文化放送オトナカレッジ 第12回「ヒット商品のヒントは、どこにある?」

昨日3月3日(木)の夜は、文化放送オトナカレッジへのレギュラー出演第12回目。

今回は「ヒット商品のヒントは、どこにある?」と題して、お話ししました。

ヒット商品を生み出したい!これはすべてのビジネスパーソンの願いです。では、そのヒントはどこにあるんでしょう?
その答えは意外なところにあります。

ということで、今回の講義内容レジュメです。

1.マーケティングとは、「お客様が買う理由を作ること」。しかしヒット商品は一部の天才にしか生み出せないのか?

2.【四国・愛媛にある地元食材を使ったある食品メーカーのケース】アイデアマン社長の独断専行から従業員参加型の商品企画会議へ。

3.【永井の経験談】「自分ですべてを考えるのは無理。みんなの意見を聞いていいものはどんどん取り入れよう」への発想の転換。5人に聞くとアイデアは5倍ではなく何十倍になる。

4.【業務用ミラー最大手のコミーのケース】ユーザーのことをより深く理解するために、全従業員でユーザー訪問。使用状況調査の結果を全社員で共有して議論する。

5.実は、必要な知恵は社会に幅広く分散している。これを「分散認知」と呼ぶ。ヒット商品も、社員やお客さん一人一人の頭の中に散りばめられている。ヒントを集めていけば、生み出すことができる

 

後半のお話しでは、様々な事例について掘り下げてお話ししました。

今回の講義前半の様子は、「オトナカレッジ 聴く図書館 Podcastアーカイブ」でもお聴きになれます。→今回分はこちら

 

恒例、アナウンサーの砂山さんとのツーショットです。番組冒頭では、新発売の「文庫版 100円のコーラを1000円で売る方法」も紹介いただきました。

オトナカレッジ20160303

 

次回の第13回目は3月17日(木)、『やりたいことを、やるべし』というテーマでお話しします。

 

「真田丸」の視聴率、上がっている?下がっている?

真田幸村

NHK大河ドラマ「真田丸」が人気です。かくいう私も毎回見ています。

人気ドラマで必ず話題になるのが、視聴率の推移。

ビデオリサーチ社の調査によると、関東地区の平均視聴率は次の通りです。

第一回「船出」 20.1%
第二回「決断」 19.9%
第三回「策略」 18.3%
第四回「挑戦」 17.8%
第五回「窮地」 19.0%
第六回「迷走」 16.9%
第七回「奪回」 17.4%
第八回「調略」 17.1%

この視聴率、下がっているようにも見えますが、実際のところどうなのでしょう?

 

視聴率調査は、実際に全世帯の視聴状況を調査しているわけではありません。もしわかるのであればベストですが、現代のITを活用してもこれは費用がかかりすぎるのです。

ではどうやっているかというと、統計学理論を活用し、その地域のごく一部の世帯をサンプル調査して、その地域全体の視聴状況を推測しています。

ビデオリサーチ社では、サイト上で視聴率調査について詳しく説明しています。

関東地区の視聴率は、600世帯でサンプリングすることで、関東地区1500万世帯全体の視聴率を推測しています。詳しくはこちら

この際、どの程度の誤差が出るのでしょうか?これについてもビデオリサーチ社のサイトでこのように説明しています。

「標本数600の場合、信頼度95%(100回中95回はこの幅に収まる)で考えると、視聴率が10%での、考慮すべき標本誤差は±2.4%です。また、真の値は調査結果である10%の近くに多くあることを意味します。」

「標本誤差」とは、実際のリアルな数字(この場合は1500万世帯の本当の視聴率)と、この600件の標本との誤差の意味です。

このページの表にある通り、20%近辺の場合は実に±3.3%の標本誤差があることになります。

 

真田丸の平均視聴率では、最高視聴率は初回の20.1%、最低視聴率は第6回目の16.9%で、差は3.2%。一方で標本誤差は±3.3%。各回の視聴率は、この標本誤差の範囲で微妙に揺らいでいますね。真田丸については、BS視聴率の影響も指摘されています。

いずれにしても、コンマ1%の差はあまり意味がなさそうです。

 

数字の意味を考えるのは、ビジネスでも大切なこと。数字をもとに考える際は、そのサンプル数もあわせて考えるようにしたいものです。

 

 

オムニマネジメント2016年3月号に連載第10回『模倣戦略が有効な条件を考えれば、競争優位性が理解できる』が掲載されました

一般社団法人日本経営協会様が発行する月刊オムニマネジメント2016年3月号に、連載『模倣戦略が有効な条件を考えれば、競争優位性が理解できる』が掲載されました。

オムニマネジメント201603-2

 

本論文では3つの事例を紹介しています。

一つ目は、新市場を開拓して先行し続けることで多数の追従メーカーがいるにも関わらずトップシェアを十数年間維持している自動お掃除ロボット・ルンバ。

二つ目と三つ目は、一方で先行するAltaVistaやソニーWalkManに対して、新たな価値を生み出して追い抜かしたGoogleやiPodです。

これらを事例として考察し、持続的競争優位性というものは消失している現代で必要なことは一時的競争優位性を獲得し続けることであることを述べています。

 

もしご覧になる機会がありましたら、お手にとってご一読いただければ幸いです。

 

「仕事=やりたいこと」でないという悩み

やる気

 

「『仕事=やりたいこと』であるべきだ、という話ですが…。なかなか仕事がうまくいかないことも多くて、現実は難しいですね」

「お客様が買う理由を、いかに作るか?」という講演で、「やりたい仕事をすることで、知的生産性も高まり、より高い価値を生み出せるようになる」というお話しをした後、こんなご質問をいただきました。

たしかに実際のビジネスの現場では、当初から「仕事=やりたいこと」になっていないことがほとんどです。では、どうすればいいかか?

 

必要なのは、「目の前のお客さんに喜んでいただく」状態に持って行くことではないでしょうか?

4ヶ月前に当コラムでご紹介した、朝市で佃煮を10年間売り続けているおばあちゃんも、自分たちが作っている佃煮をお客さんが喜んで買ってくれることで、「仕事=やりたいこと」になりました。

外部のお客様に接することがない、内勤の仕事でも同じです。

たとえば私は、日本IBMに勤務していた最後の2年間、50歳を過ぎてから人材育成を担当していました。「目の前のお客さん=事業部の社員」です。マーケティング戦略を15年間担当した後でしたので、人材育成の仕事は全くの畑違いの仕事。率直に言って、当初は必ずしも「人材育成=心からやりたい仕事」とは言えませんでしたし、慣れない仕事で最初はなかなかうまくいきませんでした。

しかし社員の皆さんのスキル向上に役立つ人材育成プログラムを企画して実施し、次第に社員から「自分のスキル向上に役立った」「こんな研修を受けたかった」と喜んでいただくようになったことで、「人材育成=心からやりたい仕事」だったと気づきました。2013年に独立後、現在は人材育成の仕事が会社の大きな柱になっています。私の場合、50歳を過ぎてから「人材育成=心からやりたい仕事」とわかったのですね。

多くの仕事で、「目の前のお客さん」は必ずいます。
そのお客さんに、いかに喜んでいただくか?
それが「仕事=やりたいこと」になる大きなきっかけになります。
その原点が、「お客様が買う理由」を徹底的に考えて、お客様に検証すること。

 

たとえ全体の5%でも心から喜んでいただけるお客様がいることが、「仕事=やりたいこと」になるきっかけになり、喜んでいただけるお客さんを増やしていくことで、次第にビジネスが拡大し、世の中にも貢献していけるのではないでしょうか?

マーケティングの方法論を学び、日々実践することで、「仕事=やりたいこと」になっていくのです。

 

文化放送オトナカレッジ 第11回「無理めなお客さんの課題が、世の中を変える」

昨日2月18日(木)の夜は、文化放送オトナカレッジへのレギュラー出演第11回目。

今回は「無理めなお客さんの課題が、世の中を変える」と題して、お話ししました。

前回の放送では、「お客さんが言うことに余裕で対応できるようになるのは、危険な兆候だ」という話をしました。逆に、無理めなお客さんの要望こそ、ビジネスの大きなチャンスです。今回はそのことについて考えてみました。

ということで、今回の講義内容レジュメです。

1.お客さんの要望が高すぎて対応が難しい状況こそ、ビジネスの大きなチャンス

2.1964年の東京オリンピック、ホテルニューオータニ、「浴室工事は1年半かかるが、ホテルは1年で完成させろ」という無理めの要求で生まれたユニットバス工法→世界に広がった

3.1964年の東京オリンピック、ストップウォッチで計測したタイムを人力で順位を集計していたのを、コンピュータによる競技成績の集計システムを導入した日本IBMのケース→翌年、三井銀行が日本初のオンラインバンキングのサービスを開始

4.ゲリー・ハメル(経営学者)「イノベーションと変革への意思は情熱から生まれる。つまり、現状に対するもっともな不満の産物なのである」

 

後半のお話しでは、様々な事例について掘り下げてお話ししました。

今回の講義前半の様子は、「オトナカレッジ 聴く図書館 Podcastアーカイブ」でもお聴きになれます。→今回分はこちら

 

恒例、アナウンサーの砂山さんとのツーショットです。

オトナカレッジ20160218

 

次回の第12回目は3月3日(木)、『ヒット商品のヒントは、どこにある?』というテーマでお話しします。

 

変革は、若者しかできないのか?

変革

「やはり、若い人でなければ変革はできないのでしょうか?」

講演の質疑応答で、こんな質問をいただきました。

この講演では、ある地域活性化の取り組み事例をご紹介しました。

5年前、急速に衰退する地域にいる30代の若い方が「このままでは子供たちにこの地域を引き継げない」という危機感を持ち、賛同する少人数の同志と一緒に地域活性化に取り組みました。そして5年間で大きな成果を上げ、仲間も広がり、この地域は賑わっています。仲間の多くは若い方々です。

そこで冒頭の質問をいただいたのです。

地域活性化は、大きな変革プロジェクトです。
経験豊富な反対派も次々と現れ、チームは様々な組織的な壁にぶつかります。ともすると若者だけでは突破が難しいケースもあります。

この地域では、最初に志を共有した同志の中には、60代の経営者もいました。経験豊富なこの人がいたおかげで、組織的な問題にも対応でき、突破できました。

 

人は経験を重ねて成功すると、その成功体験が正しいと思いがちです。
しかしその成功体験は、賞味期限が切れてしまいます。

たとえば高度成長期、かつては一部の人しか楽しめなかった旅行が、低価格化と可処分所得の増加により一気に大衆化しました。この現象が「マスツーリズム」です。実際に私が学生の頃は、単に「海外旅行したい」という単純な理由で欧州に行く人も少なくありませんでした。

かつては顧客は「大衆」と考えるマスツーリズムは、成功の方程式でした。

しかし価値観が多様化し、成熟化した現代では、「海外に行きたい」という単純な理由だけで旅行する人はほとんどいません。多くの人は「エジプトのピラミッドを見たい」とか「フロリダのディズニーリゾートで遊びたい」といったように、自分の価値観にあった明確な理由で旅行に行きます。

こんな時代に、高度成長期のマスツーリズムの成功体験で「大衆向け」の集客をしても、お客さんは集まりません。
顧客は「個客」になったからです。

このようにかつての成功体験は、時代の移り変わりとともに賞味期限が切れていきます。
ですから、その昔の成功体験を、問題意識と志を持ってリフレッシュできるかどうかが重要なのです。
この地域で若いリーダーと志を共有していた60代の経営者の方も、「このままでは衰退するばかりだ」という大きな問題意識を持っていました。だから変革出来たのです。

 

83歳になるセブンアンドアイの鈴木敏文会長は、常に「変化対応」と言い続けています。鈴木会長は、1945年に第二次世界大戦で日本が敗戦したことで、価値観が根底からひっくり返ったことが原体験になり、常に変革し成長し続けるセブンイレブンを生み出したのです。

 

確かに若い人は、シニアな人と比べて経験値が少ないので、過去の成功体験に囚われません。新鮮な目で現状を見ることができ、過去に囚われることなく危機感を持つことができます。

では、若い人でなければ変革はできないのか?

