価値ある商品やサービスは、勇気を持ってあえて高価格をつけると、逆に真剣に検討される

店頭で、価格帯1万円程度の商品を検討していて、その中に考えてもいなかったが実は気になる機能を持った1万5千円とか2万円の高価格帯の商品があると、どのように反応するでしょうか?

恐らく最初から除外することはせずに、じっくり見るのではないでしょうか?

このことについて書かれた、『価格より「価値」に目を向けさせる方法』(マルコ・ベルティーニ、リュック・ワシュー)という論文が、Harvard Business Reviewの2010年7月号に掲載されています。

大学院生を使い、スーパーマーケットで二種類の商品(有機レタスとフェア・トレード・コーヒー)の価格についてどのように反応するか、実験をしてみた結果が紹介されています。

—(以下、引用)—

 事前テストから、彼ら彼女らがこれらの商品に支払ってもよいと考えている上乗せ分(プレミアム)は最大20%であることがわかっていた。しかし、80%上乗せしたところ、これら大学院生たちは、これらの商品について、事前テストの倍近い知識や情報を披露し、またぜひ買いたい、買うべきであるという意見が多数出された。

(中略)

 対照的に、彼ら彼女らが想定していた価格とほぼ同じ10%のプレミアムや、190%という法外なプレミアムを示したところ、事前テストと同じく、買うかどうかについて真剣に検討することはほとんどなかった。

—(以上、引用)—

論文では、『以上のことから、潜在顧客が購買を判断する際に、「この店で一番安いのはどれか」という、ありがちな(そして価値をないがしろにする)問いかけではなく、「このようなメリットが必要かどうか」を自問させ、ためらわずに支払う価格帯が必ず存在することがわかる。」としています。

 

私は講演をさせていただく際に、三つの理由(「①シェア2位以下の企業は価格競争では勝てない」「②値下げ販売すると、一時的に売れるが、価格に敏感な顧客しか集まらなくなる」「③値下げ販売すると、優良顧客は去っていく」)を挙げて、「価格勝負は麻薬である。企業の体力を失わせる」というお話しをしています。

実際、値下げが価値を台無しにする悪循環を引き起こすことは、多いのです。

価値がある商品やサービスの場合、勇気を持って、あえて高価格をつけてみることも必要です。

 

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昨日から書店販売開始の「コミック版100円のコーラを1000円で売る方法2」、実はネットで立ち読みできるって知っていました?

「コミック版100円のコーラを1000円で売る方法2」、昨日から書店販売が始まりました。

家の近所にある有隣堂にも、置いてました。

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実は、中経出版様のサイトで、最初のプロローグ6ページを「立ち読み」いただけます。

Photo_2

上記のように「立ち読み」をクリックして下さい。

本書はコミックとしてもお楽しみいただける内容になっています。是非どうぞ。

 

 

「OM-D E-M1」と「一眼レフ開発休止」を同時発表したオリンパスは、イノベータになれるか?

世の中は、今朝未明に発表された新型iPhoneの話題で持ちきりですが、私が気になっているのは、昨日発売されたこの製品。

待ちに待ったフラグシップ機・OM-D E-M1が発表されました!(下記写真はオリンパスのページより)

Omdem1

 

こちらで書きましたように昨年年末にオリンパスOM-Dが気になってしまった私は、今年年初にOM-D E-M5を購入、現在に至っております。

ということでOM-Dオーナーとしては、昨日から頭のかなりの部分が、このカメラのことで占められてしまっています。

このOM-4 Ti (1986年発売)と並べて撮影した写真なんかは、グッときます。OM-4のデザインは大好きでしたが、そっくりですね。「オリンパス、なかなかわかっているじゃん!!」という感じです。

さらに新たにM.ZUIKO PROという新しいプロ仕様レンズシリーズも発表され、M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO (35mm換算で24-80mm/F2.8)の発売とか、M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO (35mm換算で80-300mm/F2.8)の開発とかも発表されており、盛りだくさんです。

これまでOM-Dはパナソニックに比べてハイエンド・ズームレンズの充実が課題でしたが、力を入れていく様子がわかります。

デジカメWatchの仕様比較を見るとOM-D E-M5と比べて、さすがにフラグシップ機だけあって、一線を画した性能のようです。ただ若干重いようですね。(撮影時で、約497g vs. 約425g)

 

一方で、今朝(2013/9/11)の日本経済新聞を見ると、『一眼レフ開発休止 オリンパス「ミラーレス」に集中』というタイトルで、オリンパスは従来型の一眼レフ(E-1等)の開発は休止して、ミラーレスであるOM-Dシリーズに経営資源を本格的に投入すると報じています。

オリンパスOM-Dのマイクロフォーサーズは、センサー面積がフルサイズ35mmカメラの1/4になります。しかし、画質的には遜色は感じません。

実際、世界的にも高名な動物写真家・岩合光昭さんも、現在開催中の写真展「ネコライオン」をオリンパスで撮影しておられます。(このタイミングで岩合さんの写真展を企画するオリンパスのマーケティング戦略も、素晴らしいですね)

 

さらにこちらにも書きましたように、OM-Dシリーズの携帯性は、抜群に優れています。同一スペック機材のフルサイズ版と比較すると、重量1/3程度という感じでしょうか?

以前は、撮影の際には一眼レフボディを何台も持ち歩いていましたが、さすがに最近はあまり重いモノは持ち運ぶのが億劫になってしまいました。個人的には、OM-Dで必要十分です。

 

イノベータが破壊的イノベーションを起こす時は、ローエンドのニーズに応えるような、安くて手軽な製品を出します。

最初は「こんなのオモチャ」と言われたりします。

そして徐々に性能を向上させていき、ハイエンドニーズに応える製品で市場を押さえてしまいます。このタイミングでは、古(いにしえ)の覇者は「手軽さ」で太刀打ちできない状態に陥ります。

ではカメラ市場ではどうか?

ニコン・キヤノンに加えてソニーも加わったトップシェアベンダーの牙城は、なかなか難攻不落かもしれません。しかしオリンパスがカメラ市場を席巻するイノベータになると、これは面白いかもしれませんね。 

「100円のコーラを1000円で売る方法 3」で描いた「イノベーションのジレンマ」が、まさに今、一眼レフカメラ市場で起こりつつあるのを、私たちは目の当たりにしているのかもしれませんね。

 

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9/19に『「戦略力」が身につく方法』(PHPビジネス新書)を出版 + 六本木アカデミーヒルズで9/20に出版記念講演

9月19日に、PHPビジネス新書から『「戦略力」が身につく方法 —「現場を動かす力」とは何か』を出版します。

 

 
本書は、5年前に自費出版した処女作「戦略プロフェッショナルの心得」と、同じく大震災直後に自費出版した「バリュープロポジション戦略50の作法」の2冊をベースにしています。

おかげさまで、2008/9に自費出版した「戦略プロフェッショナルの心得」は、当初印刷した2,000冊が完売しました。

また、2011/3に自費出版した「バリュープロポジション戦略50の作法」は、2回の増刷で印刷した合計5,000冊のうち、現時点で4,500冊が売れました。有り難いことに、「戦略で本当に必要なことが、コンパクトにまとまっている」とご評価をいただいています。

 

自費出版本がこれだけ売れたのは、異例のことだと思います。恐らくこのブログをご覧になっておられる方々の多くが、この2冊をお読み下さっているかと思います。心から感謝申し上げます。

現在の講演活動や著作活動のコンテンツのうち、多くの原型がこの2冊に書かれています。

この2冊は私の原点です。

 

一方で、その後の3-5年を通じて、さらに色々な学びがありました。

そこで本書では、この2冊をベースに、最新事例を反映し、さらにその後の私の様々な経験を書き加えた一方で、表現をよりわかりやすくシンプルにするなどして、大幅に加筆訂正を行いました。(実際、4月から7月にかけて、原稿を3回書き直しています)

その結果、オリジナルの2作が原型を留めないほど大幅に書き直された、全く別の本になりました。

来週後半から書店に並ぶと思いますので、よろしければ店頭でご覧下さい。

 

また、本書の出版にあわせて、有り難いことに、9月20日(金) 19:30~21:00、六本木アカデミーヒルズで出版記念講演会を企画いただきました。

「戦略力」が身につく方法~「現場を動かす力」とは何か~
【スピーカー】永井孝尚(多摩大学大学院 客員教授/オフィス永井代表/平河町ライブラリーメンバー) 

六本木/アークヒルズ/平河町ライブラリーメンバー対象です。メンバーの方、あるいはこの機会に新たにメンバーになろうという方は是非どうぞ。

 

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【学生限定50名/参加無料】9/30(月)早稲田大学で講演します(勝手にマーケティング大学 × 早稲田大学マーケティング研究会コラボ企画)

「勝手にマーケティング大学」学長の横山弘毅さんと、早稲田大学マーケティング研究会のコラボ企画により、9/30(月)の夜、早稲田大学で講演をさせていただきます。

学生の方限定、参加無料です。

申込は下記サイトからどうぞ。

【学生限定50名】『100円のコーラを1000円で売る方法』著者・永井孝尚氏 特別講演@早稲田大学(勝手にマーケティング大学 × 早稲田大学マーケティング研究会コラボ企画_)【参加無料】

 

 

それは本当に「価値」なのか?あなたが「価値」と思い込んでいるだけではないのか?…そのためのチェックリスト

最近は講演をワークショップと組み合わせて行っています。

このワークショップでは、数名のチームで「私たちの価値は、何か?」 ということを議論し、発表いただきます。

つまり、「お客様が私たちの商品を買う理由(=バリュープロポジション)を一言で言うと、……」を考えていただくのですね。

ただ、漠然と考えても答えは出ません。そこで次の項目を順番に考えていただきます。

・ターゲットのお客様は、誰か?
・そのお客様のニーズは、何か?
・そのニーズを解決するために争っている競合は、どこか?
・お客様のニーズを解決する上で、競合にない我々の価値は、何か?

