わずか20年で、マーケティングが必須科目になった理由

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最近、経営者やマネジメントの方々とお話しして、気がついたことがあります。皆様が異口同音に、こうおっしゃるのです。

「マーケティングの考え方を、一人一人の社員にもっと知ってもらいたい」

ほんの20年前は違いました。

私がマーケティングを学び始めたのも、ちょうど20年前。前職の日本IBM社員時代、マーケティング職に異動した時でした。当時はマーケティングはマーケティング専門職やマネジメントが学ぶものでした。専門用語も多く、とても苦労しましたが、一旦壁を乗り越えると、それまで仕事で苦労してきたことが「なるほど、そういうことだったのか!」とスンナリと腹オチして理解できるようになりました。

 

思えば、この20年で世の中は大きく変わりました。

世の中の変化が激しくなり、競争は厳しくなっています。競争に巻き込まれると、あっという間に価格勝負。この価格勝負から長期間抜け出せなくなると、人件費削減に迫られ、最後には待っているのは人員カット。こうなると会社は存続できません。

では、この状況をどのように乗り切るか?

激しい変化は現場で起こっているので、経営者やマネージャーはすべてはわかりません。だから経営者だけでなく、一人一人の社員が、競争に巻き込まれずに、お客様にとって自分たちが唯一の存在であり続けるように、考えて、実行し続けることです。

そのためには、常に自社ならではの強みを活かして、お客さんの心を掴むこと。そして現場の人たちに任せて、動きやすくし、競争から抜け出すことです。ここで役立つのが、「お客様が買う理由をいかに作るか?」というマーケティングの考え方です。

 

いまやマーケティングは「一部のマーケティング職やマネジメントが理解して進めればいい」というものではなくなりました。一人一人の社員が、目の前のお客さんの心を掴むために一人一人が知恵を出して、実際の行動に繋げていくために、「お客様が買う理由をいかに作るか?」というマーケティングの考え方を学ぶべき時代になったのです。

 

私自身、マーケティングを初めて学んだ20年前から、「マーケティングは、仕事に関わるすべての人に役立つものだ」と実感しています。

毎週お送りしているこのコラムやメルマガも、実に幅広い職種の方々に登録いただいています。現場のビジネスパーソンの方々も、「マーケティング戦略の考え方が必要だ」と実感しておられる現れなのでしょう。

最近、世の中でわかりやすいマーケティングの本が増えたのも、「マーケティングを理解したい」という幅広い人たちの強いニーズに応えるためなのでしょう。

 

私もその中で、一翼を担い、さらに新しい提言もしていきたいと思っています。

 

 

 

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お客様のお客様を、夢中にさせる方法

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「お客様目線に立て」とよく言われます。これは、言うのは簡単ですが、なかなか難しいことです。

さらに難しいのは、「お客様のお客様を、夢中にさせること」。

お客様の向こう側には、お客様がいます。

たとえば予備校の場合、お金を出すお客様は、ご両親。そのお客様のお客様は、高校生です。
あるいはおむつメーカーの場合も、お金を出すお客様はご両親。そのお客様のお客様は、赤ちゃんです。
または素材メーカーの場合、お金を出すお客様は、製品メーカーです。そのお客様のお客様は、製品の消費者です。

お客様が商品を買うかどうかを決めるのは、この「お客様のお客様」がどうして欲しいと思うことが決め手です。

 

日頃からそう考えていたら、「お客様のお客様を夢中にさせる」意味がわかる、とてもわかりやすい事例がありました。

1分間の短い動画です。

 

猫が夢中になっている紙は、猫用砂箱の替え砂を売るためのダイレクトメールです。

猫が夢中になっているのは、ダイレクトメール(DM)の表面に「西洋マタタビ」とも呼ばれるCatnip (イヌハッカ)というハーブを塗っているためです。イヌハッカには猫が興奮する物質が含まれていますので、DMが届くと猫はまっしぐらにDMに駆け寄り、飼い主がDMに気づくわけですね。

 

これはプロモーション施策として「お客様のお客様を夢中にさせる」事例です。

ほとんどのDMは、読まずに捨てられるのが実態。そこでこのDMでは、お客様のお客様である猫が何に夢中になるかを「猫の目線」で考え、猫へ直接メッセージを届けて、お金を出すお客様である飼い主に気づかせたわけですね。

 

これをプロモーション施策に留めずに、たとえば猫が商品である替え砂そのものに夢中になるように替え砂に西洋マタタビを混ぜたりして、商品そのものに猫が夢中になるようにできれば、素晴らしいですね。

 

 

 

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成功が生み出す慢心の罠。どうすればよいのか?

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仕事でいい結果が出たときは、気持ちがいいものです。

いまの最高にいい状態を迎えているのは、それまで地道な努力を続けてきたからです。「自分を褒めてあげたい」と思うこともあるでしょうし、仲間とともに「ここまでよく頑張ってきたなぁ」とねぎらい合うこともあるでしょう。

しかし多くの場合、次に起こる問題は、そんな時に密やかに仕込まれています。

まず当初の危機感が、失われます。
「この調子で続けていけば、大丈夫」という慢心が生まれます。
そして皮肉なことに、成功体験が、新たな挑戦の障害になってしまうのです。

 

では、どうすればいいのでしょうか?

 

常に新しい問題を探し続けることです。

たとえいま、順風満帆であっても、必ず何らかの問題があります。

それは未解決の問題だったり、それまで気がつかなかった新たな課題だったり、あるいはこれまで未開拓だったビジネスチャンスかもしれません。あるいは、うまく言葉にできないけれども、何となく心にひっかかるある種の変化かもしれません。

「成功が生み出す慢心の罠」に陥らないためには、それらの新たな課題を常に貪欲に見つけ出し、謙虚に対処し続けることが必要なのです。

さらにチームで新たな問題に対してどのように取り組むのかを話し合うことです。新たな問題は、慢心したチームを引き締めてくれます。

 

新しい問題が、次の成長を生み出すのです。

 

 

 

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今年の自分は、昨年・3年前・10年前の選択結果である

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いよいよ2016年も大詰め。

今年一年を振り返る時期になりました。
2016年、皆様はどのような1年でしたでしょうか?

