『過熱するグローバル人材狂想曲』

この記事も素晴らしいのですが、

『「ニッポンは“使えない人”だらけ?」 過熱するグローバル人材狂想曲』

この記事のコメント欄の議論も素晴らしいですね。

読者の皆様からのフィードバック

 

確かに、「グローバル人材=英語ができる人材」ではありません。

英語力を身につけるのは確かに大変ですが、それでも効率的に継続・集中して学べば、1年から数年といった比較的短期間で身につけることは可能です。

英語ができればグローバル人材になれるのであれば、こんな楽なことはありません。

しかし私も20代前半の2年間で英語を集中して学び、英語である程度の読み書きが出来るようになりましたが、英語での交渉は全然できませんでした。

 

実際には、「グローバル人材=グローバルで仕事ができる人材」だと思います。

そしてグローバルコミュニケーションで成果を上げるためには、シンプルでわかりやすいロジックを構築して、かつわかりやすく説明する能力が必要です。(もちろん英語で)

「シンプルでわかりやすいロジック」だから簡単かというとまったく逆で、実際には多くの場合、これがなかなか出来ないのです。

このためには、単に英語を流暢に話せて書けるだけでは不十分です。目標を定めた上で、仕事を通じて磨いていくことが必要です。当たり前のことですが、これには時間がかかります。

 

記事タイトルにもある「過熱するグローバル人材狂想曲」というのは、急激にグローバル化を進めている日本における過渡期の現象なのかなと思ったりします。

 

 

英語脳と日本語脳だけじゃない、第三の脳

30年前に日本IBMに入社して最初に困ったのは、何をさておいても英語でした。

 

TOEIC475点だった22歳当時の私の英語力では、米国人が書いて話す英語はまったくチンプンカンプン。

今ふり返ると、英語を話したり書いたりする場合は、

日本語で考える →日本語の文章にする →逐次英語に訳す

としていたのですよね。

つまり「日本語脳」で考えていた訳です。

これは結構大変で、時間がかかりました。しかも日本脳で考えたロジックは、なかなか海外の人に伝わらないのです。

 

その後、こちらに書きましたように入社後の2年間で猛勉強して、TOEICは795点までアップ、なんとかカタコトの英語を話し、相手が言っていることを理解し、英語による最低限のメールのやり取りはできるようになりました。

この頃、英語でコミュニケーションする際は、

英語で考える →英語の文章にする

となっていたように思います。

それなりに「日本語脳」から「英語脳」に切り替えて考えられるようになり、ある程度の会話が成立するようになったのですね。

 

それから随分と時間が経ち、最近になって気がついたのは、今は「日本語脳」「英語脳」を意識しなくなっていると言うこと。

私の英語は相変わらず怪しいジャパニーズイングリッシュで、とてもネイティブとは言えません。正しい英語なのかどうかも、正直言って怪しいものです。

しかし、確実に相手に伝わるようになりました。

そして後で会話を思い出す際に、「あれは英語で話したっけ?日本語だったっけ?」と思い出せないこともあります。単に記憶が悪くなったということではなく、恐らく

【日本語の場合】
論理を組み立てて考える →日本語にする

【英語の場合】
論理を組み立てて考える →英語にする

という感じに出来るようになったからなのかな、と思います。

 

「論理を組み立てるのなんて、当たり前じゃん」と思われるかもしれません。でも出来ていないケースがとても多いように思います。

本来ロジカルシンキングでは「事実(データ)、ロジック、主張」の3点が必要です。

しかし、事実もロジックもないのに主張だけをしているケースが多いですよね。

 

例えば「ダメなものは、何があってもダメなんです」というような主張です。

これは事実もロジックもありません。「感情的に考えている」のであって、「論理を組み立てて考えている」とは言えません。

日本人同士だと暗黙知を共有できているので、「そうだよなぁ」となんとなく納得した気になりますが、暗黙知を共有していない海外の人には通じません。

 

ロジックと主張だけのケースもあります。例えば「調査結果によると、こんな異常が発見された。大問題だ」というケース。

一見ロジカルです。確かに異常が見つかったのはよくありません。しかしデータと事実で把握する必要があります。

例えば1億件の中で数件の異常は許容範囲かもしれません。100件の中で数件の異常だったら問題かもしれません。でも1億件の中の数件を取りだして問題としているケースも、世の中には結構あります。(さらにそれを意図的にやっているケースもあったりします)

  

このように、「論理を組み立てて考える」ことって意外とできていません。

「ロジカル脳」が必要なのですね。

これがあれば、少々怪しい英語でも、仕事では通用します。

逆に「ロジカル脳」がなければ、流暢な英語だけではなかなか難しいでしょう。

  

論理を組み立てて考えられることはグローバルコミュニケーションで必須ですが、考えてみると、これはビジネスでも大切なことです。

普段グローバルコミュニケーションを行わない日本人同士で仕事を進める場合も、この力はとても役立つと思います。

 

 

「こんなのオモチャじゃん」…しかし新たな顧客が生まれていることが怖い。それは日本が20年間苦しんできたこと

市場に現れた新たなライバルが、まったく新しい商品を出してくる場合があります。

最初は性能が低くて、既に市場でシェアを握っている立場から見ると「こんなのオモチャじゃん」と思ったりします。

しかしその商品で、これまでユーザーでなかった新しい顧客が生まれたとしたら….それは市場の覇者にとって、実は大きな脅威なのです。

 

例えば、30年前に登場したパソコン。

登場した当時は「こんなのオモチャ」と言われました。当時はコンピュータと言えば、大型コンピュータやオフコン。しかしその後、エンドユーザーが使いはじめ、パソコンはIT市場を大きく変えました。

 

また、トランジスタラジオ。

1950年代は、ラジオと言えば真空管ラジオ。大きなもので電力消費も多く、家庭で家族が聴きました。トランジスタラジオが登場した当初、真空管ラジオを聴いていた顧客は、「確かに小さいけど音質も悪いしオモチャ」と思いました。

しかしトランジスタラジオを買った顧客がいたのです。ロックンロールが大好きな若者でした。親の目が届かないところで聴くためです。その後、トランジスタラジオは性能が向上して真空管ラジオを駆逐しました。

 

市場の覇者が新たな商品を「こんなのオモチャ」と思っても、これまで使ってこなかったユーザーが新たな顧客になった場合、それは将来的には大きな脅威なのですよね。

これは「イノベーションのジレンマ」と呼ばれているものです。

イノベーションのジレンマは英語ではInnovator’s Dilemma. つまり本来の意味は「イノベーターのジレンマ」です。イノベーションを起こしたイノベーター自身が、新たなイノベーションに対応できずに陥ってしまうジレンマのことなのですよね。

 

来週出版される「100円のコーラを1000円で売る方法3」は、この「イノベーションのジレンマ」をテーマにしたものです。

「イノベーションのジレンマ」はやや難解な理論です。

本書は、その「イノベーションのジレンマ」について書かれた世の中にある本の中で、恐らく一番わかりやすい本になったと思います。

 

ここ20年間、日本企業が低迷する大きな理由の一つは、リスクを取ってイノベーションに挑戦していないことだと思います。

まさに日本全体が「イノベーションのジレンマ」に陥っています。だからこそ、今、日本にイノベーションが必要な時期なのです。

本書が少しでもお役に立てればと思っています。

 

 

短期間で仕事に必要な英語力を向上させる方法

日本経済新聞2013/5/28の記事「突然の英語 完璧追わず」は、仕事で英語を使わなければならない人にとって、役立つ内容でした。

楽天に勤務する新井さんは、「英語力がボロボロにさびた状態」でしたが、出張先のインドネシアで現地顧客に一人でプレゼンしなければならなくなりました。

—(以下、引用)—-

そこで、新井さんが取り組んだのは、40分のプレゼンの内容を「丸暗記する」こと。説明すべき内容を音読してICレコーダーに録音し、「寝ている間も含め、とにかく繰り返し聞き続けた」。そしてリピート再生が50回を超えた朝、「突然、プレゼンの内容が自然と口から出てくるようになった」。「絶対に覚えなければならないという状態の中で繰り返し聞いたことが効いたと思う」と振り返る。

—(以上、引用)—

ここには二つの大切なことが書かれてます。

1.絶対覚えなければいけない状況に追い込む
2.とにかく繰り返し回数を積み重ねることで、しきい値を超える

1.についてはそう思われる方も多いと思います。

2.については、まさに3年半前に当ブログのエントリー「英語学習を、飛躍的に加速化する方法」でご紹介した内容です。つまり、パネルクイズ「アタック25」のパネルを1枚ずつ開けていき、ある枚数になると急に何の映像かがわかる、ということです。

「英語学習には地道な継続が必要」とよく言われますが、このように具体的な目的意識と、効率よい反復により、比較的短期間で仕事に必要な英語力を向上できるのですよね。

この経験で新井さんが得られたメリットは、大きなものでした。

—(以下、引用)—-

「海外事業に必要な単語や言い回しは、ほぼすべて40分のプレゼンに含まれていた。それを身につけたことで、迷わず言葉が出てくるようになった」。現地スタッフとの会話が増える中で、「完璧を求めず、通じればいいと割り切れるようになったのも大きかった」

—(以上、引用)—

当記事の一部を紹介させていただきました。仕事で英語が必要な方にとって役立つ知恵がたくさん書かれていますので、ご一読をお勧めします。

 

 

英語で伝わらない3つの表現を治すと、日本語によるビジネス力も向上する、という話

グローバルコミュニケーションでは、日本でありがちなこのような表現は、なかなか相手に伝わりません。

■婉曲話法…回りくどく遠回しな言い方です。

例「嫌いというわけでないのですが、この話をお受けするのはちょっと」

→これは適切な英語に訳せません。あえて訳しても、何を言っているのか分からない英語になります。

■説明先型…説明が先に来て、結論が後になる言い方です

例:「xxxという状況で、xxxになって、最終的にはxxxになった。だからzzzです」

→ただでさえ日本人が英語で意志を伝えるのが難しいのです。このような順番で話しても、シンプルな結論を期待している相手は何を言いたいのか分からないのです。

■不合理な結論…論理不足で、相手からするとなぜそんな結論になるのかが分からないケースです。

例「最近不景気なので、商品が売れない。だから営業成績が落ちた」

→ありがちな言い訳です。しかし不景気でも商品が売れているケースは沢山あります。不景気は営業成績が落ちた真の理由ではありません。

 

しかしこの3つの例、私たち日本人にとっても本当は分かりにくいのではないでしょうか?

面と向かって言う人は少ないと思いますが、私は「要はどういうことでしょうか?」とか「なんでそうなるんでしょう?」と思います。

日本人は「すべての人は同じ(であるべき)」と思うため、多少の違和感を感じてもあまり明言しません。そのために上記の言い方でも波風が立たないために通用します。

しかしグローバルコミュニケーションでは「すべての人は異なる(のが自然な状態)」という前提でコミュニケーションが行われます。そのため上記の言い方では通用しないのです。

グローバルコミュニケーションだと次のように言い換える必要があります。

■婉曲話法

「嫌いというわけでないのですが、この話をお受けするのはちょっと」

→「この話の前に、別のオファーを検討中なので、保留させて下さい」(理由を明言する)

■説明先型

「xxxという状況で、xxxになって、最終的にはxxxになった。だからzzzです」

→「zzzです。理由はxxxという状況で、xxxになって、xxxだからです」(結論から述べる) 

■不合理な結論

「最近不景気なので、商品が売れない。だから営業成績が落ちた」

→「不景気の影響を受けて銀行の貸し渋りがあり、A社が倒産した。A社案件が今期の売上目標達成の5割を占めていた。だから営業成績が達成できなかった」(ロジックを明確にする)

 

私たち日本人にとっても、後者の言い換えた表現の方が分かりやすいのではないでしょうか?