これらがお互いに連携し合って、かつ全て含んだものが、「お客様が私たちの商品を買う理由を一言で言うと、……」(=バリュープロポジション)になるわけです。

いわゆる「バリュープロポジション・ワークショップ」ですね。

 

お客様にしっかりした価値を提供するビジネスを行うためには、本来、これが即答できることが必要です。ただ、やってみるとこれがなかなか難しいのですよね。

そこで、陥り勝ちなポイントを書き出してみました。

 

1.その「価値」で、本当に「お客様のニーズ」を解決できるのか?

■「価値」と言っているのが、単なる「能力」になっているケースがあります。

例えば「部品から製品まで一貫製造していること」が価値だ、というケースがよくあります。

しかしあなたは「このPCは、部品から最終製品まで自社で一貫して生産しています」と言われて、買う気になるでしょうか?多分買わないのではないでしょうか?

「部品から製品まで一貫製造している」は「価値」ではなく、「能力」なのです。

本来は「一貫生産する能力がある」→「だから、(信頼性重視のお客様に対して)絶対故障しない価値を提供できる」といった価値まで掘り下げる必要があるのです。

 

■「価値」が、実は価値ではなく、一般的になっているケースがあります。

例えば「業界最高性能」を価値としているケースがよくあります。しかしほとんどの場合、無意味です。公道の制限速度100Km/hなのに、スピードが500Km/hも出る車は不要です。

但し、業界最高性能が意味を持っている場合は別です。例えば制限速度100Km/hなのに世の中の車の最高速度が60Km/hだったら、80Km/h出せる車は意味があります。

しかし現代では、多くの商品が「過剰性能」を提供しているので、そのような状況はかなり少なくなっています。

 

2.その「価値」は、本当にどの「競合」も提供できないものか?

■「競合」も提供できる「価値」を定義しているケースを多く拝見します。しかしそれでは意味はありません。

■「価値」が主観的になっている場合も意味がありません。例えば「最高品質」は誰でも言えますが、この言葉は、お客様にとってはほとんど意味がありません。

 

3.「お客様のニーズ」の解決を競っているのは、本当にその「競合」か?

■他の方法でよりよい解決策を持つ競合(別業界含む)はいないでしょうか?

例えば、企業研修を提供しようとしている研修サービス会社の競合は、他の研修サービス会社だけでなく、ビジネスコンサルテーションを提供している会社も含まれます。

実際に私が人材育成責任者だった時は、研修サービス会社ではなく、ビジネスコンサルの第一人者に講師をお願いしました。

顧客の視点で、他に選択肢がないかを考える必要があるのです。

 

4.「ターゲットのお客様」は、十分に絞り込めているか?

■往々にして、一般的すぎる場合が多いのです。

例えば、「ホームユーザー」「一般消費者」は、一般的過ぎます。

本来、ターゲットとするお客様は、実際にその特定のお客様にコンタクトできることが必要です。

 

5.「ターゲットのお客様」は、本当にその「ニーズ」を持っているか?

■「ニーズ」が思い込みになっているケースが、意外と多いのです。

例えば最近、「エコ」という言葉が流行っています。だから「地球に優しい」ことを売りにしている商品が多いのです。確かに中にはそうやって売れている商品もあります。しかし「地球に優しい」だけでは売れない商品も多いのです。

ニーズをキッチリと検証することが必要です。

 

上記5項目をチェックした上で、「一言で言うと」がこれら全てを包含し、かつ、お客様がすぐ理解できるものになっていることが必要です。

さらに最終チェックとして、その「一言で言うと」を伝えると、「そのお客様は、本当に喜んで買うか?」を考えてみる。

 

実際のワークショップでは、この作業の後に1−2チームに発表していただき、私より価値を的確に定義する上での課題を指摘させていただきます。

その上で、実際にバリュープロポジションを定義して、大きな成果を上げた事例をご紹介します。

 

通常、講演+ワークショップで90分〜120分をいただくこと多いので、その場合は「バリュープロポジション・ワークショップ」は作業15-20分 + 発表1-2チーム(1チーム5分)といった形で進めます。

限られた時間内で、バリュープロポジション設計の疑似体験をしていただく形になります。

 

この「バリュープロポジション・ワークショップ」の部分だけを抽出して、企業単位で半日から1日かけて徹底的に議論することもあります。これはこれで、戦略構築のいい出発点になります。

 

 

「100円のコーラを1000円で売る方法2 コミック版」、9/11発売です

「100円のコーラを1000円で売る方法2 コミック版」が完成しました。

表紙はこんな感じで、画は第1巻と同じく阿部花次郎先生です。

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第1巻の表紙は、主人公の宮前久美と、メンターの与田誠の組み合わせ。

第2巻の表紙は、宮前久美と、ライバルの内山明日香の組み合わせです。


 

校正の段階で何回も読み返し、昨日、印刷された出来たての本もいただき読ませていただきました。

阿部花次郎先生の筆もますます冴えており、とても面白い内容に仕上がっています。

加えてコミック第1巻同様、このコミック版第2巻でも、各章に私の解説(合計約10,000文字)を加筆しています。

 

9/11発売、既にアマゾンでも予約を受付中です。

 

 

10月15日(火)、JASIPA第44回定期交流会で講演します

中小IT企業の団体であるJASIPIA(日本情報サービスイノベーションパートナー協会)様の第44回定期交流会で講演させていただくことになりました。

開催日時:2013年10月15日(火)17:00~20:30(受付開始16:30~)

会場:センチュリー三田ビル10F

会費:3,000円

私の講演は18:00~19:00で、『改めて、顧客中心主義について考えよう』と題してお話しさせていただきます。

今回は時間の都合により、残念ですがワークショップはございません。講演中心です。

 

JASIPA非会員の方々も参加いただけます。

ご興味がある方は是非どうぞ。

申込はこちらです。

 

 

MarkeZineDay 2013で講演します (2013/10/4 @ 秋葉原)

MarkeZine様主催の『MarkeZineDay 2013』が、2013年10月4日(金)に秋葉原コンベンションホールで開催されます。

Markezineday2013

ここで「デジタルマーケティング時代でも変わらない本質とは?改めて顧客中心主義について考えよう」と題して、講演をさせていただくことになりました。→リンク

 

リンク先にもありますように、私の講演の概要は下記のとおりです。

「不易流行」という言葉があります。「不易」は変わらないこと、「流行」とはその時々に合わせ変えていくことです。

重要な点は「両者の根本は一つ」ということです。デジタルマーケティングが大きく進化している現代だからこそ、私たちは、変わらない「不易」の部分と、変えるべき「流行」の部分を見きわめる必要があるのです。その「不易」の部分は、「顧客中心主義」に他なりません。

本セッションでは、事例をご紹介しながら、デジタルマーケティング時代の「不易」と「流行」をご紹介し、改めて顧客中心主義について考えていきます。

 

参加費無料です。ご興味のある方は是非どうぞ。

開催概要はこちら、申込はこちらです。

 

 

昨日、出版記念ダブル講演を行いました

先日ご案内しましたように、昨日2013/8/25(日)、中経出版の講演会「グローバル時代を生き抜くスキル」で、講演を行いました。

同じ元日本IBM社員で、IBM・コンサルティング事業の人材育成責任者だった清水久三子さんとのダブル講演でした。

考えてみると、私はIBM・ソフトウェア事業の人材育成責任者だったので不思議なご縁です。

私は前半の2時間、「改めて顧客中心主義について考えよう」と題して講演とワークショップを担当させていただきました。

 

講演の後に行ったワークショップの様子です。

グループを代表して発表されている方が自社のバリュープロポジションの内容を話されているのを、私がホワイトボードに書きとめているところです。

20130825

このワークショップでは、最初にバリュープロポジション(=お客様が自社商品を買う理由)を定義する際に陥り勝ちな5つの罠について、チェックリストで具体的に私からお話ししています。

その上で、皆様にグループワークに入っていただいています。

今回はグループ・ディスカッション20分と限られた時間内の「プチワークショップ」だったこともあり、「どのようにバリュープロポジションを考えればよいか」という疑似体験をしていただく形になりました。

実際の研修でのワークショップでは、数時間かけてみっちり議論し、さらに発表と質疑応答を繰り返して時間をかけると、バリュープロポジションについてより有意義な議論ができるようになります。

さらに同じ会社の方々が議論すれば、それを今後戦略を考える際のベースにすることもできます。

今回は講演1時間15分、ワークショップ合計45分(20分のディスカッション含む)でしたが、実際にはワークショップ部分だけでも半日かけると、より成果があがります。 

 