今年1年の結果は、今年、自分が頑張った結果です。
同時に、過去に自分が考えて選択した結果の蓄積でもあります。

その選択とは、昨年末、3年前、あるいは10年前かもしれません。

 

私の場合、2016年は、マーケティングについて数多くの講演・研修を行わせていただき、また2冊の本を出すことができました。

改めて振り返ると、いまマーケティングで仕事をさせていただいているのは、IBM大和研究所の製品開発マネージャーだった18年前、マーケティングの「マ」の字も知らなかった当時の私が、「このまま製品中心に考えていては行き詰まる」と考えてマーケティング職に異動しようと決意した結果です。

異動直後の数年間は同期と比べて昇進も遅れ、開発部門の先輩からは「自分のキャリアをちゃんと考えているのか?」とアドバイスされ、「本当に異動は正しかったのか?」と悩みました。しかしこの数年間、マーケティングの世界で試行錯誤したおかげで今の私があるので、いまでは心から「正しい決断だった」と思います。

著作・講演・研修の仕事ができているのは、4年前に日本IBMの人材育成部長だった時に、退職・独立後のビジネスモデルとして、著作・講演・研修の三本柱を思い描き、3年半前に独立した結果です。

今年2冊の著書を上梓できたのは、編集者とのご縁をいただき、昨年末から2冊を出版すべく動いていたからです。

いい面だけをご紹介しましたが、実際には「ちゃんとできた」と思うこともあれば、「これは残念だった」と思うことも多々あります。

いずれにしても、2016年の自分自身は、よかったことも悪かったこともすべて、過去の様々な時点で、自分が考え、選択した結果の積み重ねです。

 

今年も本日12月27日を含めて、あと5日。

そして心機一転する正月を迎えます。

来年、3年後、10年後。

自分はどうありたいか。
どうあるべきか。

いま考え選択したことは、確実に来年・3年後・10年後に現実となります。

 

そんな自分の人生を考える上で、年末年始はとてもいいタイミングでもあります。

 

どうか、よいお年をお迎え下さい。

 

 

 

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たった一つの悩み事への対応が、「お客様が買う理由」に繋がる

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講演の後、こんなご質問をいただきました。

「実際に当社のケースを考えても、『お客様が買う理由』は色々と考えられます。
ひとつひとつ対応しなければいけないんでしょうか?」

確かにお客様のニーズには実に色々なものがあります。考え始めると、それこそ無数にでてきます。

お金も人も無限にあるわけではないので、無数にあるニーズに対応するのは不可能です。

 

ここで事例をご紹介します。米国のレンタカー業界の事例です。レンタカー業界はそれなりに成長はしているものの、ライバルのカーシェアリングが急成長していて、厳しい状況です。

レンタカー業界の視点で考えると、お客さんの色々な不満が考えられます。

・もっと車種を増やして欲しい
・もっと安くして欲しい
・もっと接客を丁寧にして欲しい
・….

こんな様々な不満の中で、切実なお客さんの不満がありました。

米国で出張するビジネスマンは、都市間を飛行機で移動し、空港に着陸するとレンタカーを借りて目的地へ移動します。

ここで問題になるのが、レンタカーを借りる際の手間と時間です。

空港からレンタカー事務所に立ち寄る
→ブースに並ぶ
→契約や保険内容を確認する
→免許証で本人確認をする
→色々な書類にサインする
→カギを受け取る
→車がある場所まで移動する…

これだととても時間がかかります。米国ビジネスマンも忙しいので、約束の会議の時間もあるので、気が気ではありませんよね。

 

米国レンタカー業界の老舗・ハーツは、「この手間を一気に簡略化すれば、お客様の不満を解決できる」と考えました。

そこで、

ネットでレンタカーを予約する (事前登録前提)
→空港に到着し、レンタカー事務所を素通り。駐車場に直行する
→駐車場脇の掲示板で自分の名前と駐車場番号を確認する
→鍵のかかっている車に乗り込む
→専用ゲートで係員に免許証を見せて確認すれば、駐車場を出られる

というようにしました。

ほぼ自分の車を使うのと同じ感覚です。

多忙なお客さんから見ると、貴重な時間も手間も大きく削減できるのはとても有り難いことですね。

 

見極めるべきポイントは、「お客様が本当に困っていて、少々高くてもいいからお金を払って解決したい」という課題を見つけることです。ではこのようなニーズを見つけるにはどうすればよいのでしょうか?

この事例は、日経ビジネス2016/10/10号の特集「顧客を依存させる 凄い囲い込み」に掲載されていた事例ですが、このシステムを担当したコンサルティング会社の社長は、このように言っています。

「レンタカーサービスで顧客が本当に喜ぶことは何かを突き詰めた結果、車種の拡充でも低料金化でも丁寧な接客でもなく、貸出手続きの簡素化以外にない、という結論にたどりついた」

ただ考えるだけでも、あるいはお客様に聞くだけでは、この答えは出てこないのです。

仮説を考えて、その仮説を持ってお客様に検証していく。

この繰り返しが必要なのです。

 

 

 

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自分たちの商品がコモディティ化している。どうすればいい?

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「『常にお客様の期待を上回り続ける』というお話し、その通りと思います。
ただ、我が社の商品の多くはコモディティ化しています。
成熟期から衰退期に入っている商品も多い。
今の自分たちの商品がコモディティ化している場合、どのようにすればよいのでしょうか?」

講演が終わると、ある方からこんなご質問をいただきました。

現代では商品寿命がとても短くなっています。1〜2年前まで売れ筋商品だったのに、ライバルが登場してあっという間に価格競争に陥り、急速にコモディティ化することもよくあること。コモディティ化は、多くの業界が共通に持っている切実な課題です。

「まったく同じことで悩んでいる」という方も、多いのではないでしょうか?