これた言い換えた3つの表現に共通するのはロジックです。

ロジックを鍛えることで、グローバルコミュニケーション能力も鍛えられます。

そしてそれは、日本語でのビジネス力向上にも役立つと思います。

 

 

Unless we communicate in Japanese, we never communicate in English.

今、書店に行くと、英語の本が山積みです。

TOEICスコアを課す会社も多いこともあり、英会話スクールも繁盛しています。

しかし、英語力があること=英語でコミュニケーションできること、ではありません。

「え、英語ができるようになると、英語でコミュニケーションできるようになるんじゃないの?」と思われるかもしれませんよね。

でもこれは、英語で仕事をしている環境にいるビジネスパーソンとしての実感です。

英語力があっても、グローバルコミュニケーションで相手に伝わらないことはとても多いのです。

  

その理由は、英語をいったん脇に置いて、日本人同士のコミュニケーションを考えると分かると思います。

同じ日本人から届いたメールやビジネス文書(日本語)を読んでも、何を言っているかさっぱり読み取れない、という経験をなさった方は多いのではないでしょうか?

日本語ができるからと言って、日本語でビジネスコミュニケーションができるとは限らないのです。

ではこのような人が仮にTOEIC満点だったとして、英語でコミュニケーションできるでしょうか?

多分英語はそれなりに伝わるでしょうけれども、仕事で必要なコミュニケーションはできないのではないでしょうか?

つまり、日本語でビジネス文書が書けないと、英語でも書けないのです。表題の通り、"Unless we communicate in Japanese, we never communicate in English."ということですね。

 

TOEIC満点の新入社員が、海外と英語でコミュニケーションしているようなケースでは、一見英語で意思疎通しているように見えるので、コミュニケーションできているように見えるかもしれません。しかしビジネスの基本が分からないと意思疎通はできないのです。(もちろん、新入社員でもビジネスの基本ができている方がいるかもしれません。でもきわめて少数派でしょう)

  

ということで、「グローバルコミュニケーション力向上の前に、まず日本語でのビジネスコミュニケーション力向上が必要」と感じる、今日この頃です。

 

 

冷泉彰彦氏『「橋下発言」はアメリカからどう見えるか』を読んで

ニューズウィーク日本語版に、冷泉彰彦氏のメッセージが掲載されています。

「橋下発言」はアメリカからどう見えるか

短いメッセージなので引用は割愛しますが、橋下氏発言問題に対して秀逸な論点を提示しています。

このような問題はともすると、「自分はこう信じている」「ケシカラン」という感情論に走り勝ちです。

しかし冷泉さんの文章を読むと、このような問題こそ、感情論に走らずに事実を整理して議論することが必要であることがよく分かります。

そして政治家たちの感情的なメッセージを受けて、私たち国民が将来の日本を誤った道に向かわせないためにも、「教養」が必要であることを痛感します。

昨日、当ブログのエントリー「読書は、私たちの頭脳を徹底的に鍛える」を書いた際にも考えたことですが、「もっと本を読むべきだなぁ」と再認識しました。

 

 

新日本型経営の誕生へ ….NHKスペシャル「メイド・イン・ジャパン 逆襲のシナリオⅡ」

昨晩(2013/5/11(土) 21:00)のNHKスペシャル「メイド・イン・ジャパン 逆襲のシナリオⅡ 第1回 ニッポンの会社をこう変えろ」を見て思ったこと。

  • 日本人のものづくりの強み(高品質、信頼性)がなくなったわけではない
  • 世の中が多様化し変化が急激になっているのに、日本の組織が、ものづくりの考え方(大量生産・大量供給)を高度成長期から変えておらず、イノベーションが起きていないことが問題である
  • だから、組織の壁(個人間/事業部間/会社間)と考え方の壁(自分の専門分野)を壊して、日本が持つ強みを活かして、新しい領域にチャレンジし、イノベーションを起こせば、日本は必ず再生する
  • それはかつての黄金期のメイド・イン・ジャパンの復活ではない。まったく新しいメイド・イン・ジャパンの誕生である
  • 既に様々な成果が生まれている

日本が独自に持っている強みを否定するのではなく、活かせるように発展させていくのですよね。

 

今晩(2013/5/12(日) 21:00-)、第2回を放映します。

メイド・イン・ジャパン 逆襲のシナリオⅡ 第2回 新成長戦略 国家の攻防

国の政策に焦点を当てるとのこと。必見です。

 

なお、昨晩の第1回の再放送は5/16(木) 1:39AM-2:37AMの予定だそうです。見逃した方は是非。

 

 

こんなお願いは、日本人以外には通じません

何かお願いするとき、こんな言い方をすることってありませんか?

「これ、ご承認いただけないと本当に困るんです」
「そこはそれ、まぁ色々と事情があって、…..」
「お願いしますよ。そこは察して下さい」
「それ以上言わせないでください」

こんな言い方は、日本人の間だと多少は通じるんですよね。(まぁ、実際には通じないことの方が多いでしょうけれども)

しかし日本人以外との交渉では、OKされる可能性はほぼゼロです。そもそも英語に訳せません。

中には「言葉じゃダメだ。土下座をすれば、誠意も伝わるし、相手もわかる」という方もいたりします。私は外国人に土下座はしたことはないですが、おそらく通じないと思います。逆に「日本人は謝罪すればOKと思っている」と見られるだけだと思います。

 

やはりお願いする場合は、事実とロジックが必要です。

手間と時間をかけてでも、事実に基づいて、相手が同意するようなシンプルなロジックを作れば、少なくとも欧米人相手であればほぼ要望を通すことができます。相手は「It’s unreasonable (不合理だ)」と言われるのを何よりも恐れるので。

グローバルコミュニケーションで必要な力は、英語よりもロジック、と思います。

 

 

「グローバル時代の日本のものづくり」…工業デザイナー・奥山清行さんインタビューから

2013/5/5の日本経済新聞の記事「日曜に考える 日本の個性 世界にどう売り込む」で、工業デザイナーの奥山清行さんのインタビューが掲載されています。

奥山さんはイタリア人以外で初めてフェラーリをデザインした方です。

日本のものづくりに今求められていることを、ズバッと語っておられます。

—(以下、引用)—

ーものづくりで世界に勝つには何が必要でしょうか。

「想像力とビジョンだ。(中略)レストランでシェフから『何を作りましょうか』と聞かれても客は魅力を感じない。自分が知らない世界を見たいと思っているからだ」

「….目の前にいない未来の消費者が何を求めるようになるのか。それをいち早くつかんだものが、市場の勝者になれる」

—(以上、引用)—-

これは「100円のコーラを1000円で売る方法」でも書いた「顧客の言いなりになってはいけない」ということですね。

たとえば1年間に国内で新販売される清涼飲料水は二千種類もあります。これらはすべて商品開発チームが慎重に企画を立てて開発した商品です。

しかし消費者に「この1年間で新発売された清涼飲料水は何?」と聞いても、ほとんど思い出せないのではないでしょうか?

現代は非常に多くの業界で競争が激化していて、顧客から見ると似たような商品が沢山あるのですよね。

このような状況で顧客の言いなりになっているかぎり、顧客の期待値を超えることはできません。

とは言え、顧客の一歩先に行くと早すぎます。半歩先で仕掛けて、実際に商品を「欲しい」と思ったタイミングで提供することが求められているのですね。

 

一方で市場がグローバルに広がっています。奥山さんはこのことについても語っておられます。

—(以下、引用)—

「僕が日本のものづくり再生の武器に使っているのは、外国の権威を利用した『黒船効果』。国産スポーツ車はジュネーブ国際自動車ショーに、家具や工芸品はミラノの国際家具見本市に出展している。認めてもらえば世界市場と直結して仕事ができる。黒船効果は中国など新興国に売り込むのにも極めて有効だ」

—(以上、引用)—-

自分で個別に売り込むのではなく、皆が集まっている場所に出向いていくということです。グローバルで勝負する機会は意外とあるのですね。

米国ではなくジュネーブやミラノといったヨーロッパの都市が出てきたのは結構意外でした。ヨーロッパで活躍されてきた奥山さんならではです。やはり文化面では相変わらずヨーロッパが世界をリードしているということなのでしょう。

—(以下、引用)—

「想像力は日本人の得意分野。相手の心情を推し量る能力は世界でもトップ級だ。….自己中心的でない客目線のものづくりが求められている。若者に広がる内向き志向は言語道断。海外に出て自分を客観視する経験を積まなければ、日本のものづくりに未来はない」

—(以上、引用)—-

今や、グローバル化は「すべきか、どうか」という時期は過ぎ去って、「どのようにするか」という時代です。

グローバル化を意識するかどうかは、企業の問題であると同時に、個人の問題なのかもしれません。

 

 

グローバルコミュニケーションで必要なのは、どちらかに合わせるのではなく、お互いの違いを認めること

2013/4/23の日本経済新聞の連載記事「私の課長時代 富士フイルムHD社長 中嶋成博氏」は、欧米人と日本人の考え方の違いを理解する上でとても参考になりました。

中嶋社長は、国内の製造課長代理になった4ヶ月後にオランダ工場へ異動。

カラー印画紙の一貫生産が始まったものの生産が安定しないため、製造課長として立て直しを命じられました。初めての海外渡航で中嶋社長は現地作業員の指導で苦労されます。

—(以下、引用)—-

一方、日本人と欧州人の違いにも悩みました。トラブルが起きると、我々は応急処置を模索します。でも欧州人は「原因が分からないと対処できない」とのスタンス。そこで双方が大げんかです。

—-(以上、引用)—-

これは、私も海外の人たちと問題解決を模索する際に実感します。

日本人は、まず目の前の具体的な問題を解決しようとします。

ご迷惑をかけている人たちへの影響を最小限にしたい思いもあるのでしょう。しかしともすると、目の前の問題を解決してしまったら、次の問題に注意が向いてしまう傾向もあります。

欧米人はすぐに問題解決に取りかかろうとしません。

そもそもなんでこのような状況が起こっているのかを考えます。そして、もしその問題がやむを得ない状況で発生しているのであれば、「それじゃぁ仕方ないね」と対応しないこともあります。

このようにして、日本人は「問題が起こっているのに対応しないのはなぜだ」、欧米人は「その場その場で対応しても真の解決はならない。無駄だ」となって、大げんかとなるのですね。

 

中嶋社長が素晴らしいのは、あるきっかけでそのヒントを得たことです。

—(以下、引用)—-

 あるとき、ドイツのケルン大聖堂に赴きました。完成まで600年以上かかったという建物ですが、建造初期から完成時の全体像を考えていたそうです。これが彼らの考え方だと思いました。ワープロで表をつくる際にも、日本人は文字から、欧州人は枠から書いていました。それに気づいた後は、彼らに「まず仕事の全体はこうだ」と説明すると円滑に進みました。

—-(以上、引用)—-

日本人の感覚からすると、完成に600年以上かけたこと、さらに建造初期から全体像があることは、想像をはるかに超えています。

例えば今デザインをしたとして、完成は2613年。はるかな未来です。

「600年」というスケールではありませんが、私もグローバル本社の人たちと戦略を考える際に、5年後・10年後にどうあるべきで、そのために今から具体的にどうすべきか、ということを一緒に考えることがよくあります。

その際に本社の人たちはかなりの手間と時間を使い、現在の問題意識が正しいかを各国の責任者に確認をします。

このように最初にコンセプトをしっかりと固める点は、確かに見習うべき点ですね。

 

記事の最後では、日欧双方の課長級各8名が集まり、互いの良い点と嫌な点を挙げたところ嫌な点が山のように出てきて、「これではかみ合うわけがない」とお互いに大笑いして、互いを認める空気が生まれた様子を描いています。

これこそがあるべき姿ではないでしょうか?

