東京マラソン挑戦を止めたのは「目的と目標の矛盾」だった

とても熱心にジョギングを続けている友人がいました。
彼は「東京マラソンで4時間を切る」と公言し、毎月200Kmのノルマを1年間継続していました。

その彼が急に、「マラソン挑戦は止めた」と言い始めました。体調が悪くなったのかと心配しましたが、いたって健康です。相変わらずジョギングも続けていますが、ホドホドに留めているようです。そんな彼と話す機会がありました。

「『4時間切る』と言っていたのに、なんでまた?」
「きっかけがあってさ。目標を変えたんだよ」

彼が見せてくれたのが、ある雑誌記事。こんなことが書いていました。

・マラソンでは、「長い距離を走ると自信に繋がる」と、体調不良でも頑張り勝ちだ
・しかし「あと少し」と頑張りすぎて心臓に負担がかかり、マラソン大会で死亡するケースもある
・米国の研究で1週間48Km以上走る人は、それ以下しか走らない人と比べ、心臓病のリスクが上がる
・ジョギングは生活習慣病改善にはよい。しかし中高年になって始めたマラソンには、リスクもある

「確かに200Km走るようになって肌の張りがなくなってきたんだよね。距離を半分にしたら元に戻った。『過ぎたるは及ばざるがごとし』っていうし、何ごともやり過ぎずホドホドがいいのかもしれない。余裕でフルマラソンを走れる人はいいんだろうけど、自分にはちょっとムリな目標だったんだろうね」

毎年申し込んでいた東京マラソンもやめて、マイペースでジョギングをする日々だそうです。

 

話を聞いて、なるほどと思いました。

彼は『東京マラソン4時間完走』を目標にジョギングを続けていました。
しかしそもそも彼がジョギングを始めた目的は、『年齢を重ねても、現役で仕事を続ける体力をつけること』でした。
彼の場合はこの目的と「フルマラソン4時間完走」という目標は、実は矛盾していたことに気がついたということですね。

一方で東京マラソンに向けて熱心に挑戦を続けている友人たちもいます。人はそれぞれです。彼らは彼らの目的と目標があるわけで、応援したいと思います。

その目的は、正しいか?
その目標は、その目的を実現するために、正しいか?

友人の話を聞いて、これはビジネスでも常に考えなければいけない、と改めて思いました。

 

 

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客がほとんど来ない寂れた薬局が、なぜ儲かる?

先日、健康診断をした病院で、「念のため」と薬をいただいた時のこと。

病院で処方箋をいただき、地図を頼りにその薬局に向かいました。

道を歩いていたら、その薬局の看板がありましたが、そこは普通のマンション。指示通りマンション1階のロビーを通過すると、そこはなんとマンションの庭。その庭に薬局の入口がありました。

普通なら数名いる薬剤師も、ここは初老の男性1人だけ。店に入るとラジオが流れています。

この薬局は、普通の調剤薬局と比べると面積は1/5程度。とても狭い店内です。
普通の薬局には栄養ドリンクだけで10種類以上あったりしますが、ここは湿布が一種類、栄養ドリンクも見当たらず、置いている薬も数えるほど。
普通の薬局で壁一面にある広告もありません。
薬局によくあるIT機器もありません。

とても寂れています。
普通の調剤薬局なら薬剤師数名が忙しそうに働いているものですが、この薬局で一人だけいる薬剤師はノンビリとラジオを聴いているし、失礼ながら、商売のやる気がほとんど感じられません。
この薬局、儲かっているのでしょうか?

 

しかし近所の方に話しを伺って、驚きました。この薬局は、既に20年くらい営業しており、店の様子も最初の頃からほとんど変わっていないそうです。

「なんで続いているんだろう」

そこで考えました。

「この薬局、もしかしたら、意外と儲かっているのではないだろうか?」

 

まずこの薬局には一見客は来ません。入りにくい感じからすると、むしろ排除しているようにすら感じます。

実は私は、病院で処方箋をいただいた時に、「この薬はこちらの薬局しかありませんから」と言われてこの薬局にやってきました。

つまりこの薬局は、近所の病院で処方箋を出された患者さんだけを相手にしていて、その病院で必要な薬だけを用意しています。種類は絞られますし、量も限られるので、薬の在庫は最低限で間に合います。一見の一般消費者を排除しているので、湿布も最低限の1種類だけ。来店した時点で買う薬が決まっているので、店内の広告も不要です。

意外なことに、この薬局では薬がすぐに出てきます。一般の調剤薬局では薬が出てくるまで待たされることが多いことを考えると、大きな違いです。この薬局では、限られた薬剤の在庫情報は、恐らくこの初老の薬剤師さんの頭の中にすべて入っているのでしょう。だからすぐに用意できるし、待たせません。

つまりこの薬局は、一般消費者は完全に切り捨てた上で、近くの病院の患者さんだけを固定客として掴まえているのです。

仮にこの薬局と一般の調剤薬局のコストが面積比に比例していると考えると、この薬局のコストは通常の調剤薬局の1/5程度。

だからこの規模で経営できるのです。

 

もしこの薬局が一般消費者を切り捨てずに、対応しようとすると、どうなるでしょうか?

まず薬剤の品揃えを増やす必要があります。そのためには店舗を大きくし、薬剤師も増員する必要があります。

薬剤師を増やすには、薬剤師のスキルレベルは様々なので、まず薬剤の在庫情報をITで管理して、薬剤の効能もわかるようにして、病院の指示書に従って調剤し、ITで薬の情報を検索して精算できるようにする必要もあるでしょう。

在庫費用、店の賃料、人件費、IT化投資、あらゆる費用が大幅アップです。この費用に見合った売上が必要です。

売上拡大を目指してお客さんを一般消費者に広げた途端に、経営は変わり、普通の薬局と競争しなければならなくなります。

 

ノンビリとラジオを聴いているこの寂れた薬局の初老の薬剤師は、実はかなりしたたかな戦略家なのではないかと思いました。

 

 

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会社員時代、ほとんど残業しなかった理由

私は日本IBMに勤務していた会社員時代、40代前半までは「いやぁ、ゆうべは夜12時過ぎまで会社で仕事をしていてさぁ…」というような、典型的な残業自慢をするタイプでした。

しかし40代後半になって大きく変わり、残業ゼロになりました。

当時の私は仕事も責任範囲も増える一方でしたが、残業ゼロで乗り切れた理由は、早朝に行う仕事が、疲れた頭で夜に残業するのと比べると、6倍の生産性だったことがわかったからです。朝シフトを始めた40代中頃以降、仕事の生産性は大きく向上しました。

こんな私の体験を耳にされた中経出版さんとのご縁で、6年前に「残業3時間を朝30分で片づける仕事術」という本を書きました。

「100円のコーラを1000円で売る方法」を出版する半年前のことでした。

 

当時は5:00AM起床。家を5:50AMに出て、毎朝7:00に出社していました。殺人的に混雑している満員電車は避け、電車にゆっくり座りたいために早朝出社していたのですが、実は朝の仕事の効率はとてもよかったのです。

 

 

その後、2013年7月に日本IBMを退職して独立。会社への電車通勤はなくなりましたが、相変わらず私は早朝から仕事をしています。

仕事内容は会社員時代とはだいぶ変わりました。会社員時代は、事業戦略や人材育成戦略の策定、チームによる戦略の実践と進捗管理、さらにマネージャーとしてチームのマネジメントが主な仕事でした。独立後は、文章を書いたり、講演準備と講演、さらに自分の会社のマネジメントが主な仕事になりました。アイデアを出す比率は、独立後の方がやや増えている感じです。

このアイデアを出す仕事は、まさに生産性が6倍の早朝から昼にかけて行うのが最適なのです。

 

世の中は、6年前に本書を出した頃からだいぶ変わりました。
6年前は、残業削減に取り組む企業は、トリンプや無印良品など、数える程でした。「仕事は時間をかけて行うものだ」という考え方が世の常識で、「私、残業しない主義です」というと「ちょっと変わったヤツだな」という感じで見られました。

しかし今や政府主導で進めている「働き方改革」では、長時間労働是正に大きな焦点が当たっています。伊藤忠、SCSK、日本電産など、全社をあげて本格的に残業削減に取り組む企業も増えてきました。残業しないことは世の中で評価されつつあるように感じます。

日本人は過労死が社会問題になるほど働いているのに、世界全体で見ると、労働生産性はOECD加盟諸国35ヶ国中22番目です。この数十年間、ずっと下位に甘んじています。少子高齢化で働き手が減っていく日本では、「仕事は時間をかけて行うもの」という常識を乗り越え、残業ゼロを実現して生産性向上を図ることが急務です。

 

残業ゼロを実現し、ビジネスパーソンの生産性向上を実現する朝シフトは、ますます世の中で求められてきているように感じています。

 

 

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シェアは狙うな。スウィートスポットを狙え

「御社のお客様は、誰ですか?」とお伺いすると、こんな答えをいただくことがあります。

「世の中の人、全てですよ」
「当社の商品を買う人が、お客様です」
「うっ。…考えたこともありません…」

このパターンで本当に売れるでしょうか?いくつか事例を見ていきたいと思います。

■セグウェイ

2001年、鳴り物入りで登場しました。立ったまま自由に移動できる画期的な乗り物です。スティーブ・ジョブス、ジェフ・ペゾス、ビル・ゲイツといった錚々たる経営者がこぞって「人間の移動形態を変える革命的な製品だ!」と賞賛しました。

ターゲットは「世界中のすべての歩行者」。
米国で100万人に販売した後に、世界進出も予定されていました。

結果は? 3年間の販売は、6000台でした。

価格は60万円。この価格帯の商品を購入できる裕福な米国人は、健康維持のためにむしろ日々のウォーキングやジョギングを重視していたのです。

 

■コダック フォトCD

1990年、コダックがフォトCDというサービスを始めました。

ターゲットは、一般消費者。
デジタル写真時代を先取りし、写真フィルムから高解像度の画像データを読み取り、CDで提供してくれます。画像をテレビで見ることもできます。

かく言う私も、当時、自分の写真作品をフォトCDにしてもらいましたが、25年後の現代でも通用するような素晴らしい高解像度データで、とても驚いたことをよく憶えています。

結果は? 普及しませんでした。

当時の一般消費者にとっては、あまりにも高解像度だったのです。むしろプロフェッショナルな写真家に受け容れられました。さらに当時は、前提となるCD-ROMドライブはまだまだ高価。加えて、当初は高価だったスキャナーが急速に低価格化し、フォトCDを代替していったのです。

 

■身近でありがちな事例

同じような話は身近にもあります。
私は様々な企業から、「この商品企画書に意見を下さい」と言われて拝見する機会がよくあります。

多くの場合、商品仕様については子細に書かれています。商品企画書なので、これはこれで大切なことです。
一方で顧客に関しては、「市場規模は〇〇〇億円。このうちシェア5%を獲得して、売上〇〇億円を目指します」としか書かれていないことがとても多いのです。

このパターンは、セグウェイやフォトCD同様、顧客ニーズが把握できておらず、多くの場合、売れずに失敗します。。

 

共通するのは市場を大きく捉え、「大きい市場から、シェアxx%を獲得しよう」と考えていること。

しかしこの方法ではニーズを絞り込めていないので、ごく一部の人たちがたまたま買うだけで終わることも多いのです。

 

本来必要なのは、潜在的なニーズを捉えること。事例をご紹介します。

■ある樹脂メーカーの事例

この樹脂メーカーの取引先は、塗料メーカーでした。そこで「環境に優しい塗料なら売れるはず」と考えて、環境性能が高い樹脂で塗料を発売しましたが、売れませんでした。

そこでこの樹脂メーカーは、塗料の最終ユーザーである塗装業者の実態調査をしました。

わかったことがありました。塗装業者のコストのほとんどが人件費であり、塗料はコスト全体のうちわずか15%だったのです。そこで「人件費を削減できる塗料を提供すれば、売れるはず」と考えました。

そこで、速乾燥で1日で二度塗りでき、かつ環境にも優しい塗料を発売したところ、価格が1.4倍なのにも関わらず、飛ぶように売れました。

塗装業者にとって、より短い時間で塗装が完了する塗料は、まさに「喜んで買いたい商品」だったのです。

 

市場の中で、「買うかもしれない」潜在的ニーズを持っている人は、一部の人たちです。

そこでそのような人たちを絞り込み、「お客様が買う理由」を提供し、「喜んで買うお客様」に変えていくことが必要なのです。

 

テニスやバトミントンのラケットは、一見広く見えますが、実際には反発力が高い部分は中心のごく一部です。ここを「スウィートスポット」と呼びます。

新商品を立ち上げる際にも必要なのも、広さを狙った「規模」ではなく、確実に買う「お客様」

狙うべきは、「シェア」ではありません。
狙うべきは、「スウィートスポット」なのです。

 

 

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市場縮小やコモディティ化は、大きなチャンスである

企業の方々とお話ししていると、このようにおっしゃる方が実に多いことを実感します。

「ウチの市場は縮小しているんですよ」
「ウチの商品はコモディティ化しているし」
「だから、ダメなんですよね…」

確かに市場がグングンと成長し、強力な自社商品が放っておいても飛ぶように売れる状況であれば、こんな悩みは簡単に解決できそうですが、そんな状況は、どんなに待っていても起こりません。

実は、市場が縮小したりコモディティ化している状況は、見方を変えれば、大きなチャンスでもあります。

 

躍進する市場も、強力な自社商品も、かつては先人たちが苦労しながら作ってきたものです。

 

たとえば、現在ビール業界首位のアサヒビールは、かつてビール業界で最下位転落直前。しかし1980年代、あのスーパードライが登場。

スーパードライの当時の責任者・松井康雄さんは、三ツ矢サイダーのマーケティングで成功した後、左遷先でスーパードライのマーケティング戦略を策定、そしてトップに直訴して本社マーケティング部・部長に抜擢され、スーパードライを成功させました。

1980年代の当時、ビール業界の常識は「消費者はビールの味がわからないし、飲み分けられない」でした。しかし実際には、消費者はビールの味を飲み分けている、という市場調査がありました。

そこで松井さんは、ターゲット顧客を明確に絞り、顧客が潜在的に望んでいた辛口ビールを開発、市場への浸透状況にあわせてターゲット顧客をシフトしつつメッセージを繰り出していきました。松井さんは、その時の様子を著書「たかがビール されどビール アサヒスーパードライ、18年目の真実」にまとめておられます。本書はまさに生きたマーケティング戦略の教科書です。

その後、スーパードライはアサヒビールを業界トップに押し上げる大ヒット商品となりました。

 

同様に、中川政七商店・社長の中川政七さんは、最近出版した著書「日本の工芸を元気にする」でこのように述べています。

・伝統工芸品の市場規模は、1983年は5400億円。2014年は1000億円。1/5に縮小している
・一方で、観光土産の市場規模は3兆6千億円で30年前から変わらない
・30年前は、食品・非食品の比率はほぼ半々だった。現在は食品が8に対し非食品は2
・3兆6千億円の半分を昔のように非食品に戻せば、それだけで1兆8千億円の市場規模
・そのうち何割かを工芸品で占めれば、工芸品の市場規模は、一気に拡大する

そして実際に、小売店「中川政七商店」を展開したり、工芸業者へのコンサルティングを行うなど、様々な取り組みを行い、成長しています。これは戦略思考です。

 

拙著「そうだ、星を売ろう」でも、宿泊客が減少する温泉郷・昼神温泉が、新たに「星を売る」という挑戦を行う様子を描いています。2016年はこの「日本一の星空ナイトツアー」に11万人が訪れ、昼神温泉の旅館・ホテルの収益力も大きく向上しました。

 

「市場縮小している。だから、ダメだ」
「商品がコモディティ化している。だから、ダメだ」

これは、主体性がある考え方とは言えません。

厳しい言い方になりますが、市場縮小・コモディティ化しているのは、その業界で長い間、新たな価値を生み出すことを怠ってきたからです。

しかし市場全体が「新たな価値が生み出されていない」ことは、見方を変えれば「ライバルも価値を創り出していない」ということです。

だからこそ市場縮小・コモディティ化は、自分たちが新たな価値を生み出し、市場で成長する大きなチャンスでもあるのです。

 

こんな状況こそ、マーケティング戦略思考でチャンスを切り拓くべきなのです。

 

 

 

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そもそも、なぜ「モノつくり」から「コトつくり」?