そんなことはありません。重要なことは、「志と危機意識を持って、現状を否定できるかどうか」

経験を重ねてもそれが可能なことは、この地域の60代の経営者も、そして鈴木会長も、証明しています。

 

年齢を重ねても、問題意識と志を常に忘れないようにしたいものです。

 

 

オムニマネジメント2016年2月号に連載第9回『売れる商品は模倣される。ではどうすればよいのか?』が掲載されました

一般社団法人日本経営協会様が発行する月刊オムニマネジメント2016年2月号に、連載『売れる商品は模倣される。ではどうすればよいのか?』が掲載されました。

オムニマネジメント201602

もしご覧になる機会がありましたら、お手にとってご一読いただければ幸いです。

文化放送オトナカレッジ 第10回「なんで「オモチャ」に負けるのか?」

2月4日(木)の夜は、文化放送オトナカレッジへのレギュラー出演第10回目。

今回は「なんで「おもちゃ」に負けるのか」と題して、お話ししました。

実際のビジネスの現場では、勝ち組の企業が見下していた意外なライバルに負けることもよくあります。そうした事態はなぜ起きるんでしょうか?

ということで、今回の講義内容レジュメです。

■任天堂はなぜグリーやDeNAに負けたのか?

■【イノベーションのジレンマ】とは?

■勝ち組企業は、どうして「オモチャ」に負けてしまうのか? 

 

後半のお話しでは、様々な事例について掘り下げてお話ししました。

今回の講義前半の様子は、「オトナカレッジ 聴く図書館 Podcastアーカイブ」でもお聴きになれます。→今回分はこちら

恒例、アナウンサーの砂山さんとのツーショットです。

オトナカレッジ20160204

 

次回の第11回目は2月18日(木)、『無理めなお客さんの課題が、世の中を変える』というテーマでお話しします。

 

 

南信州の小さな村は、「失敗から学ぶ方法」で世界初の挑戦に成功した

星空

昨年7月に当ブログでご紹介した、南信州・阿智村で聞いたお話しです。

阿智村にある昼神温泉は、2005年から5年間で宿泊客が25%も激減しました。「温泉で癒やされる」だけでは他の温泉地と差別化できなかったのです。

しかし阿智村には隠れた強みがありました。星空です。阿智村にあるスキー場に勤めるスタッフは、夏の夜にゴンドラを動かして彼女と満天の星空を見ていたりしていたのです。実際に2006年、環境省が「日本一星空がよく見える場所」と認定したほど、綺麗な星空が見えます。

そこで「星空エンターテイメント」をテーマに、この星空を核にした地域づくりに取り組み始めました。

天体観測ではなく「星空エンターテイメント」であることが重要です。先のスキー場スタッフの例からもわかるように、ターゲットの顧客は20代の若いカップル。そういう人たちに星空で楽しんでもらうのですから、天体観測ではなく、星空の面白い話で楽しい体験をして欲しいわけですね。

そこで阿智村では、村に住む人たちから「星空ガイド」を募集して、この「星空エンターテイメント」に取り組み始めました。

 

しかしこの「星空エンターテイメント」は世界初の取り組みですから、他に参考にすべき事例がありません。では、どうするか?

阿智村で、この星空ガイドの採用・育成を担当する谷澤信さんからお話しを伺って、「なるほど」と思いました。

手本も正解もないのですから、自分で学ぶしかありません。実際、試行錯誤の連続だったそうです。

そこで毎晩、星空ガイドの仕事が終わった後、必ずスタッフで反省会を行い、よかったこと・悪かったこと・改善すべき点を話しあって解決策を決め、翌日に持ち越さないようにしました。この仕組みによりお互いに情報を共有し、学び続けるようにしたのです。

当初作成したマニュアルは、この学びを反映して、改訂を繰り返していきました。

 

この星空ガイドの挑戦は、「仮説検証による学びの蓄積」に他なりません。

仮説を立てる→実行する→検証する→対応する→新たな仮説を立てる→…

これをひたすら毎晩、繰り返してきたのです。

2012年8月に星空ガイドを始めてから3年以上が経過し、仮説検証の分厚い蓄積でノウハウも蓄積したことが「日本一の星空」阿智村ならではの強みになっているのです。継続的な仮説検証が差別化の手段になることがわかるエピソードです。

 

そしてこれは、私がよく講演でご紹介する、ティム・ハーフォードが著書「アダプト思考」で書いた「失敗から学ぶ方法」そのものです。

失敗から学ぶには、3つの方法があります。

(1) 新しいことを試すこと。ただし、挑戦に失敗はつきものであると覚悟しておく。星空ガイドも世界初の新しい挑戦です。ですから必ず失敗が起こります。星空ガイドの方からも、失敗を通じて色々な学びを得ました。

(2) 失敗しても大きな問題にならないようにする。実験規模を見極めギャンブルを避ける。星空ガイドも当初は客数が多くありませんでした。この段階で様々な試行錯誤を繰り返してきたのですね。

(3) 失敗を失敗と認める。失敗を認めなければ、学ぶことはできません。星空ガイドも毎晩の反省会を通じて学びを蓄積してきたのです。

 

世界初の挑戦である「星空エンターテイメント」は、「失敗から学ぶ3つの方法」を実践して生まれたのです。

 

 

北関東IBMユーザー研究会様で講演しました

2016年1月22日(金)、大宮で行われた北関東ユーザー研究会様の新春例会で「お客様が買う理由を、いかに作るか?」と題して90分の講演をさせていただきました。

1月13日の神奈川IBMユーザー研究会様の講演に続き、今年2回目となるIBMユーザー研究会様への講演です。

今回は約50名が参加されました。

北関東IBMユーザー研究会様講演20160122

 

このような機会をいただき有り難うございました。

 

その制約が、新しいアイデアの源になる

制約

1985年公開の映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」。

エンディングで、主人公のマーティは、時計台に落雷する雷が発生する膨大な電力で1955年から1985年に戻りました。時計台に落雷する時間ギリギリに間に合うか?手に汗を握るシーンの連続です。

しかしオリジナルのシナリオは核実験場に行って、核爆発を利用してタイムスリップをする予定だったそうです。
しかしこれは100万ドルの撮影費用が必要と試算されて、予算の都合から断念されました。1985年当時はCGはあまり使われることがなく、撮影が必要だったのですね。

その後、新しいアイデアが生み出され、皆様がよくご存じの落雷で未来に戻るシーンになりました。脚本担当は「結果として格段に良くなった」と語っているそうです。

 

これは、新しい商品やサービスを開発したり、あるいは著書を執筆したり、作品を制作する時に、勇気と励ましを与えてくれるエピソードです。

何か新しい価値を創ろうとする場合、必ず何らかの制約があります。
それは予算、時間、リソース、組織的な事情、あるいは人間関係などです。
何の制約もないことは、まずありません。

時として目の前に立ちはだかる大きな制約に、「こんな状況で、どうやって新しく価値を創ればいいのか」と思いがちです。
制約が、新しいアイデアの源になりうることを、このエピソードは教えてくれます。

 

与えられた厳しい条件の中、様々なアイデアを試して知恵を絞ることが、まったく新しい創造的な解決策に繋がっていくのです。

 

 

文化放送オトナカレッジ 第9回「うまく失敗する3つの方法」

昨日1月21日(木)の夜は、文化放送オトナカレッジへのレギュラー出演第9回目。

今回は「うまく失敗する3つの方法」と題して、お話ししました。

世の中が激変する現代、新しいことに挑戦し続けることはますます重要になっています。しかしともすると失敗を恐れて挑戦しないことも多いのが現実です。新しいことに挑戦して成功するためには、「うまく失敗し、失敗から学ぶ」方法を実践することが必要になります。

ということで、今回の講義内容レジュメです。

■ルンバが成功するまでにした14回の失敗とは?

■靴をオンラインで売るためにザッポスが行った奇想天外な実験とは?

■失敗から学ぶ3つの方法
(1)新しいことを試すこと
(2)実験規模を見極めギャンブルを避けること
(3)失敗を失敗と認めること。

後半のお話しでは、ホンダの米国市場進出や、米国陸軍のAAR (アフターアクションレビュー)の事例も挙げて、さらに失敗から学び成功する方法について掘り下げてお話ししました。

今回の講義前半の様子は、「オトナカレッジ 聴く図書館 Podcastアーカイブ」でもお聴きになれます。→今回分はこちら

恒例、アナウンサーの砂山さんとのツーショットです。

オトナカレッジ20160121

「失敗から学ぶ3つの方法」は、組織でも個人でも大切です。

次回の第10回目は2月4日(木)、『なんで「オモチャ」に負けるのか?』というテーマでお話しします。

 

 

神奈川IBMユーザー研究会様で講演しました

2016年1月13日(水)、横浜で行われた神奈川IBMユーザー研究会様の新春例会で「お客様が買う理由を、いかに作るか?」と題して90分の講演をさせていただきました。

昨年は7月に北陸IBMユーザー研究会様(@ 金沢)、11月に長野IBMユーザー研究会様(@ 長野)で講演の機会をいただきました。今年初めてのIBMユーザー研究会様への講演です。有り難いですね。

今回は約40名が参加されました。

冒頭、皆様に質問をさせていただいたところ、私がIBM大和研究所時代で製品開発を担当していた際に大変お世話になったお客様の丸谷さんが答えていただきました。

神奈川IBMユーザー研究会様講演

懇親会には、日本IBM最高顧問に就任された下野さん、15年前に私がCRMマーケティングを担当していた頃からお世話になり今年から日本IBMパートナー事業部長に就任された長南さんも参加されました。

IBMを卒業して2年半ですが、下野さんのご講演でコグニティブコンピューティングの取り組みや、懇親会でお客様からの出向社員を受け入れている取り組みなどのお話をお伺いし、日本IBM様も色々と新たな挑戦をなさっていることがよくわかりました。

このような機会をいただき感謝です。

オムニマネジメント2016年1月号に連載第8回『IBMは1999年にあることをやめて、2000年代に成長した』が掲載されました

一般社団法人日本経営協会様が発行する月刊オムニマネジメント2016年1月号に、連載『IBMは1999年にあることをやめて、2000年代に成長した』が掲載されました。

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もしご覧になる機会がありましたら、お手にとってご一読いただければ幸いです。

 

 

日経ビジネスアソシエ2016年2月号に、インタビュー記事『「朝時間」攻略法 「30+90」分の2時間ポートフォリオで”朝時間効果”を最大に!』を掲載いただきました

現在発売中の日経ビジネスアソシエ2016年2月号に、インタビュー記事『「朝時間」攻略法 「30+90」分の2時間ポートフォリオで”朝時間効果”を最大に!』を掲載いただきました。

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2011年7月に出版した「残業3時間を朝30分で片づける仕事術」をお読みになった日経ビジネスアソシエの方からご連絡をいただきました。

実はインタビュー当日は、昨年末の写真展初日の朝。
色々とお話しした内容を、3ページのすばらしい記事にまとめていただき、感謝しております。

よろしければお読みいただければ幸いです。

 

 

なぜ私の戦略は「ゴミだ」と言われ、目の前で破かれたのか?