後半の2時間では、清水さんより、先日出版されたご著書「外資系コンサルタントのインパクト図解術」の内容を、ワークショップ込みでお話しされました。

私が知らない内容も多く、またプレゼンの方法、ワークショップの進め方など、とても勉強になりました。今後に役立てたいと思います。

 

お休みのところ、参加された皆様、ご講演された清水さん、会の運営をされた中経出版の皆様には感謝です。

 

なお、当セミナーは申込が多数のため、9月8日に追加開催が決まりました。

詳細はこちら。まだ若干名募集中だそうです。

 

 

いつもの講演+ワークショップを、初めて英語で行いました

昨日2013/8/23(金)、グローバルナレッジネットワーク様に、いつもの「改めて、顧客中心主義について考えよう」の講演+ワークショップを、初めて英語で実施しました。

こんな感じです。

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グローバルナレッジネットワーク様は、研修サービスをアジア展開していたり、米国とやり取りしてグローバルの研修を日本の個別企業様向けにカスタマイズしておられます。

そのため、多くの外国人社員がおられます。

ちょうど1ヶ月前、同じグローバルナレッジネットワーク様に日本語で同テーマを講演させていただいた際、ある外国人社員の方と知り合いになり、「この講演内容を、外国人の同僚に聞かせたい」ということをお聞きしました。

 

私は、2ヶ月前まで日本IBM社員だった頃は、仕事で毎日英語を使っていたのですが、退職後は英語を使う機会がなくなってしまいました。

だから自分で意識的に英語を使う機会を作っていく必要があります。

ちょうどそのように考えていた時期でしたので、大変有り難い機会です。

「それでは英語の講演をしましょう」ということになりました。

ということで、2時間半分の講演資料とワークショップ資料(約100ページ)を全て英語に作り替え、さらに話す内容を全て英語に書き起こして、練習しました。

 

実際に英語で行ってみて、大きな学びがありました。

まず、いつもの講演とワークショップは、海外でも十分に価値があるということがわかりました。ロジカルに順序立てて、わかりやすく作っており、かつ興味が持続するように構成していることがよかったのだと思います。

一方で、正式に海外の方にサービスとして提供するためには、英語資料はちゃんとネイティブチェックをかけた方がいいということもわかりました。

それは英語の正確さだけでなく、文化的な違いも含めてのチェックです。日本人にとっては問題がない表現でも、ある国ではとても繊細な問題になることもある、とのご指摘をいただきました。

こればかりはやってみないとわかりません。ご指摘、本当に有り難いですね。

ワークショップの進め方やディスカッションの方法についても、貴重なヒントをいただきました。

プレゼンの様子も録画してみました。私はともすると、講演では早口で話す傾向があります。日本語の講演はだいぶ慣れてきてゆっくり話せるようになったのですが、英語での講演は慣れないためか、かなり早口になっていました。もっと場をこなして、慣れていく必要がありそうです。

 

ともあれ、実際に講演してみて、私自身とても勉強になりました。

貴重なお時間をいただいてご参加下さったグローバルナレッジネットワークの皆様には、深く感謝です。

 

これからも、英語での講演の場数を増やしていきたいと思います。

 

 

マーケティング関連よりも、朝活関連の取材の方が多い件

おかげさまで「100円のコーラを1000円で売る方法」シリーズは沢山の方々に読んでいただいています。

マーケティング関連の講演のご依頼もありがたいことに沢山いただきます。

しかし一方で、メディアの取材は実はそれほど多くありません。

 

メディア取材で多いのは、朝活関連の取材です。

「残業3時間を朝30分で片づける仕事術」を出版したのは、もう2年前の2011年7月です。

しかし当ブログで書きましたように、先日もプレジデント2013.07.29号の「『朝時間』革命」特集で紹介いただきましたし、最近もあるラジオ番組からインタビューのご依頼をいただきました。

これは朝時間活用のニーズが高い一方で、朝活の専門家がニーズに比べて比較的少ないという、「需要と供給の関係」なのかもしれません。

確かにマーケティングの専門家は沢山おられますからね。

 

一般的な話として、需要と供給を見極めて、ある程度ニッチなエリアで価値を高めることも、必要なのだなと改めて思った次第です。

 

 

いつもの講演の英語版を準備中

6月末に日本IBMを退職して、なくなったことが一つあります。

それは、英語でコミュニケーションする機会。

 

日本IBM在職中は、毎日英語で交渉し、英語でプレゼンし、英語でメールのやり取りをしていました。

それが独立するとなくなってしまうのですよね。

 

色々な方に相談させていただいた結果(相談に乗って下さった方には感謝です!)、8月末に海外の人向けに、いつもお話ししている内容を英語で講演する機会をいただきました。

 

いつもお話ししているのは、

タイトル:「改めて、顧客中心主義について考えよう」

アジェンダ
1. なぜ買うのか?
2. 価格競争の怖さ
3. ワークショップ
4. 現状維持は破滅

 

これを、このようにします。

Title: Customer Centrism, not Customer Absolutism — Lessons from Japan —

Agenda
1. Why Customers Buy?
2. Price Competition is a Road to Hell
3. Workshop
4. Hesitation to Change is a Path to the Death

 

一通り、90分の英語版資料は完成しました。

あとは英語で話す練習ですね。2ヶ月間ほど話していないので、慣れておかないと、ですね。

 

 

結果を原因と思ってしまう危険…フリーク・ヴァーミューレン著「ヤバい経営学」より

フリーク・ヴァーミューレン著「ヤバい経営学」を読んでいます。

本書では、ビジネス界では一般的に常識と思われがちなことが、実は間違っていることを様々な観点で指摘しています。

大学の研究者が書いているので、厳格な研究と立証できるだけの事実にきちんと基づいて検証されています。

 

たとえば、「企業はコアビジネスに集中すべきだ」という意見があります。

一見正しいように見えますが、本書では次のように述べています。

—(以下、p.181から引用)—

低迷企業は、もっと儲かるビジネスを探そうとして、多角化することが多い。つまり、一つの事業に集中していないのは、業績低迷の原因ではなく結果なのだ。それに対して、うまくいっている企業では、成功しているビジネスに集中するのは一般的な戦略だ。先ほどと同様に、一つの事業への集中は成功の原因ではなく、結果なのだ。

—(以上、引用)—-

確かに好業績の企業は稼ぎ頭の製品を持っています。

しかしその製品が売れ筋で、売上が突出しているから、結果として稼ぎ頭になっているのですよね。そしてさらに企業はその商品に経営資源を集中する。そしてさらにその商品の売上が伸びる。そして他商品は経営資源が十分に行き渡らずに売上は伸び悩む。

その結果、売れ筋製品が売上の大部分を占める。

この結果を見て、「コアビジネスに集中することが大切だ」と言っても、それは結果であって原因でないということです。

本書では以下のように続けています。

—(以下、p.182から引用)—

ここで言いたいのは、「関係があることと、因果関係があることは異なる」ということだ。….むしろ重要なのは、そういう成功企業の特徴をただ真似ることは、逆に会社を成功から遠ざけてしまう可能性がある、ということだ。

—(以上、引用)—

世の中にある様々な現象から、推論してロジックを立てると、確かにこのようになりがちです。

 

たとえば私が最近よく感じているのは「差別化」です。

よく「生き残るためには、差別化が重要」と言われます。そして、いかに差別化するかを考えます。

しかし差別化は、顧客ニーズを真剣に深掘りして突き詰めた行動の結果なのではないでしょうか?

顧客ニーズをあまり考えずに、一生懸命差別化しようと考えても、結局差別化できないと思います。

ここでも、差別化は結果であり、原因ではないのです。

 

原因と結果を見極めるだけでも、様々な本質が見えてくるように思います。

 

 

久喜青年会議所様で講演をしました

昨日2013/8/2(金)の夜、久喜青年会議所様にお招きいただき、「改めて、顧客中心主義について考えよう」と題して、講演会とワークシップを行いました。

久喜市は埼玉県にある人口15万人の市です。

この久喜市の青年会議所のメンバー54名の方々が、この会を企画されました。

チラシなどで案内された結果、なんと久喜市市内から100名以上の方々に集まっていただきました。

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会場では、地元のくまざわ書店・久喜店様により、「100円のコーラを1000円で売る方法」シリーズの販売も行っていただきました。写真にはありませんが、購入して下さった皆さまにはサイン会をさせていただきました。

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ワークショップもこんな感じで、活気溢れる会になりました。それにしてもすごい人数です。

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青年会議所のメンバーは、40歳になると卒業になります。

ですので30代の若手経営者を中心に活動されているのですが、「なんとか自分たちで久喜市を盛り上げよう」という気合いの入り方は素晴らしいものがあります。

さすがに若い経営者の皆様ですね。

私も大変元気をいただいました。

お招き下さった久喜青年会議所の皆様には感謝申し上げます。

 

 

マーケティングの世界的権威、フィリップ・コトラー氏の日本への提言

2013/7/28の日本経済新聞に、マーケティングの世界的権威であるフィリップ・コトラー氏のインタビューが掲載されています。

コトラー氏は御年82歳。ますます元気の様子で何よりです。

インタビューの中で、次のようなやり取りがありました。

—(以下、引用)—

ー なぜ、日本はCMO(最高マーケティング責任者)にふさわしい人材が育ちにくいのでしょうか?

