あの蔦屋書店が進化して、シェアラウンジになった

蔦屋書店の雰囲気、私は大好きです。
やや照明を落としたいい感じの雰囲気と、落ち着いた空気感。
スタバが併設されていることも多く、つい長居をしがちです。

六本木駅近くにある「文喫」もいい感じです。閉店した青山ブックセンターの跡地に2018年年末に開業した、入場料1650円を取る書店です。ゆったりした空間で本が読み放題。食事もできます。

「こんな空間が拡がればいいなぁ」と思っていたら、2023年1月27日の日経MJに、こんな記事がありました。

「CCC、シェアラウンジ出店加速」

CCCとは、TSUTAYAや蔦屋書店を展開する「カルチュア・コンビニエンス・クラブ」のこと。そしてシェアラウンジとは、ラウンジとシェアオフィスの機能を兼ね備えた空間のことです。

CCCが、このシェアラウンジの出店を加速しているのです。

丸の内では、TSUTAYA BOOKSTORE MARUNOUCHI SHARE LAUNGE(ツタヤブックストア丸の内シェアラウンジ)を書店に併設する形で開業。3〜4階の吹き抜け空間に、個室17室、会議室2室、220席を備えます。

基本料金は、60分1,650円、1日5,500円、月額利用55,000円。

フリードリンク、フリースナック&ブレッド。つまり飲み物と軽食は無料です。高速Wifi/電源もあり、本も読み放題。

2025年末までに首都圏で100店舗体制を目指すとのこと。

これは、なかなか凄い戦略です。

全く新しい会社が「当社はシェアラウンジを始めます」と言っても、私たちはなかなかイメージできません。でも蔦屋書店が「シェアラウンジを始めます」と言われると、どんなものになるかイメージできます。

よく考えてみると、これはものすごいブランド資産です。
ブランド資産は、消費者の脳内に作られます。一度このようなブランド資産が作られると、ライバルはなかなかそれを上書きできません。CCCはこの蔦屋書店で作り上げたブランド資産を、シェアラウンジで活用しているのです。

いま、シェアオフィスは成長市場です。コロナ禍でリモートワークが普及したおかげで、シェアオフィス市場は2026年には2300億円(2020年の3倍)の規模になると見込まれています。

ちなみに冒頭で紹介した2018年年末開業の「文喫」は、出版取次の最大手である日本出版販売(日販)が運営しています。日販は書店ビジネスが生命線。だから書店の価値を高める挑戦をしています。文喫はそんな挑戦の一つです。

CCCも2019年から渋谷で、ラウンジとシェアオフィスの機能を兼ね備えたシェアラウンジを開業していました。

書店業界では、コロナ禍前から様々な試行錯誤をしていたわけですね。

そしてCCCは試行錯誤した結果、「これはイケる」との確信を得て、スロットルを本格的に踏み込んでいます。蔦谷書店で培ったブランド資産を武器に、本格的に「シェアラウンジ」というコロナ禍で生まれた新市場を開拓しようとしています。

コロナ禍は一段落した今、新しく根付いた生活スタイルによって生まれた新市場が様々な業界で生まれています。大きなチャンスがやってきています。

御社は、どんな新市場を開拓しようとしておられますか?


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「独禁法で、値引き禁止はムリ」を突破したパナソニック

日経ビジネスの今週号(2023年1月23日号)の特集「殻を破れ!Panasonic」で、実にいいお話しがありました。記事の一部をオンラインでも読むことができます。

さらば家電の安売り パナソニック、マイナーチェンジ地獄脱す

この記事のポイントは…

・パナソニックの商品は、競争力があっても常に量販店で値引き販売されていた
・そこで「値引き販売は一切禁止にしよう」ということになった
・ここで問題になるのが「独占禁止法」。独禁法があるので「メーカーが販売店に価格を強制するのはNG」が常識だと思っていた
・そこで公正取引委員会に確認した。回答は「パナソニックが在庫リスクを引き受ければ、販売店に価格を指定してもOK」
・販売店が在庫を抱えれば、独禁法にひっかかる。しかしパナソニックが在庫を抱える形にすれば、販売店は単なる取次になり、パナソニックが直販する形になって独禁法にひっかからない
・そこで、価格を指定して販売店に納品、返品を常に引き受ける体制にした

私たちは「独禁法があるから、値引き禁止なんてムリ」という常識に陥りがちです。しかしこんな常識に縛られると、打つ手が限られてジリ貧に陥ります。そこで必要なのが、あらゆる常識を疑ってかかること。

この記事はその常識を疑う大切さを教えてくれます。

ちなみに現在のパナソニックの代理店販売に大きく影響を与えたのが、1964年に行われた「熱海会談」。熱海のニューフジヤホテルで、創業者・松下幸之助さんと主要代理店が二昼夜徹して行った伝説の意見交換の合宿です。

ある販売代理店の創業社長が苦情を言ったら、松下幸之助さんは…

「あなた、血の小便が出るまでやっていますか。私はやっていますよ。そこまでやってから言いなさい」

共存共栄という理念についても…

「共存共栄というのは、強い者同士でしか成立しませんよ。あなた方は強い者じゃないですね」

まさに真っ正面から本音で喧々諤々の議論をしたわけです。
最後の最後、決裂になるかと思った時に、松下幸之助さんは涙をこぼして…

「本当に申し訳なかった。改革をやります。しばらく時間を下さい」

そして自ら営業本部長代行を兼務。69歳で現場に復帰。「一つの県に代理店は一つ」「現金販売は報奨金」などの大改革を行いました。

松下幸之助さんは「松下の商いは3割減る。年間利益150億円は2年間なくなるので300億円。それで済んだら安いもんや」とハラを括り、徹底して経費節減して、合理化分は販売代理店に還元。

しかし2年間で300億円の損失を覚悟した改革は、2年間で487億円の利益を生み出しました。

松下さんは役員に、のちにこう言っています。

「そもそも一店舗のナショナルショップが10個買うてくれたら、全国で50万個売れる仕掛けを作ってあるのや。その製品が、小売店の倉庫に止まっているのか、お客さんの手元にまで届けられているのか。要は、わしが作った仕組みがちゃんと機能しているかどうかを見るのが、お前たちの仕事や」

※以上、熱海会談は、下記文献を参照しました。
「松下電器の経営改革」(伊丹敬之・田仲一弘・加藤俊彦・中野誠著、有斐閣)p.306
「血族の王 松下幸之助とナショナルの世紀」(岩瀬達哉著、新潮文庫)p.295-301

しかしこの仕掛けも、のちに家電量販店が登場して危機に直面します。「経営の神様」と称される松下幸之助さんが完璧に作り上げた仕掛けですら、時代ととも賞味期限が切れるわけです。

しかし大きな会社ほど「現在の仕組みは大前提で変えられない」と思い込みがちなので、常識にがんじがらめに縛られているのです。

そこで必要なのが、今の常識を全て疑い続けること。だから外部の人や、新しく組織に入ってきた人の「素朴な疑問」は、実は問題の核心を突いていることが多いのです。

そして大きな組織は「賞味期限が切れた常識」が至る所にあります。

値引き禁止・定価販売に舵を切ったこのパナソニックの取り組みは、そんな大切さを教えてくれます。

あなたの組織は、どんな「賞味期限が切れた常識」に挑戦していますか?


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D2C時代のリアル店舗戦略

スマホであるアパレルショップのサイトを見ていた妻が言いました。
「この服、いいなぁ…」

でもその場では買いませんでした。
「念のためお店でチェックするね」

散歩のついでに私も近所の店について行きました。

実際に妻が店で試着したところ、微妙なフィット感や色合いがイマイチ。
一方で前々から買おうと狙っていた服を試着したところ、ベストフィット。
結局、フィットする方を買うことにしました。
ちなみにこのお店からは、妻が欲しそうな商品が入荷すると、LINEでメッセージが届きます。

いまやありとあらゆる商品がスマホで売れます。
あの数百万円のテスラも、スマホでテスラ社から直接買えます。アマゾンで本を買うのと同じ感覚です。
私も昨日、4万円の加湿器をバルミューダ社のサイトからスマホで買いました。
そんなわけで、製造メーカーが直接消費者に売るD2C企業(Direct to Consumer)が増えています。

一方でD2C企業にも悩みがあります。
触ってみないとわからない実商品の場合、スマホではその感触がなかなか伝わらないのです。

妻の服はまさにそんな例です。

私の場合は、昨年発表されたApple Watch Ultraです。
私はネットで新商品発表を知ると、即「これ欲しいスイッチ」が入りました。
デザインもいい。機能も沢山。しかも電池の持ちが2倍です。
ただ毎日身につけて使うものです。念のためアップルストア表参道で実商品を付けてみたら、意外とアウトドア志向。「ビジネスシーンで身につけるには違和感があるなぁ」と感じました。結局、Apple Watch Ultraは購入を見送りました。

こうやって確認出来るのも、リアル店舗があるおかげですね。

そこで多くのD2C企業は、次々とリアル店舗を展開しています。

彼らは、ネット以外の販路を開拓して売上拡大するためにリアル店舗を出しているのではありません。
顧客に商品を実体験してもらい、顧客の満足度を上げて、全体の売上をかさ上げするために、リアル店舗を出しているのです。

現代の消費者は、ある程度こだわる商品を買う場合は、色々な形でスマホを使います。ですからチャネル戦略も、デジタルを大前提に考えていく必要があるのです。

御社のチャネル戦略は、デジタルを大前提に構築されているでしょうか。


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EV化の裏で静かに進む、水平 vs.垂直の戦い

街を歩いていると、気がつかない間にクルマがスーッと横を通り過ぎることが増えました。クルマがEV化で静かに走るようになったおかげです。最近、街中でもEVをよく見かけるようになりましたね。

世界全体で見ると、この1〜2年でEV化が一気に進んでいます。
各地域別のEV普及率はこうなっています。

【世界全体】 21年 8.1%
【欧州市場】 19年 1.9% → 20年 5.6% → 21年 11% (対前年比64%増 119万台)
【中国市場】 20年4.4% → 21年 13% (対前年比69%増 352万台)
【米国市場】 20年 1.6% → 21年 2.9%
【日本市場】 21年 0.9% → 22/1H 1%超

こうして全体を眺めてわかることは、

・欧州と中国は2022年に、普及の壁=キャズム(普及率16%)を突破している感じですね。

・米国と日本は、欧州・中国を2-3年遅れで追いかけています。

ガソリン車→EV化で、クルマの構造が大きく変わります。
大胆に単純化して言えば、こんな感じです。

【ガソリン車】ガソリンを燃やしてエンジンで動力発生→シャフトで車輪に動力を分配→車輪を回す
【EV】各車輪にモーターを付けて、電気制御して車輪を回す

このためEVではガソリン車で必要だった部品が一気に減る上に、電気でクルマの動きを自由に制御できます。

こんな状況の中で、クルマ業界内とクルマ業界外のメーカーが入り乱れて起こっていることが、水平統合と垂直統合の戦いです。

ガソリン車は複雑な構造なので、品質を高めるには、エンジン、ポンプ、トランスミッション、シャフト、サスペンション、ブレーキなどで微妙な擦り合わせ調整が必要でした。

日本企業が得意なのがこの「擦り合わせ技術」です。クルマ業界では、この擦り合わせで大成功したのが日本が誇るトヨタです。

このような擦り合わせを「垂直統合」といいます。細かい部品一つ一つから最終製品までを、メーカーで細かく統合していくわけです。

ところがEV化でクルマの構造がシンプルになりました。一時期は「CPU,メモリー、マザーボード、電源などの部品を買ってきてパソコンを組み立てるのと同じ感覚で、クルマも作れるようになる」と言われた時期もありました。(実際にはEVの場合でも、そこまで単純ではないようですが…)

このように、部品同士の擦り合わせ作業が少なく、部品を組み合わせることで最終製品に統合できることを「水平統合」といいます。

EV化によってクルマ業界で起こっているのは、まさにこの垂直統合と水平統合の戦いです。

トヨタなどのガソリン車の王者は、ガソリン車で確立した垂直統合の仕組みをEVでも実現した方が、自社の既存の強みを活かせるので有利です。ですので、バッテリーなども含めてできる限りEV関連の部品を内製化して、垂直統合モデルにより高品質化を極めようとします。

一方で中国自動車メーカーのようなクルマ業界の新規参入者にとって、参入障壁が一気に下がるEV化は大きなチャンスです。そこで様々なEVの部品メーカーとできる限り部品を標準化して外部調達することで、水平統合モデルにより低コスト化・デリバリー迅速化を図ろうとします。

そして世の中は、水平統合の方向に大きく進んでいます。この中でどうするかが、垂直統合の覇者・トヨタのジレンマでもあります。

日本でも、水平統合で勝負を賭けている会社は数多くあります。

ソニー・ホンダモビリティ(ソニーとホンダによるEV合弁会社)も、水平統合を志向しています。

日本電産は、永守会長が「EVのモーター供給会社となり、EVの価格を1/5にする」と言っています。

さらに日本のスタートアップ「ティア・フォー」は、EV用の基本ソフト(OS)である「オートウェア」をなんとオープンソースソフトウェアにより提供しようとしています。オートウェアは、台湾の鴻海精密工業が進めるEVの自動運転用プラットホームで、OSとして採用されました。

この垂直統合 vs. 水平統合の勝負は、これから3〜5年ほど続くでしょう。注目していきたいと思います。


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今年どうなるかは予想できない。ではどうする?

今年はどんな年になるのでしょうか?

1つだけ確実に言えることがあります。今年の年末、「今年の年初には、こんなことは想像もできなかったですね」と振り返っているだろう、ということです。

ナシーム・ニコラス・タレブが著書「ブラック・スワン」で述べたように、想像もしない出来事が起こり、グローバル規模で想定外の大きな影響を与える時代です。タレブはこのような出来事のことを「黒い白鳥(ブラック・スワン)」と呼びました。

現代ではごく少数のブラック・スワンが社会に甚大な影響を与え、私たちは翻弄されます。昨年だけでも「ウクライナ紛争」「中国のゼロコロナ政策」、それらに伴う「超ドル高=超円安」「エネルギー危機」「米国のインフレ」など様々なブラック・スワンが発生しました。

ブラック・スワンの影響力は、ますます高まっています。
ブラック・スワンの予見は、そもそもムリ。
では、どうするか?

まず「誰も未来を予想できない」と理解すること。
そして想定外が起こった場合は、それを強かに利用することを考えること。
そのために、全体でリスクを取る部分は10-15%程度に留め、残りについてはリスクを徹底的に回避することです。

リスクを取らない部分を見極めてリスクを徹底回避しておけば、「想定外」が起こっても余裕を持てますし、逆に「想定外」をチャンスに変えることができます。

資産投資にたとえると、日経平均が1/10に落ちても、資産の9割をキャッシュで持っていれば、超底値で株式を買えるようなものです。

たとえばコロナ禍の場合、研修業の人たちは対面研修が全部キャンセルになり、大変な目に遭いました。しかしいち早くオンライン研修に切り替えた人は、逆にこれをチャンスに切り替えて、いち早く新規事業を立ち上げることができました。(手前味噌ですが、完全オンラインの永井経営塾もそうやってKadokawaさんとの協業で2021年年初から立ち上げたビジネスです)

このためには、日頃から余裕がある経営を心がける必要があります。

現代では「想定外は予想できない」ことを強かに利用していく思考が求められる時代になったのです。

今年の年末も、こころ穏やかに迎えたいものですね。


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意味のない「差別化」をしていませんか?