グローバルコミュニケーションでは、どちらか一方に無理矢理合わせるのではなく、お互いの違いを認めた上で、両者の良さを活かし合って協業することで大きな価値を生み出すということが分かる良記事でした。

 

 

海外ビジネスマンから見て、日本人とのビジネスはかなり特殊だ、という話

「なぜ海外のビジネスマンは、日本のやり方でビジネスをすると学びを受けるのか」(Why Foreign Businessmen are Receiving Lessons on Doing Business the Japanese Way)という記事を読みました。

海外ビジネスマンの視点で日本のビジネスのやり方についてまとめており、「なるほど、海外の人はそう見ているのか!」ととても参考になりました。

「これまで仕事をしてきた多くの国の中で、日本は最もユニークだ」という海外ビジネスマンの言葉を引用して、全部で5点紹介されています。簡単に紹介します。

1) もし日本人が仕事を完了できると言ったとしたら、額面通り受け取ってよい。

 特に企業間の仕事の発注についての話です。

「それは当たり前」と思うかもしれません。しかし実際には、海外では自分の能力以上の仕事を引き受けて出来なくなったら責任逃れをする傾向があるとしています。

 

2) 日本人にとっては、お客様は神様である

これは有名ですね。フランスでは顧客と顧客サービスは対等な関係と考えているとしています。

 

3) 日本人にとっては、会議室は意志決定の場というよりも、むしろ進捗を報告する場である。

私も同じことを同僚の外国人社員から聞かれたことがあります。「日本人ってどうやって会議で意志決定しているの?」

実際には会議の前に必要な人に根回しをして、会議で関係者が揃ったところで合意している訳ですが、「会議は正反合で議論をした上で新たな合意形成する場」と考えている海外の人は、これがなかなか理解できないし、受け容れられないのですよね。

一方で日本のやり方にも問題があります。会議で意見を求めても率直な意見が出てこないのです。これは痛感している方も多いのではないでしょうか?

 

4) 意志決定の遅れは、日本人が非効率性を反映したものではない。

意志決定プロセスの違いであるとしています。

与えられた条件の範囲で意志決定するのではなく、常に高品質を目指しているので、与えられた条件もあえて変えた上で、より品質が高まるように意志決定をするということです。

 

5) アルコールは多くの日本人にとって本音をさらけ出す手助けになるが、同僚と飲むことは仕事と見なされる。

 これは上記3)とも関連しています。会議では本音を言わないものの、アルコールが入ると本音が出る、ということですね。

 

私は、「実際には全ての国が特殊である」と思っているのですが、日本の特性はあまり知られていないので結果的に特殊に見えてしまう面もあるのかもしれませんね。

 

 

ドミニカ共和国のWBC優勝は、世界がフラットになっていることを証明している

WBCではドミニカ共和国が8連勝で優勝しました。

私はWBCを見ることはほとんどありませんでしたが、ドミニカ共和国が優勝するということは全く予想していませんでした。

そしてなぜドミニカ共和国が優勝したのか、興味を持ちました。

色々な記事を見ると、ドミニカチームには実は大リーガーが多く所属し、チーム全体が一体となって闘って優勝を勝ち取ったようです。

そこで各国チームで大リーガーが何名いるのかを調べてみました。

WBCの選手登録名簿には、各国の選手と所属チームが記載されています。所属チームは大リーグのチームと一部国の名前が書かれています。

そこでこのデータをもとに、大リーグ所属選手数で各国を順番に並べてみると、こんな感じになりました。

Wbc_3

WBCには、実に200名もの大リーガーが参加しています。

そしてトップはドミニカチームと米国チームの29名。

一方で韓国と日本の大リーグ所属選手はゼロでした。

 

WBCに参加した選手の多くは大リーガーだったのですね。

改めて、大リーグには世界中から様々な選手が参加していることがよく分かりました。

 

ドミニカ共和国のWBC優勝は、世界がフラットになっていることを端的に示しているのかもしれません。

 

 

日本軍が敗れ続けた3つの理由。グローバルコミュニケーションはそれを抜け出す大きなきっかけになるかも?

事実を軽視したり、無視するとどうなるか?

第二次世界大戦の日本軍の戦いから学ぶことができます。

 

第二次世界大戦末期の1944年10月、日本本土に米国海軍の空母機動部隊の大軍が迫りました。

日本軍の基地航空隊は奮戦。「台湾沖航空戦」と呼ばれる戦いで航空機300機を失うも大本営は華々しい戦果を発表しました。その成果は次の通り。

空母19隻、戦艦4隻、巡洋艦7隻、艦種不明15隻撃沈・撃破

敗色濃厚の太平洋戦争は一気に転換。攻勢の絶好の機会となりました。

この大戦果に基づき、日本軍はレイテ島決戦の実施を決定、大兵力をフィリピンのレイテ島に輸送艦で送りました。

 

実際には米軍機動部隊の被害はわずか大破2隻と小破1隻。大規模機動部隊はほぼ無傷でした。後にこの事実を知った日本海軍。しかし陸軍に知らせませんでした。

この結果、レイテ島への輸送兵力は存在しないはずの米軍機動部隊の空襲で多くが沈没。レイテ島決戦は惨敗。さらに数万人の将兵が命を落としました。

 

なぜこんな事が起こったのでしょうか?

基地航空隊は慣れない夜間攻撃で炎上する味方機を敵艦と誤認する等、戦果把握は困難を極めました。一方で現場には、「撃沈できたか分からない」と言えない空気もありました。

現場から上がってくる過大戦果をそのまま集計した結果が、大本営発表になりました。

間もなく情報将校が現地で将兵に聞き取り調査を実施。「実際の戦果は重巡洋艦数隻程度」と大本営に報告しましたが、この報告が顧みられることはありませんでした。

  

もしかしたら当時の作戦部はこう考えたのかもしれません

「確かに戦果の数字は少々怪しいかもしれない。でも数字はあくまで単なる数字だ」

「われらが将兵は、現場で大変な思いをしている。これにはしっかり応えたい」

「今は未曾有のピンチだ。今頑張らずにどうする?信念は岩をも貫く。神風がきっと吹くはずだ。これまでもそうだった」

(周りもそんな空気だし)

「そもそも事実を伝えると厭戦気分も広がる。伝えるわけにはいかん」

 

皆がいい人。でもちょっと無責任。

この戦いのパターンは台湾沖航空戦に限りませんでした。第二次世界大戦を通じて日本軍はこのような戦い方を繰り返してきました。

この戦い方を積み重ねて、戦死者230万人・民間死者80万人というおびただしい犠牲者を出した末、敗戦しました。

 

日本軍が敗れ続けた理由。

物量で圧倒的に米国に劣っていたのは確かに事実です。しかし次の3つも大きい要因ではないでしょうか?

・事実と情報を軽視していた。主観的解釈と希望的観測で動いていた。

・過去の戦いの経験から学ばなかった。信念を重視していた。

・過度に空気に支配されていた。「これは言えない」という雰囲気があった。

一方で米軍は常に過去の戦いを分析して学び、戦略を練り直しました。

 

この日本軍が敗れ続けた理由。現代の日本ではどうでしょうか?

 

グローバルコミュニケーションでは、事実に基づいたロジックが求められます。

多くの日本人が仕事の必要性に迫られてグローバルコミュニケーションを始めることは、もしかしたら、この日本軍が敗れ続けた理由から日本人が抜け出す上で大きなきっかけになるかもしれません。

 

 

 

対立を避ける言い方は、グローバルコミュニケーションではどのような印象を与えるか?

日本人は、コミュニケーションの場で相手との関係を大切にします。そのために対決することをできる限り避けようとします。

グローバルコミュニケーションにおいて、このスタイルはどのように受け取られるのでしょうか?

藤井清孝さんが、ハーバードビジネスレビュー2012/10の寄稿論文『「人を動かす」リーダーの英語力』で次のように書いておられます。

—(以下、p.72から引用)—

日本の議論は同じ空気が支配する『場』でのものが多く対立構造を避ける傾向が強い。そのため相手を個人攻撃することなく論理性で説得していくプロセスに弱い。これが英語では情緒的に聞こえ、自分の見解に自信がないような印象を与える。

—(以上、引用)—-

私もグローバルコミュニケーションでは対立を恐れずに言うべきことを言うことで、相手から逆に信頼されるということを頻繁に経験しています。

逆に気を遣って言うべきことを言わないと、その気遣いは残念ながら相手には全く伝わらずに、結果的に双方が気まずい思いをする、という経験も沢山してきました。

 

藤井さんがおっしゃっている「個人攻撃せずに論理性で説得する」のは、相手とのリレーションでコミュニケーションを取ってきた日本人にとっては難しいと感じる方も多いかもしれません。

しかしグローバルコミュニケーションでは、この「論理性」の問題は避けて通れないと思います。

 

グローバルコミュニケーションが必要な方は、ロジカルシンキングの考え方も身につける必要があるのではないか、と最近は思っています。

 

 

グローバルコミュニケーションの会話ではユーモアが大事。でも周到に準備したネタはなぜかイタかったりする

グローバルコミュニケーションで「真面目に話そう」と思って気合いが入りすぎてコチコチになったりすると、相手も身構えてしまいます。

結構大切なのは、ユーモアのセンスです。あまり真面目になりすぎず、むしろニコニコとフレンドリーな感じで冗談も交えながら話すと、相手も次第に警戒を解いていい感じでコミュニケーションができます。

ハーバードビジネスレビュー 2012年10号で、藤井清孝さんが書かれた論文 『「人を動かす」リーダーの英語力』でも、藤井さんは次のように書いておられます。

—(以下、p.72より引用)—

面白く話せることはその人の英語での余裕を感じさせ、大変な好印象を与える。

—(以上、引用)—

これは実感している方も多いのではないでしょうか?

