間違った「リスクマネジメント」が生み出す、現在の閉塞状況

こちらのブログでも書きましたが、10/21-22に行われた日本経済新聞主催「第15回 世界経営者会議」で、堀場製作所の堀場雅夫最高顧問が話された次の言葉を、最近よく考えています。

「日本企業の問題は?」という質問に対して….。リスクマネジメントという言葉がある。本来の意味は、リスクを取る際に損害を最小化する方策を採ること。しかし今の日本ではリスクを取らないことになってしまっている。だから日本が元気がない。

 

企業にとって「リスクを避ける」ことはある程度は必要なことです。しかし色々な方々とお話しすると、「あらゆるリスクを避け続けている」ことが、新たな価値をなかなか生み出せないこの閉塞状況を生み出しているように実感しています。

戦略や成功体験には、必ず賞味期限があります。そしてこの賞味期限は、変化が激しい現代はますます短くなっています。

まさに過去の戦略や成功体験を変えずに、リスクを避け続け、現状維持した結果が、バブル崩壊後の「失われた20年」を生み出したのではないでしょうか?

 

堀場最高顧問がおっしゃるように、「リスクを避ける」のではなく、「正しいリスクを取り、損害を最小化する方策を採る」という、本来のリスクマネジメントが必要なのではないか、と思う今日この頃です。

 

ウチダ人材開発センタ様で講演しました

12/18(水)午後、銀座にあるウチダ人材開発センタ様が主催されたエグゼクティブセミナーで、「改めて顧客中心主義について考えよう」と題して講演を致しました。

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ウチダ人材開発センタ様は、IT技術者教育を中心に、ヒューマンスキル教育、eラーニング、アウトソーシングなどの事業を展開しておられます。

今回は、ウチダ人材開発センタ様のサービスを活用しているお客様企業の経営者が集まった会でした。その冒頭、1時間講演を致しました。

 

通常の私の講演はワークショップ込みで2時間なのですが、今回は時間の関係で1時間枠。

そこで最初の40分間は「顧客中心主義の戦略思考」、残り20分間は「現状維持は破滅」をお話しし、ワークショップ部分は割愛しました。

 

参加された皆様からは、こんなご意見をいただきました。

・顧客絶対主義と顧客中心主義について、あらためて違いを認識できた。顧客に対してYesマンな社員の教育に役立てることができる。売るモノが何であれ、価格ではなく価値にこだわる仕事をしていきたい。

・流れるような話、わかりやすいたとえ、引き込まれました。プロポーザル作成に役立てたいと思います。

・濃い内容でびっくりしました。勉強になりました。ありがとうございます。

・私達の業界の喫緊の課題であり、参考になりました。

・「戦略に賞味期限(寿命)があること+挑戦なくして成功なし」..当たり前のことですが、ラジオの事例が良くフィットしていました。当社の戦略を見直し中ですが、視点を変えてみる際の参考になりました。顧客第一(顧客絶対)と顧客中心の違いについて、社内に徹底するために良いヒントをいただきました。日本企業の課題は、自分が「ゆでがえる」になりつつあるのを知りながら現状打破できないことにあると思います。「日本を強くしたい」という先生のお言葉に強く共感しました。

 

いつもお話ししている内容は、経営者の方々が持っておられる問題意識と同じであること、そして経営者の皆様は「自社社員の考え方や行動をいかに変えていくか」という視点を常にお持ちであることがよくわかりました。

このような機会をいただき、感謝申し上げます。

  

2013年の振り返り(3): 今年は講演を31回実施、のべ2,000名以上に参加いただきました。有り難うございました

2013年は、これまでで一番多くの講演を行いました。

合計31回実施。

のべ2,000名以上の皆様に参加いただきました。

これだけ沢山の皆様が、私の講演に貴重なお時間を預けて下さったわけで、大変有り難いことです。

 

数字で把握するために、まとめてみました。

■総合満足度(NSI*): 87.8
(全31回中、アンケート実施分19回の平均値)

* NSI: Net Satisfaction Indexの略。アンケートの5段階評価で、「とてもいい」=100点、「いい」=75点、「まあまあ」=50点、「よくない」=25点、「とてもよくない」=0点に換算し、加重平均を取ったスコア。講演の顧客満足度を把握するために使用します

講演では、主催者様にお願いして、できる限りアンケートを採るようにしています。

通常のセミナーでは「NSI 75以上で合格」と言われます。しかし私は参加される方が心から満足いただく目安として、毎回、NSI 90を超えることを目指しています。

このために、事前に参加者の課題を把握して毎回資料を作りかえ、講演前はリハーサルを動画で録ってチェックしています。

しかしながらアンケートを採った19回の講演のうち、11回はNSI 90をクリアしたものの、残念ながら90以下が8回ありました。

これら8回について、本番講演の動画をチェックしたりアンケートでいただいた意見を見ながら振り返ると、下記が原因になっていました。

・参加された一部の方との期待値と講演内容にギャップがあった

・講演での説明内容に改善の余地があった

・ある講演で講演時間がオーバーしてしまった

・ご質問への回答が不十分だった(疲労などにより)

毎回振り返り、日々、講演品質の改善を図るようにしています。

先日の講演では、念願のNSI 100(参加者20名)を実現できました。なんとか続けていきたいですね。
 

■実施時期別:1−3月:5回、4−6月:4回、7−9月:12回、10−12月:10回

やはり7月の独立後、実施回数が急増しています。特に9月と10月に多くの講演を行いました。

このうち半分強が「永井孝尚オフィシャルサイト」経由でのご依頼です。やはりオフィシャルサイトを整備することは大切ですね。

 

■実施テーマ別

・「改めて顧客中心主義について考えよう」 24回
・「ビジネスパーソンの出版戦略」 6回
・「グローバルコミュニケーション」 1回

「100円のコーラを1000円で売る方法」シリーズを読んだ方々からのご依頼もあり、有り難いことにマーケティング関連がダントツに多いですね。

一方で、「ビジネスパーソンの出版戦略」やグローバルコミュニケーションも増やしていきたいところです。

 

上記講演以外にも、研修・ワークショップ・大学院での講義などもありました。これらも併せると、2013年は皆さまの前で1時間以上お話しする機会が50回以上あったことになります。

振り返れば、若い頃の自分は人前で話をするのが大の苦手。トラウマもありました。

当時の私を知る方々は、私がこのような仕事をしていること自体、想像も出来ないことかもしれません。

しかし講演や研修は、皆様のかけがえのない人生の時間をお預かりする、大切な仕事です。

これからも日々反省し、より高い価値をご提供できるように、精進していきたいと思います。

 

「日本企業は、海外では『過剰品質』なのではなく、実は『低品質』なのだ」という認識が必要なのかもしれない

日経ビジネスオンラインの次の記事を拝読しました。

「日本企業がグローバル化できない本当の理由って何ですか?」
早稲田大学ビジネススクールの淺羽茂教授に聞く

記事では、淺羽さんがよく使う例として、日本のゼネコンが競って開発してきた、超高層建築向けの耐震性の高い高強度コンクリートを紹介しています。

上海やドバイでは多くの超高層ビルが建設されましたが、高強度コンクリートは全く採用されませんでした。材料を絶妙な配合で混ぜたり、精緻な施工管理ができる人材・材料が、海外では調達できなかったためです。

上海やドバイの超高層ビルは、性能で劣っても、調達しやすく簡単に配合できるコンクリートを使いました。

記事で淺羽さんは次のように述べておられます。

「こう考えると、日本の高強度コンクリートは過剰品質ではなく、非常に低品質だった。低品質で、なおかつ価格が高いから売れなかったのだと見るべきなのです」

 

「なるほど!」と思いました。

 

私たちが「高品質」と言う場合、往々にして技術面だけを意識しているケースが多いのではないでしょうか? そして提供する技術が顧客ニーズを上回っているケースを、「過剰品質」と呼ぶ傾向があります。

しかし「過剰品質」なのに採用されないのは、他の課題(このケースでは、調達しやすさや配合しやすさ)に応えられていないからです。

つまり、「顧客の課題」を考慮していない孤高の「高品質」なのであり、「過剰品質」なのが現実なのです。

日本市場向けの高品質商品は、「顧客の課題」から品質を捉えると、実は海外市場では「過剰品質」ではなく、「低品質」なのだ、という認識が必要なのですね。

 

記事では、先日当ブログでもご紹介したユニクロのバングラデシュでの取り組みも紹介されています。

本来、グローバル化を推し進める際には、現地のきめ細かな顧客の課題を理解して先取りし、応えていくことで、品質を高めることが必要なのです。

記事を拝読し、「顧客の課題が出発点」というのは、グローバル市場においても大切なことなのだ、という当たり前のことを再認識しました。
 

 

WestJetのクリスマス企画動画が再生2500万回! 「顧客の期待をはるかに超えると大きな感動が生まれる」、その美しい実話です

カナダの航空会社WestJetが、乗客達に贈ったクリスマスプレゼント企画の動画がブレイクしています。

心温まるお話しです。5分くらいの動画ですが、お時間がある方はまずこちらをご覧下さい。

 
飛行機に搭乗する前、乗客はスクリーンに映されたサンタから、「クリスマスに欲しいものは何?」と聞かれます。

一通り乗客が欲しいものを告げて搭乗すると、航空会社のスタッフは総出で、買い物リストを手にチームに分かれて一斉に買い物に。

膨大なプレゼントを仕分けて、ラッピング。乗客の名前を書いて、チェックする様子は、かなり周到に準備されたプロジェクトであることを伺わせます。

もちろん各チーム毎にカメラクルーも複数配置されている訳ですね。

到着した乗客が荷物受け取り場で待っていると、ベルトコンベアでプレゼントが流れてくる、という結末。

ビデオでも語られているとおり、まさに「真実の瞬間」です。

 

このビデオを見て、色々と考えさせられました。

 

顧客満足は、こんな式になっています。

顧客満足 = 顧客が感じた価値 ー 事前期待

「まさか『欲しい』と言っていたプレゼントが貰えるわけはない」と思っていた顧客の事前期待は、ほぼゼロ。

一方で「欲しい」と思ったプレゼントを突然貰った顧客が感じた価値は、とても大きいはず。

顧客満足は、とてつもなく高かったことでしょう。

ビデオでは感涙した人たちもいます。

さらにこのビデオは、世界中の人たちに「感動」というクリスマスプレゼントを届けています。

「顧客の期待をはるかに超えると、とても大きな感動が生まれる」、まさに実例です。

 

この企画は、WestJet自身のマーケティングキャンペーンとしても、大成功を収めています。

動画は12月8日にアップされ、12月15日現在で2500万回再生されており、今もFacebookやTwitter等のソーシャルメディアでも拡散され続けています。

お金もかかっていますが、「顧客を喜ばそう」と思い、心からこのキャンペーンを楽んでプロジェクトに参加したWestJetの社員がいるからこそ、成功したのですね。

WestJetは自社サイトで、「私たちのビジョン」として以下のようにうたっています。

Our vision
By 2016, WestJet will be one of the five most successful international airlines in the world providing our guests with a friendly caring experience that will change air travel forever.