「(経営トップが)マーケティングによって製品や組織を変えることができることを認識していないからです。違いを打ち出せるはずなのに、そのことがわかっていません。マーケティングをサービス機能やコミュニケーションの手段とだけ捉え、企業が目指すべき重要な役割を担えることを気づいていないのです」

—(以上、引用)—

 

実感します。

確かにマーケティングは、人によって捉え方が千差万別のです。

しかし「マーケティングはとても重要だ。自分はマーケティングの専門家だ」と言っているリーダーが、実際にはマーケティングをプロモーションの一手段としてしか捉えていないこともまた、よく見かけます。

 

本記事は他にも様々な示唆に富んでいます。

・日本は4Pの理解が進んでおらず、マーケティングそのもののステータスが低い
・顧客増が大切。新興国への取り組みがカギ。
・自社について顧客が頼るくらいの関係を築くことが大切
・SNSは新たな人にメッセージを届けられる
・ビッグデータで、市場調査がサンプル(標本)からすべての人に広がり掘り下げることが可能になった

また来日中、たっての希望でJR東京駅の駅ナカを視察され、「世界中の鉄道事業者が参考にすべきだ」と感想を語ったそうです。

本記事は、じっくり読み込むと様々な洞察が得られるのではないかと思います。

 

 

グローバルナレッジネットワーク様で講演をさせていただきました

田中淳子さんのご紹介で、昨晩、グローバルナレッジネットワーク様で講演をさせていただきました。

お時間を2時間いただき、下記テーマについてお話しさせていただきました。

なぜ買うのか?
価格競争の怖さ
ワークショップ
現状維持は破滅
企業の人材育成の視点

5番目の「企業の人材育成の視点」は、前職の日本IBMで、昨年から今年前半までソフトウェア事業の人材育成を担当した経験を元に、顧客である企業の立場で研修をどのように捉えているかということをお話ししました。

6時半開始でしたが、20名以上もご参加いただきました。

また「100円のコーラを1000円で売る方法」シリーズをお読みになった方々がとても多くて、ビックリするとともに、本当に有り難く思いました。

講演の様子はこんな感じでした。(田中さんに写真を撮っていただきました)

Gk20130722

講演の機会をくださった田中さんに感謝です。

 

 

BMWのブランドに反応しない女性、エルメスのロゴに反応しない男性

なるほど、と思いました。

私は車に乗りませんが、それでもBMWのスローガンのロゴを見ると、「いいなぁ、乗りたいなぁ」と感じたりします。

しかし知り合いの女性に聞いてみると、BMWのロゴを見ても何でそう思うのかわからないとのこと。

ここまではそうだろうなぁ、と思います。

 

意外だったのは、エルメスのロゴです。

あのオレンジ色のエルメスのロゴを見ても、私は何とも思いません。多くの男性も同じではないでしょか?

しかし多くの女性は、あのロゴを見るとうっとりするそうです。

もしバッグがあれば思わず手に取りたくなり、人によってはあのオレンジ色を見るだけでも憧れてしまうとか。

しかしそう聞いても、私はなぜ女性がそう思うのかがよくわかりません。

 

これがブランドの力なのだな、と思いました。

このような認知を世の中に広げるのは、一朝一夕ではできません。広告や色々なメディア、さらに普段の企業活動を通じて、長い時間をかけて、人々に認知されていきます。

その結果、ターゲットとなる顧客の間でその意味が共有され、これらのブランドに意味を感じ取っているからなのですね。

 

 

桜美林大学の講演「マーケティングを理解するとあなたの人生が変わる」

本日2013/7/17、桜美林大学リベラルアーツ学会・経済ゼミナール連合会様主催の講演会で、「マーケティングを理解するとあなたの人生が変わる」と題して講演させていただきました。

 

まず桜美林大学キャンパスに到着すると、びっくり。

こんなに大きなノボリが!

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キャンパス内ですごく力を入れてプロモーションいただいています。有り難いですね。

「参加者は50人くらい」とのことだったのですが、プロモーションの成果もあってか、実際には150名程が参加されていました。凄い人数です。

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話はアップルの事例と日本の事例を取り上げて、顧客中心主義と顧客絶対主義の違いについてお話しさせていただきました。ポイントは、

マーケティングを理解すると、…
→社会でいい仕事ができる。
→自分の人生の価値を高めることができる。
→そして、日本は今よりもよくなる。

ということですね。

 

皆さんとても熱心に聴いてくださいました。質疑応答も活発でした。

若い方々とこのような機会をいただいていつも思うのは、現代の若い方々は問題意識がとても高いということです。私が大学生だったのは1980年代前半ですが、こんなに真摯に自分の人生を考えることもせず、いつも遊んでいました。

考えてみれば1980年代前半は高度成長期のまっただ中。

片や今は「失われた20年」。

この違いは、今の日本がこのような状況にあるからでしょうか?だとしたら、大人の我々も大いに責任がありますね。

 

一方で、ある程度の年齢になると「ためになる話だなぁ」と思っても行動を変えるのはなかなか勇気がいるのですが、問題意識が高い若い方々はこのような話を聞くとすぐに柔軟に受け入れて、日々の行動に反映する、ということも実感します。

だから私は若い方々との講演会はいつも楽しみです。

 

このような機会をいただき、感謝です。

 

 

大学生への講演準備中です

来週、桜美林大学・経済ゼミナール連合会様で、大学生80名の皆様に講演をさせていただくことになりました。

テーマは「マーケティングを理解すると、あなたの人生が変わる」

 

私がマーケティングの仕事を始めたのは30代後半からです。それまで、実はマーケティングとセールスの区別もついていませんでした。

それから15年が経ち、私が学んだのは、「マーケティングを学ぶことで価値を生み出し、伝えて、提供する方法がわかる」ということです。

マーケティングがわかれば、いい仕事ができますし、皆が理解すればよりよい世の中を実現でき、日本もずっとよくなります。

さらに、自分自身の人生の価値も高めることができます。

 

私は40歳近くになってからマーケティングというものを学びましたが、20歳前後の大学生がマーケティングを学び、その後の人生で実践していくと、きっと素晴らしい人生になると思います。

ですので私は、若い方々への講演の機会をいただいた時は、出来る限りお応えするようにしています。

 

普段のビジネスパーソン向けのプレゼンとは異なり、ビジネス経験がない方々なので、資料は大幅に作り変えていますが、これもなかなか楽しい作業です。

結果は、後ほど当ブログで結果をご報告したいと思います。

 

 

なぜライフネット生命は、シェアで圧倒する大手生保を相手に、半額を実現できたのか?

本日2013/7/12の日本経済新聞の記事「金融ニッポン 第7部 変革の波3 日生に挑んだ男」で、ライフネット生命の挑戦が紹介されています。

「低価格をいかに実現するか」を考える上で大変参考になりました。記事の内容を解説しながらご紹介します。

 

ライフネット生命は、大手生保と比べて保険料を半額にして、創業5年で契約件数は18万件を超え、海外の保険会社からも問合せが増えています。

一般に「価格勝負は避けるべきだ」と言われています。シェアが一番大きい企業だと固定費を下げることができ、業界で一番安く提供できるからです。

ではなぜ新興企業のライフネット生命は、大手生保の半額で保険を提供できるのでしょうか?

 

その理由は、大手生保と比べて、はるかに低いコスト構造を実現できているからです。

保険料は純保険料(保険給付金の原資)と、保険会社の手数料(人件費、店舗費、光熱費、他)から構成されています。

ライフネット生命は、この構成の内訳を業界で初めて公開しました。

例えば30歳の男性が期間10年で3000万円の死亡保険に入ると、保険料は毎月3484円。うち純保険料は2669円。手数料は815円。

これが大手だと2倍の7000円前後になります。純保険料はどこも同じ。ですから大手は手数料が4000円を超えているのです。

その理由は大手生保のGNPと言われている販売方法です。「義理・人情・プレゼント」ですね。手間がかかる保険の販売方法は、純保険料を上回る手数料を必要とし、高い価格になってしまいます。

ライフネット生命はネット販売に特化して、この部分をなくしました。だから手数料が安いのですね。

では大手生保も一気にスリム化できるか、というと、現在のしっかりと確立した販売チャネルは簡単には変えられません。

大手生保は、「100円のコーラを1000円で売る方法3」でもご紹介した、「イノベーションのジレンマ」に陥っているのです。

規制に守られた高い参入障壁が、大手生保が長年GNPと言われる販売方法を継続できた理由です。しかしライフネット生命はそこを直球勝負で突破して、風穴を空けました。

 

本記事の最後はこのように締め括っています。

—(以下、引用)—

価格競争の行き過ぎは保険経営の安定性を損なうが、価格の透明さが顧客本位の販売につながる。

—(以上、引用)—

ライフネット生命ホームページの会社情報には、

正直に
わかりやすく、
安くて、便利に。

と書かれています。

ライフネット生命は、あくまで顧客本位で考えることを原点に、強いパッションと実行力で様々な壁を突破できたからこそ、半額のサービスを実現できたのですね。

 

 

【金田・長嶋・王 連名のサインボール】お客様に期待以上のサプライズをお届けするために、全力を尽くしているか?