あまり英語に慣れないまま、余裕を失って真面目にやって固い雰囲気のまま終わる….私も以前、さんざん経験しました。

逆にユーモアを交えてフレンドリーに進めて、いつの間にか合意を取ってしまう….ということもよくあります。

 

一方で、「ユーモアが大事」とばかり念入りにネタを仕込むのはどうでしょうか?藤井さんは次のように続けています。

—-(以下、引用)—

あくまでのその場の空気に即し、自分への余裕から来る「アドリブ」のユーモアであることが大切。

—(以上、引用)—

事前に仕込んだ定番ギャグをかましても、ウケないということですね。

 

なかなか難しいものではありますが、相手も同じ人間ですので、あまり真面目になりすぎないで臨むということですね。

(打ち合わせるビジネスの内容は真面目にするのが大前提ですので、念のため)

 

 

もしこの方法を知っていれば、私は2年間かかったTOEIC 475点→795点アップが、半年間で達成出来たかもしれない

6-7年前にこちらでご紹介したように、私は2年でTOEIC 475点から795点にアップしました。

この時は、毎日往復3時間の通勤時間をフル活用。電車やバスでは雑誌TIMEを読み、歩いている時は米軍ラジオ放送(FEN)を聞き、「英語のシャワー」をできるだけ沢山浴び、週末も英語を学ぶ、という形で勉強しました。「英語力の底上げをしよう」と考え、米国で生活しているような状況を毎日数時間、擬似的に作っていたのですよね。

このためにかなりの時間を投資しました。実際、この2年間は日本語の本をほとんど読まず、代わりに英語を勉強していました。

しかし下記の本を拝読して、「同じ時間数を使って別の方法で勉強すれば、2年でなく半年で795点を達成できたかもしれない」と思いました。

杉村健一著「ただのサラリーマンが時間をかけずに半年でTOEIC テストで325点から885点になれたラクラク勉強法」

近所の書店で、語学ベストセラーの中にあったのを見つけて購入しました。

この本ではとてもシンプルな、しかしTOEICスコアアップのためにはとても現実的な勉強方法が紹介されています。

・『TOEICのスコアを上げるには、英語力全般の底上げをしなければいけないわけではなく、このことこそTOEICの勉強をする上では超重要なのです』(p.36より)

・『TOEICスコア=英語力全般ではありません。「TOEICに出ることも出ないことも両方勉強してテストを受ける」ことと、「TOEICに出ることだけに絞って勉強してテストを受ける」の2つの方針で同じ勉強時間を使ったら、後者の方が高いスコアが取れるのは自明です』(p.38より)

確かにTOEICの試験は、幅広い英語力を問うのではなくかなり限定した分野が出題されます。ですのでTOEICスコアアップが主目的であれば、「英語力全般の底上げに時間を使わない」という発想は、逆説的ですがとても有効です。

では具体的に何をするのか?本書では下記のように紹介されています。

—(以下、p.40から引用)—

TOEIC で効率よく高いスコアを取るためには、

・話す能力と書く能力は要らない。聴く能力、読む能力につながるインプット向上だけを狙えばよい

・消去法も使いつつ、選択肢を選べばそれで十分なので、聴くのも読むのも精密でなくても大丈夫なことが多い

・ただし、スピードはとても重要

・比較的フォーマルな、どの職場でも使う英語だけを勉強すればよい

—(以上、引用)—

確かにその通りです。しかしこれで英語力はつくのでしょうか?本書ではその点も答えています。

—(以下、p.45から引用)—

「TOEICのスコアが上がっても、英語力はあまりつかないのでは?」と心配する声もあるかと思います。

でも、TOEICを意識した勉強がトータルな英語力向上にとってネガティブかというと、僕はそうは思いません。英語力全般で多少の能力のバラつきが出るものの、能力の合計がトータルの英語力と考えれば、TOEICのスコアだけ伸びたとしても、やはり英語力は伸びているはずです。

もっと言ってしまうと、リスニング力とリーディング力だけ伸ばしても、自動的にスピーキング力とライティングの力までついてしまうのでしょう。

—(以上、引用)—

この勉強方法はTOEICスコアアップだけを狙ったものですが、確かに勉強しないよりははるかにマシですし、英語力のアップにも有効だと思います。

しかし本書でも著者の杉村さんが「僕の場合は900点台といっても要領によるスコアなので、英語力全般はたいしたことはありません」と書いておられるように、本当に仕事で必要な英語力を身につけるのは、この勉強方法だけでは不十分です。

 

24歳の時に795点を取った私。当時の部門長(日本人)はTOEICスコア700点以下でした。しかしこの部門長、英語の交渉で米国人を圧倒していました。英語はペラペラでしたし、交渉で必須のロジックも滅法強かったからです。私は全くかないませんでした。

このようにTOEICは要領で高得点が取れるというのは本当です。

楽天の三木谷浩史さんもご著書「たかが英語」で、「TOEICのターゲットスコアは通過点に過ぎない」と述べておられます。

 

しかしながらTOEICがビジネスで必要な英語力を客観的に把握する上で、現時点で最も現実的な指標であることは間違いありません。代替手段がない訳です。

ですので仕事でTOEICスコアと英語力アップが必要な方は、英語の勉強は本書の方法で行い、実践的な英語力は日々の英語でのビジネスコミュニケーションで鍛えていく、という考え方は、アリだと思いました。

 

本書では、具体的にどのような参考書をどのように活用すればよいか、という点まで丁寧に紹介されています。TOEICスコアで悩んでいる方にとっては、福音の書と言えるかもしれません。

 


 

「泣き落とし」が米国人に伝わらない理由。そしてごく稀にある、米国人が「泣き落とし」で来た場合にどうするか?

米国人と交渉する際に、

「これができないとどうしても困る。だからお願い」

と泣き落としモードで交渉する場合があります。

日本人同士ならば「しょうがないなぁ」ということで交渉が成立する場合があります。

しかし相手が米国人の場合、この方法で交渉してもかなりの可能性で負けます。(稀に交渉成立する場合もありますが)

いくらこちらの状況を詳細に説明して、困った状況を伝えても、相手からすると"so what?" (で、それがどうしたの?)なのですよね。

実際に"So what?"とあからさまに言われることは少ないですが、本音はそんな感じです。

 

泣き落としモードが伝わらないのは、単にこちらの努力不足または力不足と受け取られてしまうからです。

それは、米国ではロジックで議論が成り立っているからです。

 

ですので、本来は

1.今、どういう状況で、課題は何なのか?
2.困っている理由は何なのか?
3.解決策の選択肢はいくつあり、それぞれの選択肢の評価はどうなっているのか?
4.そして提案している解決策がなぜよいのか?

を、ロジカルかつシンプルに説明する必要があるのです。

これをすっとばして2.と4.をいきなり説明しても、なかなか相手に伝わらないのですよね。

実際には、1から4を順番に考え、かつBATNAを確保した上で、最終的に4の提案を落としどころに交渉に臨めば、泣き落としモードにならずに、優位に交渉を進められることも多いのです。

 

面白いのは、実は稀に米国人がこちらに「泣き落とし」で交渉してくる場合があることです。恐らく「日本人だと通じる」と期待してのことです。

こういう場合はチャンスです。

ロジック最重視の米国人が泣き落としで来るのは、間違いなく相当困ってのことです。

だから”So what?"と冷たいことは言わず、便宜を図り、対応しましょう。相手も人間です。お互いの関係が格段に強化されます。

これができるのが日本人の強みなのですから。

 

 

ネイティブは日本人が英語を理解できないことを理解できない。だから「グロービッシュ10の基本ルール」

私が28年前に日本IBMに入社した際のTOEICは475点。当時の私は米国人と全く意思疎通ができませんでした。

それから2年間、寝ても起きても英語の勉強。TOEICも800点近くに届き、なんとか英語を使って仕事ができるようになりました。

この時の目標は、「ネイティブと同等レベルの英語が使えること」。

これは非常に高い目標で大変です。米国人が話していることはなかなか理解出来ませんでしたし、ネイティブ同士のくだけた日常会話になると全くお手上げでした。彼らも悪気はなく、「英語が理解出来ない」というこちらの状況が分からないのですよね。

 

一方で私は、入社4-5年後の1980年代後半から韓国・中国・台湾・香港・タイといった非ネイティブ系のIBM社員と一緒に仕事をするようになりました。

お互いに英語は非ネイティブ。使う英語も基本単語。

だから米国人のネイティブ英語のように「何を言っているか分からない」ということはなく、コミュニケーションは逆にとても円滑でした。

この私の体験、現代で「グロービッシュ」と呼ばれている動きを先取りしていたようです。

 

実はグロービッシュを提唱しているジャン=ポール・ネリエール氏は、フランス出身で非ネイティブ英語系のIBM社員でした。

ハーバードビジネスレビュー2012/10号の特集「グローバル英語力」に、ネリエール氏の論文「グロービッシュ:非ネイティブ英語は主役となるか?」が掲載されています。とても興味深い内容でした。

本論文では、1980年代後半当時、本社副社長でインターナショナル・マーケティング責任者だったネリエール氏が、米国人部下とともに日本IBMに来日した時のことが紹介されています。

一方的に英語でまくし立てる米国人と、黙ったままの日本人のコミュニケーションがすれ違う一方で、非ネイティブの自分と日本人は円滑にコミュニケーションできたこと。そしてこれがグロービッシュという概念が生まれるきっかけになったことが紹介されています。

 

ちょうど私がアジア系IBM社員とのコミュニケーションで実感したことを、ネリエール氏は同じ時期に同じ会社で、経営陣レベルで実感していたのは、面白いですね。

 

この論文に掲載されていた「グロービッシュ10の基本ルール」がとても参考になったので、ご紹介させていただきます。

—-(以下、p.128から引用)—

グロービッシュ10の基本ルール

1.話を理解してもらおうとするのは話し手・書き手の責任であり、聞き手・読み手の責任ではない

2.グロービッシュの基本単語1500語を使う

3.主に能動態を使う

4.文章を短くする(15語以内に)

5.発言の内容を繰り返して確認する

6.比喩や飾った表現・慣用句を避ける

7.「はい」を促す非定型の質問文を避ける

8.ユーモアの比喩表現を避ける

9.頭文字を避ける

10.身ぶりや視覚的な要素で補う

—-(以上、引用)—

 

最初の「話を理解してもらおうとするのは話し手・書き手の責任であり、聞き手・読み手の責任ではない」というのは、「英語学習の目的は、ネイティブレベルになること」だった私にとって大きなパラダイム転換でした。

しかしふり返ってみると、最近のグローバルチームとの電話会議では、相手側の米国人(他国の場合も)は、分かりやすい英語を話し、相手が理解したかを念入りにチェックしています。

「相手が英語を理解できない」ということを理解しはじめているようです。

20年前と比べると、米国人側もコミュニケーションする相手が多国に渡り、グロービッシュを使う必要性が増えてきているのですね。

 

 

7年間で売上比倍増!ユニ・チャームの海外新興国市場開拓は、どのような戦略に基づいているのか?

ユニ・チャームは中国・インドネシアといった海外新興国の市場開拓を加速しています。

海外売上比率は、2005年3月期に24%だったものが、2012年3月期には47%。7年間で倍増です。この比率は早期に8割まで高める計画だそうです。

このユニ・チャームの海外進出、どのような戦略で行われているのでしょうか?

 

日本経済新聞 2013/1/4の論文「経営塾 顧客は世界に広がる① 進出先でトップメーカーになる」で、ユニ・チャーム社長の高原豪久が次のように述べておられます。とても簡潔に分かりやすくまとまっていましたので、引用させていただきます。

—(以下、引用)—

 …人口減少が続く国内市場において同業他社との競争に明け暮れているだけでは、成長は見込めない。….

