理論を知っていることと、理論を仕事で使えることは、全く違う


マーケティング理論は、誰でも机上で学べます。
理解するのには少し苦労するかも知れませんが、知識として身につけることはできます。
これが「知っている」状態です。

しかしこれでは、仕事で使える状態になっていません。
残念ながら、この段階に留まっているビジネスパーソンは多いように思います。

理論を使えるようにするには、実際に自分の仕事に理論を当てはめて使ってみることです。
これが、実は意外と大変です。これまで使ったことがない思考方法を求められるからです。ちょうど脳内に全く新しい運河を作るのに似ています。

しかし実際に自分の仕事に理論を当てはめて使ってみて、実際に成果を出す体験をすると、次から使いこなせるようになります。

つまりいったん新しい運河を脳内に作れば、次からそこに水が通るようになるわけです。

私もマーケティングの仕事を始めて数年後に、ある事業戦略の立案と実施を担当した時、手探りで色々な人たちの意見を聞きながら、理論に沿って戦略を立てるのに1ヶ月ほどかかったことがあります。この戦略を2年間かけて実施した結果、大きな成果が挙がりました。これがきっかけでマーケティング戦略を立てるパターンを身につけることができました。

今では1時間程度の打ち合わせで、人の話しを聞きながら、コーチングの形で一緒に戦略を考えながら立てられるようになりました。

理論は、知っているだけでは何の価値も生みません。
価値を生み出すには、理論を仕事で使えるようになることです。
そのためには、実際に理論を仕事の実戦で使うことだと思います。

実際に仕事で理論を使って成功すればしめたもの。
一生使える、あなたの大きな武器になるはずです。

 

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なぜ経営幹部は「要は、何なんだ?」と言うのか?

社内外を問わず、経営幹部へプレゼンしている最中に、こう言われた経験がある方は多いのではないでしょうか?

「で。言いたいことは、要は何ですか?」

予想もしなかった質問に、「そもそもは、ですね…」と詳しい経緯の説明を始めてしまい、ますます相手が「?」な顔をしてドツボに嵌まってしまう、という方も少なくないかもしれません。かく言う私も、散々そんな経験をしました。(お恥ずかしい…)

この原因は、経営幹部のことを勘違いしているからです。
多くの人はこう考えて、経営幹部へのプレゼンの準備をします。

「相手は偉い人だ。完璧に準備しよう」
「完璧を期すために、資料は詳細に」
「偉い人だから、すぐにわかる筈」

こうして情報がミッチリ小さい字で詰め込まれた、非常にボリューム感たっぷりのパワポ資料が出来上がります。

一方で、経営幹部はこんな状態であなたのプレゼンを聞いています。

(今朝からこれが8回目の会議だな。疲れたなぁ)
(この後は、役員会だっけ。社長にあの件を報告か。気が重いな)
(あの懸案も未解決だな。あの件も今日中にA部長に確認しなきゃ)

要は朝から仕事が詰まっていて、頭の中で様々な案件を抱えているワケです。
こんな状況で、みっちりと小さい字で書かれたボリューム感あるパワポ資料を見せられたら、どうなるでしょう?

(おいおい。こんなの見せるなよ。ちゃんと整理して見せてよ)

誰だってこう思いますよね。で、こう紳士的におっしゃる訳です。

「で。言いたいことは、要は何ですか?」

ここまでわかれば、解決策がわかると思います。
要はわかりやすく、伝えたいことが相手の頭の中にスーッと入っていくような資料を作ればいいのです。

そのためには資料を作る人が、ちゃんと情報を整理して、シンプルにする必要があります。たとえばパワポ資料を作る場合、

・最初にプレゼン全体で何が言いたいかを、箇条書きで4〜6行程度にまとめる。
 たとえば「問題点→その原因→提案(=解決策)→費用→経営幹部への要望」という感じです。
・その箇条書きに沿って、チャートの順番を見直す。
・不要なチャートを削除し、重複するチャートを一つにまとめる
・詳細すぎる情報(細かいデータ)は見せない。洞察とカギとなる数字だけ示す。
・チャート上の重複情報は一つにまとめる。
・テキストは28ポイント以上の大きな文字で、1行十数文字程度で書く

要は、情報を増やすのではなく、徹底的に削りに削り落とすこと。
目安としては、その業務を全く知らない家族に話しても通じるレベルまでわかりやすくすること。
こうすれば「要は何ですか?」と言われなくなります。

ちなみにアマゾン社内ではパワポは使用禁止。ワードを使ってA4で基本1枚(大がかりなプロジェクトだと6枚)でまとめるルールになっており、会議の冒頭は、全員がこの文書を読む時間だそうです。部下から毎日膨大な報告を受けるジェフ・ベゾスが「何を言いたい資料か分からない」と怒って、この方法を始めたと伝えられています。

経営幹部の立場に立って考えれば、「要は、何なんだ?」と言われることは少なくなります。

 

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戦略で相手の面子を考え始めると、プロジェクトは失敗する

事業戦略で何よりも重要なのは、首尾一貫性です。

・事業では何を狙うのか?
・そのために顧客のどんな課題に応えるのか?
・その課題への解決策は何か?
・解決策を実現する商品やサービスをどのように提供するのか?
・顧客にどのように伝えるのか?
・顧客にどのチャネルを使って販売するのか?
・価格はどうするのか?

戦略ではこれらが首尾一貫していることが必須です。

筋の悪い戦略は、狙いが明確でなかったり複数あったりします。そして課題も明確でなく、各要素もバラバラ。こんな戦略は、まず失敗します。

往々にして筋の悪い戦略は、戦略を決める段階で、メンバーの面子を考え始めることで生まれます。全員の意見を取り込んで戦略を立てるのは最悪。狙いが複数あったり、曖昧になったり、本来は必要がない要素が入ったりします。

「一生懸命考えた仲間の面子を立てたい」という気持ち、痛いほど分かります。
しかし面子を立てて筋の悪い戦略になり、失敗するのは本末転倒です。

そもそも戦略を考える各メンバーは、「いい戦略を作るには、自分の案は喜んで捨てる」ということを腹から納得することが必要です。

そしてリーダーは「全員の案を平等に取り入れる」という安易な道は選ばず、チームで納得いくまで議論して考え抜き、複数案を元に最も優れた一つの案を生み出すことです。

ここで行うべきは、弁証法の「止揚」という考え方です。
ちょっと難しい言葉ですが、そのキモは決して難しいことではありません。

A案と反対のB案があった場合、妥協案を作るのではなく、徹底的に議論をすることで、より優れたC案を作り出すという考え方です。

たとえばこんな案があったとします。

A案:店舗をリニューアルして、新商品をガンガン売るべきだ
B案:今どき消費者はスマホで買う。店舗では売れない

これだとA案とB案は真っ正面から衝突してします。
そこで私たちは、ついこんな妥協案を考えがちです。

妥協案:店舗をリニューアルして新商品を販促するとともに、並行してスマホでも売る

これだと事業の戦力が分散されてしまいます。これが「筋が悪い戦略」です。

そこで妥協するのではなく、メンバーでA案とB案について率直に議論します。

「店はもう古いよ。新商品を店に置いても、結局店では買わずにスマホで買う人多いでしょ」
「でも、スマホだけでも限界あるよね。商品の実物を触らないと、お客さんは買わないし。店は必要なんじゃない?」
「あ、それなら店で売ることに拘らなければいいんじゃないの?」
「確かに。店はショールーム化すればいいのかもしれないよね」

現実にはこんなに簡単ではないでしょうけれども、本音でこんな議論ができれば、より優れたC案が出来ます

C案:店は商品を見せるショールームに徹して売らない。販売はスマホで行う

実際にこれを実現しているのが、電気自動車のテスラです。
テスラは1000万円以上の車もありますが、本を買う感覚でスマホで買えます。
実物はテスラの店舗で確認できます。

戦略で相手の面子を考えて、妥協案で安易に決めると、筋の悪い戦略が生まれ、プロジェクトは失敗します。
徹底的に議論をして考え抜きましょう。

 

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私たちは来年、2030年を迎える

今年3月からのコロナ禍で、私たちの暮らしは大きく変わりました。
「早く元に戻らないか?」という声もありますが、もうコロナ前には戻りません。
一旦変わった人の行動は、なかなか元に戻らないからです。
その理由は、逆説的な言い方ですが、多くの人がコロナ禍で「自由さ」を知ってしまったからです。

まず在宅勤務の自由さ。何よりも大きいのは通勤の不要さが消えたこと。
いまや在宅勤務前提を宣言した企業も増えています。

そんな中で、私の知人で地方に住まいを移した人もいます。
「毎晩、知人とオンライン飲み会ができて楽しい」とのこと。

オンライン会議もすっかり当たり前になりました。
「打ち合わせのために客先に移動していたあの時間は、何だったのだろう」と思ってしまいますね。

世界的な思想家であるジャック・アタリは、名著「21世紀の歴史」でこのように書いています。

「いかなる時代であろうとも、人類は他のすべての価値観を差し置いて、個人の自由に最大限の価値を見出してきた」

コロナ禍で「自由さ」を知った人類は、もうその自由さを手放さないでしょう。

そしてその自由さは、デジタルテクノロジーのおかげです。
コロナ禍により、デジタル化が一気に進みました。

今年5月、マイクロソフトのナデラCEOは決算発表で「この2カ月で2年間分のデジタルシフトが進んだ」と言っています。

またマネーフォワードの辻庸介社長は新聞のインタビューで「本来なら10年かかるはずの変化が1~2年で起こるくらいのインパクトをコロナがもたらした」と言っています。

給付金支給に多大なヒトモノカネと数ヶ月もの期間をかけ、「デジタル敗戦」を痛感した日本政府も、デジタル庁構想を進めています。
いま様々なビジネスが、一気にクラウド側にシフトし、そのスピードが加速しつつあります。

今年は2020年ですが、この1年で時計は10倍速で進んでいます。

「私たちは来年、2030年の世界を迎える」

このように考えると、私たちがいまビジネスで何をやるべきなのかが見えてくるのではないでしょうか?