ゴミ箱

「永井さん、あなたが作ったこの戦略はね。ゴミだ」

米国人上司はそう言って、私の説明資料を、私の目の前で破りました。

そしてこのように付け加えました。

「あなたの問題は、『自分の戦略』にこだわって、考え過ぎることだ。戦略は米国本社がちゃんと考えている。今あなたが行うべきは、本社の戦略を忠実に実行することだ。あなたが時間をかけて作ったこの戦略はまったく意味がないね」

いきなり資料を破られて「ムッとしなかった」と言えばウソになります。「本社の戦略だけ考えればいい」もやや誇張し過ぎでしょう。しかし一方で、彼の言っていることにも一理ありました。

この時、私はある業務の新任責任者を拝命し、自分なりに戦略を考えていました。しかし米国本社側の戦略をキチンと理解し、整合性を取る優先順位は落としていたのです。

実際には本社戦略に沿って、社内の各部署で多くの人たちが仕事をしています。本社戦略に沿えばそれらの成果を活用できます。しかし独自の戦略で進めば、これらの知見は活かせません。

本社戦略を表面的に聞くと「いや、自分の状況は違う」と思いがちです。しかし基本的な考え方や方向性をキチンと理解すれば、意外と共通点も多いものなのです。

 

彼の言うことに素直に従ってみることにしました。

ちゃんと見てみると、本社戦略がよく整理されていて、自分の戦略で採り入れるべき点も多いことがわかりました。一方で様々な事情で適用できない部分もあります。

そこで本社戦略で採用すべきものは採用し、独自に考えるべき点は直し、戦略を練り直しました。

本社戦略に沿った部分、独自に変えた部分、そのようにした理由が明確になりました。この構造をわかりやすくキチンと説明できるようになったことで、本社側のサポートも得られ、仕事の成果に繋がりました。

さらに本社は、私が独自に変えた部分に興味を持ちました。実は彼らも各部門の現実を知りたがっていたのです。私が独自に変えた部分の一部は、その後、本社戦略に反映されて全社に展開されました。

 

ある程度規模が小さい企業でも同じです。

企業様で現場を預かるマネージャーとお話ししていると、本社方針を理解不十分なまま、目の前の仕事を進めている場面によく出会います。

しかし組織の中では、1人で仕事は進められません。マネージャーの場合だったらなおさらのこと、複数の組織との協業が必須です。だからこそ、組織の中で方針を立てる場合は、常に全社戦略との整合性を考える必要があるのです。

 

私の戦略が「ゴミ」と言われた理由。
それは、全社的な整合性がない、独自の戦略を立ててしまったからなのです。

彼はなかなかそれを認めようとしない私に、ショック療法として目の前で破ってくれたのです。

 

 

文化放送オトナカレッジ 第7回「【ものづくりニッポン】はこれから何を作ればいいのか?」

昨日12月24日(木)イブの夜は、文化放送オトナカレッジへのレギュラー出演第7回目。

今回は「【ものづくりニッポン】はこれから何を作ればいいのか?」と題して、お話ししました。

 

「ものづくりニッポン」という言葉があります。「やはり日本はものづくりを追求しなきゃ」とおっしゃる方も少なくありません。

しかし、いいモノをキッチリと作ってお客さんに伝えれば売れるという時代は既に終わっています。

そこで必要なのは「顧客づくり」です。

 

ということで、今回の講義内容レジュメです。

1.1.「いいものを作れば必ず売れる」時代は終わった。
2.「GoPro」は、何を【作った】のか?
3.「価値創造」とは【顧客づくり】のことである

後半のお話しではこの「顧客づくり」について、色々な事例を掘り下げてお話ししました。

 

今回の講義前半の様子は、「オトナカレッジ 聴く図書館 Podcastアーカイブ」でもお聴きになれます。→今回分はこちら

恒例、アナウンサーの砂山さんとのツーショットです。

オトナカレッジ20151224

「ものづくり」+「顧客づくり」=「価値づくり」なのですね。

 

次回の第8回目は1月7日(木)、「それは本当に、御社の強みですか?」というテーマでお話しします。

 

 

 

下町ロケット・佃航平は、ものづくりではなく顧客づくりをしていた

ロケット2

最終話は2015年連ドラ最高の視聴率22.3%を記録した、あの「下町ロケット」

私も第一話から最終話まで見ていました。池井戸ファンの私としては本も2冊読みました。そして気づいたことがあります。

この物語は一見、日本企業への「ものづくり賛歌」に見えます。
しかし物語が進むにつれて、実はそうではないことに気がつきました。

最初の頃の佃製作所は、高性能エンジン技術に特化してはいるものの、何に使えるかわからない儲からない技術にばかり投資し、過大な研究開発予算で会社のお金も回らなくなり、大口取引打ち切りもあって、何回も経営危機を迎えます。主人公の佃航平も、社員から「社長、もっと経営やビジネスのこと考えて下さい」と迫られ、「オレは経営者失格なのか」と悩みます。

その姿は、顧客が見えない「ものづくり」に没頭する日本企業の姿とダブります。

しかし物語が進むにつれて、佃製作所が蓄積してきた技術を必要とする顧客が現れてきます。

たとえば、帝国重工宇宙航空部の財前部長。
初の100%国産ロケット打ち上げの厳命を受けて、高性能バルブシステムを必要としています。

さらに「ガウディ編」では、財前部長はバルブに混入する異物をセンサーで感知して粉砕する佃製作所のシュレッダー技術が、将来ロケットの信頼性を格段に向上することを見抜き、その布石としての位置づけで、ガウディ計画への参画を決意します。

また、北陸医科大学・一村教授。
心臓手術に使用する人工弁「ガウディ」の開発責任者として、血栓を生じない高信頼性の人工弁を必要としています。

これらの難易度が高い課題に応えられる技術を持った企業は、佃製作所しかなかったのです。

 

つまり物語を通じて、佃製作所は、地道な技術蓄積の末に極めて強い「お客様が買う理由」を創り上げていったのです。
私がいつも提唱している「お客様が買う理由」のフレームワークで整理してみます。

 

■ロケットのバルブシステムの場合

(1) 佃製作所の強みは何か?
高性能タービン技術

(2) その強みを必要とするお客様は誰か?(= ターゲット顧客)
帝国重工宇宙航空部 財前部長

(3) そのお客様が必要とすることは何か?(= 顧客課題)
帝国重工社長からの至上命題は、初の100%国産ロケット打ち上げ。そのためには、燃料である液体水素と、酸化剤である液体酸素をタンクから高圧でエンジンに送り込む高信頼性のバルブシステムが必要としていた。(部下の富山が開発に成功したが、その特許は佃製作所が先に抑えていた)

(4) お客様が自社を選ぶためにどうするか?(= 解決策)
より高性能・高信頼性のバルブシステムを開発し、帝国重工へ供給する

 

■ガウディ計画の場合

(1) 佃製作所の強みは何か?
ロケット品質の高性能タービン技術

(2) その強みを必要とするお客様は誰か?(= ターゲット顧客)
北陸医科大学の一村教授

(3) そのお客様が必要とすることは何か?(= 顧客課題)
心臓弁膜症の治療に使われる人工弁は外国製のものが多く、成長期にある子どもの患者は、成長するたびに新しい人工弁に取り替える手術が必要になる。そこで取り替える必要がない人工弁を国産化したい。そのためには血栓が生じない高信頼性の弁を必要としていた

(4) お客様が自社を選ぶためにどうするか?(= 解決策)
人体の臓器よりも血栓発生率が少ない高性能・高信頼性の人工弁を開発し、供給

 

いずれの場合も、自社の強みを徹底的に見極めた上で、その強みを活かせる顧客を見定め、課題を徹底的に理解し、解決策を提供していることがわかります。

いわば、「ものづくり」だけではなく、その先にある「顧客」も見据えて、「顧客づくり」に邁進しているのです。

 

この裏にあるのは、主人公・佃航平の

「技術は人を支える。人間社会を豊かにする。人を幸せにする」

という強い想いです。泥臭くもがきながら技術を追求し続け、いかに顧客を幸せにし、よりよい社会にするかを考え抜いているのです。

 

「自分がやりたいことをやるための『ものづくり』」ではなく、「お客様が欲しいと思い、幸せになるような『ものづくり』」が必要であることを、私はあらためて下町ロケットから学ぶことができました。

文化放送オトナカレッジ 第6回「柳の下にドジョウは2匹いるのか?」

昨日12月3日(木)の夜は、文化放送オトナカレッジへのレギュラー出演第6回目。今回は「柳の下にドジョウは2匹いるのか?」と題して、お話ししました。

新商品や新サービスの企画を立てるとき、「既にやっている会社はあるのかな?」と考えて調べることはないでしょうか? そして先行している会社があると、「ああ、大丈夫なんだ」と安心して、先行メーカーを参考にして企画を進めたりします。

以前はこれでもうまくいっていました。しかし今はこの方法だとなかなかうまくいきません。昔は「柳の下にどじょうは2匹」いたのですが、今は「常に一匹目のどじょう」を探す必要があるのですね。

ということで、今回の講義内容レジュメです。

1.ソニーの先進的な製品を後追いした松下電器の戦略
2.「ルンバ」の模倣製品は失敗している
3.模倣戦略が失敗する2つの理由

後半のお話しでは、この模倣戦略について掘り下げてお話ししました。

 

今回の講義前半の様子は、「オトナカレッジ 聴く図書館 Podcastアーカイブ」でもお聴きになれます。→今回分はこちら

恒例、アナウンサーの砂山さんとのツーショットです。

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模倣戦略が失敗するのは、①商品寿命の短命化(1/10!)、②劣化版コピーにしかならない。

模倣するのではなく、お客様が買いたくなる理由を作りたいですね。

 

次回の第7回目は12月24日(木)のクリスマスイブ、「いいものを作れば、必ず売れるのか?」というテーマでお話しします。

お楽しみに。

オムニマネジメント2015年12月号に連載第7回『新規事業では、最初に解決策を検証してはいけない』が掲載されました

一般社団法人日本経営協会様が発行する月刊オムニマネジメント2015年12月号に、連載『新規事業では、最初に解決策を検証してはいけない』が掲載されました。

オムニマネジメント201512

 

もしご覧になる機会がありましたら、お手にとってご一読いただければ幸いです。

 

 

「ドリルが欲しい」というお客さんは、本当に穴が必要なのか?