2013/7/8の日本経済新聞夕刊のコラム「こころの玉手箱」を拝読しました。今週はイトーヨーカ堂の亀井淳社長です。

今回、亀井社長が紹介しているのは、金田正一・長嶋茂雄・王貞治 連名のサインボール。

巨人軍関係者も、この巨人軍黄金期を支えたスーパースター3名連名のサインボールは見たことがないそうです。

なぜ、このようなサインボールを亀井社長は持っておられるのでしょうか?

 

亀井さんは、金田さんと家族ぐるみの付き合いでした。

2001年2月、金田さんから「長嶋に会いに宮崎キャンプに行こう」と連絡があり3人で食事をした際、金田さんは長嶋さんからボールをもらって、長嶋さんと自分のサインをし、そのままポケットにしまいました。てっきりもらえるものと思った亀井さんは、肩を落としたそうです。

夕方、東京に戻ろうとすると、金田さんは「ちょっと沖縄に行ってくる」と突然消えました。ここでも一緒に戻ると思っていた亀井さんは肩すかし。

2週間後、お礼も兼ねて金田さんと東京で会うと、金田さんはポケットからボールを取り出し「沖縄でキャンプ中の王にも書いてもらった」と3名連名のボールを亀井さんに渡します。

コラムでは、亀井さんはこのように書いておられます。

—(以下、引用)—

 「プロだ」と思った。期待を上回ることをさりげなく行う。人を喜ばせるために全力を尽くす。改めて自分の仕事に置き換えて考えてみた。

 お客様に期待以上のサプライズをお届けしているのか。サプライズとはどのようなものなのか。お客様の立場でサプライズを考えているのか。

 スーパースター3名連名のサインボールは小売業の原点も教えてくれている。

—(以上、引用)—-

「100円のコーラを1000円で売る方法」でご紹介した、顧客満足の式は下記の通りです。

顧客満足 = 顧客が感じた価値 ー 顧客の事前期待

事前期待を圧倒的に上回る価値を顧客が感じた時に、サプライズが生まれます。

プロは常にこれを実現しようと、全力を尽くしているのです。

 

自分は、お客様にサプライズをお届けするために、本当に全力を尽くしているのか?

コラムを拝読し改めて肝に銘じようと思いました。

 

 

Appleの日経広告に感動

先週、日本経済新聞に掲載されていたAppleの2ページ見開き広告が秀逸でした。

 

なにかいいことがあったのでしょう。車の中で、女性が嬉しそうにこちらを向いてiPhoneを構えて撮影しようとしている、2ページ見開きの写真。

その左側にこんなメッセージが掲載されていました。

—(以下、引用)—-

これだ。
これこそが、大切なんだ。
プロダクトがもたらす体験。
人が何を感じるのか、ということ。
そのあるべき姿を思い描くとき、
一歩引いて、じっくりと考える。

これは、誰のためになるのか?
生活をより良くするのか?
存在する価値があるものなのか?
あらゆるものを作るのに追われていては、
完璧なものなどできやしない。

私たちは、偶然なんて信じない。
ましてや、まぐれなんて。
ひとつの「YES」の前には、
数えきれないほどの「NO」がある。
私たちは、数少ない素晴らしいものだけに、
膨大な時間を注ぎ込む。
手がけるすべてのアイデアが、
それを手にする人の暮らしを輝かせるまで。

私たちはエンジニアであり、アーティストである。
職人であり、発明家である。
私たちは、サインを刻む。
あなたは気づかないかもしれない。
けれども、いつも感じ取っているはずだ。
これが、私たちのサイン。
それは、すべてを語る。

Designed by Apple in California

—(以上、引用)—

 

考えてみると、7年前までApple製品はひとつも持っていなかった私は、現在、多くのApple製品を使っています。

iPod
iPhone 3GS→ iPhone4 →iPhone5
MacBook Air (11インチ) →MacBook Air(13インチ)
TimeCapsule
AppleTV

今や、どのApple製品も自分にとってなくてはならないものになりました。確かにApple製品を使っていて、この広告のメッセージの意味はよく感じ取れます。

 

「ジョブスなき後のAppleはどうなるのか?」と言われるこの時期、まさに必要とされているメッセージ。

まさに、企業広告です。

 

そして、これは社会へのメッセージであると同時に、Apple関係者に対するメッセージでもあるのでしょう。

ジョブスの遺伝子が、Appleに着実に残されていくことを願っています。

 

 

 

日経広告 & 8/25出版記念セミナー

本日2013/7/5の日本経済新聞で、「100円のコーラを1000円で売る方法3」の広告を掲載いただきました。有り難うございます!

20130705formatted

この広告にも紹介されていますが、8/25(日)午後に中経出版様主催で、出版記念セミナーを行います。プチ演習付きです。

日本IBMで元同僚だった清水久三子さんとの合同セミナーです。清水さんも、同じ中経出版様より7月に「外資系コンサルタントのインパクト図解術」の出版を予定しておられます。

 

こちらから申込みいただけます。(なお、有償セミナーです)

もしよろしければ、是非どうぞ。

 

 

新しいことに挑戦する時は、資源も少ないし抵抗があるのは当たり前。そこで2割に集中

2013/7/2の日本経済新聞の記事『経営書を読む 「ブルー・オーシャン戦略」』で、慶応大学ビジネススクールの清水勝彦教授が次のように書いておられます。

—(以下、引用)—

最も大切なのは「資源の少なさや抵抗を言い訳にしないこと」です。組織改革にしても新しい戦略の実行にしても、抵抗があるのは当たり前。できない言い訳にしてはなおさらだめです。

—(以上、引用)—

まったく同感です。

ある程度の大きさの企業であっても、資源や予算・人員が潤沢にあることは稀です。私自身、何か始めるときにはヒト・モノ・カネが非常に限られた中でやり繰りしていました。

また、抵抗がないケースも稀です。組織や人は、今と同じことを続けようとする性質を持っています。組織は、そもそも新しいことをしようとしても、なかなか動かないように出来ているものなのです。

だから新しいことをやろうとするときに、「ヒト・モノ・カネがない」「xxxが抵抗してできない」ということは、当たり前なのです。

「あ、今度新しくそれをやるの?じゃぁ、ヒト・モノ・カネはこれだけ使っていいよ」「どんどんやりなさい。サポートしてあげるから」というようなことは、残念ながらほとんどありません。

そういう中で、どうやって知恵を絞り、一歩を踏み出すかが大切なのです。動き始めて成果が出てくれば、ヒト・モノ・カネは自然とついてきますし、当初の抵抗も弱くなっていきます。

 

では、どうすればよいのか?

記事では具体的に処方箋を書いています。

—(以下、引用)—

そうした..ハードルを乗り越えるのがティッピング・ポイント・リーダーシップです。それは「どのような組織でも、一定数を超える人(一般的に2割などといわれます)が信念を抱き、熱意を傾ければ、そのアイデアは流行となって広がっていく」のを認識し、「拡散でなく集中」を考えるリーダーのことです。

—(以上、引用)—-

全員ではなく、全体の2割程度の人たちに働きかける。但し機会は公平に提供し、強制せずに自発性に任せる。そして継続する。

ささやかな例ですが、私自身も経験しています。

私の場合は、職場での早朝勉強会でした。

社外から選りすぐりのゲストスピーカー(オルタナブロガーの坂本さん・大木さん、他にも、ライフネット生命の出口さん、かものはしプロジェクトの村田さん、松山真之助さん、辻口さん、ループスの斉藤さん、元日本IBM会長の北城さん)にご協力いただき、全員にご案内して実施。それを1年間継続しました。

早朝から集まったメンバーは2割程度でしたが、確かにこの2割の人たちを中心に、徐々に組織の雰囲気が変わり、広がっていくことを実感しました。

 

たとえヒト・モノ・カネがなくても、抵抗が大きくても、やり方次第で改革する方法は必ずあります。

小さくても、まずは第一歩を踏み出すことが大事なのではないかなと思います。

 

 

生き残ろうと思って差別化しようとしても、結局、差別化できない理由

「生き残りのために差別化しよう!」と号令がかかる場合があります。

しかし世の中で実際に差別化で成功している事例を見ていると、「生き残り」を「差別化」の目的にするのは、ちょっと違うような気がします。

 

たとえば、格安航空会社(LCC)の走りだったサウスウェスト航空。1967年創業です。

人件費以外のコストを徹底削減し高収益、黒字経営を続けており、米国で唯一、同時多発テロ以降もレイオフしていない大手航空会社です。

機内食、指定席、ビジネスクラス、別航空会社への手荷物転送を廃止し、発着時間は15分間隔で高稼働率、近距離用旅客機のボーイング737で標準化して保守効率抜群です。徹底した差別化を図っています。

創業当時、米国の都市間を飛行機で移動しようとすると、直行便がなく、ダラスなどのハブ空港を経由する必要がありました。料金も高いし、不便だったのですね。

そこで創立者の一人であるハーバート・ケレハーが「運賃が安く、定時運航率が優れていて便数の多い航空会社なら成功する」と考えて、サウスウェストが生まれました。

 

業務用ミラーで国内シェア8割のコミーも、徹底した差別化を図っています。しかし創業当初は看板を受注製作する会社でした。

ある展示会に、アクリル製の凸面鏡をはりあわせた回転看板を試作して出展したところ、あるスーパーから30個の大量注文が入りました。

実際にどのように使っているか聞いたところ、使用目的はなんと「万引防止」でした。コミーが受注生産型の看板業から、商品開発型のミラーメーカーに脱皮するきっかけは顧客の声だったのですね。

 

顧客の課題は、多様化しています。

差別化で成功している色々な事例を見ていると、顧客の解決できていない課題を拾っていくと他社と違うことを行わざるを得ず、そしてお客様が喜び、結果的に差別化されているように思えます。

つまり差別化は、多様な顧客の課題を解決し、よりよい社会を創り上げようと努力した積み重ねの結果なのでしょう。

顧客のことを考えず、「生き残るために差別化しよう!」を出発点に考えると、結局は差別化できないし、生き残ることもできないのではないかと思います。

 

 

顧客絶対主義と顧客中心主義は、どこが違うか?