 

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価格戦略でコロナ禍に対抗

コロナ禍でお客さんが激減した飲食店は、あの手この手で何とか乗り切ろうとしています。
そんな中で、価格戦略で乗り切ろうとする店もあります。
ただこのようにいうと、「値下げ?もう限界ですよ」と思うかもしれませんね。
でも値下げだけが価格戦略ではありません。

たとえば飲食店の悩みの一つが、何とかして三密を回避して感染リスクを下げること。
そこである店は入店時間で価格を変えることで、来店客のピークをシフトして三密回避を図っています。
いわゆる「簡易型ダイナミックプライシング」ですね。
ランチセットをこんな価格設定にします。

11:00-12:00 1000円
12:00-13:00 1200円
13:00-14:00 1100円
14:00-15:00 900円

消費者は価格に敏感です。12:00-13:00のピーク時を避けて、空いている時間に来店するようになります。

またサイゼリヤは1円値上げで大きな効果を出しています。
従来の価格戦略の定番は、端数価格(299円とか499円)でした。500円と499円は1円しか違いませんが、消費者500円台と400円台の違いとして認識するので、お得感を感じさせることができます。

これまでサイゼリヤはこの端数価格を徹底して、「ミラノ風ドリア299円」などの価格設定をしていました。
しかしコロナ禍で端数価格戦略はやめ、全て「00円」「50円」のキリの良い価格にしました。ミラノ風ドリアは300円に値上がり、一方でライスは169円から150円に値下げ。メニューの9割が値上げ、1割が値下げです。

狙いは会計時に釣り銭を減らすことです。

社長が店で観察していると、会計で釣り銭の交換で行列が出来ていたので、これを止めた訳ですね。

確かに数人で食事すると、割り勘などで細々とした計算が必要なので端数価格だと手間です。

東洋経済オンラインの記事『サイゼリヤ、社長も驚く「1円値上げ」の成果』によると、会計にかかる総時間は30%減少し、しかも客単価が上がったとのこと。

客単価は700円台前半でしたが、50/100円刻みにしたことで、合計1000円を目安に注文する人が増えたためです。

なんとサイゼリヤ1000円ガチャというサイトも出来ました。サイゼリヤで1000円になるメニューの組合せをランダムに表示してくれます。

サイゼリヤ1000円ガチャ → https://saizeriya-1000yen.herokuapp.com/get

厳しい状況ですが、こんな時こそ知恵の出しどころ。
このような価格戦略であれば、小さい店であれば今日からも出来るのではないでしょうか?

あの手この手で、何とか乗り切りたいものです。

 

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大きく成功するには指数関数の世界を見つけ、先手を打つ

世の中の変化がますます激しくなっています。
気がつくと今までとまったく違う世の中になっていることもしばしばあります。
しかしそんな時代に先手を打つ方法があります。

このことを理解するには「指数関数的」の意味を理解することが必要です。
あなたは、次のいずれかの金額をもらえるとしたら、どちらを選ぶでしょうか?

(1) 毎日100万円ずつ積み立て、365日後に受け取る。
(2) 1万円を毎日3%ずつ増やして、365日後に受け取る。

(1)は、30日後は3000万円になり、365日後に3億6500万円です。
(2)は、30日後は2万4272円ですが、365日後は4億8482万円です。

このように指数関数の本質は「最初は小さくても時間が経つと爆発的に増えること」です。
現代の変化は指数関数的になっています。最初は小さな変化にはなかなか気がつきませんが、ふと気がつくと世の中の変化が急激に起こっているように感じてしまいます。

たとえばITの世界では集積回路の素子数が2年毎に倍増するという「ムーアの法則」があります。
コンピューターの心臓部である集積回路の演算能力は、素子数で決まります。
私がIBMに入社した1984年、最上位の大型コンピュータ(IBM 3084モデルQ)は20億円でした。
今はそのマシンよりも高性能のスマホが実質0円です。
コンピュータの演算コストは指数関数的に下がり、ほぼゼロになりました。

現代では同じようなことが様々な分野で起こっています。一例を挙げると、再生可能エネルギーです。
太陽電池の価格は1977年に1ワット当たり76ドルでした。2015年は30セント。200分の1です。
風力発電の風力タービンの生産性は過去25年間で100倍に増え、性能も10倍以上に伸び、コストは大幅に下がりました。
再生可能エネルギーのコストが指数関数的に下がり続けた結果、エネルギー全体の中で締める再生可能エレルギーの比率は、まだ比率は少ないものの2000年以降急増しています。

私たちはモノゴトを直線的に考えるので、この指数関数の概念がなかなか理解できません。

しかし指数関数の世界が教えてくれることは、未来は現在の直線上にはないということです。
未来は、指数関数的な延長線上の先にあります。
グラフの縦の目盛を10, 20, 30, 40と考えるのではなく、1, 10, 100, 1000, 10000と考える必要があるということです。ちなみにこのようなグラフ(図の右側)を片対数グラフといいます。

そして指数関数的な変化が起こり始めている小さな兆しを見つけて、タイミングを見極めて先手を打つことで、大きく成功する可能性があります。

 

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熱狂顧客よりも、ライトユーザー

私たちはこう考えがちです。

「注目すべきは熱狂的な顧客だ。たとえばハーレーにはハーレーの刺青をしたり、アップルには新製品が出るたびに徹夜で行列する熱狂的な顧客がいる。そんな熱狂的な顧客を生み出すことを目指すべきだ」

しかしこの考え方は「大間違いだ」という人がいます。それがバイロン・シャープです。
南オーストラリア大学の教授であり、同大学のアレンバーグ・バス研究所のマーケティングサイエンスディレクター。
100本を超える学術論文を発表しています。

彼は豊富なデータをもとに、従来のマーケティングの常識を次々と覆しています。
この熱狂的顧客のテーマについては、彼の「ブランディングの科学」という本で紹介されています。
この本に書いていないデータも補足しつつ、ご紹介します。

まずハーレー。1995年に米国の”American RIDERS”という雑誌で「バイク乗りの真実」というハーレーのオーナーを分析した特集があります。この記事ではハーレーのオーナーを6つに分類しています。

ハーレー命で典型的な熱狂的ハーレーユーザーは“Hard core”と呼ばれる顧客グループです。彼らは全体の9.7%を占めます。低所得で酒を愛し、乗車時にヘルメットなどはせず、収入のほとんどをハーレーの部品に注ぎます。しかしハーレー全体の売上の3.5%しか貢献していません。

大型バイク愛好家は“Hog Heaven”と呼ばれる顧客グループです。彼らは全体の8.7%を占めます。比較的高収入でハーレー全体の売上の9.4%を占めますが、そんなに頻繁にハーレーに乗りません。

全体の39.8%と一番大きな比率を占めるのが“Dream Riders”と呼ばれる「取りあえずハーレー買ってみた客」です。高学歴・高収入で、キチンとヘルメットをかぶり、近所でハーレーを乗り回します。売上の47.7%と半数近くを占めますが、ハーレーへの満足度は低いままです。

つまり熱狂的なハーレー顧客は売上のうちのごく一部。全体の半数があまりハーレーに乗らないライトユーザーなのです。

では、アップルはどうでしょうか? やや古いデータですが、2002〜2003年に米国でパソコンの再購入率を調べたデータがあります。

デル 71%、アップル 55%、HP/コンパック 52%

実はシェアが高いほど再購入率は高くなります。アップルは低いシェアを考えると再購入率は高く健闘していますが、これは他社パソコンと非互換なことで説明できます。熱狂的顧客の影響は見られません。実際、ほとんどのアップルユーザーがMacでやりたいことは、メールや書類作成など。Windowsパソコンと比べて大きな違いはありません。

 

現実には、あのハーレーもアップルも、熱狂的ユーザーは少数派なのです。かく言う私はアップルしか買わない熱狂的ユーザーですが、私は少数派なのですね。

ですのでビジネス的に考えると、最重要なのは熱狂的ユーザーではなく、ブランドのことをあまり深く考えずに売上に大きく貢献するライトユーザーです。

この考え方に基づくと、マーケティング施策も大きく変わります。

マーケティングの常識は、常に変わっていきます。
ひたすら勉強あるのみです。

 

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「お菓子のホームラン王」ナボナは、広告のお手本

「広告の父」とも称されるデイビット・オグリヴィは、1983年に『「売る」広告』という本を書きました。その後、広告は大きく変わりましたが、彼が本書で述べている本質は、今でも極めて重要です。

「お菓子のホームラン王」のナボナのCMを振り返りながら、見てみましょう。

亀屋万年堂のナボナは、1967年に読売ジャイアンツの本塁打王だった王貞治さんが出演したテレビCMがきっかけで、広く知られるようになりました。

「自由が丘・亀屋万年堂のナボナは、お菓子のホームラン王です」

もう53年も前ですね。当時亀屋万年堂は東京近郊に十数店舗を展開するローカルな菓子屋でしたが、このCMで売上は10倍に。
ナボナは、オグリヴィーが提唱する「売る」広告の基本に忠実です。

①広告は、効能を語れ!

ナボナのCMでは、こんなBGMが流れています。

「♪美味しさたっぷり、ナボナナボナ。皆がニッコリ、ナボナナボナ。ソフトでふんわり、ナボナナボナ。ナボナ〜ァ、ナボナ、ナボナ」

これは関東ローカルのCMだったようですが、子供の頃にこのBGMを聞いて育った私は、50年前に好青年だった王さんの笑顔ととともに「ナボナはソフトでふんわりにっこりで、美味しいんだな」と脳内に焼き付いています。

このような消費者のメリットを効能といいます。
ナボナはCMで効能をキッチリ訴求しています。
効能を約束しない広告ではモノは売れません。
当たり前のことなのですが、残念ながらいまだに多くの広告は約束が一つもありません。
オグリヴィは本書で、「これは本書で一番重要。もう一度読み返して欲しい」といってます。

②商品を知り、ポジショニングし、違いを際立たせろ

亀屋万年堂の創業者は和菓子職人です。「お菓子を通じて世の中に笑顔・安らぎ・人と人との幸せなつながりを提供したい」と考えて創業し、「和菓子と洋菓子の食感をミックスした軽い歯触りのソフトカステラを作りたい」と考えてナボナを生み出しました。
「ソフトでふんわり、美味しくてにっこり」「お菓子のホームラン王」は、まさに創業者のメッセージだったのですね。

広告の基本は、商品を徹底的に学びポジショニングすること。
ポジショニングとは「その商品が誰のために、何をするか」を定めること。
ナボナはこの点が明確です。

今や多くの商品は競合商品とほとんど差がありません。
しかし商品のよい点を事実に基づきより説得力ある形で説明し、違いをクッキリと際立たせることが、広告の役割なのです。

③ブランドイメージを与え続け、繰り返せ

王さんが現役を引退して助監督就任後も、ナボナはCMを続けました。
CMでは選手時代の王さんが「ナボナはお菓子のホームラン王です」と言ってナボナをスーツ姿の王さんに渡し、スーツ姿の王さんが「今でもナボナは、やっぱりお菓子のホームラン王です」。

おかげで今も「ナボナはお菓子のホームラン王」です。

どんな広告でも共通する目的は、ブランドにイメージを持たせることです。
イメージとは個性です。
常に同じイメージを与え続けなければなりません。
効果が失われるまで続けることです。

④チームワークで決めるな

「ナボナはお菓子のホームラン王です」という言葉は、亀屋万年堂の創業者のアイデアだったそうです。
オグリヴィ曰く「関係者が多いと広告は失敗する」
「○○委員会」などは最悪。時間がかかり批判ばかりが出て、アイデアは出てきません。
そして妥協の産物になった広告は売れません。
「少人数が頭を絞って考えるべき」とオグリヴィはいいます。

⑤自画自賛よりも、誰かの推薦

好感度抜群のスーパースター・王さんが小さな菓子店のナボナを推薦し、信頼が高まりました。
広告で自画自賛するよりも、誰かが推薦する方が人は納得します。
ちなみに亀屋万年堂の創業者の娘婿は、ジャイアンツで王さんの先輩だった外野手の国松さんでした。
王さん曰く「先輩の言葉には弱い」。