私たちのビジョン
2016年までにWestJetは、お客様に空の旅を永遠に変えるような心地よく癒やされる経験をご提供するという点で、世界トップ5の成功した航空会社になります。

このビジョンがあって、このキャンペーン。

素晴らしいですね。

 

ちなみに、このサンタさんを追ったのが、この動画。これも現在100万回を超えています。

サンタさんも、色々と大変です。

  

 

昨晩、文化放送「オトナカレッジ」出演しました

昨晩(2013/12/13(金)) 21:00-21:50、文化放送「オトナカレッジ」に出演致しました。

なにぶん、生放送は人生初体験。しかも全国放送。

数日前からナレーション原稿を作成しました。

出演当日は早朝から起きて、リハーサルをしながら録音をチェック。

さらに番組開始4時間前には文化放送がある浜松町に到着。近くのカフェで原稿を念入りにチェックしました。

緊張しつつ文化放送のスタジオに入って打合せをはじめたところ、私の緊張感が伝わったのか、放送作家の鈴木さんから優しくこんなアドバイスをいただきました。

「原稿を読むスタイルではなく、アナウンサーの砂山さんと居酒屋で雑談しながら、若者にマーケティングを伝えるようなスタイルにした方が、ラジオでは伝わりますよ」

実は2週間前にお打合せした際にも、「雑談するような感じで、気楽に出演していただければいいですよ」と言われていたんですよね。

確かに自分がラジオを聴く立場で振り返ってみると、深夜放送などでも、出演者が雑談をしながら進行するタイプの番組が好きでした。逆に、一方的に話される講義のような番組は、どちらかというと苦手でした。

そこで本番では、原稿は手元に置いて事前にチラ見するだけに留めて、アナウンサーの砂山さんを見ながら話すように変えました。

ナレーション原稿を作ったり、リハーサルをして、一通り頭に入れていたので、割とスムーズに話ができました。

ちなみに、スタジオはこんな感じです。

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画面右側がアナウンサーの砂山さん、中央が放送作家の鈴木さん、左側が私です。

写真で私は左手でおなかを押さえていますが、これは事前に「DVD付 リーダーは低い声で話せ」という本を読んで、おなかの張返しを感じながら、横隔膜を使ってお話ししたためです。

おかげさまで番組後、数名の知り合いから「低くていい声ですね」とお褒めの言葉をいただきました。

 

ラジオ生出演は、本当に貴重な体験でした。

文化放送の岩田さん、放送作家の鈴木さん、そしてアナウンサーの砂山さんのプロフェッショナルなお仕事のおかげで、何とか大任を務めることができました。

ラジオ番組というのは、ゲストやアナウンサーといった出演者、さらに放送作家やプロデューサーが、各自のパーソナリティで創り上げていく、まさにアートですね。

また中経出版の谷内さんには、文化放送と調整いただきこの機会を作って下さいました。

皆様に感謝です。
 

 

あのIBMが開発した「真のグローバル企業を目指せ!海外戦略ゲーム」が、なかなか面白い件

巷で、「あのIBMが開発した」と言われるこんなネットゲームが話題になっています。

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「おお!ついにIBMもゲーム進出か? IBMを退職して半年近く経つけど、世の中の流れは早いものだ」

と思いながら早速試して見ましたが、あの懐かしい「人生ゲーム」を彷彿とさせたりして、シンプルでなかなか面白いですね。

ゲームをしながらIBMが提唱するGIE(グローバル・インテグレーテッド・エンタープライズ)の考え方を理解出来るようになっています。

意志決定の場面で、IBMが提供するGIEサービスのパンフレットもダウンロードできる仕組みです。

最後に採点されて、上位得点者はランキングされます。(私は残念ながらランキング外でした)

 

ちなみに、「GIE」とは、「国際企業」→「多国籍企業」の次の段階として、IBMが提唱する企業の姿です。

「国際企業」は、本国から海外の各地へ製品やサービスを供給するモデル。

「多国籍企業」は、さらに一歩進んで、海外の各国に、本社と同等機能(地域本社、営業、開発、生産、マーケティング、等)を展開するモデルです。

しかし一方で多国籍企業は、本国本社と機能重複があり、コスト面、意志決定の速さの面などで弊害も出てきました。

そこへインターネットやグローバルサプライチェーンの仕組みが登場し、必ずしも各国に本国と重複する部門を置く必要がなくなりました。

そこで「世界全体で一つの企業として経営していこう」という考え方でIBMが提唱しているのが、「GIE(グローバル・インテグレーテッド・エンタープライズ)」です。「グローバルで統合された一つの企業」という意味ですね。

GIEは、パルミサーノ前CEOが就任した2004年から、IBM自身が全世界のIBM社内で展開しており、ここで得られた経験を、様々な経営支援サービスとして提供しています。

 

このような背景を理解して、改めてこのゲームを見ると、マーケティング・プロモーション活動(デマンド・ジェネレーション)の一環として、よく出来ている仕組みだな、と思いました。

それにしても、お金もかかったでしょうね。

まさに「GIE」を実践している企業の中で、このように日本にローカライズしたプロモーションにお金を付けるのはかなり大変なことです。関係者の皆様のご努力には頭が下がります。

 

日本IBM様主催、SOAパートナー・コミュニティーで講演 (@天城ホームステッド)

日本IBM様は、伊豆に天城ホームステッドというエグゼクティブ向けの研修施設を持っておられます。

12月6日から7日にかけて、この天城ホームステッドにて、日本IBMソフトウェア事業部様の主催でSOAパートナー・コミュニティー (SPC)の理事会が行われ、2時間の講演とワークショップを行いました。

SOAパートナー・コミュニティー (SPC)とは、SOA(サービス指向アーキテクチャー。詳しくは→リンク)という技術を活用したITソリューションの活用・普及を目的に、日本IBM様が2009年に設立したコミュニティです。

現在の会員企業数は89社。天城での理事会は今回で6回目だそうです。

技術の波が激しいIT業界で、このように継続しているのは素晴らしいですね。

 

天城ホームステッドは、JR伊東駅から車で40分ほど山奥に入った場所にあります。途中の山道で、野生の鹿に遭遇することもよくあります。

ちなみに天城ホームステッドの入り口はこんな感じ。

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実は、私が天城で講演するのは、今年で3回目です。

1回目は日本IBMを退職する直前の6月末で、ある大手電機会社様IT部門の天城研修会。この時は日本IBM社員の立場で、業務の一環として講演しました。

2回目は独立後の10月、日本オフィスシステム様のパートナー会。(その時の様子→リンク)

3回目が今回のセミナー。

IBM退職後に、このようにお声がけをいただけるのは、有り難いことですね。

 

講演とワークショップは下記構成でした。

講演タイトル:改めて顧客中心主義について考えよう

・顧客中心主義の戦略思考 (講演40分)
・私たちの価値は何か? (ワークショップ60分)
・仮説思考と実行力 (講演20分)

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今回の参加は、SOAパートナー・コミュニティー・メンバー企業様の19社26名様。

ワークショップでは5チームに分かれ、各チームで担当しているSOAソリューションの価値について議論、発表をいただきました。

普段のワークショップでは、時間の制約上、発表は1チームに限っています。

しかし今回はせっかくのSPC理事会であり、各社様の取り組みを共有するよい機会でもあります。そこでIBM様の強いご希望もあって、5チーム全てに発表いただきました。

発表と私からのコメントを含めて、1チーム5分間という短い時間でしたが、濃い時間をご一緒できたと思います。

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この日は天城に宿泊。参加された皆様との懇親会がありました。

 

翌朝。天城ホームステッドの真正面に、富士がきれいに見えます。

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ちなみに天城ホームステッドの宿泊棟はこのような感じ。まさに一流ホテルのホスピタリティを持ったサービスを提供しておられます。

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12月7日(土)の朝、天城を出発して家路につきました。

日本IBM様をはじめ、参加された各社様と色々とお話しをさせていただき、私自身も大変勉強になりました。ありがとうございました。

 

12/13(金) 9PM、文化放送「オトナカレッジ」に出演します

12/13(金) 9PMから始まる文化放送「オトナカレッジ」の「経済・ビジネスの21時台」に週替りコメンテーターとして出演することになりました。

「100円のコーラを1000円で売る方法」第1巻をベースにお話しします。

約1時間の番組のうち、10分程度でいつも講演でお話ししている内容のダイジェストをご紹介し、アナウンサーの砂山圭太郎さんとインタビューした上で、リスナーの方々からのご質問をお受けします。

ラジオを持っていない方でも、radikoを使えばインターネット経由でお聴きになれます。

 

初めての生放送。

既に今から緊張しています。(笑)

頑張ります。

 

島根県商工会連合会様で講演しました

一昨日の兵庫県小野市に続き、昨日11/28(木)は、島根県浜田市の島根県商工会連合会・石見事務所様で、「改めてお客様中心主義について考えよう」と題して講演を致しました。

朝、瀬戸内海に面した広島を高速バスで出発。

中国山地を越えて、日本海側の浜田市を目指します。途中、中国山地では雪が降っていました。

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ここ数日、西日本では急速に冷え込んでいます。

2時間かかって浜田駅に到着。

浜田市は、島根県石見地方にある人口4-5万人の町です。

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地方に行くと地元商店街に活気がなくシャッターが降りていることも多いのですが、ここ浜田市の商店街はちょうど1980年代の商店街のような懐かしさもあり、活気があります。

駅前にあった、上品なご婦人が経営しているこじんまりした喫茶店で昼食をいただきました。懐かしいにおいがすると思ったら、石油ストーブを炊いていました。石油ストーブのぬくもりを感じたのはもう遠い昔の記憶です。店の壁には色々な写真や旅行のお土産が飾っています。

出されたハンバーグ定食が美味です。「美味しいですね」と言うと、「自家製手作りですから」とのご返事。冷凍していないそうです。なるほど。

よく見ると、この街にはジャスコやイオンのような大きな店がありません。大きな店を出すには商圏がやや小さいようです。

浜田市は懐かしい感じがする街でした。いい街ですね。

 

商工会連合会様の方と事前にお打ち合わせをした後、13:30に講演を開始。

今回の参加者は、商工連合会に勤めておられる経営指導員の皆様20名でした。

普段は地元経営者へのコンサルティングを行っておられます。

「クライアントである経営者のお立場になって、考えてみて下さい」とお願いして、講演とワークショップを行いました。

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いただいたアンケートの結果は下記の通りです。日々、経営に悩んでおられる経営者と正対している、経営指導員の皆様ならではの真摯なコメントを頂戴しました。

・経営相談が多岐に渡ることが多いが、企業価値をどこに求めていくのかを具体的に課題のなかで提供できる内容があってよかった。かつての日本の携帯電話を称して「ガラパゴス」化しているとの評があった。機能の多さが商品価値に結びつくと思っていたが、それが買う理由にあたらないことが理解できた。

・顧客中心主義という言葉は初めて聞きましたが、かなり腑に落ちました。「価値」で勝負するということは認識していましたが、「価値」を創り出すための準備作業の重要さに気付かされました。

・島根も日本の中で一番と言っていいほど課題が多い県です。そういった地域の課題を解決する思考法として、大変勉強になりました。島根の課題を解決できれば、充分他県に持って行けることができるビジネスモデルになると思います。本を読んでいますが、実際に生の声でお話しを聞くとそれとは違った印象も受け、大変面白かったです。

・とてもわかりやすいお話しでよかったと思います。本の表紙は本屋さんでよく見ていましたが、読んでみたくなりました。経営者の方と接するので、顧客中心主義の考え方は意識改革を進める上でとても参考になるお話しでした。ワークショップでポイントを整理でき、経営者の方にも自社の製品や経営の見直しに役立てていきたいと思います。

・顧客絶対主義→顧客中心主義の話が大変参考になりました。ワークシートを会員事業所さんのバリュープロポジションを見つけるために活用したいと思います。

・先生の本を読みました。ご講演で顧客中心主義の考え方と、現状維持は破滅の考え方が理解できました。経営者は得てして「ターゲット」「一言」というあたりが充分に理解できていないので、出来るだけ示してあげたいと思います。

・マーケティングの面白さがわかった。6次産業化、自然のものを発想を変えてどのように売るか、ということを考えていきたい。

・ご自身の経験も交えた上で、具体的で分かりやすい内容だった。今回のお話しは実際に会員企業さんが新製品の開発や既存の製品を見直す場合に役立つと思います。会員さんは「答え」をすぐに求められるので、この家庭が大事だということをお伝えしていきたいと思います。

・経営者と一緒になり、そこにしかない価値を見つけ出し、考え続けることを心がけたい。(とかく新商品開発時には力を入れるが、商品が出来て終わってしまっている)

・顧客中心主義について参考になりました。ワークショップについては、是非お客様にも考えてもらいたいと思いました。

・今、得意なものにこだわって指導していますが、これは過去の栄光であると気付かされました。これからはなかなか解決できていないことに積極的に取り組んでいかなければと思いました。地元企業の課題はチャンスであるということを考えていきます。

・もっと色々なお話しを聞いてみたかった。分かりやすく説明していただき、よかった。バリュープロポジションを考えること、そして実践することが役にたった。今後、企業支援をしていくのに大変参考になった。

・顧客中心主義についてある程度理解できたかも。(正直、顧客絶対主義と混同してしまうケースが出てくると思う) お客様が買う理由について、経営者と一緒に考えてみたいと思います。ありがとうございました。

・「顧客絶対」→「中心」に変わる事への必要性を認識できました。企業支援のツールとして役立たせていただきます。商品開発、特産品開発の仕掛けにワークショップが参考になりました

 

浜田市の経営指導員の皆様、講演のお骨折りをいただいた多根俊一郎様、ありがとうございました。

 

帰りの電車の関係で、会場は15:30に失礼させていただき、再び15:45発の高速バスで浜田市から広島駅に向かいました。

2時間以上かかって、20分遅れで広島駅到着。既に夜になっていました。

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18:47発の「のぞみ」に搭乗。

「バスが広島駅に時間通り到着していたら、また広島風お好み焼きを食べよう!」と思っていたのですが、残念ながら時間的に間に合わず。

車中で穴子弁当と地ビールで夕食。

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自宅に到着したのは23:00過ぎ。

本日は移動時間だけで合計10時間。

長い一日でした。

 