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「1/4インチのドリルを購入した人々が必要としているのは、直径1/4インチの穴である」

 

この短い言葉の中に、製品志向と顧客志向の違いが凝縮されています。

「高性能の1/4インチのドリルを売る」と考えるのが、製品志向の考え方。
「直径1/4インチの穴を提供する」と考えるのが、顧客志向の考え方です。

 

なぜなら、顧客が直径1/4インチの穴が必要なのであれば、1/4インチのドリルが唯一の解決策とは限らないからです。

・危険な工具を使わずに住むように、穴開けサービスを提供する方法もあります。
・あるいは穴を開いた板を提供してしまう方法もあります。

 

さらに考えてみると、顧客が「穴が欲しい」と思っていても、実際には穴は不要なのかもしれません。

たとえば何かを固定するために穴が必要だと考えていたとしたら、本当は穴ではなくて接着剤を提供する方が、顧客にとってよりよい解決策かもしれないのです。

 

顧客が何かの製品やサービスを必要とする場合、必ず理由があります。

・「直径1/4インチの穴」を必要とする顧客の理由は、何か?
・「1/4インチのドリルが欲しい」のならば、それはなぜか?
・そもそも、本当に穴が必要なのか? よりよい方法は他に何か?

これを徹底的に考えることが、顧客志向なのです。

 

デフレを通じて価格競争一辺倒だった企業間の戦いは、いま、徐々に価値競争にシフトし始めています。

こんな時代だからこそ、顧客の表面的な課題を考えるのではなく、その課題の奥底にある本当の課題を見極めて、自社ならではの強みを活かして応えていくことが必要なのです。

 

 

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長野IBMユーザー研究会様で講演しました

2015年11月19日(木)、長野で行われた長野IBMユーザー研究会様のマネジメントセミナーで「お客様が買う理由を、いかに作るか?」と題して90分の講演をさせていただきました。

北信越地区でのIBMユーザー研究会様への講演は、今年2回目です。有り難いですね。

長野IBMユーザー研究会様の皆様、約30名が参加されました。

「どんな商品にするか?」を考えるのは、一番最後なのですよね。

アンケートでも様々なご感想をいただきました。

・大変貴重な話で有意義な時間でした。著書を読ませていただきます。

・具体例を踏まえた展開で興味をひく内容でした。自社の営業方針についても見直しが必要だと感じました。

・「やりたいことをやる」今後しっかり考えていきたいと思います。

・たくさんのヒントをいただきました。

・自社の強み、お客様のニーズを深堀する必要を感じました。

・サキドリの大切さを実感しました。

・顧客のニーズの取り方、大いにヒントをいただきました。

・素晴らしい内容でした。感動しました。

このようなご感想をいただき、本当に有り難く感謝致します。

不毛でない値下げ合戦なら、よいのか?

合戦

 

「では、不毛でない値下げ合戦なら、いいんでしょうか?」

先週の文化放送オトナカレッジの放送で、「不毛な値下げ合戦は何を引き起こすのか?」というテーマをお話ししたところ、リスナーの方からこんなご質問をいただきました。

素晴らしいご質問ですね。

そもそも「不毛な値下げ合戦」とは何でしょうか?

 

 

それは利益を削ることで、価格を下げて戦う方法のことです。

牛丼業界は、一時期、どこも300円以下で販売していました。まさに価格競争で業界全体が疲弊している典型的な業界です。しかし利益を削るだけでは限界があるので、いずれ品質にも手を付けざるを得ません。

番組では、1960年代に始まった米国コーヒー業界の価格競争の事例をお話ししました。価格勝負に陥った結果、コーヒーの品質を下げて、顧客離れを引き起こしました。当時米国人1人あたり1日3.12杯飲んでいたのに、40年後には1.5杯と半分以下になりました。「米国のコーヒーは不味い」という評判が定着し、市場は半分以下になってしまいました。

 

牛丼業界、1960年代の米国コーヒー業界、いずれも利益も品質も削って値下げ合戦に陥っていたのです。このような値下げ合戦は、企業同士の体力勝負になります。

スポーツの「体力勝負」は、体力の限界まで追い込むことで、体力の限界値が徐々に上がりますが、利益や品質を削った値下げ合戦の体力勝負では、安くても低品質な商品を提供される顧客は離れていき、企業の体力は徐々に失われます。その先にあるのは企業の淘汰。行き着く果てが市場の大絶滅。だから「不毛」なのです。

 

ここで必要なのは、新たな価値を生み出して価格競争から抜け出すこと。牛丼業界はいま様々なメニューで試行錯誤していますし、米国コーヒー業界では「美味しいコーヒーを提供しよう」と考える人があらわれスターバックスのような会社が現れました。

 

番組でこのお話しをしたところ、リスナーの方から、「では、不毛でない値下げ合戦なら、いいんでしょうか?」というご質問をいただいたのですね。

値下げの中には、利益を削らない値下げもあります。

それは最新技術の活用により、より低いコストで提供できるようなコスト構造を実現し、利益と品質を確保した上で、価格を下げる方法です。

たとえば生命保険業界では、長い間、営業職員が販売していました。人手や営業拠点などの販売コストはすべて保険料金に転嫁されるので、保険料金は割高になっていました。

この伝統的なコスト構造を大きく変えたのが、2008年に創業したライフネット生命保険。生命保険をネット経由のみで販売することで、販売コストを削減し、保険料金を大きく下げました。

これは最新技術を活用してコスト構造を変え、低価格を実現した例です。

 

「歯を食いしばってでも、頑張って、値下げ競争を勝ち抜け」という根性論には、限界があります。

価格勝負をするのならば、利益や品質を削って価格を下げるのではなく、利益も品質も確保した上で、智恵を絞ってコスト削減を図りたいところです。

 

しかし最新技術を活用して低コスト構造を実現しても、それだけでは不十分なのです。いずれライバルが追いついてくるからです。

ライフネット生命の創業から6年が経過した現在、ライバルのネット生保が増えてきました。既に「ネット専業だから低価格」だけでは差別化できない状態なのです。

ライフネット生命も当初から、わかりやすいシンプルな商品構成、保険の簡易請求の実現、業界で唯一の保険料内訳公開などにより、顧客満足度第一位を獲得するなど、低価格を売りにするだけでなく、企業努力を重ねています。

 

価格だけに頼らずに、常に高い価値を提供し続けることを追求すべきなのです。

 

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文化放送オトナカレッジ 第4回「不毛な値下げ合戦は何を引き起こすのか?」

11月12日(木)の夜は、文化放送オトナカレッジへのレギュラー出演第4回目。今回は「不毛な値下げ合戦は何を引き起こすのか?」と題して、お話ししました。

利益を削った価格勝負は、体力勝負。しかし体力は徐々に失われていきます。品質も低下し、顧客満足度も下がっていき、顧客離れを引き起こします、その末にあるのは、市場の大絶滅。まさに悪循環ですね。

 

ということで、今回の講義内容レジュメです。

1.値下げ合戦が引き起こすもの。それは「大絶滅」。
2.1960年代アメリカのコーヒー業界のエピソード。〜値下げ競争→品質低下→市場が半分に
3.大絶滅の後に「価値競争」が生まれる。
4.絶滅した恐竜の子孫は、今も生き続けている
5.価格競争から抜けだして、“進化”しよう!

 

利益を削った不毛な値下げ合戦は大絶滅を引き起こしますが、一方でコスト構造を大きく変えて低コストにして、低価格で製品やサービスを提供するケースもあります。たとえばネット証券やネット生保などは、そうですね。

価格勝負をするのならば、利益を確保した上で、智恵を絞ってコスト削減を図る。

そうでなければ、高い価値を必要とする別の顧客の課題を理解して、解決策を提供したいものです。

 

今回の講義前半の様子は、「オトナカレッジ 聴く図書館 Podcastアーカイブ」でもお聴きになれます。→今回分はこちら

恒例、アナウンサーの砂山さんとのツーショットです。

オトナカレッジ20151112

 

悪循環に陥らず、常に好循環を作っていきたいですね。

お聴きいただいた皆様、ありがとうございました。

 

次回の第5回目は11月26日(木)、「ブランドに頼るブランドはダメになる」というテーマでお話しします。

お楽しみに。

富士通ソフトウェアテクノロジーズ様で講演しました

2015年10月21日、富士通ソフトウェアテクノロジーズ様の情報活用サービスグループで行われた社員向け会議で、『お客様が買う理由」をいかに作るか? - 「ニーズのサキドリ」が、勝負の分かれ目』と題して、講演させていただきました。

富士通ソフトウェアテクノロジーズ様講演20151021

 

当日は会場の新横浜で参加された約70名に加えて、名古屋、静岡、浜松、松本などの各事業所の会場からも多くの社員の方々が参加されました。

ありがとうございました。

「お客様が買う理由」を考えるのは大変。でも慣れる理由

疲れたランナー

「脳の中で、普段使っていない部分を使っている感じで。とても疲れました」

ワークショップに参加された方が、休憩時間にこのようにおっしゃいました。私は答えました。

「そうでしょうね。でもこれ、ジョギングのトレーニングと同じなんですよ」

 

私が企業様向けに行っているワークショップでは、お客様企業の新商品を題材に、「お客様が買う理由」(バリュープロポジション)をどうするかをチームで議論して作り上げ、発表し、社員同士で議論いただいています。

この「お客様が買う理由」を作るために、

・自社の強みは、何か?

・その自社の強みを必要とするお客様は、誰か?

・そのお客様は、どのような課題を持っているか?

・お客様は、どうすれば自社を選ぶか?

 これらを首尾一貫して、チームで議論をしながら、徹底的に考えていきます。

 

とは言え、これを徹底的に考えるのは結構大変です。「こんなこと、考えたこともない」とおっしゃる方も多く、皆さんは議論を通じて七転八倒しながら苦労して答えを導き出していきます。

 

実は、かく言う私も同じでした。

私の場合は、IBMでマーケティング戦略担当者だった2000年頃、IBMの戦略に接するうちに「バリュープロポジション」というまったく新しい概念に出会い、この考え方に沿って担当する事業のマーケティング戦略を一人で導き出して、成果を挙げられるようになるまで2〜3年間かかりました。

皆さんと同じ苦労をしてきましたので、「とても疲れる」とおっしゃるのもよくわかります。

しかしこれを苦労して徹底的に考え抜くことで、お客様の方から自社商品やサービスを選んでいただけるようになり、日々の販売活動では苦労が逆に大幅に減っていくのです。

さらに「お客様が買う理由」を自力で考えて導き出せる経験を積むことで、その後は次第に楽に導き出せるようになります。

 

だから、これはジョギングのトレーニングと同じなのです。

はじめてジョギングをして、500メートル走っただけで息が上がり心臓がバクバクする経験をした方は多いのではないでしょうか?

しかし最初は軽いウォーキング程度から始めたとしても、それを週に2〜3回行う習慣をつければ、数ヶ月後にはある程度の距離を楽々ジョギングできるようになります。次第に必要な筋肉が付いてくるからです。中には数年後にはフルマラソンに出る人もいたりします。

 

「お客様が買う理由」を考え抜くのも同じです。今まで考えたことがなかった方は、これを考えるのはとても頭を使いますし、疲れます。しかし日々この考え方をすることで、頭の中に「お客様が買う理由」を作る回路が作られるようになり、次第に割とスムーズに考えられるようになるのです。

私自身、このフレームワークで十数年間考えているので、ワークショップで各チームから発表される「お客様が買う理由」に対して、色々な視点で議論のポイントを見つけることが出来るようになっています。

 

「自社の強み」「お客様のこと」を一番知っているのは、外部のコンサルタントではありません。自社の社員です。

だからこそ、自社の社員が「お客様が買う理由」を作り検証する方法論を身に付ければ、その会社は必ずマーケティング志向に変革していくのです。

そしてそのような会社が増えていけば、日本の企業の競争力も大きく向上し、日本経済も元気になっていきます。

 

是非、習慣化したいものですね。

 
 

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オムニマネジメント2015年11月号に連載第6回『「当社の強みはブランド」と考えるのは危険な幻想である』が掲載されました

一般社団法人日本経営協会様が発行する月刊オムニマネジメント2015年11月号に、連載『「当社の強みはブランド」と考えるのは危険な幻想である』が掲載されました。

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私たちは「当社の強みはブランド」と考えがちですが、実はこれだけでは「お客様にいかに価値を提供するか?」という発想がなかなか生まれません。

ではどうすればいいのか?