(中略)

 新興国では高率の経済成長で人々の生活が豊かになり、それまで使っていなかった紙おむつや生理用品なども受け入れるようになってきた。当社の戦略は進出先の国で新たな市場を作り出し、その製品のトップメーカーとして認知されることである。それはある種の先行者利益であり、有利に販売を続けられる。

 いちからビジネスを立ち上げれば、製造だけでなく販売条件や流通経路も当社の方針通りに作り上げることができる。こうした進出先での「垂直統合」こそが大きな利益を生む。

—(以上、引用)—

まさに自社製品の強みを活かして新市場に進出することで、ブルーオーシャンを作り出し、かつ自分たちでルールを決めているわけです。

新市場開拓は大変な苦労が伴いますが、新たな市場や顧客を作り出すのはエキサイティングな仕事でもあります。

 

同時に、ユニチャームの成功を見た同業他社が、形を真似てアジア進出し、同じことをなぞっても決して成功しないでしょう。既に市場のルールはユニ・チャームにより決められているからです。

ベストプラクティスだけをなぞってもダメで、戦略思考に基づいた戦略立案と、その着実な実行が大切であることがこの論文からもよく分かります。

 

この論文の連載、楽しみです。

 

 

異なる文化圏同士の交渉方法

米国人のコミュニケーションは比較的ストレートです。直接の質疑応答で交渉を重ねて合意に持って行きます。

一方で日本は色々なシグナルを出して相手の反応を観察しながら情報の断片を集めて、交渉を進める形が多いように思います。

 

両者が交渉をすると、日本人は米国人のストレートな表現を理解するものの、米国人は日本人のシグナルを読み取れず、なかなか交渉がうまく進まない、という状況に陥りがちです。

ではどうすればよいのでしょうか?

ハーバード・ビジネス・レビュー2012/10号に掲載されている論文「異文化交渉のプロフェッショナル」(奥村哲史、ジーンM.ブレット)で、そのヒントが書かれています。

—-(以下、引用)—

特定の文化圏の人間になり切る、というのはあまり現実的ではない。それよりは、自分の既存の交渉行動のパターンを知り、そこに新たな別の行動を加える、つまり行動のレパートリーを増やすことである。特に日本人にとっては、情報獲得と共有のための行動のバリエーションとして、これまでの間接型に、さらに直接型を加えていくことが重要である。

—-(以上、引用)—

最初に自分と相手は異なる交渉パターンなのだということを理解し、相手のパターンを知ることが必要と言うことですね。

論文ではさらに続けています。

—-(以下、引用)—

優れたグローバル交渉者は、行動の文化差に左右されず、交渉の基本構造に立ち返り、自他に必要な情報を掘り起こし、その有効性を丹念に確認しながら交渉を進めていく。そして、相手の目標と妥協するためではなく、自分の目標を見据え、その実現に必要な情報を獲得し、合意というソリューションに組み込んでいくのである。

—-(以上、引用)—

相手と情報を確認し合って交渉を進めていくのは、どの文化圏でも同じです。

やはり、あくまでこの基本に則ることが大切だということなのですね。

 

 

グローバルコミュニケーションは実は意外にシンプル(でも難しい)

厳しい状況の中で、「そこを、なんとかお願い!」とか、

相手にロジカルに突っ込まれると、「まぁ、色々あるんですよ」とか、

私たちは言いがちです。

 

ところが「そこを、なんとかお願い!」とか「まぁ、色々あるんですよ」に相当する英語はないようです。

実はこれ、非常に高度でハイコンテキストなコミュニケーションなのですよね。

このようなコミュニケーション・スタイルは当事者同士でお互いに状況を深く理解し合っていることが前提になります。日本人特有なものでもなく、東アジア各国で多く見られるようです。

 

このようなコミュニケーションに慣れた日本人が、お互いを理解し合えていないことが前提となるグローバルコミュニケーションで同じことをやっても、相手に全く通じません。

そして「外国人にはなかなか話が通じない」と思うことになります。

 

私もグローバルコミュニケーションで色々と悩みました。

しかし最近は、欧米系のグローバルコミュニケーションは実はとてもシンプルなのだと感じています。

ただシンプルですが、難しい。日本人にとっては慣れが必要なのかもしれません。

 

それは4年半前に当ブログ「なぜ、日本人の議論と米国人の議論が噛み合わないのか?」で書いたことと同じです。

欧米人は、

前提に同意でき、
議論のロジックに同意できれば、
結論に同意せざるをえない

のです。これを認めないと自分の中で論理破綻するからです。

だから私たちは、ロジックを積み上げることで彼らの同意が得られるのです。

 

ロジックと言ってもそんなに難しいものではありません。例えばこんな感じです。

前提:この100ccの水には塩が5g入っている
ロジック:5%の濃度の塩水は、しょっぱい
結論:だから、この水はしょっぱい

これは誰でも賛同する、当たり前なロジックですよね。

彼らは賛同するのは、こんなロジックです。

しかし私たちは、往々にしてこんな論理展開をしがちです。

前提:この100ccの水には塩が5g入っている
ロジック:砂糖水は甘い
結論:だから、この水はしょっぱい

日本人の場合、ロジックをすっ飛ばしても結論は正しいので、「ロジックはちょっと微妙だけど」と思いながらも、多くの場合は同意します。しかし欧米人の場合、ロジック展開が同意できないので結論にも同意できません。

 

この砂糖水は極端なケースですが、実際にありがちなのはこんなケースです。

前提:当社は前期、御社に対してプロジェクトAを実施しました
ロジック:プロジェクトAは、御社のビジネスに大きく貢献しています
結論:ですので、今期もプロジェクト継続をお願いします

つまりプロジェクトAを実行したという実績をアピールし、継続をお願いしています。

しかし前提で言っているのは、あくまでプロジェクトAを実行した事実だけ。ビジネスにどのように貢献したのかは示していません。もしかしたらビジネスの生産性を逆に低下させているかもしれません。その場合は中止もあり得ます。

ですので、欧米人はこのロジックではなかなか同意しません。

これだといかがでしょうか?

前提:当社は前期、御社に対してプロジェクトAを実施し、生産性を10%改善した結果、御社は10%多い案件をこなしました
ロジック:この事実から、プロジェクトAは御社の前期売上10%増に貢献していると考えられます
結論:ですので、今期もプロジェクト継続をお願いします。

前提データを検証してその事実に同意できれば、結論にも同意する可能性は極めて高いはずです。(「予算が厳しい」等の他変動要因は除外します)

このように前提→ロジック→結論を整合性を持たせて積み上げることで、グローバルコミュニケーションは動いています。

高度なハイコンテキスト・コミュニケーションに慣れた私たちにとって、ロジックを地道に積み重ねるのは面倒な作業で、なかなか難しいかもしれません。

しかし慣れてしまえば、実は意外にすごく単純でシンプルなのですよね。

 

 

91歳の米国防省・名軍略家が洞察する、中国の今

米国防総省には、アンドリュー・マーシャルという91歳の名軍略家がいます。

超長期の米軍の戦略を担うネットアセスメント局を1973年からなんと39年間、現役として率いています。余人をもって代えがたい洞察力があるためです。

その稀代の名軍略家マーシャルが今の中国をどのように見ているかが、2012/11/04の日本経済新聞の記事「風見鶏 老軍略家からの警告」に書かれていましたのでご紹介します。

—-(以下、引用)—

同氏の有力ブレーンの1人に、著名な米戦略家のエドワード・ルトワック氏(70)がいる。彼の話を聞くと、マーシャル氏の思考の一端が透けてみえる。

「尖閣での強硬な態度は、中国の拡張路線の表れではない。むしろ国内の不安定さに原因がある。北京では指導部の権力の移行も円滑にいっていない。そうした矛盾から目をそらすため、日本に強硬に出ているのだ」

つまり、中国は内部がもろくなると、対外的には強硬に傾いていくというわけだ。そんな観察に基づき、ルトワック氏は日本にこう提言する。

「領土については譲る余地をみせない。同時にこちらからは一切、挑発もしない。日本が中国に対応する際、この2点が肝心だ」

なぜなら、そうすれば墓穴を掘るのは中国だとみているからだ。

—-(以上、引用)—

なぜそうすると中国が墓穴を掘るのでしょうか?

記事では、中国はアジア諸国を主導できる「中華圏」を再建したいにも関わらず、尖閣や南シナ海での強硬ぶりにより、周辺国が中国離れをしてしまうから、とその理由を紹介しています。

 

記事を拝読して、現在の中国情勢について改めて視点を得ることができました。

同時に、徹底した事実データに基づく分析の継続と、戦略立案の大切さも再認識しました。

ライフネット生命の出口社長が、「ビジネスでは、国語ではなく、数学で考えるべし」とおっしゃっています。改めてこの言葉の大切さが分かります。

 

 

日本で当たり前なことが、実は世界では貴重なこと

昨日に引き続き、ぐっちーさん著「なぜ日本経済は世界最強と言われるのか」で参考になった部分のご紹介です。

—(以下、引用)—-

これからは日本ならではのもの………1円1銭おつりを間違えないとか、丁寧な接客とか、そういう我々にとっては当たり前のことがお金になることを忘れないでください。(p.34)

….

…多少給料が低くても頼まれた仕事は最後までやるとか、バスの時間があるからお先に…なんて帰る奴はいないとか、雨が降ったから会社を休む奴がいないとか(中国では全部あります)、そういうディシプリン(decipline)が残っている我々日本人の価値観は、世界から見ると大変貴重かつ円の価値に直結しているものなのであります。所謂「人的資本」が充実している。(p.42)

—(以上、引用)—-

「おつりを間違えないのは当たり前」と思いがちですよね。

しかし30年ほど前に欧州を旅行した際、地下鉄の乗車券を買った友人がおつりがどう計算しても足りないので「xxフラン払ったんだけど」と言うと窓口の女性は仏頂面で何も言わずにお金を返しました。日本ならまず間違えませんし、指摘されたら丁重にお詫びするシーンです。

また米国から帰国の際、お土産を空港で買おうとした時に、いったん買おうと考えた商品をお金を払う前に別の商品に変更しようとしたところ、店員から「あなた、これ買うって言ったじゃない」と責められました。日本なら全く問題ないケースです。

「おつりを間違えない」「お客様に丁寧に接する」という当たり前のことが、実は海外ではなかなか難しいのですよね。

最近、海外ではこういうことを経験するのはやや減りました。しかしそのためにかなりの教育投資が行われているのかもしれません。これは全てコストになります。

—(以下、引用)—-

世界の中で国の借金を自分の国だけで賄っている国は日本しかありません。そして世界最大の債権を保有しています。世界中に対してサラ金を経営しているようなものですから儲かるに決まっていますね。さらにだからと言ってサラ金だけを経営しているわけではなく、アメリカがとうの昔に放棄した製造業をいまだに保有し、それがまだ現役で生きている…つまり世界中の人々が欲しがるものを常に作り続けている(価値創造)。はやぶさ、H2Sロケットなど、最先端のものはほとんどが日本製で、自動車は当然この競争力の結果。新幹線も毎日無事に定刻通り走っています。これを支えるインフラは(人の面も含めて)一朝一夕に真似できるものではないのです。(p.50)

—(以上、引用)—-

本書ではこれらの日本の強さを様々な観点で掘り下げています。

個々には知ってはいても、お互いの関連性を知らなかった部分が多くあり、大変勉強になりました。

時々見返して読みたい本です。

 

 

 

中国経済のピークアウトは2013年?