「これがウチの差別化ポイントです!」

このようにアピールしている会社をよく見かけます。一方で、意味のない差別化をしているケースが実に多いのも現実です。たとえば…

①機能の違いをアピールする

例:「ユニクロのジャケットはフードが外れます。当社のジャケットはフードと一体化しました」
→でも、「フードが外れないからこの商品買おう」という人はあまりいませんよね。

顧客にとって意味のない機能をいくら追加しても、差別化にはなりません。

②ライバルよりも目立たせる

例:ライバルは「90日で成果が出る英語レッスン」ってアピールしているから、当社は「30日で成果が出る英語レッスン」とアピールしよう
→そのうち「1週間で…」「1日で…」「10分で…」なったりします。言ったもん勝ちの世界ですよね。

でも消費者はバカではないので、この手の意味のない数字ごっこには騙されません。

③ライバルと比べた優位性をアピールする

例:「全国ゆるキャラグランプリで、申込み3000件中、うちは10位です!」
→ 2021年時点でゆるキャラは全国に1553体あるそうです。ゆるキャラは地域のイベントを盛り上げる効果がありますが、ゆるキャラ自体は差別化にはなりません。

ライバルと比べて少々優位性があっても、顧客にとって意味がなければ差別化にはなりません。

④技術をアピールする

例「業界では誰も採用していない最先端のWeb3技術を活用して、後継者問題に悩む中小企業と若い起業家を結びつけることができます」
→何かとても有り難いものに思えてしまいますが、その中小企業の経営者と、若い起業家がその技術を使えないと、意味がありません。

課題の見極めの前に解決策を前提に考えてしまうと、最先端技術を使っても、大抵はスジの悪いビジネスになります。(頭脳が優秀な人ほど陥りやすい罠です)

これらの「イタい差別化」に共通しているのは、差別化というものをそもそも勘違いしていることです。

「要は、相手と違えば、差別化だよね」

これは差別化ではありません。

差別化戦略は、1980年頃に経営学者マイケル・ポーターが提唱しました。

本来の差別化は…

「このニーズに応えられるのは当社だけ」という状況を作ること

そのニーズが大きいほど、消費者は喜んで買うようになります。

たとえば、以下は差別化の例です。

ゴディバ →定番のバレンタイン本命チョコ
ブラックサンダー →定番の義理チョコ
エアウィーヴ →「質」の高い睡眠環境

そのお客様の課題やお困りごとに対して、業界でベストの解決策になることが、本当の「差別化」なのです。

御社は、差別化ができているでしょうか?


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アサヒ「白湯」のブルーオーシャン戦略

「これは参りました!(笑)」と思いました。
先月(2022年11月)、こんな商品が発売されていたのです。

『アサヒ おいしい水 天然水 白湯』

白湯(さゆ)です。
要は、ミネラルウォーターを温めて店頭に出したドリンクです。

「え?それだけ?」と思ってしまいますよね。
私は、ありがちな会社の社内会議でこの商品企画を提案するとどうなるか、つい想像してしまいます。

担当者「白湯を提案します」
部長 「天然水を温めただけじゃん。こんなんで売れるの?」

しかしこの商品、ヒットしているのです。

Twitterで「アサヒ 白湯」で検索してみると、こんな声が次々と出てきます。

「本当美味しい よく分かってるアサヒ」
「これからの季節に嬉しい!」
「水筒持ち歩かないからペットボトルの白湯ありがたい。Asahiに感謝」
「ついに出た!!ペット白湯〜!! ずっと欲しかったからコンビニで見かけて即買い!」
「美味しくてビックリ」

ちなみにコンビニやスーパーのホット飲料コーナーで、白湯の適温(約50~60℃)に温めた状態で販売されています。

アサヒの発表によると、白湯の飲用経験率は2009年の11.8%から、2022年には61.0%と5倍になっています。男性の飲用経験率も54.4%。なんと13年で5倍に成長する、隠れた超成長市場だったのです。

どんな時に飲むかというと、女性は「冬場の冷えや寒さ対策」「体に良さそう」、男性は「朝からカフェインを取りすぎないように、意識して白湯を飲んでいる」、といった感じです。健康志向ですね。

確かに私も白湯を飲むと、身体がリラックスした感じになります。

でも飲みたいときに買えないんですよね。

まさに「ありそうでなかった、とても欲しいモノ」ですね。

「既存知×既存知」がイノベーションと言われますが、この商品も「天然水×ホット飲料コーナー」という既存知同士の掛け算で生まれたイノベーションとも言えると思います。

この商品には、ポイントが2つあると思いました。

まず「白湯」というネーミング。実は2014年に「ホット天然水」という商品を出したのですが、売れなかったそうです。確かに機能面を考えると「温めた天然水=ホット天然水」ですが、健康志向を考えると「白湯(さゆ)」の方が消費者の心に刺さりますよね。

もう一つはタイミング。6割の人が白湯の飲用経験を持つ2022年という絶好のタイミングだからこそのヒットなのでしょう。

「レッドオーシャン」と思われがちな市場でも、消費者の隠れた不満は必ずあります。その隠れた不満の発見がブルーオーシャンになることを、この商品は教えてくれているように思います。


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タクシーに乗って、DXの本質を知る

先日、タクシーでやや長距離を移動したときのこと。

私は長距離は、なるべく個人タクシーを使うようにしています。
運転が丁寧ですし、道に迷うことがまずないからです。
しかしこの時はラッシュ時で、個人タクシーが掴まりません。
そこでタクシーアプリの「GO」で、日本交通のタクシーを呼びました。

5分程度で来てくれました。運転手は20代の若い男性です。いつも通り道順を伝えると…。

「その道順よりも、こっちの道順の方が3分ほど早く着きますが、いかがしましょう?」

GOでタクシーを呼ぶ際、目的地の住所指定をしたので、行き先はカーナビに自動セットされているのですね。(ちなみにタクシーを呼ぶ時は住所入力は不要で、地図上で建物をクリックするだけです)

お任せしたところ、「こんな道あったの?」と思うほどの抜け道を走り、あっという間に到着しました。

でもこの若い運転手が、抜け道を知っているわけではありません。カーナビの通りに走ったわけですね。

2022年11月18日のテレビ東京・ワールドビジネスサテライトを見ていたら、まさにこのことを紹介していました。

番組に登場した20代の女性運転手は、乗務歴4ヶ月。でも既に売上は営業所の平均です。その秘密が、GOの活用。

これまでタクシー運転手は、空車の時には流しで運転し客を掴まえるのに独特の勘が必要でした。運転には土地勘も必要でした。つまりタクシー業界は、ベテラン運転手が稼げる市場だったわけです。

しかしGOなら、自動的に乗客と車両をマッチングして、行き先も丁寧に教えてくれます。つまり知識がなくても稼げるわけです。しかもタクシー運転手は、比較的時間に拘束されずに自由に働けます。ですので20代でタクシー運転手になる人も増えています。

GOを運営するMOT(モバイルテクノロジーズ)の中島宏社長によると、タクシー会社に入社して数ヶ月で年収600万円稼げる方も出てきているそうです。

このため、GOでは決済システム、配車アプリ、タクシーに乗せるタブレットなどが全て連動しています。この結果、タクシーは利用者にとっても実に使いやすくなりました。

・乗車率 6割(GO開始前)→9割(GO開始後)
・支払い時間 40秒(車内決済)→15秒(GO決済)
・待ち時間 6分半(電話配車)→3.4分(アプリ配車)

この先のビジネスもあります。

GOに登録する全国15,000台のタクシーは、常にドライブレコーダーで道路の状況を撮影して走っています。そこで撮影画像から標識や信号をAIが自動検知し、地図会社と連携して地図データ更新に活用しています。1日で地球10週分の走行距離の情報量。まさにビッグデータです。

さらにこのデータを活用して、自動運転の研究も進めています。

DXの本質は、ケタ違いの利便性と大きな価値を生み出して、業界を変革し、市場を拡大して、新たなビジネスを創造することです。

これまでタクシーは不便が沢山ありました。しかしその不便さは、同じ業界にいる人ほど、ある意味で当たり前でした。その不便を解決したのがGOでした。

GOの前身は、ジャパンタクシーというタクシー会社である日本交通が設立した会社です。10年前に「このままでは日本のタクシー業界は、ぜんぶUberにやられる」という危機感を持った日本交通トップ・川鍋一朗さんが、タクシー配車アプリを始めたのがきっかけです。

このGOの挑戦は、まさにDXの本質です。

あなたの業界では、どのような危機感を持っていますか?
その危機を克服するために、どんな取り組みをしていますでしょうか?

 

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ダイヤモンド「銃・病原菌・鉄」から考えた、昆虫食

「昆虫食」をご存じでしょうか? 牛や豚に代わって、コオロギや蚕を蛋白源にしよう、という考え方が登場し、昆虫食ビジネスを手掛けるスタートアップ企業が注目を集めています。

「コオロギや蚕を食べるの? ムリムリ」と思うかもしれませんが、粉末状にしたりして無理なく食べる技術も開発されています。

ジャレド・ダイヤモンドの名著「銃・病原菌・鉄」を読んでいたら、この昆虫食が優れていることを裏付けるヒントが書かれていました。

本書は壮大な人類史の進化について書かれた本です。1997年刊行なので、当然のことながら昆虫食については何も書かれていません。

一方で本書には、人類が家畜を飼うようになった経緯の一節があります。人類は野生動物を家畜化したわけですが、家畜化するには次の5つの条件をすべて満たす必要がある、と書かれています。

①餌の問題 草食哺乳類は体重の10倍の餌が必要になります。肉食哺乳類は、餌の動物を育てるために体重の100倍の餌が必要。なので肉食哺乳類は効率が悪いため家畜化できません。

②成長速度 牛や豚は早く成長します。ゴリラや象は成長に15年かかるので、家畜としては効率が悪いのです。

③繁殖上の問題 家畜は繁殖させる必要があります。しかしチータのように人前で交尾しない動物は繁殖できません。人前で交尾を恥ずかしがらないことが家畜の条件です。

④気性の問題 大型哺乳類は人を殺せるので、気性が穏やかでないと危険です。熊は実は美味しいそうです。でも人を殺すので家畜化できません。

⑤序列ある集団を作るか 群れを作る動物は序列が明確なので、人間が頂点に立てば支配できます。山羊の群れとかはまさにそうですよね。

昆虫をこの5つの条件に当てはめてみると、こうなります。

①餌の問題 2013年に国連食糧農業機関が発表した昆虫食に関する報告書によると、タンパク質1Kgを生産するために必要なエサの重量は、コオロギは1.7Kgだそうです(ただし諸説あり)。資源効率化が問われる現代では、この効率性は極めて重要です。

②成長速度 コオロギは卵から1ヶ月で3cmに育ちます。従来の家畜と比べて、もの凄く速いですね。

③繁殖上の問題 昆虫の繁殖は、哺乳類と比べて比較的簡単です。

④気性の問題 昆虫は適切に管理すれば人に危害を与えません。

⑤序列ある集団を作るか これも適切に人間が管理できます。

こうして整理してみると、コオロギや蚕などの昆虫は、驚くべきことに理想的な家畜であることがわかります。

少し見方を変えることで、今まで私たちが当たり前に見ていたモノが、大きな可能性があるビジネスに変わります。ビジネス・チャンスは、この潮目を見極められるかどうかにあるのですね。

 

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発破をかけるほど、イノベーションは起きない

仕事で大手企業の経営幹部の方とお話しすると、時々こんなお悩みをお伺いします。

「イノベーションを生もうとして、私は社員に発破を掛けているんですよ。でもねぇ。社員からなかなかいい提案が挙がってこないんですよ。困ったもんです」

実は大手企業で成果が挙がらない最大の原因の一つは、「その企業の心理的安全性の低さ」にあると常々感じています。こういう会社、実に多いのです。

心理的安全性とは「ここでは何でも言える。心置きなくリスクが取れる」と感じる雰囲気のことです。経営学者のエイミー・エドモンドソンが提唱した概念です。

たとえば現場社員が、手間と労力をかけて新事業アイデアを考え、経営幹部に提案する、ということはよくあります。「自分たちのビジネスを少しでも良くしたい」という想いですね。実に素晴らしいことです。

しかしそんな提案に、こんな対応をする経営幹部もよく見かけます。

「うーん。ダメだね。話にならん」
「こんなの何も目新しくないよ」
「あなた、今のお客さんを何だと思っているの? 無責任な発言はやめよう」

実はこう言っている経営幹部は、心の中でこう考えていることもよくあります。

「その心意気、いいね。実は提案もいい線行っているんだけどね。もう少し鍛えてやれば、よくなるな」

しかし厳しく言われた社員は、発言を額面通りに受け取って、こう思ってしまうのです。

「自分の力不足か。提案しない方がよかったのかなぁ」
「この会社、もう何を言ってもダメなのかな。…転職考えようかなぁ」

このような会社が「心理的安全性が低い会社」です。

終身雇用だった昭和の時代は終わっています。今の会社員は、転職の選択肢があります。やる気がある社員ほど「提案すると厳しく言われてチェックされるけど、なかなか話しが進まない」心理的安全性の低い職場から、「何でも言えてリスクも取れて、サクサク挑戦できる」心理的安全性が高い職場へと、次々と流れていきます。

そして心理的安全性が低い職場には、言われたことしかやらない社員が残ります。これで新しいイノベーションを起こすなんて、ムリです。

「発破かけているんだけど成果が挙がらない。困ったもんです」と苦笑いする経営幹部は、実は自分自身が原因であることに気付いていません。

これは日本企業独特の問題ではありません。あくまで、その会社の問題です。

エドモンドソンは心理的安全性を提唱した名著「恐れのない組織」で、「福島第一原発事故の根本原因は、権威に異を唱えず盲目的服従をする日本文化に深く染みついた慣習が問題」という調査委員会の報告書に対し、こう反論しています。

「それは日本文化に限ったものではない。心理的安全性のレベルが低い文化に特有のものだ」

しかしこう言うと、こんな声も聞こえてきそうです。

「いやぁ。でもウチの会社はそういう社風ですからねぇ」

そのような社風だと、発破をかければかけるほどイノベーションが生まれなくなり、心ある社員が離れていきます。そのまま放置していいのでしょうか? いいわけ、ありませんよね。

あなたの会社は、心理的安全性は高いでしょうか?

