな。34発打てば火縄銃より高くなる計算や」
「34発なんてあっという間や。戦場では湯水のように火縄銃使うし、兵の訓練もありますな」
「そや。火縄銃を使う御武家さんが増えるほど、儲かるっちゅう寸法や」

宗久はお茶をすすりながら、ニヤリとした。

「実はな、火縄銃の価格が下がったのは、えらいチャンスやねん。『鉄炮薬』の使用量も増えるしな。本音言うと火縄銃なんてタダで配ってもええくらいや。ま、いやゆるサブスクモデルってヤツやな。儲けるのはこれからや」

 

【参考文献】
■「火縄銃・大筒・騎馬・鉄甲船の威力」(桐野 作人著、新人物往来社)

 

 

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修羅場をくぐり抜けた企業への贈り物

会社は、死活問題になるような修羅場に巡り会うことがあります。
しかしその修羅場をくぐり抜けた先には、素晴らしい贈り物が待っています。

たとえば、サウスウエスト航空。日本人にはあまり馴染みがありませんが、万年低迷が続く米国航空業界にあって常に高収益です。

サウスウエストは2019年まで47年連続で黒字でした。9.11で米国航空会社が軒並み赤字の中でも唯一黒字を計上したほど。そんな同社も、コロナ禍で航空需要が蒸発する異常事態には翻弄されました。売上なんと6割減、赤字31億ドル。

米国の航空会社はレイオフは日常茶飯事ですが、従業員第一主義で家族主義のサウスウエストは1967年の創業以来レイオフ(従業員の一時解雇)をしていません。しかしそんな同社も、2020年の年末には、社員に「レイオフの可能性がある」と事前通知するまで追い詰められました。しかし何とか耐え凌ぎ、社員の雇用を守り抜きました。

サウスウエスト航空がこのように「従業員第一主義」「家族主義」という強い企業文化を持つようになったのには、理由があります。

きっかけは、1967年に創業した時、就航前にライバル航空会社は次々と妨害工作を仕掛けてきたこと。まずライバル3社が「航空市場は飽和状態でもう1社の参入余地は全くない」と訴訟。地方裁判所と高等裁判所で裁判を2回戦ったが判決で敗れました。せっかく集めた出資金は訴訟費用で蒸発してしまいました。3度目の戦いとなる最高裁判所で判決は覆り勝利。しかしその後数年間、同社はアレコレと難癖を付けられ、似たような訴訟で苦しみました。

4年後、やっと就航できるようになりましたが、今度はお金がありません。再度資金調達するも、ライバルは出資の引受業者に圧力をかけつつ、就航に抗議の申し立てをしてきました。のちに同社・会長になるケレハーは顧問弁護士として、法廷で相手の弁護士12〜15人に対して1人で戦い続けて勝ちました。

そして1971年6月18日、サウスウエスト航空はついに大空に飛び立ちました。

この草創期の激しい法廷闘争は、社内で強い団結心を生みました。同社社員は毎朝ニュースを見る度に、「我々は生存をかけて戦っている」と実感。一つでも負けると破産です。「生存をかけて戦っている」という強い想いが、強い企業文化を生み出したのです。

共通の理想を実現するために一心に働くとき、人々の間に特別なきずなが生まれます。草創期の同社はまさにそうでした。サウスウエスト社員たちは固いきずなで結ばれ、何度も苦境に追い込まれながらもくぐり抜け、サウスウエストを他社が真似できない優れた組織につくり上げ、この過程で家族のような固い結びつきと強い企業文化が生まれたのです。

企業文化は過去の挑戦・成功・失敗・学んだ教訓を反映して、創り出されます。

サウスウエストのように創業期の修羅場を社員が一致団結して乗り越えた経験は「強い企業文化」という素晴らしい企業の財産になるのです。

現在、現場で修羅場の真っ最中にいる方々も多いと思います。

しかし一致団結してその修羅場をくぐり抜けた先には、「強い企業文化」という贈り物が待っているはずです。

 

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イノベーションを「技術革新」と誤訳するのは、もうやめよう


日本では、「イノベーション」を「技術革新」と訳しています。 日本の高度経済成長が始まった1958年の経済白書がきっかけに、この言葉が拡がったと言われています。

しかしこれはイノベーションの概念を正確に反映した訳ではありません。

100年前に「イノベーションこそが経済発展の原動力だ」と喝破し、イノベーションの源流となったシュンペーターは、「イノベーションとは既存知と既存知の新結合である」と述べています。

たとえば2007年に登場したiPhone。
iPhoneは技術面では革新的なことはほとんどありません。携帯電話、タッチパネルのiPod、インターネット端末という「既存技術の組合せ」です。しかしiPhoneのおかげでコンパクトデジカメ、電卓、地図、時計などが世の中から消え、かわりに実に様々な新しいサービスを生み出しました。世の中を大きく変えたイノベーションだったのです。

「iPhoneってイノベーションじゃないよ。だって何も新しくないじゃん」

という人は、「イノベーション=技術革新」という誤訳を頭から信じているわけです。こういう考え方をしていると、iPhoneのようなイノベーションがなかなか生まれませんよね。

しかしかつて日本には、次々とイノベーションを生み出していた企業がありました。 それはソニーです。

たとえばウォークマン。 元々のコンセプトは「再生専用の携帯カセットプレイヤー」でした。 しかし当時のカセットプレイヤーは、録音機能が必須でした。

「録音機能がないプレイヤー?売れるわけないよ」

…というのが大勢の意見でした。

しかし当時ソニーのトップだった盛田昭夫さんは、こう考えました。

「でも車に付いているカーステレオって、録音機能がなくても、私たちは気にせず使っているよね。車内でそうなんだから、屋外で音楽を聴く場合も、録音機能はいらないんじゃないかな」

実際に発売したら、累計4億台売れました。

ウォークマンもiPhone同様、技術的に新しいモノは何もありません。しかし「一人で音楽を聴く」というライフスタイルを生み出したイノベーションでした。

このようにイノベーションには特徴があります。事後的には理解できるのですが、事前には理解できないのです。

イノベーション前「できるわけないでしょ。もしかして頭悪いの?」
イノベーション後「ああ。あれね。俺も前から考えていたけどね」

もし「我が社には、イノベーションが必要だ」とお考えであれば、「技術革新という言葉は、社内禁止!」にするくらいの意識変革が必要なのではないかと思います。

 

 

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