「顧客絶対主義」と「顧客中心主義」は、ともに「顧客はとても大切」と考えている点は同じです。

しかしアプローチが異なるのです。

 

顧客絶対主義は、「顧客は絶対正しいし、間違わない」と考えます。

ですのでたとえ無理難題でも出来る限りすべての要望に応えようとします。

「ちょっと高いなぁ」と言われると快く値引きすることもあります。

顧客の言いなりになった結果、低収益に陥ります。

 

顧客中心主義は、「顧客は間違えることもある」と考えます。

ですので間違った要望には対応せず、その代わり顧客が気がつかないような課題に対して提案をします。

「ちょっと高いなぁ」と言われると、「そうなんです。高いんですよね」と応えることもあります。

顧客に高付加価値を提供する結果、高収益になります。

 

背景にあるのは、顧客満足の式です。

顧客満足 = 顧客が感じた価値 - 顧客の期待値

顧客絶対主義は顧客の期待値にすべて応えようとします。顧客が感じた価値が期待値を越えることはありません。だから顧客満足は0点以下です。

顧客中心主義は顧客の期待値を越えようとします。だから顧客が感じた価値が期待値を越えて、顧客満足はプラスになるのです。

 

かつての豊かでなかった時代は、顧客の期待値を満たそうとしていれば問題はありませんでした。だから顧客絶対主義でよかったのです。

しかし豊かで、競争が激しい時代は、顧客は様々な選択肢や情報を持っています。顧客の期待値を満たさないのは「そもそも問題外」。顧客の期待値を満たすのは「当たり前」なのです。顧客の期待値を大きく越えることが求められているのです。

ジョブスがいたころのアップルは、決して顧客の言いなりになりませんでした。しかし顧客の期待を大きく越える製品を出し続けていました。まさに顧客中心主義を徹底していたといえるかもしれません。

 

 

「こんなのオモチャじゃん」…しかし新たな顧客が生まれていることが怖い。それは日本が20年間苦しんできたこと

市場に現れた新たなライバルが、まったく新しい商品を出してくる場合があります。

最初は性能が低くて、既に市場でシェアを握っている立場から見ると「こんなのオモチャじゃん」と思ったりします。

しかしその商品で、これまでユーザーでなかった新しい顧客が生まれたとしたら….それは市場の覇者にとって、実は大きな脅威なのです。

 

例えば、30年前に登場したパソコン。

登場した当時は「こんなのオモチャ」と言われました。当時はコンピュータと言えば、大型コンピュータやオフコン。しかしその後、エンドユーザーが使いはじめ、パソコンはIT市場を大きく変えました。

 

また、トランジスタラジオ。

1950年代は、ラジオと言えば真空管ラジオ。大きなもので電力消費も多く、家庭で家族が聴きました。トランジスタラジオが登場した当初、真空管ラジオを聴いていた顧客は、「確かに小さいけど音質も悪いしオモチャ」と思いました。

しかしトランジスタラジオを買った顧客がいたのです。ロックンロールが大好きな若者でした。親の目が届かないところで聴くためです。その後、トランジスタラジオは性能が向上して真空管ラジオを駆逐しました。

 

市場の覇者が新たな商品を「こんなのオモチャ」と思っても、これまで使ってこなかったユーザーが新たな顧客になった場合、それは将来的には大きな脅威なのですよね。

これは「イノベーションのジレンマ」と呼ばれているものです。

イノベーションのジレンマは英語ではInnovator’s Dilemma. つまり本来の意味は「イノベーターのジレンマ」です。イノベーションを起こしたイノベーター自身が、新たなイノベーションに対応できずに陥ってしまうジレンマのことなのですよね。

 

来週出版される「100円のコーラを1000円で売る方法3」は、この「イノベーションのジレンマ」をテーマにしたものです。

「イノベーションのジレンマ」はやや難解な理論です。

本書は、その「イノベーションのジレンマ」について書かれた世の中にある本の中で、恐らく一番わかりやすい本になったと思います。

 

ここ20年間、日本企業が低迷する大きな理由の一つは、リスクを取ってイノベーションに挑戦していないことだと思います。

まさに日本全体が「イノベーションのジレンマ」に陥っています。だからこそ、今、日本にイノベーションが必要な時期なのです。

本書が少しでもお役に立てればと思っています。

 

 

お客さんの要望が、進化の源泉

大木さんが「お客さんの言いなりvsお客さんの言うことをきかない、どっち?」というエントリーを書かれています。なるほどと思いました。

「お客さんの言うことなんて聞かないよ」
「当社は、お客さんが言うことは絶対なんです」

大木さんが紹介されていた例は、一見正反対に見えますが、お客さんに提供する価値をしっかりと考えている点は共通しています。

お客さんに提供する価値を深く考えずに、自分勝手に作っていたり、お客さんの言うことを鵜呑みにしていることがいけないのですね。

 

本日2013/5/10の日本経済新聞「春秋」でも、同じことが書かれていました。

東大阪には会社の看板と実際に作っているものが違うことが多いそうです。たとえばフセラシ社。螺子(ラシ)とはネジのこと。しかしこの会社は世界に7つの大工場を持ち、この会社の部品がないとスマホもハイブリッド車も作れません。

「春秋」はこのように締め括っています。

—(以下、引用)—

なぜ社名と仕事が異なるのか?東大阪の職人がよく口にする言葉が「どないかします」である。こんな部品をつくれるかと聞かれれば、決して無理とは言わない。次々と大企業の要望に応えていくうち、いつのまにか「本業」からずれていった。偽りの看板は進化の証しでもある。さて、大企業の方は進化しているのだろうか。

—(以上、引用)—-

お客さんは無理難題を言うものですし、その高い要望に応え続けるのは、本当に大変ですが、このおかげで生物が環境に適応して進化するように、企業も進化するということは、実感します。

  

 

「グローバル時代の日本のものづくり」…工業デザイナー・奥山清行さんインタビューから

2013/5/5の日本経済新聞の記事「日曜に考える 日本の個性 世界にどう売り込む」で、工業デザイナーの奥山清行さんのインタビューが掲載されています。

奥山さんはイタリア人以外で初めてフェラーリをデザインした方です。

日本のものづくりに今求められていることを、ズバッと語っておられます。

—(以下、引用)—

ーものづくりで世界に勝つには何が必要でしょうか。

「想像力とビジョンだ。(中略)レストランでシェフから『何を作りましょうか』と聞かれても客は魅力を感じない。自分が知らない世界を見たいと思っているからだ」

「….目の前にいない未来の消費者が何を求めるようになるのか。それをいち早くつかんだものが、市場の勝者になれる」

—(以上、引用)—-

これは「100円のコーラを1000円で売る方法」でも書いた「顧客の言いなりになってはいけない」ということですね。

たとえば1年間に国内で新販売される清涼飲料水は二千種類もあります。これらはすべて商品開発チームが慎重に企画を立てて開発した商品です。

しかし消費者に「この1年間で新発売された清涼飲料水は何?」と聞いても、ほとんど思い出せないのではないでしょうか?