亀屋万年堂への国松さんの貢献は、計り知れませんね。

まとめると、

①広告は、効能を語れ!
②商品を知り、ポジショニングし、違いを際立たせろ
③ブランドイメージを与え続け、繰り返せ
④チームワークで決めるな
⑤自画自賛よりも、誰かの推薦

オグリヴィーの主張は、半世紀経った今でも重要です。

 

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市場衰退でなく、マーケティング努力不足

私はとても多くのビジネスパーソンの方々から、何度もこんな話を聞いてきました。

「市場が衰退しているので、厳しいです」

マーケティングの大家・セオドア・レビットによると、これは単なる「マーケティング努力の不足」
厳しい言い方になりますが、要は市場への責任転嫁です。

クリーニング業界は、まさに長期衰退が続く市場です。
1993年から2018年の25年間で、58%縮小して市場規模は3425億円になっている、というデータもあります。

いまどき洋服は家で柔軟剤で洗えますし、Yシャツ着る人も減りました。洋服も安くなりました。
「業界が衰退している。もうムリ」と言いたくなりますよね。

でも実は、ドライクリーニングはかつて一大成長産業でした。ウール衣料の全盛期、ドライクリーニングは衣料を痛めず簡単に洗う唯一の方法だったからです。同様に、あらゆる産業は例外なく成長産業でした。現在低迷する百貨店・アパレル・家電も、当初は成長産業でした。

しかし商品は放置すると必ず陳腐化します。
原因は市場の衰退ではありません。
マーケティングの失敗です。

クリーニング店も、いくらでも打ち手はあります。現実に「着た洋服を気持ちよく着られる状態に戻したい」というニーズは、増えているからです。私はボタンが外れた時、近所のビッグママでボタン付けをお願いしています。洋服のお直し業者は成長しています。
コインラインドリーの国内店舗数も、15年間で2倍に増え続けています。

クリーニング店は「自分たちはドライクリーニング業だ」と製品中心で考えず、「洋服を気持ちよく着られる状態にする衣料再生業だ」と顧客中心で考え、手を打てば、再び成長します。

実際、顧客の新たなニーズを掴み、挑戦しているクリーニング店は結構あります。

・冬物衣料の保管サービスは急増しています。衣類をクリーニングして、倉庫で保管します。
・介護施設や病院の入所者や患者から肌着などの私物を回収し、選択して返却するサービスもあります。独り身の人が多いのに対応したサービスです。
・家庭で洗うのが難しいマットレス洗いの技術を開発して展開するクリーニング業者もあります。

ちなみに先に紹介した洋服お直しのビッグママも、顧客中心の考え方を徹底しています。
先日、ボタン付けをお願いに行った時、ビッグママでこんなメニューを見つけました。

「通園グッズ作成を承ります。通園バッグは7200円から」

幼稚園や保育所では、入園する際に「バッグは手作り」と指定しているそうです。でも裁縫経験がない人は男女問わず多いのが現実。そこで衣料の端切れを使い、いかにもお母さん手作り風にバッグを作ってくれるそうです。

顧客の悩みを掘り起こせば成長の種は必ず見つかるのです。

 

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市場調査では、新製品は生まれない

多くの企業が、新製品開発の際に、市場調査を参考にします。

かく言う私もIBM社員時代、マーケティング戦略立案のために、会社が購入した市場調査レポートを徹底的に読み込みました。

市場調査レポートは市場調査会社が作成・販売します。数十ページで価格は数十万円もしたりします。個別に調査委託すると数千万円かかることもあります。

多くの企業が市場調査に大金を投じています。2018年、日本企業は全体で2190億円も市場調査にお金を使いました。この費用はこの10年で24%も増えています。(日本マーケティング・リサーチ協会「経営業務実態調査」より)

ではこの市場調査は、新製品の開発に役立つのでしょうか?
ここで照明器具のマーケターになってみて、市場調査を基に新製品の企画を考えてみましょう。

矢野経済研究所が「照明市場に関する調査(2018年)」という市場調査を行っています。
この調査からは、次のことが読み取れます。

・照明市場は、2010〜15年に順調に成長を続け、1兆円規模になった
・その後は、年率1〜2%の市場減少が続いている
・LED照明器具は2011年は市場全体の17%だったが、2018年は77%に増えた

この市場調査を見て、多くのマーケターはこう考えます。
「市場縮小は厳しいなぁ。価格競争は避けられない。まずはもっと既存製品ラインのLED化を進めよう」
かなり単純化していますが、これだとジリ貧ですよね。

この照明市場でバルミューダは2018年、定価37,000円の照明「BALMUDA The Light」を発売しました。市場で高く評価されています。

この商品は、バルミューダ・寺尾玄社長が子供たちが絵や文字を書き始めると机に顔を近づける姿が気になり、「目が悪くならないか?」と心配になったことがきっかけで開発されました。

寺尾社長は「世界で一番、物がよく見えなければならない現場はどこか?」と考えた末、手術灯と出会いました。通常の照明は手元に影が落ちますが、この照明は手術灯の技術を使っていて影が出ません。また通常のLED照明はブルーライトで目に刺激が強いのですが、この照明は太陽光なので目も疲れません。

市場調査からは、こんな製品は生まれません。

新製品は、「これが欲しい」という顧客のウォンツがきっかけで生まれます。
そして新製品が生まれると、色やサイズなどの顧客の「好み」が生まれます。

市場調査でわかるのは、顧客の好みや過去のデータです。これはこれで、マーケティング戦略立案のためにはとても重要な情報です。
しかし市場調査では、この世に存在しない新製品のウォンツは把握できません。

ウォンツは、市場調査ではなく、マーケターの洞察で掴むものなのです。

 

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キリン vs.アサヒの戦いから見えてくること

1970年代まで、キリンビールは国内市場60%を支配する圧倒的トップシェアでした。
1987年、当時ビール業界3位だったアサヒビールは「スーパードライ」を発売。大ヒット商品になり、キリンを猛追しました。

成長が続くスーパードライは、「生ビール=鮮度」「スーパードライは生ビール売上No.1」を訴求。
1990年、キリンはビール市場のシェアは50%を割りました。
キリンも「一番搾り生ビール」を出してヒットしていましたが、スーパードライほどの勢いはありません。

1996年、キリンは主力製品・ラガービールの生化を決断します。理由は次の二つだといわれています。

・市場では熱処理した「苦みコク」よりも、生の「すっきりキレ」は評価されていた
・王者キリンとしては、スーパードライの「生売上No.1」は断固阻止したかった

しかしラガービールの生化に、消費者は激怒しました。

「俺のラガーに何してくれた!」
「もう二度と飲まない!」

一説によるとこの時、アサヒビールの樋口社長は「キリンが自分の土俵でラガーを熱処理ビールのまま押し続けられていたら、攻めあぐねていた。しかし同じ土俵に乗って来た。スーパードライをトップブランドに押し上げる千載一遇のチャンスだ」と言って、社内を鼓舞したそうです。

2年後の1998年、アサヒビールのシェア40%に対しキリンは38%。キリンはトップの座を譲りました。

実はあのコカコーラも、キリンと同じミスをしています。
コカコーラはコーラ市場で圧倒的トップシェアでした。
しかし1980年代に、ペプシが「ペプシチャレンジ」で猛追してきました。
消費者に目隠しで2種類のコーラを飲ませて美味しい方を選ばせると、それがペプシだった…というTV CMキャンペーンです。
実際に目隠しテストで消費者が飲むと、ペプシの方が高評価でした。

危機感を感じたコカコーラは、消費者調査を重ねて新しい味を研究・開発。ニューコークを発売します。
しかしコークファンは「オレのコークに何をする!」と猛反発。不買運動が起こってしまいました。

コカコーラが素晴らしかったのは、半年後に誤りを率直に認めたこと。ニューコークを撤回、オリジナルのコークを「クラシックコーク」という名前で発売しました。これでコークファンが一気に戻り、コカコーラは業績を拡大しました。

この話は、商品のポジショニングについてとても大切なことを教えてくれます。

商品のポジショニングは消費者の脳内にあります。
商品のポジショニングの所有者は、消費者です。
企業は所有者ではないのです。

キリン・ラガービールの愛好者にとってラガービールは、熱処理ビール。
コークのファンにとってコークの味は、あのコークの味なのです。

 

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自宅のすぐそばなのに素通りしていた絶品イタリアン

最近、お気に入りの店ができました。
とても美味しいイタリアンの店です。
テイクアウトも可能で、週に3回ほどはここのランチです。

実はこの店、10年ほど前から我が家から歩いて1分の場所にあったのですが、素通りしていました。

お気に入りになったきっかけは、1ヶ月程前に店の前を通り過ぎた際に、テイクアウトのパンフレットが店外にあるのを妻が見つけたこと。「良さそうじゃない?」と思って数日後に注文したら、実は本格派イタリアンでした。

この店は立地が良くないようで数年前まではあまりお客さんは入っておらず、「この店、続くのかな」と思っていました。相変わらずホームページもありません。でも最近は店内は混んでいて商売繁盛のようです。調べてみたら某有名人もよく利用しているようです。

また家から歩いて2分ほどの場所にあるフレンチがテイクアウトしているのも見つけました。週1−2回はここの料理で夕食です。ここも美味しい店です。ただこの店はパンフレットもないし、ホームページもありません。見つけたきっかけはフェイスブックでした。

どちらもコロナで在宅ワークが続かなければ、食べようとは思わなかった店です。

考えてみると、視点を変えればこれは大きなチャンスだと思います。
人々が電車で移動しなくなり、物理的な行動半径が小さくなり、近所によく出歩くようになりました。
これは消費者は近所にお金を落とすということ。ご近所のビジネスチャンスは拡大しています。

パンフレットや看板といったアナログ手段や、SNSやホームページなどのデジタル手段でご近所にアピールすれば、意外なチャンスが手に入るかも知れません。

 

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電話で営業支援サービスを売り込む会社

弊社には、営業の電話が頻繁にかかってきます。
この日も、営業の電話がかかってきました。

「御社の営業をご支援します。私どもに新規顧客開拓のお手伝いをさせてください」

普段は営業の電話は「申し訳ありませんが興味ありません」とお伝えして電話を置くのですが、この日はちょうど仕事が一息ついていたタイミングで、少し余裕がありました。前々からこのような営業の電話には興味があったので、勇気を出して尋ねてみました。

「あの、ちょっといいでしょうか?質問があるのですが…」
「はい?」
「御社では、普段はこんなスタイルで営業なさってるのでしょうか?」

お相手の方は(想像もしなかった)という様子でこうおっしゃいました。

「え?…いいえ。弊社では別に営業部隊がいます。(笑)」
「具体的にどのような営業スタイルをなさっているのでしょうか?」
「ええと。他部門のことですし、こちらではわかりかねます」

(悪いことを聞いてしまったなぁ)と思って、営業支援には興味がないことをお伝えして、電話を置きました。

この会社、とても営業効率が悪いと思います。
そもそもアポもなくいきなり営業の電話をしてくる時点で、完全にNGなわけですが…。

いわゆる「ローラー作戦」という営業スタイルです。
電話先がどんな会社で、相手がどんな人かもわからずに、片っ端からのべつ幕なしに電話しています。
この営業スタイルは、既に数十年以上も前に賞味期限が切れています。
この営業をさせられている担当の方(新入社員らしい女性の方でした)も、可哀想です。

ある程度確率した成功パターンを武器に持たせるだけで成約確率は数〜数十倍にアップします。成功すればご本人も達成感を感じて、次の成長に繋がります。にも関わらず、成功率が極めて低い営業スタイルに膨大な手間と労力をかけているのです。非常にもったいないことです。これは会社の経営の問題です。

営業支援が売り物の会社であれば、まず取り組むべきは自社が普段から行っている営業をレベルアップさせることです。今の時代、少しだけでもその手のセールスの方法論を書いた本を読めば、正しい営業スタイルの方法はすぐに学べます。そして成果をあげ、確立した方法論を外販すれば、大きな成果が上がります。

もし外注先の会社が電話をしていたとしても同じ事です。成功確率が低いことは変わりません。外注先なり、外注元が方法論を確立すべきです。

もしあなたが新入社員で入社早々こんな営業をさせられていたら、早めに会社に見切りを付けて新しい会社に移った方が、自分のキャリア上いいと思います。
恐らくそのようなことをさせる会社の文化は簡単には変わらないでしょうし、成長することもないでしょう。

 

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コロナ禍を成長に転じる経営者と、低迷する経営者

新型コロナで、新しいビジネスの種が生まれています。
今までのしがらみも吹き飛びました。

こんな状況で、部下にこんなことを言うマネージャーもいるのではないでしょうか?