 

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どうすれば学びが定着するのか

色々と本を読んだり講義を受けたりしてマーケティングを勉強している。
でもなかなか身につかない。
こんなお悩みをお持ちの方、多いかも知れませんね。

ちょうど先週、永井経営塾を受講されている方から、こんなご質問をいただきました。

「学びを定着するための良い方法があれば、教えてください」

永井経営塾では毎月2時間、様々なマーケティングや経営戦略理論を講義動画でお伝えしています。そこでいい機会なので、回答内容を共有したいと思います。

現実には、座学だけではなかなか身につきません。そこで私はこんなことを心がけてきました。

①実際に学んだ事を仕事で使ってみる

理論を頭で理解したつもりでも、十分に自分の中で消化していないと、仕事で使えません。頭で理解したことと、実際にやってみるのとは、全く違うからです。

たとえば、泳げない人が泳ぎ方を本で学んだとします。でもそれだけでは、プールに入っても泳げません。身体がちゃんと動かないからです。本で学んだ方法をプールの中で実際に試して、身体で覚えることで、泳げるようになります。

ここで大事なのは本で学んでおくということ。

本で学ばずにプールに飛び込み自己流で色々やってる人でも、いつか泳げるようになるでしょう。でも、予め本で学んだ人と比べると、泳げるようになるのは遅いですよね。

マーケティング理論や経営戦略理論も同じです。
理論を学んだ上で、実際に仕事で使ってみることが大事なのです。

実際に仕事で使ってみると、色々とうまくいかない部分が出てきます。
泳ぎ方マニュアルの通りに身体が動かないのとまったく同じです。
そして試行錯誤しながら調整していくと、学びが定着していきます。

②学んだ事をアウトプットする

私の企業研修を受講された方で、学んだ内容を元に、営業所内や自分の課で勉強会を開いている方が多くいらっしゃいます。これは実に素晴らしい方法です。

何かを学んだらそれを人に教えて、質疑応答して学びを深めることは、自分自身の学び定着のためにも有効です。しかもチームの力も向上します。

人に教えるためには、自分が教える内容の本質を理解する必要があります。本質とは「要は、こういうこと」と一言で言えて、相手がハラ落ちすることです。この教える準備をする過程で、理解が進み、知識が定着します。

一方向に教えるだけでなく、できれば教えた後に相手から率直な意見をもらうことをオススメします。これで教える側の自分の理解度も確認できます。

私も会社員時代、社内の勉強会を引き受けてお話ししたり、学んだ事をブログに書いてアウトプットしていました。

学んだ事はどんどん仕事で使ってみて成果を出し、あわせてアウトプットする。

こうすることで学びは定着していくのです。

 

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やる気を育てる方法

KOKUYOサイトより https://www.kokuyo-st.co.jp/stationery/yarukipen/

小学生くらいの子どもって、「宿題やりなさい!」と言えば言うほど、悪ふざけして誤魔化して、ますますやろうとしませんよね。お悩みの親御さんたちも多いと思います。

そんな中、使ってみたら8割の子どもが勉強をやる気になった(*)というスグレモノがあります。 それが「KOKUYOしゅくだいやる気ペン」です。→リンク先の動画をご覧下さい。

(*) コクヨしゅくだいやる気ペンモニター調査 (2019年6月2日~6月16日実施。N=86)

「しゅくだいやる気ペン」の素晴らしい点は、「やらない→叱る」から「がんばる→ほめる」へ変えたところです。

■まず「自分でがんばる」
頑張って勉強するとペンの色が変わり、勉強後にペンをスマホアプリに付けると水を注ぐ音がコポコポ鳴って「やる気の木」が育ちます。育っていくとアイテムゲット。楽しいですね。

■「やる気の見える化」
勉強時間は記録されます。母親がアプリでチェックして、花マルのフィードバックができます。親子コミュニケーションですね。

動機付けには大きく分けて、外発的動機付け内発的動機付けがあります。
外から動機を与えられる(ご褒美やお叱り)が、外発的動機付けです。
自分がやりたいからやるのが、内発的動機付けです。

継続性があって楽しいのは、内発的動機付けですよね。

この内発的動機付けで重要なのは、自律性と有能感を尊重することです。
「しゅくだいやる気ペン」は、この内発的動機付けの本質を見事に突いています。

■まず「自分でがんばる」
→「言われたからやる」ではなく、「楽しいからやろう」という自律性の尊重ですね。

■「やる気の見える化」
→「叱られるからイヤ」ではなく、「勉強が進んでほめられた。ボクにもできる」という有能感の尊重です。

このように内発的動機付けで大切なのは、自己決定感です。
自ら学ぶことで、成果も上がり、満足を得る、というわけですね。

ビジネスもまったく同じです。

「人は管理しないと動かない。だから統制する」と考えるマネジャーは、外発的動機付け重視です。

「人は自ら学び成長する。だから一人の人間として尊重し、自律性を支援する」と考えるマネジャーは、内発的動機付け重視です。

前者は「やらない→叱る→ますますやらない→ますます叱る」という悪循環の子どもと同じで、長期的に見ると成果はなかなかあがりません。

後者は「がんばる→ほめる→もっとがんばる」という好循環の子どもと同じで、長期的に見ると成果があがっていきます。

働くならば、やる気を育てる組織で働きたいですよね。

 

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「顔ダニ」の存在を知り、企業の行く末を学ぶ

先週日曜(2022/9/4)の日本経済新聞に、こんな記事がありました。

『「顔ダニ」、人間の一部に 絶滅危機回避、共生へ進化中』

なかなかショッキングな記事です。簡単に内容を紹介しますと…。

実は私たちの顔には「顔ダニ」が住んでいます。図のように、生息地は人間の毛穴。大きさ0.3ミリ。細胞の数はわずか900個。あの小さなショウジョウバエでもこの500倍ありますから、とてもシンプルな生き物です。

この顔ダニ、最小限のゲノム(遺伝子情報)しか持っていません。そもそも生き抜くための重要な遺伝子を欠いています。

なぜかというと、地上で最強生物・人間の顔での生活では、外敵がいないからです。敵は人間が追い払ってくれます。加えて食料である人間の皮脂は豊富。そこで顔ダニは、使わない遺伝子は次々と手放してしまいました。

日光で目覚める遺伝子もないし、夜の活動に必要なメラトニンも作れません。寄生先の人から拝借すればこと足りるからです。

こうして顔ダニは、人の顔という最高の生存環境に最適化していきました。進化というべきか、退化というべきか、なんとも微妙です。快適で外敵のいない環境だと、生物はどんどん退化していくのですね。

でも人間が絶滅した瞬間、顔ダニは人間の顔の外では生きられませんから、絶滅してしまいます。

なんか、色々と考えさせられます。

まず、こんな会社、時々見かけますよね。政府などの規制で守られていて、ほとんど競争がない業界は、日本にはまだ数多く残っています。こんな会社は、外敵がほとんどいない環境に最適化しています。

だから規制撤廃は、自分たちの生死がかかるわけで、強硬に反対します。

しかし世の中は全体として、常に規制緩和の方向に進んでいます。規制がなくなった瞬間、未経験の激烈な競争に晒され、たいへんなことになります。

競争が厳しい業界ほどエクセレントカンパニーが多いのも、同じことですね。厳しい競争環境では、エクセレントカンパニーに進化しない限り、生き残れません。

さて、御社の環境はどちらでしょうか?

一方で勤務先に最適化した会社員も、よく見かけます。その会社の中だけで通用する作法は完璧に身についているのですが、社外で汎用的に通じるスキルは皆無という方です。このような方は、いまの勤務先がなくなったり、色々な事情で勤務先から離れると、途端に困るわけです。

顔ダニの生き様から、考えさせられます。

 

ところでこの記事、読んでいるとちょっと顔がムズムズしてきますね。

 

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「歯の白さ」のマーケティング

ある日、妻に言われました。

「歯が黄ばんでいるよ。歯医者さんでホワイトニングしたら?」

あなたはご自分で、自分の歯がどんな色かをご存じでしょうか?
私は全く意識していませんでした。
洗面所で身支度する時も、口は基本的に閉じたまま。

早速洗面所で自分の歯を見ると、意外と黄ばんでいます。ちょうど湯飲みが茶渋で色が付くのと同じで、長年歯を使っていると食べ物の色で染まるようですね。

そこで早速、歯医者さんにホワイトニングをしてもらうことにしました。

ホワイトニングの当日、まず説明を受けます。

「1回目で、ある程度白くなります。でも2〜3回行うと、より白くなります」

と言われながら、診察台にあるディスプレイで、3人の実例写真(1回目、2回目、3回目)で見せていただきました。歯がもともと白い人。やや黄色い人。茶色い人の3人です。私は茶色い人のケースと同じ状態でした。

どの人も、1回目でそこそこ白くなっています。しかし3回目になると「芸能人?」と思えるほど白くなっています。

説明後に、まず承諾書にサイン。そして実際のホワイトニングです。

施術前に自分の歯の写真を撮り、90分の施術後にまた歯の写真を撮って、ビフォーvs.アフターの比較をします。

結果は事前の説明の通り、そこそこ白くなりました。しかしもっと白くしたいので、早速2回目の予定を入れました。

帰宅して妻にホワイトニングした歯を見せると、「すごく白くなった。もうこれでいいんじゃないの?」と驚かれましたが、「もっと白くなるので、3回目もやることにした」と答えると、「へぇ〜」。

このホワイトニング・ビジネス、なかなかよくできています。カギは「事前説明」です。

人の期待値は主観なので、人によって様々です。だから期待値を事前にセットする必要があります。

事前説明をしないと、こうなりがちです。
「1回で真っ白になると思っていたのに、そうでもないじゃん」
「2回目も必要なの? またお金取るの?」

事前説明した上で、施術前に承諾書にサインをさせることで、こうなります。
「ほぼ事前の説明通りだね」
「2回目と3回目をすると、もっと白くなるのか。予算があればやろうかな」

事前説明ではさらにこんな話もありました。

「一度ホワイトニングをしても、歯は徐々にまた色が付いてきます。歯の白さを保ちたければ、定期的なホワイトニングがオススメです」

つまり事前説明により「消費者の期待値」のマネジメントをすることで、
①顧客満足度向上を図りつつ、
②2回目・3回目の予約に繋げて売上拡大を図り、
③さらにリピートオーダーに繋げているのですね。

恐らくホワイトニングの技術や施術道具を販売する会社が、この「事前説明の徹底」というマーケティング手法とセットで、歯科医に売り込んでいるのでしょうね。

ポイントは「1回だけでは白くならない」「白さはホワイトニング後、徐々に失われる」というデメリットを正直に伝えて、そのデメリットをビジネスに繋げている点です。

正直に伝えることで、デメリットを転じて、売上拡大に繋げる。

このやり方は、私たちのビジネスでも参考になるなぁ、と実感しました。

 

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商品づくりよりも、組織づくり

ソニーの創業は1946年。
戦争が終わってまだ1年。日本は焼け野原でした。
当時のソニーは、東京通信工業という社名でした。

この時、ソニーはラジオの修理や改造をする傍ら、様々な商品を開発していました。

たとえば電気炊飯器。木のお櫃(ひつ)にアルミ電極を貼り合わせたものです。でもお米は炊けませんでした。失敗作第1号です。

電気座布団も開発しました。紙の間にニクロム線を入れて温かく過ごせる、というもの。温度調節もできないしろものでしたが、売れに売れました。ただ自社の名前を付けるのは気が引けて、「銀座ネッスル(熱する)商会」という名前を付けました。

この間、創業者の井深大(まさる)さんは商品開発よりも恐らく大事にしていた仕事がありました。それは、こんな文章で始まる「設立趣旨書」です。

「真面目なる技術者の技能を、最高度に発揮せしむべき
 自由闊達にして愉快なる理想工場の建設」

そうして東京通信工業(のちのソニー)は、まさにこの趣旨書にあるような創意溢れる技術者たちが集まり、様々なイノベーションを起こしていきます。

時は60年以上が経過して、2012年。

成長を続けて大企業になったソニーは、業績低迷で苦しんでいました。この時、ソニーの舵取りを任されたのが、平井一夫CEOです。

平井さんは、井深さんが作った設立趣旨書を穴が開くほど読みました。ここに書いていることは、まさにソニーの原点。しかし平井さんは、この設立趣旨書は時代に併せてアップデートする必要がある、と感じました。そして考えに考えた末に、新たなソニーのあるべき姿を一言にまとめました。

「感動 KANDO」

既にソニーはグローバル・カンパニー。日本人以外の海外社員が過半数です。そこで平井さんは、世界中のソニーの拠点を回ってタウンミーティングを続けて、『ソニーは「感動 KANDO」を生み出す会社なんだ』ということを、日本語で、時に流暢な英語で、語り続けました。

そしてソニーは見事、復活しました。

「ビジョナリー・カンパニー」を書いたジム・コリンズは、業界トップを何十年も維持する超一流企業を「ビジョナリー(未来志向)・カンパニー」と名付け、世界で18社のビジョナリーカンパニーを選び、共通する8つの基本原則を本書にまとめました。その最初の基本原則がこれです。

『時を告げるのではなく、時計をつくる』

「時」とは、商品づくりのたとえです。

トップが陣頭指揮で商品作りしても、商品には必ず寿命があります。トップがいないと商品が作れない組織は、トップがいなくなると途端に低迷を始めます。

しかしトップが社員の創造性を引き出し、優れた商品を次々生み出せるような優れた組織を作れば、会社は成長し続けることができます。(なお「組織作り」とは、単に「組織図を作ればいい」ということではありません。「組織作り」とは、組織の行動原理や使命、基本理念を作るということです)

ソニーはまさに、創業時に井深大さんが『時を告げるのではなく、時計をつくる』ことに注力して成長しました。そして低迷した時に、再び平井一夫さんが『最新型の時計にアップデートする』ことで復活したのです。

あなたの会社は、時計を作っているでしょうか?

 

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ワインボトルを変えたら、CO2排出量&物流費が半分に!

写真は https://packamama.com より

実は私、お酒を飲みません。 以前は少々たしなんでいましたが、飲まなくなってもう10年ほど経ちました。

飲んでいた頃はワインを買って飲むこともありました。ワインの問題は、ボトルです。店で買って家に持ち帰る際の重いこと。しかも割れやすいし、かさばりますよね。いつも持ち帰りが大変でした。

現在のガラス製ワインボトルは、17世紀に英国で生まれた丸いボトルが原型(写真の左)で、19世紀にフランスのブルゴーニュとボルドーで現在の形状(写真の真ん中)が生まれました。

21世紀なのに、私たちは19世紀のボトルを使っているわけです。

2022年7月24日付の日経産業新聞の記事「平らなワインボトル、豪で新風」で、この世界を変える挑戦を紹介しています。

オーストラリアで、平たくて軽いプラスティックのワインボトル(写真の右)が普及を始めているのです。

英国企業パッカママが開発したもので、厚みは3.5cm、重さ63グラム。店の同じ棚面積に2倍の本数を並べることができます。さらに空間をムダにせずに並べられるので、運送用物流パレットに搭載できる本数は通常のワインボトルの2倍。物流費高騰の今、これは有り難いですね。

同社CEOによると、ワインのカーボンフットプリント(CO2排出量)の68%は、ボトル由来だそうです。

新ボトルでワインの品質を保てるのは、19ヶ月間。ボトル内で熟成させる高級ワインには向きませんが、値ごろ感重視のワインであれば物流コストを大幅に削減できます。

記事で書かれているのは以上ですが、ガラス製のワインボトルの問題は他にもあります。捨てるのが大変です。家でパーティなんかしようものなら、大量の空き瓶を捨てるのは重労働です。さらにそんな空き瓶を回収するのにもコストがかかるわけです。

レストランの裏口にワインの空き瓶が大量に溜まっている…なんてこともなくなります。

このように考えると、先進テクノロジーは一切使っていませんが、これは素晴らしいイノベーションですね。

同社はワイン小売をしていましたが、重さと形状が物流上の悩みの種。そこで自社商品向けにエコフラットボトルを開発したそうです。

世の中に大きなインパクトを与えるイノベーションのヒントは、意外と私たちの身の丈の悩みの中に転がっていることを、改めて教えてくれる取り組みだと思います。

 

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デル・モデルを実現・進化させたテスラ

成長を続けるテスラは、テクノロジーに注目が集まりがちですが、最近こんな記事がありました。

『【記者の目】テスラ、製造業で異例の「運転資金不要」』
(日本経済新聞、2022年6月23日)

じっくり読むとなかなか凄いお話しなので、解説しながらご紹介したいと思います。

普通はモノを作る時、まず原材料調達や生産にお金を払った後に、商品を売って売掛金を回収します。この「お金を払ってから、売上を回収するまでの期間」を、会計ではキャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)といいます。

この自動車業界ではこのCCCは、記事によるとトヨタが31日フォルクスワーゲン(VW)が74日。世界に冠たる「トヨタ生産方式」を推進するトヨタがVWの半分というのは、さすがです。トヨタの方がVWよりも効率的にお金を回せるということです。

しかしテスラは、なんとCCCはマイナス15日。

つまり、お客からお金をもらい、そのお金で生産しているということです。こうなると運転資金が不要になり、余剰資金が生まれます。その分の資金を新たな投資に回して、成長できるわけですね。

記事によると、テスラは様々な方法を駆使してこれを実現しています。

【ものづくり革新】ガソリン車の部品は3万点ですが、EVは2万点に減ると言われています。テスラはさらに少ない1万点程度。たとえばクルマを制御するECU(電子制御装置)は、通常のクルマでは50〜70個ですが、テスラは数個だけ。おかげで配線も少なくて済みます。複雑な形状の大型部品も一度に成形できる巨大な鋳造設備も導入しました。さらに車種も絞り込んでいます。モデル3とモデルYのⅡ機種で生産台数の95%。内装もシンプル。メーターやボタンはなく、中央にタッチパネルがあるだけです。