私の家の近所に、中川政七商店があります。一見すると工芸品というモノを売っていますが、ビジョンがあります。

「日本の工芸を元気ににして、工芸大国日本をつくる」

このビジョンのもとで、コトつくりによる物語を売っています。そして日本の様々な工芸メーカーも支援しています。

たとえば、中川政七商店がコンサルティングしている、新潟県三条市のある包丁メーカーの例です。

三条市は刃物の産地です。しかし「この包丁は、よく切れますよ!」と言って売るのは、モノつくり発想です。

この包丁メーカーは、900種類もの包丁を作っていましたが、パン切り包丁がありませんでした。
一方で家庭では、普通のパンを切る際に普通の包丁が使われています。

そこでこの包丁メーカーは「職人がつくるパンくずが出ないパン切り包丁」を作りました。下記は中川政七商店のサイトからの引用です。

「波刃ではない、」パン切り庖丁です。パンの切り口がなめらかでパンくずがほとんど出ません。柔らかいパンはつぶさずにすんなり、皮が硬いパンも、先端部の波刃できっかけをつくることでスッと切れます。刃が落ちる感じに切れ、思わず何枚も切りたくなる切れ味です!断面がボソボソとしないため、バターやジャムも塗りやすく、サンドイッチのパンの耳落としも手を添える程度で切り落とせます。

まさに、「物語で語られるコトつくり」。つい欲しくなってしまいます。

こういうコトつくり、挑戦していくのは実に楽しいことですね。

 

さて、「モノつくりから、コトつくりへ」という言葉を、よく見かけるようになりました。モノだけでは消費者が買わなくなったため、と言われていますが、なぜ「モノつくりから、コトつくり」なのでしょうか?

社会が変わってきたからです。図にするとこうなります。

 

成長期は、世の中がどんどん豊かになっていきます。
「より多く、もっと豊かに」というニーズが溢れ、需要が拡大しています。一方で供給は追いつきません。
必要なのは生産力と販売力の強化により、需要を満たすこと。「モノつくり」が重要なのです。
「この包丁は、よく切れますよ!」で、売れるのです。

かつての高度成長期の日本、2010年頃までの中国、そして現在のアジア新興国は、この状況です。

成熟期は、世の中が既に豊かになった時代です。
「より多く、もっと豊かに」というニーズは一通り満たさ、供給力はむしろ需要を上回っています。
必要なのは、新たなニーズを創り出し、「お客様が買う理由」を創り出すことです。「コトつくり」が重要なのです。
「この包丁は、よく切れますよ!」ではなく、「職人がつくるパンくずが出ないパン切り包丁」が売れるのです。

現代の日本はこの状況です。

 

こんな状況なので、昔ながらのモノつくりから変わっていない企業は、伸び悩んでいます。

成長している企業は、中川政七商店のように、価値創造・顧客開発に真剣に取り組んでいる企業なのです。

 

 

 

 

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意外と知らない「自分の強み」。そこでお勧めの本

あまりブログやメルマガで本をお勧めすることはないのですが、この本はとても参考になりましたので、ご紹介したいと思います。

「さあ、才能(じぶん)に目覚めよう」
(マーカス・バッキンガム&ドナルド・O・クリフトン著、日本経済新聞出版社)

企業も個人も、「強みを活かそう」とよく言われます。
企業の強みについては、コアコンピテンシーを提唱したゲイリー・ハメルや、RBVやVRIOを提唱したジェイ・B・バニーなど、様々な考え方があります。

一方で、「個人の強みとは何か」を定義したものは、意外と少ないものです。
本書では、この個人の強みについて書かれた本です。

 

本書は、「その人が一番強みを持っている分野を伸ばせば、大きな成長の可能性がある」としています。
では、「強み」とは何でしょうか?

本書では、「強み」とは「才能」であり、後天的に学習と経験で獲得できる「知識」や「技術」と区別しています。

そして「才能」は、その人の「資質」により、無意識に思考・感情・行動のパターンが繰り返されることで作られます。
つまり「才能」とは、その人の先天的な「資質」が作る、というのが本書の主張です。

ここまでの話を整理すると、

「才能(先天的な資質がベース)+知識(後天的)+技術(後天的)→ 強みが生まれる」

ということです。

そして「強みとなりうる先天的な資質を活かすことが、個人の成功に繋がる」として、個人の資質を34に分類し、「この資質を組み合わせることで、その人ならではの強みを育てるべし」と述べています。

「先天的な資質が、個人の強みを生み出す」という考え方は、なるほど、と思いました。

 

本書がさらに素晴らしいのは、巻末に袋とじ付録でついている固有のアクセスコード。これを使い、ネットで「ストレングス・ファインダー」にアクセスすると、自分の資質の上位5つを判定できます。

これが驚くほど当たります。私の場合、上位5つはこうなりました。

【1位】 学習欲 (Learner):新しいことを学ぶということが大好き。常に何かを学んでいないと落ち着かない。スキルを獲得することで、自信を強めていく。

→【私の場合】勉強好きというわけではないのですが、興味を持ったことはトコトン突き詰めて調べないと気が済まない性格ですので、かなり当たっています。特にこの20年間は、まさにマーケティングが大きなテーマになっています。

【2位】戦略性 (Strategic);他の人には複雑としてしか見えない状況の中でも、パターンを見つけて先を読み、リスクを予測し、最善の道筋を発見することができる。ヤバそうな選択肢を切り捨てる。

→【私の場合】前職のIBM社員時代に事業戦略を担当していた頃は、まさにこの強みを活かしていました。またここ数年は物語でマーケティングの本を書くことが多いのですが、実際の混沌としたビジネスの状況を、マーケティング理論で整理し、誰にでも理解できるように筋道立てて考えるのはとても好きです。これが今の「マーケティング戦略アドバイザー」としての強みの源になっており、「なるほど」と思いました。

【3位】責任感 (Responsibility):「やる」と言ったことはなんでもやり遂げようとする。筋を曲げて、言い訳や正当化したり、適当にごまかすのは問題外。それがよい評判を生んでいるが、完了するまで生きた心地がしない。一方で責任を果たしていない人がいるといらだちを感じる傾向がある。

→【私の場合】いつも「やるべきこと」を箇条書きにして、期日前に終えないと気が済まないのは、この資質のためだったのか、と納得です。ただ他人にも同じことを要求する傾向もあるので、これは気をつけないといけませんね。

【4位】内省 (Intellection):一人で考えるという行為自体が好き。自分自身に疑問を投げかけ、自分自身で回答がどうなのかを考える。

→【私の場合】アイデアをまとめるときは、ちょっとざわついたカフェに入って一人でああでもないこうでもないと考えることが多いですし、実はそんな時間が大好きですので、大いに心当たりがあります。

【5位】達成欲 (Achiever):何かを成し遂げたいという恒常的な欲求。平日も休日も、一日が終わるまでに何か具体的なことを成し遂げないと不満に感じる。何かを成し遂げると一瞬落ち着くが、また次の目標へと強制的に駆り立てられる

→【私の場合】常に「今日は何をすべきか?」「今日は何が出来たか?」を考えていますし、休みの日であっても何もしないでいるとどこか罪悪感を感じてしまうので、これも納得します。

ということで、怖いほど当たっていました。現在の仕事がまさにこれらの資質を活かしたものになっているのは、長い人生を通じてあれこれと壁にぶつかりながらも試行錯誤を繰り返した必然の結果なのかもしれません。

 

この「ストレングス・ファインダー」は、パートナーを理解する上でも、とても役立ちます。
このパートナーとは、たとえば、仕事では同僚ですし、プライベートでは家族です。

パートナーとのトラブルの多くは、こんなことが発端になることが多いのではないでしょうか?

「こんなこと、当たり前なのに、なんで相手はわからないんだろう?」

しかし実際には、パートナーは別の考え方をしていることが多いものです。

 

たとえば私の場合、先の診断結果にもありますように、こう考えています。

「モノゴトを戦略的に考えるべきだ。自分で学んだり考えたりすることは楽しいことだし、目標達成に責任を持つことは、何よりも大切だ」

しかし、世の中の多くの人がそう考えるとは限りません。たとえばこう考える人がいるかもしれません。

「モノゴトは相手の気持ちをくみ取って考えるべきだ。他人に役立つことは楽しいし、人とのご縁は必ず何らかの意味があるので相手を尊重することが何よりも大切だ」

あるいは、こう考える人もいるかもしれません。

「何ごとも1番にならないと話にならないわ。そのためには手段を選んでいられない。ライバルを蹴落としてでも、トップを狙う」

新しいプロジェクトが障害にぶつかった際に、これらの価値観の違いを考えずに、対応について議論した場合、

「誰がなんと言おうと、あるべき姿に向かって進むべきだ。だから戦略的にこう考えて進めるべきなのは自明だ」

「いやいや、この際は達成するかどうかよりも、相手の顔を立てることが何よりも大事でしょ」

「なに緩いこと言っているの?戦略とか相手の顔とか関係ないでしょ。この際、手段を選ばずに1番にならなければ意味がない」

と言うように平行線の議論が続き、お互いに「なんで、こんな当たり前のことを相手は理解しないのだろう?」とストレスが溜まるのです。「自分の資質が、世の中では一般的なものだ」と考えてしまった結果、自分の価値観を押しつけてしまうのですね。

 

ここで、お互いがこの「ストレングス・ファインダー」を受けて、相手がどんな資質を持っているかを理解すれば、

「なるほど、この人は戦略的に考えているから、私のように情に流されないんだな。ここは首尾一貫させるのもいいのかもしれない」

「なるほど、この人は私よりも相手に共感する力が強いから、こう言っているんだな。確かに一理あるな」

「なるほど、この人は競争志向だから1番にならないと意味がないと考えるんだな。ここは、いかにライバルに勝つかも考える必要があるかもしれない」

と、お互いに理解できようになるのです。

このように本書は、仕事では同僚を理解し、チーム力を上げるのにも役立ちます。

 

本書を知ったきっかけは、ヤッホーブルーイング・井手直行社長の著書「よなよなエールがお世話になります」を読んだ時でした。

井手社長は社内で、ストレングスファインダーを受けた社員同士でお互いの資質を共有し、「〇〇さんは『着想』を持っているから、これを任せよう」とか、「〇〇さんは『指令性』を持っているから、彼にまとめて指示を出してもらおう」というように、社員一人一人の強みを活かした仕事を担当するようにしています。

 

本書は、家族同士がお互いの価値観をより深く理解し合うのにも役立ちます。私生活のパートナーは比較的価値観は共有しているものですが、自分と常に同じ価値観を持っているとは限りません。私自身、パートナーにこのストレングスファインダーを受けてもらい、自分と相手の価値観に違いがあることを知ったのは、大きな発見でした。

 

本書は、「みんな一人一人違う。それぞれが、それぞれの資質を持っている。その資質が強みになる」という当たり前のことを、とても具体的に教えてくれるという点で、とても役に立ちます。

相手の資質を理解することで、自分との違いを認識すれば、お互いの理解が深まるはずです。

(なおアマゾンの書評を見ると、中古の本のアクセスコードではストレングス・ファインダーは受けられないようです。ご注意下さい)

 

 

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「お客様が買う理由」は、シンプルな物語で語る

シンプルに物語を語る人がいます。

「情報革命で、人々を幸せにしたい」(ソフトバンク社長 孫正義さん)
「ミドリムシが、地球を救う」(ユーグレナ代表取締役 出雲 充さん)

シンプルに物語を語る人は、語り続け、行動し続けることで、世の中を大きく変えていきます。

なぜ物語で語ることが大切なのでしょうか?

 

物語で語ることで、周りの人たちが物語に共感し、目標に向かって突き進むめるようになります。

ビジネスでは多くの人たちが関わりますが、彼らも色々な考えを持っています。さらに現代はとても複雑です。それぞれの考えをまとめ、方向付けるのは大変な作業になります。

ここで役立つのが、物語。複雑な状況を整理して、説得力あるシンプルなストーリーで語りることは、チームの目標を意味づけ、関係者の足並みを揃えてくれます。そして物語は、物語に共感した関係者が強く思い込むことで、皆で同じ目標に向かって各々が奮い立って行動したくなるように動機づけてくれます。

このように物語で意味を作る手法は、「センスメイキング理論」と呼ばれます。「センス(意味)をメイクする(作る)」という意味です。

 

このセンスメイキングは、「お客様が買う理由」を創り上げるときに、とても役立ちます。

「お客様が買う理由」は、

・どんな強みを活かして
・誰の(ターゲット顧客)
・どんな悩みに(ターゲット顧客のニーズ)
・いかに応えるか(解決策)

を考えることが必要です。 一見簡単そうに見えますが、実際に作るとなると、とても大変です。「強み」「ターゲット顧客」「ニーズ」「解決策」などの選択肢はとても多く、組み合わせが無数にあるからです。

センスメイキングは、これをシンプルに考えるための手段になります。物語で考えるのです。

たとえば阿智村は、こう考えました。

「日本一の星空」という強みで、阿智村にお客さんを呼ぼう。
ターゲットは、都市圏の若者カップルだ。
彼らは、日常にないドキドキワクワクした体験をしたい。
そこで「星空エンターテイメント」を提供しよう。
ライバルは、ディズニーランドだ。

阿智村の阿智村の「日本一の星空ナイトツアー」には、2016年には11万人が訪れました。この星空でプロポーズしたカップルも100組以上にのぼります。

共感が伝わる現代では、「シンプルな物語で語ること」の大切さは、ますます高まっています。

 

しかし誰でも「シンプルな物語で語れる」わけではありません。

何をしたいのか?どのように変えたいのか?

その深い想いが、人々を共感させる「シンプルな物語」を作るのです。

 

この「物語を語る」ことは、多くの人たちを動かす強力な武器になります。

ただ「物語で語る」ことはあまりにも協力なので、時としてファシズムのように、人々を熱狂させながら破滅的な方向に誘導する潜在力も持っています。物語を語る立場にある人は、「よきことを語っているか?」「事実に基づいているか?」を常に心して考えるべきことなのかもしれません。

 

 

 

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「永井ゼミ」第1回を行いました

今朝、東新橋で、朝活勉強会「永井マーケティング戦略ゼミナール」(永井ゼミ)の第1回を行いました。

参加者全員が開始5分前に集合。朝早くから、有難うございます!