「この状況でどうするか、何か考えてみてくれ」

これはちょっと残念なマネージャーです。
本当はこう言って欲しいところです。

「私が責任を取る。何かやってみようよ」

必要なのは、マネジメントではありません。
こんな時こそ、問われるのはリーダーシップです。

決まった目標があり、その目標達成のためにきめ細かく管理するのがマネジメントです。でも今は、アフターコロナはどんな世の中になるか、何をすべきかがよく見えない状況です。

こんな状況で必要なのはきめ細かく管理するマネジメントよりも、何を目指すか明確にするリーダーシップです。しかしリーダーと言えども何をすべきかはわかりません。だからこそ「あえて現場を知る部下に任せる」という方針を明確にするリーダーシップが求められます。

部下を信じ、とにかく仕事を任せ、上司として腹をくくり、責任を引き受けるべきなのです。

経営者も同じです。多くの経営者はこんなことを考えているのではないでしょうか?

「社内に起業家を育てたい。社員の成長を、会社の成長に繋げたい。そして目玉事業を育てたい」

ここまでの問題意識は素晴らしいと思います。問題はその次です。

「社内クラウドファンディングとかは、どうだろう?」
「でも、どうやって評価すればいい?」
「そもそも、誰に何をアサインすればいいのだろう?」

これでは何も新しいモノは生まれません。「全社一丸!」「標準化し、管理する」というマネジメント発想と、イノベーションは水と油だからです。

イノベーションは、異質なモノの組合せです。多様性から生まれ、創発します。そもそも管理不能なのです。では、どうするか?

私は多くの企業様で、組織横断型の全社研修を行ってきて、実感していることがあります。

研修を通じて、社内の多様性に気がつく人は実に多いのです。

「他事業部がこんなことをしていたなんて知らなかった」
「社内協業が必要だと痛感した」
「会社が成長する種が社内に沢山あることが分かった」

実は社内には、隠れた「宝の山」があります。
しかし組織のサイロ化で、隠れた宝の山は眠ったままになっています。

この組織のサイロを崩せるのは、経営者だけです。

有志メンバーを募って組織横断型のイノベーションチームを作りすべて任せるのも、1つの方法です。社内の多様性を活かし、サイロを崩して社員に任せて「イノベーションを促す仕組みづくり」に徹するべきなのです。

このアフターコロナを、今まで停滞していたイノベーションを活性化するチャンスに転じたいものです。

 

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商談のオンライン化は、論客型セールスへのシフトを加速する

先週、ある企業様で法人セールスの研修を行いました。現場のB2Bセールスで尽力しているリーダーの方々が多く参加されました。
研修に先立ちオンデマンド講義で、下記のような話をお伝えしました。

—(ここから)–
B2B営業の世界では顧客の課題を理解して解決策を提供する「ソリューション営業」が主流でした。

このソリューション営業は限界に突き当たっています。顧客の課題は様々。課題把握には時間も手間もかかるし、それに付き合う顧客にとっても、負担です。

私は前職で人材育成部長の時、このソリューション営業から提案を受けたことがあります。1時間の打ち合わせが2回。その後、3回目の商談での提案はイマイチ。商談はそこで打ち切りました。

顧客も「ソリューション疲れ」を感じており、手間がかかるのに売れないのです。
ではどうすればいいか?

新時代のセールスバイブルと呼ばれる「チャレンジャー・セールス・モデル」の著者マシュー・ディクソンとブレント・アダムソンは、全世界6千人の法人セールスを調査して5タイプに分類しました。

■論客型…論議を怖れず顧客に自己主張する
■一匹狼型…自信家で我が道を行く
■勤勉型…誰よりも多く電話し顧客訪問する
■受動的問題解決型…要望には必ず対応する
■関係構築型…顧客のためなら必死に働く

著者らはそれぞれのセールス業績も調べました。

最も業績が悪いのが「関係構築型」。
突出して好業績なのが「論客型」でした。

現代のB2Bセールスでは複雑な問題解決が必須です。顧客の行動を変える必要があります。論客型は顧客に「こうすべき」といういい意味でのプレッシャーを与え行動変化を促します。関係構築型は変化を生み出せません。だからなかなか売れないのです。
—(ここまで)–

その上で研修当日は参加者とZOOMで議論しました。
すると、こんな意見をいただきました。

「コロナのおかげで、論客型になる必要をさらに強く感じます。最近は商談もZOOMが多いのですが、お客様も忙しいので、関係構築型だと商談のアポすら取れません。具体的に議論ができ、解決策提示ができる論客型でないとお時間をいただけません。逆に論客型ならばZOOMのおかげで1時間の商談が20分で済むし移動も不要なので、商談の生産性はもの凄くアップします」

これは私も実感しています。私もお客様との商談では必ず課題を伺って提案をするようにしているのですが、大抵は20分で打ち合わせは終了します。

コロナ禍で日本のセールススタイルも良い方向へ変革していきそうです。

 

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この2〜3ヶ月間で、デジタルシフトは2〜3年分進んだが…

新型コロナでデジタル・シフトが一気に進んだことは、私たちが実感していることだと思います。

私の場合、昨年オンライン会議での打ち合わせは限定したお客様のみで、1年間で数回程度。
今年3月以降は、全ての打ち合わせが一気にオンラインに変わりました。

米マイクロソフトの4月29日決算発表で、サティア・ナデラCEOは「2年分のデジタル変革が2カ月で起きた」と述べています。
実際にMicrosoft Teamsの利用者は5カ月前と比べて4倍に増えました。

オンライン会議だけではありません。
新型コロナで生まれた新需要の多くは、デジタルが関わっています。在宅ワーカーのための健康管理ツール、急に忙しくなった食料品店のための自動発注システム、医療施設のための業務向け清掃ロボット、休業が続くライブハウスや居酒屋、レストランのためのクラウドファンディング、小売をサポートするライブコマースなど、ウーバーイーツや出前館などなど。

様々な分野でデジタルシフトが一気に進みました。
これは技術が進化したためではありません。技術は前からありました。

変わったのは、私たちの危機意識と行動です。
これまで多くの企業でデジタルシフトをしようとすると、「確かに効率はよくなるかもしれないが、現実には○○○だから、今はできない」というもっともらしい言い訳で、先送りされてきました。

新型コロナでそんな言い訳が全て吹っ飛びました。
要は私たちは「やろうと思えば出来るじゃん」と気がついたのです。

デジタル・シフトで自宅から様々なことができるようになって、効率が上がり楽になったことを実感した人も多いのではないでしょうか?

しかし問題はこの後です。
「でもやっぱり昔のやり方の方がいい」といって元に戻そうとする動きが出てきます。

しかし日本は既に、世界全体で見てかなりのデジタル後進国です。
「全国民の名寄せ」という基本的なことすら、出来ていません。
だから給付金も、膨大な人海戦術に頼らざるを得ません。
そして「諸外国と比べて支援に時間がかかりすぎる」と政府に文句をいう人が、マイナンバー制度に大反対していたりします。
デジタル後進国を生み出しているのは、実は変わろうとしない私たちなのかもしれません。

たかがデジタルと思いがちですが、今や私たちの生活にも関わっており、国の競争力も左右しているのです。

明治維新、第二次世界大戦終戦と、日本は常に外圧で変わってきた歴史があります。
新型コロナを期に本当に日本が変われるかは、これから数ヶ月にかかっていると思います。

 

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もはや消費者はコントロールできないという実験

マーケターがよく使う手法に「おとり効果」があります。
こんな実験があります。

被験者を2グループにわけて、Aグループにはカメラ2台(2万円と3万円)から1台を、Bグループは1台(5万円)を追加しカメラ3台から1台を選ぶ実験をしました。結果、Bグループの方が3万円のカメラに人気が集まりました。5万円のカメラがおとりになり、3万円のカメラに誘導した結果です。

この手法は実際の店舗でよく使われてきました。

しかしいまの消費者は、カメラを購入する際に大抵はスマホでチェックします。
この方法はいまでも有効なのでしょうか?
実際に実験した人がいます。

ある研究者は、オンラインショッピングと同じように様々な価格情報や消費者レビューを見せた上で、同様の実験をしました。するとおとり効果は跡形もなく消え去ってしまいました。考えてみれば当たり前ですよね。
(ちなみにこれはイタマール・サイモンソンとエマニュエル・ローゼンの著書「ウソはバレる」で紹介されていた実験です)

現代の消費者は、マーケターが思うように簡単に操られません。
消費者の脳が進化したからではありません。
テクノロジーが進化したためです。

私たちマーケターは、「消費者はもはやコントロールできない」という事実を受け入れた上で、マーケティングを考えるべきなのです。

 

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顧客目線が難しい理由

顧客目線に立つのは、本当に難しいですね。

顧客目線で徹底的に考え抜き顧客インタビューを何度も行って商品や広告メッセージを創り上げ、「これだけ考え抜いたから絶対大丈夫」と思ったのに、顧客がまったく反応しない、ということは実によくあります。

「刺さる広告」(レックス・ブリッグス&グレッグ・スチュアート著)を読んでいて、その理由を端的に述べている一文に出会いました。

マーケターは家族や恋人と過ごすよりも自分のブランドと過ごす時間のほうが長い。だが、消費者がそのブランドについて考えるのは、一度に数秒に過ぎない。

少し補足します。

私たちは顧客の様々な調査情報を元に顧客のことを考えて、商品をデザインし、時間をかけて考え抜きます。社内外の人達にも声をかけて大勢で考え、完璧なメッセージを創り上げます。膨大な時間をかけるわけですね。

しかし顧客はほとんど時間をかけません。

自分が顧客の立場なる、よくわかるのではないでしょうか?

