永井孝尚ブログ
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chatGPTの社内活用判断は、鳥取県庁に学べ

chatGPTが相変わらず大きな話題です。実に興味深いのは、組織によって対応が様々なことです。
まず組織で活用する事例が次々と出てきています。
・パナソニックHD:同社傘下のパナソニックコネクトが開発した対話型AIを国内グループ企業で活用できるようにしたと発表。9万人が対象。情報漏洩を防ぐため、社内情報や営業秘密、個人情報を入力しない利用ルールも整備。
・横須賀市:実証実験を開始。文章作成・要約・誤字脱字チェックから。
・農林水産省:一部業務(ウェブサイトのマニュアル書き換えなど)で活用開始。業務効率化を狙う。公表済みの情報のみ
・広島市:県行政で活用。庁内向けプレゼン資料作成、県民サービス広報を目指し活用方法・課題を探る。
・総務省:情報の取扱いに留意しつつ、試行開始。
・東京都:小池知事が「都政における活用のあり方について検討を深める」
・東大:太田副学長より「傍観せずに変化を先取りせよ」
一方で情報漏洩リスクから社員に注意を喚起している会社も多くいます。
・ソフトバンク:業務利用のルールを周知徹底。
・アマゾン:機密情報を入力しないように注意喚起
・みずほFGなどの大手銀行:社員が業務端末からアクセスできないように設定
明確に禁止する組織もあります。
・ニューヨーク市:公立学校の学内ネットワークで使用禁止
・中国当局:国内主要IT企業にChatGPTのサービスを提供しないように指示。(政権に批判的な回答をしかねないため)
・イタリア:一時的に禁止。個人情報保護の対策中。
・鳥取県庁:答弁資料作成、予算編成、政策決定などの件の業務で使用することを当面禁止。
一方で色々な企業様のお話しを伺っていると、現実には「ChatGPTって使ったことがないので、よくわからない。どうも情報漏洩するらしいが、それは困る。だから念のため社内使用は禁止しておこう」という企業様も結構多いようです。
このように整理すると、世の中でchatGPTの問題として大きく取り上げられているのは、情報漏洩ですね。
しかし情報漏洩は、しかるべき対策を取れば対応可能な問題です。実際にパナソニックHDではそのような対策を取っているようです。
私は、chatGPTを組織で展開する上での問題は、もう一段深いところにあると思います。
ここで参考になるのが、chatGPT禁止を打ち出した鳥取県・平井知事の発言です。
『「charGPT」じゃなくて「ちゃんと地道」に。自治体の意志決定に関わることは機械任せにしない。議会答弁で使うとか色々な構想が語られているが、それは民主主義の自殺だ。入力情報には個人情報も含まれるので、秘密保持の観点でも課題がある』
平井知事は、chatGPTの本質をよく考え抜いた上で判断しているように思います。
いまやAIは、それらしい回答をすぐに作ることができます。しかしこれは、全て過去の情報に基づいています。
そしてAIが答えるのは、ネット上にある「誰それがこう言った」というの「事実」に基づく情報のみ。言い換えれば、「真実」を検証しません。
「事実」と「真実」は異なります。
その「事実」(誰それがこう言った)が「真実」なのか、そして「人として正しいことなのか」を検証できるのも、人間だけです。
そして未来のことを考えられるのも、人間だけです。
つまりchatGPTを業務で活用するには、「chatGPTは、間違っている可能性が高い」という前提で使える人が、組織にどれだけいるのか、という問題に辿り着きます。
現実にはSNSのフェイクニュースに騙される人は、決して少なくありません。お恥ずかしいことに、私もフェイクニュースに騙され、Twitterでリツィートしてしまったことがあります。(後ほどお詫びとともに訂正しました)
「chatGPTの回答は、間違っている」という前提で検証し、活用できることが必要です。
そこで必要なのが「仮説検証思考」です。
「間違っているかもだけど、仮に答えを○○○としておこう」と考え、○○○を実際に検証し、間違っていたら即座に修正し、再度確かめる、という思考法です。
現実には、この仮説検証思考を身につけている方は、多くありません。そこで社内のchatGPT展開とあわせて、この機会に仮説検証思考の習得を社内で徹底し、chatGPT活用との相乗効果を図るのも、一つの方法だと思います。
私が気になるのは、chatGPT活用の解禁や禁止を発表する組織の中で、このことを明言しているのが「議会答弁でchatGPTを使うのは、民主主義の自殺」とまで踏み込んで発言する鳥取県の平井知事しかいないことです。
いまやAIビジネス活用の判断は、待ったなし。
だからこそ、私たちはAIの本質を考えていく必要があるのだと思います。
御社の社内では、chatGPTをどのように活用しますか?