現代は非常に多くの業界で競争が激化していて、顧客から見ると似たような商品が沢山あるのですよね。

このような状況で顧客の言いなりになっているかぎり、顧客の期待値を超えることはできません。

とは言え、顧客の一歩先に行くと早すぎます。半歩先で仕掛けて、実際に商品を「欲しい」と思ったタイミングで提供することが求められているのですね。

 

一方で市場がグローバルに広がっています。奥山さんはこのことについても語っておられます。

—(以下、引用)—

「僕が日本のものづくり再生の武器に使っているのは、外国の権威を利用した『黒船効果』。国産スポーツ車はジュネーブ国際自動車ショーに、家具や工芸品はミラノの国際家具見本市に出展している。認めてもらえば世界市場と直結して仕事ができる。黒船効果は中国など新興国に売り込むのにも極めて有効だ」

—(以上、引用)—-

自分で個別に売り込むのではなく、皆が集まっている場所に出向いていくということです。グローバルで勝負する機会は意外とあるのですね。

米国ではなくジュネーブやミラノといったヨーロッパの都市が出てきたのは結構意外でした。ヨーロッパで活躍されてきた奥山さんならではです。やはり文化面では相変わらずヨーロッパが世界をリードしているということなのでしょう。

—(以下、引用)—

「想像力は日本人の得意分野。相手の心情を推し量る能力は世界でもトップ級だ。….自己中心的でない客目線のものづくりが求められている。若者に広がる内向き志向は言語道断。海外に出て自分を客観視する経験を積まなければ、日本のものづくりに未来はない」

—(以上、引用)—-

今や、グローバル化は「すべきか、どうか」という時期は過ぎ去って、「どのようにするか」という時代です。

グローバル化を意識するかどうかは、企業の問題であると同時に、個人の問題なのかもしれません。

 

 

スイッチングコストの視点を持つと、戦略作りにとても役立つ

テキサス大学サンアントニオ校のアソシエイトプロフェッサーである清水勝彦著「戦略の原点」(日経BP社)を読んでいます。

清水先生も冒頭で「経営の九九を教える」とおっしゃっている通り、非常に基本的な、しかしビジネスで実際に使える戦略の基本をまとめていて、とても共感しました。

本書の第三章「企業の外部環境分析」の中で、スイッチングコストについて触れています。

スイッチングコストとは、「顧客が商品あるいは売り手を替える際に発生するコスト」です。

たとえば賃貸。

引っ越しするのはお金も手間も時間もかかります。さらに契約関係や電気、水道、ガス、電話などの契約更新も面倒です。ですので、ちょっといい条件の賃貸があっても、引っ越すことなくそのまま住み続けることが多いのではないでしょうか?この引っ越しに伴うコストが、まさにスイッチングコストです。

本書でとても興味深かったのは、色々なことがスイッチングコストの視点を持って考える意味が見えてくることです。

特に気になったポイントを、箇条書きでまとめてみます。

■戦略の本でスイッチングコストについて深く言及しているものはまれだが、実はたいへん重要かつ本質的な概念である

■スイッチングコストは戦略作りに非常に重要な示唆を与えてくれる

■「顧客の囲い込み」と言われているのは、まさに顧客のスイッチングコストを上げることにほかならない

■スイッチングコストが低い場合、基本的な競争は価格だけになる

■スイッチングコストが高い業界では、初めてのユーザーを獲得することが非常に重要。成長中の業界や毎年新しい顧客が生まれる業界では、初めてのユーザーを獲得するために様々な施策が考案されている(10年ほど前にYahoo! BBでADSLモデムを無償で配ったのも同じ)

 

なるほど、と思いました。

本章の最後で、『「分析」は出発点であって、戦略では決してない』とあるのも、まさにそうだと思いました。

ともすると「分析したから後はよろしく」となってしまうケースがありますが、本来はその分析を元に何をするのかを考え、そして実行して初めて意味があるのですよね。

 

半分まで読みましたが、ビジネスパーソンにとって実用的な戦略本だと思います。

 

 

 

iWatchで、Appleは時計を再定義できるか?

やや古い記事ですが、下記のような噂があります。

「iWatch」に求められる9つの項目–誰もが欲しがるスマートウォッチになる条件

アップルの取締役、「iWatch」のうわさに言及

AppleがiWaitchを出す意味は何でしょうか?

 

7年前の2006年、当ブログで「あなたは腕時計、していますか?」というエントリーを書きました。下記はそのサマリーです。

■腕時計装着率は、1997年の70%から2005年に46%へ低下した

■2005年腕時計市場は5886億円で前年比8%増。7割がスイス製高級品

■腕時計の価値が「現在の時刻を知る」から「自分自身を表現する」へと再定義され、市場が拡大した

 

このエントリーを書いてから7年間が経ちました。

相変わらず私も腕時計をしていませんし、腕時計をしている人は増えていないように思います。

一方で腕時計市場にはスマートウォッチも出始めています。機は熟しています。

 

Appleはこれまで、音楽プレイヤーをiPodで、電話をiPhoneで、それぞれ再定義してきました。

ただし先行プレイヤーではなく後発プレイヤーとして参入、大がかりな仕掛けと抜群の使い勝手で市場を席巻しました。

このように考えると、Appleが次に再定義するのは腕時計、というのは自然な流れなのかもしれません。

 

ジョブスなき現在、iWatchで時計を再定義できるかどうかが、今後のAppleがイノベーションを継続できるかどうかの試金石になるのかもしれませんね。

 

 

「クラウド化の流れは近いうちに止まる」…それは事物がらせん的に発展しているから

日経ITProに「『クラウド化の流れは近いうちに止まる』、ガートナーがITの近未来を予想」という記事が掲載されています。

ガートナー ジャパン主催イベントの基調講演で、ガートナー フェローのスティーブ・プレンティス氏が「今後5年間でITに影響を与える最重要トレンド」と題して話した内容の一部です。

記事では以下のように書かれています。

—(以下、引用)—

「2014年までに、SaaSを利用する企業の30%がサービスレベルの低さを理由にオンプレミスに転換する」—。

プレンティス氏の予想では、これまで先進企業が積極的にけん引してきたクラウド化の流れが、近い将来に止まるという。重要なシステムは社内に置きなおすべきだと考える企業が増え、2014年までに、ITサービスベンダーのトップ100社中20%が市場から姿を消すと予測する。

—(以上、引用)—

 

「クラウドはなくなる」と言っているのではなく、「クラウドへの過度な期待は徐々に収まり、オンプレミスへの揺り戻しがある」と言っているのですね。

 

これはまさにヘーゲルが述べた「事物のらせん的発展」です。

「事物のらせん的発展」は田坂広志著「使える弁証法」に詳しく書かれていますが、ここで簡単にご紹介します。

「ものごとは直線的に発展するのではなく、あたかもらせん階段をあがるように発展する」という考え方です。

らせん階段を登る人を横から見ると、上に向かって登っていますが、上から見ると円を描いて歩いています。

例をあげると、昔は定価がなく「指し値」や「競り」で物品を販売していました。この方法は非効率なので近代産業社会で一旦消えました。しかしインターネットの発達で「ネットオークション」という形で復活しています。一見すると昔懐かしい「競り」の復活ですが、「競り」は参加者はその場にいる人たちだけでした。ネットオークションでは世界中から参加できます。つまり新しい性質を獲得しているのです。

ある事象(競り)が、新しい事象(近代産業社会)で否定されて消え、その新しい事象が再び否定されて新しい性質を獲得して復活する(ネットオークション)。

このように原点回帰しながら、あたかもらせん階段を上がるように世の中は発展しているのです。

  

このように考えると、このクラウド化の流れの位置づけも分かるのではないでしょうか?

■1940年代に生まれたコンピューターは、集中処理でした。全業務は大型コンピュータで処理されていました。当初のユーザーインターフェイスはパンチカードや紙、後に専用ディスプレイになります。ユーザーインターフェイスは貧弱で全く融通性がありませんでした。

■1970年代にパソコンが生まれました。それが1980年代後半から1990年代に分散コンピューティングという考え方に進化します。ホスト集中処理は「クライアントサーバー」という形態に変わります。「ホストコンピュータは死んだ」と言われたのもこの時代。「エンドユーザーコンピューティング」という言葉も生まれたように、ユーザーインターフェイスの大幅な改善が図られました。

■一方で1960年代にARPANETとして産声を上げたインターネットは、パソコンに一足遅れて1990年後半から一般普及が始まります。社内全社員のパソコンに専用ソフトを導入管理するのは大変でしたので、PC側に専用クライアントソフトを導入せずに、Web経由で使う形態が普及し始めます。そしてリッチクライアントという考え方も生まれます。

■2006年にGoogleのエリック・シュミットが「クラウドコンピューティング」という言葉を使い始めて、クラウドの考え方が普及し始めます。社内に沢山のサーバーを置くのではなく、クラウドでまとめてしまおうという考え方です。昔懐かしい集中処理の復活です。しかしリッチクライアントと組み合わせることで、ユーザーインターフェイスは格段に向上します。そしてパブリッククラウドとして社外にデータを預ける動きが出てきました。

■そして記事にあるように、再びオンプレミスに回帰していく。その時のオンプレミスは、クラウド技術やリッチクライアントを活用したものになっていることでしょう。(いわゆるプライベートクラウドですね)

 

このように時間軸を広げて俯瞰して見ると、改めてIT業界はらせん的発展を遂げていることが分かります。

 

「事物のらせん的発展」という考え方は、IT業界で起こっている様々な事象が大きな歴史の中でどのような意味があるのかを思索する上で、ヒントを与えてくれると思います。興味のある方はご一読をお勧めします。

 

 

 

経営学の学術論文は、ダイヤモンドの原石

日経ビジネスオンラインに、米ニューヨーク州立大学バッファロー校の入山章栄助教授が「MBAの本は、なぜ進歩がないのか 経営学に貢献すべきは学者ではなくビジネスパーソンだ」という記事が掲載されています。