第1回目は「お客様が買う理由を考える」というテーマで、20分の講義と30分の議論を行いました。

議論では、企業の現場ならではのお悩みについて様々ないいディスカッションが出来ました。

 

皆様からは、様々なご意見をいただきました。以下、アンケートからの抜粋です。

■「お客様が買う理由」の作り方が難しいと思っていたので、その部分を参加者の質問から学べてよかった。

■みなさん、活発に意見や質問を述べられていて、意識の高さに驚きました。

■本では読んでいましたが、「お客様が買う理由」の見つけ方、作り方に関する知恵が整理されていました。いまやっているプロジェクトですぐやってみます。講義+QAの組み合わせで深く理解できました。

■同じような志を持った仲間と先生のお話し、議論ができて楽しかったです。また参加したいと思います。

■永井さんの原体験が聴けたことがよかったです。実例における実際の進め方、実際に困ることなど、生の体験と理論を伺うと、仕事に戻った際のよい参考になります。

■非常にロジカルであり、また経験に基づくお話しは大変参考になります。

■各種フレームワークを使って考えてみたいと思います。もっと議論の時間が欲しいですね。

 

実際に第1回目をやってみて、議論の時間を、もう少し増やしたいなぁ、と思いました。
第2回目は、4月3日の予定です。

テーマは、「お客様は、誰か?」

明日のメルマガでご案内します。

韓国から、テレビ取材がありました

韓国からテレビ取材チームが弊社オフィスにいらっしゃいました。

韓国版「そうだ、星を売ろう」が韓国内で話題になっているそうで、著者に取材したいとのことで、テレビ取材チームが弊社オフィスにお越しになりました。有り難いですね。

取材後、テレビ取材チームはそのまま中央高速に乗って、車で阿智村へ行かれました。

 

韓国国内の企業では、自分たちならではの強みを活かしている日本の地方の取り組みがとても注目されているとのこと。

お互いに良い取り組みは、国を超えて、学びあいたいですね。

「楽しくて、お客様のことなんか考えたこともない」

「お客様のことなんか考えたことがありません。
意気投合した仲間と、夢中になってやっています。
とにかく面白くって…」

その人はいかにも楽しそうにお話ししていました。

私は「お客様が買う理由を作りましょう」と提唱しています。
「お客様が買う理由を作ること」と、「お客様のことなんて考えたこともない」というのは、一見、正反対のように思えます。

しかし実際には、「お客様のことなんて考えたこともない。自分自身が楽しくて夢中」という状態は、実は理想的なパターンであることも多いのです。

 

この人の場合、「お客さんのことなんか考えたこともない」といっていましたが、実は自分自身がお客様になりきって、新しいサービスを作るのに夢中になっていました。

あのスティーブ・ジョブスも、顧客の意見はまったく聞きませんでした。しかし誰よりも厳しいアップル商品のユーザーでした。だから商品開発チームには超辛口ユーザーとして厳しく接しましたし、新商品発表の時は、最も情熱的なファンとして興奮しながら新商品を語り、それが顧客に伝わったのです。自分自身がワクワクしていると、それは確実にお客様に伝わります。

もちろん例外もあります。いくら夢中になって楽しくても、お客様不在の独りよがりな商品開発は、多くの場合失敗します。

 

自分たちがワクワクしていなければ、お客様もワクワクするわけがありません。

 

私も自分自身を振り返ると、成功したパターンは、自分自身がお客様の立場でそのプロジェクトにワクワクして没頭し、寝ても覚めてもそのプロジェクトのことばかり考えています。

自分たちがワクワクするものに取り組みたいものです。

 

 

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JTB 協定旅館ホテル連盟 北東北 3支部合同会議で講演しました

2017/2/17、秋田で行われたJTB 協定旅館ホテル連盟 北東北 3支部合同会議で講演しました。

この会議は、青森・秋田・岩手のJTB協定旅館ホテルの皆様が、さらに観光ビジネスを拡大させるために何をすべきかを議論するために行われた会議です。

私は阿智村を題材に、「お客様が買う理由」を作り、地域づくりを進めていくための考え方をお話しいたしました。

 

講演後は、パネルディスカッション。

ご提唱している「お客様が買う理由」に基づいて、「お客様が私たちの地域・場所に行く理由は何か」を事前に整理していただいた上で、各県で2件ずつ発表。どれも素晴らしい力作ばかりでした。

各チームの発表後、私はコメンテーターとしてコメント致しました。このような形で地域づくりの取り組みをまとめ、地域同士で共有するのは、とても有意義ですね。

講演には、数多くのご意見をいただきました。(アンケートより)

■私はやるぞ!がぜんやる気が出ました。考え方、進め方の整理の方法がわかった。自分がやろうと思って進めていることの自信が付きました。さらにスピードを持って実行したい。有り難うございました。

■拝聴した内容をほぼすべて自らの立場、職場に置き換えることで大いに参考、勉強になった。特にVRIOについては社内でのフィードバックとともに今後強く意識して業務改善や新たなチャレンジに活かしていきたい。また自らのモチベーションアップのために非常に貴重な機会をいただけた。ビジョンと人を創ることは、自分の役割でもあることを自覚させられた。

■失敗を恐れてはなりませんね。危機感→行動→そして志。この順序が大切。新しい気づきでした。

■思った以上の内容で話にひきこまれました。阿智村にも行ってみたくなりました。

■当館宿泊プラン作成の際にも「お客様が買う理由」を考えていきたいと思いました。

■成功するにはけっして諦めないということを強く感じた。また可能性(チャンス)は平等にあり、柔軟な考え方が必要であること。すべてに興味を持つことが大切であると思った。

 

講演の後は、懇親会に参加。多くの方々とご縁をいただきました。

 

この講演では、秋田キャッスルホテルに前泊しました。7階にあるレストランで朝食をとったのですが、なんと秋田城跡のお堀が凍っていました。

秋田の皆様には日常的な風景なのかもしれませんが、普段東京にいると滅多に見ることのない景色に目が奪われました。

このような機会をいただき、ありがとうございました。

 

チャンスは、雨のように降っている

 

私は講演や著書では、成功事例をもとに「お客様が買う理由」をいかに作るかをご説明しています。すると時々、こんな質問をいただくことがあります。

「それって、たまたま運がよかったんじゃないですか?」

さて、本当に彼らは運がよかっただけなのでしょうか?

 

こんな研究があります。

ある大学の先生が、日本経済新聞「私の履歴書」を執筆した創業者や起業家を題材に、偶然起きた出来事がどのようにキャリア成功に役だったかを分析しました。→参考リンク

この研究では、次のような事例が紹介されています。

■「意外なところから大型商談が舞い込んだ。東京オリンピックの警備だ。リスクが高かったが何とかなると考えて引き受け、大変な思いでプロジェクト完了。その後一気に伸びた」(セコム、飯田亮氏)

■「三菱重工から非常に短納期の大量注文が舞い込んだ。受けないだろうと踏んで『契約の2倍なら』というと、『それで結構』。あわてて人材を確保、約束の期限に仕上げた。これで信用が付き、ビジネスが一気に拡大した」(大和ハウス工業、石橋信夫氏)

■「若手時代、地道に研究を続けたが、突然破局がやってきた。新任技術部長が『キミには無理。他の者にやらせる』と引導を渡された。そこで会社を退社。『自分で会社を作るか』というと部下達が口々に『付いてくる』。これが今の会社になった」(京セラ、稲盛和夫氏)

■「代理店を作ろうと思ったら、保証金が予算の10倍。『とても無理』とあきらめた。チャンスはどこにころがっているかわからない。帰ろうとしたら、先方の社長が『会いたい』。保証金は予算の1/10でいいので大阪で代理店をやって欲しいとのこと。大阪には縁もゆかりもなかったが、回ってみると商売のチャンスは大きく、得意先は次第に増えていった」(岩谷産業、岩谷直治氏)

■「工場勤めで高度な技術がついたが、学歴がないので役職に就けない。しかし思いがけぬところから幸運が舞い込んだ。自宅近所の会社の社長が『自営をしてみないか?うちの工場で技術指導してくれれば仕事も材料も回すよ』 私が独立を志していることは社長も知っていた。こうして独立がかなった」(カシオ計算機、樫尾忠雄氏)

■「女性用下着の商売がやっと軌道に乗り始めてきたら、下着業界に”黒船”がやってきた。米国の下着メーカーが2社上陸し、提携先を探し始めたのだ。条件は厳しかったが、断れば他業者と提携するかもしれないので、授業料と割り切って条件を飲み、この2社と提携。その後、1社は契約違反、もう1社は日本人の体型にあわず売れ行き不振で撤退。そのうち当社は東京進出を果たし、国内の地位を固めた」(ワコール、塚本幸一氏)

 

この論文にはありませんが、最初ピアニストを目指していた小澤征爾さんも、ラクビーで指を骨折してピアノを断念せざるを得ず、指揮者に転向して大成功を収められました。

 

さて、彼らは運が強かったのでしょうか?
確かにそれもあるでしょう。
しかしこのようなチャンスが成功した人だけにもたらされたのか、というと、ちょっと違うように思います。

 

おそらくチャンスは、雨粒のように、すべての人に平等に降り注いでいます。この雨粒が、見えている人と、見えていない人がいるのです。この雨粒が見えている人は、チャンスをつかみ取り、成功し、その結果「あいつは運がいい」と言われるのです。

では、そのためにはどうすればよいのでしょうか?

 

まず、問題意識を持つこと。

「このままじゃダメ」「何とか今の状況を変えたい」という危機意識。
あるいは「これをどうしてもやりたい」という好奇心。

何らかの問題意識を持つことです。

たとえば読書で、ただ本を読む場合と、問題意識を持って本を読む場合。
後者の方が得られる知識が格段に大きいことを経験したことがあると思います。

まず「現状をどうにか変えたい」という問題意識を持つこと。
そうすれば、それまで見えなかった雨粒が、少しだけ見えてきます。

 

問題意識を持ったら、次に具体的な行動に移すことです。

たとえば、何か解決したい問題があるなら、解決策を探すためにまず人に会ってみる。
あるいは「本を書きたい」と思ったら、思うだけでなく1行だけでもまず書いてみる。

具体的な行動に移すことで、雨粒がさらに見えてきます。
行動することで、経験やスキルが溜まっていきます。

 

そして人との繋がり、ご縁も拡がっていきます。
行動とご縁が、さらに雨粒をチャンスに変えていきます。

パスツールも「チャンスは、それを迎える準備が出来ている人に訪れる」と語っています。

 

そして大きなチャンスは、上記で紹介したように、一見あたかも大きなピンチの形で訪れます。
しかし準備することで、ピンチをチャンスに変えられるのです。

 

問題意識と行動が、人とのご縁につながり、運をたぐり寄せ、成功に繋がっていくのです。

 

 

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一番正確にお客様満足度がわかるのは、食器洗い場だった

よくこんなご質問をいただきます。

「お客様を理解するためには、どうすればいいのでしょうか?」

 

先日、テレビ東京の番組「ワールドビジネスサテライト」を見ていたら、まさに答えがありました。番組では、東京・目黒にあるうどん屋さんが紹介されていました。この店は毎日行列ができ、平日は深夜1時まで賑わっています。

この店の名物が、客の7割が注文する「カレーうどん」。10年以上かけて、出汁の材料をふんだんに使った濃い出汁に、企業秘密のレシピで作ったカレーの組み合わせを開発し、美味しいカレーうどんを作っています。大人気のカレーうどんですが、今もなお味を調整し続けています。

カレーうどんの味を調整するために、店主の尾藤さんは、自ら洗い場で下げられた食器を洗っています。

食器には、レンゲで最後まで食べたカレーの線が付いています。このカレーの線が付いているのは、完食したという証。尾藤さんは洗い場で、このカレーの線の確認をしています。

尾藤さんはこのようにおっしゃっています。

「洗い場はないがしろになりがちですが、実は一番正確にお客様の満足度がわかるのが、洗い場なんです」

さらに尾藤さんは、店で食べているお客様の様子をマメに見渡しています。お客様が食事をしながら麦茶のおかわりが多いのは、カレーうどんが辛すぎる可能性が高いのですが、その原因は煮干しや昆布の状態が悪いため。そんな時は出汁を取る際に、煮干しや昆布を多めに入れるようにしています。

 

「なるほど!」と思いました。

うどん店やラーメン店のようにお客様がどんどん入れ替わる店では、「完食したかどうか?」で正確にお客様の満足度を把握できます。しかもカレーうどんの場合、レンゲで残りをすくい取るほど追い込んで食べるのは、美味しさに満足した証でもあります。

尾藤さんはそこをチェックしているのですね。

 

KPIという言葉があります。「業績評価指標」という意味です。(Key Performance Indicatorの略)

尾藤さんは、お店のKPIを次の2つに設定し、マメにチェックしているのです。

レンゲの線 = 「顧客満足度」のKPI
麦茶のおかわりの頻度 = 「お客様が辛いと感じるかどうか」のKPI

お客様のことを理解するヒントは、お客様がいる現場にあります。当たり前のことですが、ただ漠然とお客さんを見ていても、なかなかわかりません。

尾藤さんのように、お客様を理解するためのシンプルなKPIを設定し、それをマメに把握し、改善し続けることが、必要なのです。

 

 

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私の失敗体験 – 製品開発編

 

「マーケティング専門家」ですが、実は私、理系です。

小学生の頃から理科の時間が大好きで、自然と大学も理科系に。社会人になって日本IBMに新卒入社し、製品開発部門の所属になりました。

「いい商品を作りたい!」

いつもこう思っていました。当初は製品開発部門の中でも管理系の仕事で製品開発に関わることができませんでしたが、29歳でやっと希望がかない開発部門に異動、晴れて製品企画担当者になりました。

当初は製品企画という仕事自体がわからず、四苦八苦していましたが、ある日、事業部の将来をかけた商品を開発することになり、その製品企画担当者に任命されました。責任重大です。

ちょうど市場が立ち上がり始め、ユーザーの導入検討も始まったばかりの製品分野です。市場に関するあらゆる情報をかき集め、徹底的に調査・分析しました。さらに先行ライバル製品のことも詳細に調べ上げました。

そして製品開発グループと話し合い、機能的にライバルとまったく遜色がない製品に仕上げました。機能表で〇×をつけると、自社の商品が勝つ状況になりました。さらにライバルと比べてお買い得な価格設定にしました。加えて大切な顧客データの保護機能も、業界に先駆けて最高レベルにしました。

開発中の製品を営業に説明すると、営業からは「これなら売れる!ぜひお客さんに提案したい」。引き合いも多かったのです。

 

満を持して商品を発表・出荷しました。

……まったく売れません。
それも、当初の予定よりも2ケタ少ない数字です。

 

アンラッキーな面もありました。製品出荷は1992年年末。バブル崩壊が始まった時期でした。多くの企業が、大規模プロジェクトを見直し始めていました。

商品企画担当者だった私は部門を異動して、製品営業になり、全国を売り歩きました。

この製品のことは、この世の中で私が一番わかっている自負がありますし、熱意も人一倍。お客さんに気合いを入れて製品デモや製品説明しますが、

「興味がない」
「面白いけど時期尚早かな」
「投資ができないんでね。せっかく説明してくれたのに、悪いね」

という反応がほとんどでした。しかしそんな中でも数をこなすことで、採用ユーザーは徐々に増えていきました。

 

そのうちお客様の大規模プロジェクトに入札する機会が何回かありました。お客様担当営業と製品開発部門でチームを組んで応札。その結果、ライバル企業との激しい受注競争の末、案件の多くを受注しました。

2年ほど頑張った結果、売上はなんとか当初予定して数字とケタが合うレベルまで回復しました。

私はこの製品開発のマネージャーを兼任しながら製品営業を続けることになり、開発チームメンバーとともに採用ユーザーのサポートを行うことになりました。

数年をかけて、やっと新製品のビジネスは、軌道に乗り始めました。

 

そんなある日、思いがけないことが起こりました。IBM本社が、この製品の開発中止を決定したのです。

IBMは米国である会社(仮にA社とします)を買収し、「A社製品をIBMの戦略製品とする」と決めたのです。この瞬間、私たちの新製品はA社製品と社内競合製品になりました。IBM全体から見ると二重投資は避けたいわけで、私たちが心血注いで育ててきた新製品はやめることになったのです。