【地産地消】テスラはEVが成長する中国でも、現地に工場を作りました。おかげで生産して販売までの時間が短くなります。

【自社直販】自社店舗の販売をやめて、オンラインでお客に直販します。

こうして、調達・生産から顧客に届けるまでのバリューチェーン(価値連鎖)を最短化することで、CCCをマイナスにしているのです。

一見すると、これは1980年代にPC業界で、デルが確立した「デル・モデル」です。デルも…

・販売店やディーラーを通さずに、顧客に直販
・全てお客の希望にあわせてカスタマイズする注文販売
・サプライチェーンマネジメントを徹底効率化。在庫を徹底追求
・自社は技術を持たず、他社の最新汎用技術を採用し、いち早く製品化

こうしてデルも、PC業界で唯一CCCマイナスを実現しました。デルはデル・モデルを磨き込み続け、2001年にパソコン業界で世界トップシェアを獲得。その原資で、今やIT総合ベンダーに進化中です。

テスラは、このデル・モデルを自動車業界で実現した、という見方もできます。
しかもテスラは、デル・モデルを進化させています。

・最新汎用技術を採用したデルとは異なり、テスラは自社で先進技術を研究開発し続けています

・さらに一台当たりの単価は、デルは10万円。テスラは500万円。50倍です。デルモデルも様々な業界にインパクトを与えましたが、実にすそ野が広い自動車業界で新たなモデルを実現することによるインパクトは計り知れません。

・単品PCのデルとは異なり、テスラのクルマは様々な仕組み(自動運転や充電ステーションなど)と連動することで価値を発揮します。クルマはその一手段にすぎません。

テスラが創りだした「テスラ・モデル」とも言うべきこのビジネスモデルは、今後大きな影響力を持ってくると思います。

 

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マーケティングはビジネスパーソンの必須科目

私がマーケティングの仕事を始めたのは、1990年代です。

当時、私はIBM社員でした。1994年、破綻寸前に追い込まれたIBMは、ガースナーがCEOに就任。様々な手を打って復活を果たしたのですが、その一つがマーケティングの強化でした。このためにガースナーはアメックス社長時代にマーケティング分野の右腕だった元部下(アビー・コンスタン)をIBMに招き、マーケティング部門を任せたのです。

「マーケティング専門職を育成しよう」と考えたアビーは、IBM社内でマーケティング専門職を育成することにしました。

この時、製品開発マネジャーだった私は異動して、マーケティング専門職の一期生になりました。IBMはマーケティング専門職の人たちの人材育成に戦略的に投資しました。

当時、マーケティングはマーケティング専門職の人が学ぶものだったのです。

これが、現代ではまったく変わりました。
あらゆる仕事で、マーケティングは必須科目になったのです。

私は企業向けにマーケティング研修を行っています。営業、商品開発、生産、管理、人事など、様々な職種の方々が参加していますが、マーケティングを学ぶと例外なくこうおっしゃいます。

「早くマーケティングを学べば良かった。これ、自分の仕事ですぐに役立ちます」

永井経営塾にも、実に様々な職種の方々が参加しておられます。

理容・美容店の美容師さんたちも拙著「100円のコーラを1000円で売る方法」を読んでいます。理由を聞くと、「だって100円のコーラを1000円で売りたいじゃないですか」。

これはマーケティングが「顧客の潜在ニーズを見つけ出し、価値を創り出して、顧客に提供し、ビジネスにすること」を、首尾一貫した方法論でまとめた考え方だからです。

モノを作れば売れる時代はとうの昔に終わりました。
現代は価値を創らないと売れない時代です。
だからマーケティングがわかれば、一気に仕事力がアップします。

最近注目されているリスキリングで、DXやITだけでなくマーケティングにも注目が集まっているのは、こんな理由です。

ただマーケティングを学ぶ上での大きな壁が、横文字の専門用語や一見難しそうに見える理論。この壁が意外に大きくて、多くの方々が挫折してしまうのです。

実はマーケティングは、いったん理解してしまえば、その本質は子どもでもわかるほどシンプルなものです。難しいことは、本質を理解した上で実践していくうちに次第に分かってきます。

ビジネスパーソンにとって大事なのは、限られた時間と労力の投資で、仕事で成果を挙げること。

そのためにも、いまやビジネスでは必須科目となったマーケティングを一人でも多くのビジネスパーソンに学んでいただける環境作りをしていきたいと思います。

 

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イノベーションは、「猿まね」で起こせ

2022/5/31付の日本経済新聞 経済教室で、早稲田大学の井上達彦教授がこんな論文を寄稿しておられます。

「【経済教室】日本企業、戦略不全からの脱出(上) 「猿まね」批判を恐れるな」

本論文で井上教授は、日本企業が長期の戦略不全状態でイノベーションが起こらない原因は「イミテーション実践力=模倣力の喪失である」と述べています。

そして『世界的に見て日本は「模倣的創造」にたけた民族である』として、下記の例を挙げています。

・トヨタ生産方式(ジャスト・イン・タイム方式)は、大野耐一さんが米国のスーパーマーケットの仕組みを応用したもの

・セブン・イレブンも、米国で展開していたセブン・イレブンの考え方を取り入れつつ、マニュアルを全て日本流に作り変えたもの

「模倣的創造力」は日本人の強みなのだから、自ら捨てる必要はない、ということです。

シュンペーターが100年前に「イノベーションは既存知の新しい組み合わせ」といいました。こう考えると、「創造的模倣」がイノベーションを生むという考え方は納得です。むしろ「模倣的創造が、イノベーションの本質」とも言えるかもしれません。

思い返せば1980年代まで日本企業が成長していた頃、海外からは「日本製品は猿まねばかり」とよく言われていました。しかしその猿まねは、実は「模倣的創造」だった、と解釈すれば、本論文の指摘はとても腹落ちします。

当時は「欧米に追いつき追い越せ」が原動力になり、海外から必死に学びつつ、日本流に作り変えることが「創造的模倣」になり、結果としてイノベーションを生み出したのでしょう。

現在の日本は、「失われた30年」といわれる停滞に陥っています。これは裏を返せば、「海外には学ぶべき先行事例が山のようにある」ということです。

いまこそ日本人の強みである「模倣的創造力」を発揮する絶好のタイミングなのかもしれません。

そのためには、

・「イノベーション=全く新しいものを創造すること」という思い込みを、まず捨てる

・アジアを含む海外から、謙虚に好奇心を持って学んでいく

ということが必要なのだと思います。

 

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値上げと企業ブランディング

原材料費の高騰、なかなか厳しいですよね。「ウチも値上げしないと厳しいなぁ」とお考えの方も多いのではないかと思います。

一方で、値上げは消費者に痛みを強います。ですので値上げが企業ブランディングにどんな影響を与えるかも考える必要があります。では、どのように考えれば良いのでしょうか?

世界的なブランドの大家であるデービッド・アーカーは、1980年代に「これまでのマーケティング活動の蓄積が、いまのブランドを創り上げている」というブランド資産(ブランド・エクイティ)の概念を提唱しています。

アーカーは1996年にこの考えをさらに進化させ、『「われわれはこんなブランドを目指すのだ」と考え、あるべきブランドの姿に向かってマーケティング戦略を考えるべきだ』というブランド・アイデンティティという概念も提唱しています。

ブランド資産「マーケティング活動の結果(ゴール)」です。ブランドアイデンティティは逆に「マーケティング活動の出発点」になります。

値上げを考える際には、この2つの視点で考えると、わかりやすく整理できます。

■私たちは「強いブランドなら、値上げしても理解は得られるのでは?」と考えがちです。

しかしこれは間違いです。一般論ですが、値上げは顧客に痛みを強いるために、ブランド資産を毀損します。
「強いブランド(=既にブランド資産がある状態)」ならば、弱いブランドよりも理解が得られやすい可能性があります。しかし値上げはブランド資産を毀損するわけですから、その毀損を最小限に留める努力は必須です。

■また、私たちは「ステルス値上げならブランド価値は守れるのでは?」とも考えがちです。

ステルス値上げとは、価格据え置きで商品量を減らすような隠れた値上げのことです。確かに気付かれにくい面がありますが、これは好ましくありません。

プライシングスタジオ株式会社が2022年6月2日に「ステルス値上げに関する調査」(調査数341件、回収期間4月1〜15日)を発表しています。→リンク

・ステルス値上げを知っている人は66%
・ステルス値上げが増えていると感じる人は69%
・「不快に感じる人」は26-35歳が最も多く63%。一番少ない46歳以上は43%
・「仕方ないと思う人」は46歳以上が最も多い57%。一番少ない26-35歳は38%

つまり消費者は、意外とステルス値上げに気がついています。しかも一定数の人が不快に感じてます。これらの人たちには「この企業は誠実ではない(=消費者が気づかぬように損失を与えている)」という印象を与えているわけで、ブランド資産が毀損していることを示しています。これってあまりいいことではありませんよね。

一方で数年前と比較して、現在は原材料などの高騰が社会的に広く共有されています。誠実に説明をすることで、消費者が値上げを受け容れる素地が整っています。透明性ある説明をすることにより、逆に消費者に誠実さを訴求する機会となり、ブランド資産の毀損を最小限に留められる可能性が高いと思います。

■「値上げが続いているので、環境対応とかのメッセージを大々的に訴求すれば、値上げも理解を得られるのでは?」と考える人もいます。

ここで重要なのが「ブランドで何よりも大切なのは、顧客から見た首尾一貫性(言行一致)だ」ということです。

そのメッセージが、会社が常日頃言い続けているビジョンや使命(目指すブランドのあり方を示すブランド・アイデンティティ)と首尾一貫していれば、確かに受け容れられる可能性があります。

しかし「環境対応はブームみたいだから、取りあえずこれと組み合わせればいい」という企業の安易な姿勢は、確実に消費者に足下を見られます。

値上げは苦渋の決断です。そんな場面だからこそ企業の姿勢が問われます。対応次第では「お里が知れますよ」っていうことですね。

なお、ここまでの話はあくまで値上げ発表とブランディングについて考察したものです。

消費者が店頭でどのような反応をするかは、別途詳細な検討が必要です。たとえば消費者が商品棚にあるA商品とライバルのB商品を見比べて、お値打ち感があるB商品を選ぶ…ということが起こります。

ともあれ、原材料高騰は、長いことデフレが続いてきた日本経済にとって一大転機になり得ます。この値上げを、長期低迷が続いていた人件費アップに繋げて、日本を豊かにするチャンスに転じたいですね。

 

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内田和成著「イノベーションの競争戦略」は、イノベーションの教科書

多くの人は「イノベーションは、画期的な商品やサービスを生み出すことだ」と考えています。そして画期的な商品を作ろうとしますが、空振りします。そしてこんな反省をします。

「敗因は、新たな価値を生み出せなかったことだな…」

これは正しいのでしょうか?

先月末(2022年4月)の新刊「イノベーションの競争戦略」(東洋経済新報社)の著者・内田和成先生は、国内外のイノベーション事例を1000件近く調べた末に、こんな結論を提示しています。

『世の中に存在しなかった画期的な発明やサービスは、企業におけるイノベーションの必要条件ではない。それよりも新しい製品・サービスを消費者や企業の日々の活動や行動の中に浸透させることこそがイノベーションの本質である』

2001年、ビル・ゲイツ、ジョブズ、ベゾスといった大物達が「人の移動を変える革命的商品」と絶賛した商品が発売されました。「セグウェイ」です。人が立ったまま乗るボードの両側に2つ車輪が付き、真ん中にハンドルがついて、立ち乗りで最高時速19Km/hで走れます。当時の画期的技術でした。

しかし交通ルール上、乗る場所が限られていましたし、価格も100万円近くておいそれと買えません。結局普及せず、世紀の大失敗になりました。

一方で、2007年に登場したiPhone。携帯電話も、インターネット用デバイスも、iPodも既存技術。画期的技術は何もありません。

しかしiPhoneは、説明不要で誰にでも使える優れたユーザーインターフェイスで様々なアプリを使えました。その後ウーバー、Airbnb、メルカリなどの新しいサービスが立ち上がり、世の中を大きく変えるイノベーションになりました。

内田先生は、本書でこのように述べています。

『「顧客の価値観・態度が変わって、結果として生活やビジネス上の行動が変わったか?」という問いに対する答えが「YES」のものがイノベーションなのだ』

では、どのようにすればよいのでしょうか?

本書では「イノベーションストリーム」という概念を紹介しています。次の4ステップです。

①価値創造のドライバー

②価値創造

③態度変容

④行動変容

具体的に見ていきましょう。

①価値創造のドライバー… 価値創造を受け容れる世の中の変化を見極めます。たとえばコロナ禍で人々の行動は大きく変わり、様々な変化を受け容れるようになりました。

②価値創造… 技術革新・社会構造・心理変化を見極めて、新しい価値を提供します。たとえば「レストランの宅配サービスの提供」。

しかし残念ながら、多くの企業はこの②で留まっています。イノベーションを起こすには、しつこく③と④を追求することが必要です。

③態度変容… 「お、これ使えるね」というように顧客の態度が変わることです。たとえば外出できない中で「外食したい」という人が「なるほど、宅配サービスであの店のメニューを自宅で食べられるのはいいなぁ」と考えるようになりました。

④行動変容… 実際に顧客の行動が変わり、定着することです。「実際に出前館やウーバーイーツを使って注文する」という行動が定着することです。

ここで紹介したiPhoneもウーバーイーツも出前館も、新しい技術は何もありません。しかし人々の行動変容を起こしたイノベーションです。

誤解を恐れずに言えば、イノベーションが起こせれば、技術革新とか新しい価値創造とかは、はっきり言ってどうでもいいのです。イノベーションで重要なのは、顧客の行動変容を生み出したか否かです。

もう12年も前の話ですが、2010年1月16日の日本経済新聞の1面「企業 強さの条件」に、中国企業や政府に広がるこんな言葉が紹介されていました。

「三流企業がものをつくり、二流企業が技術を開発、一流企業がルールを決める」

日本は自分たちを「技術先進国」と思っています。確かに技術は大事です。しかし技術はイノベーションの一要素です。このことがわかっている人たちにとって、日本の先進技術はイノベーションを起こすための「単なる燃料」に過ぎないのかもしれません。

「イノベーション」は1956年の経済白書で取り上げられ、日本で広く知られるようになった、と言われています。しかしこの時、「イノベーション=技術革新」と訳しました。この世紀の誤訳が、日本人のイノベーション下手を招いているのかも知れません。

内田先生はこのように書いています。

「トンビに油揚げをさらわれるという格言があるが、油揚げをさらったものがイノベーターである」

シュンペーター曰く「イノベーションとは既存知と既存知の新しい組み合わせ」です。それを「油揚げをさらったものがイノベーターである」と表現するあたりが、いかにも内田流です。

そして内田先生はこのように続けます。

「…となるとポイントは新しい価値を自社で生み出すことではなく、その価値をいかに顧客に根づかせるか、にあるということが理解できるだろう。そのためには自社の資源にこだわることなく、使えるものは何でも使うという考え方に行きつく。それができないのが日本企業の弱いところである」

その上で本書では次の4つの提言をしています。

【提言1】行動変容にコミットする…新しい価値を生むよりも、人々の態度変容と行動変容を起こせ

【提言2】イノベーションを見るレンズを変える…態度変容と行動変容の種を探せ

【提言3】事業継続に強くこだわる…ユーザーの態度・行動が変わるところまで継続できるかがカギ

【提言4】自前主義を放棄する…イノベーションを分業で実現せよ


実は内田先生には、本書刊行の2ヶ月前に永井経営塾のゲストライブに登壇いただき、本書の内容を特別にお話しいただきました。

この時も直接内田先生からお話しをお伺いして「なるほど」と思ったのですが、本書を実際に読んで「行動変容を起こすのがイノベーションだ」という考え方がストンと腹落ちしました。1000件近くの事例を分析した成果なので、事例も実に豊富です。