ブランドとは顧客満足という事実の積み重ねです。

ですので、「顧客満足がいかに生まれるのか」を改めて考えるところにヒントがあります。

今回はそのことについて書きました。

 

もしご覧になる機会がありましたら、お手にとっていただければ幸いです。

 

 

売れない原因は、ほとんどの場合、一つしかない

悩むビジネスマン

「ウチの営業が、全然わかっていないんです」

その方はこの数年間、新商品を担当していました。強力なライバルがいる市場に新規参入し、苦戦が続いているそうです。

「お客さんを絞り込んで、営業も専任にして集中的に攻めるべきなんです。でも営業部門がやっていることは、その正反対。卸売業者に任せて薄く広く販売しています。『これではダメだから、変えるべきだ』と1年間言い続けていますが、営業部門はまったく理解しない。ほとほと困っています」

かなりオカンムリです。そこで踏み込んで聞いてみました。

「どのようなお客さんに絞り込むべきですか?」

「たとえば、地域とか。あるいは特定の小売業者とか。どこかに絞り込んで、集中突破すべきですよ」

「たとえばどんな地域でしょう?」

「仙台とか、大阪ですかね」

「仙台や大阪を選ばれた理由は?」

「特に理由はありませんが、…。とにかく絞り込むべきですよ。そう思いませんか?」

ランチェスター戦略で言うところの「弱者の戦略」に沿っていますが、具体性に欠けている気もしました。そこで質問を変えて、新商品について聞いてみました。

「この数年間、新商品に取り組んでいるのですよね」

「そうですよ」

「その新商品は、御社のどんな強みを活かして、その強みを必要とするどのようなお客様を対象にして、そのお客様のどのような課題を、いかに解決するのでしょうか?」

「当社はチャレンジャーですからね。最初の強みについては、ライバルのリーダー企業と違って、まったく新しい視点で、挑戦できることですね」

「それはリーダー以外の他社さんでも同じですよね。御社しか持っていないどんな強みを活かしているのでしょうか?」

「うーん。そういう視点はないですねぇ。新商品はウチの技術を活かしてはいますが、他社でもできますし」

「他社もできるのなら、あえて御社を選ぶお客さんはいないのではないでしょうか?他社にない強みをどのように活かして、ターゲットを絞るか、考えることが必要だと思います」

「うーん。結局、『地道にやれ』ということですかね。今、ほとほと困っているので何かヒントがあればと思っていたのですが…」

 

数回のやり取りをダイジェストにしてまとめてみましたが、ここまでお話ししてわかりました。営業を説得できないのは、「お客様が買う理由」が不明確だからなのです。

 

私は、お客様から色々なご相談をいただきます。

・「営業です。営業に行っても、お客様から言われるのは値引きばかり。どうすればいいんでしょう?」

・「マーケ部門です。販促活動しているのですが、なかなか成果が上がりません。困っています」

・「チャネル戦略で販路拡大を図っていますが、売上が下降する一方です」

そこで「ターゲットのお客様が誰で、その方はどのような課題を持っていて、御社ならではのどのような強みを活かしてその課題を解決しているのですか?」と聞くと、9割以上の確率で異口同音に返ってくる答えは、「それはよく考えていない。とにかく問題を解決したい」。

今回、深掘りしてお話しを伺ってわかったのは、まさに同じケースだということでした。

 

売れない理由は、ほとんどの場合、一つだけ。「お客様が買う理由」が、ないのです。

言い換えれば、「商品を出してうまく販売すれば、売れる」と考えています。しかし現代では「お客様が買う理由」が不明確な商品を販売力に頼って売るのは至難の業。その結果、売れないのです。

 

当コラムで繰り返し述べているように、「お客様が買う理由」を作り上げるには、

「(1)自社の強み」を見極めて、
「(2)その強みを必要とするお客様」(ターゲット顧客)を決めて、
「(3)そのお客様が必要としていること」(顧客の課題)を徹底的に理解し、
「(4)自社ならではの強みを活かした課題の解決策」(商品やサービス)を提供することを考えることが必要です。

 

しかし、「お客様が買う理由」を考え抜くだけでは、必ずしも売れません。そこでリアルなお客様での検証が必要になります。

当初考えた上記(1)〜(4)のうち、いずれの仮説が間違っていたのかを順番に検証し修正していけば、「お客様が買う理由」に近づくことができるのです。その結果、売れていくのです。

 

「結局、『地道にやれ』ていうことですね」と言いたくなるお気持ちも、よくわかります。「お客様が買う理由」を作るのは、地道な作業の積み重ねだからです。もっと手っ取り早い方法を求めたくもなるかもしれません。

しかし、「お客様が買う理由」を考えることは、売れる商品を作る王道です。そしてお客様や市場、技術の変化が激しい今の時代は、必須条件でもあるのです。

 

たとえば冒頭のケースでは、なぜ営業がなかなか動いてくれないのでしょうか?

営業は、自社で開発された様々な商品を売るのが仕事です。同じ売るなら、お客さんが欲しがる、売りやすい自社商品を売りたくなるのは、営業にとって当然のことです。

その商品が、お客様が思わず買いたくなるような強い「お客様が買う理由」があれば、放っておいても営業はその自社商品を売ります。さらに営業ならではの色々な知恵を出して、より多く売ろうとします。

この新商品を営業が売ろうとしない理由は、この営業が動きたくなるような「お客様が買う理由」がないからです。自社の強みを徹底的に考えていないので、新商品で最も大切な、ライバルとの差別化ポイントが不明確。だからお客様に売れる以前に、自社の営業を説得できない。だから売れない。つまり戦略不在なのです。

本来「お客様が買う理由」は、新商品開発チームと営業がチームを組んで対話を続け、商品開発段階から一緒に考えることが必要です。しかしこのケースではチームワークも作らず、対話も不十分なまま、営業部門が具体的にどうすべきというか提案もせずに、営業部門が変わらないことを嘆き続けているのです。

 

質問された方は、この状況をなんとか変えるべく、悪戦苦闘しながら「そのものズバリの回答」がどこかにあるのではないかと探しています。

しかし、自社の強みとお客様のことを考えずして、「そのものズバリの回答」がどこかの誰かから得られることはないのです。

仮に第三者からのアドバイスで「そのものズバリの回答」が得られても、それは大きくライバルを差別化できるモノにはなり得ません。

第三者であるどこかの誰かが考えられることは、誰でも考えることが出来るからです。

自社の強みとお客様のことが一番わかっている自分自身が、「お客様が買う理由」を自分の頭で考え抜き、さらにリアルなお客様で「お客様が買う理由」を検証し続けるからこそ、誰も真似できない自分だけの学びを得ることができ、他社を圧倒する差別化を実現できるのです。

リアルなお客様に対する仮説検証は、実は差別化の手段でもあるのです。

 

「お客様が買う理由」を考え抜き、検証する作業は、一見すると地道な作業の積み重ねに見えます。しかし実際には、やりがいがある仕事でもあるのです。

私がこれまで出会った、「お客様が買う理由」を考え抜いて検証し抜き、大きく成功している人達は、誰もが楽しそうです。主体的に自分の仕事に取り組み、仕事を通じて自分だけの学びを得て、仕事でやりたいことを実現し、成果を挙げているからです。

 

「どこかに、『そのものズバリの答え』が転がっている」と考えるのは、幻想です。

「そのものズバリの答え」は、どこにも転がっていません。断片的に転がっている材料を元に、自分で考え抜いて、自分だけの答えを見つけるのです。そしてその挑戦は、実は楽しいものなのです。

一見「地道」に見える道を避けずに、まずは一歩踏み出してみると、きっと色々なことが変わってきて、次第に仕事が楽しくなるはずです。

 

 

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売れる商品は、必ず真似される。ではどうする?

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「せっかくいい商品をだしても、数年で他社に模倣されて、価格勝負になるんですよね」

製品担当のその方は、残念そうにおっしゃいました。

 

しかし現代では、売れた商品は、必ず真似されるのが宿命です。

先週のコラムでも、アイリスオーヤマの「半透明収納ケース」が大成功すると、コピーメーカーが多数出現し、供給過剰になり、価格競争に陥った話を紹介しました。この収納ケースはどのメーカーでも容易に真似できるのです。

 

ではどうすればいいのでしょうか?

模倣されても、多くの場合、「劣化版コピー」に過ぎません。形だけを真似しても、その背景にある課題・自社の強み・プロセスまでは真似できないからです。

だから模倣するライバルに対して、常に先行して「価値」を創り続けるのです。

そのためにはニーズのサキドリをし続けることです。

先週のコラムでも、「半透明収納ケース」を真似されたアイリスオーヤマが、「中味が見えると、リビングに置きにくい」という半透明収納ケースの声なき不満をサキドリし、木天板、硬質ポリスチレンの引き出しに金属レールを使った「HGチェスト」を新たに開発し、高収益商品にシフトして大ヒットした話を紹介しました。このような異なる素材の製品を作れるのは、多品種を製造するアイリスオーヤマならではの強みで、他社には難しいことだったのです。

 

現代では、模倣して追従しようとするライバルに対して、ニーズをサキドリし続けることが勝負を決めます。理由は2つあります。

1つ目の理由は、新規市場を開拓すると、先行者利益があるからです。たとえば「おそうじロボット」と言えば「ルンバ」、「半透明収納ボックス」と言えば「アイリスオーヤマ」というブランドが定着しています。先行メーカーだからこそ、ライバル不在の状況でブランドを確立でき、お客様に「〇〇〇〇と言えば、◎◎◎◎」と覚えてもらえるのです。追従するコピーメーカーは、確かに商品は真似できますが、市場でのブランド認知に関しては、後から頑張っても覆すのは容易ではありません。

2つ目の理由は、あらゆる変化が激速化しているからです。かつては技術進化も顧客の変化も今ほど激しくなかったので、模倣戦略は有効でした。真似することで先行メーカーに追いつくことは可能だったのです。しかし現代では、技術進化も顧客変化も格段に速くなっています。「時間」が「ヒト・モノ・カネ・情報」に次いで「第5の経営資源」とも言われる時代です。先行メーカーが常に新技術を磨き続けて、サキドリしたニーズに応える形で新商品を出し続ければ、先行し続けられるのです。

 

 

ですから、勝負の分かれ目 は、

・ニーズをサキドリし続けること。→つまり「顧客づくり」

・新しい技術開発を継続すること。→つまり「ものづくり」

この「顧客づくり」「ものづくり」の両輪を、常に継続して回し続けることが大切なのです。

せっかく技術を磨き続けても、「顧客づくり」を怠って「ものづくり」だけを考えていては、失敗を積み重ねるのです。

さらに、考えるだけで実行しなければ、時間を浪費し、先行しているメリットも失ってしまうのです。

 

2013年にリタ・マグレイスが書いた「競争優位の終焉」という本をご存じでしょうか?