色々な見方を受け容れることで、視野が広がります。

日本悲観論が主流を占める中、「日本最強」という考え方を知るのも、とても意味あることだと思います。

そう考えて、ぐっちーさん著「なぜ日本経済は世界最強と言われるのか」を読みました。

グローバルな金融の世界で30年間仕事をされてきたぐっちーさん(山口正洋さん)のお話しは、とても説得力があります。引き込まれて夢中に読み続けた本に出会ったのは、最近では久しぶりでした。

本書の中で、中国について語っている部分があります。

最近の私の問題意識に対して、明確な答えが書かれていたので、一部をご紹介します。

まず、日本で90年代初頭からモノが売れなくなった状況を分析されています。

—(以下、p.192-193から引用)—

…養われる人>養う人。まさに90年代初頭から日本でモノが売れなくなった元凶がこの生産人口の頭打ちおよび減少で、自動車、家電、百貨店などの小売、少年ジャンプに至るまで、ありとあらゆるものがどんな努力をしてもどんどん売上を減らしました。その20年間の日本の姿がそこにあるわけです。

……

生産人口の変化には意外と抗えないのが真実で、それでも日本は世界最強の競争力を有する製品輸出と、さんざん貯め込んだ外貨による経常収支の黒字で食ってきたために、なんとかなりました。

—(以上、引用)—-

つまりマクロで見ると、生産人口減少により国内市場は縮小し続けた一方で、海外で稼いだ、ということですね。

一方で中国でも高齢化が急速に進んでいます。そのことについて以下のように書かれています。

—(以下、p.193-194から引用)—

では中国は?

まず高齢化の問題があります。国連の統計(かなり保守的)でも中国の高齢化は日本よりもスピードが速く、異本と同じような消費停滞がもう2−3年後には起こり得ます。

….

日本は所謂「シルバーマーケット」が富裕化しており内需をなんとか補完していますが、中国ではその前に高齢化してしまうので、ある日突然、消費が急激にダウンするはずです。中国は社会保障などについては全く手つかずで、年金のない人がたくさんいますので、日本のように高齢者が預貯金の60%を握って巣鴨に出かけるなどという優雅なこともないでしょう。「転がる坂」は日本よりも急激かもしれませんよ。

既に1億6000万人いるといわれている60歳以上の高齢者を誰が養うのでしょうか?

これら人口動態から見ると中国経済のピークアウトは意外と早く、私は早ければ来年2013年と予測しています。

—(以上、引用)—-

中国では年金がない人が多く日本のようなシルバーマーケットがない、という点は大きな違いです。

 

未来を確実に予測できる数少ない指標の一つが、人口動態です。また中国経済の今後がどうなるのかを予測することは、今やビジネスにとって非常に重要です。

改めて新しい視点をいただいた本でした。

 

 

 

グローバル英語力が日本企業にとって重要となる理由

DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー2012/10号は「グローバル英語力」が特集です。

この中で、藤井清孝さんが『「人を動かす」リーダーの英語力』という論文を寄稿されています。

この論文では、海外グローバル企業の多くは公式語は英語であること、人材募集で「ドイツ語やフランス語が必須」とした途端に応募してくる人材が大きく偏ること、そして英語が公式語でない企業へは世界中で優秀な人材が応募してこなくなることを紹介している箇所があります。

各国現地法人ではほぼ100%現地の言語が使われているのですが、国をまたがる経営陣の会議では英語が100%となるのですね。

つまり昇進のためには英語が必須となり、強制されなくても英語習得熱が高まるということです。

では、日本企業ではなぜこの原理が働かないのでしょうか?

論文から紹介させていただきます。

—(以下、引用)—

….最大の理由は、日本市場が特殊で大きかったことである。….どうしても日本市場で戦力となる人材の育成が主眼となる。日本の商習慣やそのベースとなる人間関係は欧米と比べてキメ細かいので、日本で教育を受けた人材でないとほとんどついていけない。それゆえに外国人や帰国子女にとって、日本企業の環境は大変ハードルの高いものとなる。

日本市場のビジネスもでき、英語も流暢な人材は大変数が少ない。その結果、「仕事ができない英語屋」という表現に見られるように、日本では「仕事力」と「英語力」が別々の能力であり、時に二律背反するものとしてとらえられる世界でも稀な国となったのである。

—(以上、引用)—-

この20年間、世界経済の中で日本は急激に縮小しています。

日本の購買力平価換算のGDP(世界シェア率)は、1992年の10.2%をピークに、2012年は5.6%と実に半減しています。(出典:IMF – World Economic Outlook Databases 2012年10月版)

この数字の通り、藤井さんも論文で述べておられるように、日本市場をベースに企業を最適化するのはもはや時代にそぐわなくなっています。

しかしながら、「日本市場の世界シェアは10%」という感覚を持っているビジネスパーソンは、未だに意外に多いのではないでしょうか?

「グローバル・コミュニケーション力が大事」と言うと、「今更言われなくても….」と思われがちですが、このように考えると極めて優先度が高い課題なのではないかと思います。

 


 

 

「現場が一番分かっている」のが日本の強さ

夏休みということもあって、2012/8/20に久しぶりにNHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」を見ました。

今回は駅弁販売・営業所長の三浦由紀江さんでした。→番組のサイト

 

とても共感したのが「現場が一番分かっている」というところ。

三浦さんは、パートやアルバイトの販売員さんの声に耳を傾けることを大切にしています。そして駅弁の日々の発注を彼らに任せています。客の好みや売れ筋を肌で理解しているのは現場の人たちだからです。以前は事務所常駐の営業職社員が行っていましたが、現場の人に切り換えたことで売れ残りは大幅減少、利益は向上し、モチベーションも向上、という結果になりました。

全体の戦略や方向性は現場では決められません。しかし日々のオペレーションを現場に権限を委譲して上手くいった例をよく聞きます。逆はあまり聞きません。

 

昨日もご紹介した「ダントツ経営」では、日本とアメリカの工場で、全く同じ図面のエンジンを全く同じ工場のレイアウトで作り始めた時のことが書かれています。最初はほとんど差はなかったのですが、….

—(以下、p.140から抜粋)—

….5年も経つと、ものすごい品質レベルの差が出てきます。

というのも、日本の工場では、日進月歩といいますか、日々「カイゼン」を重ね、5年も経つと、機械設備から現場の工員が使うひとつひとつの工具に至るまで、その様相が一変しているのです。ところが、アメリカの工場はほとんど変わっていませんでした。それが大きな差となって出てくるのです。

—(以上、抜粋)—

 

この創意工夫をする現場の強さこそ、日本の強さなのでしょう。

 

 

2年前買ったKindleに、改めてGlobalで闘う戦略を見る

こちらで書きましたように、私は2年前にKindleを買いました。

そこで驚いたことがあります。

当時(今もですが)、Kindleは日本でサービスしていません。そこで米国Amazonで注文しました。つまり米国で販売しているものと同じ製品です。

日本の自宅で小包を開いてスイッチを入れました。すると勝手に3G回線に繋がりダウンロードを開始しました。

米国で販売しているKindleが日本の電話回線にそのまま繋がるということに驚きました。(ちなみにこの回線料金はAmazon持ちです)

つまり各国語仕様のKindleを作っているのではなく「ハード本体はノー・カスタマイズの単一製品」を世界に供給しているということです。

 

やや古い記事ですが、週刊東洋経済 2011.8.27号の特集「10年後に食える仕事食えない仕事」で、グリーの田中良和社長が以下のように語っておられます。

—(p.51から引用)—

フェイスブックやツイッターを見ていると、国を意識しないグローバルビジネスもあるんだなと思う。双方ともフィリピンやベトナムの違いを意識しながら、細かくローカライズしてきたわけではないのに、1〜2年で数億人まで会員を増やしている。それを見ていると、製造拠点を作って、人脈を作って、カスタマイズしてと言っている時点でナンセンスだなと思う。細かくローカライズしなくても済むような製品力をつけることが、本当のグローバル化なんだと感じる。

—(以上、引用)—

従来型のカスタマイズやローカライズは、大きく変容していくということですね。

 

これは企業の「多国籍企業」「グローバル企業」の違いのアナロジーでもあると思いました。

「多国籍企業」では、本国の本社のコピーを各国に作ります。つまり本社が本国で持っている部門のコピーを各国に作り、各国の文化や制度に細かく適合させます。

その次の段階の「グローバルカンパニー」では、世界で一つの会社を作り上げます。その業務を行うために最適な地域が、世界全体にサービスを提供します。言い換えると各国は必ずしも全ての部門を持たず各国同士で機能を融通します。例えば日本IBMはセールスの業務支援は大連から行っていますし、人事のアドミ業務支援はフィリピンのマニラから行っています。

 

グローバルを意識してビジネスをせざるを得ない現代、私たちは大きな発想の転換をする必要があります。

 

 

議論の姿勢への評価は、実は日米で正反対

会社等の集団では、議論をして物事が決まっていきます。

 

日本の議論は、時間をかけて「空気」が作られ、コンセンサスで決まることが多いようです。

米国の議論は、議論を戦わせます。「オレはxxxxxxxと考える」(正)→「私はYYYYYYと考える」(反)→「では両者のアイデアを活かしてZZZZZZとしよう」(合)といった、「正反合」の議論で決まっていきます。(実際には面と向かって「お前の言うことは違う」という言い方はしませんが、言っている内容はこのような感じです)

 

このような背景がありますので、議論への姿勢についての評価は、日米では異なります。

■議論に対して、事実で反論するケース

日本:「空気読め」と言われたりします。職位が低いと発言が認められないこともあります。(もちろん徹底的に事実での議論を戦わせる集団もあります)

米国:「議論に対して事実で反論する人」は、逆に相手から信頼が得られることもあります。

 

■議論に加わらないケース

日本:会議にただ参加して議論を拝聴し何も意見を言わなくても、おとがめがありません。

米国:議論に加わらない人は低い評価になります。「何も意見を言わない」のは、「物事をよりよくしようという意志を持たない人間である」と評価されてしまうからです。

  

■議論に反論せず、決定事項とは反対のことを頑張り、最後に裏で辻褄を合わせるケース

日本:「周囲の反対にもめげずに頑張っているじゃないか」と高く評価されることもあります。

米国:逆に信頼性を失い、マイナスの評価になることもあります。

 

どちらがよいか?

一長一短です。

時間をかけてコンセンサスを作ることが必要な場合もありますし、議論で迅速に決めることが必要な場合もあります。さらに全てが議論で決められる訳ではなく曖昧にしておいた方がいい場合もありますし、一方で曖昧さを徹底排除すべき場合もあります。

しかし米国型コミュニケーションが主体の集団にいる人は、米国型コミュニケーションを行なうことが求められます。

日本人にとって米国型のコミュニケーションは色々と大変です。どうすればよいのでしょうか?