小野市商工会議所様で講演しました

昨日11/27(水)、兵庫県小野市にある小野商工会議所様で、「改めてお客様中心主義について考えよう」と題して講演しました。

事前申込は64名、ご参加は約60名。これだけ多くの方々にご参加いただき、有り難いことです。

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小野市は、播州算盤と、250年あまりの歴史を誇るハサミ・鎌・包丁などの家庭用刃物を特産業として発展してきました。しかし、ここ20年間、右肩下がりの状況が続いています。

さらに小売業も、大型店舗の進出やネット販売の普及、さらに後継者不足から、業績が低迷しています。

このように厳しい状況が続いている中で、講演のお声がけをいただきました。

 

講演の前に、キンボシ社長の田中隆夫様とお話しする機会をいただきました。

田中様は小野商工会議所の副会長であり、また私の本をお読みいただき、「今回の講演会に来てもらったらどうか」と提案いただいた方です。

キンボシ株式会社のホームページ

キンボシ様は、鎌や芝刈り機等の園芸用具、園芸機器の総合メーカーです。「ゴールデンスター」というブランド名で国内に展開しておられます。

地元のプロの職人が手作りで作った商品を販売しており、同業他社と比べて価格は高いものの、アマゾンなどでは人気。ネットを見たお客様から全国小売店舗へ引き合いも多いとのことです。

プロの園芸用品通販店「キンボシ・プロ」

まさに小野の地場産業です。

田中社長は、「縮小し続けている国内市場の中で、要求レベルが高くなっていくお客様にお応えし続けているのは、当社だけ。価格だけで勝負している他社は、中国などの大量生産メーカーに負けている」とおっしゃっていました。

キンボシ様が作成されたプロモーション用DVD「鎌つくっちゃった」もいただきました。なんとアニメ。YouTubeでも公開されています。

「大量生産ではなく、職人技のこだわりの一品」にかけるキンボシ様の想いが伝わってきます。お客様への高い価値を、常に追求し続けておられるのですね。

 

今回の講演は、下記で2時間半の内容でした。

・顧客中心主義の戦略思考(講演40分)
・ワークショップ (40分)
・仮説検証プロセス (20分)
・現状維持は破滅 (20分)
・質疑応答 (30分)

私はいつも講演でアンケートを実施し、実際にお話しした内容を検証して、次回以降の講演での参考にしています。(いわゆる「PDCAによる仮説検証」の実践です)

今回の講演では、49名と出席者の8割以上の方々にアンケートをご提出頂きました。皆様からいただいた全てのご感想を紹介します。

アンケートからは、「小野をなんとかしたい」という皆様の真摯なお考えが伝わってきます。有り難うございました。(参考までに、アンケート上で役職名や所属部署を記入頂いた方の分はカッコで明記しています)

■とてもよかった (20名)

・今日の話をマーケティング・企画に展開して、従業員とともに展開していきたいと考えています。先生の本を使わせて頂いています。今後もよりいっそう教材として勉強させて頂きます。(社長)

・自分の考え方で、プランから実行へ進めない点が間違いであることに気づけた。数多くトライするという考え方を実行していきたい。

・イノベーション→スピードアップ!各方面の講演会で聞いた話を、集約して頂いたように思いました。(社長)

・これまでマーケティングの勉強をしたことがなかったのですが、お話しを聞いて、どうすれば価格競争にならずに、オンリーワンの製品、顧客の価値創出を頭に置いた開発が必要だと感じました。ありがとうございました。(営業)

・とても楽しく勉強できました。自分にとって今後どのように仕事を進めていけばいいのか、非常に勉強になりました。より勉強していく上で、永井様の著書を読んでみたくなりました。こんな田舎の町までお越し頂き、ありがとうございます。(国内営業)

・プラン、実行、色々な形で行っていますが、時間をほんとにムダにしていると思います。見直していきながら、いろいろな改革をしていかねばと思います。高齢者施設なのでどう地域に受け容れられるのか、今後どのような展開をしていく中で未来のご利用の方に受け容れられるのか、考えていく目印になったと思います。ありがとうございました。(主任)

・日々の業務の場面と色々照らし合わせて貴重な話を聞かせて頂きました。一番印象が強かったのがトランジスタラジオの事例でした。現状に甘んじることなく、新しいニーズに挑戦しながら、つくりだしていかなくてはいけない。「新たな顧客創造」をまずは実践していくつもりです。また是非本を読みたいと思いました。(営業部)

・これからの営業活動での考え方の参考になりました。(本社営業グループ)

・同業他社製品に対する対抗策について、他社同等製品と類似品になってしまい、お客様の立場になればどこにどんな違いがあるかを、製品性能と商品説明でわかりやすく説明する等の方法をどう考えていくかということだと思いました。(営業企画)

・改めてイノベーションの重要性を感じました。付加価値、価値創造を考え、行動につなげていきたい。

・営業ですので、即実践に活用出来るくらいにわかりやすい内容でした。今の弊社のスタイルがどちらかというと顧客絶対主義なのではないかと思います。改めて顧客中心主義で考え直し、仕事に活かしたいと思います。また、パワーポイントの作り方や、例に出されていた話題がとても参考になりました。(本社営業グループ)

・課題が多すぎ、中身が濃い為、理解が難しいです。簡単にすると全体が見えないでしょう。本を買って読んでみます。

・「顧客絶対主義vs.顧客中心主義」の話が印象的でした。「大切な人、間違えたら助ける。気づかない要望に応える」にハッとさせられました。ずっと接客の仕事をしているので、お客様と直接接することが多いので共感しました。また「時間を味方につけるには、圧倒的なスピードで動く」..この一言にもハッとさせられました。日々、時短を目標に生活しているので、今以上に速く動けるようにして時間を無駄にしないようにしようと思いました。貴重なお話しを有り難うございます。明日からも頑張ります。

・自社の強み、価値をあらためて再確認し、スピード感を持って仕事を行っていくことが大切であると感じました。「顧客絶対主義ではなく顧客中心主義であるべき」とのフレーズに大変深い共感を受けました。支店の部下全員への研修の題材に活用し、今後の業務に活かしていきたいと思います。貴重なお時間をありがとうございます。

・PDCAサイクルの継続(スパイラル)は課題認識を繰り返すために必要であると思います。お客様絶対主義→お客様中心主義、実践していこうと思いました。

・「私たちの価値は何か?」ワークショップで、バリュープロポジションを同僚と考えることができ、戦略思考を学べました。自分もPDCAサイクルの中でプランに時間をかけ想定外を想定する人間でしたが、「まずやってみる」ことを大切にし、圧倒的なスピードで動くことを心がけたいです。是非一度、先生の本を読んでみたいと思います。

・サービス業でどう顧客をとらえ、顧客中心主義をどう実践するかを考えるきっかけになりました。仕事で価値創造をどうするかを検討してみたいと思います。顧客目線に立ってみること、価値をどこに見出し、どう顧客対応し説明するのかを職場全体で考えてみていましたが、今日の講演で少し頭の整理が出来たように感じました。また講演内容が具体例がありわかりやすいと感じました。「マネジメント」の考え方に近いと感じました。(支店長)

・全ての部分で役立ちます。価値の見極め方がわかりました。お客様が買われる本当の理由を見つけ出せると思いました。本当に素晴らしいセミナーでした。「100円のコーラを1000円で売る」は読ませて頂きました。さらに今回のセミナーで理解が深くなりました。他のご本もこれから買わせて頂きます。

・(コメント未記入2件)

 

■よかった (23名)

・質問させて頂いて気付かせていただきました。ありがとうございました。最終的なユーザーへのアプローチをトライするのに、失敗を怖れずチャレンジする気合いを学びました。開発にもっと失敗しなさいと言ってみます。(工場長)

・じっくり本を読んでみたいと思います。米国式のPDCAの話は参考になりました。付加価値についてお客様目線でどのように考えたらいいのか、参考になりました。どのような価値観を持たすのかが問題になりますが、現状は低価格の話ばかりで、なかなか機能の話になりません。このあたりも今後の課題のように考えています。

・ありがとうございました。ワークショップなどもあり、考える貴重な時間になりました。接客業なのでお客様に直接接して、お客様自身気付いていない課題を掘り出し、提案していきたいと思います。今後の仕事では、日々の仕事に追われ、考える時間がなかったので、まずはバリュープ
ロポジションを明確にすること。ワークショップであったように具体的に考え、顧客そして自分達をよく理解し、本当にすべきことを見つけていきます。(販売)

・競合の相手は同業他社だと思っていました。また顧客の課題にこだわるという点は新たな市場開拓に役立つと思います。様々なたとえが入ったお話しでわかりやすかったです。

・ワークショップでの課題を日々やっていこうと思いました。また新しいことに調整していかな、と思いました。

・日々PDCAサイクルを取り入れ、今後に活かしていきたい。

・講演は大変わかりやすかった。売れない商品をどうすれば売れるようになるか、が少しわかったような気がする。

・アイデアがなければ決して成功しない。今より10倍挑戦して、5倍失敗して、2倍成功しろというヤフーCEOの言葉が印象に残ったので、今後の製品作りに活かしていきたい。(社長)

・価格勝負では絶対勝てないことを知る→価値を下げてしまう。だから「顧客中心主義」:お客様のニーズを知る→お客様の求めるものを提供していく。ということを今後の仕事に活かしていきます。ワークショップの時間を設けて下さってありがとうございます。(代表)

・企画を作る考え方が具体的なものとして見えてきた。狭い中でしか考えられていなかったが、広い視野での見方での考え方を知った。(営業・グループリーダー)

・本日の講演を参考にして、仕事に役立てたいです。価格にあった製品であるべきでしょうか?安いなら粗悪品との理解ですが、本物でありたいです。

・普段聴けない講演が聴くことができて、ありがとうございました。製造業ですが、現状維持が多い中、新しい商品に対することをPDCAで求められる考え方で進化していきます。

・「顧客絶対主義から顧客中心主義へ」は機能の見直しに役立てたい。これまでは顧客絶対主義だったように考えています。(工場長)

・日々の営業活動に活かせるような、具体的な話が聞け、是非活用していきたいと思います。

・私どもの会社の問題について、解決するべき方向性の指針となり、参考になった。(マーケティングの考え方、方法)今後も企業経営に参考になる講演を開催して欲しい。(取締役部長)

・企画の時間の短縮を目標として、PDCAを速く回すこと。商品開発における時間の大切さを実感し、挑戦する回数を増やすことを再認識した。また時間資源は無限でないということを再認識した。

・頭が固いので考え方を少し変える。新しい課題を見つけてチャレンジし続けます。

・お客様へどう商品の価値を伝えたらよいか、方法論の勉強になりました。自社においても価格低下は避ける努力はしています。価値を下げない努力はしていますので、間違っていないと再度理解できました。コビー氏の7つの習慣についてはどう思われますか?PDCAは平面で捉えるのではなく螺旋で考えることは大切だと思います。5W2Hも同じ考え方でよいのでしょうか?(社長)

・講演の話の中で物事にたとえてお話しをされましたが、たとえが非常にわかりやすかったと思います。なかなか計画を立てる時間がかかって、実行し手直しして次に活かすという事に対してのスピード力がないのが現実です。そしてそれに気付けそうで気付いていないのも現実ではないかと自分に当てはめると思いました。思い立ったらすぐに行動できる思い切った考え方になれたらと思います。

・製造・販売の業種には効果がありそうなお話し。当方の取引先に対するコンサルに本日の話を利用したいです。プランに時間をかけすぎるべきでないのは同感です。(支店長代理)

・類似した商品を取り扱う業界に勤務する者としては、非常に啓発される内容でした。今後の業務に大いに参考にさせていただきます。

・競合にない会社の、自分のできる付加価値について考えるきっかけになりました。3ヶ月の企画→半年の仮説検証・実行、の話が印象的でした。仕事に活かしていきたいと思います。

・当社は自社製品がほとんどなく、お客様の仕様をいただき物作りをしています。はっきりいって価格を重視され、困っています。自社の価値を再確認したいと思います。(設計)

 

■まあまあ (6名)

・あまり役立たない。それぞれのビジネスによってテーマが違いすぎると思うので、関連性を感じなかった。

・私どもは小売業ですが、100円のコーラを1000円で売る方法がわからない。(今日の話では)

・考え方の一つとして参考にします。本を買って読んでみようとは思いませんでしたが、図書館で借りて、読んでみようと思いました。

・仕事では、商品開発や物作りのスピード感、顧客絶対主義vs.顧客中心主義の話が役立ちそうです。ワークショップの時間がもう少し欲しかったです。スライドが見にくかったため、内容のプリントが欲しかった。

・当たり前のことに何も感じず、日々が過ぎる状況であるので、疑問を持たすように気付かせるように社内に持って帰って実施します。

・(コメント未記入2件)

 

■よくない (0名)

■とてもよくない (0名)

 

アンケートにご協力下さった皆さま、有り難うございました。

 
 