 

私が悔やんでも悔やみきれなかったことがあります。私が企画段階で比較検討していた製品の中に、このA社製品もあったのです。

当時からIBMはA社と世界的に提携しており、A社製品の機能も比較的高かったのです。私はかなり早い時期にA社製品を職場で実際に使ってみて、細かく機能確認をしていました。IBMもA社と緊密な協業関係にあったので、「新製品の開発はやめて、A社製品を日本向けに機能強化する」という選択肢もありました。

しかし職場には、心血を注いで新製品に取り組んでいる数十人の製品開発チームがいます。私は「自分たちの事業部で、製品開発する」ということにこだわりました。A社製品よりも高機能の製品を開発することを製品開発部長に進言。製品開発チームもそれを後押しし、それが事業部方針になりました。

それから数年後、新製品が立ち上がった時期になってIBMはA社を買収して、A社は会社の一事業部になり、A社製品がIBMの戦略商品になった、というわけです。

 

あとから考えると結果論ですが、私が製品企画していた時期に「お客様に価値を提供する」という考え方を徹底していたら、自分たちの事業部で新製品開発はせずに、A社との提携を活かしてA社製品の機能強化を行う方針が正解だったかもしれません。

しかしそうしませんでした。

製品開発の本来の目的である「お客様に価値を提供すること」ではなく、製品開発の手段に過ぎない「製品を開発すること」にこだわってしまったのです。

 

当時「部門の新製品は、開発中止する」と申し渡された時、このことがわかりませんでした。

「なんで一生懸命開発した商品が、中止にさせられたのだろう?」

中止に至った社内事情はわかるものの、理不尽な思いでただ悶々としていました。

「…でも、もしかしたら『いい製品を作る』という考え方だけでは、ダメなのかもしれない…」

入社当初の「いい商品を作りたい!」という考えを変えて、私が製品開発マネージャーからマーケティング職に異動したのは、この直後です。

 

その後マーケティングを学び、業務でマーケティング戦略を立てて、実践してきました。

そしてなぜ新製品開発が失敗したのか、よくわかりました。やはり自分に原因があったのです。

いま振り返れば、当時の私の状況は、世の中で「プロダクトアウト」と呼ばれる状況でした。

商品開発の本来の目的は、「顧客づくり」です。
商品開発の「商品づくり」は手段に過ぎません。

当時の私が陥ってしまったように、手段に過ぎない「商品づくり」が目的にすり替わってしまうのが、「プロダクトアウト」という状況です。この状況になると、なかなか商品は売れません。

 

多くの人たちを巻き込んでしまったこの製品開発プロジェクトの失敗は、自分がマーケティング戦略を考えていく上で貴重な原体験になりました。

「商品づくり」が目的になったプロダクトアウトな考え方ではなく、「顧客づくり」を常に考えた仕事を広めたい。

その思いで、今の仕事をしています。

 

 

 

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山口県観光連盟主催「やまぐちDMOフォーラム」で講演しました

2017/1/31、山口県観光連盟様主催の「やまぐちDMOフォーラム」で講演致しました。

山口県様と山口県観光連盟様では、「やまぐちDMO」確立に向けた取組を行っておられます。

“DMO”とは、観光地域づくりのまとめ役となる組織のことです。(“Destination Management/Marketing Organization”の略です) 観光地域づくりには、その地域の実に幅広い関係者と協業が必要になります。そのまとめ役を担うのがこのDMO。そこで山口県では、このDMOがどうあるべきなのか、関係する方々が集まって、毎月開催するフォーラムで議論しておられます。

私は第8回目となるこの「やまぐちDMOフォーラム」にお招きいただきました。(ちなみに第7回目は、阿智村・ヘブンそのはらの白澤社長が登壇されました)

やまぐちDMOフォーラム講演20170131

第8回目のテーマは、「山口県の強みを考える」

そこで『「そうだ、星を売ろう」 阿智村から学ぶ 『コト』発想への変革』という講演タイトルで、阿智村の「日本一の星空」が強みになりえた理由と、「日本一の星空」を本当の強みに育て上げた過程をお話ししました。

講演には100名近い山口県の観光に関わる皆様が集まりました。

 

まったくの偶然だったのですが、この講演が13:45に終了した後、同じ湯田温泉で15:00から西京銀行様主催「ゼファクラブ新春合同例会」でも講演しました。この「やまぐちDMOフォーラム」の会場であるカリエンテ山口から、「ゼファクラブ新春合同例会」の会場であるホテルかめ福まで、わずか徒歩10分の近さ。初めての山口出張で、しかも同じ日に同じ山口県・湯田温泉でこのように講演の機会が重なることに、山口県との不思議なご縁を感じました。

この講演の機会をいただいたJTB様に、深く感謝いたします。

 

西京銀行様主催「ゼファクラブ新春合同例会」で講演しました

2017/1/30(月)に山口県徳山、1/31(火)に山口県湯田温泉で行われた、西京銀行様主催「ゼファクラブ新春合同例会」で、『お客様が買う理由を、いかに作るか? 「ニーズ対応」から、「ニーズサキドリ」への変革』と題して、講演する機会をいただきました。

山口県の西京銀行様お取引先企業を中心に、それぞれ200名、合計400名の経営者の皆様がお集まりになりました。

 

こちらは1/30(月)、徳山の講演。

西京銀行様講演20170130-2

 

こちらは1/31(火)、湯田温泉の講演です。

西京銀行様20170131

講演後は懇親会があり、経営者の皆様と濃密な意見交換をさせていただきました。

 

かつて長州藩だった山口には、幕末に松下村塾から明治維新を成し遂げた人材を数多く輩出しました。今回参加しておられる経営者の皆様も、まさに「明治維新を成し遂げた人たちもかくあったのでは…」と思われる「志」がある方々ばかりでした。

西京銀行様は、この山口に根ざして、従来の銀行の枠を大きく超えた数多くの取り組みにより、山口発の産業育成に尽力しています。

西京銀行様の平岡英雄頭取は、「地方銀行の半沢直樹」とも呼ばれる方で、顧客中心主義を銀行で徹底しており、その取り組みはWeb版Goetheでも紹介されています。

Web-Goethe

今回の講演でも、平岡頭取ご自身が東京・大手町にある弊社オフィスにお越しになって、講演の事前お打ち合わせを行いました。

 

今回、山口に出張する機会をいただき、その様々な取り組みを学ばせていただき、とても啓発されました。

 

このような機会をいただき、本当に有り難いですね。

 

 

 

わずか20年で、マーケティングが必須科目になった理由

matketing for everybody

 

最近、経営者やマネジメントの方々とお話しして、気がついたことがあります。皆様が異口同音に、こうおっしゃるのです。

「マーケティングの考え方を、一人一人の社員にもっと知ってもらいたい」

ほんの20年前は違いました。

私がマーケティングを学び始めたのも、ちょうど20年前。前職の日本IBM社員時代、マーケティング職に異動した時でした。当時はマーケティングはマーケティング専門職やマネジメントが学ぶものでした。専門用語も多く、とても苦労しましたが、一旦壁を乗り越えると、それまで仕事で苦労してきたことが「なるほど、そういうことだったのか!」とスンナリと腹オチして理解できるようになりました。

 

思えば、この20年で世の中は大きく変わりました。

世の中の変化が激しくなり、競争は厳しくなっています。競争に巻き込まれると、あっという間に価格勝負。この価格勝負から長期間抜け出せなくなると、人件費削減に迫られ、最後には待っているのは人員カット。こうなると会社は存続できません。

では、この状況をどのように乗り切るか?

激しい変化は現場で起こっているので、経営者やマネージャーはすべてはわかりません。だから経営者だけでなく、一人一人の社員が、競争に巻き込まれずに、お客様にとって自分たちが唯一の存在であり続けるように、考えて、実行し続けることです。

そのためには、常に自社ならではの強みを活かして、お客さんの心を掴むこと。そして現場の人たちに任せて、動きやすくし、競争から抜け出すことです。ここで役立つのが、「お客様が買う理由をいかに作るか?」というマーケティングの考え方です。

 

いまやマーケティングは「一部のマーケティング職やマネジメントが理解して進めればいい」というものではなくなりました。一人一人の社員が、目の前のお客さんの心を掴むために一人一人が知恵を出して、実際の行動に繋げていくために、「お客様が買う理由をいかに作るか?」というマーケティングの考え方を学ぶべき時代になったのです。

 

私自身、マーケティングを初めて学んだ20年前から、「マーケティングは、仕事に関わるすべての人に役立つものだ」と実感しています。

毎週お送りしているこのコラムやメルマガも、実に幅広い職種の方々に登録いただいています。現場のビジネスパーソンの方々も、「マーケティング戦略の考え方が必要だ」と実感しておられる現れなのでしょう。

最近、世の中でわかりやすいマーケティングの本が増えたのも、「マーケティングを理解したい」という幅広い人たちの強いニーズに応えるためなのでしょう。

 

私もその中で、一翼を担い、さらに新しい提言もしていきたいと思っています。

 

 

 

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「八甲田樹氷国際ブランド化推進会議」設立総会で、講演しました

2017年1月28日、青森で行われた「八甲田樹氷国際ブランド化推進会議」設立総会で、講演しました。

八甲田山の樹氷のことをご存じの方は多いと思います。この樹氷、実は「強い風」、「湿った空気」といったとても限られた条件が必要なのをご存じでしょうか。津軽海峡に面し、日本海からの寒く湿った空気が、強い風で太平洋に抜けていくという、青森県独特の条件があるからこそ、この樹氷が生まれるのですね。

そこでこの樹氷を国際ブランドにしようということで、青森市内の企業8社が発起人になって、立ち上げられたのが、この「八甲田樹氷国際ブランド化推進会議」です。

樹氷は木々に吹き付けられた雪が大きく肥大し、まるで怪獣のように見えます。実際、英語では”Snow monster”とも呼ばれています。

樹氷

この「八甲田樹氷国際ブランド化推進会議」の設立は、日本経済新聞でも記事になりました。
日本経済新聞1/26記事「八甲田の樹氷、ブランド化 推進会議設立」

 

設立総会では、発起人である八甲田ロープウェイ株式会社の柳谷章二社長が議長を務められ、八甲田樹氷国際ブランド化推進会議の会長に就任されました。

総会の様子

私は『「そうだ、星を売ろう」 阿智村から学ぶ 『コト』発想への変革』と題して、阿智村の取り組みをお話し致しました。

講演の様子

総会では40社以上の企業が集まり、「八甲田の樹氷を国際ブランド化していく」という皆さんの強い想いをヒシヒシと感じました。

外は寒く雪でしたが、会場ではとても熱い熱気を感じました。

青森雪

このような機会をいただき、感謝です。

新たな変革で成長を目指すIBMから、学べること

ここ数年間、IBMは売上が低迷してきました。主力事業がクラウドなどの新時代の流れに対応できなかったためです。
全世界に30万人以上の社員と、幅広いIT関連製品・サービスを抱えるIBMは、いま変革に取り組んでいます。そして成果の兆しが見え始めています。

IBMと同様に、

「主力事業が低迷している。しかし組織やしがらみが大きくて、なかなか変えられない」

こんな悩みを抱える日本企業は、少なくありません。

IBMの変革への取り組みは、私たちにとってもとても参考になるものです。そこで今回は、IBMの最新の変革についてご紹介したいと思います。

 

下図は、2016年のIBM投資家向け説明資料からの引用した売上推移の図です。2011年1069億ドル(12兆円)あった売上は、2015年には800億ドル(8.8兆円)まで下落しました。

IBM Revenue推移

売上が低下した大きな理由の一つは、「企業向けに、ITのハードウェアとソフトウェアを、サービス込みで販売する」というそれまでのIBMのビジネスモデルが、クラウドの台頭で、賞味期限が切れ始めたためです。

収益も落ち始めているもののまだ高収益を保っています。徹底的に効率を高めた結果、粗利益率(上の図でGP: Gross Profit)も51%まで上がっています。

しかし一方で、税引き前利益の推移は下図の通り。2016年のIBM投資家向け説明資料からの引用です。

IBM Pretax Income

粗利益率は上がっているものの、売上低下とともに税引き前利益は下がっています。

まだ高収益で体力もある今のタイミングで、変革が必要です。 そこでIBMは変革に取り組んでいます。

 

変革をするための一つの方法は、成長分野とそれ以外の分野をわけて、成長分野に投資することです。それまでIBMは、ハードウェア事業、ソフトウエア事業、サービス事業といった事業部毎に収益目標を置き、全社的に収益管理を行っていました。しかしこの組織体制のままでは、「成長させたい分野」と「その他の分野」が不明確です。

そこで2015年、IBMは成長しているいくつかの事業分野(アナリティックス、クラウド、コマース、ソーシャル、セキュリティ、ワトソン)向けの、新事業部を立ち上げました。これら各事業部は、従来のハードウェア事業部・ソフトウェア事業部・サービス事業部といった事業部が持つ製品やサービスを組み合わせて、顧客企業向けに提供します。

たとえば新事業部の一つである「アナリティックス事業」では、ハードウェア事業部が提供するIBM製サーバー、ソフトウェア事業部が提供する分析用ソフトウェアやデータ管理用ソフトウェア、さらにサービス事業部のコンサルタントが提供する業界特化型のアナリティックスサービスを組み合わせて、顧客に提供します。

つまり既存事業部の組織の壁を取り払い、これらの新たな事業を進めたのです。

さらに2016年、IBMは次の5分野を「戦略分野」(Strategic Imperatives)と位置づけました。

アナリティックス …膨大なデータから知見を見つけ出す仕組み
クラウド …企業のITインフラをクラウドで提供する仕組み
モバイル …スマホやIoTなどを開発・管理する仕組み
セキュリティ …ITの安全性を確保する仕組み
ソーシャル …人同士がよりよく協業できる仕組み

IBMはこれらの「戦略分野」と「その他の分野」を明確にわけて、収益管理を始めました。「数値化できないものは、管理できない」という言葉があります。常に徹底的に数値化するのが、IBM流。それがここでも行われました。

そして戦略分野にヒトモノカネをシフトしました。実際に2016年3月のIBM投資家向け会議でCEOのジニー・ロメッティも、「戦略投資分野への技術者シフトを行っている」と語っています。

 

2016年3月にこの方針が発表されてから1年近くが経過し、2016年度を終えた現在のIBMの状況は、下記の通りです。
(2016年のIBM投資家向け説明資料と、2016年第4四半期業績発表資料をもとに、筆者が作成)

IBM戦略分野売上推移

 

棒グラフ全体の高さが全社売上、赤い部分が「戦略分野」、グレーが「その他の分野」です。

現時点で数字の上では、IBMはまだ「完全復活した」とは言い難い状況です。しかし縮小が続いた全社売上も2016年には下げ止まり、「戦略分野」も全社売上比率の半分に迫りつつあります。

年率15%程度で成長してきた「戦略分野」は、2016年も14%成長しています。全体売上に占める「戦略分野」の比率はこのように拡大してきています。

22% (2013年) → 27% (2014年) → 35% (2015年) → 41% (2016年)

一方で「その他の分野」が急速に縮小し続けていることに、改めて驚きます。

 

下記はこの5年間のIBM株価推移です。株価は2013年の215ドルから、2016年1月には121ドルまで下がりましたが、そこから復活して現在は171ドル。株式市場でもIBMの復活は評価されているように見えます。

スクリーンショット 2017-01-24 08.24.40

以上、IBMの投資家向けサイト上の公開情報に基づいて、ご紹介させていただきました。

 

IBMが行っていることは、「言われてみれば、当たり前のこと」です。

●市場と顧客の変化を、見極める
●市場と顧客の変化にあわせて、今後の成長が見込めて儲かる「戦略分野」(投資分野)と、今後の成長が見込めない「その他の分野」(現状維持分野)を、明確に分ける
●ヒトモノカネを、「戦略分野」にシフトする
●進捗状況が把握できるように、評価指標(KPI)を決め、目標値を設定し、常に進捗状況を把握し、必要な施策を適宜打っていく

「言われてみれば、当たり前のこと」ではありますが、それを実行するのはなかなか難しいことです。あらゆるITビジネスのインフラを提供し、世界100ヶ国以上でビジネスを展開する巨大組織IBMで、短期間でこのような変革を実施し、成果を挙げていくのは、「さすが、IBM」とも言えます。

IBMの創業は100年以上前。創業当時は肉秤も作っていました。紙の統計マシンが主力商品だった時期もあります。変化が激しいIT業界で、常に自社を大きく変革させていくIBMの強さを改めて実感します。

 

一方で数年前のIBM同様、日本でも、市場の変化に追いつかずに、売上も利益もに低迷する企業は少なくありません。

一時の低迷から脱却しつつある最新のIBMの取り組みから、私たち日本企業が学べることは大きいのではないかと思います。

 

必要なことは、市場と顧客の変化にあわせて自社をどう変えるか、仮説を立てること。そして仮説検証を繰り返しながら、愚直に実行し続けることなのです。

 

 

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成功が生み出す慢心の罠。どうすればよいのか?