 

なかなか大変ですが、基本はシンプルです。

1.まず、「おかしい」と思ったら、「おかしい」と言う

2.そしてできる限り、事実+提案で議論する。ここで「間違う」のはOKです。「正反合」の世界なので、修正する機会はあります。

3.1と2の段階で努力する。逆に裏で辻褄を合わせようと、努力しない。

 

基本は正直なコミュニケーション(honest communication)を心がけることです。

ただ世の中色々な事情がありますので、正直であり続けるのは実はかなり大変なことです。日本型コミュニケーションがフィットする世界も多いのです。

しかしこのコミュニケーションスタイルが標準になっている世界では、この方法でコミュニケーションをすることがますます必要になってくると思います。

 

 

グローバル企業の神話 ー 日本企業のグローバル化が急速に始まっている

2012/05/29の日本経済新聞のコラム「一目均衡 グローバル企業の神話」で、日本発のグローバル企業として一般にイメージされる自動車や電機といった組み立て系製造業は古いイメージであり、実際にはもっと多様な企業がグローバルで活躍していることが紹介されています。

 

神話1「お役所体質を引きずる旧公営企業は世界に出て行くと失敗する」

旧日本専売公社(日本たばこ産業)は、総額3兆円の大型買収を実行しています。販売本数の国別トップは日本でなくロシアですし、「キャメル」など世界に通用するブランドも手に入れました。スーダンのたばこ会社やベルギーの手巻きたばこ会社も手に入れました。NTTも南ア企業を買収、フランスでは旧水道後者がグローバル企業に脱皮しています。

 

神話2「設備集約型の素材産業は簡単にグローバル化できない」

新日本製鉄はインドやメキシコに自動車向け鋼板の拠点を整備しており世界展開を加速しています。化学や繊維も世界進出を狙っています。そう言えば私の友人の何名かも、アジアにプラント建設のため長期出張中です。

 

神話3「内需産業というカテゴリーが存在する」

流通や食品、建設といった内需産業も、ファーストリテイリングのように海外志向を鮮明にいています。記事では「産業全体が国内に閉じるケースは例外的になるのではないか。「内需/外需産業」の2分法が意味を失う。そんな時代がすぐそこまで来ている」としています。

 

記事を拝読して、日本で今、あらゆる業界で急速に企業のグローバル化が始まっている、という印象を受けました。

 

 

フラット化する世界で、自分の仕事の価値を高めるために

このGW休みに、久しぶりにトーマス・フリードマンの「フラット化する世界」普及版を読みました。

この本は、2005年に初版、その後増補改訂版が出て、さらに最新アップデートを反映した普及版が出ています。

私はまだ日本語版が出ていない2006年1月に英語版を四苦八苦して読んだ際に、その内容に大きな衝撃を受けました。

それから既に6年以上経過し、ここに書かれた内容はかなり現実化していますが、現在のグローバル化で起こっている現象を理解する上で、改めて参考になると思いました。

 

今や多くの仕事がフラット化の影響を受けています。

例えば以前、「【驚異的に格安で、高品質。しかも凄く速くてカンタン】 freelancer.comで、新興国への外注サービスを、個人で使ってみた」というエントリーでご紹介した通り、日本で数万円する仕事が、ネットで海外に2500円で外注できてしまう時代です。しかも高品質。

私自身、既にフラット化は日本でも現実になりつつあることを実感しています。

本書でフリードマンは、「自分の仕事がアウトソーシング、デジタル化、オートメーション化されない人々」のことを「無敵の民」と呼び、それらをいくつかに分類しています。(「フラット化する世界普及版」中のp.66〜)

・かけがえのない特化した人々:マドンナ、かかりつけ脳外科等
・地元に密着して錨を下ろしている人:行きつけ理髪店、弁護士
・新ミドルクラス:共同作業のまとめ役

 

一方で、渡邉 正裕著「10年後に食える仕事、食えない仕事」では、「グローバル化時代の職業マップ」として、スキルタイプが知識集約的か技能集約的か、日本人メリットが大か小かで、職業を次の4つに分類しておられます。

スキル:知識集約的、日本人メリット:大→グローカル
スキル:技能集約的、日本人メリット:大→ジャパンプレミアム
スキル:知識集約的、日本人メリット:小→無国籍ジャングル
スキル:技能集約的、日本人メリット:大→重力の世界

これはすごく分かりやすい分類ですね。

先のエントリーで紹介した写真のレタッチなどは、まさに「重力の世界」。この世界で頑張るのは大変です。

一方で、マーケティングは「グローカル」に位置づけられます。

 

ここで重要なのは、「グローカル」の仕事をしていたとしても、それが本当に日本の顧客の真の要望を理解して行っているかどうか、です。

当ブログや、拙著でも繰り返しご紹介している「バリュープロポジション」や「顧客中心主義」の考え方は、私たちにとってますます重要になってきていると実感しました。

 




 

 

企業のグローバル化で必要な、国際標準への取り組み

2012/4/11の日本経済新聞の記事「ニッポンの企業力 第5部国依存の先へ 2000人対1人の戦い」で、日本企業の国際規格・国際標準への取り組みについて書かれています。

—(以下、引用)—

….国際標準を巡る交渉経験が豊富な九州大大学院教授の合田忠弘(64)は「国際標準は早い者勝ち。議論の主導権を握り、標準を制するものが市場を制する」と話す。

 だが、多くの日本企業はなお危機感に乏しいのが実情だ。経済産業省の調査によると、日本企業が抱える自社の技術を国際標準にするための専門要員は、1社あたり平均で1人未満。大企業でも担当者はわずか2~3人程度にすぎない。

 韓国サムスン電子は標準化部門に約150人を配置。ドイツのシーメンスは全社で約2000人が標準化に携わっていた。….産業技術総合研究所理事長の野間口有(71)は「日本企業は国際標準化と経営戦略を結びつける発想が弱く、技術さえ優れていればビジネスで勝てるとの過信がある」と指摘する。

…..官民の力を糾合しても民の実力がついてこなければグローバル競争では勝てない。

—(以上、引用)—

標準化に携わる人員数、圧倒的な差です。

解決の糸口はあるのでしょうか?

記事では、ある会社の事例を紹介しています。

—(以下、引用)—

 危機感をバネにみずから国際機関の懐に飛び込み、標準を勝ち取った企業もある。産業用ロボットの制御スイッチ大手、IDECはその一社だ。

 常務執行役員の藤田俊弘(57)は「世界で競うには自ら規格をつくる発想が必要だ」と話す。従業員2千人弱の企業だが、国際標準の社内チームをつくった。欧州の国際電気標準会議(IEC)本部を頻繁に訪問、欧米のメンバーと粘り強く折衝を続けた。こうした取り組みが奏功し、2006年には自社技術が国際規格として認定を受けた。

….今では制御スイッチで約9割の世界シェアを握る。

—(以上、引用)—

記事では、他にも有名な事例を紹介しています。

—(以下、引用)—

 正方形の中にモザイク状の白黒模様が描かれた2次元バーコード「QRコード」も、日本発の成功例だ。00年に国際標準化機構(ISO)が国際規格に認定。ポスターや雑誌に印刷されたQRコードを携帯電話のカメラで読み取る姿は日本ではすっかり日常となった。航空券の電子化でも国際標準の一つに採用された。

 QRコードを開発したデンソーウェーブ(愛知県阿久比町)は同コードの読み取り機で国内トップシェアを確立している。海外でもコードが普及すれば読み取り機の市場は広がる。中国もQRコードを国家規格に採用しており、13億人市場で「勝ち組」を狙う。

—(以上、引用)—

記事にも書かれていますように、自ら国際標準を取りにいく覚悟と戦略が必要なのでしょう。

企業のビジネスをグローバル化していくにあたって、国際標準にいかに取り組むかは、大きな課題であると言えそうです。

引用が主体のエントリーになってしまいましたが、大変参考になった記事ですので、今後の自分の勉強のためにも書かせていただきました。

 

 

今、日本では、様々なことが大きくシフトし始めているのではないか?

昨日(2012/3/20)の日本経済新聞を何の気なしに見ていたら、「様々なものがシフトし始めている」ということに気づきました。

 

「太陽光発電600万キロワットへ 最大出力 年内に原発6基分」
グラフを見ると太陽光発電のキロワット当たりの単価が下がった2010年から急増、震災でさらに加速しているようです。2012年は原発2基分が新規増加になりそうです。

 

「TV事業 スリム化加速」
電機大手がテレビ事業のスリム化を加速することが報じられています。先進国に投入する液晶テレビの機種を大幅削減したり、3Dテレビ技術の新規開発を中止したり、外部調達を増やすことで、「シェアよりも採算」にシフトしています。

 

「紙おむつ、大人用シフト ユニチャーム、子供用を逆転 国内3工場の生産能力2割増」
2013年度に大人用おむつの国内売上が、子供用おむつを初めて逆転する見込みであることが報じられています。本格的な高齢化社会の到来に備えて国内事業の軸足を移していくとのことです。

 

「一目均衡 『黒字亡国』から『赤字興国』へ」
昨年、日本の貿易収支が31年ぶりに赤字となり、今年1月は経常収支も赤字になりました。このコラムでは、悲観論も多い中で国際収支の変化の意味を考察し、「黒字亡国」から「赤字興国」に踏み出す歴史的構造転換こそ日本経済を長期停滞から救い出す道である、と述べています。

 

悲観的な見方も多い日本で、わずか一日の新聞でもこれだけの材料。

今、日本は長期停滞から大きく変わりつつあるまっただ中にあるのではないか、と改めて思いました。

 

 

ユートピアの崩壊パターン

『ある国の繁栄と崩壊の物語−「ユートピアの崩壊」』というブログ記事を拝読しました。

「ユートピアの崩壊 ナウル共和国」という本のまとめを紹介した、秀逸な書評です。

ここで描かれているのは、太平洋にある国土面積21km²、人口1万人のナウル共和国の実話です。

徹底した手厚い福祉で国民所得は世界トップレベル。しかし繁栄は長続きせず破綻し石器時代に戻ろうとしています。

この国の富の源泉はリン鉱石。島全土で採掘が可能でした。それを掘りまくった結果、無計画な採掘により15年と持たず国家は破綻しました。

リン鉱石の採掘作業は出稼ぎ労働者達が行い、国内の店を営業するのは外国人。国民はただ消費するだけでした。

リンク先の記事を見ていただければ、詳しく紹介されています。

 

「リン鉱石」を「日本国債」に読み替えると、….条件は色々と違いますが、本質的には類似性が多いように思います。

リン鉱石は、膨大な時間をかけて過去から受け継いだ資産。

日本国債は、将来の世代への負担。

少しぞっとする話しです。

 

 

「先方との間で必ず誤解はある」という考え方

2012/02/27の日本経済新聞の記事「私の課長時代 アステラス製薬会長野木森雅郁氏(下)世界販売、対話不足を痛感」で、アステラス製薬・野木森雅郁会長が課長だった時の話が書かれています。

手探りで試行錯誤しながら世界販売を手がけていた頃の話です。

—(以下、引用)—

…….

外国人との話し合いでは常に誤解があることを前提に考え、かつ備える必要があることを知りました。日本側が「互いに理解し合っている」と思っていた事柄で、問題が突然起きることも多かったからです。

私が社長になってから海外企業の買収交渉などに臨む際は「先方との間で必ず誤解はある。とにかく細かく確認や修正をしよう」との考えに基づき、可能な限り対話を重ねて実績につなげました。若いころの教訓が生きたと思っています。

—(以上、引用)—

この「先方との間で必ず誤解はある。とにかく細かく確認や修正をしよう」は、海外とコミュニケーションする上で必要な考え方だと思います。

海外とコミュニケーションする上でうまくいかないケースはとても多いのですが、多くの場合、この「基本的な部分で誤解がある」ことが原因ではないでしょうか?