 

このご質問に、私は次のようにお答えしました。

コモディティ化した事業でも、必ずお客様の不満があります。
その中で、お客様が「お金を払ってでも解決したい」という不満を見つけて、解決することです。

たとえば「コメの販売」は、まさにコモディティ化した業界です。しかしこの業界に異業種から参入してビジネスを伸ばしている会社があります。アイリスオーヤマです。

実はコメには隠れた不満がありました。店で売られている白米は、玄米を精米してヌカを落とした状態で売られています。この白米の状態のまま空気に触れていると、酸化が進んでまずくなってしまうのです。

ちなみに我が家では、コメは必ず玄米で買っています。そして妻が玄米を自宅にある家庭用精米器で精米し、三分づきにした状態で炊いています。確かにこうするととても美味しく炊けるのですが、手間がかかるので普通はなかなかやりませんよね。

現実はどうなっているかというと、コメを売る方は「主食だから安く売ろう」と考えて、精米したコメをキロいくらの低価格勝負に走っています。買う方は5Kgとか10Kg単位で1ヶ月分をまとめ買いするので、家庭の中でコメの酸化が進んでしまい、味が劣化してしまうのです。

でも、本当はもっと美味しくできるはずですよね。

アイリスオーヤマは、この課題に挑戦しました。低温工場を作って玄米のまま保管し、需要に応じて精米します。包装は3合(450g)の小分けパックで脱酸素剤も入れて出荷します。家庭で炊く直前に開封するので精米直後の美味しい状態でコメの味を楽しめます。

10万円以上の高級炊飯器で酸化した高級米を炊くよりも、普通の炊飯器で新鮮な普通のコメを炊いた方が美味しいそうです。

 

このように、一見コモディティ化している業界でも、隠れたお客様の不満が必ずあります。気がつかずに酸化したコメを食べているように、それはもしかしたら、お客様も企業側も「当たり前なこと」として、受け容れていることかもしれません。だからこのような不満は、ただお客様に聞くだけではなかなか出てきません。

お客様の声や市場の状況を観察しながら、「お客様の隠れた不満は何なのか?」と考えることが必要なのです。

そして新たな発想や技術を活かして解決できれば、それはコモディティ化を抜け出す糸口にもなります。

そして常に謙虚な姿勢で、本当にお客様の不満があるのか、その不満を解決できるのか、そしてお客様が本当にお金を払うか、仮説検証を続けていくことが必要なのです。

 

ただ、時間が経てば他社も必ず追従してきます。
だから常に新しいお客様の不満を探し続けることが必要なのです。

もし「お客様の不満がまったく存在しない」ということであれば、対応は難しいでしょう。しかし現実には、そういうことはあり得ません。お客様は、必ず様々な隠れた不満を持っています。それを解決することが、商売のネタになり、さらによりよい世の中を創っていくことにつながるのです。

 

 

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「お客様のために…」と「お客様の目線で…」は、正反対

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商品やサービスを開発する際に、こう考える人は多いのではないでしょうか?

「お客様のために、こんな商品を作ろう」
「お客様のために、こんなサービスを提供しよう」

しかし「お客様のために」と必死に頭を捻って考えてもお客様が買わずに、想いをこめて開発した商品・サービスが消え去ることもまた、多いのです。

 

必要なことは、常に「お客様の目線で」考え続け、実践すること。

「お客様のために」と「お客様の目線で」は、一見すると大きな違いがないように思えます。しかし実は正反対なのです。

 

「お客様のために」と考える場合、まずお客様のニーズを想定して、「こんな商品やサービスを提供すれば買ってくれるはずだ」と考えます。しかしながら、そんな商品を本当にお客様が買うのかをキチンと検証しているケースは、意外と少ないのが実態です。

そして商品を販売し始めても、なかなか売れないことが多いのです。

 

「お客様の目線で」考える場合、「そもそもどんな商品やサービスを提供すれば、お客様のお役に立てるのだろうか?」と考えます。リアルなお客様ニーズを起点に考えるので、最初からニーズをキッチリと押さえています。その上で、そのお客様ニーズを満たす商品を作っていきます。

そして商品を販売し始めると、それを待ち望んでいたお客様が買ってくれるのです。

 

「お客様のために」は、お客様を上から目線で見ている。
「お客様の目線で」は、お客様と同じ位置でお客様を見ている。
そんなイメージです。

 

現実には「こんな商品やサービスを作りたい」という強い想いが商品作りの原動力になることも、多いものです。その強い想いは、とても大切なことです。

しかし「こんな商品やサービスを作りたい」という強い想いは、仮説です。仮説は検証が必要です。その強い想いを、「お客様の目線」でキッチリ検証する必要があるのです。

そしてとても難しいのは、「お客様の言いなり」でもいけないということです。

 

私たちは、お客様ニーズに大して常に謙虚であり続け、その一方でお客様が言うことを鵜呑みにすることもせずに、常に「お客様の目線」で、お客様のニーズを観察し続ける姿勢を失わないようにしたいものです。

 

 

 

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「これ、いったいどうやったら売れるんですか? 」の出版記念講演を行いました

昨日2016年11月2日(水)、ITmedia様の紀尾井町にある新オフィスで、「これ、いったいどうやったら売れるんですか? 」の出版記念講演を行いました。

企業の管理職の皆様を中心に、60名の方々がお集まりになりました。

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講演では、本書を書くことに至った私の会社員時代の原体験、本書のエッセンスや、本書で語りきれなかったことをお話ししました。

講演後の質疑応答では、企業のマネージャーならではの現実的な実務のご質問もいただき、充実した時間になりました。

 

実務で価値を創り、それをお客様に届けることが求められる会社員こそ、マーケティングのプロフェッショナルになることが求められていると思います。

本書が少しでも皆様のお役に立てればと願っています。

 

 

商品開発の成否は、チームの人選次第である

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「新商品の開発プロジェクトでは、どういう人を集めればいいのでしょうか?」

講演会が終わって質疑応答の時間、こんなご質問をいただきました。
皆さんは、どう思われますか?