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仕事でいい結果が出たときは、気持ちがいいものです。

いまの最高にいい状態を迎えているのは、それまで地道な努力を続けてきたからです。「自分を褒めてあげたい」と思うこともあるでしょうし、仲間とともに「ここまでよく頑張ってきたなぁ」とねぎらい合うこともあるでしょう。

しかし多くの場合、次に起こる問題は、そんな時に密やかに仕込まれています。

まず当初の危機感が、失われます。
「この調子で続けていけば、大丈夫」という慢心が生まれます。
そして皮肉なことに、成功体験が、新たな挑戦の障害になってしまうのです。

 

では、どうすればいいのでしょうか?

 

常に新しい問題を探し続けることです。

たとえいま、順風満帆であっても、必ず何らかの問題があります。

それは未解決の問題だったり、それまで気がつかなかった新たな課題だったり、あるいはこれまで未開拓だったビジネスチャンスかもしれません。あるいは、うまく言葉にできないけれども、何となく心にひっかかるある種の変化かもしれません。

「成功が生み出す慢心の罠」に陥らないためには、それらの新たな課題を常に貪欲に見つけ出し、謙虚に対処し続けることが必要なのです。

さらにチームで新たな問題に対してどのように取り組むのかを話し合うことです。新たな問題は、慢心したチームを引き締めてくれます。

 

新しい問題が、次の成長を生み出すのです。

 

 

 

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たった一つの悩み事への対応が、「お客様が買う理由」に繋がる

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講演の後、こんなご質問をいただきました。

「実際に当社のケースを考えても、『お客様が買う理由』は色々と考えられます。
ひとつひとつ対応しなければいけないんでしょうか?」

確かにお客様のニーズには実に色々なものがあります。考え始めると、それこそ無数にでてきます。

お金も人も無限にあるわけではないので、無数にあるニーズに対応するのは不可能です。

 

ここで事例をご紹介します。米国のレンタカー業界の事例です。レンタカー業界はそれなりに成長はしているものの、ライバルのカーシェアリングが急成長していて、厳しい状況です。

レンタカー業界の視点で考えると、お客さんの色々な不満が考えられます。

・もっと車種を増やして欲しい
・もっと安くして欲しい
・もっと接客を丁寧にして欲しい
・….

こんな様々な不満の中で、切実なお客さんの不満がありました。

米国で出張するビジネスマンは、都市間を飛行機で移動し、空港に着陸するとレンタカーを借りて目的地へ移動します。

ここで問題になるのが、レンタカーを借りる際の手間と時間です。

空港からレンタカー事務所に立ち寄る
→ブースに並ぶ
→契約や保険内容を確認する
→免許証で本人確認をする
→色々な書類にサインする
→カギを受け取る
→車がある場所まで移動する…

これだととても時間がかかります。米国ビジネスマンも忙しいので、約束の会議の時間もあるので、気が気ではありませんよね。

 

米国レンタカー業界の老舗・ハーツは、「この手間を一気に簡略化すれば、お客様の不満を解決できる」と考えました。

そこで、

ネットでレンタカーを予約する (事前登録前提)
→空港に到着し、レンタカー事務所を素通り。駐車場に直行する
→駐車場脇の掲示板で自分の名前と駐車場番号を確認する
→鍵のかかっている車に乗り込む
→専用ゲートで係員に免許証を見せて確認すれば、駐車場を出られる

というようにしました。

ほぼ自分の車を使うのと同じ感覚です。

多忙なお客さんから見ると、貴重な時間も手間も大きく削減できるのはとても有り難いことですね。

 

見極めるべきポイントは、「お客様が本当に困っていて、少々高くてもいいからお金を払って解決したい」という課題を見つけることです。ではこのようなニーズを見つけるにはどうすればよいのでしょうか?

この事例は、日経ビジネス2016/10/10号の特集「顧客を依存させる 凄い囲い込み」に掲載されていた事例ですが、このシステムを担当したコンサルティング会社の社長は、このように言っています。

「レンタカーサービスで顧客が本当に喜ぶことは何かを突き詰めた結果、車種の拡充でも低料金化でも丁寧な接客でもなく、貸出手続きの簡素化以外にない、という結論にたどりついた」

ただ考えるだけでも、あるいはお客様に聞くだけでは、この答えは出てこないのです。

仮説を考えて、その仮説を持ってお客様に検証していく。

この繰り返しが必要なのです。

 

 

 

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自分たちの商品がコモディティ化している。どうすればいい?

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「『常にお客様の期待を上回り続ける』というお話し、その通りと思います。
ただ、我が社の商品の多くはコモディティ化しています。
成熟期から衰退期に入っている商品も多い。
今の自分たちの商品がコモディティ化している場合、どのようにすればよいのでしょうか?」

講演が終わると、ある方からこんなご質問をいただきました。

現代では商品寿命がとても短くなっています。1〜2年前まで売れ筋商品だったのに、ライバルが登場してあっという間に価格競争に陥り、急速にコモディティ化することもよくあること。コモディティ化は、多くの業界が共通に持っている切実な課題です。

「まったく同じことで悩んでいる」という方も、多いのではないでしょうか?

 

このご質問に、私は次のようにお答えしました。

コモディティ化した事業でも、必ずお客様の不満があります。
その中で、お客様が「お金を払ってでも解決したい」という不満を見つけて、解決することです。

たとえば「コメの販売」は、まさにコモディティ化した業界です。しかしこの業界に異業種から参入してビジネスを伸ばしている会社があります。アイリスオーヤマです。

実はコメには隠れた不満がありました。店で売られている白米は、玄米を精米してヌカを落とした状態で売られています。この白米の状態のまま空気に触れていると、酸化が進んでまずくなってしまうのです。

ちなみに我が家では、コメは必ず玄米で買っています。そして妻が玄米を自宅にある家庭用精米器で精米し、三分づきにした状態で炊いています。確かにこうするととても美味しく炊けるのですが、手間がかかるので普通はなかなかやりませんよね。

現実はどうなっているかというと、コメを売る方は「主食だから安く売ろう」と考えて、精米したコメをキロいくらの低価格勝負に走っています。買う方は5Kgとか10Kg単位で1ヶ月分をまとめ買いするので、家庭の中でコメの酸化が進んでしまい、味が劣化してしまうのです。

でも、本当はもっと美味しくできるはずですよね。

アイリスオーヤマは、この課題に挑戦しました。低温工場を作って玄米のまま保管し、需要に応じて精米します。包装は3合(450g)の小分けパックで脱酸素剤も入れて出荷します。家庭で炊く直前に開封するので精米直後の美味しい状態でコメの味を楽しめます。

10万円以上の高級炊飯器で酸化した高級米を炊くよりも、普通の炊飯器で新鮮な普通のコメを炊いた方が美味しいそうです。

 

このように、一見コモディティ化している業界でも、隠れたお客様の不満が必ずあります。気がつかずに酸化したコメを食べているように、それはもしかしたら、お客様も企業側も「当たり前なこと」として、受け容れていることかもしれません。だからこのような不満は、ただお客様に聞くだけではなかなか出てきません。

お客様の声や市場の状況を観察しながら、「お客様の隠れた不満は何なのか?」と考えることが必要なのです。

そして新たな発想や技術を活かして解決できれば、それはコモディティ化を抜け出す糸口にもなります。

そして常に謙虚な姿勢で、本当にお客様の不満があるのか、その不満を解決できるのか、そしてお客様が本当にお金を払うか、仮説検証を続けていくことが必要なのです。

 

ただ、時間が経てば他社も必ず追従してきます。
だから常に新しいお客様の不満を探し続けることが必要なのです。

もし「お客様の不満がまったく存在しない」ということであれば、対応は難しいでしょう。しかし現実には、そういうことはあり得ません。お客様は、必ず様々な隠れた不満を持っています。それを解決することが、商売のネタになり、さらによりよい世の中を創っていくことにつながるのです。

 

 

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「お客様のために…」と「お客様の目線で…」は、正反対

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商品やサービスを開発する際に、こう考える人は多いのではないでしょうか?

「お客様のために、こんな商品を作ろう」
「お客様のために、こんなサービスを提供しよう」

しかし「お客様のために」と必死に頭を捻って考えてもお客様が買わずに、想いをこめて開発した商品・サービスが消え去ることもまた、多いのです。

 

必要なことは、常に「お客様の目線で」考え続け、実践すること。

「お客様のために」と「お客様の目線で」は、一見すると大きな違いがないように思えます。しかし実は正反対なのです。

 

「お客様のために」と考える場合、まずお客様のニーズを想定して、「こんな商品やサービスを提供すれば買ってくれるはずだ」と考えます。しかしながら、そんな商品を本当にお客様が買うのかをキチンと検証しているケースは、意外と少ないのが実態です。

そして商品を販売し始めても、なかなか売れないことが多いのです。

 

「お客様の目線で」考える場合、「そもそもどんな商品やサービスを提供すれば、お客様のお役に立てるのだろうか?」と考えます。リアルなお客様ニーズを起点に考えるので、最初からニーズをキッチリと押さえています。その上で、そのお客様ニーズを満たす商品を作っていきます。

そして商品を販売し始めると、それを待ち望んでいたお客様が買ってくれるのです。

 

「お客様のために」は、お客様を上から目線で見ている。
「お客様の目線で」は、お客様と同じ位置でお客様を見ている。
そんなイメージです。

 

現実には「こんな商品やサービスを作りたい」という強い想いが商品作りの原動力になることも、多いものです。その強い想いは、とても大切なことです。

しかし「こんな商品やサービスを作りたい」という強い想いは、仮説です。仮説は検証が必要です。その強い想いを、「お客様の目線」でキッチリ検証する必要があるのです。

そしてとても難しいのは、「お客様の言いなり」でもいけないということです。

 

私たちは、お客様ニーズに大して常に謙虚であり続け、その一方でお客様が言うことを鵜呑みにすることもせずに、常に「お客様の目線」で、お客様のニーズを観察し続ける姿勢を失わないようにしたいものです。

 

 

 

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「破壊的イノベーション」トランプは新たな顧客を生み出したが…

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2016年11月の大統領選挙で、大方の予想を覆し、ドナルド・トランプがヒラリー・クリントンを破って、大統領に選ばれました。

当初は誰もが泡沫候補と思っていたトランプが大統領に選ばれるのは、とても意外なことに思えます。かく言う私も、まさかトランプが大統領に選ばれるとは思いませんでした。

 

さて市場では、私たちの大多数が、…

「こんなのまがい物だ」
「売れるはずがない。誰が買うんだ?」

…と思っていた商品が、いつの間にか新しい顧客を掴み、大きく成長し、主流製品になることがよくあります。マーケティングの世界ではこのような現象を、「イノベーションのジレンマ」と呼んでいます。

 

たとえば50−60年前。ラジオの世界では、真空管ラジオが全盛期でした。大きくて重いものの、音質はいいので、米国では居間に置いて家族で聞いていました。

その頃、ソニーはトランジスタラジオを発売しました。小さく軽く、電池で動きますが、音質はよくありません。当時、真空管ラジオを聴いていた誰もが「こんなのオモチャだ。誰が買うんだ?」と思っていました。

しかし知らないところで、トランジスタラジオを買っていた人たちがいたのです。 当時、ロックンロールが大流行。エルビス・プレスリーが大人気で若者の心を掴んでいました。しかし親の世代は「ロックは不良の音楽」と言って、居間の真空管ラジオで聴くのを許しませんでした。そこで若者は、トランジスタラジオを買って家の外で聴き、仲間と一緒にロックを踊っていたのです。

真空管ラジオメーカーにとって、怖いのはその後です。技術は進歩します。トランジスタラジオは性能を急速に向上させて、真空管ラジオに追いつきました。こうなると真空管ラジオは重いだけ。真空管ラジオは、急速にトランジスタラジオに代替されていきました。

かつて真空管ラジオもイノベーションであり、「居間で真空管ラジオを聴く」という顧客を生み出しました。しかしその顧客を大切にするあまり、「外でトランジスタラジオを聴く」という新たな顧客が生み出されていることに気がつかなかったのです。そしていつの間にか破壊的イノベーションであるトランジスタラジオが進化して主流になり、真空管ラジオは主流から外れてしまうのです。

 

極めて単純化すると、真空管ラジオがヒラリー、トランジスタラジオがトランプと考えると、なぜトランプが当選したのかがわかるのではないかと思います。

ヒラリーは、ビル・クリントンやオバマといった民主党主流派の流れをくみ、「既に米国は偉大だし、これからも偉大であり続ける」と言いました。 「今の米国のままであって欲しい」という人たちは、ヒラリーを支持しました。

一方でトランプは、「米国は弱くなった。仕事がなくなったのは移民のせいだ。メキシコ国境に壁を作り、米国を再び偉大な国にする」と言いました。

ヒラリーを支持する人たちからすると、トランプが言うことは事実に基づいていないし支離滅裂です。しかしロックが大好きな若者がトランジスタラジオを買ったのと同じく、「今の米国を変えて欲しい」と考える人たちの心は掴んでいました。そして親の世代がトランジスタラジオが流行っているのを知らなかったように、ヒラリーを支持する人たちも今の政治への不満がこんなにも溜まっていたことに気がつかなかったのです。

その結果、こうなりました。赤がトランプ、青がヒラリー。州の各地区での支持率です。特に中部ではトランプ圧勝です。

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米国人の識者たちは「自分の周りにはトランプに投票したいという人は一人もいない。何で選ばれたのかまったく不可解だ」と一様に口を揃えて言っています。米国外にいる私たちも、「誰がトランプに投票するんだ?」と思っていました。加えて直前の世論調査ではヒラリー優勢でした。

しかし、内心トランプを支持する有権者に、世論調査で「トランプを支持するか?」と聞いても、リベラリストからは責められてしまう状況もあり、その場では「支持しない」と答えながら、実際にはトランプに投票した人が多かったようです。

 

同じことは、企業に対しても起こりえます。「絶好調、大丈夫」と思っていても、「こんなのまがいもの。オモチャ」と思っていたライバルが、知らない間に新しい顧客を獲得している。そういうことが静かに起こっているかもしれないのです。