相手が海外にいると、実際に頻繁に会うことは難しいのですが、会える時はできる限りじっくり話し合う時間を持つようにしてお互いの信頼感を高める一方、メールだけでなく電話会議などを使ってマメにコミュニケーションを取り、お互いの誤解を最小限にしていく努力が必要である、と記事を読んで改めて思いました。

 

しかし、これは海外コミュニケーションだけではなく、私たちの日々のコミュニケーションでも全く同様かもしれませんね。

 

 

いま、日本は再び海洋国家へと歩む過程にあるのではないか?

昨日、ある鉄鋼会社に勤務する大学時代の友人が、アジアに工場を作るために長期出張する、という知らせが届きました。

他にもここ数日、何名かの知り合いがアジアに長期出張する知らせをもらいました。

楽天の三木谷さんのインタビュー「三木谷浩史・楽天会長兼社長に聞く」が日経ビジネスオンラインに掲載されていますが、ここで三木谷さんも次のように語っています。

—(以下、引用)—–

日本はもう一度海洋国家にならんといかんと思うんです。どんどん日本人も出て行ってね。僕たちは国際化しているとともに、日本のいいところを海外に広めるんだと。

—(以上、引用)—–

また2012/2/20の日本経済新聞のコラム「経営の視点 2つの「ユニ」共通点3つ――世界一狙う成長の支えに」でも、ユニチャームとユニクロの例が出されています。

—(以下、引用)—–

ユニクロはカジュアル衣料、ユニ・チャームは生理用品や紙おむつでそれぞれ世界一を目指している。分野が異なる2つの「ユニ」には成長を支える3つの共通点がある。

1つ目はイノベーション。……

2つ目は社会的な非効率や不条理などの排除だ。……

3つ目はメガトレンドに乗ることだ。…..

….

世界1位を見据えた2020年の絵姿も酷似する。ユニクロを軸に売上高5兆円(前期8203億円)。ユニ・チャームは1兆6000億円(同3769億円)。海外比率は共に8割を目指す。企業規模は現在の6倍、4倍を描くが画餅には終わらせない決意がある。

……

ユニクロやユニ・チャームに見る3つの成長の文脈は特別な言葉でもない。歴史的な円高や海外のグローバル企業を前に立ちすくむ日本企業。まずは自らの事業を3つの文脈に落とし込もう。存在意義を見つめ直すことにもなり、成長の新芽も見つかるはずだ。

—(以上、引用)—–

以前、こちらのエントリーでも書きましたように、かつて江戸時代前の日本は、海洋国家として活発に海外に出ていました。

また日本文化は、様々な文化を拒絶せずに取り込める柔軟性があります。

一神教の文化間で争いが絶えない地域を見ても分かるように、異文化を受け入れることがなかなか難しい国が多い中で、日本は世界の国々をつなぐ触媒の役割を果たせる可能性もあります。

ごく最近の動きを見ても、少子高齢化・国内経済縮小という逆境をバネにし、この日本文化の強みを活かして、日本は海洋国家への道を歩み始めているのではないか。

そういう思いを強くしています。

 

 

実は今、日本が見直されている?

ダイヤモンド・オンラインで「日本の失われた数十年は作り話か?経済危機直面の欧米で議論」という記事が掲載されています。

例えばある編集者は記事で、「いずれ時間がたてば、この時代(1989年からの20年間)は(日本が)大成功した時代だったと評される可能性は大きい」として、下記の指標を上げています。

・1989年→2009年で平均寿命+4.2年
・1990年代は遅れていたインターネットインフラ向上
 (今や世界トップ50都市中38都市が日本)
・1989年と比べ、円は対ドルで+87%/対ポンド+94%向上
・失業率4.2%で米国の半分
・1989年から、米国は経常赤字4倍増、日本は経常黒字

 

もちろん、この記事に対しては賛否両論があるようです。

いずれにしても、欧州危機を契機に、「日本はダメ」と見ていた世界の目が変わり始めているのは確かなようです。

 

 

日本人は「決める」のが苦手?しかし決めないと、さらに大切なモノが失われていく

日経ITproの記事『日本人は「決める」のが苦手?』で、佐藤 治夫さんがインドのソフトウェア開発会社の経営者と話し合ったときのことを書かれています。

日本企業のユーザーでは、いったん定義した要件がひっくり返ったり要件が決まらないことがあまりにも多いので、このインドのソフトウェア開発会社経営者は、日本の仕事はやめたそうです。

単価が最も高い日本企業の仕事をやめる理由は、「要件が途中で何度も変更・追加されて、結局は一番儲からないからだ」

佐藤さんは、

決めなければならないことを決めずに先延ばしすると状況が悪化するという点でも、(日本の)システム開発と政治は似ています。

とおっしゃっています。その対策は、

1.論点を明確にする
2.捨てるべきものを明確にする

ことである、とした上で、

ユーザーに対して過剰な遠慮をせず、論点と捨てるべきものを明確にして、言うべきことをずばり言えるようにならなければ、ダメな“システム屋”で終わってしまうことでしょう。

と述べておられます。

 

このことは、実感します。

たとえば、論点に対して解決の選択肢が3つあり、それぞれの選択肢では捨てるものがA、B、Cの3種類あったとします。

この選択肢に対して、「3つとも大事だ。関係者に負担を強いることになるし、一つとして捨てるべきではない。たとえ難しくても、知恵を絞って、一つも失わない方法を探すべきだ」という強い意見が出される場合があります。

確かに、これは一般的には耳ざわりのよい言葉ではあります。

しかし、これでは論点は解決できません。貴重な時間が空費されます。場合によっては、「3つ以外に方法はない」ということを証明するために、時間を使うケースすらあります。

そしてその間に、課題はより大きくふくれあがり、さらに大切なものが失われていきます。(年金問題などは、その最たる例でしょう)

このことは、実際に責任者として様々な課題と格闘している人には、よくお分かりになるのではないでしょうか?

 

しかしながらこのような状況、私たちの身の回りのあらゆるところで起こっているように思います。

・リーダーシップ不在を嘆く一方、痛みを伴う変革には猛反対する
・現実の課題を突き付けられると判断できない(決められない)
・競争激化で顧客の言いなりになり、競争激化で差別化できず、低収益に陥っている

このような状況をブレイクスルーするためには、新しいリーダーの出現を期待するのではなく、私たち一人一人が、「論点」と「捨てるもの」を自分なりの尺度で、明確にする覚悟が求められるのでしょう。

私たちが覚悟を持たずに、リーダーに失望して、新しいリーダーにすげ替えたとしても、次にまた同じことが起こり、時間が空費するだけですから。

 

 

「悲観主義は感情に属し、楽観主義は意志に属する」の意味は、「逃避思考の楽観」か?「現実思考の楽観」か?

大震災2週間後の3月25日、「悲観主義は感情に属し、楽観主義は意志に属する」というエントリーを書きました。

暗いニュースばかりで、Twitterなどでも感情的・悲観的なつぶやきが多かったこの時期「悲観的な状況でもなるべく楽観的でいよう。それは意志の力だ。」….そう思っていたのですよね。

しかし、昨日も当ブログで紹介した田坂広志さんの講演「福島原発が開けた『パンドラの箱』」の動画を観て、もしかしたら、この考えは、自分自身の覚悟が足りなかったのではないか、ということを思い知らされました。

この動画でも田坂さんがお話になっている通り、3月末の首相官邸では「首都圏3000万人避難」というシナリオを現実に考えていた訳です。

その状況を踏まえて、現実的な対策を突き詰めた上で、なおかつ楽観的でいられる。

これこそ、「意志の力」と呼ぶのでしょう。

 

言うまでもなく、3月末時点の私は、そのような危機的な日本の状況を知る由もなく、「楽観主義は意志に属する」とちょっとのんきにブログに書いていた訳です。

しかし今、田坂広志さんの講演を観て、当時の状況と、現在も再び首都圏3000万人避難というシナリオがある可能性を知らされています。

このような厳しい現実を目をそらさずに受け止め、現実的な対応策を突き詰めた上で、なおも楽観的であること。

おそらく、これこそ、「意志の力」なのでしょう。

このような現実から目をそらして、現実的な解決策を突き詰められず根拠のない希望的観測に流れてしまう楽観は、「意志」ではなく「思考停止」であり「逃避」なのかもしれません。

このように考えると、この危機は、日本人が現実主義に目覚める歴史的なきっかけを与えてくれている。そう感じます。

 

「グローバルな人材」イコール「英語ができる人」、ではない

日本IBM取締役専務執行役員のポール与那嶺さんが、ハーバード・ビジネス・レビューで「人材育成よりまず会計基盤の整備。グローバル化はここから始めるべき」という対談をされています。

この対談の冒頭、与那嶺さんはグローバル人材についてお話ししています。

—(以下、引用)—

――「グローバル対応」の中で、相談内容として一番よく挙がる課題は、どんなものでしょうか?

 もっともよく話題に挙がるのが、「グローバルな人材をどう獲得するか・育てるか」という課題です。みなさん「英語力」に着目されていますが、「グローバルな人材」イコール「英語ができる人」ではないと思います。どこの国の人を相手にしても、はっきり、言うべきことを言い、するべきことをする人こそが、グローバルな人材です。それさえできれば、多少英語がおぼつかなくても何とかなるものです。

—(以上、引用)—

これはまったく同感です。

私は22歳の時に日本IBMに入社し、開発部門でいきなり海外製品開発研究所への日本語サポート支援の技術部門に配属されました。

以前、「TOEIC 475点からの英語上達方法」に書きましたように、当時のTOEICの点数は475点。その後2年間は、長時間の通勤時間などを使って勉強し、2年後に795点まで上げました。

1980年代の当時、英語を使う相手は本社の米国人が中心。ですので目標は、ネイティブと同等に英語が話せることだったのですよね。

一方で入社13ヶ月目、23歳の時に、1ヶ月間米国に長期出張して製品テストをしたこともありました。当時はTOEIC 600点をやっと超えた英語力でしたが、不思議とコミュニケーションできました。

海外とは言え、相手も同じ感情を持つ人間です。英語が出来なくても、その気になればなんとか伝わるものだ、ということはこの時に実感しました。

 

一方で、1980年代と現代が大きく変わっているのは「世界がフラット化していること」です。

1980年代はずっと続くと思われていた東西冷戦がなくなり、発展途上国だった国はいまや新興国として中間所得層が急激に増えて経済力を付け、しかもインターネットで瞬時に国境の壁を越えて、個人同士でコミュニケーションできるようになりました。

つまり、この10年間で、非英語圏の人達が一気にグローバル化しているのです。

この流れの中で、1980年代は「米国人(+英国人)と会話するための手段」だった英語は、現代では「グローバルで共通にコミュニケーションする手段」になりました。

 

そこで、新しく「グロービッシュ」という考え方が生まれています。簡単に言うと、語彙1500単語・TOEIC 500点の英語力を前提とした、非英語圏の人のためグローバル・コミュニケーションです。

確かに、非英語圏の英語力が低い人たちでも、多くの海外の人たちは気にせず英語を使っています。

分からない点があると、どんどん聞いて確認し、意思疎通を図ります。

最初に、やりたいことがまずあること。そして、英語はそれを実現するためのコミュニケーションの手段、という割り切りがあるように思います。

一方で、この「分からないと、どんどん聞く」が、日本人はなかなかできないのですよね。

 

確かに、英語ができることに超したことはないですが必須条件ではありません。英語が少々出来なくても、やりたいことが明確で、言うべきことを言い、やるべきことがやる人であれば、グローバルでも仕事の場はあるのですよね。