この記事で、多くのビジネスパーソンが意外に思われるであろう点は、「『ハーバード・ビジネス・レビュー』は、米国の経営学では学術誌とは認められていない」ということ。

いわゆる学術誌では、(1)理論分析→(2)統計分析による実証研究をまとめた論文が投稿され、審査員が認めれば学術論文として掲載されます。

しかしこれだけではビジネスになかなか役立ちません。

経営学は実学だからです。だから学術論文に掲載された理論を、ビジネスパーソンが実務で使えるように「分析ツール」として落とし込む必要があります。

「分析ツール」とは、例えば、多角化戦略で活用される「BCGマトリックス」や、ポーター教授の「5つの力分析」のようなものです。

このような実務論文をまとめて、経営学者とビジネスパーソンの橋渡し役をしているのが『ハーバード・ビジネス・レビュー』。

学術論文誌ではなく、実務論文誌なのですね。

 

一方で記事では、「学術分野では、経営学はこの20年でめざましい進歩を遂げたが枝葉のものが多く、実践で役立つ『幹』の部分はたとえば競争戦略ではいまだにポーター教授の理論が主体になっている等、あまり変わっていない」としています。

そして以下のようにまとめています。

—(以下、引用)—

「学術的な成果を背景にした経営分析ツールを開発する」分野は、実はかなりのポテンシャルがあるはずです。

 そしてこの意味で私が期待しているのは、学術論文を書くことに忙しい学者ではなく、こういったことに問題意識のある実務家やコンサルタントです。こういった方々が、たとえば拙著で紹介したような学術論文を読まれて、そこから自身の実務的な知見をもとにビジネスで使える分析ツールを開発するという分野が発展するなら、それはとても素晴らしいことではないでしょうか。

(中略)

私は、ぜひ意欲のあるコンサルタントや実務家の方々に、もっと世界の経営学のフロンティアの学術論文を読んでいただいて、そこから得られる知見からツールを生み出してもらえないだろうか、と期待しています。欧州経営大学院(INSEAD)のチャン・キム教授風に言えば、これは、まさに「ブルー・オーシャン」の分野なのかもしれません.

—(以上、引用)—

このように考えると、経営学の学術論文は、ビジネスパーソンにとって、実はダイヤモンドの原石なのかもしれません。

 

 

アウタースケールの視点を持つこと

フェルディナント・ヤマグチさんが日経ビジネスオンラインで「日産GT-Rの水野氏が退職、緊急インタビューを敢行! GT-Rをヒュンダイのクルマが超える日は来るかというインタビュー記事を書いておられます。

このインタビューで、日産を退職された水野さんは次のように語っておられます。

—-(以下、抜粋)—-

水:それでも、GT-Rの本当の価値を日産のなかで一番理解しているのは、やはりゴーンさんでしょうね。あの人は“アウタースケール”を持っているから。

F:アウタースケール、ですか。

水:そう。アウタースケール。自分の会社のことでも、一歩離れて外部から客観的に測れる目のことです。反対はインナースケール。近視眼的に既定のことしか見えない。分からない。理解しようとしない。

—-(以上、抜粋)—-

なるほどなぁ、と思いました。

ともすると会社の中にいると、コミュニケーションが身の回りの人達だけになり、まさにインナースケールになりがちです。

だから積極的にお客様と商談以外にも様々な会話をしたり、社外のコミュニティに参画したり、自分自身で情報発信したりすることで、アウタースケールを持つことは、世の中の変化がますます速くなっている現代で大切ではないかと思います。

 

 

世の中の人は、びっくりするほど私たちの製品を知らない

私は会社の中で様々な製品を企画したり、開発したり、マーケティングを担当してきました。

会社で製品を担当している立場だと、世の中の人は「きっと製品のことを分かってくれる」と思いがちです。実際、私もそう考えていました。

しかし実際には驚くほど、世の中の人は自分たちの製品をご存じないのです。

そこでちょっとした実験です。

 

例えば、あなたは年間どれだけの数の清涼飲料水が発売されると思いますか?

ちょっと考えてみて下さい。

…..

…..

答えは2000種類です。想像していたよりも一桁多いのではないでしょうか?

 

ここでもう一つ質問です。ではあなたはこの1年間で新発売された清涼飲料水をどれだけ覚えているでしょうか?

おそらく数種類も覚えていないと思います。 

私たちは誰もがみな、消費者でもあります。

私たちは消費者の立場では、企業が提供している商品を驚くほど知らない。

 

しかし同じ人が製品を提供する立場になると、不思議なことに「きっと分かってくれる」と思ってしまうのです。

 

 

「マーケティング・パラダイムの4つの変化」

SEO Japanに「マーケティング・パラダイムの4つの変化」という記事が掲載されています。

その四つの変化は下記です。

・ソーシャルビジネス
・従業員のブランディング
・体験を届ける
・データ駆動型マーケティング

記事では、「全てのマーケティング・エグゼクティブはこれらのマーケテティング・パラダイムを採用しなければ、それを採用している競合相手に顧客選好で負ける危険がある」とあります。

オリジナルは"THE MARKETING PARADIGM HAS SHIFTED FOR CONSUMERS AND BRANDS"です。

 

実はこの記事を拝読してとても驚いています。

これら4つのテーマは、数ヶ月後に出版予定の新著でカバーしているテーマでもあります。(偶然の一致ですが)

今回の本も、世の中の様々な動きを見て、実際に体験したことをもとに書いたものです。少しでも皆様のお役に立てればと願っています。

 

 

「外食揺さぶる『俺の』革命」—よそ者がイノベーションを起こす時代がやってきた

本日2013/3/18の日本経済新聞のコラム「経営の視点 外食揺さぶる『俺の』革命」で、東京・銀座を中心に低価格で高級料理を提供する「俺のイタリアン」「俺のフレンチ」を運営する「俺の株式会社」が紹介されています。

「俺のイタリアン」や「俺のフレンチ」は、時々街で見かけていたので気になっていました。

—(以下、引用)—

立ち食いが中心の店内では、フォアグラやキャビアなどを使ったメニューが一皿1000円前後と高級店の三分の一程度。女性客を中心に平日から行列ができ、1ヶ月後の予約も即日満員になる。

……

外食チェーンは原材料の仕入れコストを通常、売上高の3−4割に抑えるが、「俺の」シリーズでは低価格で高級料理を出すために6割を目安とする。….

当然高コスト体質だが、立ち食い中心の利点がここで生きる。利用客の回転率が速く、売上でコストを吸収する。平均所得の高いビジネスパーソンが集まる銀座に集中出店し、食材の融通もできる。開店2ヶ月以上の店は全て黒字で、今後も出店を加速する。「業界の常識は分からないことが功を奏した。株式上場も目指す」(坂本氏)

….組織の活性化には新しい視点を持つ「若者」「ばか者」「よそ者」が必要というが、若者の数が減る時代。よそ者視点を備えた企業は強い。

—(以上、引用)—-

コラムを読んで、まさにイノベーションを起こして新しい顧客を創造していることが分かりました。

従来のフレンチレストランへの影響が興味あるところです。

従来のフレンチレストランの顧客は、美味しい料理を楽しみたいというニーズに加えて、ゆっくりと食事を楽しみたいというニーズもあるように思います。

前者のニーズは「俺の」シリーズに吸収されるかもしれませんが、後者のニーズは従来のフレンチに残るのでなないでしょうか。

さらに新規顧客が創造され、全体的に高級フレンチの市場が拡がることを考えると、従来型フレンチにとってもメリットはあるかもしれません。

コラムではさらに白物家電に参入して成長を続けるアイリスオーヤマの大山健太郎社長の言葉も引用しています。

—(以下、引用)—

「国内の家電メーカーは掃除機の開発では掃除機の観点しか考えない。アイリスは生活者の視点と日々の売れ筋情報から開発を始める」

—(以上、引用)—

よそ者がイノベーションを起こし、活躍する時代がやってきたのではないでしょうか?

 

 

全ての答えは現場にある

現場から離れたところでいくら考えてみても、答えは見つからないのですよね。

一方で、現場だけにいてもなかなか気がつかないことも多いのです。

 

しかし実は現場の方々は答えを持っているのですよね。

だから問題解決思考の方法論を学び、多様な視点を持って現場で答えを探すことで、様々なことが見えてくる。

一見すると解決不可能に見えた問題も、意外と容易に解決できる。

さらにある程度の大きな組織だと、複雑に見えるコミュニケーションを丹念に追ってシンプルにすることで、様々な課題が紐解けて解決できる。

 

これは最近、社内・社外の両方で本当に実感しています。

 

 

新たな覇者も盤石ではない。だから挑戦し続けることが強み

クリステンセンが提唱する「イノベーションのジレンマ」は、新たな覇者が全く新しい顧客を創造し、既存顧客しか見えていなかった古い覇者を置き換えていくプロセスです。

しかし新たな覇者も盤石ではありません。その後、さらに新しい顧客を創造した、さらに新しい覇者に置き換えられていきます。

クリステンセンは、代替わりが激しいハードディスクを事例として詳細に検証し、8インチ、5.25インチ、3.5インチのハードディスクのトップシェア・ベンダーがいかに目まぐるしく入れ替わっていったかを提示しています。

これは私たちも同じこと。

しかもこちらでご紹介したように、ヒット商品の寿命は、1970年代の5年以上から2000年代は2年以下に短縮しています。覇者でいられる期間はますます短くなっているのです。

私たちは、常に挑戦し続けること自体が強みとなる時代にいるのかもしれません。