かく言う私も、会社員だった頃、複数部門の人たちを集めてチームを作って仕事をすることがよくありました。今の仕事を始めてからはお客様のプロジェクトのチームにも入るようになりました。

そこで実感するのは、仕事が出来る人だけを集めても、知識や経験が豊富な人がいても、必ずしも上手くいくとは限らない、ということです。チームの人選はプロジェクトの成功を左右してしまうとても重要な問題です。

しかしツボを押さえれば、成功する可能性がグッと上がります。

そこで私は、このようにお答えしました。

 

私は、お客様の新商品開発プロジェクトのチーム実習に半年間入ることがよくあります。この実習は、5〜7名程度の1チームで進めます。その際、必ずお客様にお願いしていることがあります。

それは、「『ぜひこの実習に取り組みたい』という希望者だけでやりましょう」ということです。
そして、「絶対に、参加は強制しないでください」とお願いしています。

人が集まるチームは、まるで生き物です。

全員が「心からやりたい」と思って参加しているチームは、次々とアイデアを生み出して、難題も突破し、成長していきます。

しかし仮に一人であっても「やらされ感」を持って参加している人がいると、その人が黙ったまま何も発言しなかったとしても、チームのエネルギーは、まるでスポンジのようにその人に吸収されてしまうのです。

さらに全員が強制参加されたチームは、「いかに手間をかけずに半年間のプロジェクト実習をやり過ごすか?」がチームの暗黙の了解になってしまいます。皆さんも忙しい本来の仕事も持っていますので、これは責められません。

これはその人たちが悪いのではありません。人選が間違っているのです。

「心からやりたい」と考える人たちで進めることが、大切なのです。
「やりたい」と思っているから、アイデアも次々と出てきますし、少々の障害があっても乗り越えることができます。

 

商品開発プロジェクトの人選も、まったく同じです。

今年4月に出版した「そうだ、星を売ろう」でご紹介した阿智村の挑戦も同じです。温泉で長年発展していた阿智村は、宿泊客が低迷し、「日本一の星空ナイトツアー」を始めました。2012年、初日のお客さんはわずか3名でしたが、2015年は6万人を集めるまでに大きく成長しました。

この「日本一の星空ナイトツアー」も、最初は志を共有する数名で始めました。

プロジェクトの立ち上げ段階は、やることや課題が山積みです。いくらあっても時間は足りません。新商品開発プロジェクトは時間との勝負。反対派を説得する時間はありません。だから必要なことは、反対する人は最初から入れずに、志を共有する少数のメンバーで進めることです。

重要なのは、「意見が異なることはOK」ということです。異なる意見を話し合えば、一人だけでは思いつかなかったような様々なアイデアが生まれて行きます。しかし「これをやりたい」という志は同じであることが必要です。

 

新商品開発プロジェクトは、高度な知的作業です。そして人は、「やりたいことを、やる」時が、最も知的生産性を発揮するのです。

会社の中でも、複数部門の人が集まってチームを作り、期限を決めて商品開発プロジェクトを進めることが多くなりました。この時も、「これをやりたい」という人たちを集めると、成功する可能性がグッと高まるはずです。

 

 

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商品開発は、数字だけで判断してはいけない

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ある講演の質疑応答で、こんな質問をいただきました。

「マーケティングアプローチで新商品開発を進めようとすると、まずは調査して、その数字で判断する、というように、ともすると数字ありきで考え勝ちです。どういうところを気をつければいいのでしょうか?」

 

私は次のようにお答えしました。

実際にマーケティング調査をすると、ともすると膨大な情報と格闘しなければならないことも少なくありません。実は私自身、会社員だった頃に、マーケティング情報と調査結果の分析だけで、数ヶ月間を費やしたことがあります。

確かに数字で考えることは重要です。

しかしその上であえて申し上げたいのは、「数字はいったん忘れましょう」ということです。

 

新商品開発でまず把握しなければならないことは、「お客さんが本気で買おうと思うかどうか」です。
数字で考えるのは、その仮説を作り、検証するためです。
しかし新商品を立ち上げるかどうかを数字で判断しようにも、そもそも数字だけでは、どんな基準で判断するのかを決めるのは難しいものです。

たとえばある新商品開発を検討していて、その類似商品の普及率が現在3%とわかったとします。これをどう判断するか?

「まだ3%だから、可能性があるので、新商品開発をすべきだ」
「既に3%普及しているから、先行業者に追いつけないので、新商品開発は止めるべきだ」

数字だけで、新商品開発をすべきかどうかを判断するのは難しいですよね。
結局、本当にお客さんが買うかどうかは、実際にお客さんに検証してみないとわかりません。
だからまず数字で把握した上で仮説を作り、その仮説を検証しながら、確度を上げていくしかないのです。

たとえば、取引の聞き取り調査に基づいて「お客様はこんな課題がある」という仮説を作り、その仮説に基づいて試作品を作り検証するために取引先に持っていくと、それがきっかけでまったく新しい課題を掘り起こせることがよくあります。

リアルなお客様に聞き取り調査を行い、調査結果をチームで議論して仮説をチューンアップして、さらに試作品でお客様に検証することで、お客様も商品を開発する側も気がつかなかった新たな新商品のヒントが見つかるのです。

アンケート調査だけで判断していたら、このような新しい課題は見つけられないですよね。

 