現代におけるイノベーションの教科書として、ビジネスに関わるあらゆる人たちに強くオススメしたいと思います。

 

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デパ地下で体験した「俺の」戦略

写真は「俺のEC」より

近所のデパ地下の特設コーナーに、「俺のフレンチ」「俺のイタリアン」が出店していました。お店のメニューが8種類ほど冷凍食品で売られています。

早速購入し、その晩、家で食べてみて驚きました。「俺のフレンチ」で食べるのと全く同じクオリティなのです。

「でも特設コーナー、5月末まで。この後どうしよう? もしかしたらECサイトがあるかも…」

検索したら「俺のEC」というサイトがありました。しかもメニューは数十種類。

そこで考えました。「これって次世代店舗戦略そのものだ…」

最近、D2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)に特化したネット直販企業が様々な分野で台頭しています。

D2Cは問屋・小売店を通さないので、流通コストは最小限。消費者と直接繋がり、消費者も深く理解できます。一見万能。ただ致命的なジレンマがあります。

リアル顧客の接点がないので、体験を提供できません。体験の提供という点で、リアル店舗は圧倒的に優位です。

そこでD2C企業は、リアル店舗を展開し始めています。米国で男性用スーツを提供するD2C企業IndochinoのCEOは、こう言っています。

「街に出店するたびに、その地域の認知度や売上がオンラインだけの場合と比べて4倍に伸びた」

消費者認知が広がり、売上が伸びるのです。

私もデパ地下で「俺のフレンチ」体験をしなければ、「俺のEC」を検索しませんでした。リアル店舗で体験した結果、「ECで買おう」と考えたわけです。

「俺のEC」では「俺のサブスク」もあります。毎月、食パン15個(月額4,298円税込)、またはスープ8食(月額3,218円税込)を配送します。抜かりないですね。

当初、「俺の」はリアル店舗の客を高回転で入れ替え、薄利多売で高収益を狙う戦略が大当たりしました。

しかしコロナ禍で、店に人が来なくなりました。

そこで「一流シェフによる美味しい料理を、リーズナブル価格で楽しめる」という自社の強みを活かして、リアル店舗に依存しない戦略を進めているのでしょう。これを実現するには、冷凍食品でも味が劣化しない調理法の模索など、裏では様々な工夫をしているのではないかと思います。

そこで「一流シェフの美味しい料理を、リーズナブル価格で…」という強みを活かし、「…自宅で楽しめる」という新戦略を進めているのだと思います。

この戦略実現には、冷凍食品でも味が劣化しない調理法など、裏では様々な工夫をしていると想像します。

デパ地下の「俺の」体験で、色々と学ぶことができました。おかげで体重も少し増えてしまいました。

 

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生産性向上では成長せず、売上は下がる


こんな発言をよく見かけます。

「我が社は徹底的な生産性向上を追求して、成長する」
「日本は生産性向上を徹底して、成長しなければいけない」

確かに生産性向上は大切です。効率を上げることは、ビジネスの必須課題です。

しかし生産性向上だけでは、成長はしません。むしろ縮小します。これは簡単な計算でわかります。

売上1億円を達成するために、コスト5000万円かけていたとします。
営業利益は1億円-5000万円=5000万円。ですので営業利益率は50%ですよね。

ここで生産性向上を頑張って、コストを3000万円に下げたとします。しかし当然ながら、ライバルも生産性向上に励んでいます。そこで多くの場合、値下げしなければなりません。

でも値下げしても、営業利益率(=儲け)は維持したいですよね。そこで営業利益50%を維持する、と仮定しましょう。

 売上 = コスト + 営業利益
 営業利益率 = 営業利益 ÷ 売上

ですよね。

コスト3000万円で営業利益率50%を達成する場合の売上は、この式にあてはめて考えると6000万円になります。(計算式は省略します)

つまり生産性向上を頑張ったのに、売上は1億円→6000万円に下がってしまいました。

実はこれが、日本の「失われた30年」の正体です。生産性向上は必要です。でも生産性向上だけでは、売上は下がるのです。しかしこんな反論がありそうです。

「でも日本って、生産性向上でずっと成長してきたんじゃないの?」

その通りです。ただし、それは高度成長期までの話。市場が成長していて、日本の生産性がまだ低かったので、ライバルよりも頑張って生産性向上すれば、成長して新たに生まれた市場をゴッソリ獲得できました。しかし現代では市場は成長していません。

問題は、もはや市場が成長していないのに、高度成長期に生まれたこの成功パターンを続けていることです。

生産性向上は常に行っていく必要がありますが、それだけではダメなのです。

いま必要なのは、新しい価値を生み出すこと。つまり価値創造です。

いまのやり方を改善するのは必要なことですが、長い目で見ると、それだけではジリ貧に陥ります。

いまのやり方をむしろ忘れて、全く新しい商品やサービスを生み出すチャンスはないか?

お客様は本当は何を熱望していて、喜んでお金を払おうと考えているのか?

低成長時代のいまこそ、「ウォンツ(潜在的ニーズ)の発掘」が必要なのです。

 

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強みを活かして業界常識を否定し、シェア倍増したプリンター会社

ビジネスプリンター業界の鉄則は、「販売後の補修や保守管理で稼ぐ」。いわゆる「ジレットモデル」(髭剃りのように、本体を低価格で売って替え刃で儲けるモデル)です。

この市場で、OKIのプリンターのシェアは4%程度に甘んじていました。OKIのプリンターはLED方式。ビジネスプリンターの主流であるレーザー方式よりも部品が少なくシンプルな構造、かつコンパクトでした。しかしこの強みが活かせず、大手と価格勝負に陥っていたのです。

そこでOKIの国内営業部長はこう考えました。

「部品数が少なく、構造がシンプルなら、故障は少ないはず。保守モデル自体がナンセンスだ」

そこでOKIは、常識の真逆を行く大胆な方針を打ち出しました。

「5年間無償保証」

結果、4%だったシェアは、2013年には10%と倍増しました。

この営業部長が、2022年4月1日に取締役を経ずに執行役員から12人抜きでOKIの新社長に就任した森孝廣氏です。(詳細は、今週発売の日経ビジネス2022年4月18日号(p.92)に掲載されていますので、ぜひご覧下さい)

この話は、自分たちが持つ強みを徹底的に見直した上で、業界の常識を「そもそもそれって違うんじゃないの?」と疑うことが、大きなチャンスをもたらしてくれるということを教えてくれます。

現在の常識は、神様が決めたことではありません。過去にどこかの会社にいる誰かが「自分たちの強みを活かせば、こんなおいしい商売ができる」と考え、それが顧客に受け容れられた結果、出来上がったモノです。

だから業界の常識は、私たちが自分に有利なように自由に上書きしてもまったく問題はないのです。それが顧客のお困りごとを解決できれば、新しい常識として定着します。いまの常識は上書きされるためにあります。そして、世の中はこうして常に進歩していきます。

御社で生かし切れていない、他社にはない強みは、何でしょうか?
その強みで、業界の常識はどのように変えられるでしょうか?

 

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30年ぶりのアサヒ新スーパードライ号

アサヒスーパードライ発売は、日本が元気だったバブル期前夜の1987年。この時期、アサヒビールは販促の一環で、全国で飛行船「スーパードライ号」を飛ばしました。

当時、空を見上げると、銀色のボディに「スーパードライ」と書かれた飛行船が青い大空に浮かんでいました。40代以降の方は、当時のことを覚えておられる方も多いのではないでしょうか?

この頃、私は東京湾岸の写真撮影に凝っていました。1993年頃、早朝の横浜の大黒ふ頭に停泊しているスーパードライ号を撮影したのが、この写真です。

なかなか存在感があります。

そんなアサヒですが、このたびスーパードライをフルリニューアル。味も変えました。その販促の一環で、日本列島の空に新スーパードライ号を飛ばしています。

「空を見上げようよ!」

というメッセージは、新型コロナで家に籠もりがちだったり、戦争などの暗い話題が多い中、分かりやすいですね。反響も大きいようです。

一方でヒット商品の味を変えるのは、鬼門です。

■1996年、キリンは主力商品ラガービールを生化しました。

当時、キリンは新商品「一番搾り生ビール」がヒットしていましたが、スーパードライが「生売上No.1」を訴求して一番搾りを攻撃してきました。そこでキリンは「スーパードライの生売上No.1は阻止すべし。世の中は熱処理のラガーでなく生を求めている → よってラガーを生にしよう」と考えたようです。

しかしラガービールのファンは「オレのラガーに何してくれた」と激怒。離れてしまいました。これがきっかけで、キリンはビール業界トップシェアの座をアサヒに譲り渡しました。

■1980年代、コカ・コーラも味を変えてニュー・コークを発売しました。

当時、ライバルのペプシが「ペプシチャレンジ」という目隠しテストキャンペーンで、消費者がコークでなくペプシを選んでいる様子をCMで大量に流し、コカ・コーラのシェアを奪い続けていました。

コカ・コーラは「だったら、ペプシよりも美味しくしよう」と素直に考え、消費者テストを重ねて、より美味しいニュー・コークを発売したわけです。

しかしコークファンは「オレのコークに何をする!」と大反発。不買運動にまで発展してしまいました。

そこでコカ・コーラは半年後に誤りを率直に認め、ニューコークを撤回し、オリジナルのコークを「クラシックコーク」という名前で発売しました。これでコークファンが一気に戻り、コカコーラは業績を拡大しました。

では、なぜブランドリニューアルは鬼門なのか?

消費者のブランド認知は、消費者の脳内にあります。ヒット商品ほど、このブランド認知は消費者の脳内に強くこびりついています。

「ブランドは企業の所有物」と勘違いするビジネスパーソンが多いのですが、ブランド認知は消費者の脳内にあるわけですから、ブランドの所有者は消費者です。ですので企業が勝手にブランド認知を書き換えることは、本来はご法度なのです。

当然のことながら、マーケティング巧者のアサヒはすべて熟知した上で、スーパードライをリニューアルし、周到な手を打っているはずです。

新しいスーパードライの味は、SNSを見る限り好評のようです。当初のアサヒの狙いだった「スーパードライを知らない若い世代への訴求」は、ひとまずは順調のようです。

一方でスーパードライのコアファンは、おそらく1990年頃のアサヒ・スーパードライ号を見ていた50〜80代のシニア層でしょう。大多数の彼らは、あまりSNSをやりません。サイレントマジョリティである彼らは、どのように反応しているのでしょうか?

果たしてスーパードライの大胆なリニューアルは、吉と出るのか、凶と出るのか。

今後の動きを注目していきたいと思います。

 

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「マーケティングなんぞ、やらん」という社長


こんなご相談をいただきました。

「社長に『ウチもマーケティングやりましょうよ』と提案したら、烈火のごとく怒り始めたんですよ。『ウチはそんなものはやらんぞ!』というんです。どうしたもんでしょうか?」

実は、こんな人は少なくありません。

そもそも一言で「マーケティング」といいますが、人によって捉え方は様々です。

「マーケティングって、要は販売促進でしょ」
「広告や宣伝がマーケティングだよね」
「マーケティング、日々やってますよ。ボク、セールスですから」
「市場調査のことだよね」

残念ながら、これはみな大きな勘違いです。

ひらたく言うと、マーケティングとは新たな価値を創り出し、その価値を相手に伝えて、価値を届ける方法です。

販促、広告・宣伝、セールス、市場調査、ブランディングなどは、マーケティング活動の一環です。

ちなみに日本マーケティング協会は1990年にこのように定義しています。

「マーケティングとは、企業および他の組織がグローバルな視野に立ち、顧客との相互理解を得ながら、公正な競争を通じて行う市場創造のための総合的活動である。」

しかし現実にはマーケティングを正しく理解している人は、世の中にはあまりいません。

この社長さんは、恐らく次のように思っている可能性大です。

「マーケティングなんて、要は安いもののブランドイメージを高めて、高い値段で騙して売る方法だ」

確かにこう思っていたら「ウチはそんなものはやらんぞ!」ってなりますよね。でもマーケティングの考えって抽象的なので、なかなか説明してもわかってもらえないもの。なかなか悩ましいですよね。

そこでこんな人に会った時にオススメの方法があります。「マーケティング」という言葉を使わずに、マーケティングの概念を考えながら対話をするのです。こんな感じです。

「そもそも社長って、どんなお客さんの問題を解決しようと思っているんですか?」
「そりゃ、○○○で困っているお客さんだよ。この会社を始めたのも、A社さんがこの問題で困っていたのがきっかけなんだ」
「なるほど、その問題って、ウチの会社でどうやれば解決できるんですか」
「前から取り組んでいた技術があってね。これを使えば△△△できるんだよね」
「いいですね。ではそのお客さんって、この世の中にどのくらいいますかね?」
「オレの感覚ではものすごく多いよ。A社さん以外にも、業界で最低1000社くらいいるんじゃないかな? みんな困っているんだよな」
「どのくらいの効果が出るものなんですか?」
「かなりコスト削減できるんだ。生産コストを1割下げて、生産時間も2割短縮できるね」
「すごいですね。どの位で売れるものなんでしょうか?」
「そうだなぁ。生産コスト削減分の2〜3割程度の価格だったら売れるから、300万円くらいかな」
「案件1件あたり300万円で、最低1000社ですから、30億円くらいの市場規模ってことですね。じゃぁ、そのお客さんにどのようにすれば知ってもらえますかね」
「そうだな。お客さんの社長がよく読んでいる業界紙があるんだ。これで取り上げもらえば、お客さんに知ってもらえると思うな。業界初の商品だから、きっと記者さんも興味があると思うんだ」
「じゃぁ、その業界紙に連絡を取って、取材してもらいましょうよ。私の知り合い経由で頼んでみますよ」
「お! いいね。そうしよう」

かなり端折って書いていますが、こんな感じで社長と会話を続けて、実際に仕事を進めることで、マーケティングの考え方が社内で根付いていきます。成果が出始めたら…

「ところで社長、このやり方を、世の中ではマーケティングって言うらしいですよ」

と言えば、社長も、

「へぇ。オレがいつもやっているやり方が、マーケティングっていうのか」

と思ってくれるかもしれません。

ちなみに先日、獺祭で有名な旭酒造の桜井会長と永井経営塾ゲストライブで対談した時も、桜井会長は「ウチはマーケティング、やらないんですよ」とおっしゃっていましたが、実に自然にマーケティングをやっておられる最強のマーケターでした。マーケティングという言葉を使わなくても、出来る方は当たり前にやっておられるのですね。
→詳細は『本気でお客様を考えれば、自ずから最強のマーケティングになる』

 

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PRは、広告ではありません

「あ、PRね。広告のことでしょ。でもウチは宣伝しないんだよね」

マーケティングの仕事をしている方でも、こんなことを言う人がいます。

これは大きな勘違い。PRと広告は、全く違います。
「正反対」と言っても過言ではありません。
しかし意外と多くの方が、このことをご存じないようです。

PRはパブリック・リレーション(public relation)の略です。
ひらたく言えば「広報活動」のことです。(実際にはより広い概念ですが)

よく新製品発表などで、記者やメディア関係者を集めて製品説明会を行いますよね。
そして記者たちは新聞・雑誌・Web記事などでその様子を記事にします。
テレビのニュースで流れることもあります。
これは典型的なPRの活動です。

広告とPRを比較すると、こんな違いがあります。

        【広告】   【PR】
伝達手段    広告枠    メディア、SNS
メディア支払い 有り     無料
発信者     企業     メディアや消費者
企業による管理 100%管理可能 全く管理不可
代理店     広告代理店  PR会社
メディア担当者 広告部    記者・編集者
信頼度     低い     比較的高い

このように説明すると、「お。PRって無料なんだな。つまり無料の広告ってことだね。わかった」という人がいたりするのですが、これは大きな勘違いです。

広告とは違って、PRはどんな形で世の中に情報が出るかは管理できません。「まったく無反応」ということは少なくありませんし、伝え方が悪いと大きく誤解された情報が出回り、現場が苦労することもあります。

「だったらメディアに出す情報を事前チェックすればいい」という方もいるのですが、これはまさに「PR=無料の広告」という勘違いです。記者やメディア担当者が客観性を持って報道することが、読者や視聴者に対する信頼感に繋がります。情報発信者に対して第三者のスタンスを維持する必要があるのです。ですのでPRでは基本的に事前チェックはできません。このようなメディアの洗礼を受けた末に世の中に出されるので、PRは信頼度が広告よりも高いのです。

なかには「おカネと手間をかけて発表会をしたのに、どこも取り上げない」と言う人もいます。

記者やメディア担当者は、読者や視聴者にとって価値がある情報を発掘しようとしています。

あなたはニュースを見ていて、「お!これ凄いゾ」と思って見入るのは、どんなニュースでしょうか?
「どこぞの大企業が新商品を発表した…」とかいうニュースは興味ないはずです。「これまでになかった商品」とか「これが欲しかったんだ」「驚いた」「世界最高」といったニュースなら、見ようとするのではないでしょうか?