たとえば店頭にある商品は、ほとんど素通り。
あるいは新聞広告は、チラッと「あ、広告ね」と思うだけで、目は記事を追うだけ。
大金をかけたテレビCMも、録画の早送りでスキップされたりします。

私たちが膨大な時間を投下し顧客目線を意識して考えた商品や広告メッセージも、顧客から見たら膨大な他情報の中に埋もれたごく一部です。

私たちが時間をかければかけるほど、顧客と同じ白紙の状態で見ることが出来なくなるという皮肉なパラドックスが起こっているのです。
私たちのレンズは、「自社目線」で大きく歪んでいます。

だからこそ様々な手段を駆使して客観的に消費者の脳内を理解し、検証することがとても大事なのです。

 

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製造コスト50ドルで1000ドル節約する商品。日米欧の経営者の値付けは?

世界的な価格戦略の第一人者であるヘルマン・サイモンとハーバード・ビジネススクールのロバート・J・ドーラン教授は、名著「価格戦略論」の最終章で、日本企業の経営者とのこんな経験を紹介しています。

1980年代後半、ハーバード・ビジネススクールで行った経営者向けセミナーの参加者に「製造コスト50ドルで顧客に1000ドルの節約を実現する製品に、いくらの価格を設定するか」という課題を与えました。

欧州経営者は600ドル、米国経営者は500ドルと答えました。
しかし日本の経営者の答えは、100ドル。

日本の経営者はその理由をこう言いました。

「我々は高い顧客付加価値の実現は我慢し、その代わりに市場の占有を目指している」

30年以上前の出来事で、日本企業が抜群のコスト競争力を持っていた頃の話です。

今やコスト競争力はアジア諸国の方が優れていることが多いのですが、「高い顧客付加価値は我慢して、市場占有を狙う」という考え方は日本流商売の遺伝子に深く刻み込まれているようにも感じます。

日本流商売の源流を遡ると、江戸時代後期、享保時代に活躍した石田梅岩の思想に辿り着きます。

梅岩は「経費を3割節約し利益を1割減にせよ。常に奉仕を心がけ、欲を出すな」と説きました。この思想は日本にとって大きな財産でした。日本は庶民の間にこの考えが拡がった状態で明治維新を迎えて殖産興業を実現し、さらに戦後の荒廃の中から高度経済成長を成し遂げました。

この30年間、日本は高付加価値へのシフトが求められています。
多くの日本企業にとって、高付加価値戦略は初の挑戦です。
しかし日本企業は製品性能に頼りすぎ、感情的便益を無視し、強いブランドを創れていません。

そんな中でも、日本企業の中には、シマノ、マキタのように隠れた高付加価値を築き上げた企業もあります。

今後日本企業が高付加価値戦略を実現するには、これまで疎かにしがちだったブランド戦略と価格戦略の基本を改めて学んだ上で、一見矛盾する梅岩の思想との正反合を図り、日々の仕事で実践すべきなのではないかと思います。

 

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New York Timesは10年かけてサブスク・シフトした


一時期、こう言われていました。

「新聞業界は死ぬ。オンラインニュースは無料だ。現代人はコンテンツにお金を払わない」

現実には、2019年に日経電子版の購読数は2019年に70万人を超えました。
かく言う私も、数年前から日経は電子版で読んでいます。紙の新聞は嵩張るので配達は止めました。

考えてみれば「オンラインは無料、紙は有料」というのは変ですよね。

また無料オンラインニュースは広告で稼ぎますが、「広告にうんざり」という人が多いのも現実。

もともと新聞は、紙の時代から売上の過半が広告でした。
しかし広告はどうしても景気に左右されます。

5月上旬、私は日経夕刊を見てショックを受けました。
広告の数が激減しているのです。この日、広告は合計6件。1ヶ月前(4月上旬)の夕刊では、合計14件でした。
コロナ禍で広告の仕事は真っ先に削られているのが現実です。

ここで参考になるのが、New York Timesの挑戦です。
2007年、New York Timesも広告売上の激減に直面。そこでサブスクリプション(サブスク)モデルへの変革を進めてきました。
図はNew York Timesの過去の決算発表を元に集計した結果です。先日5月6日発表の2019年度決算も反映しています。

この12年間で、不安定な広告売上比率は59%から29%に半減する一方で、サブスク売上比率が33%から60%に増加しています。

サブスク・シフトは収益は安定します。New York Timesでは、年初に年間売上の6割を確保した状態でスタートできます。
ビジネスモデル上は、New York Timesは新聞社というよりも、収益が安定しているSaaS企業と言えるのかも知れません。

一方でサブスク・シフトには時間がかかります。
またサブスク・シフトで一番悩ましいのは、売り切りから定額制に変わることで、売上が一時的に落ちることです。

このように考えると、コロナ禍で需要が蒸発している今はサブスク・シフトに挑戦する絶好の好機なのかもしれません。

(なお、次回6月3日の朝活永井塾は、このサブスクのテーマを掘り下げます。今回はZoomで開催します)

 

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成功の90%は、適切な場所とタイミングに依存する

まさに「ガラガラポンッ」という音が聞こえんばかりに、世の中が急速に変化しています。
マーケターはどうすべきなのでしょうか?

セオドア・レビットは「マーケティングの針路」と名付けられたハーバード・ビジネス・レビュー2001年11月号のインタビューで、次のように語っています。

—(以下、引用)—

「変化と対応こそ生存する唯一の方法」なのです。
「何をすべきか」の答えは、マネージャーの頭の中や社内に存在するのではなく、外部環境によって決まるのです。
ウディ・アレンは「成功の90%は適切な場所とタイミングに依存する」と言っています。
…いつも注意深く気を配り、常に起こっていることに俊敏に対応せよ、ということです。

—(以上、引用)

このレビットの言葉は、まさにいまの私たちに対する言葉だと思います。

まず、周りを見渡してみる。
そしていまこの時に、私たちそれぞれの現場で、この大きな変化に対して、自分の力で何ができるのか?
見て聞いて観察した上で、考え、実行してみる。
そして成功は、場所とタイミングが決めるのです。

物事が短い間に急速に変化しているいまこの現在に、様々な成功のチャンスがある筈です。

 

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今この瞬間に生まれている無数の新規事業の種を掴む方法

新型コロナの影響で、多くのビジネスが止まっています。しかしこんな中でも、新たな需要が次々と生まれています。

ごく一例ですが、在宅勤務が急増したことで、遠隔会議サービス、自宅の仕事環境のグレードアップ、運動不足解消のためのジョギングや筋トレ、といった需要が急拡大しています。

この需要の周辺で、たとえばリモートでエクササイズをレッスンしたり、Zoomを活用した営業の方法をコンサルティングしたり、といった新規事業の種も生まれています。

急速に成長し、まだ誰も勝者がいない新規事業は、実に大きなビジネスチャンスです。
新型コロナのために、いまこの新規事業の種が様々な分野で無数に生まれつつあります。
では、いかにこれらの新規事業の種を掴めば良いのでしょうか?

一つの方法は、他の誰も手に付けていない新規事業を立ち上げること。
しかしこれは、率直に申し上げて至難の業です。

ここで現代のマーケティングに最も大きな影響を与えたセオドア・レビットが1966年に書いた論文「模倣戦略の優位性」で紹介した「かじりかけのリンゴ戦術」が参考になります。要約すると、

成功するには最初にリンゴをかじる必要はない。
果汁がたっぷりある二口目か三口目で十分。
ただし果汁が涸れた10口目ではダメ

ということです。

ただレビットがこの考え方を提唱したのは、54年前でした。
当時は3口目を食べるまで1年くらいは余裕がありました。
現代ではこれがかなり短くなっています。1〜2ヶ月の遅れが致命傷です。
最近の実感では、新型コロナでこれがさらに短くなっている印象を受けます。
2週間前のニュースを見返すと、かなり大昔の話のように思えます。

新規事業の種が次々と生まれつつある今、遅くても2週間程度で3口目のリンゴを探し、実際にかじってみることが必要なのではないかと思います。

「コロナが収まってから、じっくり新規事業を考えよう」としても、リンゴは10〜20口目で芯も残っていないかも知れません。

 

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今こそ読みたい、伊藤雅俊著「商いの道」

新型コロナのために、経営者や現場のビジネスパーソンの皆様はとても厳しい時期におられるとお察しします。
こんな時こそ読みたい1冊があります。

「商いの道 経営の原点を考える」 伊藤雅俊著

いまや売上6兆円を超えるセブン&アイ・ホールディングスの母体となったイトーヨーカ堂を設立した伊藤雅俊さんが、商いの知恵を書き綴った本です。

伊藤さんはイトーヨーカ堂の前身となる母と兄が営んでいた羊華堂という洋品店に入ったのは、終戦直後、21歳の時。羊華堂はその年の東京大空襲で店が灰燼に帰していました。伊藤さんの母にとって店がなくなるのは日露戦争・関東大震災に続き3度目の体験だったそうです。しかし母は真っ先に立ち上がり、北千住の中華ソバ屋の軒先から再出発しました。

母は常に、
「お客さんは来ないもの」
「取引したくてもお取引先は簡単に応じてくれないもの」
「銀行は貸していただけないもの」、
そのようなないない尽くしから商いは出発する、と言っていました。

店を3度もなくす中、心の底からの実感だったのでしょう。

口癖は「商売とは、お客さまを大事にすること、そして信用を大事にすること、それに尽きる」

そんな伊藤さんは、時代の怖さを肌で知っていました。昭和11年(1934年)の日本は、大衆消費社会。米国GEの家電製品も売られていたよい時代でした。しかし翌年の盧溝橋事件を契機に、わずか数年後に第二次世界大戦に巻き込まれ、日本中は空襲で焼け野原になりました。伊藤さんが学んだのは「誰もそんなことを考えていない時の怖さ」。全てが当たり前に続くということはない、ということです。

ほんの3ヶ月前のことを思い返すと、この伊藤さんの言葉は改めて深く身に染みます。

商人(=ビジネスパーソン)にとって利益よりも大切なものが「信用」。誠実さを忘れ「少しくらい」「今回だけ」と言い訳する癖が付くと、積み重なっていずれ信用を失います。商人は常に信用の積み重ねを実践すべきなのです。

伊藤さんが知る激動の大正・昭和の時代を生き抜いた102歳の老銀行家は、「現金ほど大事なものはない」と言い切っていました。誠実な商いのためには、現金で仕入れ、現金で売り、現金で決済する現金主義が必要になります。現金は酸素や水と同じで、現金を確保しないと企業は死んでしまいます。これも今、私たちが実感していることではないでしょうか?