だから私は、新商品開発ではこのような仮説を作るために数字を使うべきだと思います。

机上で数字だけで判断するのは危険ではないでしょうか。

 

一方で、数字で判断すべき分野もあります。

たとえば定点観測する場合、数字はとても重要です。景気動向とか、内閣支持率の推移は、まさにその典型ですね。私も、講演では必ずアンケート調査を行い、過去の講演と比較しながら、「今日、参加された皆様は満足されたか?どういう改善点があるか」を把握しています。

学校の試験で合格・不合格を判断する場合も、同様です。

これらは過去の豊富な数字の積み重ねがあるから、高い確度で数字で判断できるわけです。

 

しかし新商品開発は、逆に不確実性が高い分野です。

だからこそ、数字を把握した上で、数字だけで判断せずに、仮説を立てて検証することが必要だと思います。

 

 

 

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売れる商品作りは、習慣から生まれる

先週、ある企業様で半年間の仮説検証実習が終了し、最終報告会を行っていただきました。

各4チームから結果を報告いただいた後、私から、この仮説検証実習を今後にどのように活かすかをお話ししました。

仮説検証の考え方が身につくと、仕事のスピードは格段に上がり、お客様の課題を的確に把握できるようになり、売れる商品作りができるようになります。

そこで、お話しした内容を皆様と共有したいと思います。(お客様固有の情報は外しています)


 

皆様、

半年間の仮説検証実習、お疲れ様でした。

この実習では、まず仮説として「お客様が買う理由」を徹底的にチームで考え、その仮説を実際にお客様のもとで検証し、その結果を持ち帰って2週間毎にチームで議論しながら検証する、ということを半年間継続してきました。そしてその2週間毎に行うチームの議論には、私も参加しました。

当初は、皆様からはこんなご意見をいただきました。

・この頻度での仮説検証は、普段の仕事の数倍のスピードだ
・終わったと思ったら、あっという間に2週間経ってしまう。これはしんどい

一方で、この仮説検証実習を進めていくうちに、こんなご意見もいただきました。

・半年間かけて検討してきた事業企画の結論が、2週間で出た
・これまでになかったスピード感で仕事が進み、お客様から得られる情報も増えた
・チーム一体となった商品づくりの方法論が身についた

いまここで振り返ってみて、いかがでしょうか?

最初の頃、皆様はとても大変だったかと思いますが、今はこのやり方にだいぶ慣れて来た、と実感されていると思います。実際、すでにこの実習後も、各チームでは隔週で今後のチェックポイントの会議をスケジュールしています。

 

実はこれは、ジョギングと同じなんです。

ちなみに私もジョギングを日課にしてます。実は35歳になって急に腹が出てきたのがきっかけで、ジョギングを始めました。

それまでの私は、運動は大嫌いでした。

初めの頃は5分間、ゆっくりジョギングするだけで息が切れて、死にそうなほど大変でした。

ちょうどこんな感じでした。

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…実際には、私はここまではふくよかではありませんでしたが。(笑)

 

でも半年も続けると身体が慣れて、体脂肪も落ちて、1時間くらいは快調に走れるようになります。

こんな感じになります。

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…実際には、私はここまで格好良くありません。あくまでイメージです。(笑)

 

この隔週の仮説検証もまったく同じことです。要は「慣れ」であり、習慣なのですね。

最初は大変です。でも次第に慣れてきます。そのうち、「これをやらないとどうも落ち着かない」という状態になります。

そして大切なことは、個人ではなく、チームでこれを習慣にすることです。

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チームでこれが習慣になれば、それが次第に組織全体に拡がっていきます。そしてそれが組織文化になっていきます。

 

実は今回の実習で行ったことは、この写真にある雨粒を見つけることです。

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この雨粒ひとつひとつは、「お客様が買う理由」のヒントです。

実は「お客様が買う理由」のヒントは、この雨粒のように、私たちの身の回りに降り注いでいます。でもなかなか気がつきません。

この仮説検証実習は、この雨粒を見つけることが目的なのです。

 

そのために、この仮説検証実習では、

・お客様の「痛み」は、何か?
・どうすれば、解決できるか?

これをひたすら考えながら、

仮説を立てて → それをお客様に検証する

これを繰り返して来ました。

この仮説を検証して得た「学び」が、最大の差別化になる、ということも、皆さんは半年間を通じて実感されたと思います。

 

ただ、この仮説検証実習を終えて、ぜひ皆さんに忘れないでいただきたいことがあります。

 

せっかく「仮説検証」の考え方が身について、こうなっても、…

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サボると、あっという間にこうなります。(笑)

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ですから、皆さん全員が「ランナー」となり、実習後もぜひ仮説検証を継続していただきたいと願っています。

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最後に。

この仮説検証実習を通じて、私はひたすら「お客様から学びましょう」と言い続けてきました。

実はこの仮説検証実習を通じて、私自身も皆様からたくさんのことを学ばせていただきました。

皆様へのお礼の言葉で、終わりたいと思います。

 

本当に有り難うございました。

 

 

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「リスクを取らないこと」が、最大のリスク

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「新しいことをやるにも、そんな人がいないよ」
「そもそも、スキルがないし」
「だいたい、失敗した場合に責任が取れるのか?」

 こんな話をよく聞きます。

確かに組織やチームを預かる立場では、今の仕事をそのチームで回すだけでも精一杯。今の仕事だけでも大変なのに、その上で新しいことに挑戦なんて、ムリと思いがちです。

しかしお客さんも市場も、凄いスピードで変わり続けています。こんな状況で最大のリスクは、何も変わらないために、自分たちが取り残されて、賞味期限を起こしてしまうこと。いまや「リスクを取らないこと」が最大のリスクなのです。

 