常に顧客は変わり続けていると考えて、顧客も気がつかないような、隠れた顧客の課題を見つけ出す。そして解決策を作る。その上で、実際の商品を見せて、本当にお金を出して買うかどうかを見るしかないのです。仮説検証の繰り返しです。

 

さて、トランプ次期大統領の課題は、憎悪を煽って当選したことでしょう。これによる今後の影響は計り知れません。

望むらくは、音質が悪かったトランジスタラジオが急速に性能向上して真空管ラジオの性能を追い越したように、トランプも急速に進化して、既存の政治家よりも高い能力を獲得することを願いたいところです。

 

 

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バリュープロポジションだけでは、お客様は買ってくれない

「お客様が買う理由(=バリュープロポジション)を創りましょう」と常にお話ししています。

ただ「バリュープロポジション」だけでは、お客様は買ってくれません。「バリュープロポジション」を、具体的にお客様に提供することが必要です。「では、どうすればよいのか?」というのが、今回のお話しです。

 

必要なことは、バリュープロポジションに基づき具体的な施策をキチンと作り、そして実行することです。そのためには、

「どんな商品を提供するか?(商品戦略)」
「どうやってお客さんに伝えるか?(プロモーション戦略)」
「どうやって売るか?(チャネル戦略)」
「いくらで売るか?(価格戦略)」

この4つをキッチリと作ることです。これら4つを総称して「マーケティングミックス」と呼びます。

ただこれだけだと何をすればよいかがよくわかりませんよね。そこで私の原体験となった、具体的な例でご紹介します。

 

2002年、私は日本IBM社員で、企業向けにコールセンターの仕組みを販売する事業部のマーケティングマネージャーでした。コールセンターは電話とコンピューターがお互いに連携したもの。大企業向けになると数億円から数十億円規模の大がかりなシステムになります。1990年代後半から大企業は顧客満足度を高めるために一斉にコールセンターを作っていました。そのためこのコールセンター市場は大きく成長していました。

しかし2002年頃になると、日本の大企業は、各部門・各拠点でコールセンターを一斉に導入した結果、お客様対応がバラバラな状況に陥っていました。

たとえばネット注文して届かない商品の配送状況を、コールセンターに尋ねても「わかりません」。お客さんは不満です。顧客満足を上げるためにコールセンターを各所に導入したのに、逆に顧客満足を下げかねない状況になっていたのです。

このコールセンター市場で、IBMは大きな強みがありました。

IBMは1994年頃に経営不振に陥り、外部からガースナーがCEOが就任。ガースナーの方針で全社で”One IBM”(お客様から見て一つのIBMになる)という号令の下、変革を行って10年近くが経過していました。1990年代後半にはコールセンターが統合され、その成果が出始めていたのです。2002年頃の日本のお客様の課題を先に経験し、その解決を図っていたのです。

当時、コールセンターを売っていた会社の中で、全社でコールセンターを統合していたのは、IBMだけでした。

そこでIBMのバリュープロポジションを、「『バラバラなコールセンターを統合したい』と考えている大企業に、自社のコールセンター統合経験を提供できる、唯一の会社」としました。

 

ただこのようにバリュープロポジションを決めて、お客様にいくらそのバリュープロポジションを伝えても、お客様は買ってくれません。バリュープロポジションは、単なるお題目ではなく、実際にお客様に提供できるように具体化する必要があるのです。そこで私はその作業を始めました。マーケティングミックス毎にご紹介します。

■「どんな商品を提供するか?(商品戦略)」

IBM社内にはコンサルティングサービスを提供する事業部がありました。この事業部と戦略を共有した上で、IBMのコールセンター統合経験を提供するコンサルティングサービスを整備しました。

 

■「どうやってお客さんに伝えるか?(プロモーション戦略)」

日本IBM社内にあるコールセンターには、既に年間100社の企業が事例見学に来ていました。ただコールセンターの営業チームとは協業していませんでした。そこでこの見学会に予算を出して、「IBMコールセンター事例見学プログラム」として正式な営業プロセスを作りました。

さらにコールセンター長を集めて、隔月で半日間の「コールセンター長会議」というセミナーを実施しました。ここでは製品の紹介は一切行わず、コールセンター長の課題や各社取り組みを共有し、現場のコールセンター長の悩みに応えられる内容にしました。

 

■「どうやって売るか?(チャネル戦略)」

実際に売るのは日本IBMの直販セールスです。コールセンターのお客様案件を担当する300名のIBM直販セールスとのコミュニティを作り、常に最新の情報を共有しました。

 

■「いくらで売るか?(価格戦略)」

上記の施策を通じて、価格競争からの脱却を目指しました。

 

これらの施策もあって、日本IBMはコールセンター市場で市場シェア・市場認知度、ともに1位になりました。

 

このように、バリュープロポジションをキッチリと決めた上で、

「どんな商品を提供するか?(商品戦略)」
「どうやってお客さんに伝えるか?(プロモーション戦略)」
「どうやって売るか?(チャネル戦略)」
「いくらで売るか?(価格戦略)」

…に整合性と相乗効果を生み出すように展開することで、とてつもない力を発揮できる、ということを実際に経験できたことが、私がマーケティングの仕事をする上で原体験になりました。

言い換えれば、マーケティング戦略の成功のカギは、一気通貫なのです。

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このように、企業の実務でマーケティングを実践すれば、売れるようになります。そしてアカデミーの世界ではなく、実際に事業に取り組む会社員こそ、このような形でマーケティングを実践し、マーケティングのプロフェッショナルになれる最も恵まれた立場にいるのです。

 

(ご参考までに、先月出版した「これ、いったいどうやったら売れるんですか?」の第6章では「はなまるうどん」の例を挙げて、バリュープロポジションからマーケティングミックスへの展開方法を紹介しています。ご興味がある方はご一読下さい)

 

 

 

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商品開発の成否は、チームの人選次第である

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「新商品の開発プロジェクトでは、どういう人を集めればいいのでしょうか?」

講演会が終わって質疑応答の時間、こんなご質問をいただきました。
皆さんは、どう思われますか?

かく言う私も、会社員だった頃、複数部門の人たちを集めてチームを作って仕事をすることがよくありました。今の仕事を始めてからはお客様のプロジェクトのチームにも入るようになりました。

そこで実感するのは、仕事が出来る人だけを集めても、知識や経験が豊富な人がいても、必ずしも上手くいくとは限らない、ということです。チームの人選はプロジェクトの成功を左右してしまうとても重要な問題です。

しかしツボを押さえれば、成功する可能性がグッと上がります。

そこで私は、このようにお答えしました。

 

私は、お客様の新商品開発プロジェクトのチーム実習に半年間入ることがよくあります。この実習は、5〜7名程度の1チームで進めます。その際、必ずお客様にお願いしていることがあります。

それは、「『ぜひこの実習に取り組みたい』という希望者だけでやりましょう」ということです。
そして、「絶対に、参加は強制しないでください」とお願いしています。

人が集まるチームは、まるで生き物です。

全員が「心からやりたい」と思って参加しているチームは、次々とアイデアを生み出して、難題も突破し、成長していきます。

しかし仮に一人であっても「やらされ感」を持って参加している人がいると、その人が黙ったまま何も発言しなかったとしても、チームのエネルギーは、まるでスポンジのようにその人に吸収されてしまうのです。

さらに全員が強制参加されたチームは、「いかに手間をかけずに半年間のプロジェクト実習をやり過ごすか?」がチームの暗黙の了解になってしまいます。皆さんも忙しい本来の仕事も持っていますので、これは責められません。

これはその人たちが悪いのではありません。人選が間違っているのです。

「心からやりたい」と考える人たちで進めることが、大切なのです。
「やりたい」と思っているから、アイデアも次々と出てきますし、少々の障害があっても乗り越えることができます。

 

商品開発プロジェクトの人選も、まったく同じです。

今年4月に出版した「そうだ、星を売ろう」でご紹介した阿智村の挑戦も同じです。温泉で長年発展していた阿智村は、宿泊客が低迷し、「日本一の星空ナイトツアー」を始めました。2012年、初日のお客さんはわずか3名でしたが、2015年は6万人を集めるまでに大きく成長しました。

この「日本一の星空ナイトツアー」も、最初は志を共有する数名で始めました。

プロジェクトの立ち上げ段階は、やることや課題が山積みです。いくらあっても時間は足りません。新商品開発プロジェクトは時間との勝負。反対派を説得する時間はありません。だから必要なことは、反対する人は最初から入れずに、志を共有する少数のメンバーで進めることです。

重要なのは、「意見が異なることはOK」ということです。異なる意見を話し合えば、一人だけでは思いつかなかったような様々なアイデアが生まれて行きます。しかし「これをやりたい」という志は同じであることが必要です。

 

新商品開発プロジェクトは、高度な知的作業です。そして人は、「やりたいことを、やる」時が、最も知的生産性を発揮するのです。

会社の中でも、複数部門の人が集まってチームを作り、期限を決めて商品開発プロジェクトを進めることが多くなりました。この時も、「これをやりたい」という人たちを集めると、成功する可能性がグッと高まるはずです。

 

 

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商品開発は、数字だけで判断してはいけない

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ある講演の質疑応答で、こんな質問をいただきました。

「マーケティングアプローチで新商品開発を進めようとすると、まずは調査して、その数字で判断する、というように、ともすると数字ありきで考え勝ちです。どういうところを気をつければいいのでしょうか?」

 

私は次のようにお答えしました。

実際にマーケティング調査をすると、ともすると膨大な情報と格闘しなければならないことも少なくありません。実は私自身、会社員だった頃に、マーケティング情報と調査結果の分析だけで、数ヶ月間を費やしたことがあります。

確かに数字で考えることは重要です。

しかしその上であえて申し上げたいのは、「数字はいったん忘れましょう」ということです。

 

新商品開発でまず把握しなければならないことは、「お客さんが本気で買おうと思うかどうか」です。
数字で考えるのは、その仮説を作り、検証するためです。
しかし新商品を立ち上げるかどうかを数字で判断しようにも、そもそも数字だけでは、どんな基準で判断するのかを決めるのは難しいものです。

たとえばある新商品開発を検討していて、その類似商品の普及率が現在3%とわかったとします。これをどう判断するか?

「まだ3%だから、可能性があるので、新商品開発をすべきだ」
「既に3%普及しているから、先行業者に追いつけないので、新商品開発は止めるべきだ」

数字だけで、新商品開発をすべきかどうかを判断するのは難しいですよね。
結局、本当にお客さんが買うかどうかは、実際にお客さんに検証してみないとわかりません。
だからまず数字で把握した上で仮説を作り、その仮説を検証しながら、確度を上げていくしかないのです。

たとえば、取引の聞き取り調査に基づいて「お客様はこんな課題がある」という仮説を作り、その仮説に基づいて試作品を作り検証するために取引先に持っていくと、それがきっかけでまったく新しい課題を掘り起こせることがよくあります。

リアルなお客様に聞き取り調査を行い、調査結果をチームで議論して仮説をチューンアップして、さらに試作品でお客様に検証することで、お客様も商品を開発する側も気がつかなかった新たな新商品のヒントが見つかるのです。

アンケート調査だけで判断していたら、このような新しい課題は見つけられないですよね。

 

だから私は、新商品開発ではこのような仮説を作るために数字を使うべきだと思います。

机上で数字だけで判断するのは危険ではないでしょうか。

 

一方で、数字で判断すべき分野もあります。

たとえば定点観測する場合、数字はとても重要です。景気動向とか、内閣支持率の推移は、まさにその典型ですね。私も、講演では必ずアンケート調査を行い、過去の講演と比較しながら、「今日、参加された皆様は満足されたか?どういう改善点があるか」を把握しています。

学校の試験で合格・不合格を判断する場合も、同様です。

これらは過去の豊富な数字の積み重ねがあるから、高い確度で数字で判断できるわけです。

 

しかし新商品開発は、逆に不確実性が高い分野です。

だからこそ、数字を把握した上で、数字だけで判断せずに、仮説を立てて検証することが必要だと思います。

 

 

 

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売れる商品作りは、習慣から生まれる

先週、ある企業様で半年間の仮説検証実習が終了し、最終報告会を行っていただきました。

各4チームから結果を報告いただいた後、私から、この仮説検証実習を今後にどのように活かすかをお話ししました。

仮説検証の考え方が身につくと、仕事のスピードは格段に上がり、お客様の課題を的確に把握できるようになり、売れる商品作りができるようになります。

そこで、お話しした内容を皆様と共有したいと思います。(お客様固有の情報は外しています)


 

皆様、

半年間の仮説検証実習、お疲れ様でした。

この実習では、まず仮説として「お客様が買う理由」を徹底的にチームで考え、その仮説を実際にお客様のもとで検証し、その結果を持ち帰って2週間毎にチームで議論しながら検証する、ということを半年間継続してきました。そしてその2週間毎に行うチームの議論には、私も参加しました。

当初は、皆様からはこんなご意見をいただきました。

・この頻度での仮説検証は、普段の仕事の数倍のスピードだ
・終わったと思ったら、あっという間に2週間経ってしまう。これはしんどい

一方で、この仮説検証実習を進めていくうちに、こんなご意見もいただきました。

・半年間かけて検討してきた事業企画の結論が、2週間で出た
・これまでになかったスピード感で仕事が進み、お客様から得られる情報も増えた
・チーム一体となった商品づくりの方法論が身についた

いまここで振り返ってみて、いかがでしょうか?

最初の頃、皆様はとても大変だったかと思いますが、今はこのやり方にだいぶ慣れて来た、と実感されていると思います。実際、すでにこの実習後も、各チームでは隔週で今後のチェックポイントの会議をスケジュールしています。

 

実はこれは、ジョギングと同じなんです。

ちなみに私もジョギングを日課にしてます。実は35歳になって急に腹が出てきたのがきっかけで、ジョギングを始めました。

それまでの私は、運動は大嫌いでした。

初めの頃は5分間、ゆっくりジョギングするだけで息が切れて、死にそうなほど大変でした。

ちょうどこんな感じでした。

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…実際には、私はここまではふくよかではありませんでしたが。(笑)

 

でも半年も続けると身体が慣れて、体脂肪も落ちて、1時間くらいは快調に走れるようになります。

こんな感じになります。

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…実際には、私はここまで格好良くありません。あくまでイメージです。(笑)

 

この隔週の仮説検証もまったく同じことです。要は「慣れ」であり、習慣なのですね。

最初は大変です。でも次第に慣れてきます。そのうち、「これをやらないとどうも落ち着かない」という状態になります。

そして大切なことは、個人ではなく、チームでこれを習慣にすることです。

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チームでこれが習慣になれば、それが次第に組織全体に拡がっていきます。そしてそれが組織文化になっていきます。

 

実は今回の実習で行ったことは、この写真にある雨粒を見つけることです。

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この雨粒ひとつひとつは、「お客様が買う理由」のヒントです。

実は「お客様が買う理由」のヒントは、この雨粒のように、私たちの身の回りに降り注いでいます。でもなかなか気がつきません。

この仮説検証実習は、この雨粒を見つけることが目的なのです。

 

そのために、この仮説検証実習では、

・お客様の「痛み」は、何か?
・どうすれば、解決できるか?