記者やメディア担当者も同じです。労力をかけて取材をするのは、価値がある情報を世の中に届けたいからです。どこもニュースで取り上げてくれないのは、「ニュースバリューがない」と思われた結果なのです。

実際には、巧みなPR活動で商品を広く世の中に認知させる企業は少なくありません。

その典型がアップル。新商品が出るとこぞってメディアでは詳細を報道します。これは消費者がアップルの新商品情報を求めているからです。

「それ、アップルだからでしょ? 参考にならないよ」という方もおられるかもしれませんね。

しかし資金力に劣る小さな会社や組織だからこそ、ニュースバリューさえあれば、PR活動は実に有効です。

バルミューダの寺尾玄社長は、新商品を出す度に記者会見で商品の思いを語ります。
「子供たちの目を守りたかった。だからBALUMUDA THE LIGHTを作った」
「パンが美味しくなるなら、ご飯も美味しくなるはずだと考えた。だから18ヶ月かけて、BALUMUDA THE GOHANを作った」

鳥取県の平井知事は「ダジャレ知事」で有名です。
「鳥取にはスタバはないですけれども、日本一のスナバ(鳥取砂丘)があります」
「私たちは、カニはあるけど、カネはない。(だから知恵を出している)」

また「日本一の星空の村」として今や全国ブランドの阿智村でプロジェクトリーダーを務める松下さんとお話しした時に、100名以上が記載されているメディア関係者リストを見せていただいたことがあります。松下さんは何か星にまつわる阿智村のニュースがあるたびに、それをメディアで取り上げられやすい形に加工して、プレスリリースにしてこのメディア関係者に送っています。阿智村が「日本一の星空」ブランドを獲得したのは、こんな地道な努力を重ねた結果です。

広告とPRの違いを理解し、PR活動を地道に積み重ねることで、強いブランドが築き上げられるのです。

 

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日本の大企業は、顧客体験で圧倒的に負けている現実を知るべきだ

最近、何かと注目の顧客体験。CX (Customer eXperience)とも言われます。

「CXねぇ。スマホアプリとかの世界でしょ。ウチは関係ないなぁ」

と思ったら、要注意。御社は知らない間に、既に顧客体験で圧倒的に負けていて、ビジネスを失っている可能性があります。

最近もこのことを実感しました。

日本を代表する大手保険会社との契約が満期になりました。
この解約→払戻金を受け取る、という簡単な作業が、一苦労なのです。

まず数ヶ月前、書類が届きました。でも何をすればいいか書いていません。

1週間後、担当者から電話がありました。解約・払い戻しの意向を伝えましたが、「当社ルールで、電話だけでは承れませんので、対面でご説明します。空いているお時間をください」とのこと。

そこでオンラインでの打合せをお願いしました。

打合せはZoomでなく、この会社独自仕様のオンライン会議システムでした。
しかしこれが繋がらないのです。先方から電話を受けつつ、15分間試行錯誤をしましたが、結局繋がらず。「こちらでZoom会議セットしましょうか?」と提案しましたが「当社はZoomは使えないので」。

結局、電話での説明を受けることになりました。30分かけて書類を1枚1枚丁寧に説明を受け、解約・払い戻しの意向を再度伝えました。

1ヶ月後、この会社からなぜか契約再延長の書類が届きました。なぜか振込用紙に金額も記入されてます。

「あれ?なんだろう、これ?」

念のため担当者にメールで確認したところ、満期のお客さん全員に送っているとのこと。これまでのやり取りは一体、何だったのでしょうか?

書類の文面は生命保険用語満載でとてもわかりずらいので、よくわからない人は「払えばいいのね」と振込用紙記載の金額を払ってしまう可能性大でしょう。確かに売上が上がるかもしれません。しかし控えめに言っても品がよいとは言えないやり方ですよね。

…ということで、いまだに解約できておりません。日本を代表する大手保険会社なのですが、これはお世辞にも優れた顧客体験とは言えませんよね。

私はネット系の保険会社と契約していたことがあります。こちらの解約は、数個のクリックだけで完了。実にスムーズでした。

もし知人に保険を勧めるとしたら、私はネット系の保険会社の方を勧めるでしょう。この大手保険会社は、知らぬ間に既に顧客体験で圧倒的に負けており、ビジネスを失いつつあるのです。

問題は、この大手保険会社が時代の2つの変化を、いまだに知らないことです。

1つ目は、現代の消費者が、手間がかかることを嫌悪するようになったこと。

一例を挙げると、ほんの十年前にウェブサイトでモノを買うとき、私たちは3〜4回のクリック+文字入力を当たり前に受け容れていました。いまはスマホで1回ポチるだけ。3〜4回のクリック+文字入力が必要だと、「このサイト、使いにくいから、パス」です。

マシュー・ディクソンは著書「おもてなし幻想」で、顧客努力(顧客が問い合わせに要した努力)の違いで、顧客ロイヤルティ(再購入率)がどの程度下がったかを、消費者97,176人に調査しました。結果は…

・顧客努力を強いられる問い合わせ 96%の顧客が下がった
・顧客努力を強いられない問い合わせ 9%の顧客が下がった

つまり顧客努力が強いられると、次はほぼ確実に買わなくなる、ということです。

さらに顧客努力の減少は、売上に直結します。

・高努力を強いられる場合 再購入率4%、購入拡大率4%
・低努力で済む場合    再購入率94%、購入拡大率88%

顧客努力を減らすことで、売上が増える、ということです。

世の中で使いやすいサイトや使いやすいサービスが成長しているのは、使いやすくなるように地道な努力を続けた結果なのです。

2つ目は、「顧客の口コミ」が圧倒的に強くなっていること。

顧客体験の第一人者であるジョン・グッドマンが提唱した「ジョン・グッドマンの法則」というものがあります。

第1法則… 不満客の中で、苦情を言って解決に満足した客の再購入率は、苦情しない客よりも極めて高い

第2法則… 苦情処理に不満な客の非好意的口コミの影響は、満足客の好意的な口コミの影響に比較して、2倍強く販売の足を引っ張る

この法則は数十年前に提唱されました。いまや消費者の声は、SNSでさらに強くなっています。

しかし大きな企業ほど、そんな状況は蚊帳の外。社内事情しか目に入りません。そのため現場の担当者だけでなく、意志決定をするマネージャーや責任者ほど「消費者は手間がかかるのを嫌悪する」「悪い噂はSNSで拡散する」という状況に疎いようです。

大きな企業に勤める方ほど、もう少し世界を外に向けて、自分の判断が世の中の動きとギャップがないかを確認した方がいいのではないかと思います。

 

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9割のメッセージは伝わらない。だからWHYから語れ

全く伝わらないマーケティングメッセージ、実に多いですよね。
感覚的には世の中の9割が全く伝わらずスルーされる感じです。

たとえば…

・業界最軽量のカメラを新発売
・扉が開いていたらスマホで通知する冷蔵庫
・プロがこだわり抜いた食材を使った逸品

どれも真心こめて開発された商品やサービスなのだと思いますが、残念ながらどれもメッセージが心に残らないので、スルーされがちです。結果、膨大なライバルのメッセージに埋もれてしまい、売れません。

一方で、伝わるマーケティングメッセージもあります。

たとえばジョブスは2007年、当時世の中に氾濫していたボタンだらけの「スマートフォン」と呼ばれていた写真を見せながら…

「スマホっていうけど、キーボードって全然スマートじゃないよね」

と言った上で、

「だからiPhoneを作ったのさ」

と言いました。

さらに他社の分厚いノートパソコンの写真を見せながら…

「薄型ノートっていうけど、分厚いよね」

と言った上で、大型封筒を取り上げて

「だからMacBook Airを作ったのさ」

と言いながら、封筒から超薄型のMacBook Airを見せました。

またバルミューダの寺尾玄社長は、

「子供たちの目を守りたかった」

と言った上で、

「だからBALUMUDA THE LIGHTを作った」

と言いながら、定価37,000円の卓上ライトを発売しました。

伝わらないメッセージと伝わるメッセージの違いを解明する上で参考になるのが、サイモンシネックが著書「WHYから始めよ」で提唱した「ゴールデン・サークル・モデル」です。これはメッセージを「WHY」「HOW」「WHAT」という3つの円(サークル)を重ねたものです。

伝わるマーケティング・メッセージは、WHYから語っています。

WHYとは、マーケティング的に言えば、「顧客の便益」(カスタマーベネフィット)です。

1割の伝わるメッセージは、WHY→HOW→WHATの順で語ります。こんな構造になっています。

①まず顧客の便益から語る。(WHY)
②その実現のために、どうしたかを語る。(HOW)
③その結果、どんな商品やサービスに仕立てたかを語る。(WHAT)

逆に冒頭の9割の伝わずスルーされるメッセージは、WHATから語っています。WHYはなかったり、あっても最後にオマケで付いている程度。こんな構造です。

①どんな商品やサービスかを語る。(WHAT)
②どうやって作ったかを語る。(HOW)
③顧客の便益を語る。(WHY)←そもそもこれがないものも多い

WHY(=顧客の便益)から語るようにすれば、あなたのメッセージは伝わるようになるのです。言われてみれば実に当たり前のことなのですが、実際には9割のメッセージができていないのもまた、現実なのです。

いまの御社のメッセージ、WHYから始めていますでしょうか? この機会に、ぜひチェックしてみて下さい。

 

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「目からウロコ」のイノベーションは、例外中の例外

2月24日に行った永井経営塾ゲスト・ライブは、いつもたいへんお世話になっている早稲田大学ビジネススクール・内田和成先生をお迎えして、1時間の対談でした。とても学びが多く濃い時間でした。

その中の1トピックをピックアップしたいと思います。

内田先生は、4月1日に東洋経済新報社から『イノベーションの競争戦略: 「0→1」を狙うか? 横取りするか?』を刊行されます。その内容について、先取りしてお話しいただきました。

内田先生は、2年半かけて1000件もの世の中の様々なイノベーション事例を調べて、本書を書かれたそうです。

そしてわかったのは、「目からウロコの大発明」が成功するケースはまったく少数派だということ。

実際のイノベーション成功事例は、多くは、

・地道にやり続けたらようやく到達した
・最初に発明した人が途中で力尽きたプロジェクトを横取りしたら、成功した

…というものが、圧倒的に多かったそうです。

イノベーションとは、「新しいことを生み出すことだ」と言われます。ただこれは必要条件に過ぎません。

それに加えて、「新しいことを定着させて、消費者の態度や行動の変容を生み出すこと」がイノベーションの十分条件になってくる、ということです。

まとめると、イノベーションを生み出すには、

・新しいことを生み出す
・それを定着させて、消費者の態度や行動の変容を生み出す

この二つが必要なのだ、というのが、内田先生の新刊のメッセージです。

つまり、お客さんを変えることがカギ。

これは納得のお話しでした。

お話しを伺って思い出したのが、あのイーロン・マスクでした。テスラを創業してEV(電気自動車)で世界トップシェアを獲得、さらにスペースXを立ち上げて宇宙ビジネスを軌道に乗せ、さらに都市間交通システムハイパーループや、脳とコンピューターを繋げるニューラリンクも立ち上げています。

イーロン・マスクを見ると、「目からウロコの大発明」を次々と成功させているように見えますが、そのイーロン・マスクもこう言っています。

・「すごいアイデア」や「最高の戦略」は全体の5%
・95%は、ひたすら愚直な積み重ねの繰り返し。(仮説→検証→再試行)
・正しい方向を戦略で定めて、愚直に学び、修正し続ければ、成功する可能性はどんどん高まる。

要は「しつこさ」「愚直さ」が成功のカギということです。

「自分は地道にしつこく続けている」という方は、多いのではないでしょうか? 意外なことにイノベーションはそんな先に待っているのかもしれません。

 

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「…で?」の「残念なSWOT分析」からは卒業しよう

ビジネスで勝つにはまず自社の立ち位置の状況把握。
そこでマーケティングでは定番の分析方法があります。

その一つが「SWOT分析」。外部環境(機会と脅威)と内部環境(強みと弱み)を分析して、打ち手を見つけ出します。SWOTは強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会(Opportunity)、脅威(Threat)の頭文字です。

たとえばEV(電気自動車)世界最大手のテスラが2003年に創業した時のSWOTは、こんな感じでした。

【強み】イーロン・マスクを筆頭に、テクノロジーに強い人材が集まっている。
【弱み】創業したてで、実績は皆無。
【機会】EV市場は、将来大きな成長の可能性がある。
【脅威】2003年時点で、EV市場はほとんど存在していない。

(注…実際には4項目毎に、主な要素を数件ほど箇条書きします)

多くの人のSWOT分析が、これで終わってしまいます。
でもこれだけだと何をすればいいか、全く分かりませんよね。
上司や社長にこれだけ見せても、「…で?」と言われてしまいます。

実はSWOT分析は、これが出発点。この先があるのです。

次に内部環境(強みSと弱みW)と外部環境(機会Oと脅威T)を掛け算して、「勝てる打ち手」を導き出します。2×2なので全部で4通りですよね。

具体的には、SWOTを「強み×機会」「強み×脅威」「弱み×機会」「弱み×脅威」と掛け算して「クロスSWOT分析」を行います。

先のテスラのSWOT分析は、このように展開します。

【強み×機会→自社の強みを最大限に活かす方法を考える】
テスラの強みは「テクノロジー」、機会は「市場成長の可能性」でした。テスラはソフトウェア技術を徹底活用して、EVの新基準を確立しました。たとえばテスラのクルマは、ネット経由でバージョンアップすることで、新機能を追加できます。

【強み×脅威→脅威を機会に変える戦略を考える】
テクノロジーに強いテスラの脅威は「(2003年時点で)EV市場がないこと」。逆に競合も不在ですので、EVを少数出荷すれば、大きな市場シェアが獲得でき、認知度が上がります。そこでまずセレブ向けにスポーツカー「ロードスター」を発売しました。

【弱み×機会→弱みを強みに変える戦略を考える】
成長市場にいるテスラの弱みは「実績皆無」なこと。逆にこれはしがらみがないことの裏返しです。自由に様々なクルマ会社と提携できますよね。そこでテスラは「ロードスター」開発のために、英国ロータスと組みました。創業間もない頃には、トヨタとも提携していました。

【弱み×脅威→最悪を回避する戦略を考える】
「実績皆無」で「EV市場がない」というテスラにとって、売上が伸びない時期が続くと資金切れで倒産です。そこでイーロン・マスクは、先日紹介した周到なマーケティング戦略を立てた上で、分厚い資金を調達しました。大衆車モデル3では、生産が軌道に乗らずに一時は倒産もささやかれましたが、イーロン・マスクは私財を投じて資金を手当。さらに自ら工場に寝泊まりして技術面の問題を乗り切り、凌ぎました。