たとえば馬車全盛期、自動車が生まれました。「当社の本業は馬車だ」と変化を拒んだ会社は急速に消滅しました。

写真フィルム全盛期にデジカメが生まれました。売上・利益の6割超を写真フィルムに依存してた富士フイルムは、変化を受け容れ、新たな挑戦をし、今も成長しています。一方で写真フィルム事業から脱却できなかった会社は消滅しました。

新しいことに挑戦しない限り、組織そのものが消滅してしまう時代なのです。

 

新しい挑戦には、必ずリスクはつきものです。

もしリスクがないとしたら、それは挑戦でも何でもありません。

何も挑戦しない段階でリスクばかりを議論し、ひたすらリスクを回避し続けていたら、新しいものは何も生み出せないし、ましては新しい価値なんて創れません。

 

だから真っ先に考えるべきは、まず「何もしない、やらない」「変わらない」という選択肢を捨てること。

そして「変わる」「新しいことをやる」と決めた上で、挑戦することです。

そして「こうすれば上手くいくのではないか?」という仮説を立てて、挑戦しながらその仮説を検証し、その仮説が間違っていたら、即座に仮説を修正すること。

「リスクマネジメント」という言葉があります。「リスクを徹底的に避ける」という意味に捉える方が多いのですが、本来はリスクを回避するのではなく管理するのが、リスクマネジメントです。新しいことに挑戦してリスクに出会ったら、それを避けるのではなく、正面から取り組み管理することで対応すべきなのです。

たとえば、「日本一の星空ツアー」で有名な阿智村で、拙著「そうだ、星を売ろう」で紹介しなかったエピソードがあります。

当初、「真っ暗な中でお客さんを連れて行くなってリスクだ」という声が多かったそうです。しかし実際にはそれ自体はライトアップを徹底する等で対応可能でした。実は誰も気がつかなかった最大のリスクは、雷でした。阿智村は雷多発地域。星空ツアーは真っ暗な中、15分ロープウェイで移動します。ロープウェイに落雷すると、ロープウェイは停止します。こういう状況になると乗客はパニックを起こすかもしれません。つまり真っ暗な中で乗客を乗せたまま、ロープウェイが落雷で停止するのが、最大のリスクだったのです。そこで阿智村は、雷発生30分前に雷を探知するシステムを整備し、雷を探知したらすぐに客を乗せるのを止め、すべての客が降りたらロープウェイを停止させるようにしました。つまりリスクは自分の管理下に置く。これがリスク管理の考え方です。

仮説を検証し続けて進化させ、そこで発生するリスクも管理し続けることが、学びの集積となり、それ自身が大きな差別化になるのです。

 

まず、「やる!」と決める。
そして、仮説を作る。
そして、その仮説を検証し続けるのです。

 

まずその一歩を踏み出せば、色々なことが変わってくるはずです。

 

 

 

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『これ、いったいどうやったら売れるんですか?』を出版します

 

来週2016年10月5日、新しい本を出版します。

『これ、いったいどうやったら売れるんですか?
身近な疑問からはじめるマーケティング』(SB新書)

うどんからきゃりーぱみゅぱにゅまで、
一発逆転の売る方法!

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アマゾンで予約受付中

 

マーケティングは、勉強したいと思いつつ、後回しになりがちです。
そこで、身近な事例でマーケティングが2時間で学べる、8つの話を収録。
モノを売る仕事をする人にとって、マーケティングの知識は必須です。
この1冊でマーケティングに親しめば、きっと明日からあなたの売り方は変わるはずです。

【目次】

第1章 腕時計をする人は少ないのになぜ腕時計のCMは増えているのか?
──「バリュープロポジション」と「ブルーオーシャン戦略」

第2章 人はベンツを買った後どうしてベンツの広告を見てしまうのか
──「顧客」と「ブランド」

第3章 雪の北海道でマンゴーを育てる?
──「商品戦略」と「顧客開発」

第4章 あの行列のプリン屋が赤字の理由
──「価格戦略」

第5章 なぜセブンの隣にセブンがあるのか?
──「チャネル戦略」と「ランチェスター戦略」

第6章 女性の太った財布には、何が入っているのか
──「プロモーション戦略」と「マーケティングミックス(4p)」

第7章 きゃりーぱみゅぱみゅは、なぜブレイクしたのか?
──「イノベーター理論」と「キャズム理論」

第8章 古本屋がふつうの本屋より儲かる理由
──「マイケル・ポーター5つの力」と「競争戦略」

 

実は今年7月~8月の2ヶ月間、朝から晩まで本書の執筆にドップリと漬かっていました。

身近な事例をエッセイ風に取り上げて、マーケティングを学べる本です。
軽くサクサクと2時間読めば、マーケティングのキモがわかります。

これまでの講演や研修の経験を反映した集大成です。
ぜひご一読を!

 

 

 

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「ウチは、特殊だから…」という錯覚

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こんな言葉をよく耳にします。

「ウチの業界は、特殊だから…」
「ウチの会社は、特殊だから…」
「ウチの部門は、特殊だから…」

この後に続くのが、次の言葉です。

「…だから、通り一遍のことをやってもなかなかうまくいかない」

これは半分正しく、半分間違っています。

 

正しいのは、「ウチは、特殊だから」という部分。

しかし、「ウチだけが特殊だ」というのは錯覚です。すべての業界、会社、部門は特殊なのです。自分の所属する組織だけが特殊で、他がすべて同じだということはないのです。

 

そして「通り一遍のことをやってもなかなかうまくいかない」というのも、半分正しく、半分間違っています。

確かにすべての組織が特殊なので、たとえば売上げが不振の場合に、「具体的にコレをやればすべて解決」という万能策はありません。状況に併せて対応策を考える必要があります。

一方で色々な業界のお客様と仕事をしていて、「共通している」と感じることがあります。

■会社は、顧客を満足させることが目的であること
■世の中も顧客も常に変化しているので、常に今やっていることを見直す必要があること
■そのためには、自分の強みは何で、ターゲットの顧客と課題を見極め、解決策を磨き続ける必要があること