イトーヨーカ堂は大きく成長してきましたが、伊藤さんは伝統を頑なに守り、時流に流されない老舗的な商いも素晴らしいと考えていました。そんな利点と美点も自分の会社に取り入れられないかと考え、伊藤さんが辿り着いた結論は「成長を考えるな、生存を考えよ」
成長だけ考えると人は貪欲になり、いつの間にか膨張・肥大化し、他を蹴落とそうとし、不正を働きます。「長い目で見れば、むしろいかに生き抜くかを考えるべき」と伊藤さんは言います。

生存を考える商いならば基本に忠実になりお客さまに喜ばれ大きな信頼が得られます。無理せずに周囲の状況を見極め、一歩ずつ歩む生き残り商法の方が安全です。

本書では他にも様々な箴言が数多く書かれています。
ビジネスが大きな曲がり角を迎えている今こそ、じっくり読みたい1冊です。

 

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「100日後に死ぬワニ」は「みんなのブランド」になり、そして批判された

(写真は楽天の100ワニコレクションより)

Twitterで連載さた4コマ漫画「100日後に死ぬワニ」が大人気になり、そして炎上しました。

ワニの何げない日常を描いた4コマ漫画ですが、連載第1回目のコマ下の欄外にはこんな文字が。

「死ぬまで99日」

これが毎日カウントダウンしていきます。大人気になり、3月20日に最終回を迎え、ワニは死んでしまいました。
作者のきくちゆうきさんのフォロワー数はなんと220万人に。多くの人が「泣いた」「感動した」「ありがとう」とコメントしました。

しかし最終回が終わると、「書籍化決定、映画化決定、グッズ・イベント」などが矢継ぎ早に発表され、楽天でも「100ワニコレクション」のショップが開店しました。

すると今度は批判が集まりました。
「広告代理店が関わっていたのではないか?」「全部仕組んでいたのではないか?」と言われ、Twitterのトレンドに「電通案件」というタグもランクイン。ただし実際には電通は関わっていないそうですが。

ここまで批判が拡がったのは、「100日後に死ぬワニ」が、ブランドとしてあまりにも成功してしまったからだと思います。

成功したブランドは企業の手を離れます。

やや古い話ですが有名な事例もあります。1985年、ペプシがシェア争いで急追してきたため、コカ・コーラは従来のコークを一新した「ニューコーク」を発売しました。すると消費者は猛反発。不買運動まで起こりました。結果、ニューコークは3ヶ月で市場から撤収することになりました。

米国ではコカ・コーラは「幸せの象徴」です。米国の消費者は深い愛着を感じていました。ニューコークへの変更は、一方的に「幸せの象徴」を取り上げられる裏切りを意味していたのです。

成功してしまうと、企業の都合でブランドをコントロールできなくなってしまうということです。
しかも現代では消費者の反応はSNSで一気に拡がり、コントロール不能になります。
企業ができるのは、自社の行動をブランドのミッションに一致させることだけです。

「100日後に死ぬワニ」は「100日後、どうなるんだろう?」という読者を惹きつけ、最後に多くの人に感動を与え、大成功したブランドに育ちました。

最も集中が集まるこのタイミングで販促をかけるのは、一見するとマーケティングの王道に思えます。

しかし大きく成功してしまい既に自分の手を離れているブランドの場合、これは悪手になることがあります。その行動が、消費者の心の中にあるブランドと一致したものなのか、一手間かけて考える必要があるのです。

あからさまにグッズの告知をせずに、感動の余韻が収まったタイミングを見計らって、追悼イベント→ショップ開店、という流れで告知するようにすれば、ここまで批判されることはなかったかもしれません。

 

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「顧客価値の式」で、競争力あるサービスを作り込む

現代のビジネスの7割以上は、サービスビジネスです。
サービスビジネスでは、より高い顧客価値を生み出した会社が勝ちます。
サービス化が進むモノづくり企業も例外ではありません。

では、具体的にどうすればいいのでしょうか?

明治大学大学院で教授を務められた近藤隆雄先生のご著書「サービス・イノベーションの理論と方法」を読んでいたら「顧客価値の式」がありました。

顧客価値=(結果品質+過程品質)/(料金+入手コスト)

この式は、実に理解しやすく実践的です。

たとえば身近なところで、私が主催する勉強会「永井塾」ではこうなります。

■結果品質→そのサービスがもたらす結果の品質。たとえば永井塾に参加すると、現場の仕事で役立つ経営戦略を学べます。

■過程品質→サービス提供過程の品質。たとえば永井塾は申込みはWeb、都心の教室で学ぶことができ、お問い合わせには出来る限り迅速に対応しています。

■料金→サービスの金銭的費用。永井塾の場合、朝活3000円/夜学5000円です。

■入手コスト→サービス入手のために必要な料金以外のコスト。朝活は、早起きして交通費をかけて参加する必要があります。

 

顧客価値を高めるには、分子(結果品質と過程品質)を大きくするか、分母(料金と入手コスト)を小さくすることです。たとえば永井塾の例では…

■結果品質を高めるには→勉強会の内容をより業務に即した内容にすること。たとえば夜学では、最初に参加される方々が仕事で抱えておられるお悩みをお伺いし、ホワイトボードに書いた上で講義を行い、最後にお悩みがどのように解決できるかを一緒に考えていきます。

■過程品質を高めるには→サービス提供過程の快適性を向上させること。たとえば資料や動画をWeb配信し、遠方で参加できない方や復習したい方が学べるようにしています。

■料金は→慎重な対応が必要です。料金は品質の代表指標です。要は、高品質でも安価なサービスは安物に見えてしまいます。

■入手コストを下げるには→手間を減らすこと。たとえばやむを得ない理由で当日欠席しても、後日動画で学ぶことができます。

実際には永井塾では参加者の顧客価値を高めるために、毎回参加者にアンケートを取っています。朝活と夜学で累計50回近く実施していますが、常にいただいたご意見をもとに様々な改善を図っています。第1回と比べると今や完全に別物です。

 

このようにサービスの顧客価値の構造を考え、それぞれの要素で何をすればいいかを考えれば、やるべきことは見えてきます。そして顧客からのリアルな学びをもとに、常に改善し続けることが必要なのです。

 

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石田三成、三杯のお茶

以前、ある温泉旅館に泊まった時のこと。

旅の疲れもあって早く温泉に入りたかったのですが、仲居さんが何度も部屋に出入りして、お茶を出してくれたり宿泊の説明をしてくれます。恐らくこれがこの旅館流の「おもてなし」なのだと思いますが、「早くして欲しい」というのも野暮なので言い出せず、察して欲しいなぁと思ったりします。

京都で200年続く老舗旅館「柊屋」で60年間も仲居を務められた田口八重さんは、ご著書「おこしやす」で次のように書いておられます。

—(以下、引用)—

お客さまはおひとりおひとり、お顔立ちが違うように、お気持ちだって違うのです。それぞれに合ったおもてなしをしなければいけません。お仕着せのサービスでは喜んでくださらないということです。お目にかかった瞬間に、お客様の気持ちを察して、こうしてほしいと望む対応をしていくのです。
これが私がおもてなしをしてきた人生で、体験から掴んだモットーなのです。

—(以上、引用)—

 

また、石田三成がある小寺の小坊主だった時のこと。

鷹狩りをしていた秀吉がその小寺に立ち寄り、お茶を所望しました。

三成は、まず冷たいお茶を持ってきました。
一気に飲み干した秀吉が二杯目を求めると、三成は生暖かいお茶を出しました。
二杯目も飲み歩々してそしてもう一度求めると、熱いお茶を出しました。

三成は汗をかいた秀吉の状態を考え対応したのです。
三成の気配りに感心した秀吉は、三成を召し抱えることにしました。

 

田口八重さんと三成の逸話は、「本来のおもてなし」とは、相手の状況を踏まえた対応であることを教えてくれます。
しきたり通りの対応は「本来のおもてなし」の対極にあります。

そもそも今やものづくり企業と言えども、サービスなしでは成り立ちません。マーケティングの巨人と言われたセオドア・レビットも、こう述べていました。

「サービス業というものは存在しない。サービスの要素がほかの業界と比べて多いか少ないかの違いであり、すべての業界でサービスが行われている」

御社のサービスは、お客様へ「本来のおもてなし」を提供しているでしょうか?

 

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大手メーカーの研究開発者が顧客に会おうとしない理由

大手メーカー様の研究開発部門から、講演のご依頼をよくいただきます。
お悩みは驚くほど共通しています。

「社員を顧客視点の考え方に変えるにはどうすればいいんでしょうか?」

どこもバブル絶頂期までは、世界で輝いていた大企業。しかしその後伸び悩み苦しんでいる点も共通しています。

デザイン思考やDXなどの新しい方法論の取り込みには貪欲。全社で大きな投資をしています。でも低迷から抜け出せないのです。

講演の事前打ち合わせを重ね、講演当日に参加者と話し合い、さらにその後のフォローで感じる点も、共通しています。

お客様に会う機会があるエンジニアがほとんどいないのです。
研究開発拠点のオフィスで仕事をする日々を続けているのです。

「顧客視点に変えるには、まずお客様に会うことですよ」と、手を変え品を変え、様々な事例を紹介しながらお伝えします。

参加者からは「確かにそうだよね」と同意はいただけます。でも行動がほとんど変わりません。

最近サービスマーケティングを学んでいるのですが、理由が少し分かってきました。
「価値はどこで生まれるのか?」という根っ子の認識が、どうも違うようなのです。

大手メーカーは、「ものづくり」の大きな成功体験があります。
ものづくりでは、技術的な種から強い製品を生み出します。
「自社テクノロジーを製品に結集し、この価値をお客様に提供しよう」と考えるのです。
このようにものづくりの成功体験がある企業は、研究開発部門で価値が生まれるのが常識でした。

しかし今や就業者の7割以上がサービス産業(第3次産業)。メーカーもサービス化が進んでいます。

スティーブ・ジョブスがアップルに戻ってきた2000年頃のこと。ジョブズはこう言ったそうです。

「我々はユニークなマーケティングとイノベーティブな製品の二つで勝ってきた。21世紀はもう一つの柱が必要だ。それがカスタマーサービスだ」

そして世界中にアップルストアを作りました。

私がMacのトラブルで困った時のこと。AppleCare+という有料サービスに入っていたので、サイトでサポートを依頼すると、数秒後にアップルストアのスタッフから折り返し電話があり、親切丁寧に電話で問題解決をサポートしてくれました。最高で完璧なサービスでした。

このように「サービス化」はあらゆるビジネスで進んでいます。
iPhoneはアプリというサービスなしで使う人はいません。
GEもジェットエンジンの稼働状況を常に監視するサービスを提供しています。

そしてサービスで価値が生まれるのは「顧客との接点」です。

ここまでの話をまとめると、

①ものづくり全盛期は、研究開発部門で価値が生まれるのが常識だった。
②しかしあらゆるビジネスでサービス化が進み、「顧客との接点」で価値が生まれるのが常識になった。

いまや「研究開発部門で価値が生まれる」という過去の常識を変えないと、「顧客との接点で価値が生まれる」という現代の状況には対応できないのです。

しかし「研究開発部門で価値が生まれる」という過去の成功体験から抜け出せないのが、大手メーカーの研究開発者が陥っているジレンマなのです。

 

では、どうするか?