小野商工会副会長の田中隆夫様、小野商工会議所専務理事の横山種機様、今回の講演会開催にあたって色々とお骨折り頂いた中小企業相談所長の小林昌樹様には、厚く御礼申し上げます。

 

小野商工会議所の講演が夕方に終わった後、姫路経由で、夜、広島に到着しました。

広島には20年近く前に出張で来て以来、2回目です。

Img_2608

夕食は、前々から食べたかった、広島名物のお好み焼きをいただきました。

Img_2613 

今朝は高速バスで広島から島根県・浜田に移動し、島根県商工会連合会様で講演です。

今日の講演も、どのような方々にお目にかかれるか、楽しみです。

 

日本企業が核とすべきは製品か?技術か? 東レとシャープの事例からの学び

「メイド・イン・ジャパン 逆襲のシナリオ」(NHK取材班、宝島社)の感想の3回目です。

 

本書では、「技術にこだわるべきか?製品にこだわるべきか?」というテーマが書かれています。

結論から申し上げると、本書の答えは、

 企業にとって、核とすべきは技術であって、製品ではない

ということです。

 

Appleのように、製品の選択と集中で成功した企業のサクセスストーリーを聞いてきた私たちにとっては、意外なことかもしれません。

確かにAppleは、スティーブ・ジョブス復帰前までは膨大な製品群がありました。

そしてジョブス復帰後、製品群は絞り込まれ、新製品発表でもモデル数を限定、高度な戦略力と集中投資で高成長・高収益を実現してきました。

本書では、この『選択と集中』が出来るのはジョブスの構想力とプロデュース力に依っている、としています。

 

一方で本書では、製品ではなく、技術を核として多様な製品を生み出すことが、日本企業の成功パターンである、としています。

 

例えば、東レは1961年に炭素繊維の研究開発に着手。

製品として出来上がったのが10年後の1971年。

しかしその時点でも使い道は定まっていませんでした。当初から「旅客機の構造体に使えるかもしれない」というアイデアはありましたが、スペック的にはまだまだ。

そこで,「鉄の1/4の軽さで10倍の強度」という炭素繊維の特性を活かし、釣り竿やゴルフクラブに展開したところ大ヒット。

その技術が自動車に使われ、現在は当初のアイデアの通り航空機にも使われています。

本書では「深は新なり」という東レ・栗原フェローの言葉が紹介されています。「一つのことを深く追求していけば、新しい発見がある」ということです。

そのためには「超継続」が必要であり、失敗から学び続けることが求められます。

そして東レでは優秀な技術者を定年後も手放さず、「人財」として長く雇う人材戦略を取っています。

 

現在苦しんでいるシャープも、東レ同様、かつては液晶技術を核に、バッテリーが長時間稼働する液晶電卓、電子手帳ザウルス、液晶ビューカムといった多彩な製品群を生み出していました。

その後1998年、ブラウン管テレビ全盛の当時、「国内販売のテレビを2005年までに液晶に置き換える」という「液晶テレビ宣言」を行いました。

この大胆な「選択と集中戦略」は大当たりし、液晶テレビ普及で歴史的な役割を果たしました。

しかし結果として、全社経営資源も液晶テレビに集中投資することになりました。シャープは液晶テレビに社運をかけることになり、「技術を核に次々と新製品を生み出す」という勝ちパターンに狂いが生じていきます。

その後、液晶テレビがコモディティ化の波に飲み込まれ、コスト競争に陥ると、液晶テレビに命運をかけていたシャープは次第に追い詰められてしまいました。

最近のニュースでは、スマホ液晶への注力が伝えられています。かつての「勝ちパターン」に戻ろうとされているのでしょう。

 

■「技術を核に徹底的に深める」

■「これを顧客視点で、キラーアプリとしての製品に展開する」

■「そのために、超長期間の超継続」

■「超継続実現のために、人財の長期確保」

これらが互いに密接に絡み合っているのですね。

これは、世界でも際だった高い技術力を持ち、人材の定着度が高い日本企業だからこそ取れる戦略です。

激しい競争環境の中で、この強みをいかに維持していくかが問われていると思います。

 

 

【11/27まで無料公開中】CAKES連載『「戦略力」が身につく方法』最終回「半日で立てた仮説が成功をもたらす」が掲載されました

CAKES連載中の『「戦略力」が身につく方法』(PHPビジネス新書)からの抜粋記事・最終回が掲載されました。

第7回「半日で立てた仮説が成功をもたらす」

 

かつては3ヶ月間程度かけて綿密な企画を立てることは、割と一般的だったのではないでしょうか?私も1990年代に製品プランナーだった頃は、半年間程度かけて製品企画を立てていました。

しかしこの10年、私はこの方法ではなかなか成果を生み出せないことに気がつきました。

世の中の変化が速くなり、情報も膨大になり、完璧な企画を立てるのはますます難しくなっています。

さらに、企画が承認された頃には、賞味期限切れになってしまうことが多いのです。

 

では、どうするか?

半日で「仮説」を立てることが一つの解決策です。

しかし、「半日で立てた企画なんて、本当に役立つのか?」と思われるかもしれませんね。

確かに仮説を立てただけでは、不十分です。

今回は、そのことついて書きました。

 

本記事は11/27まで無料公開中です。

 

本連載は今回で最終回になります。

本連載は、今年9月に出版した『「戦略力」が身につく方法』(PHPビジネス新書)からの抜粋記事です。

本書では他にも様々な戦略やマーケティングの方法論をご紹介しています。ご興味ある方は、本書をご覧下さい。

 

メイド・イン・ジャパン復活のカギは、「スピード」と「正しいリスクテイク」。しかしそれは大きなチャンスでもある

「メイド・イン・ジャパン 逆襲のシナリオ」(NHK取材班、宝島社)を読了しました。

 

昨日のブログでご紹介したように、本書は1年前にNHKスペシャルで放映された内容を書籍化したものです。

1年前のコンテンツですが、今こそ必要と思われる箴言が沢山ありました。

 

本書で学べたことは沢山ありますが、私が感じたことをサマリーすると、メイド・イン・ジャパン復活のために必要なことは、表題の通り、「スピード」「正しいリスクテイク」だということです。

 

「スピード」…日本全体がいわゆる「大企業病」にかかっている状況になっています。

根回しに時間がかかりすぎて、意志決定が遅い。それに対して、ライバルの台湾・中国・韓国メーカーは現場に権限委譲されており、数十倍のスピードで動いています。

現代では、「時間」は、「ヒト、モノ、カネ、情報」に続く第5の経営資源です。

いかに意志決定プロセスを権限委譲して簡素化し、スピードを上げるか、ということが成功のカギだと改めて痛感しました。

 

「正しいリスクテイク」…「リスク管理」という言葉が流行っています。

本来の「リスク管理」とは「リスクを正しく評価し、取るべきリスクは取り、そのリスクを管理すること」ということです。

しかし多くの日本企業では「リスクを取らないこと」と理解されてしまっている現状があります。

このため、新しいことには何もチャレンジしようとしない。

顧客の課題を先取りしようとぜずに、言いなりになってしまっているのも、「リスクを取らない」ことが要因なのかもしれません。

一方のライバルであるライバルの台湾・中国・韓国メーカーは、どんどんリスクを取って顧客の課題を先取りし、動いています。

 

しかし、この二つが課題であるということは、見方を変えれば、日本企業にとってはもの凄いチャンスなのです。

本書では、「技術では日本企業にかなわない」というライバルメーカーの経営者の言葉が紹介されています。

現時点でも、日本企業は、ライバルの台湾・中国・韓国メーカーを圧倒しているのです。

ライバルたちが「技術力」という課題を克服するのは難題です。

一方で、日本企業の課題である「スピード」と「正しいリスクテイク」は、意志決定プロセスを変えれば克服できます。「その気になって、やればできる」のです。

 

メイド・イン・ジャパン復活のカギは、要は「やる気があるかどうか」「本気になるかどうか?」。

実際の企業の現場におられる方々は大変かと思いますが、「解決したい」という強い気持ちを持っている人たちにとっては、可能性はとても大きいと改めて実感しました。

 

 

ものづくりのヒントは、『「製品開発」ではなく「市場開拓」』。そして「絶対に勝つ!」という強い執念

「メイド・イン・ジャパン 逆襲のシナリオ」(NHK取材班、宝島社)を読んでいます。

2012年10月27日、28日にNHKスペシャルの同名番組で放映された内容を書籍化したものです。

コンテンツは1年前のものですが、今こそ読むべき内容だと感じました。

 

この中で、中国ハイアール・張瑞敏CEOの考え方が紹介されていました。

「ものづくりとは何か?」を考える上で、大きな示唆があると思いましたので、ご紹介します。

—(以下、p.176から引用)—

….開発者に『君は製品を開発しているわけではなく、市場を開拓しているのだ』と教え込んでいます。これを理解させるのは非常に重要だと思います。

 一般的に言えば、開発者は『私の仕事は新商品を開発することだ』と思いこみやすいものです。この製品にはこういった性能、こういった機能があり、非常に立派な製品だと自慢しやすいのですが、消費者がその機能を求めているのか、そこまでは考えが及んでいないかもしれません。
 
 そこでハイアールでは、開発者に『あなたの仕事は新商品を開発するのではなく市場を開拓するもので、消費者のニーズを正確に把握すること』と認識させています。そのために、開発者と営業部隊に意志の疎通を図ってもらうことにしました。新商品を開発する前に、まずは営業部隊と一緒に市場に出て、消費者が求めているものを理解することに努めてもらっています。
 
 —(以上、引用)—

『「製品開発」ではなく「市場開拓」』という考え方は、とても重要だと思います。

 

このことは、昨晩(2013/11/17)の同じNHKスペシャル「成長か、死か~ユニクロ 40億人市場への賭け~」を見た時も感じました。

この番組では、グローバル展開を急ぐユニクロの取り組みを紹介していました。

ユニクロのグローバル戦略の一つが、「ベースオブピラミッド(BOP)」と呼ばれる世界最貧国市場への進出。そこでバングラディッシュに進出しています。

「最貧国の一つバングラデシュでビジネスを成功させることができれば、アフリカなど世界中どこでも商売ができる」という戦略です。

当初ユニクロは、自社デザイナーがバングラディッシュの女性の嗜好にあったカジュアルウェアを開発し、商品として並べます。しかし全く売れない現実に直面します。

多くのバングラディッシュの女性は、適価(900円–日本の感覚で18000円)のカジュアルウェアは買わず、たとえ高価(2000円–日本の感覚で4万円)でも気に入った伝統的衣装を買ったのでした。

リモートテレビ会議で報告を受けた柳井社長は、「バングラディッシュの女性たちに受け容れられる伝統的衣装を開発すべきだ。たとえ失敗しても学び続け、成功するまで考え続けろ」と指示を出します。

市場開拓のために、あえてこれまでの製品開発戦略を否定したのです。

デザイナーは、現地女性の家庭のクローゼットを回って調査します。そしてカジュアルウェアがクローゼットの中にはほとんどない現実に驚愕します。

さらにユニクロ・バングラデシュでは、あえて自社開発を保留し伝統的衣装を仕入れて顧客の好みを探っていきます。

まさに、「製品開発」でなく「市場開拓」に活路を見いだしているのです。

同時に、ユニクロの「絶対に勝つ」という強い執念を感じました。

 

ものづくりのヒントは、『「製品開発」ではなく「市場開拓」』。

そして「絶対に勝つ!」という強い執念にある。

二つのNHKスペシャルのコンテンツを見て、改めてそう感じました。

 

【11/20まで無料公開中】CAKES連載『「戦略力」が身につく方法』第6回「ライバルは追うな。顧客に全力を集中せよ」が掲載されました

CAKES連載中の『「戦略力」が身につく方法』(PHPビジネス新書)からの抜粋記事第6回が掲載されました。

第6回「ライバルは追うな。顧客に全力を集中せよ」

  

私たちはともすると、ライバルの動きが気になり、ライバルの動きに翻弄され勝ちです。

「ライバルを打倒する」という考え方は、一見攻撃的ですが、実は受け身の姿勢なのです。

本当に大切なことは、顧客の課題。オーソドックスに見えるかもしれませんが、実はこれが攻めの姿勢です。

今回はそのことについて書きました。

  

第6回は11/20まで無料公開中です。本連載も残り2回となりました。是非ご一読を。

 

個別の成功事例を学んでも、なかなか成功を生み出せない。だから、成功のプロセスを学ぶ

先日当ブログで書いた「GoogleやAppleが膨大な失敗プロジェクトを続けている理由が分かると、イノベーションが生まれる仕組みが分かる」の続きです。

 

私は、『「100円のコーラを1000円で売る方法」は、どのような要因でシリーズで50万部も売れたのですか?」というご質問をいただくことが、よくあります。

ご質問に対しては、いくつかの考えられる要因をお答えします。

しかし私が、同じ方法論で次の本を書いても、必ずしも売れるとは限らないでしょう。

それは「100円のコーラを1000円で売る方法」が売れたのは、編集者の方々とのご縁で生まれた数多くのアイデアや、出版社やメディアの皆様の様々なご尽力、市場の状況・ニーズ・タイミングなど、様々なご縁や幸運に恵まれたからだと思います。

  

私自身も、会社員時代の業務でも、執筆や講演などでも、常にアイデアを試しながら、仮説を立てて検証を繰り返しています。

ある程度の成功パターンはありますが、それでも成功確率は高くありません。

仮説検証を繰り返した中から、お客様などから評価をいただけるいくつかのモノが生まれているのが現実です。

 

成功事例を分析し、それをさかのぼり、どのように試行され、さらにアイデアがどうだったのかを分析するアプローチがあります。

絵にするとこんな感じです。

Success201311081  

しかし、このような分析をして、成功事例を真似てみても、なかなか成功しません。

それは先日のブログでも書きましたように、一つの成功事例の裏には、実は多くの失敗した試行プロジェクトと、膨大な試行しなかったアイデアがあり、成功事例分析だけではこれらのことが分析できないからです。

絵にするとこんな感じです。

Success201311082

喩えてみれば、成魚になった鮭を調べて、稚魚の時はどうだったか、卵はどのような状態だったかを調べて、卵の段階からそれを再現しようとしているようなものですね。

 

しかし成功事例はこの多くのアイデアや失敗プロジェクトの中から、あえて言うと「いくつものご縁と幸運に恵まれた」プロジェクトが成功している、というのが現実なのではないでしょうか?