お客様とお打ち合わせする際に、具体例を挙げながらこのようなことをお話しすると、

「全くその通りで、ウチも変わろうと考えています。具体的には………」

と、その会社の状況に深入りした議論が拡がっていきます。

①自分の強みを見極める
②その強みを必要とするお客様を見定める
③そのお客様の課題を理解する
④そのお客様が自社を選ぶために何をすればよいかを考える
→そしてさらにこれが正しいかをリアルなお客様に仮説検証して正解に近づけていく

というフレームワークをもとにお客様が買う理由を作っていくことは、王道なのです。

 

「ウチは特殊だから…」という言葉は、多くの場合、現在のやり方を変えることを拒否するための言い訳になっています。つまり気がつかないうちに、実は自分が変革の抵抗勢力になっているのです。怖いことですね。

 

一度、「ウチは特殊だから…」という先入観を外して見ると、色々なことが見えてくるはずです。

 

 

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カシオ情報機器様主催セミナーで講演しました

2016年9月7日、カシオ情報機器様主催の「法人開拓強化セミナー」で講演を致しました。

ベストセラー「100円のコーラを1000円で売る方法」の著者・永井孝尚氏も登壇!
カシオが提案する法人開拓強化セミナー

中小企業の経営者を中心に、多くのお客様が参加されました。

 

皆様からは、このようなご意見をいただきました。

■自社の強みについて営業の現場でお客様に伝えることが多いが、果たしてそれが本当にお客様が価値を感じる強みと言えるのか、再考する必要ありと感じました。事前に著書も読んでの参加でしたが、事例を元にした話が聞けて、非常に参考になりました。

■ニーズのサキドリを心がけ、社員にはモチベーション3.0の実現を図りたいと思います。大変参考になるお話しで勉強になりました。もっと知識を深めるために、ご著書を購読したいと思います。

■既存のメンバーで、今後の自社の強みを活かして生き残っていくための行動を起こしていかなければ、と思いました。IT市場の急激な変化の中で、「自社の強み」と、それを求めて下さるお客様を選び直す必要も感じており、肩を押してもらえたように感じました。

■事業計画を作成中でした。アプローチの仕方のヒントをいただきました。

■事例を元にわかりやすく説明いただきました。頭の中に具体的にイメージできました。話し方も参考になりました。

■まず”強み”を考えることから、ということはとても当たり前なのに再度気づかされた感じです。今後に役立ちそうです。

■お客様のニーズから新しいモノを作ろうとしていたので、この話を聞いて改めて考え直します。ありがとうございます。

■リピーター創出は当社の課題であり、問題意識が同じだったので理解がしやすかった。顧客の反応など、マーケティング論から整理できた。仮説検証はらせん、失敗から学ぶ、共感します。

 

ご参加下さった皆様、ありがとうございました。

 

知らない間に生まれている、ムリなムダ。どうすれば撲滅できる?

ムリムダ

人は誰でも、ムリなムダはしたくありません。
でも私たちは知らない間に、意外とムリなムダをしているものです。

たとえば私は以前、車を運転して、遊びや旅行によく出かけていました。

ふと気がつくと数年間、走行距離が毎年1000Km程度という時期がありました。引っ越しなどで生活パターンが変わり、いつの間にか車を使わなくなったのです。

不思議なもので慣れてしまうと、「将来、車が必要になるかもしれない」と考え、車がない生活に不安を感じるものです。

一方で車を持つデメリットも少なくありません。まず駐車場・保険・車検などの維持費。合計すると、毎月3〜4万円なので、家計には大きな負担です。運転すると事故リスクもあります。滅多に運転しないと運転技術も落ちるのでリスクも高まります。

結局10年近く前、思い切って車を手放しました。手放しても生活は変わりませんでした。むしろ車の維持費がなくなることで、家計は楽になりました。運転事故の心配もなくなり、精神的にも安心です。

つまり、以前の私は車を持つ理由があったのですが、気がつくと状況が変わり、知らない間に私はムリなムダをしていたわけですね。

 

これは個人の場合ですが、組織でも似たような状況がよくあります。

ほんの数年前、あるいは数十年前までは、必要だった仕事。今ではその必要性は消えたのに、相変わらず多大なコストと人員、時間をかけて行っている仕事は、意外と多いものです。これは私の車と同様、コストは発生しているのに価値を生まない、知らない間に発生しているムリなムダです。

外部の人間に指摘されて、「そう言えば、なんでこんなことをやっているんだろう?」と気がつくケースも少なくありません。先入観を持たない外部の視点でよく見えることも、内部にいるとなかなか気がつかないものです。

 

昔はその方法が正しくても、状況が変わると、やり方を見直すことが必要です。
身近な個人的なことであれば、自分の考え次第で直せますが、組織になるとこれがなかなか難しいのです。

まず「やり方が間違っている」ということを関係者が合意するのが、一苦労。
そして間違っていると認識できても、「昔の方法がいい」と思っている人も多いので、なかなか直せないのです。

 

会社組織の場合、ムリなムダを見つけるマジックワードがあります。

「その仕事って、お客さんにとって意味があるの?」

もしその仕事がお客さんにとって意味がないとすれば、見直しが必要なのです。

 

「顧客目線」は、使い古された言葉なのでつい忘れがちですが、常に持ち続けたいものです。

 

 

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失敗した時の考え方で、勝負は決まる

失敗

実は順風満帆に見える人ほど、色々と失敗しているものです。

実は失敗した時の考え方で、その後の展開は大きく変わるのです。

 

プロジェクトで失敗した時、どこで間違ったのかを確認して失敗した原因を見つけて、どうすればよかったのかを考えていくことで、自分しか持っていない「学び」が蓄積され、成功する可能性が高まってきます。

 