これをひたすら考えながら、

仮説を立てて → それをお客様に検証する

これを繰り返して来ました。

この仮説を検証して得た「学び」が、最大の差別化になる、ということも、皆さんは半年間を通じて実感されたと思います。

 

ただ、この仮説検証実習を終えて、ぜひ皆さんに忘れないでいただきたいことがあります。

 

せっかく「仮説検証」の考え方が身について、こうなっても、…

runner

サボると、あっという間にこうなります。(笑)

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ですから、皆さん全員が「ランナー」となり、実習後もぜひ仮説検証を継続していただきたいと願っています。

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最後に。

この仮説検証実習を通じて、私はひたすら「お客様から学びましょう」と言い続けてきました。

実はこの仮説検証実習を通じて、私自身も皆様からたくさんのことを学ばせていただきました。

皆様へのお礼の言葉で、終わりたいと思います。

 

本当に有り難うございました。

 

 

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北朝鮮の競争戦略

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テレビをつけたら、北朝鮮がまた長距離ミサイルの発射準備をしている、とのこと。

好き勝手に振る舞う北朝鮮に対して、米国・韓国・日本・さらに中国が国連決議非難したり、さらに経済制裁もしていますが、ほとんど効き目がないように見えます。

 

経済規模から見ると北朝鮮は小国。にも関わらず、なぜこのように勝手な振る舞いが出来るのでしょうか?

それは、北朝鮮がBATNAを持っているからです。

BATNAは『バトナ』と読みます。『相手と同意できなかった場合の次善策』という意味で、英語のBest Alternative To Non-Agreementの頭文字を取ったものです。BATNAは交渉の基本中の基本。交渉は強いBATNAを持つ方が必ず勝ちます。

 

北朝鮮は、他国と同意出来ないのならば、核実験と長距離ミサイル開発を自国で続ける選択肢があります。

一方で他国は、北朝鮮と同意できない場合の選択肢は、国連非難決議、経済制裁など、一見色々あるように見えます。しかしこれらの選択肢で核実験と長距離ミサイル開発を止めさせることができなかったのは、これまでの経緯のとおりです。

残された選択肢は、北朝鮮への攻撃により開発能力を無力化すること。しかし「大量破壊兵器がある」としてイラク戦争をした後の世論を考えると、これはなかなか選びにくい選択肢です。一方で時間が経過すればするほど、北朝鮮の攻撃能力が上がっていきます。

最近の米韓軍事演習を見ていると、米国もこの選択肢を本気で選び始めているように見えますが、大統領選の行方もあり、微妙な状況です。

そして北朝鮮は、そのあたりのことも読んでいるフシがあります。

 

さて、マーケティング戦略では、ランチェスター戦略やマイケル・ポーターの競争戦略など、様々な競争戦略がありますが、それらに共通していることがあります。

敵に対して主導権を取るためには、当方の選択肢に対する敵の影響力を弱めた上で、さらに敵の選択肢を狭めるということです。

コトの是非はいったん脇に置いておいて、北朝鮮は競争戦略の本質をよく理解して行動しているように思えます。

 

本来、この競争戦略の考え方は、私たちのビジネスで役立てたいものですね。

ちなみにポーターの競争戦略については、新著の第8章でも詳しく書いています。興味がある方はご一読を。

 

 

 

 

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「リスクを取らないこと」が、最大のリスク

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「新しいことをやるにも、そんな人がいないよ」
「そもそも、スキルがないし」
「だいたい、失敗した場合に責任が取れるのか?」

 こんな話をよく聞きます。

確かに組織やチームを預かる立場では、今の仕事をそのチームで回すだけでも精一杯。今の仕事だけでも大変なのに、その上で新しいことに挑戦なんて、ムリと思いがちです。

しかしお客さんも市場も、凄いスピードで変わり続けています。こんな状況で最大のリスクは、何も変わらないために、自分たちが取り残されて、賞味期限を起こしてしまうこと。いまや「リスクを取らないこと」が最大のリスクなのです。

 

たとえば馬車全盛期、自動車が生まれました。「当社の本業は馬車だ」と変化を拒んだ会社は急速に消滅しました。

写真フィルム全盛期にデジカメが生まれました。売上・利益の6割超を写真フィルムに依存してた富士フイルムは、変化を受け容れ、新たな挑戦をし、今も成長しています。一方で写真フィルム事業から脱却できなかった会社は消滅しました。

新しいことに挑戦しない限り、組織そのものが消滅してしまう時代なのです。

 

新しい挑戦には、必ずリスクはつきものです。

もしリスクがないとしたら、それは挑戦でも何でもありません。

何も挑戦しない段階でリスクばかりを議論し、ひたすらリスクを回避し続けていたら、新しいものは何も生み出せないし、ましては新しい価値なんて創れません。

 

だから真っ先に考えるべきは、まず「何もしない、やらない」「変わらない」という選択肢を捨てること。

そして「変わる」「新しいことをやる」と決めた上で、挑戦することです。

そして「こうすれば上手くいくのではないか?」という仮説を立てて、挑戦しながらその仮説を検証し、その仮説が間違っていたら、即座に仮説を修正すること。

「リスクマネジメント」という言葉があります。「リスクを徹底的に避ける」という意味に捉える方が多いのですが、本来はリスクを回避するのではなく管理するのが、リスクマネジメントです。新しいことに挑戦してリスクに出会ったら、それを避けるのではなく、正面から取り組み管理することで対応すべきなのです。

たとえば、「日本一の星空ツアー」で有名な阿智村で、拙著「そうだ、星を売ろう」で紹介しなかったエピソードがあります。

当初、「真っ暗な中でお客さんを連れて行くなってリスクだ」という声が多かったそうです。しかし実際にはそれ自体はライトアップを徹底する等で対応可能でした。実は誰も気がつかなかった最大のリスクは、雷でした。阿智村は雷多発地域。星空ツアーは真っ暗な中、15分ロープウェイで移動します。ロープウェイに落雷すると、ロープウェイは停止します。こういう状況になると乗客はパニックを起こすかもしれません。つまり真っ暗な中で乗客を乗せたまま、ロープウェイが落雷で停止するのが、最大のリスクだったのです。そこで阿智村は、雷発生30分前に雷を探知するシステムを整備し、雷を探知したらすぐに客を乗せるのを止め、すべての客が降りたらロープウェイを停止させるようにしました。つまりリスクは自分の管理下に置く。これがリスク管理の考え方です。

仮説を検証し続けて進化させ、そこで発生するリスクも管理し続けることが、学びの集積となり、それ自身が大きな差別化になるのです。

 

まず、「やる!」と決める。
そして、仮説を作る。
そして、その仮説を検証し続けるのです。

 

まずその一歩を踏み出せば、色々なことが変わってくるはずです。

 

 

 

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「ウチは、特殊だから…」という錯覚

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こんな言葉をよく耳にします。

「ウチの業界は、特殊だから…」
「ウチの会社は、特殊だから…」
「ウチの部門は、特殊だから…」

この後に続くのが、次の言葉です。

「…だから、通り一遍のことをやってもなかなかうまくいかない」

これは半分正しく、半分間違っています。

 

正しいのは、「ウチは、特殊だから」という部分。

しかし、「ウチだけが特殊だ」というのは錯覚です。すべての業界、会社、部門は特殊なのです。自分の所属する組織だけが特殊で、他がすべて同じだということはないのです。

 

そして「通り一遍のことをやってもなかなかうまくいかない」というのも、半分正しく、半分間違っています。

確かにすべての組織が特殊なので、たとえば売上げが不振の場合に、「具体的にコレをやればすべて解決」という万能策はありません。状況に併せて対応策を考える必要があります。

一方で色々な業界のお客様と仕事をしていて、「共通している」と感じることがあります。

■会社は、顧客を満足させることが目的であること
■世の中も顧客も常に変化しているので、常に今やっていることを見直す必要があること
■そのためには、自分の強みは何で、ターゲットの顧客と課題を見極め、解決策を磨き続ける必要があること

お客様とお打ち合わせする際に、具体例を挙げながらこのようなことをお話しすると、

「全くその通りで、ウチも変わろうと考えています。具体的には………」

と、その会社の状況に深入りした議論が拡がっていきます。

①自分の強みを見極める
②その強みを必要とするお客様を見定める
③そのお客様の課題を理解する
④そのお客様が自社を選ぶために何をすればよいかを考える
→そしてさらにこれが正しいかをリアルなお客様に仮説検証して正解に近づけていく

というフレームワークをもとにお客様が買う理由を作っていくことは、王道なのです。

 

「ウチは特殊だから…」という言葉は、多くの場合、現在のやり方を変えることを拒否するための言い訳になっています。つまり気がつかないうちに、実は自分が変革の抵抗勢力になっているのです。怖いことですね。

 

一度、「ウチは特殊だから…」という先入観を外して見ると、色々なことが見えてくるはずです。

 

 

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知らない間に生まれている、ムリなムダ。どうすれば撲滅できる?

ムリムダ

人は誰でも、ムリなムダはしたくありません。
でも私たちは知らない間に、意外とムリなムダをしているものです。

たとえば私は以前、車を運転して、遊びや旅行によく出かけていました。

ふと気がつくと数年間、走行距離が毎年1000Km程度という時期がありました。引っ越しなどで生活パターンが変わり、いつの間にか車を使わなくなったのです。

不思議なもので慣れてしまうと、「将来、車が必要になるかもしれない」と考え、車がない生活に不安を感じるものです。

一方で車を持つデメリットも少なくありません。まず駐車場・保険・車検などの維持費。合計すると、毎月3〜4万円なので、家計には大きな負担です。運転すると事故リスクもあります。滅多に運転しないと運転技術も落ちるのでリスクも高まります。

結局10年近く前、思い切って車を手放しました。手放しても生活は変わりませんでした。むしろ車の維持費がなくなることで、家計は楽になりました。運転事故の心配もなくなり、精神的にも安心です。

つまり、以前の私は車を持つ理由があったのですが、気がつくと状況が変わり、知らない間に私はムリなムダをしていたわけですね。

 

これは個人の場合ですが、組織でも似たような状況がよくあります。

ほんの数年前、あるいは数十年前までは、必要だった仕事。今ではその必要性は消えたのに、相変わらず多大なコストと人員、時間をかけて行っている仕事は、意外と多いものです。これは私の車と同様、コストは発生しているのに価値を生まない、知らない間に発生しているムリなムダです。

外部の人間に指摘されて、「そう言えば、なんでこんなことをやっているんだろう?」と気がつくケースも少なくありません。先入観を持たない外部の視点でよく見えることも、内部にいるとなかなか気がつかないものです。

 

昔はその方法が正しくても、状況が変わると、やり方を見直すことが必要です。
身近な個人的なことであれば、自分の考え次第で直せますが、組織になるとこれがなかなか難しいのです。

まず「やり方が間違っている」ということを関係者が合意するのが、一苦労。
そして間違っていると認識できても、「昔の方法がいい」と思っている人も多いので、なかなか直せないのです。

 

会社組織の場合、ムリなムダを見つけるマジックワードがあります。

「その仕事って、お客さんにとって意味があるの?」

もしその仕事がお客さんにとって意味がないとすれば、見直しが必要なのです。

 

「顧客目線」は、使い古された言葉なのでつい忘れがちですが、常に持ち続けたいものです。

 

 

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マーケティング思考欠如とその無自覚が、日本経済低迷を招いている

悩み

日銀の「異次元金融緩和」が続いてますが、物価は上がらず、株価も低迷したまま。

一方で米国の株価は最高値を伺う展開です。

とはいっても、多くの人たちはどこか、「それは日銀と政府の仕事でしょ。自分は目の前の仕事で忙しいし」と思っているようです。

かなりヤバイ状況だと思います。

私は、物価が下がるのも、株価が低迷するのも、ビジネスパーソンのマーケティング思考欠如と、それを自覚していないことが、大きな原因だと思います。

 

「いいものを作っていれば売れたモノづくりの時代」、日本からは世界ヒット商品が続々生まれていました。

しかし今の日本からほとんど生まれていません。Pokémon GOのように新しい価値を生み出して頑張っている日本の企業(任天堂・株式会社ポケモン・米国ナイアンティックの3社)もありますが、極めて少数です。

 

「体験を求めるコトづくりの時代」になったのに、気がついていない。

だから、お客さんが心から「欲しい」と思うようなワクワクする商品やサービスが生まれない。

「お客様が買う理由」を創り出していないのが、大きな問題なのです。

 

その代わりにやっているのが、ムダを省く生産性向上です。

これも大切ですが、生産性向上だけでは需要は増えません。(政府は公共投資で需要を増やそうとしていますが、財源が必要なので限界もあります)

需要を増やさずに、生産性を向上させて供給力を増やせば、需要と供給の関係で、逆に価格は下がります。そしてデフレも進みます。

 

本来需要を増やすために必要なのは、「お客様が買う理由」を創り出すことです。

これは日銀や政府の仕事ではありません。

ビジネスパーソンが自分の仕事を通じて、「お客さんが買いたくなるような」価値を創り出すことを考え抜き、それを実現するしかありません。主役は私たちビジネスパーソンです。

では、どうすればよいでしょうか?

 

厳しい指摘をしている方がいます。一橋大院商学研究科のクリスティーナ・アメージャン教授です。

インタビュー記事で、日本のマネジメントのビジネス知識について「幼稚園レベル」と厳しいご指摘をしておられます。

十分なビジネスの基礎知識、ビジネスナレッジを備えた人材が足りないのです。社外取締役に限らず、日本の経営者、マネジメント層は基本的なMBA(経営学修士)の知識が不足しています。ハイレベルな知識を求めているのではありません。最も基礎的な知識を欠いているのです。厳しいようですが、幼稚園レベルです。

 

経営者も含めた私たちビジネスパーソン一人一人が、仕事で役立つ実践的で最低限のマーケティング思考を身につけ、日々の仕事を通じて「お客様が買う理由」を創り出していくことが必要だと思います。

 

 

 

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「お客様のために」と考えるから、失敗する

困っている人たち

 

「お客様のために、この機能は必要だ」
「お客様のために、これを売りにすればいい」

私たちはよくこのように考え勝ちです。
しかし、このように考えるから失敗するのかもしれません。

かつて私も、実際にそのような経験をしました。

製品開発チームで、「お客様のためにはこの機能は必要だ」と考えて、苦労してある機能を製品に追加しました。営業活動で頑張った末、幸いながら大規模展開をするお客様に購入いただきました。

お客様になぜウチの製品を採用したのか、お伺いする機会がありました。
驚きました。苦労して追加したその機能はほとんど評価されず、オマケで考えていた機能が高く評価されていたのです。

「お客様のために」と考えて苦労して追加した機能は、多くのお客様ではそれほど必要としていなかったのです。

本来、実際にどの程度お客様がその問題を切実に解決したいと思っているか、確認した上で、開発に入るべきでした。

 

「お客様のために」という考え方は、危険なのです。お客様に対して、押しつけているのです。
「お客様の立場になりきって」考えるべきなのです。

一見同じように見えますが、実はとても大きな違いがあります。

「お客様のために」という考え方は、お客様に一方的に押しつけている考え方です。だから相手にされません。

お客様の立場で、

→ 本当に「お客様のために」必要と考えたその商品は必要なのか?
→ 本当に、それでお客様の課題は解決できるのか?
→ もしかしたら、お客様の立場ではもっと必要なものがあるのではないか?