それは鮭が生んだ3000個の卵の中から、幸運に恵まれた卵が成魚になるのと同じだと思います。

 

ですので成功を生み出すためには、成功を生み出すためのプロセスを学ぶことが、恐らく必要なのではないかと思います。

絵にするとこんな感じです。

Success201311083_2    

数多くのアイデアを生み出し、迅速に仮説検証で試行し見極めて、成功を生み出すことが必要なのではないかと思います。
 
 

このように考えると、質を究めることも大切ですが、一方で量をこなすことも大切だと思うのです。

 

私自身、まだまだ未熟ですので、これからも、量をこなして修行し続けたいと思っています。

毎日書き続け、累計2200エントリーを超えたこのブログも、そんな修行の場です。

  

【11/13まで無料公開中】CAKES連載『「戦略力」が身につく方法』第5回「圧倒的に強い弱者を目指す」が掲載されました

CAKES連載中の『「戦略力」が身につく方法』(PHPビジネス新書)からの抜粋記事第5回が掲載されました。

第5回「圧倒的に強い弱者を目指す」

 
 
「圧倒的に強い弱者」という言葉。矛盾するように聞こえますが、実在します。

そのカギは「顧客をどのように考えるか」にあるのです。

 

第5回は11/13まで無料公開中です。

 

三谷宏治著「経営戦略全史」は、マーケティング理論の体系的な百科事典

三谷宏治著「経営戦略全史」を読了しました。

本書は、19世紀に生まれた大テイラー主義と言われている「定量的分析」、および大メイヨー主義と言われている「人間的議論」の二大潮流から始まって、アンゾフ、ドラッカー、チャンドラー、ポーター、コトラー、さらにはハメル、野中、バーニー、ミンツバーグ、キャプラン、キム、クリステンセンなどを経て、最新のアダプティブ戦略までを、非常に分かりやすくかみ砕いた壮大なストーリーに展開しています。

知的興奮を大いに刺激されました。

 

同時に私自身、本書で大きな学びもいただきました。

私は「本来のPDCAは、らせん的発展を実現する、学びのプロセス」「現代では、3ヶ月の完璧な企画よりも、半日の仮説を即実行・検証」と考えていますが、この考え方は、アダプティブ理論の視点で展開させると、さらに可能性が広がりそうです。

 

ミンツバーグ著「戦略サファリ」は、世の中の様々なマーケティング理論を10の学派に分類して紹介しており、網羅性と理論の深掘りがともに高い点で名著です。

この「戦略サファリ」と本書を比較すると、各理論の繋がりをとても分かりやすく提示しているという点で、本書は優れていると思います。

マーケティング理論を体系的に紹介した、まさに百科事典と言えるのではないでしょうか。

 

本書の中でも、ミンツバーグの「戦略はパターン化できない」「状況次第で組み合わせよ」という言葉が紹介されています。このミンツバーグの言葉も、数多くある理論の一つではありますが、私も深く共感する言葉です。

本書で紹介されている核理論の全体像と位置づけを理解すると、普段の仕事で役立てることができるのではないかと思います。
 

 

GoogleやAppleが膨大な失敗プロジェクトを続けている理由が分かると、イノベーションが生まれる仕組みが分かる

新しいサービスや商品を生み出しているGoogleやAppleは、一方で膨大な失敗プロジェクトも生み出し続けています。

Googleの失敗プロジェクトは、次のとおりです。

Google X (2005)
Google Catalogs (2002→2009)
Google Web Accelerator (2005→2008)
Google Video Player (2005→2007)
Google Answer (2002→2006)
Google Wave (2009→2010)
Google Search Wiki (2008→2010)
Google Audio Ads (2006→2009)
Dodgevall (2005→2009)
Jaiku (2007→2009)
Google Notebook (2006→2009)
Google Page Creator (2006→2008)
Nexus Q (2012)
Pool Party and Disco
Google Buzz

Appleの失敗プロジェクトも、次のとおりです。

Apple III (1980)
Lisa (1983)
Macintosh TV (1993)
Newton (1993)
QuickTake カメラ (1994)
Pippin (1996)
iPod Photo (2004)
iPod Hi-Fi (2006)
Bluetooth ヘッドセット (2007)
ボタンのないiPod Shuffle
Ping (2010)
Facetime のオープン化 (2010)

GoogleやAppleの例を挙げましたが、両社に限らず、ほとんどのイノベーションの試みは失敗するのが現実でもあります。

 

では、ほとんどの試みが失敗するのであれば、イノベーションにはチャレンジしてはいけないのでしょうか?

そういうことではないと思います。

 

鮭は一度に3,000個の卵を産卵し、そのうちの一部が稚魚になり、成魚に育つのはさらにごく一部です。

ほとんどの卵が、成魚まで育ちません。

鮭はそれでも卵を産み続けます。

卵を産んだ時点では、どの卵が成魚になるかは全く分かりません。多くの偶然に恵まれた卵が、成魚に育ちます。

だから卵を産み続けないと、鮭は絶滅するのですよね。

 

同様に、アイデアがなければイノベーションの元は生まれませんし、イノベーションも決して成功しませんし、企業も存続しません。

卵=アイデア
稚魚=試行したイノベーション
成魚=成功したイノベーション

と考えると、分かりやすいのではないでしょうか?

 

ある知り合いの編集者の方から、「本も同じだ」とお聞きしたことがあります。

著者と編集者は、売れる本にするために、一生懸命知恵を絞って本を出しています。

しかしベストセラーになるのは、そのうちごく一部。

編集者と著者の努力に加えて、数多くの偶然が積み重なり、ベストセラーが生まれます。

そして、本を作っている時点でベストセラーになるかどうかは、決して分かりません。

それでもやはり、本を作らない限り、ベストセラーは決して生まれません。

 

このように考えると、企業も、つねに顧客視点で考え続け、アイデアを生み出し続け、試し、見極め続けることが必要なのではないかと思います。

実は企業にとって一番大きなリスクは、リスクを回避しようとするあまり、アイデアを試行しようとしないことだと思います。

 

 

CAKES連載『「戦略力」が身につく方法』第3回・第4回が掲載されました

CAKES連載中の『「戦略力」が身につく方法』(PHPビジネス新書)からの抜粋記事第3回・第4回が掲載されました。

 

第3回 孤高の戦略は、失敗する

複雑で精緻な戦略は、必ずしも多くの関係者を巻き込める強力な戦略とはなり得ません。このことについてまとめてみました。

 

第4回 企画部門と現場は、なぜ話がかみ合わないのか?

企画部門と現場は、なかなか話が通じません。それはお互いの立場や考え方が違うからです。そのことを理解すれば、お互いに協業が進み、価値を生み出すことができます。

 

第4回は11/6まで無料公開中です。
 

 

エルピーダ元社長・坂本幸雄さん著「不本意な敗戦」

日本は一時期、DRAMで80%の世界シェアを誇り、NEC、三菱、日立等、多くの国内IT各社は大きな売上を稼いでいました。

しかしその後、汎用DRAMはアジア勢との価格競争に陥り、現在はエルピーダ 1社に集約。そのエルピーダも2012年2月に会社更生法適用申請がされ、現在マイクロン傘下で経営されています。

皮肉なことに、厳しい経営環境下でも投資を継続してきたモバイルDRAM需要がその後大きく育ち、現在のエルピーダのビジネスは絶好調です。

このエルピーダで10年間社長を務められた坂本幸雄さんは、ここしばらく、記者会見以外にほとんどマスコミに登場されませんでしたが、このたびご著書「不本意な敗戦」を上梓されました。

先日、書店で本書を見つけ、すぐに購入。色々な学びがありました。

実はエルピーダは社員を一人も切っていません。厳しい状況でも技術力を維持したことが、現在の絶好調に繋がっています。そのあたりを坂本さんは次のように述べておられます。

—(以下、p.48-50から引用)—

一般的に倒産した会社というのはムダが多く、多数の余剰人員を抱えているものです。….

しかし、エルピーダには、もともと、そんなにムダはありません。…一人あたりの売上高は、おおよそ1億円です。日本の大手半導体メーカーのなかには、この数字が3000万円に届かない会社もあります。…

…人員リストラした途端、人の流出と連動して、技術も流出してしまいます。…韓国企業や台湾企業は日本の電機メーカーのリストラのおかげでどれだけ恩恵を受けたかわかりません。普通は強くなるためにリストラするものですが、日本の電機メーカーはリストラした分弱くなっていきます。

—(以上、引用)—

まさに日本の製造業が陥ってしまった、戦略欠如の一面を描いています。

 

また、モバイルDRAMは顧客毎にきめ細かいカスタマイズが必要になります。これが価格競争に陥り勝ちな、汎用DRAMと大きく異なる点です。これに関しても次のように述べておられます。

—(以下、p.64-67から引用)—

…お客様の言うことを忠実に実行するだけの「前垂れ商売ではうまくいかない」ということです。….

(日本の半導体企業は大手電機メーカーの一部門として発足した経緯から) 主導権は「半導体を使う側」が握っています。新興の半導体部門は社内の発言力も弱く、「こういう半導体を必要だから作ってくれ」と言われると、そのとおりにします。

…(インテルは) お客様であるパソコンメーカーとの関係でも主導権を握ったのです。つまり、各パソコンメーカーは、インテルがどんなCPUを開発するかに合わせて、自らのパソコンの商品設計を決めるようになりました。

ビジネスの主導権をがっちり握ることができれば、たやすく高収益をあげられるということも、インテルの軌跡は実証しています。

半導体企業の理想は、やはり、これです。

お客様を大切にしつつ、しかし、その言いなりではなく、お客様が潜在的にほしいと思っている技術や製品を先回りしてつくる。…エルピーダが2003年から手がけているモバイルDRAMは、こうした先取り型の技術開発の一例だと思います。

—(以上、引用)—

「お客様の言いなりになっているだけでは価値を生み出さず、価格勝負」ということは、私も講演や本などでお伝えしていることですので、とても共感しました。

 

本書は、厳しい環境の中で10年以上エルピーダを経営されてきた坂本さんならではの視点で、日本企業や日本企業を取り巻く環境について、他にも多くの問題点を指摘されておられます。

ご一読をお勧めします。

 

第15回世界経営者会議に参加。そのメモ書き (その5) 2日目:

日本経済新聞社主催「第15回 世界経営者会議」のレポート、今回は最終回です。

 

【これまでの記事】

その1: 1日目:「グローバル化」「透明性」「相互信頼」「日本経営の復活」「イノベーション」

その2: 1日目: HUBLOT会長の話に、とても共感しました

その3: 2日目: GE・イメルト会長、明確なビジョンと戦略

その4: 2日目: 富士フイルム・古森重隆会長。写真フィルム市場崩壊の危機に、いかに事業再構築を果たしたか?