本書では、次のように述べています。

・かつて多くの企業が「持続的な競争優位性」を目指していた。しかし現代で実現できている企業は、極めて少ない。

・競争が激しい現代においては、「持続的な競争優位性」という考え方は既に終焉している。

・今の時代に勝っている企業は、「一時的な競争優位性」を連続して獲得している企業である。

・だから、常に「一時的な競争優位性」を生み出せるように、会社の仕組みを変えていくことが必要だ。

 

短期間で「売れる商品」が模倣される競争が激しい現代の市場において、この「一時的な競争優位性」を生み出すポイントが、自社の技術的な強みを活かし、ニーズのサキドリをし続けることなのです。

 

そしてこの「一時的な競争優位性」を長く保つ1つのポイントが、当コラムで書いているとおり、

(1)「自社の強みは何か?」
 ↓
(2)「強みを必要とする顧客は存在するか?」(対象顧客の有無)
 ↓
(3)「その顧客は、何を必要としているか?」(顧客の課題)
 ↓
(4)「顧客が自社を選ぶために、どうすればよいか?」(解決策=商品・サービス)

これを首尾一貫して考え、「お客様が買う理由」を作り上げることなのです。

 

他社がなかなか真似できない自社の強みに基づいて「お客様が買う理由」を作り上げることで、「一時的な競争優位性」の寿命はより長くなるからです。

 

 

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文化放送オトナカレッジ 第2回「その人、本当にお客様ですか?」

10月8日(木)の夜は、文化放送オトナカレッジへのレギュラー出演第2回目でした。

今回は、「その人、本当にお客様ですか?」と題して、お話ししました。

 

一生懸命に営業活動をしていても、実は本当のお客様に会っていないということが、よくあります。

 

ということで、今回の講義内容レジュメです。

1.なぜ価格競争になってしまうのか?
2.1枚10万円でも売れる鏡とは?
3.業務用ミラー最大手 コミーの場合
4.本当のユーザーは誰なのか?

今回の講義前半の様子は、「オトナカレッジ 聴く図書館 Podcastアーカイブ」でもお聴きになれます。→今回分はこちら

 

アナウンサーの砂山さんとのツーショットです。

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お聴きいただいた皆様、ありがとうございました。

 

第3回目は、再来週10月22日。「間違いだらけの価格戦略」というテーマでお話しします。お楽しみに。

「お客様のニーズ?ないよ」そんな時こそマーケティングの出番。例えば、タンスでは?

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10月1日から文化放送・オトナカレッジという1時間番組のレギュラー出演が始まりました。第1回目は、『マーケティングは、アナタの人生に役立ちます!』と出して、そもそもマーケティングとは何かについてお話ししました。

 

この番組では十数分の講義後、リスナーからの色々なご質問にお答えしています。今回はこんなご質問をいただきました。

「お客様のニーズをサキドリして応えるのがマーケティングだということはわかりました。でもニーズが減っている商品でも、役立つのでしょうか?」

実は、このような場面こそ、マーケティングの出番なのです。

 

番組ではこんなエピソードでお答えしました。このコラムでは、時間の都合のため番組でお話しできなかったことも加えてご紹介します。

 

家にタンスを置いているご家庭は多いと思います。

日本でタンスが普及し始めたのは、1700年の江戸時代中期。一見すると、タンス市場は成熟していて新しいニーズはないように見えます。しかしある会社は、タンス市場での「隠れたニーズ=声なき不満」を発掘し、大ヒット商品を生み出しました。

「タンス市場での、隠れたニーズ=声なき不満」は、何だと思いますか?

 こんなご経験はありませんでしょうか?

衣替えの季節や旅行の際に、衣服を探してタンスの棚をいくつもひっくり返して探したけれども、なかなか見つからない。

実はタンスには、「どこに何をしまったかを忘れてしまって、欲しいモノが見つけられない」という声なき不満があったのです。

二十数年前、アイリスオーヤマは、その「声なき不満」に気がついて、半透明プラスティックスを素材として使って中味が見える収納ボックスを開発し、販売しました。ホームセンターでこの「半透明収納ボックス」をご覧になったり、使っておられる方も多いと思います。かく言う我が家でも使っています。

世界初の「半透明収納ボックス」は大ヒット商品になり、米国でも新市場を開拓しました。「どこにしまったか、見つけられない」というお客様の声なき不満に他社よりも先んじて注目し、ニーズをサキドリして開発・販売した、マーケティングの成果です。

 

このように、「お客様の新しいニーズなんて、もうないよ」という時こそ、マーケティングの出番なのです。

マーケティングの考え方を身に付ければ、お客様も気がつかないような「隠れたニーズ=声なき不満」を発掘し、いち早く対応することができます。そしてニーズをサキドリすることで、他社を大きく差別化できるのです。

 

しかしニーズをサキドリして成功すると、必ずあることが起こります。
ライバルが模倣して、類似品が市場に出回り始め、価格競争になるのです。
では、どうすればいいのでしょうか?

さらにお客様のニーズをサキドリし続け、自社の強みを活かし、より深くお客様の隠れた課題に応えていくのです。

 

アイリスオーヤマの「半透明収納ケース」も、コピーメーカーが多数出現しました。半透明プラスティックスを成形加工するのは簡単なので、模倣するのは容易です。つまり市場への「参入障壁」は低かったのです。そして市場が供給過剰に陥り、価格は急降下しました。そこで収納用品の点数を一気に縮小し、収益性が高い商品だけに絞り込むことにしました。

その絞り込みの基準も、「隠れたニーズ=声なき不満」です。

では、「半透明収納ケースの、隠れたニーズ=声なき不満」は、何だと思いますか?

実はこんな、「隠れたニーズ=声なき不満」があったのです。

「人目に触れる機会の多い場所だと、中味が見える収納ケースは、置きにくい」

そこでアイリスオーヤマは、天板を木天板、引き出し部分は硬質ポリスチレンにし、引き出しやすいように金属レールを使った「HGチェスト」を開発しました。リビングに置いても違和感のない高級感がある収納ケースになり、2012年までに累計700万個売り上げました。

実はプラスティックス・金属・ポリプロピレン・木材といった異なる素材を使った製品を作れるのは、多品種を製造するアイリスオーヤマならではの強みであり、他社には難しいことだったのです。つまり市場への「参入障壁」は高くなったのです。

 

このようにマーケティング思考が企業に定着していること自体が、企業の大きな強みになるのです。

 

今回のラジオ出演前半部分(講義11分間)は、「オトナカレッジ 聴く図書館 Podcastアーカイブ」でお聴きになれます。→こちら(なお、今回のコラムでご紹介した後半の質疑応答は割愛されていますので、ご了承下さい)

 

以上、「オトナカレッジ」の番組でお話しした一部を、さらに深掘りして補足させていただきました。

本番組では、このようなマーケティングのお話しを、わかりやすく解説します。マーケティングをご存じない方も、3月末までの十数回のお話しをお聴きいただくと、マーケティングのキモについてご理解いただけるようになるはずです。

 

次回、私のオトナカレッジへの出演は、明後日の10月8日(木) 21:00。「その人、本当にお客様ですか」というテーマでお話しします。本当のお客様は、実は意外と見えていないことが多いのですよね。お楽しみに。

 

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文化放送オトナカレッジ 第1回「マーケティングは、アナタの人生に役立ちます!」

昨晩、文化放送オトナカレッジに出演しました。

本番組では来年3月まで、「マーケティングはエピソードで学べ」というテーマでマーケティングのことをわかりやすくお伝えしてまいります。

 

第1回となる昨日は、「マーケティングは、アナタの人生に役立ちます!」と題して、お話ししました。

今回の講義内容レジュメです。

●マーケティングとは何か?
●なぜ人はドリルを買うのか?
●お客様を本当に幸せにするためにはどうすればいいのか?
●お客様は本当の課題に気づいていない
●お客様の「言いなり」になってはいけない
●マーケティングの考え方を理解すると人生はどう変わるのか?

講義の様子は、「オトナカレッジ 聴く図書館 Podcastアーカイブ」でもお聴きになれます。→こちら

この番組は全国放送なので、山口県など、全国の視聴者の皆さんからメール、Fax、Twitter等でいただいた色々なご質問にお答えしたりして、盛りだくさんな番組になりました。

ラジオのライブ感、いいですね。

 

アナウンサーの砂山さんとのツーショットです。

IMGP1517

お聴きいただいた皆様、ありがとうございました。

 

第2回目は、来週10月8日。「その人、本当にお客様ですか」というテーマでお話しします。お楽しみに。

新規事業では、最初から解決策を検証してはいけない

新市場はあの山のどこかにあるはずよね

「この資料を持っていって、お客さんの反応を見てこようと思います」

新規事業の立ち上げに挑戦しているチームのリーダーはこう言って、新サービス一覧を見せてくれました。

そこには新たに始めるサービスがリストされていました。しかし、中には従来から提供していたサービスもあります。今回の新事業では、「既存サービスにいくつかの新サービスを追加し、体系化したのが売り」とのことです。

「そうですか。どのお客様に行かれるのですか?」
「おつき合いがあるお客様に、セールスがチームで手分けをして行きます」

 

実はこれは、うまく行かないパターンです。

 

当コラムでご紹介しているように、新規事業では「お客様が買う理由」を徹底的に考えて作り上げ、さらにお客様に検証することが必要です。

そのためには、下記を首尾一貫して考え、検証していきます。

(1)「自社の強みはあるか?」
 ↓
(2)「強みを必要とする顧客は存在するか?」(対象顧客の有無)
 ↓
(3)「その顧客は、何を必要としているか?」(顧客の課題)
 ↓
(4)「顧客が自社を選ぶために、どうすればよいか?」(解決策=商品・サービス)

冒頭のケースは、(1)〜(3)のプロセスをサクッと済ませてお客様への検証をスキップした上で、既存サービスを若干手直ししただけで(4)の解決策(=新サービス)をお客様に検証しようとしています。

すると、どうなるでしょうか?

 

まず「新サービス一覧」を見たお客様は、こう考えます。

「またセールスから、新しいサービスの売り込みか?」

そして売り込みに身構えてしまい、本音で話してくれません。

 

さらに、その顧客が本当に正しい顧客なのかがわかりません。セールスが行きやすい自社の顧客にしか行っていないからです。しかし本当は、その顧客は自社の強みが活かせない「売り込んではいけない」顧客なのかもしれません。

自社のセールスがカバーしているのは、市場全体のほんの一部です。市場には、自社セールスとは接点がないけれども、自社の強みを必要としている顧客がいるかもしれません。

セールスが行きやすい自社顧客に行っている限り、それがわからないのです。

 

また、運良く「自社の強みを必要とする顧客」(=本来のターゲット顧客)に会えたとしても、課題についての仮説が十分に考えられていないので、その顧客の課題も検証できません。

課題を検証できないと、解決策がどの程度適切なのかもわかりません。

 

新規事業では、当初に立てた仮説の多くは間違っているので、修正が必要になります。しかしいきなりお客様に解決策を提示してうまくいかないと、どうなるでしょうか?