私たちはもっともっと謙虚に考えなければいけないのです。

 

 
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運をたぐり寄せる「幸運の式」

幸運の式

講演で成功事例をご紹介すると、こんなご質問をいただくことがあります。

「結局そのケースは、運がよかっただけなんじゃないんですか?」

この後には、

「…そうは言っても、現実は難しい」
「…そもそも、ヒトモノカネがないし…」
「…しがらみばかりで、とても大変だ」

というお話しが続き、がんじがらめで身動きが取れないという現実がヒシヒシと伝わってきます。

 

ご紹介する事例が、「運がよかった」というのは、まさにその通りです。

しかし、その運は偶然ではありません。必然なのです。
言い換えると、「運がよかっただけ」ではないのです。

 

本コラムをご覧になっている方は、日本経済新聞の「私の履歴書」をお読みになったことがあると思います。

「私の履歴書」に登場するのは、どなたも成功した方々。

ある人が、成功した人が成功した要因を特定するために、「私の履歴書」を分析したそうです。そこで、共通する言葉がありました。

「たまたま」
「その時、偶然」
「不思議なことに」

つまり成功した人は、確かに幸運をたぐり寄せているのです。

その意味では、「運がよかった」というのはその通りなのです。

 

しかし重要なのは、「運がよかっただけ」ではない、ということです。

成功した人は、単に待っていて運に恵まれたのではありません。実際に色々な行動を起こしています。それらの行動は、すべて成功するということはありません。必ず失敗を伴います。

しかし実際に行動すると、一見無謀に見えることであっても、そのいくつかは「たまたま」成功します。そしてその成功が次の成功を呼び込み、周りの人々からの共感が広がり、次第に大きくなっていくのです。

 

そこで「幸運の式」を考えてみると、こうなるのではないでしょうか。

幸運 = 行動した回数 × 成功の確率

つまり行動した回数が多いほど、幸運が訪れる可能性も高まります。さらに行動した回数が多くなると、経験も蓄積し、成功する確率も高まります。

成功した人が「運がよかった」のは、何らかの行動した結果なのです。

 

何も行動もせずに、他人の成功を見て「あれは運がよかっただけ」と言っている間は、決して成功は訪れません。

確かに、現実には色々な障害があるでしょう。しかしがんじがらめの状況の中でも、できることは必ず1つや2つはある筈です。

まずは一歩。それをやってみる。

 

そこから、色々なことが変わってくるはずです。

 
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ニーズをサキドリしても、お客様は満足しないんじゃないの?

無関心

ある講演会で、こんな話をしました。

「お客様が満足するのは、期待を大きく上回った時です。
 だからお客様の言いなりになっていては、期待は超えられません。
 お客様のニーズをサキドリすることが必要です」

すると懇親会である経営者の方から、鋭いご指摘をいただきました。

「『期待を超える』『ニーズをサキドリすべし』、どちらもごもっとも。でも正直、違和感もあります。
ニーズのサキドリと言っても、その時点でお客様はニーズに気づいていません。つまりそもそも期待がない状態で、お客様の期待を超えてお客様に満足いただく、というのは矛盾していませんか?」

とても重要なご指摘なので、当コラムでご紹介したいと思います。

皆様はどのように考えますか?

 

この方がおっしゃる通りで、他社に先駆けてニーズをサキドリした時点で、ほとんどのお客様はニーズを意識していないので、期待も持っていません。わかりやすく言うと、ほとんどのお客様が「これってナニ?」という反応をします。

しかしごく少数のお客様は、ニーズを意識しているものの誰も対応してくれないので、あきらめている状態にあります。わかりやすく言うと、「これで困っているんだけど、でも仕方ないか…」と思っています。

 

たとえば2002年、アイロボット社は自動お掃除ロボット「ルンバ」を世界に先駆けて開発し、市場に出しました。当時のお客様は、「掃除に手間がかかる」のは当たり前でした。ほとんどの人は「自動で掃除できる」ことは期待していなかったのですね。私自身、この時期にルンバを見て「これってナニ?」と思っていました。

しかし、「困った。何とかしたい」と考えているお客様がごく少数いました。たとえば大都会の共働きの夫婦。2人とも仕事で遅くなることも多いので、掃除をする時間をなかなか作れません。掃除のことで夫婦げんかをすることもあるそうです。ご本人たちからすると結構深刻な問題ですよね。「帰宅したら、キレイな床で迎えて欲しい」というのは、切実なニーズでした。

そんなところへ、アイロボット社は初代ルンバを投入し、大都会の共働きの夫婦に向けて、通勤時間帯に都内の電車広告を出しました。

このように「ニーズのサキドリ」とは、ごく少数のお客様が持っているニーズを理解してサキドリし、誰よりも真っ先に解決策をご提供することなのです。

 

市場に真っ先に解決策を提供する場合、それを待ち望んでいる少数のお客様にとっては「もしあったら、御の字」という状態なので、もともとお客様の期待値はそれほど高くありません。

2002年のルンバ登場時も、自動で掃除できる掃除機は存在していませんでした。
そしてニーズを持っているお客様も、現代と比較すると、ごく少数。
さらに当時のお客様の期待も、「とりあえず掃除できれば、助かる」という状況。現代よりもずっと低い期待値でした。

2002年、このような状況で世に出た初代ルンバは、現在の最新ルンバと比べて機能的に見劣りしていていましたが、それまで自動お掃除ロボットを知らなかった顧客のニーズをサキドリしました。そして低かった期待値を大きく上回る価値を提供することで、初代ルンバは高い顧客満足を生み出したのです。

その後ルンバは顧客に対して価値を高めていき、当初「これってナニ?」と思っていた私のような顧客も満足させるようになっていきました。

 

つまり、

(1) 大きな課題を持っている、少数のターゲット顧客に絞り込む
(2) ターゲット顧客の課題を理解し、最も大きな課題に対応する
(3) ターゲットの顧客に、解決策を提供する
(4) さらに顧客の課題を深く理解して解決策を強化していくとともに、その解決策を他の顧客に拡げていく

 これを愚直に繰り返し、「ニーズをサキドリし、期待を上回る顧客満足を生み出す」ことが必要なのです。

 

新商品開発の立ち上げ段階で、数多くのお客様をターゲットにすると、失敗します。
最初に必要なのは、お客様の徹底的な絞り込みなのです。

 

 

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「市場シェア5%獲得で50億円」は、あり得ない

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「市場規模は1000億円です。この新商品では、シェア5%獲得、売上50億円を狙っています」

新商品を企画しているというその方は、このようにおっしゃいました。

「ターゲットは、どんなお客様なのででしょうか?」
「色々なお客様がいるので、幅広くやりますよ。1000億円市場の5%です。売り込みを頑張れば、何とかなるかなと思っています」
「実際のところ、うまくいっていますか?」
「そこをいわれると厳しいですね。この2年ほど頑張っていますが、なかなか広がりません」

実はバブル期の25年前、私も同じ発想で商品企画を立てていたことがあります。販売活動は大変でしたが、そこそこの売上を達成できました。

しかし現代では、この考え方で新商品開発を進めても成果は出ません。現代のお客様は昔よりもわがまま。ニーズが多様化・細分化していて、お客様の要求レベルも高くなっています。

「市場シェア5%獲得」という目標が問題なのではありません。「シェア5%獲得が目標だから、幅広く販売すればいい」と考えるのが問題なのです。

これは「ターゲットのお客様とそのお客様の課題が、よくわからない」と言っているのと同じだからです。言い換えれば、目的地の地図を持たずに、初めて行く目的地に車を運転して向かっているようなものなのです。

 

時代は大きく変わってきました。

生産志向の時代:「作れば売れる」→力を持つのは、自社工場

製品志向の時代:「よき製品が売れる」→力を持つのは、製品開発チーム

販売志向の時代:「売り込めば売れる」→力を持つのは、自社営業

「市場シェア5%を獲得すれば、50億円」という考え方は、「製品志向」「販売志向の時代」までの発想です。
しかし「販売志向の時代」は既に終わり、時代はさらに変わっています。


顧客志向の時代:「顧客が欲しいものが売れる」→力を持つのは、顧客

社会志向の時代:「社会によきものが売れる」→力を持つのは、社会

 

売ろうとしてもなかなか売れないのが現代。こんな時代に、「どのような顧客が、どんな課題を持ち、どんな商品を必要としているか?」という具体的なシナリオを持たずに、「市場シェア5%を獲得すれば50億円」と考えて、お客様の課題に対する理解が浅いままで幅広いお客様に次々と売り込みを図っても、成功する可能性はほとんどありません。

 

ターゲットとなるお客様のプロフィールと課題を具体的に考える。
「これまで満たされていなかった、どのようなお客様の課題を解決するのか?」という視点で考え抜く。

そして、本当にターゲットとして想定したお客様がいるのか。
そのお客様は本当に仮説通りの課題を持っているのか。
そして解決策は正しいのか。

これらをリアルなお客様で検証し続けることが必要なのです。

そして、ターゲットとして考えたお客様の期待を大きく超える満足を提供することで、高い価値を生み出すのです。

多くの場合、仮説は大きな修正が必要です。そしてリアルなお客様から得られた学び自体が、自社の大きな差別化要因になるのです。

 

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御社の新商品開発は、3〜4倍高速化できる

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「商品企画がなかなか進まない」
「どんな新商品を作ればよいか、さっぱりわからない」
「開発チームに任せているが、全然進まない。何をしているんだろう?」

新商品や新規事業開発で、このようにお悩みの担当者やマネージャーは、少なくありません。

私も20年以上新商品開発に関わってきました。当初、同じ悩みを抱えていました。「こんな商品を作る」という大まかなコンセプトがあっても、それをなかなか具体的な形に落とせない。さらに新商品開発に関わる多くの関係者との合意形成も大変です。

しかし現在は、かなりのスピードで新商品開発を進められるようになりました。かと言って、徹夜したりしてアクセクと仕事をしているわけではありません。むしろ端から見ると、割とゆったりと仕事をしているように見えていることが多いようです。

この経験を活かし、弊社では「新規事業開発ご支援」を企業様にマーケティング実習の形でご提供しています。参加されたある企業様の社員の方々からは、「仕事のスピードが3〜4倍速くなった」という感想もいただいています。

以前と同じ会社、同じメンバーで新商品開発に取り組んでいるのに、なぜ急にスピードが速くなるのでしょうか?

 

それは、マーケティング的な考え方に基づいた仮説検証プロセスを徹底しているからです。

新商品開発プロジェクトがなかなか進まないのは、「何をすればよいか」が決められないから。「決める基準」がないために、決められないのです。

そこで「新規事業開発ご支援」では、最初に私も参加してメンバー同士で議論を徹底し、短時間で「お客様が買う理由」を仮説として作ります。この際に、参加しているチームメンバー主導で議論をしながら、

(1)我々の強みは何か?
(2)その強みを必要とするお客様は、誰か?(ターゲット顧客)
(3)そのお客様は、何を必要としているのか?(顧客の課題)
(4)そのお客様は、どうすれば我々を選んでいただけるか?(解決策)

これらを仮説として作ります。

その上で、メンバーで実際にお客様に会ったり、必要な調査を分担して行いつつ、この仮説を検証していきます。お客様に検証すると、多くの場合、新たな学びが得られます。そこで学びを元に新しい仮説に進化させていきます。

仮説検証のために必要なアクションをメンバーで合意しつつ、高頻度で回すので、お互いに最新の仮説と検証結果を共有でき、「お客様が買う理由」の仮説を高スピードで進化させることができるのです。

完成度が高い「お客様が買う理由」ができれば、どのような新商品を作ればよいかが明確になります。

さらに「お客様が買う理由」の最新版をマネジメントや他部門と共有することで、新商品開発の最新状況も見える化できます。「チームに任せているが、全然進まない。何をしているんだろう?」という経営者やマネージャーの悩みもなくなります。

また、このプロセスを通じて仮説検証プロセスを参加した社員の方々が身につけることで、その後の新商品開発も迅速に進めることができるようになります。

 

では、仕事のスピードが速いと、何がよいのでしょうか?大きく分けて3つの理由があります。

■業界内の競争に勝てる: 多くの場合、現在の業務スピードは同業他社のライバルと同等です。ライバルの数倍速く動くだけで、ライバルの機先を制して、競争に勝てる可能性が格段に高まります。これは経営者にとってとても大事なことですね

■より多くの仕事がこなせるようになる: 常に数倍のスピードで動けるようになれば、チームで複数の新商品開発を並行して実施できます。部門を預かるマネージャーにとって、部門でこなせる仕事が増えるのは重要です

■仕事が早く終わるので、プライベートが充実し、心身ともに健康を保つことができる: これは個人にとっても見逃せないメリットです

 

私自身、前職の日本IBM社員時代に、個人として、そしてマネージャーとして、この仮説検証プロセスを実施してきました。実際に、人材育成部長として部門の業績を上げつつ、社内の他の業務もこなす一方で、残業はゼロでした。さらにプライベートでは毎年数冊の本を執筆していました。私自身、この仮説検証プロセスを実践し、その威力を体験しています。

 

スピードは、全てを癒やしてくれるのです。

 

 

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「お客様が買う理由」を作るカギは、すぐそこにある

鍵

講演やワークショップで、よくいただく質問があります。

「新規事業に取り組んでいますが、なかなか立ち上がりません。『お客様が買う理由を作ろう』と言われても、ヒントがありません。困っています」

こんな時、私は採用実績と採用したお客様の採用理由をお伺いするのですが、なかなか立ち上がらないケースでは、共通点があります。

ある程度の期間、新規事業に取り組んでいるので採用実績は数件あることが多いのです。しかし採用したお客様がなぜ採用したのか、具体的に把握できていないのです。「実際にお客様には会ったことがない」という場合すらあります。

そこでこんなご提案をします。

「実際に採用したお客様に会って、どのように使っているのかお話しを詳しく聞いてみると、色々なヒントが得られるかもしれませんよ」

そして実際にお客様に会ってみると、お客様は「いやぁ、大きな課題があってね。色々な商品を試してみたんだけど、これを解決できるのはオタクの商品しかなかった。だから採用したんだ」とおっしゃることも多いのです。

つまり、自分たちが想像もしなかった使い方をしているのですね。

 

よくご紹介する事例は、業務用ミラー最大手のコミーが、業務用ミラーを手がけるようになったきっかけです。

40年ほど前、コミーは看板業を営んでいました。ある日、コミーは凸面ミラーを両面に貼り合わせて天井から吊してクルクルと回転させる「回転ミラー」を作り、商品展示会で出展しました。すると1個数万円もする商品にも関わらず、あるスーパーから30個もの注文が来ました。

数ヶ月後、そのスーパーでどのように使われているのかを見に行ったところ、店内の至る所に回転ミラーが吊されていました。なんと万引き防止用に使われていたのです。

万引きで倒産する店もあります。スーパーにとって万引きは死活問題。コミーの回転ミラーは、万引き防止に役立っていました。

これがきっかけで、コミーは業務用ミラーという市場があることを知り、様々な業務用ミラーのメーカーに成長していきました。

 

このコミーのような話は決して例外ではないことを、私は企業のお客様と一緒に新商品開発に関わりながら実感しています。

新商品を採用するお客様は、リスクを取るタイプのお客様です。このようなお客様は、何か大きな課題に直面すると、様々な商品を試した上で、ベストな解決策を見極め、採用します。そしてコミーが当初、回転ミラーが万引き防止用で使えるとは想像もしなかったのと同様、商品を作っている立場ではまったく気がつかなかったヒントを教えてくれることも多いのです。課題を持っているのはお客様だからです。

お客様が買わなかった理由は、高かった、機能が合わなかった、買いにくい、何か気に入らない…、それこそ無数にあります。これらを一つ一つ追いかけるのは大変ですし、買わなかった理由を1つずつ潰していっても、徒労に終わることが少なくありません。

一方で、お客様がお金を出して買った理由は、必ずあります。理由がないのにお金を出す人はいません。何らかの課題を持っているのです。そこを徹底的に掘り下げれば、大きな発見に出会うことも多いのです。

 

「お客様が買う理由」を作るカギとなるお客様の課題は、実際に買ったお客様のところにあるのです。

実際に買ったお客様から、学ぶようにしたいものです。

 

 

 

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