 

■ロンバー・オディエ 銀行マネージングパートナー:クリストフ・ヘンチ氏

・スイスのプライベートバンク。1976 1796年創業で7世代に渡っている。現在8名のパートナーで経営。従業員2000名。東京含め96支店展開。

・外部株主・借入いずれもなく、独立性を保っている。短期的利益追求のプレッシャーはなく、30年単位の長期的視点で経営している。

・「後継者はどう決めているか」という質問に対して…。日本でも17代続いた「とらや」のようなケースもあるのでわかると思う。標準はなくケースバイケース。

・銀行は人で成り立っているビジネスだ。顧客の要望は様々で、標準ソリューションはなく、顧客毎に課題について考え、個別提案している。

・「8名のパートナーの役割は?」という質問に対して….。8名全員の合意で経営している。

 

■アサヒグループホールディングス社長:泉谷直木氏

・社員18,000名、売上1.58兆円。アサヒビール創業は1949年だが、前身の大阪ビール創業は1889年。124年目。

・グローバル化を目指している。M&A実施時には株式市場の評価が重要であり、そのためには自社の企業価値増大が非常に重要。企業価値と売上の2軸で考えた場合、第1グループグローバル企業(コカコーラ、ネスレ、ペプシコ)、第2グローバル企業(ハイネケン、カールスバーグ)のうち、当社は第2グループの下位にいるのが現状との認識。

・そこで経営メカニズムを効かせた企業価値向上経営を目指している。基本戦略は、(1)ファンダメンタル(ROE, 経営インフラ)強化と、(2)ビジネスモメンタム(売上、利益、目標達成率)の成長による、(3)コーポレートバリューの向上(財務価値、時価総額、社会貢献)だ。

・人材は極めて重要。執行役員クラス対象の「アサヒエグゼクティブインスティチュート」(泉谷社長自身が講義)、役員候補者対象の「アサヒエグゼクティブリーダープログラム」(戦略構築力、リーダーシップ力、目標達成力強化を通じ、経営者としての覚悟を決める)、所属長手前の管理職対象の「アサヒネクストリーダープログラム」(集合形式で経営に必要な様々な知識習得を目指す)を実施している。

・ただし、「職場に戻ると何も変化なし」となりがち。そこで仕事の定義づけと能力ランク付けをし、社員も自ら何をしたいかを考えてもらい、マッチングによる適材適所を図っている。

・「消費財は価格競争が厳しい。価格はどう上げていくのか?」という質問に対して….。原点に還ったものづくりだ。どうやって買っていただくか、というものづくりが大切。納得価格を考え、商品価値を上げていく。

 

■アルグレア・インベストメント副会長:イサ・アルグレア氏

・ビジネスでは何よりも「信頼」が大切だ。

・2008年の金融危機以降、信頼はより重要になっている。金、ダイヤ、石油、株取引においても、信頼はお金で買えるものではない。

・リーマンブラザーズは31倍のレバレッジをかけ破綻した。中国の粉ミルク事件も同じ。欲があるからこのようなことが起き、そして全てを失ってしまった。信頼は、それが裏切られるまでは当たり前のものに見えてしまうのだ。

・私見だが、安倍首相は素晴らしいと思う。「環境」を作ろうとしている。消費税アップは他国では国民は許せないと言うだろうが、力があるリーダーは納得させることができる。

・「信頼と統制のバランスはどう考えるのか?」という質問に対して….。時には独裁的な民主主義や拒否権発動も必要だと考えている。

・「では会社の統制はどのように考えているのか?」という質問に対して….。複数方向で話し合いを行う。その上で優先順位付けをする。集団として判断するようにしている。それが無理なのであれば、自分が判断をしている。

 

■旭化成社長:藤原健嗣氏

・売上1.67兆円。内訳は、ケミカル繊維 7,942億円、住宅建材 5,377億円、エレクトロニクス 1,311億円、ヘルスケア 1,856億円。今後ヘルスケアを大きくしていきたい。食もやってみたが止めた。

・旭化成は多角化の歴史だ。共通するのは全事業で繊維素材を使っている点。一方で多角化は劣化した事業を抱えてしまうリスクもある。選択と集中が必要だ。他事業がピークアウトする前に新事業を手がけている。

・成功要因は「持てる資源を最大集中していること」「技術のシーズをあわせて創出していること」。

・選択と集中から、新陳代謝を生み出している。考えているのは3点。(1)成長性(そのモノの成長力と、市場の成長力)、(2)収益性 (売上規模と利益率は両立しない)、(3)事業寿命(製品寿命、市場・顧客寿命)

・日本が得意な高付加価値事業は、小さな規模を持った市場の集まり。さらに旬な期間が短い。だから新陳代謝が必要。

・「旭化成はしつこい」と言われている。「一本、柱を立てる」という意気込みで多角化に取り組んでいる。さらに研究開発もしつこい。

 

他にも、インテュイット会長のスコット・クック氏、DeNAの南場氏、ハーバードビジネススクール教授の竹内弘高先生のセッションもありましたが、夜から自分の講演予定があったため、大変残念でしたが参加できませんでした。

 

この世界経営者会議には、2日間参加しました。

世界で活躍中の経営者から、経営最前線の話を直接聞けるこの会議で、とても多くのものを学ぶことができました。

同時に、このような会議をこれまで毎年15回開催してきた日本経済新聞の底力を見る思いもしました。

来年も是非参加したいと思います。

【2013/11/10 8:38AM 修正記録】ロンバー・オディエの創業年度を修正: 1976年→1796年

 

第15回世界経営者会議のメモ書き (その4) 2日目の富士フイルム・古森重隆会長。写真フィルム市場崩壊の危機に、いかに事業再構築を果たしたか?

第1回目第2回目第3回目に続き、日本経済新聞社主催「第15回 世界経営者会議」の内容をご紹介します。

今回は2日目の講演から、富士フイルムホールディングス 古森重隆会長兼CEOのお話しをご紹介します。

私は写真をライフワークにしているため、’90年代後半から’00年代後半にかけた写真のデジタルへの流れを見てきました。

15年前、カメラ店では写真フィルム売り場は1フロアを占めていました。今はフィルムそのものがほとんど売られていません。

富士フィルム様の売上は、この写真フィルム事業で過半を占めていました。

どのようにこの危機を乗り切ったか、が今回のお話しでした。

自分への備忘録も兼ねて、雑記的に書いていますが、ご了承下さい。

 

・富士フイルムホールディングスの規模は、従業員8万人。売上2.35兆円。(現在)

・2000年に社長に就任。就任直後からカラーフィルム需要が急落。2003年にシミュレートしたら会社が数年持たないと判明した。事実それから10年で、写真フィルム市場規模は1/20程度になった。

・「これは天命である。断固として乗り切る」 覚悟を決めた。

・四象限で、縦軸に「新技術」「既存技術」、横軸に「既存市場」「新市場」と置き、事業を取捨選択した。

・選択基準は3点。「成長性」「自社技術が活かせるか」「継続的に競争力を持てるか」。この結果、6事業に経営資源を集中。異分野の研究者が壁を超えて創発できるように、研究者を一カ所に集めた研究所も作った。

・業績は厳しかった。しかし売上の8%に当たる年間2000億円の研究開発費は維持した。仮に研究開発費を売上の3%に減らせば、短期的利益は出る。しかし長期的な成長は損なわれる。短期利益を犠牲にしても、投資し続けた。

・富士フイルムが生き残り、競合の米国コダックは破綻した。その理由は、恐らく当社の方が変化を先取りする力が勝っていたためだ。実は両社ともデジタル化を予測し、対応していた。しかしコダックは自社既存製品を過信し、フィルム事業を事業の柱として残し、M&Aを中心にデジタル化に対応しようとした。しかし、これでは不十分だ。自分自身も新事業に対応しなければならない。当社は自分達で技術を身につけ、養い、新分野を開拓してきた。

・「コダックと富士フイルムの目の付け所の違いは、どこから来たのか?」という質問に対して….。米国は短期的経営であり、コダックもそうしていた。当社は短期的な数字を犠牲にしても、投資を続けた。

・「関係者に対して、新しい投資についていかに説得したか?」という質問に対して….。「伝える」ことだ。大変な危機である。「全社で売上60%を占める写真事業が音を立てて崩れ始めた。だから、これをやろう」と示した。危機的な状況でこう言えば、反対する者はいない。たとえてみれば、戦争で敵が攻めてきたときに「こうしよう」と言うのに対して、「それはいやだ」と言うものがいないのと同じだ。経営は民主主義ではできない。多数決で決めるものではない。自分が真っ先に飛び出すことだ。そうすれば皆がついてくる。

・「そうは言っても、考えるばかりで身体が付いてこないサラリーマン経営者が多い。どうすればできるのか?」という質問に対して….。まるで自分が考えずに動いたと思われたようだが、決してそうではない。1年半かけて、自社の強み・成長性・競争力などを整理し、考えに考え抜いた。そういう読みが一番大切なのだ。そしてリーダーは、決めたら、やる。「断固として、やる!」ということだ。自分はアメフトで闘争心を培ってきた。このような体験がよかったのかもしれない。

・「間接部門の生産性についてどう思うか?」という質問に対して….。戦後の日本の成長は、間接部門であるホワイトカラーが支えたのは間違いない。しかし今は間接部門が増えすぎてしまっている。もっと減らしてスリムにし、創造的な目標を与えるべきだ。

 

古森会長の講演をお聞きするのは今回が初めてでしたが、器の大きさを感じました。

同時に、存亡の危機を乗り切ったのも、古森会長のリーダーシップと、それに応えた社員の方々のご尽力の結果だと実感しました。

短期利益に陥り勝ちな米国型経営と、日本型経営の違いの一面を教えていただいた講演でもありました。

 

残りの2日目の様子は、また後日ご紹介します。

 

President Academyで講演しました

10/22(火)夜、赤坂で行われたPresident Academyの講演会で講演致しました。

申込は70名、実際に当日参加されたのは60名。ほぼ満席でした。

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今回は90分のうち、ワークショップが30分ありました。

ワークショップがいいのは、実際に講演で聴いた内容を、自分の仕事に落とし込んで理解を深められる点です。

聴くだけとやってみるのとでは、大きく違うのですよね。

時間の関係で、作業説明5分、ワークショップの作業は20分。1チームに発表をいただき私が講評で5分、という構成です。

時間に余裕がある時は、もっと多くの参加者に発表をいただくようにしています。

講演やワークショップでは、私自身も参加された皆様から多くのことを学ばせていただいています。有り難いですね。

 

MarkeZine Day 2013の基調講演「デジタルマーケティング時代でも変わらない本質とは?」が、記事になりました

こちらのブログで書きましたように、MarkeZine Day 2013 (2013/10/04 @ 秋葉原)で基調講演を務めましたが、その講演の詳細記事がMarkeZine様のサイトに掲載されました。

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今回の講演でお話しした概要について、かなり詳しく書かれています。

 

デジタルマーケティングが普及し、あたかも従来のマーケティングが根本から変わるかのような印象を持たれている方も多いようです。

しかし実際には、「顧客の価値を創出し、顧客に届け、よりよき社会を創り上げていく」というマーケティングの目的は、変わりません。

一方で、デジタルマーケティングで大きく変わる部分もあります。

今回の講演では、そのことについてお話ししました。

 

私は普段はあまりIT系のテーマではお話しはしないのですが、実際には前職でIT企業に30年間勤め、そのうち15年間はマーケティングに関わっていたこともあり、この分野には長年携わってきました。

今回の講演でも、できるだけIT用語を使わずに、デジタルマーケティングについてお話ししました。

ご参考になれば幸いです。

 

「不格好経営―チームDeNAの挑戦」を読んで

皆様からちょっと遅れましたが、南場 智子著「不格好経営―チームDeNAの挑戦」を読了しました。

先日の名古屋出張のお供に持って行きました。

読み始めるととても面白く、行き帰りの新幹線で一気に読み終えてしまいました。

 

経営ではいいことばかりではありません。実際には失敗の方が多いのが現実。その失敗から学び続けることが必要です。

しかし一方で、経営者が書くビジネス書は、色々なしがらみもあって、失敗については大っぴらに書けないのもまた、現実だと思います。

本書は、南場さんならではの軽妙な文体で、ご自身のプライベートも含めて自分の失敗もそのままさらけ出し、ご自身の言葉で語っていることに価値があるのだと思います。

これだけ売れているのは、当たり前のことですが、本書が面白いからなのですね。

本書と出会えてよかったと思います。

 

一方で、ちょっと驚いたのが、アマゾンの書評。

現時点で、アマゾンの本書レビュー数は113件あります。

内訳は、★ 5つが62件、★4つが32件、★3つが11件、★2つが3件、★1つが5件。

全体的にとても高評価です。

しかしアマゾンの本書トップページに掲載された書評は、全てこの★ 1つの5件の書評から選ばれています。それは、これらの書評の「このレビューが参考になった」という率が、他と比べて高いからです。

確かにこれら★ 1つの書評も、一理ある内容です。しかし一方で、読者全体の意見を代表しているようには思えませんでした。

実は私もこの書評を見て「買うのは止めようかな」と思っていました。しかし友人達の「面白い」という話を聞いて、実際に読んでみたら面白かったのですよね。

もしもアマゾントップページの書評だけを見て本書を買うのを止める方が出ることがあれば、ちょっと残念なことだな、と思いました。

 