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運は待ってもやってこない

「あー、自分は運が悪いなぁ」と嘆きたくなる時ってありますよね。
いいご縁に恵まれて成功する人を見て、「自分にもいい運が巡ってこないかなぁ」と思う時もあります。
こんな時は、成功した人を観察することですね。
実際に成功した経営者の多くが、「私は運が良かった」と語っています。
ダイソー創業者・矢野博丈社長は、日経ビジネス2017.12.11号で、こう述べています。
『昔は入社式で新入社員に「この会社、いつ潰れるか分からん」って言っとりました。最近は言うのをやめました。今は「運を付けなさい」と言っています。ワシは運が良かったんです。』
松下電器創業者の松下幸之助さんは、こう言っています。
「今日までの自分を考えてみると、やはり、90パーセントが運命やな。しみじみ運命やと思うな」
お話を聞くと、この二人は運が良かったように思えます。
一方で京セラ創業者の稲盛和夫さんは、創業時は悲運の連続でしたが、こう言っています。
「絶対に自分の将来は不幸だと思ってはなりません。自分の未来にはバラ色の幸運が待ち受けていると信じることが大切です」
さらにマクドナルド創業者のレイ・クロックは、こう述べています。
「幸運は汗への配当だ。汗をかけばかくほど、幸運を手にできる」
この二人の話を聞くと、どうやら運は待っていても、与えられるモノではなさそうです。
実際には「運が良かった」と言うダイソーの矢野社長も、かなり苦労されています。「食べることができれば…」と考えて起業したものの、会社がつぶれかけたり、夜逃げしたりして、40歳まで実家に生活の面倒を見てもらっていました。「自分は能力がないから、一生懸命目の前のことをやる以外に手がなかった」と述べています。こうした積み重ねの上で「運が良かった」とおっしゃっているわけです。
「90%が運命やな」という松下幸之助さんも、創業時は病弱で逆境の連続。身近にいた義弟の井植歳男さん(のちの三洋電機創業者)は、「働く熱意は人並み外れているが才能は平凡」と言ったほどです。しかし逆境のたびに危機をチャンスに変えて成長しました。
彼らは運を待つのではなく、運に働きかけているのです。
過去に起こったことは、どう転んでも変えられません。しかし未来は変えられます。
そして過去は変えらませんが、過去の解釈ならば、私たちの考え次第でいかようにも変わります。
そうして行動すれば、未来は変えることができるのです。
運がいい人は、そうやって運を作りだしているのです。
そしてそれは、私たちでもできることなのです。
運は待ってもやってきません。
自分で作り出すものなのです。
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朝活永井塾 第74回 『「無知の知」なんて言っていない? 「ソクラテスの弁明」』を行いました
4月5日は、第74回の朝活・永井塾。テーマは『「無知の知」なんて言っていない? 「ソクラテスの弁明」』でした。
「ソクラテス? 仕事やマーケティングとぜんぜん関係ないじゃん。そんなの学んでいるヒマないよ」と思いがちですが、実はこれは食わず嫌いです。リベラルアーツ(哲学などの一般教養)を学ぶと、ビジネスの思考力に深みが宿ります。
そしてソクラテスというと、必ず出てくるのが「無知の知」という言葉。
実はコレ、ちゃんとソクラテスを本を読んでいない人が陥る誤解です。
残念なことに世間で「知識人」と呼ばれる人でも、ご著書やSNSで『ソクラテスも「無知の知」といってます』と書いていたりします。
ソクラテスは本を1冊も残しませんでした。
ソクラテスの言葉をまとめたのは、弟子のプラトンです。
国際プラトン学会の会長も務めた世界的なプラトン研究の第一人者である東京大学の納富信留教授は、ご著書でこうおっしゃっています。
『「無知の知」は大きな誤解。海外ではこのような誤解はない』
ソクラテスは2400年も前の人ですが、ソクラテスをちゃんと学ぶことで、現代の私たちがビジネスや日常生活でも陥りがちな誤りについても気付くことができます。
そこで今回の朝活永井塾では、下記の本を使って、ソクラテスの世界をできるだけわかりやすく噛み砕いて学んでいきました。
『ソクラテスの弁明』(プラトン著、納富信留訳)
前回の「道元」が好評でしたので、今回もリベラルアーツ系のテーマを取り上げました。
ご参加下さった皆様、有り難うございました。
【プレゼン部分】


またリアルタイムに参加できなかった方々には動画配信をお送りしました。
次回5月10日(水)の朝活勉強会「永井塾」のテーマは『日本組織の特徴は何か? 中根千枝「タテ社会の人間関係」』です。申込みはこちらからどうぞ。
仮面ライダーが教えてくれる「危機は、飛躍のチャンス」

映画「シン・仮面ライダー」がヒット中ですね。
そのオリジナルが、1971年にテレビ放送された「仮面ライダー」。