研究開発棟に閉じこもって考えていても、何も生まれません。
まずはオフィスから一歩外に出る。

顧客に会ってみる。観察してみる。話してみる。
そして、顧客の悩みを理解してみる。
その上で、自分たちが何ができるかを考える。

「価値共創」という言葉があります。
価値とは、顧客とともに創るものです。
顧客に会わずして、価値共創ができるわけがありません。

まずはオフィスを出でよ。
そしてお客様から学べ。

すべては、そこから始まるのだと思います。

 

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お客様の痛みを、観察して見つける6つのポイント

新事業成功のカギは「お客様の痛みを見つけて、解決すること」です。

しかしお客様の痛みは、ウンウン考え続けても、なかなか見つからないもの。
だからと言って、お客様に「痛みを教えて下さい」と言っても「は?」と言われます。
お客様はそもそも自分の痛みに気がついていないことも多いからです。

そこで必要なのが、お客様を観察すること。
でも「どうやって観察すればいいんだろう?」と思いますよね。

ちょっとした工夫をすることで、観察から多くのことが学べます。
デザイン思考を提唱したトム・ケリーは著書「イノベーションの達人!」で6つのポイントを挙げています。本書では丁寧に紹介されていますが、ここでは端的に要約してご紹介します。

① 先入観に囚とらわれずに素直に観察する
「へぇ〜。全然知らなかった」というように、素直になりましょう。

② 相手の立場に感情移入し、共感する
「この人、何に困っているんだろう」と共感しましょう。

③ ヒラメキと直感を重視する
「あれ?なんか変だぞ」という自分野直感を信じましょう。

④ 気になることはマメにメモ。情報を蓄積
メモることで、一見違うことでも「コレとアレは同じね」と関係性が見つかります。

⑤ 一見ゴミ情報も漁あさってみる
貪欲にアレコレ探すことで「こんなところにヒントが!」というのが見つかります。

⑥ 相手との会話を楽しむ
「へぇ〜。なるほど」と楽しみましょう。

「お客様の痛み」を探すのは、宝物探しに似ています。好奇心を持って探すと、意外と見つかりますよ。

 

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松屋カレーの「値上げ?」問題を考えてみる

値上げでショックを受けること、ありませんか?
消費者は価格には敏感なので、価格を変える時はきめ細かなコミュニケーションが必要です。

牛めし「松屋」の隠れ人気メニューは、実はカレー。
コアなファンが多く「カレー専門店よりも美味い」と人気です。

先月末、松屋カレーで価格に関する大きな話題がありました。

11月27日に、松屋のTwitter公式アカウントで、390円で売っていたオリジナルカレーの終了を発表したのです。

松屋カレーショック。
松屋の定番。オリジナルカレー。
まもなく本当に無くなります。
#松屋は牛めし屋
オリジナルカレーをご愛顧いただいていた皆様には大変心苦しいのですが松屋オリジナルカレー。本当に終売です。
食べおさめは今のうち
#ホームページでは明日まで非公開事項

松屋カレーのファンから「ショック」「悲しい」「なぜ?」「困る」との反応が相次ぎ、バズりました。

11月28日、今度は490円の創業ビーフカレーの定番化が発表されました。

12月3日(火)10時~
松屋『創業ビーフカレー』ついに定番化!!
牛バラ肉をとろっとろに煮込んだ創業ビーフカレーは松屋本気カレーです!!
#食べればわかるさ
#創業ビーフカレー
#松屋カレーショック
※創業ビーフカレー販売に伴い『現オリジナルカレー』は12/1より順次販売終了とさせて頂きます。

「なくならず良かった」という声もありましたが、「うーん…」「値上げか…」との反応も多く、これもバズりました。

実際には、商品品質を向上し品揃えを変えたので、必ずしも値上げではありません。しかし消費者には値上げに見えてしまいました。

牛丼業界は数年前まで、激しい価格競争をしていました。価格を下げるには品質見直しも必要なので、価格競争は消費者にとっても、いいことだけではありません。

そこで最近、松屋フーズは高付加価値化シフトを図っています。
830円のうな丼も投入しています。
ビジネス上でも成果が出ています。今年4月以降は、既存店舗の客数、客単価、売上、すべて対前年比プラス。これは立派。→「松屋 前年比 月次推移 (2020年3月期)」(松屋フーズIR情報より)

しかし今回の発表は、消費者により痛みを感じさせた可能性があります。

・390円カレー終了→痛い!
・490円カレー登場→悪くない。でも390円カレーないのはやはり痛い

より細やかなコミュニケーションが必要だったのでは、と思います。
たとえば390円カレーは販売継続、新たに490円カレーの併売を発表すると、消費者にとってお得感を感じさせたかもしれません。

価格に関わるコミュニケーションは、実にセンシティブな問題です。

 

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何したいの? どうしたいの?

最近、ビジネスパーソンの方々とお話ししていて、痛感していることがあります。

皆さん、とても真面目に目の前の仕事に取り組んでおられます。
しかし「何をしたいのですか?」「どうしたいのですか?」と聞くと、皆さん考え込んでしまうのです。

「何したいのか?」は、言い換えれば「これをこうしたい」という問題意識です。
「どうしたいの?」は、言い換えれば「こうすればうまくいく」という仮説です。

問題意識と仮説がないまま、目の前の仕事を、言われたとおりに一生懸命に行っているのです。

一昔前までは、これで問題はありませんでした。
やることが明確だったからです。
求められるのは効率。だから言われたとおり、頑張ってやることが必要でしたし、評価されました。

たとえてみれば、登る山が明確で、誰がその山に一番乗りで登るかを競っていました。

しかし今は、世の中がどんどん複雑になっています。
何をやればいいか、皆が困っています。

たとえてみれば、どの山に登るか、どう登るかが、決められないのです。

この「どの山に登るか?」が問題意識で、「どう登るか?」が仮説です。
ここで必要なのが、実践的な企画力です。

そこで来年1月と2月の朝活永井塾は、「超実践・マーケットイン企画術」と題して、2回連続でこの企画力について学んでいきます。

メルマガでご案内しています。ご興味ある方はぜひどうぞ。
(ネットのみの参加も受け付けています)

 

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「51歳で全く違う業界」という挑戦

週刊東洋経済2019.11.23号に、今年9月に東京都副知事に就任された宮坂学さんのインタビュー記事が掲載されています。宮坂さんは2012年にヤフー社長就任し、6年間務められた後に昨年退任されました。宮坂さんはインタビューでこう語っておられます。

「今、僕は51歳。せっかくこれだけ平均寿命が延びて、たぶんあと25年くらい働ける。ずっと同じ世界にいてはもったいない。東京都の仕事をしてみると、会う人、行く場所、読む本などが一変した。これはちょっと面白い、非常にチャレンジングだと思えた。」

「何もかもが新鮮で、違う大陸に来た感覚。やりがいがあるし、何よりもすごく面白い」

深く共感しました。

かくいう私も同じ51歳で、29年3ヶ月間勤めたIBMを退職し独立。それまではIT業界にいました。

独立後はIT業界から離れて実に様々な業界のお客様と、マーケティングの講演・研修・執筆を通じてお付き合いをさせていただいてます。食品業、旅行業、製造業、小売業、公益事業、ホテル業、不動産開発業、運送業、保険業、化粧品業、食品卸業、さらに様々な中小企業、等などです。これが実にエキサイティング。

毎日が新しい発見で、実に面白く、勉強になり、楽しんでいます。

これも50代になり、30年間の蓄積があるおかげと思います。

かつては20歳前後から40年間仕事をし、60歳で引退するのが当たり前でした。
しかし人生100年時代。この20年間で、私たちが健康に過ごせる期間は格段に伸びました。
仮に80歳まで働くとすると、仕事をする期間は60年間。

50歳はちょうど折り返し地点。自分の経験を活かしてスイッチするのにいいタイミングなのかもしれません。
「何よりもすごく面白い」と語る宮坂さんのインタビュー、同じ51歳で全く違う業界に足を踏み入れた私も、とても共感します。

とは言え、50歳で全く違う業界に足を踏み入れるのはちょっと勇気が必要です。

宮坂さんの場合、ヤフー社長を退任してZコーポレーションで新規事業として仮想通貨やマイクロモビリティの事業実現のために自治体を回っているうちに、日本で一番大きな自治体である東京都と関わりができ、小池知事から都の参与就任を依頼され、仕事の面白さを実感したのがきっかけだったそうです。

私の場合、30歳の頃から「50歳で独立」と考えながら、勤務先に承認をいただいてブログや執筆を始め、色々な方々とご縁をいただいたことが独立のきっかけでした。

幸い、多くの会社で副業も解禁され始めています。

40代後半になったら、試しにこれまでとはまったく別業界に色々と挑戦してみて、面白かったりうまくいきそうだったら仕事を切り替えるのは、これからのビジネスパーソンにとって有力な選択肢だと思います。

 

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夜学永井塾・第7回「ブランド戦略と価格戦略」を行いました

昨日は第7回の夜学・永井塾
テーマは「ブランド戦略と価格戦略」でした。

ブランドとは「お客様との約束」です。
ブランド論は、ブランド戦略論の世界的第一人者・デービッド・アーカーにより、1990年代に大きく進化しました。
そしてアーカーはブランド・アイデンティティ・システムという概念を創り上げました。

そして価格もブランド論と表裏一体の関係です。
たとえば「売るために値下げする」のは、ブランド的に考えると「定価で買って下さるお客様との約束を破る」ことでもあります。
お客様が「その価値ならお金を払う」という金額が、正しい価格なのです。

そこで下記テキストを教材に、ブランド論と価格戦略について、最新の行動経済学の考え方も取り入れながら学びました。

「ブランド優位の戦略」(デービッド・A・アーカー著)
「価格の掟」(ハーマン・サイモン著)

次回は12月18日(水)、テーマは「販売戦略」です。

参加希望の方は、こちらからどうぞ→ https://night-nagaijuku-05.peatix.com/

 

「激動する市場で、長期ビジョンは意味あるの?」という疑問

いまや市場は激動していて、まるで嵐の真っ直中。
数ヶ月前には想像もしていなかった会社が、ライバルとなって立ちはだかることもあります。

つい最近も、

・Yahoo!、ZOZO、LINEが経営統合を発表したり、
・NTTが電力事業に参入すると発表したり(しかも送電も行うとのこと)

といった発表がありました。

こんな世の中を見ていると、「一寸先は闇なんだから、長期ビジョンなんて意味はない」と思ってしまいます。

しかし私は「こんな時代だからこそ、長期ビジョンは意味がある」と思っています。

たとえてみれば、エベレストやマッターホルンの登頂のようなものです。
山の気候は晴れていたと思ったらブリザードが襲うといったように、ほんの数分で激変します。
ちょうど市場が激変するのと同じです。

しかし「あの険しい山を登頂する」という目的があり、その目的を実現するための準備を備えていれば、気候の変動に対応して、山頂を極めることができます。

逆に目的がなければ、激しい気候変動に翻弄されてしまいます。

この「あの険しい山を登頂する」という目的が、長期ビジョン。
言い換えれば「10年後、我々はどんな会社でありたいか?」という姿です。
その長期ビジョンを実現するために何をすべきかを考えるのが、全社戦略。

世の中の変化が激しいからこそ、社会の大きな変化を見据え、長期ビジョンを策定し、目的地に向かって実行計画の修正を繰り返すことが必要なのだと思います。

 

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サービスだけで、3ヶ月で1.3兆円を稼ぐアップル

10月30日に、アップルの2019年7~9月期決算が発表されました。

売上高は…。

全社では、640億4000万ドル(約6兆9000億円)で、前年同期比2%増
→その中で、ハードは、515億2900万ドル(5兆5500億円)で、同1%減
→その中で、iPhoneは、333億6200万ドル(3兆5930億円)で、同9%減