『「戦略力」が身につく方法』CAKES連載第2回『机上の戦略は、失敗する』…分析や戦略理論では、戦略は立てられません

昨日(2013/10/17)、CAKESの『「戦略力」が身につく方法』連載第2回目が掲載されました。

第2回 机上の戦略は、失敗する

 

今回は、拙著『「戦略力」が身につく方法』p.75〜p.80からの抜粋です。

 

いくら精緻な分析をしても、戦略は決して立てられません。

同様に、いくら戦略理論を駆使しても、成果が上がる戦略は立てられません。

分析も戦略理論も、手段であり道具ではありますが、それ自体では価値を生み出せないのですよね。

今回は、その理由についてご紹介しています。

 

CAKES連載第三回目は、来週の予定です。またおしらせします。

 

「オフィス永井」が、コンサルテーションではなく、研修を提供する理由

私は7月に独立後、オフィス永井株式会社のサービスとして、次の3本柱で活動しています。

1.著作活動
2.講演活動
3.企業研修(特定企業様向け)

これらはお互いに相乗効果があります。著作活動で考えたことを講演したり研修し、参加された方々からのフィードバックを著作活動に活かしていく形です。

また講演活動は研修活動の前段階に位置づけられますし、著作活動も読者が「学びを得られる」という意味では研修です。ですので、基本は「研修」なのですね。
 

一方で、「コンサルテーションは行わないのですか?」という質問をよくいただきます。実はオフィス永井では、コンサルテーションご提供の優先順位をかなり下げています。

 

ビジネスの問題を一番わかっているのは、現場の人たちです。

もし私がコンサルテーションで入ると、確かに当事者の方々がこれまで考えたこともなかったような解決策を、ご提供できるかもしれません。

しかしこれは、一過性です。

実際には、戦略は継続性を持って仮説検証を繰り返し、チューンアップしていく必要があります。だから一過性で戦略を立てても、企業にとって効果は極めて限定的です。

オフィス永井は「日本企業の皆様にお役に立てば」と思い設立しました。しかし活動が一過性かつ限定的なものになってしまうのであれば本末転倒です。

本来は、問題を一番わかっている現場の方がご自分たちで答えを見つけ出して、戦略を考え、その戦略をチューンアップし続け、問題を解決していくことが必要です。

このような力を現場の方が持つことで、継続的に企業も成長できるのです。

そしてそのような力は、現場で使える戦略の方法論を学んで、日々の仕事で実践していくことで、身につけられるのですよね。

実際、私自身がそうでしたから。

ですのでオフィス永井では、お客様に対して戦略コンサルテーションではなく戦略立案力を身につけるための研修をご提供することにしました。

 

このようにコンサルテーションではなく研修を優先しているのは、あくまでも戦略領域での私の考えです。

例えばITサービスのような他領域では、コンサルテーションやアウトソーシングの方が最適な場合も多いと思います。それは企業の中核部分ではないからです。

しかし戦略は企業の中核部分。ここはコンサルテーションではなく、お客様自らその力を身につけることが必要なのではないかな、と思うのです。

 

日本は多くの課題を抱えていますが、あらゆる企業の現場が戦略力を持つようになれば、日本はまだまだ成長する筈です。

少しでもお役に立てば、と思っています。

 

 

JASIPA様第44回定期交流会で講演しました

昨日2013/10/15、泉岳寺で行われたJASIPA様第44回定期交流会で講演させていただきました。

JASIPA会員企業様に加えて、一般募集で参加された非会員も含め、約70名の方々がお集まりになりました。

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有り難い限りです。

今回は対話形式の講義を中心に、「顧客中心主義の戦略思考」と「現状維持は破滅」の二つをお話ししました。

いただいた時間が60分でしたので、ワークショップと「仮説検証思考」は割愛しました。

 

JASIPA様はITベンチャー企業の団体です。私もIT業界に30年間育てていただきましたので、同じIT業界にいる人間の視点でマーケティングのお話しができたと思います。

講演後の懇親会では、とても多くの方々とお名刺交換が出来ました。

このような機会を下さった玉村様に感謝です。

 

 

PDCAを確実に実践し、組織が学びを蓄積して、成長するために。米国陸軍生まれのAAR(アフター・アクション・レビュー)

企画段階で完璧なコンセンサス構築を目指す日本では、計画段階で関係者に根回しをしながらじっくり時間をかけますが、実行して問題が多く出た後、「最初に言ったことと違うじゃないか」と言われたりして検証・対策がキッチリとできず、結果的にPDCA (Plan, Do, Check, Action)が回らないことが多いように感じています。

一方で、米国人は計画はあっさりしていますが、すぐに実行した後、検証や対策を行って、再度計画を見直すことが多いのです。

これを仕組みで回しているので、結果的に小さな成果でも速く出て、学びも蓄積されていきます。

 

数年前、日本IBMで米国人の同僚と仕事をしていた際に、なぜ米国ではこのスタイルなのかを聞いたことがあります。

米国のMBAを修了していた彼の答えは、

「米国も昔はこうではなかった。しかし戦争で、このようにPDCAをキッチリと回す部隊の勝率が高いことがわかった。だからこれがビジネスでも採用されるようになったんだ」

「なるほどなぁ」と思ったのですが、当時の私の知識では、これは具体的にどういうことなのかがわかりませんでした。

 

最近、少しわかってきました。

AAR: アフター・アクション・レビュー

という手法なのですね。

 

これは1970年代半ばに米国陸軍で導入された手法で、元は戦闘シミュレーションから教訓を得るために取り入れられたものです。そして湾岸戦争やハイチ介入で本格的に実践活用されるようになりました。

AARでは、戦闘シミュレーションが終わった後に、参加した関係者が集まって、常に次の四つの質問を軸に議論が展開されます。

①我々がやろうとしたのは何か?
②実際には何が起きたのか?
③なぜそうなったのか?
④次回我々がやろうとするのは何か?

ポイントは、この目的は「学びと改善」であり、任務に成功したか失敗したかは問わないし、あくまでも訓練であって評価ではない、というという点です。

組織が学びを蓄積しパフォーマンス向上を図る手段であり、採点の道具ではない、という点が重要です。

実際の仕事で多くの人達の意見を出しながらAARを実践し成果を挙げるためには、これらを参加者が腹落ちして理解しているかどうかがカギになります。

元々は陸軍で活用された方法ですが、ビジネスにも展開可能です。

湾岸戦争を指揮し国務長官も務めたコリン・パウエルは、国務長官になってからもスタッフとAARを行っています。

 

まだまだ学ぶべきことが沢山あると痛感します。

 

ご参考までに、下記の本の一部(p.210-217)で、コリン・パウエルがAARの実践をした経験を書いています。

またこの本でも、事例として米国陸軍のAARが取り上げられています。(p.138-152)

 

NOSユーザー会様主催「第2回エグゼクティブ交流会IN天城」で講演しました

2013/10/5(土)にIBM天城ホームステッドで行われた、NOS(日本オフィス・システム)ユーザー会様主催の「第2回 エグゼクティブ交流会IN天城」で講演をさせていただきました。

天城では、日本IBM社員として何回か講演させていただきました。実は日本IBMを退職する直前の今年6月下旬にも、ある大手企業様に講演させていただいたばかりです。

その時と同じ講演会場での講演となりました。

独立後、天城で講演させていただくのは初めてです。

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参加された方々は、日本オフィスシステム様のユーザー企業30社の皆様。前日から宿泊なさっていました。

私は前日はMarkeZine Day 2013の基調講演があったため、当日朝、始発で自宅を出発し、天城には8時15分頃に到着しました。

講演は8時35分開始。

さすが経営者の皆様、すごい集中力です。

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私はIT業界に育てていただきましたので、日本IBM退職後もこのようにIT業界の皆様とご縁をいただけるのは、とても有り難いことです。

講演の機会を下さった日本オフィス・システム様には、深く感謝致します。

 

「『価値で勝負しよう』というのはよくわかる。しかし業界全体で低価格競争の中、我々もとても苦労しているのだが、どうしようもない」→それは価格競争のリバウンド現象です

講演でお話しすると、よくこのように言われます。

 

「『価値で勝負しよう』というのはよくわかる。しかし業界全体で低価格競争の中、我々もとても苦労しているのだが、どうしようもない」

 

ご苦労、お察しします。そういう業界、私たちもすぐにいくつか思いつくのではないでしょうか?

 

お互いに価格競争を仕掛けている。

→値段を下げてお客さんが来るようになり、一時的に売上は上がる。

→しかし次第に客足が元に戻り、売上はさらに減る。

→価格を上げようものならば、さらに客足は遠のく。

→これを繰り返すことで、業界全体の市場が縮小してしまう。

しかし「何か新しいことにチャレンジされていますか?」と聞いても、従来の方法を苦労して繰り返し踏襲していることもまた、多いのです。
 

価格競争に陥って市場規模が縮小している状況は、ダイエットのリバウンド現象と同じ原理なのではないでしょうか?

食事を減らすことで、一時的に体重は減る。

→しかし筋肉も減るので、エネルギー消費量も減る。

→食事量を戻すと、エネルギー消費量が減っているので、前よりも体重が増え、体脂肪率も上がる。

→そこで再び食事を減らすと、さらに筋肉が減る。食事を戻すとさらに体重が増え、体脂肪率も上がる。

食事量を減らす = 価格を下げる
体重減少 = 売上増
体重増加 = 売上減
筋肉量  = 企業の体力あるいは高付加価値

と考えると、同じことですね。

いわば「価格競争のリバウンド現象」と名付けてもいいかもしれません。

 

リバウンドから抜け出すヒントは、筋肉量を増やすこと。つまり運動をしてエネルギー消費量を増やすことで、リバウンドの悪循環から抜け出すことができます。

体重が増えている状況での運動はかなり辛いものですが、こうしないと悪循環から抜け出せないのですよね。

 

企業でも同じではないでしょうか?

価格競争の悪循環から抜け出すヒントは、価値勝負へのシフト。

しかしいきなり100円で売っていたモノを1000円で売っても、お客様は見向きもしません。怒るのはいい方で、無視されます。

一方で、何もしなければジリ貧が続き、最後に待っているのは破綻です。

まずはとにかく何かを始めてみる。考えるだけでなく、実行する。

リバウンドから抜け出すのが辛いのと同様、大変かもしれません。

しかし悪循環から抜け出すためには、必要なことです。

 

iPODで絶好調だったAppleは、2007年にiPhoneを発表しました。

ジョブスの初代iPhone発表デモは完璧で、大成功。これが現在のAppleの成功に繋がっています。

しかし最初のiPhoneは非常に不安定でまともに動かず、プレゼンのリハーサルは失敗続き。トラブルの度に、ジョブスは担当者に「お前はクビだ」とどなったそうです。

その時の様子が、記事になっています。

「Appleの元エンジニア、綱渡りだった初代iPhoneデビューを語る」

iPODで成功しても、いずれ価格競争に陥る可能性もありました。そこでAppleは、あえてiPhoneという新しいチャレンジを行ったのですね。

  

「苦労しているけど、どうしようもない」とぼやいていても、実は、実際にやっていることは従来と同じ、ということが多いのではないでしょうか?

自分では「苦労」と思っていることが、実は「苦労」ではなく、「惰性」に陥っているのかもしれません。

世の中は急激に変わっているので、従来と同じ方法は通用しないことも多いのです。

順調な中でもiPhoneに挑戦したAppleのように、新たなチャレンジで自ら成長し続けることが大切なのではないか、と思います。

 

MarkeZine Day 2013で、基調講演致しました

本日2013/10/04に秋葉原で行われたMarkeZine Day 2013で、下記テーマで基調講演を務めさせていただきました。

デジタルマーケティング時代でも変わらない本質とは?
改めて顧客中心主義について考えよう

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デジタルマーケティングになって、あたかもマーケティングが根本的に変わるかのように言われています。

しかし一方で基本に立ち返ると,マーケティングの目的は「顧客の価値を創出し、顧客に届け、よりよき社会を創り上げていくこと」です。

この目的を達成するために、デジタルマーケティングでできることは、何か?

できないことは、何か?

それらを踏まえて、マーケティング担当者は何を考えていけばよいのか?