・対象顧客は、存在するのか?
・その顧客は、仮説で考えた課題を持っているか?
・その課題に対する解決策は、正しいのか?

これらが切り分けられないのです。「うーん、お客様に解決策を持っていったけど、どうもうまく行かないなぁ。なんだろう?」と堂々巡りに陥ってしまい、チームで議論しても結論は出ず、結局新規事業は失敗し、チームは解散になります。

 

→ 本来必要なのは、まず想定している対象顧客が存在するのか、確認すること。

→ その上で、その顧客が持っている課題が想定どおりなのか、確認すること。

→ 解決策が適切かを確認するのは、その後です。

 

ある事例をご紹介します。

1999年。ネット販売が産声を上げ、あらゆるものがネット販売に移行し始めた時期。米国でザッポスが靴のオンライン販売を始めました、

当時、「靴は履き心地を重視するので、オンラインで売るのは無理」と考えられていましたが、ザッポスの創設者は「靴をオンラインで買う顧客は存在する」と仮説を立てた上で、実験で検証しました。

しかし1999年の当時、ネット販売サイトを作るだけでも大変です。

そこで彼は、まず近所の靴店で靴の在庫品の写真を撮らせてもらいました。その写真をウェブに掲載し、誰かが買ったら店の売値で買い、注文主に配送しました。この仕組みなら数日で作れます。

実際にやってみると、靴は売れました。「オンラインで靴を買う顧客」が存在することを実験で確かめたのです。さらに値下げの反応、返品対応など、実際にやってみないとわからない様々なことを学ぶことができました。

ザッポスの事例は、最初に仮説を考えた上で、「そもそも対象顧客が存在するか?」を簡単だけども効果的な実験で検証した事例です。

 

もう一つ、私の事例も紹介します。

私は2013年に30年間勤務した日本IBMを退職し、ウォンツアンドバリュー株式会社(当時の会社名はオフィス永井株式会社)を創業しました。当社では、著作活動以外にも、講演や企業向け研修に力を入れています。そこで企業向け研修を提供するに至った経緯を、このフレームワークに沿ってご紹介します。

独立にあたって、「日本企業がよりマーケティング志向に変革していくお手伝いをしていきたい」と考えていました。

この仕事をするにあたって、私の強みは下記だと考えていました。

マーケティング理論を、現場のビジネスパーソンが納得できるように、専門用語を使わずにわかりやすく伝えられること。これは私自身が、30代中頃までマーケティング知識がなかったために仕事で失敗を繰り返した末、30代後半にマーケティング職に異動してマーケティングを体系的に学び、IBM米国本社などの事業戦略に接して、実業務で成果を出しながら学びを深めていった体験に基づいている。

そこでこの強みを活かして、日本企業がマーケティング志向に変革するご支援をすべく、「著作」「講演」「企業向け研修」を事業の三本柱としました。

しかし「企業向け研修」の市場は、激戦区でもあり、研修サービス大手は価格競争を余儀なくされています。新規参入で規模も小さい零細業者である弊社は、真正面から勝負してもまったく勝ち目はありません。

そこで、この市場でいかに研修サービス大手にない価値を生み出すかを考えました。

私は日本IBMを退職する直前の2年間、ソフトウェア事業の人材育成部長として所属社員1000人のスキル開発を担当しており、研修サービス会社の顧客の立場にいました。企業における人材育成の課題と、投資の判断基準も理解していました。そのおかげで、社内研修を必要とする経営トップの立場に立って、人材育成戦略と連携した研修プログラムを提案することが可能でした。

また独立前後に、著書を読まれた数名の企業経営者様から研修のご依頼をいただき、特に自分が得意とするマーケティング分野で人材育成のニーズが高まっていることも実感していました。

そこで、自分の事業における対象顧客・課題・解決策として、次のように仮説を立てました。

■対象顧客:「自社を変革したい」と考えている経営者、およびマネジメント

■課題:自社が変革期にある。「社員にもっとマーケティング思考を身に付けて欲しい」という問題意識を持っている。しかし世にあるマーケティング研修は理論中心であり、現場社員にとって難解であり、取っつきにくい。このため、マーケティング研修の投資をしても、マーケティング思考が社員になかなか定着しない。

■解決策:著書「100円のコーラを1000円で売る方法」に基づき、マーケティング専門用語をできるだけ使わずに、実務ですぐに使えるように「顧客中心主義」の考え方や「お客様が買う理由」を作るフレームワークを伝え、加えて業務で役立てるように、参加者の実務に即したワークショップを実施する。ワークショップは基本パターンを持ちながら、事例部分は顧客企業毎にカスタマイズする。必要に応じて、お客様企業の事業戦略と人材育成戦略との連携も含めて提案する。

 

この仮説を検証していきました。

有り難いことに著書のおかげで、私は2時間程度の講演依頼を多くの企業様からいただきます。講演の前後で、私に講演を依頼された経営トップとお話しする機会もあります。

多忙な経営トップが行動を起こす際には、必ず背後に何らかのビジネスニーズがあります。私に講演依頼をされているのも、必ず人材育成上で何らかの課題があるからなのです。

そこで経営トップと話し合う際には、上記の仮説で考えた課題をお持ちかどうか、経営トップにお伺いしています。もし課題をお持ちでしたら、解決策として半日から数日間(場合によっては数ヶ月間)のワークショップを提案します。

多くの場合、経営トップの皆様はその場でワークショップ開催を即断されます。

ワークショップ実施にあたっては、研修の基本部分は標準パッケージ化して品質を維持する一方で、事例部分については事前に社内資料を提供いただいたりお客様にインタビューを重ねて、お客様企業様のビジネス状況や提供する商品・サービスに合わせてカスタマイズを図り、参加者が腹オチするようにします。

経営トップにとっては、マーケティング研修を自社の状況に最適化した上で、社員にわかりやすく学ぶ機会を提供できます。

長い目で見ると、私にとっても大きなメリットがあります。それは自分が持っている「お客様が買う理由を作る」方法論やフレームワークを、数多くの業界で磨き上げられることです。これは将来的に、残り2本の柱である「著作活動」と「講演活動」にも活きてきます。

 

たとえ著書の高い認知度により講演の機会をいただいたとしても、もし「企業向け研修」として「対象顧客の定義」や「課題」の仮説を考えず、検証もせず、経営トップに一方的に自分が持っている企業向け研修を提案しても、このような結果にはなりません。世の中に数多くあるマーケティング研修の中に埋もれてしまいます。

 

いかがでしょうか?

強み → 対象顧客 → 課題 → 解決策

一見当たり前に見えますが、この順番で徹底的に考え、愚直に顧客に検証し続けることこそ、成功の近道なのです。

 

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10月1日から、文化放送「オトナカレッジ」のレギュラー出演が始まります

オトナカレッジロゴ

今年10月から来年3月まで、文化放送「オトナカレッジ」にレギュラー出演させていただくことになりました。

私の担当は隔週木曜21時台。「マーケティングはエピソードで学べ」というテーマで、大切なマーケティング戦略を、誰にでも、わかりやすく理解できるように、お話しします。

 

記念すべき第一回目は、10月1日(木) 21:00。

第一回のテーマは、「マーケティングは、アナタの人生に役立ちます!」

Radikoでもお聴きいただけます。→こちら

 

半年間で合計13〜14回の番組を担当しますが、すべてお聞きいただくと、マーケティングのことは一通りわかるように構成しています。

 

よろしければ、お聴きいただければ幸いです。

 

■番組サイト→こちら

■Podcastアーカイブで過去の私の放送もお聞きいただけます→こちら

 

ちなみにすべて生放送です。

考えてみれば、学生時代から会社員時代にかけて話すのが大の苦手だった引っ込み思案だった私が、独立して講演を仕事にし、ラジオの生出演までするようになるとは、人生、わからないものであります。

 

オムニマネジメント2015年10月号に連載第5回『戦うべきか?強みはあるのか?』が掲載されました

一般社団法人日本経営協会様が発行する月刊オムニマネジメント2015年10月号に、連載「半歩深く考える仕事術」の第5回目『戦うべきか?強みはあるのか?』が掲載されました。

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本来、戦略とは「戦って勝つ」ためのものではなく、「戦いを回避して勝つ」ためのものです。

しかし、戦うことが自己目的化したり、強みを持たずに戦ったりするケースも少なくありません。

 

今回はこのことを、次の4象限で整理してみました。

オムニマネジメント4象限201510

 

もしご覧になる機会がありましたら、お手にとっていただければ幸いです。

 

 

歩合給制常識の業界で、固定給制を堅持する2つの理由

テーブル

代理店業を営む、ある中小企業の社長とお話ししたときのこと。

「創業して30年以上が経ちますが、ウチは一度も歩合給制を採用したことがありません。ずっと固定給制です」

この業界はある商品の代理店業なので、個人や企業への販売活動が中心になります。そのために、セールスに対して、短期的な売上成績へボーナスを支給する歩合給制を採用する会社は少なくありません。

しかしこの会社は、短期的な成績が給与に反映されない固定給制を堅持したまま、地域に密着し、好業績を上げ続けておられます。

歩合給制という業界の常識を覆して、なぜこの会社は固定給制度を堅持してるのでしょうか?

詳しくお話しを伺って、2つ理由があることがわかりました。

 

1つ目の理由は、それが企業理念に沿ったものだからです。

この会社の企業理念は、「お客様の”生きる”を”本気”で考える」です。

そのためには目先の売上を追わずに、お客様の課題を徹底的に理解し、その課題に合った提案をしていくことが必要です。

お客様との対話を通じ、お客様自身も気がつかない課題を見つけることも少なくありません。そこでその課題を一緒に考え、解決策を提示していきます。

お客様の課題を解決するためには、必ずしも高価格帯の商品が適切とは限りません。むしろ低価格帯でも、課題解決に最適な商品もあります。

しかし歩合給制は、セールスが短期的な売上を増やす動機付けになります。そのために歩合給制を採る会社のセールスの場合、この状況では高価格帯の商品を提案するケースも多いのです。

しかし固定給制であれば、そのような動機付けは働きません。

むしろ「お客様の”生きる”を”本気”で考える」という企業理念があり、固定給制という給与体系があることで、たとえ低価格帯であってもセールスはお客様の課題解決のために最適な商品を提案できるのです。

そしてそのような提案を受けたお客様からの信頼を獲得し、次の案件も任されるようになります。

固定給制は、企業理念と一体化したものだったのです。

 

2つ目の理由は、より現実的な問題です。

社長は、このように話を続けました。

「そもそも歩合給制で成績を上げられるような優秀なセールスは、ウチのような小規模の会社にはまず入ってきません。だから歩合給制を採用しようにも、『できなかった』というのが現実なんです」

社長はこのように前置きをした上で、たとえ話をされました。

「大きなテーブルを一人で持ち上げられる人は、滅多にいません。でも四隅を4人で持てば、誰でも簡単に持ち上げられますよね。同じことです。ウチの会社もスタッフで役割を分担して、優秀な営業と同じ結果を皆で分担して挙げられるような仕組みにしたんです」

 

この業界では、優秀なセールスが独立して会社を立ち上げ、代理店を始めるケースが多いのです。

しかし経営者である自分と同じ力量を持つ優秀なセールスは、なかなか入社して来ません。そのままでは、経営者の個人技に頼ってしまうことになります。

この会社も、社長は優秀なセールスでした。しかし自分の営業スキルだけに頼っていては、会社は大きくなりませんし、自分もセールス活動で忙しいまま。なかなか時間は作れません。