当時小学生3年生の私は、本郷猛が変身する仮面ライダー1号と、一文字隼人が変身する仮面ライダー2号に夢中。この世代の男の子たちはほぼ例外なく、何かあるとみな「ヘンシン」と言いながら変身ポーズをしていました。
仮面ライダーが大ヒットした要因はいくつかありますが、個人的には、この「変身ポーズ」とライダー1号・2号の存在だと思います。
しかしこの「変身ポーズ」と1号と2号、当初の設定にはありませんでした。
大トラブルの末に編み出された、実は苦肉の策だったのです。
まず仮面ライダー制作が決定した時点で、2号の設定はありませんでした。
本郷猛(1号)を「藤岡弘、」さん(当時は「藤岡弘」さん)が演じる設定でした。
しかし放送前の第9話・10話の撮影中、オートバイの転倒による大事故で、藤岡さんはなんと全治3〜6ヶ月の重傷を負い、その後の撮影ができなくなりました。
未完成分はすでに撮影済の映像でなんとか繋いだものの、その後の話が続きません。そこで色々な案が出されました。
①本郷猛を、交代させる
②本郷猛は、死んだ設定にする
③いっそのこと、仮面ライダーを巨大化させてしまう
結局「子供たちの夢を潰すのはよくない」「(当時、再起不能と言われていた)藤岡さんの復活を待とう」ということになり、本郷猛は海外のショッカー支部との戦いに赴くことになり、後を継ぐ者として、一文字隼人の仮面ライダー2号が登場する設定になりました。
ちなみに一文字隼人役の候補には三浦友和さんも選ばれたのですが、三浦さんの所属事務所が断り、藤岡さんと同じ劇団に所属する佐々木剛さんが演じることになりました。
また当初、藤岡弘さん演じる本郷猛は、仮面ライダー1号に変身する時はバイクで加速し、その風をベルトで受けて、仮面ライダーに変身する設定でした。
しかし2号を演じることになった佐々木さんは、バイクの免許を持っていませんでした。これでは「バイクで加速して変身」ができません。
そこで編み出されたのが、あの手を大きく回す変身ポーズ。
これが社会現象になって、日本中の子供たちが変身ポーズをやるようになりました。こうして小学4年生だった私も、変身ポーズをやっていたわけです。
自分が仮面ライダーのプロデューサーで、主役の藤岡さんが事故で半年入院とか、代役がバイク乗れないという事態に直面することを想像するだけで、思わず頭を抱えたくなります。恐らく当時の製作陣も全く同じだったのではないでしょうか?
こんな時、「ヤバいなぁ。どう考えてもコレ、詰んでいるよね」と思いがちです。
しかしこんな時こそ、知恵の出しどころ。諦めなければ、解決策があるのですね。
「危機は、飛躍のチャンスになりうる」ということを、仮面ライダーのプロジェクトは教えてくれます。
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徹底して本物を追求する、誉田屋源兵衛の世界
*** 今回はあえて画像は外しました ***
日本経済新聞夕刊で2023年3月27日〜31日に連載していた「【人間発見】誉田屋源兵衛 十代目 山口源兵衛さん」は、実に読み応えがありました。
連載第1回目は、こんな紹介文から始まります。
「1738年創業、京都市室町に本社を構える誉田屋源兵衛の帯は、日本の美と技巧の粋を尽くす。生みの親は当主の十代目山口源兵衛さん(74)。国内外に熱狂的信奉者を抱える業界の異端児は今、技術承継の難題に対峙する。」
妥協せずに徹底して本物を追求し続けるその姿勢は、読んでいて思わず背筋が伸びます。
たとえば数百年前の安土桃山時代の能衣装は、色遣いも表現もすごく、今の西陣では再現できません。原因はコストダウンです。
源兵衛さんは「なんで今の西陣はでけへんのや、と情けなくなった。」と嘆きます。
そんな源兵衛さんが作る帯や着物は、英国ヴィクトリア&アルバート博物館の永久収蔵品としても提供されていますが、こうも付け加えています。
「ものすごいええもんは博物館の人に見せてへん。持っていかれたら困るからや。若い人らが実物を見たい時、俺の手元になかったらどないすんねん。」
源兵衛さんの悩みは、跡継ぎです。
それも「自分を無視できるような」跡継ぎです。
そんな源兵衛さんは、日本の美意識を世界や若い人に伝えるために、インスタグラムで30秒の動画を作り始めています。kondayagenbeiというIDです。
源兵衛さんは、こうおっしゃっています。
「職人さん以外は、一度見ただけじゃ何言ってるかわからんやろな。けど若い人には、これを見て何かを感じてほしいんや。」
源兵衛さんの「ほな、言うたろか」という言葉で始まる観念的な独白と映像は、必見です。是非ご覧いただきたいので、文字にすると陳腐になってしまうことを承知の上で紹介すると、第一回目はこんな感じです。
ほな言うたろか。
全ての文様には
意味があったんや
この着物はな、
破れ格子や
倒幕の柄や
破るは、
壊すや
変わることが
生きることや
ご興味がある方は、ぜひ日経の連載記事と、インスタグラムの動画をご覧いただければと思います。
誉田屋源兵衛のホームページも素晴らしいですよ。
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