分かりやすいように単純化しましたが、実際にはSWOTの4項目毎に数件の要素があるので、それらを色々と組合せながら「勝てる打ち手」を導き出していくことになります。

SWOT分析は、次の理由で成果を出さないケースが多いのが現実です。

①クロスSWOT分析をせず、具体的行動を決めていない。対策がない分析は、NGですよね。
②憶測や推測、先入観や固定概念、希望的観測でSWOT分析している。思い込みは徹底排除して、事実をしっかり見極めることが必要です。

SWOTの4項目を書くだけの「残念なSWOT分析」に陥らないようにしましょう。

 

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『成功の方程式:席数×回転数』が崩壊したモスバーガーの、次の一手

日経ビジネスオンラインでこのような記事が掲載されています。

「狙いは住宅地 モスバーガー、逆張りのキッチンカー戦略」

記事のポイントは、
・モスバーガーは新業態キッチンカーを営業開始(実証実験)
・初期投資1000万円。客単価は通常モスバーガー800-1200円に対して1000-1500円
・ハンバーガーの価格帯も430-710円と高い
・人員2名、メニュー5種類のみ。仕込みは母店(近隣路面店)
・住宅街のテイクアウトを狙う
・「店よりも高い。わざわざキッチンカーに客が集まるのか」という声も。

とのこと。以上が記事のサマリーです。

以下は、私の意見です。

これまで、飲食店では『勝利の方程式』がありました。

席数 × 回転率

より多くの席数で、より多くの回転数を稼げば、売上が最大化します。このため大きな店で営業時間を長く取り、売上最大化を図っていました。あの『俺のフレンチ』『俺のイタリアン』は、まさに『席数×回転率』の勝者です。

しかしコロナ禍で、お客さんは店に来なくなり、この『勝利の方程式」は破綻しています。今や『席数が多い店』は、大きな負債です。

悩ましいのは、この破綻しているのが一時的なモノなのか、恒久的なモノなのか、見極められないこと。恒久的なモノなのであれば、新たな『勝利の方程式』を編み出さなければなりません。

そこで必要なのは、小さな試行錯誤を繰り返して、新たな『勝利の方程式』を探り当てること。

このような状況を踏まえると、このキッチンカーは次のような戦略を考えているのではないかと思います。

❶従来店内にあったカウンター(=キッチンカー)を、お客さんがいる場所(住宅地)に移動し、食事を提供する機動力をアップすることで、中食需要を拡大させて取り込む
❷商店街で店を選ぶ消費者は価格を比較するが、住宅街の消費者は価格を比較する対象がない。そこで「住宅街の消費者は、価格では選ばない(だろう)」という仮説の下で、やや高めに価格設定する
❸加えて、従来のモスバーガー店舗は個人客が多かったが、住宅街では在宅ワークの会社員を含めたファミリーが対象になるので、高い顧客単価を想定する

記事では「逆張り」と書いていますが、これまで成功していた『成功の方程式』が逆回転していて現時点で機能していないわけで、「新たな成功の方程式確立を、仮説検証をせざるを得ない」という状況。むしろ『正攻法』とも言えるのではないかと思います。

コロナ禍で、これまでの『成功の方程式』が崩壊した業界は実に多いと思います。しかしこんな時こそ、新たな『成功の方程式」を見つければ、大きな飛躍のチャンスになり得ます。

御社では、どのような新たな『成功の方程式』を模索しておられますか?

 

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テスラが20年間続けた、イノベーター理論の基本戦略

テスラは現時点で、世界で最も売れているEVです。
テスラの基本戦略は、EVがまったく普及していなかった2003年の創業時に、創業者イーロン・マスクがイノベータ理論に従って考え抜いて作りました。

ここでイノベーター理論を軽くおさらいです。
皆さんの知人で「最新型」という言葉に弱く、いつも一番乗りでモノを買って周囲に見せびらかす人はいませんか? あるいはいまだに「スマホはイヤ」という人もいますよね。この購入タイミングで人を分けるのが、「イノベーター理論」です。

次の5タイプがいて、市場のどの程度の普及率で買うかが決まっています。

【①イノベーター(普及率 0-2.5%)】新しモノ好き。常に一番乗り。別名、人柱。
【②アーリー・アダプター(2.5-16%)】「これ、よさげ」と思ったら、買います。
【③アーリー・マジョリティ(16-50%)】他人がいいと言ったら、買います。
【④レイト・マジョリティ(50-84%)】普及し終えたら、やっと買います。
【⑤ラガード(84-100%)】最後まで文句を言い続けますが、結局買いません。

テスラ創業の2003年時点で、EV課題は生産コストが高いことでした。そこでイーロン・マスクは、

①まずプレミアムカーとして、1000万円を超える高級スポーツカーを発売。
②その売上で、600万円のミドルクラスの4ドアセダンを作る。
③その売上で、大衆の手に届く300万円の大衆車を大量生産する。

…と考えました。(実はこの内容を、イーロン・マスクは2006年に「ここだけの秘密です」といってブログに書いています。なかなかお茶目な人です)

イノベーター理論がわかれば、イーロン・マスクがこの基本戦略に沿って市場をセグメンテーションして、ターゲット顧客を攻略してきたことがわかります。

①創業当時、EV最大の欠点は航続距離。バッテリーを大量に載せると車内が狭くなります。そこで狭い車内が当たり前の高級スポーツカーにバッテリーを大量に載せて航続距離を確保。2008年、テスラは『ロードスター』を発売しました。当時、高級スポーツカーでEVはロードスターだけ。環境意識が高いレオナルド・デカプリオのような米国のセレブ(イノベーター)がこぞって買いました。

②2012年、5人乗りのセダン『モデルS』を発売。オーソドックスなセダンで、最高速322キロ。価格600万円。ちょうどEVが一部で普及し始めた時期。BMWやアウディに対抗できるEVとして、準富裕層のアーリー・アダプターに売れました。

③2019年、大衆車『モデル3』の大量生産を開始。EV本格普及のタイミングを迎えて、豊富な実績があるテスラが生産する低価格な小型セダンとして、米国や中国を中心にアーリー・マジョリティが買うようになりました。

もしテスラは創業時にいきなり大衆車を出していたら、確実に失敗していたでしょう。テスラはセオリー通りにイノベーター理論に沿って、20年もの間、基本戦略を忠実に実践したおかげで、EV普及に合わせて大きく発展していったのです。

大切なのは最初はターゲットを絞り込み、攻略に成功した後はターゲットを広げ、ターゲット変更に合わせて戦略を変えることなのです。

 

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ビジネスパーソンは、骨太な本を読め

2022年1月31日に日本経済新聞の特集『Biz Frontier 書籍が開く人的資本経営』で、世界のビジネス書の動向についてインタビュー記事を取り上げていただきました。このような機会をいただき、光栄です。

そこでここでは、ページの関係で記事に掲載されなかった読書に関するお話しをしたいと思います。

現代は「先が見えない時代」です。いまの成功パターンはすぐに賞味期限が切れます。あのタピオカブームもあっという間に終わりました。

たとえると、私たちは数ヶ月毎に地形がどんどんと変わり、見知らぬ猛獣が潜むジャングルの密林を、目的地に向かって探検している探検隊です。

こんな時代に必要なのが、現場で学びながら、勝ちパターンを掘り当てること。ここで必要なのが「考える力」。考える力を深める上で、ビジネス書は強力な武器です。ビジネス書は密林探検の際のコンパスであり、難路を切り拓くジャックナイフです。

では、どんな本をよめばいいのか?

日本のビジネスパーソンは、手軽で読みやすいノウハウ本を手に取りがちです。しかし手軽なノウハウ本は当面の目的には役立ちますが、考える力が深まるとは限りません。

世界のビジネスリーダーが読む本は、ネットで検索すればわかります。ビル・ゲイツ、ジェフ・ベゾス、イーロン・マスクなどが推薦する本はすぐにわかります。彼らは骨太な理論書や偉人の伝記を読んでいます。このような本は「考え方」そのものが書かれているので、読み手の思考を深めてくれます。

さらに異分野の読書でも根っ子で共通する学びがあり、相乗効果で学びは指数関数的に増殖します。たとえば『成功はゴミ箱の中に』(レイ・クロック著)と『企業家とは何か』(J・A・シュンペーター著)を読むと、『レイ・クロックはマクドナルドをフランチャイズ展開して、シュンペーターが提唱した「イノベーション5つの新結合」の4つ目「新しい販売市場をつくる」を実践したのだな』とわかります。

ただ理論書は専門用語が多く、敷居が高いのが難点。そこでまずは、敷居が低い入門書から入るのがお勧めです。入門書とノウハウ本はともに手軽に読めますが、異なる点は、入門書は理論書の入口になることです。

たとえば会計なら『稲盛和夫の実学―経営と会計』、マーケティングなら拙著『100円のコーラ』シリーズ。専門用語を理解すれば、スムーズに理論書に入れます。また拙著『MBA 50冊シリーズ』も、良書を選ぶ上で役立てて欲しいと考えて執筆を続けています。

さて、ビジネス書はこの100年間のスパンで考えると、「人間と社会のあり方を真剣に考えよう」という大きなトレンドの中にあります。

20世紀前半からの20世紀末までの多くのビジネス書は、テイラーを起点にした「科学的手法」のビジネス書(数値化して計画・管理すれば最適解が得られる)が多い印象でした。その集大成が1980年刊行のポーター「競争の戦略」といえるでしょう。

一方で1960年代に「自己実現」という考え方を出発点に、理想の企業のあり方を追求したマズローの思想を始点に、人間の心のあり方に焦点を当てた流れが20世紀後半から台頭し始め、ビジネスと融合しています。

たとえば1980年代に「インテルを偉大な企業にしたい。でも従来の経営論はダメだ」と考えたアンディ・グローブは、マズローに心酔し、普通の人から最大の成果を引き出す経営手法OKRを編み出しました。OKRは創業2年目のグーグルで採用され爆発的成長を生み出し、シリコンバレーに広がり、最近では日本でも花王が採用しています。

さらに経営理論の世界では、ポジティブ心理学(チクセントミハイやデシ→アダム・グラント)や、行動経済学(カーネマンやアリエリー)の知見も取り入れ、脳科学などと組み合わさり20世紀末のロングセラー「EQ」を起点に唯物論と唯心論の融合が起こり始めています。

「社会的共通資本」を提唱した経済学者・宇沢弘文を起点に、「地球という社会的共通資本の枠内で、いかに全人類が幸せになるか」という流れが現在のSDGsに繋がり、1980年代には科学的経営に寄っていたポーターもCSVを提唱するようになりました。

「人間と社会のあり方を真剣に考えよう」とトレンドは、世界で台頭するZ世代の価値観でもあります。この流れはますます強まっていくと思います。

このように、ビジネス書の守備範囲は、大きく広がっています。これはビジネスパーソンに、高く広い視点で「考える力」が求められるようになってきたからです。

そのような骨太な本は、読めば読むほど、相乗効果で「考える力」が増殖していきます。

骨太な本を読みましょう。

 

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「運も実力のうち」の本当の意味

よく「運も実力のうち」といいます。

スピリチュアルな感じもしますが、これをマジメに研究した人がいます。 英国の心理学者リチャード・ワイズマンです。

ワイズマンは、いつも運がいい人と運が悪い人がいることに興味を抱きました。そこで8年間かけて数百人の運がいい人と悪い人に対してインタビューを続けて、実験したのです。

当初ワイズマンは「もしかしたら、運は予知能力ではないか?」という仮説を考えました。

そこで、運がいい人と悪い人700名に宝くじの当選番号を予想してもらいました。結果は、当選率はまったく同じでした。運は予知能力ではなかったのですね。

しかし実験で発見がありました。運のいい人は、運の悪い人の2倍以上「当選する自信がある」と答えていたのです。

そこでワイズマンは「運は自信と関係があるのでは…」と仮説を変更。考え方や行動を分析し始めました。

その結果、発見した次の4つの法則を、著書『運のいい人の法則』(Kadokawa)にまとめています。(拙著『世界の起業家が学んでいるMBA経営理論の必読書50冊を1冊にまとめてみた』では43冊目で紹介しています)

【第1法則】チャンスを広げる … 運のいい人は、日常生活で「運のネットワーク」を広げています。多くの人と出会い、偶然のチャンスに出会う確率を高めているのです。要は人付き合いがよく、人から好かれる仕草や表情で人を惹き付けるということです。

【第2法則】直感を信じる … 運のいい人は自分の直感に頼ります。直感は驚くほど頼りになります。運の悪い人は自分の直感を無視して後で悔やみます。ここで必要なのは、「これ、何となくヤバいことになりそうだなぁ」という「虫の知らせ」を無視しないということです。「虫の知らせ」とは、いわば「ヤバそうなコトのセンサー」のことですね。

【第3法則】幸運を期待する … 運のいい人は楽観的です。「不運は長続きせず、すぐ終わる」と考え、少しでも可能性があれば努力し、手を替え品を替えて挑戦します。運の悪い人は、逆に「幸運な出来事はすぐ終わり、不運が起こる」と考え、悲観的です。失敗すると思い込み努力も工夫もせず、失敗が現実になります。

【第4法則】不運を幸運に変える … 著者の「銀行強盗に遭遇し腕を撃たれた。運がいいか?悪いか?」という質問に、運の悪い人は「質問が変だ。運が悪いに決まってる」と即答。しかし運のいい人は「幸運。頭だと即死だ。腕でよかった」と答えました。運のいい人は、悪いことがあってもより不運な可能性を考えてダメージを減らし、将来に高い期待を抱いて幸運になります。運の悪い人は、運のいい人と自分を比較して嘆き、ダメージを引きずります。

この4つを改めて眺めると、「あの人、何か持っているよね」という人は、大抵この通り行動している人が多いことに気付きます。

これら4つの法則は、マーケティング戦略の実践で、仮説検証を繰り返していく場合でも、大切な心得ですよね。

第2法則の「直感を信じる」のは非科学的に思えるかもしれません。しかしこれは、今年1月2日に当ブログ『商品開発では、お客様に問うな。自分に問え』で書いた、『自分に問い続けて直観を掘り下げろ』ということでもあります。

本書は自分の幸運のスコアを診断できるテストも付いています。私は第2〜4法則はハイスコア、第1法則は普通でした。「人付き合いを広げると、もっと運がよくなる」という診断でした。

私たちも意識して考え方や行動を変えることで、「運のいい人」になれるのです。

 

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サラリーマン起業は脱サラせず、ゆるく副業で始めよう

「生半可な覚悟で起業に挑戦するなんて論外だ。オレの経験では、自ら退路を断ち、いちばん乗りを目指し、アイデアを絞り込んで本気で取り組まない限り、起業は成功しないね」

このように自分の成功体験を語る起業家は、世の中に少なくありません。

しかし元々、起業とは成功確率が低いもの。

「退路を断って起業するぞ」と脱サラして、失敗して再就職しようとすると、なかなか就職できないのが現実です。日本では脱サラして起業に失敗した人が再就職するのは難しいのが、厳しい現実なのです。

サラリーマンの起業は、いわゆる起業家の起業とは若干事情が異なります。そこでぜひお勧めしたいのが、最近話題の「副業」による起業。

これは私自身の経験でもあります。

30代の頃から独立を考え、週末を使って写真家を目指したりと、色々とあれこれ試行錯誤していました。やっと具体的になったのが40代後半。会社の承認を得て、マーケティングの本を副業で書き始めたときです。

執筆を始めて3年目に『100円のコーラを1000円で売る方法』がベストセラーになりましたが、素人芸人が一発芸で話題になり独立後は全然売れないという話も多いので、「独立はまだ早いな」と思って会社員と執筆の二足のわらじを続けていました。

そのうち講演・研修依頼をいただくようになりました。平日の依頼は勤務中なので丁重に辞退しましたが、週末の依頼は会社と利益相反しない限り、無償で引き受けていました。

ある日、「ぜひ謝礼を払いたい」という会社がありました。 当時、私は人材育成部長として外部に社員研修を発注する立場。その発注額と同額でした。
「IBMを辞めても、私に依頼しますか」と尋ねると、「独立してくれると、お願いしやすくなるので助かる」というご返事。

ちょうど『100円のコーラ』第3弾の刊行直前でした。第2弾の感触から確実に売れると予想できましたし、著書刊行後に講演・研修依頼が急増することも予想できました。

そこでこのタイミングで独立。今年で起業9年目ですが、おかげさまでビジネスは常に順調です。

実はこの方法、「ハイブリッド起業」と名付けられています。

組織心理学者のアダム・グラントの著書『ORIGINALS 誰もが「人と違うこと」ができる時代』(三笠書房)で、成功する起業家は後発で、リスクを徹底的に避け、アイデアの量で勝負していることを、圧倒的な数の事例と研究で実証しています。

また経営学者の入山章栄教授は著書「ビジネススクールでは学べない世界最先端の経営学」で、スウェーデンのハイブリッド起業に関する研究結果を引用して、「会社勤務と並行して起業するハイブリッド起業は、起業リスクを軽減できる。現代の日本は、脱サラして起業に失敗した人が再就職するのは難しい。ハイブリッド起業は、起業の失敗リスクを大きく軽減できる可能性がある」と述べています。

起業で大事なのはリスクを取ることではありません。リスクのバランスを取ることです。ある分野で収入を確保しておくことで、別分野で大胆にオリジナリティを発揮する自由が得られます。中途半端な状態で焦ってビジネスを始めるプレッシャーからも逃れることができます。

一方で時間もかかるので、人生の中での時間を含めたリスクのバランスをどう考えるかも重要です。

このテーマは、2月2日の朝活永井塾でも取り上げます。もしよろしければ、ぜひどうぞ。

   

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永井さんは、なぜ強者が多い出版業界で勝負しているの?