そこで誰か一人の力に頼ることなく、社員全員が、社長である自分と同じ事ができるようにする必要があります。

個人技を追求するのではなく、組織力で対応できるようにするということですね。

そのためには、(1)社長と同じ判断ができるようにすることと、(2)スキルを付けることだ、と、この社長は考えられました。

(1)社長である自分と同じ判断ができるようにするために、経営理念を明確にした上で、社員のあるべき行動をクレドや行動指針などで明確化し、さらにそれらと一貫性がある人事評価基準を作りました。

(2)さらにスキルを付けるために、社員に対して手厚く研修を行っています。

そして歩合給制により短期的な売上拡大を狙うのではなく、固定給制で長期的な全体の給与の底上げを図っているのです。

 

お話ししていて、「お客様が買う理由を作る」ためには、

経営理念:いかに社会へ貢献するか
→自社の価値:お客様が買う理由の明確化
→企業文化:失敗からの学びの奨励・人事評価
→個人の働き方

これらがすべて首尾一貫していることが必要であることを改めて学ばせていただきました。

メットライフ生命保険様・特別セミナーで講演しました

2015年9月14日、東京浅草橋で行われた、メットライフ生命保険様の全国代理店・特別セミナーで講演をさせていただきました。

当日は400名の代理店経営者の皆様が参加されました。大きな会場でしたが満席でした。

メットライフ様講演20150914

皆様、とても真剣にお聞きいただきました。

メットライフ様講演20150914-2

演題はいつも通り「お客様が買う理由を、いかに作るか? 「ニーズ断捨離」時代に求められる思考の変革」で90分の講演ですが、全体の2/3は、保険代理店でいかに価値を創っていくかというお話しでした。

保険代理店から見た保険ビジネスの特徴は、全ての保険代理店が、同じ保険商品を取り扱えるという点です。だからこそ、差別化するポイントは、お客様の課題の理解。そこで、千葉県下で先進的な取り組みをされている保険代理店様へ取材させていただき、学んだ結果をベースにしてお話ししました。(「先進的な取り組みをされている保険代理店様」と書きましたが、実は基本に忠実で地道なお取り組みをしておられます)

 

前の週のJTBコーポレートセールス様の講演でも、実際のJTB様の「価値創造への挑戦」を取材し、観光業・地域活性化でいかに価値を創っていくかをお話ししました。

 

ここ1−2年間で、企業が求めているものが、一般的なマーケティングの学びから、さらに業界や企業特有の課題まで踏み込んだ提言へと変わってきていることを、日々実感しています。

このような講演を通して、私自身もとても勉強になっています。

 

企業様からこのような数多く機会をいただき、感謝しております。

マーケティングと人材育成は繋がっている、と実感した体験

人材育成の写真

「人材育成の責任者を担当して欲しい」

前職の日本IBM社員時代、戦略マーケティングマネージャーの仕事を始めて15年目。1ヶ月前に50歳の誕生日を向かえたばかりのある日のこと、事業本部長から、突然このように切り出されました。

(戦略マーケティングマネージャーの仕事は自分の天職。これからもこの仕事を続けて、究めていこう)と思い定めた矢先のことでした。

事業本部長はこのように続けます。

「永井さんが考える戦略と、ボクが考える戦略は、方向性が同じだ。だからウチの事業本部にいる1000名の全社員が、同じ戦略の方向性を理解して、仕事をするようにしたい」

2日ほど考えた末、(悩んでいるのならば、チャレンジしてみよう)と、異動することにしました。

 

とは言え、マーケティング業務で顧客中心主義については深く学んできたものの、人材開発の業務についてはまったくの門外漢。(なぜ自分が、人材育成の責任者に?)と思いました。

しかし、担当してみてわかったことが2つあります。

 

1つ目は、気づきを得たスキルが高い社員がいることが、顧客中心主義を実現する前提である、ということ。

お客様に本当に満足いただけるような製品やサービスを提供する主体は、社員。よくよく考えれば当たり前のことでした。

「自分の仕事で、世の中をよくしたい」という深い気づきを得た社員がいて、その社員がお客様にご満足を提供できる高いスキルを持つことが、あるべき姿です。

ではそのあるべき姿を実現するためには、現状はどうなっていて、何が足りないのか?

事業本部傘下にある十数の事業部毎に、あるべき姿、状況、課題は微妙に異なります。「仕事の気づき」「製品スキル」「ビジネススキル」「業界別スキル」に分けてそれらを見極め、優先順位を付けて、対策を打ち、結果を四半期毎に検証していきました。

仕事を通じて、「社員自身の気づきを深めて、さらにスキルを高めることが、とても大切なのだ」だと実感しました。

 

2つ目は、人材育成戦略とマーケティング戦略の方法論は、基本は同じである、ということ。

1つ目の方法論で書いたように、人材育成戦略の策定と実施にあたっては、

「あるべき人材像を見定める」→「スキルの現状を把握する」→「課題を見極める」→「対策を打つ」→「検証する」

この仮説検証の愚直な繰り返しが必要です。

「人材やスキル」を、「事業」に置き換えると、マーケティング戦略の策定と実施も同じです。

「あるべき事業を見定める」→「事業の現状を把握する」→「課題を見極める」→「対策を打つ」→「検証する」

自分が人材育成を担当することになった意味は、ここにあったのかもしれません。

米国系外資系企業ということもあって四半期毎という短期間で予算の獲得が必要なので、そのタイミングに合わせて結果を検証し、改善を積み重ねることで、事業部全体のスキルは上がり、ビジネス面の成果に繋がっていきました。

 

一方で、30代前半の頃から「50歳になったら独立しよう」と考えていました。人材育成責任者を1年半担当し、51歳の半ばを迎えて、独立しました。独立後は、著作・講演・研修などの活動を通じて、企業様の人材育成のご支援をしています。

マーケティング戦略の策定・実施と、人材育成戦略の策定・実施、ともに徹底的に究めた実戦経験があることは、現在の私自身の大きな強みになっています。

 

2013年7月に独立後は、色々な企業様から想定していなかったようなご依頼をいただきます。そしてそれらの多くは、私の人材育成業務での経験と同じように、様々な形で思わぬ方向に進化し、繋がっています。

独立して3年目を迎えて、様々な形で与えられた仕事の意味を解釈し、方向性を決めるのは自分次第であることを、改めて実感しています。

 

成功事例から、学ぶべきもの。学ぶべきでないもの

Best Practice

「あのプロジェクト、当事業部でも『あの事例にウチも学ぶべきだ』と話題になっています。どのように進めたのか、教えてください」

前職の会社員時代、私が担当し、成果が挙がったあるプロジェクトについて、別事業部のマネージャーから「詳しく話を聞きたい」というご依頼がありました。

その会議の冒頭、このように質問され、私は記憶を辿りながらお答えしました。

「そうですね。元々はこんなビジネス状況で、このような課題がありました。それらの課題を解決するために、シナリオをこのように考えてみました。そのシナリオを実現するために、具体的なアクションをこのように作って、お互いをこのように繋げていったんですよ」

(話が長そうだな…)と思ったのか、相手の方は私の話をさえぎり、このようにおっしゃいました。

「全体の話よりも、私が知りたいのはその個別アクションの〇〇〇〇〇の部分です。社内でとても話題になったし、製品の認知度も大きく上がって、ビジネスに繋がりましたよね。どのようにそのアクションを進めて、どのように成果に繋げたのか、具体的に教えて欲しいんです」

 

これは成功事例(ベストプラクティス)を学ぶ際に陥る、典型的な落とし穴です。

 

自働おそうじロボットのルンバの成功からも、このことを学ぶことができます。

ルンバを開発・販売するアイロボット社は、「ロボット技術を活かして、いい世界を作りたい」と考えたコリン・アングル氏が創業した会社です。

そして優れたロボット技術という強みを活かして、おそうじロボットを開発し、新たな市場を生み出して、大成功を収めています。

しかしアイロボット社は、ロボット技術をビジネスに繋げられずに、苦しんだ時期があります。実際、ロボット技術を活かした14個のプロジェクトを試行錯誤したものの、どれもお金を稼ぐことができずに失敗。成功したのがおそうじロボットだったのです。

ルンバを含めた十数個のプロジェクトを通じて、アイロボット社は、自社の強みであるロボット技術を活かした上で、その強みを必要とする対象顧客を絞り込み、顧客の課題をいかに解決してビジネスにつなげるか、いくつもの仮説を考え抜いて検証してきたのです。→詳しいことをお知りになりたい方は、こちらの記事を参照下さい

 

ルンバの大成功という結果だけを見ると、「なるほど、ロボット技術を活かして、自働おそうじロボットか。アイロボットも、良いところに目をつけたな」と思いがちです。そして多くのメーカーがルンバの成功を見て、この市場に参入していますが、この市場ではルンバがシェア3/4を独占しています。

私たちが学ぶべきは、結果である「ルンバという製品」ではなく、シナリオである「アイロボット社の考え方」ではないでしょうか?

同様に「ベストプラクティス」から学ぶべきは、個別のアクションではなく、どのような状況でどんなシナリオを考え実践したかという考え方です。

シナリオを持たずに個々のアクションを模倣しても、それはベストプラクティスではなく、言い方は悪いですが、単なる猿真似に陥ってしまうのです。

冒頭の事例でマネージャー氏が尋ねたのが「ルンバという製品の作り方」、本当に学ぶべきが「アイロボット社の考え方」というように考えると、おわかりいただけるのではないかと思います。

 

やや古い記事ですが、2012/10/10の日本経済新聞の記事「経営塾 業績回復に挑む(5)総括」で、一橋大学の楠木建教授が次のように書いておられます。

—-(以下、引用)—-

個別のアクションの正否は戦略のストーリー全体の中でしか判断できない。ストーリーの戦略思考からすれば、そもそも「ベストプラクティス」(最良の実践例)などというものはあり得ない。

—-(以上、引用)—-

「全体を流れるストーリー/シナリオがあって、はじめて個々のアクションの意味がある」という楠木教授のお考えは、私も同感です。

 

私たちは、即効性がある解決策を求め勝ちです。だから成功事例の個別部分を取り込もうと考えるのかもしれません。

しかし、世の中の成功事例から、そのような即効性がある解決策の部分を集めて取り込んでも、全体のシナリオの整合性がなければ、成果は挙がりません。

ストーリーを立ててシナリオを考えるのは手間がかかります。だからこそ、他社が容易には真似ができない差別化を図ることができるのです。

 

オムニマネジメント2015年9月号に連載第4回『仮説はあるか?検証しているか?』が掲載されました

一般社団法人日本経営協会様が発行する月刊オムニマネジメント2015年9月号に、連載「半歩深く考える仕事術」の第4回目『仮説はあるか?検証しているか?』が掲載されました。

オムニマネジメント201509号

「考えたことを、実行してみて、結果を検証した上で改善策を考え、また挑戦する」

この当たり前のことは、意外とできていません。

逆に、これをキッチリと行うことだけでも、大きな差別化を図ることができるのです。

 

今回はこの仮説検証について、「仮説はあるのか」「検証しているのか」の2つの観点で、次の4象限で事例をご紹介しながら整理してみました。

四象限201509

もしご覧になる機会がありましたら、お手にとっていただければ幸いです。