それらについてお話しをさせていただきました。

多くの方々が熱心にお聞きになっておられました。

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講演後、多くの方々と名刺交換をさせていただきました。

皆様とお話しして、マーケティング戦略や迅速な仮説検証の実施について多くの現場の方々が悩まれていることがよくわかりました。

 

このような機会をいただけて、本当に有り難い限りです。

 

UCCグループ幹部会議で講演しました

一昨日9月30日のダブルヘッダー講演・午前の部は、神戸で行われた、UCCグループ幹部会議でした。(こちらに書きましたように、午後は東京に戻って別の講演でした)

UCCホールディングス各社幹部の皆様350名が集結されました。

この幹部会議で外部講師が話すのは、今回がはじめてだそうです。とても有り難い機会を頂戴しました。

(カメラマンの方に、写真を撮っていただきました)

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UCC様は今年創業80年を迎えられました。

この80年、世界ではじめて缶コーヒーを開発し成功させ、真空包装レギュラーコーヒーを開発し、ジャマイカに農園を作ったりして、日本にコーヒー文化を根付かせ、世界に展開してこられました。

この80年は、コーヒー市場でイノベーションを推進されてきた歴史でもあるのですよね。

 

この日の午後は同じ神戸の会場で、この創業80年イベントが行われました。各界からお客様も1000名近く来られました。

創業90年、そして100年に向けて、ますますのご発展をお祈りしております。

 

早稲田大学で講演&ワークショップを行いました

早稲田大学の戸山キャンパスで、勝手にマーケティング大学 × 早稲田大学マーケティング研究会 コラボ企画で講演をいたしました。

朝カフェ次世代研究会でお世話になっている横山さんが、早稲田大学マーケティング研究会と話して企画して下さったものです。

70名もの若い方が集まって下さいました。凄い熱気です。

講演終了後、集合写真を撮ってみました。

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社会人になり、年月を経て成功体験を積み重ねた後、その成功体験を否定する新しいことを学ぼうとしても、頭では理解してもなかなか実行できないというジレンマがあります。

企業を変革する際に、多くの人達が悩んでいるのは、まさにこの「成功体験」。

しかし学生の方々はそもそも否定すべき成功体験がないので、新しく学んだことをスムーズに吸収し、すぐに実行できる柔軟さがあります。

ある方が比喩で、「若い人は生卵。40代・50代は固ゆで卵。固ゆで卵は生卵には戻れない」と言っていましたが、まさにそのとおりなのですよね。

一方で日本企業の問題は、なかなかマーケティングを理解できていないことです。

私はマーケティングでまず最初に考えるべきは、どの顧客に、どのような高い価値を提供するか、だと思います。

しかし「マーケティング」と言うと、脊髄反射で「マーケティングミックス=4P」が出てくることも多いのです。実際には、「顧客の価値」について充分に考えずに「商品戦略」「チャネル戦略」「プロモーション戦略」「価格戦略」を考えても、成果は上がりません。

これは企業でマーケティングを実践し成果を上げている方であれば、肌感覚でわかっていることだと思います。

ですので、企業の現場で学んだマーケティングの現実を、大学でマーケティングを学んでいる若い方々にお話ししたり、大学への進路を考えている高校生にお話ししたりするのは、今後の日本をよりよくする上で、とても重要だと考えています。

また学生の方々は、仕事で商品に関わった経験はありません。しかし顧客の立場で商品に関わった経験は豊富です。

そこで私は、学生向けの講演は、企業向けの講演とは異なる構成にしています。

今回は、学生ならば誰でも知っている事例から始めて、顧客価値について考え、最後にワークショップでバリュープロポジション(=顧客が買う理由)をチームで考えて発表する構成にしました。

最後のワークショップはとても活気があり、議論が白熱しました。

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ワークショップの後、皆さんに聞いてみました。

「とっても大変だったと思う人」…8−9割の方が手を上げました。

「では、とても楽しかったと思う人」…同じく8−9割の方が手を上げました。

「大変だけど、とても楽しい」というのは、大切なことです。皆さん、マーケッターとして優れた素質をお持ちですね。

実際に企業では、そのようにして考えて企画した商品が世の中に出されて、結果が出ます。もし失敗すると色々と学べますし、苦労して成功するとマーケティングが本当に楽しくなります。

発表は2チームでした。企業のビジネスパーソンで行うワークショップに決してひけを取りませんでした。

日本の将来は有望ですね。

講演を一日に二回行うことはなかなかありませんが、とても充実した一日でした。

企画して下さった横山さんには、感謝です。

 

 

自社とライバルの強みと弱みを、立ち止まって俯瞰的に見てみる

強いライバルを見ていると、自分より優れている点ばかりが目に付きます。

しかし実は自社にも、相手よりも優れている強みが必ずあります。

その強みに、自分自身が気がつかなかったり、活かしていないだけなのかもしれません。

 

例えばグローバル企業は戦略に優れていることが多いのですが、一方でその戦略をグローバルで進めていかなければならない宿命を持っています。

各国の状況が本国と異なる場合、本社や各国の顧客との間で軋轢が生じることもあります。

 

一方で国内企業は、自分たちで国内に最適化した戦略を立てられ、国内の顧客に柔軟に対応できるのが強みです。

一方で成長していくグローバル市場にどのように取り組むのかが課題でもあります。

 

一度、目の前にある日々の仕事から離れてみて、自分の強みと弱みを俯瞰的に見てみることも必要なのかな、と思います。

 

明日は、講演ダブルヘッダー

遅い夏休みが昨日終わり、早速仕事に戻っています。

日曜の今日は、明日の講演のために、神戸に移動中。

明日午前はある企業様の全社会議で、幹部350名の皆様に1時間講演です。ここ2週間程かけて、この企業のご担当者様と一緒に準備して来た内容をお話しします。

午後は新幹線で東京に戻り、夜はこちらでお知らせしましたように、早稲田大学で大学生の皆様50名に90分の講演+ワークショップ。

新幹線での3時間弱で、気分転換しようと思います。

 

講演は、わざわざ来てくださる皆様の貴重なお時間をお預かりすることになります。

プレゼンは相変わらず苦手ですが、「今日は本当に来てよかった」と思っていただき、できれば明日からの行動に繋げていただけるように、講演に来られる方々にあわせて講演内容を毎回変えて、真剣勝負で臨むように心がけています。

よい講演になるようにしたいと思います。

 

日本IBM様・システム製品事業部イベントで講演させていただきました

昨日9/18(水)、日本IBM様・箱崎本社にて、システム製品事業部主催で行われた「仮想アプライアンスセンター会員情報交換会議」で講演させていただきました。

 

「仮想アプライアンス」という言葉は、わかりにくいかもしれませんね。

 

本来「アプライアンス」とは、英語で「家電」という意味です。

ITの世界では、「アプライアンス」とは、特定機能に特化したコンピュータを指します。

私たちの身近では、家庭用ゲーム機などはまさに「アプライアンス」です。ハードとソフトが一体化して色々な機能が入っていますが、スイッチを入れるとまさに家電のようにすぐに使えますよね。

この「アプライアンス」を進化させたものが「仮想アプライアンス」です。

システムを動かすために必要な全てのものを「仮想化」して、一つのソフトにまとめたものです。(IT業界用語で言うと、ISVアプリケーション、前提となるミドルウェア、オペレーティング・システムを最適に設定してパッケージ化したものです)

このようにすると、コンピュータの「仮想化環境」と呼ばれるシステムで簡単に稼働できるようになるのですよね。

 

このように「仮想アプライアンス化」すると何がいいか?

まず、ITシステムの導入・保守は桁違いに迅速かつ楽になります。

さらに、センターに「カタログ」として登録することで、あたかもAppleのスマホアプリのように、全国、将来的には全世界の顧客に、自社アプリを提供可能になります。

 

日本IBM様では、この「仮想アプライアンス」をIT業界各社と推進するために、稼働確認や技術検証を協業して行う仕組みを作りました。

これが今年4月に発表された、「IBM仮想アプライアンス・センター」です。

日本IBM様のプレスリリース (2013/4/15)

記事「日本のITはサイロからの脱出を~日本IBM、仮想アプライアンスセンターを新設」(クラウドWatch 2013/4/16)

この「仮想アプライアンス・センター」の会員企業は、現在かなりの数に上っています。また仮想アプライアンス化されたISVソリューションも続々生まれています。

日本IBM様では、定期的にこの会員企業各社と情報交換会議を行っています。

私は昨日開催されたこの会員情報交換会議で、日本IBM専務執行役員・三瓶様のオープニングの後に、50分間いただいて講演させていただきました。

当日は100人近い方々にご参加いただきました。

私の講演の様子です。

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講演タイトルはいつも講演でお話ししている「改めて、顧客中心主義について考えよう」です。

私はお客様のご要望に併せて毎回講演内容を作り替えていますが、今回は、この「仮想アプライアンス」の役割について、50年前のトランジスタとトランジスタ・ラジオが起こしたイノベーションに喩えてお話しをさせていただきました。

実はこの「仮想アプライアンス」は、この下の写真にあるチャートでご説明しているように、まさにトランジスタのような「破壊的技術」なのですよね。

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しかし一方で、「破壊的技術」であるトランジスタ単体では、世の中は変えられませんでした。

世の中が変わったのは、トランジスタラジオのように、トランジスタという「破壊的技術」を活用した製品が生み出されて新しい顧客を創造し、イノベーションを起こしたからです。

 

ですので今回集まられたISV各社様が、この「仮想アプライアンス」という「破壊的技術」を活用したISVソリューションにより新しい顧客を創造し、イノベーションを起こすことが、大切なのかなと思います。

 

「仮想アプライアンス」が普及し、会員企業各社様とユーザー様が発展し、さらにはIT業界が発展していくことを願っています。

 

このように貴重な講演の機会をいただき、感謝です。

また、30年間お世話になった日本IBM様からこのようにお声がけいただけるのは、本当に有り難いことです。

  

デジタルマーケティング時代。変わるもの。変わらないもの。求められるスキル

「デジタルマーケティング」が脚光を浴びています。(なおここでは、EC、ビッグデータ、ソーシャルメディア、CMS等、ITをマーケティング活動に活用するための仕組み全般を「デジタルマーケティング」と呼ぶことにします)

中には、あたかもこれまでのマーケティングが根本的に変わるかのような論説もあります。

しかしこんな時こそ、マーケティングの基本に立ち返ることが必要なのかな、と思います。

 

私個人の考えですが、マーケティングの目的とは、

 顧客が求める「価値」を創出し、
 顧客にその「価値」をお伝えし、
 顧客へ「価値」をお届けすることにより、
 よりよい社会を創り上げていくこと

なのではないかと思います。

 

このように、「マーケティングの目的は、顧客への価値の創出と提供」と考えると、デジタルマーケティングで出来ることと出来ないことが整理できるのではないでしょうか?

 

まず、出来ないことは次のようなものがあると思います。

・本質的な顧客の課題を見抜き、洞察すること。…アナリティックスソリューションはかなりの程度手助けしてくれますが、考えるのはあくまで人間の頭脳です。

・顧客価値を創出すること…顧客に対する新しい価値も、ITでは生み出すことができません。

 

一方で出来ることは、次のようなものではないでしょうか?

・迅速な仮説検証と実行→マーケティングミックス(4P)への展開

・デジタル・チャネルの拡大(モバイル、SNS、Web)

・膨大なスケーラビリティとスピードの実現(従来比で数千倍、数万倍)

 

Harvard Business Review 2013年10月号に掲載されたフィリップ・コトラーのインタビュー記事「ビッグデータはマーケティングを変えるのか」で、コトラーは次のように語っています。

—(以下、引用)—-

 私はこれまで、消費者にとって適切なタイミングで、適切な場所で、適切な商品を提供することが大切だと言い続けてきました。ビッグデータは、それらの要素を探し出すためのツールとして大きな可能性を秘めています。

—(以上、引用)—-

つまり「デジタルマーケティングは、マーケティングが持つ本来の目的をより確実かつ効率的に実現するための手段である」と考えるべきなのではないかと思います。

結論としては、当たり前のことですが、「デジタルマーケティング」は「目的」ではなく「手段」なのですね。

 

このように考えると、「デジタルマーケティング時代」では、次のようなスキルがマーケッターに求められると思います。

■顧客価値を考え抜くための洞察力。これは従来のマーケティングと同様、デジタルマーケティング時代でも変わらず重要でしょう。

■仮説検証を実践する力。デジタルマーケティングでは極めて迅速に仮説検証を何回も行えるので、従来のマーケティングよりも重要さが増していくと思います。ただこれはテクニカルなスキルと言うよりも、ひたすら仮説検証を続けるための継続力・実践力と言った方がいいかもしれません。

■分析力。数字の意味を読み取れるスキルです。従来のマーケティングでも重要でしたが、重要さが増していくでしょう。私の経験では、色々な数字と格闘していくことを通じて身についていきました。最新分析ツールを使いこなせるようになると、より容易に分析できるので好ましいかもしれません。

■新しいチャネルへの理解。Webに留まらず、モバイル、SNSと顧客チャネルは広がっています。これらを活用していくことが必要になります。

基本の部分は「デジタルマーケティング時代」でも意外と変わらない一方で、沢山学ぶことはありそうです。