相変わらずもの凄い売上規模ですが、成長は止まっているように見えます。特にiPhoneの売上は下がっています。

しかし実際には、この裏で大きな変化が徐々に進んでいます。
注目すべきは、サービス売上です。
売上高は、125億1100万ドル(1兆3500億円)で、前年同期比18%増

全体に比べると小さく見えます。しかし3ヶ月で1兆3500億円をサービスで稼ぐ会社は滅多にありません。
年で換算すると、5兆円規模。これが20%近く毎年伸びています。

しかもアップルの場合、サービス売上は、景気が悪くなってもあまり影響を受けないiCloud、iTunesなどです。

アップル全体の売上に占めるサービス売上は19.5%。
ちなみに6年前の2013年第三四半期は、全社売上比率11.3%でした。
6年間で全社売上比率は8.2%もアップしています。

かねてからアップルの課題は、ハード偏重からの脱却でした。
ハードは製品の仕上がりや季節変動要因が大きく、不安定だからです。

そこでアップルは、収益基盤が盤石な今のうちに「サービスビジネスへの移行」という戦略を立て、じっくり時間をかけて着実に戦略を実行しているのです。

最近は定額見放題のApple TV+も始めました。

私たちは、ビジネス絶好調な中でも正しい危機感を持った上で、10年単位で戦略を立てて収益構造をゆっくりと着実に転換しているアップルの戦略から、今一度じっくりと学ぶべきだと思います。

参考までに、この戦略については、昨年2018年8月に書いた下記ブログでも詳しく解説していますので、よろしければ併せてご参照下さい。

3ヶ月でサービス売上1兆円!リカーリングビジネス化するアップル

 

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自社商品しか知らずに、顧客目線に立てるのか?

自社商品やサービスを愛用している人は、とても多くいます。
愛社精神の表れであり、誠に結構なことです。

しかし中には、こんなマーケティング部長もいます。

「私は自分の会社以外のお菓子は絶対食べないんです。だって当社が1番いいから。皆さんも、ウチのお菓子を食べて下さいね」

お客様は、自社商品以外に数多くの他社製品も選んでいます。
そもそもマーケティング部長は、市場全体を俯瞰する立場。
社内で最も顧客視点を求められます。

しかし自社商品しか知らずに、リアルな顧客視点を持てるのでしょうか?

トヨタの設計エンジニアは、トヨタ車ではなく他社の車に乗っています。
他社の車にも、いい点は沢山あります。そこから学べることも多いからです。

なんとトップの豊田章雄社長自身が、スバル・インプレッサに乗ってかっ飛ばしている動画もあります。トヨタ広報も関わっています。

確かに愛社精神も大切。

同時に顧客目線を持ち続けるためにも、時にはライバルの商品も知ることが必要だと思います。

 

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究極のマーケット・インは、究極のプロダクト・アウト

よくこう言われます。

プロダクト・アウトはダメだ。
これからは、マーケット・インで考えなければいけない。

確かに作り手の思い込みで、顧客視点がまったくない商品やサービスは、なかなか売れません。

一方で、スティーブ・ジョブスはユーザーの話を一切聞かないことで有名でした。

「ジョブスはユーザーの声を聞かなかった。
でもアップル製品はものすごく売れている。
だからプロダクト・アウトでいいんだ」

時々、こう言う人もおられます。

しかしジョブスは、自分自身が一番厳しいアップルユーザーでした。
自社のエンジニアやデザイナーに、厳しい注文を出し続けました。
そして細かいところに手が届くクールな製品を生み出してきました。

ジョブスは、成功するプロダクト・アウトのお手本です。
ユーザーの話を一切聞かない究極のプロダクト・アウト。
一方で究極のマーケット・インでもあるのです。
だからアップル製品が愛されるのです。

売れる商品を作るためには、顧客を観察し、顧客の痛みを理解することです。
観察の対象は相手に限りません。自分自身の観察でも、痛みはわかります。

10分で散髪できるQBハウスも、創業者が髪を切っているときに、

「そもそもなんで髪をカットするだけで1時間も必要なんだ?」

…と、自分自身で気がついたことがきっかけで、生まれました。

自分が、顧客になりきる。
そして自分自身の痛みを解決する商品やサービスを作る。
これが究極のプロダクト・アウトであり、同時に
究極のマーケット・インでもあるのです。

「プロダクトアウトでいい」という方は、本当にご自身が顧客になり切っているかを問いかけてみるのは意味があることだと思います。

 

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ネットを使わない若者。デジタル疲れ。常識は必ず変わる

これまで当たり前だった常識は、必ず変わります。

 

たとえば私たちはこう考えがちです。

「若者はネット、年配は店」

実は、旅行予約の世界では逆転しています。
9月27日の日本経済新聞の記事「ヒットのクスリ」で、JTB総研「海外観光旅行の現状2019」のデータを紹介しています。元データを確認したところ、

【相談から申込みまですべてネットを利用】
男性19-28歳 36.4%
女性19-28歳 31.6%

男性60-79歳 53.9%
女性60-79歳 60.7%

なんと男女ともに、シニアの方がはるかにネットを使いこなしています。
では若者は何を使っているかというと、店舗です。

【相談から申込みまですべて旅行代理店を利用】
男性19-28歳 39.3%
女性19-28歳 45.1%

男性60-79歳 26.7%
女性60-79歳 23.3%

若い層は旅行経験が浅いためですが、今のシニアは意外とネットを使いこなしています。

先日私もカフェで体験したのですが、隣の席にいた80代と思われる女性の方々がかなりコアなネットの話をしておられました。

このような事実を踏まえずに、「ターゲットはシニアだからお店の対応を充実させよう」と考えると、失敗します。

また、私たちはこう考えがちです。

「デジタル化はどんどん進む」

しかし現実には、逆の動きも出始めています。

ブックオフの業績が、最近回復しています。
メルカリに押されてきましたが、実際にはメルカリで商品発送したり個人間トラブルに気をつけたりというのは意外と手間がかかります。いわゆる「メルカリ疲れ」です。

そのためリアル店舗に回帰する人が増えているためです。

 

「若者はネット。シニアは店」
「デジタル化はどんどん進む」

これらは一例ですが、私たちの常識は、意外と変わっていることも多いのです。これをいち早く察することで、戦わずして勝てるのです。

そのためにも、事実をキチンと見ていきたいものです。

 

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人気レストランが、食べ残しを食べる理由

商売で何よりも怖いのが「客離れ」。

「万事順調」と思っていても、知らない間にお客様は不満を感じているもの。
そんなお客様は何も言わずに黙って離れていき、二度と戻ってきません。

気がつくのは、客離れがかなり進んでしまった時。そこからの巻き返しは大変です。
その後も売上は下がり続け、場合によっては人員削減などの辛い状況が待っています。

だから出来るだけ早い段階で、客離れの兆候を知ることが大事です。

イタリアンレストラン「ラ・ベットラ・ダ・オチアイ」のシェフ落合務さんが、9月5日の日本経済新聞夕刊に掲載された記事「【人間発見】イタリア料理シェフ 落合務さん」で、こんなことを書いています。

–(以下、引用)—
 お客さまは気にいらなければ二度と足を運んでくれません。味がまずいのか、価格が高いのか、接客が悪いのか。よほどのことがない限り、面と向かって教えてくれません。
 ですから各店のシェフら責任者には、お客さまが半分以上食べ残した皿は、必ず自分で食べてみるように厳命しています。
 それがラ・ベットラの味であれば「そのお客さまの舌に合わなかったのだ」と納得できます。もし本来の味と離れていれば、原因を探し出してコックに調理を修正させます。もちろん私も厨房にいれば食べ残しを食べて、指導しています。
—(以上、引用)—

食べ残しを食べるのは勇気がいるものだと思います。
でも客離れの恐怖を考えると、「そんなことはどうでもいいこと」と落合さんは考えているのでしょう。

客離れの兆候を把握するために、仕組みを持ちたいものです。

 

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松本空港ロータリークラブ様で講演しました

2019年9月9日(月)に松本市内で、松本空港ロータリークラブ様で、「お客様が買う理由をいかに作るか」というテーマで講演を致しました。

当日は松本空港ロータリークラブ会員に加えて一般参加も含め、経営者や自営業の方々を中心に約200名が参加されました。

多くの方々にご参加いただき、有り難うございました。

 

 

 

ゴディバと同等。でも価格は1/3

ある菓子メーカー部長の講演を聞く機会がありました。

この会社は自社の最新技術を駆使し、最高級チョコ「ゴディバ」と同等品質のチョコを開発。ゴディバの1/3の価格、同社他商品よりも1〜2割高い価格で販売しています。

「ゴディバと同じ品質で、価格1/3ですよ。こんな商品、当社しか作れません」

部長は自信満々です。

「そうそう。部下が『当社の名前を外して、別ブランドで売ったらどうでしょう?』って提案してきたんで、『当社が誇る最高級チョコだ。当社の名前を外すなんて言語道断!』と一喝してやりました。」

お話しを伺って、少し考えてしまいました。

 

トヨタは長年米国では「品質は良いけど安い車」というイメージ。メルセデスのような「高いけど欲しい車」ではありませんでした。

そこでトヨタ色を一切排除したブランド「レクサス」を新たに作り、「最高級ブランド」としてメルセデスに対抗しました。トヨタは既存のトヨタ車の顧客ではなく、トヨタがリーチできなかった「最高級で高品質な車が欲しい」という新しい顧客を開拓したのです。

トヨタは「最高級車だからトヨタの名前をつけよう」と考えず、むしろ「トヨタという名前は安物と取られてしまうから、新しいブランドが必要」と現実的に考え、レクサスを立ち上げたのです。

「ゴディバと同等のこのチョコには、当社の名前を外し別ブランドで売りましょう」という部下の真意は、恐らくこのレクサスの考え方と同じです。「当社がリーチしていない新しい顧客を開拓しよう」ということです。

 

こう考えると、菓子メーカー部長の問題は二つあることがわかります。

①「あえて高く売る」という選択肢を考えていない
部長は「当社のチョコよりも1〜2割も高い。わが社が誇る最高級チョコだ」と考えているのでしょう。しかし価格には「品質表示機能」があります。ゴディバと同等品質でも、ゴディバの1/3の価格を付けた途端、お客さんは「ゴディバの1/3の品質」と考えるのです。

②「自社名ブランド」を至上のものと考え、それ以外の現実的な選択肢を排除している
この会社のブランドは「親近感」はありますが「高級感」はありません。自社ブランドは確かに大切です。しかし現実には、この自社ブランドでは最高級チョコ「ゴディバ」には対抗できません。そして恐らくこの部長の頭の中には、ゴディバへ対抗する選択肢はないのでしょう。

 

本当は今までのやり方を根本的に見直すところに、新たな飛躍の種があります。この部長は成功体験があるがために、その種を潰してしまっているのです。

成功体験は、本当にやっかいなものです。
自信にもなりますが、新たなチャンスを潰すこともあります。

だからこそ、常に今の状態が本当にいいのか、健全な問題意識を持ち続けたいものです。

 

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