ある企業様の講演会で、こんなご質問をいただきました。

『「自社の強みを探せ」ということですが、難しさも感じています。永井さんは出版業界という強者が多い業界で、どのようにご自分の強みや自分にしかできないことを見つけたのですか?』

実に的確なご質問で、しばし自分のこれまでを顧みてから、お答えしました。

結論から言うと、まず「これをやりたい」という気持ちが出発点で、試行錯誤を繰り返していくうちに気がついたら収まるところに収まっていた、という感じです。

まず現在までに至った経緯を簡単にまとめます。

■2006〜2008年頃…当時は日本IBM社員でした。IBMのマーケティング・プロフェッショナルとしてソリューションやソフトウェアビジネスに関わる一方、社内マーケティングコミュニティの活性化もしていました。そんな活動をするうちに、「マーケティングの本を出版したい」と考えるようになりました。しかし出版社には全て断られました。そこで『戦略プロフェッショナルの心得』を自費出版しました。自分がマーケティングの現場で学んだ事を理論で裏付けした本です。

■2009年頃…本を1冊書き上げて刊行したことで、「この人は一冊書き上げる力はありそうだな」と思って下さった出版社からお声が掛かりました。編集者と何度も話し合い、試案を何回か破棄した末に、「物語形式にしよう」ということになり、書き上げて出版しました。しかし残念ながら全く売れず、1年半で絶版になりました。

■2011年頃…出版社の担当編集者から、「絶版は残念でした。でもいい本なので、書き直して他出版社から出しては?」というアドバイスがありました。そこで中経出版(のちにKADOKAWAと統合)から全面的に書き直して出版しました。それが『100円のコーラを1000円で売る方法』。ありがたいことにシリーズ60万部を達成しました。

■2013〜15年頃…IBMを退職、独立しました。編集者と話していくうちに「永井の強みは、物語でマーケティングを語ることでは?」ということになり、100円のコーラ・シリーズ後も、ストーリー形式のマーケティング本を何冊か出版しました。マーケ理論を物語に落とす力量は恐らく徐々に向上していたと思います。しかしビジネス書分野でストーリー本が氾濫して「レッドオーシャン化」し始め、徐々にこの路線では売れないことがわかりました。(たった3-4年で市場が一変するのですから、世の中の流れは速いものです)

■2016年以降…さらに色々な編集者と話したり意見を伺っているうちに、『永井さんの強みは「難しい理論を噛み砕いて、面白く分かりやすく書ける」というように、もっと広く捉えた方がいい』というところに落ち着きました。おかげさまでその後、『これいったい、どうやったら売れるんですか』『なんで、その価格で売れちゃうの? 行動経済学でわかる「値づけの科学」』、さらにMBA50冊シリーズを出版するに至っています。

改めてふり返ると、「これ(=本の出版)を何としてもやりたい」と夢中になるものがあることが出発点だったことです。

本を書き始めた頃は、IBMのマネジャーとして会社では多忙な日々を過ごしつつ、夜は帰宅後毎日ブログを書き、週末は合唱団の事務局長として団の運営をしながら、1年1冊のペースを崩さずに執筆を続けました。

これもシンプルに、「どうしても本を書きたかったから」。

こうして夢中でやるうちに、自分ならではの「個性や強み」が徐々に見えてきます。ありていにいえば「実行した結果から学びが得られる」ということです。さらに私が様々な編集者と話し合いを繰り返したように、第三者の視点は実に参考になります。こうすることで、次第に自分の強みも見えてきます。

一方で強みには賞味期限があるので、常に見直しが必要です。私の場合も「マーケティングを物語形式で書く」という力の賞味期限は、3〜4年間と意外と短期間でした。

「自分の強みはコレ」と決め打ちするのもいいのですが、強みかどうかを判断するのはあくまでもお客様や市場状況なので、あまり強く拘らずに柔軟に見直していくことが必要ではないかと思います。

ところでご質問では「強者が多い出版業界で…」という部分があります。

実は私は、ライバルについてはあまり考えませんでした。これは当初からマーケティング発想で「自分のバリュープロポジションがあることが大事」と考えていたためです。

ライバルのことはそれなりにチェックしました。目的は「ライバルのやり方を取り込む」のではなく、「ライバルがやっていないことをやる」ためです。この発想の違いが生む結果は、実に大きいと思います。私はライバルが自分と同じことをし始めると「そろそろ河岸を変えるタイミングかなぁ」と警戒し始めるようにしています。

ですのでご質問にある「出版業界は、強者が多い業界」と言うことはほとんど意識はしませんでした。

おかげさまで強者が多いビジネス書の分野で出版した本はコンスタントに売れ続けて、現在は累計106万部を超えましたので、この戦略はそんなに間違っていないのではないかと思います。

企業が商品開発を考える際も、このパターンは同じではないかと思います。ご参考になれば幸いです。

   

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商品開発では、お客様に問うな。自分に問え

商品開発をする時、多くの人は「まず市場調査だ」とか「顧客に聞いて情報を集めよう」と考えます。しかしこのやり方は上手くいかないことが多いのです。

成功する商品開発では、お客様に質問しません。

ジョブズは顧客に聞いたり、市場調査しなかったことで有名です。彼自身が最も厳しいアップル商品のユーザーだったからです。自分が欲しい商品を作り続けました。

ソニーの盛田昭夫さんは、ウォークマン発売10周年のビデオでこう語っています。

『「カセットプレイヤーを持ち歩いて音楽を聴きたい。録音機能を外し軽いヘッドホンを作ったら楽しめるのでは?」と井深さんが言うんですよね。周囲は「録音機能のないプレイヤーは売れたためしがない」といっていましたけど、考えてみたらカーステレオも録音できない。「それならば持ち歩くステレオも、プレイヤーだけでいい」と考えたんですよ』

盛田さんも、お客様に質問しませんでした。

家電でヒット商品を連発するバルミューダの寺尾玄社長も、お客様に質問しません。競合商品のことも考えません。自分で「どんな商品が求められているか」をひたすら考え抜いて商品を開発し、商品発表会ではその物語を語ります。

彼らは必ずしも百発百中ではありません。しかしヒット商品を生み出す打率はライバルを圧倒しています。

彼らがライバルと違うのは、お客様に問うのではなく、自分に問い続けている点です。

「お客様に問うのが正しい」と考える人は、「答えはお客様が持っている」と考えて、「どんな商品欲しいですか?」「どうすれば買いますか?」と問い続けています。しかし現実にはお客様は答えを持っていないことが多いのです。

「自分に問い続けるのが正しい」と考える人は、「答えは自分が持っている」と考え、「なんで自分はそう考えたのか?」「どうすればいいのか?」と自分の直観を掘り下げます。顧客の情報は、考えるための一つのきっかけであり、材料なのです。

しかしこの方法は、商品アイデアを生み出す段階でのみ有効です。
商品を世の中に出した後は、モードを反転させる必要があります。

常にお客様の声に耳を澄ませて、果てしない商品改良が始まります。ただしここでも、そのお客様が正しいお客様なのかを判断することが重要になります。すべてのお客様に対応しようとすると、個性を失った商品になり果ててしまうのです。だからあえてお客様を切り捨てる判断も必要になります。

あなたは商品開発で、自分に徹底的に問い続けていますか?

   

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ウィズ・コロナで自ら顧客体験を損なうサービス

コロナ禍の先行きは予断を許しませんが、そんな中でも苦しいのがサービス業。お客様がコロナ前まで戻らない中、売上確保に苦戦しておられます。

私がとても気になるのが、売上を確保しようとして、顧客体験を大きく損なっているサービス業があることです。それを実感したのが、妻が美容院から帰ってきた時のこの一言です。「もうあの美容室、行くのイヤかも」

この美容院はややお高めですが、ゆったりしたソファーで順番待ち。店の居心地も良く、リラックスして髪をいい感じにセットしてくれていました。

コロナ禍で妻はなかなか美容室に行けませんでしたが、先日久しぶりに髪をカットに行きました。

まず驚いたのが、それまでお客が座っていたソファがある場所に、美顔器や化粧品、シャンプー、ドライヤーなどの様々な商品がズラッと並んでいたこと。

お客は入口近くにあるパイプ椅子に座って順番待ちです。売り物の商品にお客が押し出されている感じがします。

順番が来てカットを始めると、美容師さんからの売り込みが始まります。

「このシャンプーお勧めですよ。当店でも売ってます」

「このドライヤーもいいですよ。当店で売ってますよ」

「こんど当店でアロマセラピーのお教室をやるんです。とてもいいですよ〜。ぜひどうですか?」

妻が「そのお教室、どんな感じなんですか?」と聞くと…

「…私は参加したことがないんです。でも、とってもいいそうです!」

販売は確率戦なので、こうして売り込むと、買うお客さんが一定数出てきます。数字だけ見ると一時的に売上は上がるでしょう。しかし「居心地が良く、リラックスして髪をいい感じにセットしてくれる」という顧客体験は、大きく損なわれています。

妻は「ずっとこの店でお世話になったけど、変わっちゃった。もう行きたくないかも」。こうして一定の確率で客離れも上昇するわけで、長期的に見ると客離れが増え、売上は下がっていきます。

ちなみにこの店で腕利きのある美容師スタッフは、お店から独立を決めました。しかもこの店から徒歩5分の場所に店を出します。このスタッフは自分のお客に「独立するので、ぜひ来て下さいね」としっかりと声をかけています。この店の様子を見て(チャンス)と思ったのかもしれません。

さて、売上データで見ると、この状況は次のように見えます。

①売上が激減する(コロナ禍で来店客が減ったため)
②一時的に平均顧客単価が上昇し、売上が上昇する(接客中の営業のおかげ)
③ゆっくり顧客数が減り、売上が減る(顧客体験を損なうことによる客離れ)
④腕のいいスタッフが辞め、顧客がゴッソリ消える(見切りを付けたスタッフ離れ+顧客の大規模離脱)

確かに顧客単価を上げることは必要なことです。しかし同時に大事なことは、絶対に顧客体験を損なわないことです。

ウィズ・コロナの時代は、むしろそれまで出来なかったより高い顧客体験を提供するチャンスです。髪のコンディションをいい感じに維持するための仕組みは、スマホやサブスクと連動させれば色々と実現できる可能性があります。

逆に顧客体験を犠牲にして、目の前の売上を追いかけてしまうと、奈落の底に落ちてしまうのです。

あなたの会社では、ウィズ・コロナで自ら顧客体験を損なっていませんでしょうか?

   

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「ウチはリピート客が多い。既存客に販促しよう」が、ジリ貧になる理由

ワークショップ研修でこんな意見をいただきました。

「当社は市場トップシェアです。市場調査すると、当社は競合よりもリピート客比率が多いんですよね。だから既存客を意識した販促を行いたいと思います」

このように考える会社はとても多いのですが、この考え方で販促すると、ジリ貧になって市場シェアが落ちます。

これはバイロン・シャープが著書「ブランディングの科学」で指摘していることです。この本は実に素晴らしい内容なのですが、内容がやや難しいので、なかなか理解が広まっていません。とても残念に思っています。

そこで噛み砕いてご説明します。

まず、業界トップシェアの会社ほど、顧客離反率が低くなります。

単純化して、市場に顧客が100人いて、A社が80名(シェア80%)、B社が20名(シェア20%)の顧客を持っていると仮定します。市場全体では、常に一定比率で顧客が入れ替わっています。仮に今年、顧客10人が入れ替わたとすればと、A社(シェア80%)の顧客離反率は10÷80=12.5%、B社(シェア20%)の顧客離反率は10÷20=50%になります。

このように市場をモデル化して考えると、市場シェアが高いと顧客離反率が低いことがわかります。でもこれは机上の計算。現実にはどうなのでしょうか?

バイロンシャープは著書の中で、米国の車ブランド、オーストラリアの金融機関、英国とフランスの車ブランドで市場シェアと顧客離反率を調査した詳細な結果を示しています。下記はそこからの一部抜粋です。

■米国車ブランド(1989-91年)
 1位 ポンティアック シェア 9%、顧客離反率 58%
 ↓
 9位 ホンダ シェア 4%、顧客離反率 71%

■オーストラリア金融機関
 1位 CBA シェア 32.0%、顧客離反率 3.4%
 ↓
 7位 Adelaide Bank シェア 0.8%、顧客離反率 7.0%

■英国車ブランド(1986-89年)
 1位 フォード シェア 27%、顧客離反率 31%
 ↓
 11位 ホンダ  シェア 1%、顧客離反率 53%

実際の市場データを調べても、トップシェアのブランドは顧客離反率が低いことがわかります。逆に言うと、トップシェアのブランドは顧客定着率も高いということです。

つまり冒頭の「リピート率が高い」のは、必ずしもその会社のお客様の特性ではなく、単にその会社の市場シェアがトップだからなのです。

では、なぜ既存客だけを意識した販促でジリ貧になるのでしょうか?

バイロン・シャープは著書でその理由も説明しています。

次の図は、バイロン・シャープの著書から引用したもので、英国のコーラ購買者の分析です。横軸に年間購入回数、縦軸に全体の人数の比率を取っています。

左側のユーザーがライトユーザー、右側のユーザーがヘビーユーザーです。

一般に「パレートの法則で、上位20%の購買客が売上の80%を占める」といわれますが、これはミスリーディングです。

実際に数年程度の長期間で調べると、売上の50%は稀に買うライトユーザーによるものです。そして実際に調べてみると、実に多くのブランドでは同じパターンになっています。

さらにこの分布の中で、ヘビーユーザーとライトユーザーは頻繁に入れ替わっています。つまりある特定のヘビーユーザーが、急にライトユーザーになったり、全く買わなくなったりするということです。

せっかく得意客を意識した販促をしていても、そのお客さんが離脱するのであれば、販促の効果は出ませんよね。

むしろ販促では、この図で左側に固まっているライトユーザーや、この図に現れない非ユーザーをターゲットにした方が、はるかに効果が出ます。

冒頭の「当社は競合よりもリピート客比率が多いので、既存客を意識した販促を行う」だと、市場のごく狭い範囲だけにしか販促できません。この結果、ジリ貧になって市場シェアが下がり続けるのです。

必要なのは、もっと市場全体に視野を広げたマーケティング戦略なのです。

   

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