しかしプロジェクトに失敗しても、「ダメだったか。じゃぁ次だ!」と、どこが悪かったのかを反省せずに、次に進むこともあります。

あるいは失敗を認めないこともあります。しかしこれはせっかくの改善のチャンスを、みすみす手放しているようなものです。

さらに失敗の犯人捜しすることもあります。でも犯人捜しは意味がありません。多くの場合、失敗の真の原因は人ではなくやり方にあるからです。だから犯人捜しをする組織は、別の人が担当すると再び同じ失敗を繰り返したりします。

 

これでは学びは蓄積できません。

 

「失敗は成功の母」ですが、失敗しても学ばなければ、「失敗は単なる失敗」にしかなりません。

失敗した原因を掘り下げられるのは、実際にプロジェクトに関わった人たちだけです。

うまくいかないことがあれば、当初の仮説に立ち戻り、何が悪かったのかを謙虚に検証することが必要なのです。

 

 

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「お客様のために」と考えるから、失敗する

困っている人たち

 

「お客様のために、この機能は必要だ」
「お客様のために、これを売りにすればいい」

私たちはよくこのように考え勝ちです。
しかし、このように考えるから失敗するのかもしれません。

かつて私も、実際にそのような経験をしました。

製品開発チームで、「お客様のためにはこの機能は必要だ」と考えて、苦労してある機能を製品に追加しました。営業活動で頑張った末、幸いながら大規模展開をするお客様に購入いただきました。

お客様になぜウチの製品を採用したのか、お伺いする機会がありました。
驚きました。苦労して追加したその機能はほとんど評価されず、オマケで考えていた機能が高く評価されていたのです。

「お客様のために」と考えて苦労して追加した機能は、多くのお客様ではそれほど必要としていなかったのです。

本来、実際にどの程度お客様がその問題を切実に解決したいと思っているか、確認した上で、開発に入るべきでした。

 

「お客様のために」という考え方は、危険なのです。お客様に対して、押しつけているのです。
「お客様の立場になりきって」考えるべきなのです。

一見同じように見えますが、実はとても大きな違いがあります。

「お客様のために」という考え方は、お客様に一方的に押しつけている考え方です。だから相手にされません。

お客様の立場で、

→ 本当に「お客様のために」必要と考えたその商品は必要なのか?
→ 本当に、それでお客様の課題は解決できるのか?
→ もしかしたら、お客様の立場ではもっと必要なものがあるのではないか?

私たちはもっともっと謙虚に考えなければいけないのです。

 

 
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運をたぐり寄せる「幸運の式」

幸運の式

講演で成功事例をご紹介すると、こんなご質問をいただくことがあります。

「結局そのケースは、運がよかっただけなんじゃないんですか?」

この後には、

「…そうは言っても、現実は難しい」
「…そもそも、ヒトモノカネがないし…」
「…しがらみばかりで、とても大変だ」

というお話しが続き、がんじがらめで身動きが取れないという現実がヒシヒシと伝わってきます。

 

ご紹介する事例が、「運がよかった」というのは、まさにその通りです。

しかし、その運は偶然ではありません。必然なのです。
言い換えると、「運がよかっただけ」ではないのです。

 

本コラムをご覧になっている方は、日本経済新聞の「私の履歴書」をお読みになったことがあると思います。

「私の履歴書」に登場するのは、どなたも成功した方々。

ある人が、成功した人が成功した要因を特定するために、「私の履歴書」を分析したそうです。そこで、共通する言葉がありました。

「たまたま」
「その時、偶然」
「不思議なことに」

つまり成功した人は、確かに幸運をたぐり寄せているのです。

その意味では、「運がよかった」というのはその通りなのです。

 

しかし重要なのは、「運がよかっただけ」ではない、ということです。

成功した人は、単に待っていて運に恵まれたのではありません。実際に色々な行動を起こしています。それらの行動は、すべて成功するということはありません。必ず失敗を伴います。

しかし実際に行動すると、一見無謀に見えることであっても、そのいくつかは「たまたま」成功します。そしてその成功が次の成功を呼び込み、周りの人々からの共感が広がり、次第に大きくなっていくのです。

 

そこで「幸運の式」を考えてみると、こうなるのではないでしょうか。

幸運 = 行動した回数 × 成功の確率

つまり行動した回数が多いほど、幸運が訪れる可能性も高まります。さらに行動した回数が多くなると、経験も蓄積し、成功する確率も高まります。

成功した人が「運がよかった」のは、何らかの行動した結果なのです。

 

何も行動もせずに、他人の成功を見て「あれは運がよかっただけ」と言っている間は、決して成功は訪れません。

確かに、現実には色々な障害があるでしょう。しかしがんじがらめの状況の中でも、できることは必ず1つや2つはある筈です。

まずは一歩。それをやってみる。

 

そこから、色々なことが変わってくるはずです。

 
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ニーズをサキドリしても、お客様は満足しないんじゃないの?

無関心

ある講演会で、こんな話をしました。

「お客様が満足するのは、期待を大きく上回った時です。
 だからお客様の言いなりになっていては、期待は超えられません。
 お客様のニーズをサキドリすることが必要です」

すると懇親会である経営者の方から、鋭いご指摘をいただきました。

「『期待を超える』『ニーズをサキドリすべし』、どちらもごもっとも。でも正直、違和感もあります。
ニーズのサキドリと言っても、その時点でお客様はニーズに気づいていません。つまりそもそも期待がない状態で、お客様の期待を超えてお客様に満足いただく、というのは矛盾していませんか?」

とても重要なご指摘なので、当コラムでご紹介したいと思います。

皆様はどのように考えますか?

 

この方がおっしゃる通りで、他社に先駆けてニーズをサキドリした時点で、ほとんどのお客様はニーズを意識していないので、期待も持っていません。わかりやすく言うと、ほとんどのお客様が「これってナニ?」という反応をします。

しかしごく少数のお客様は、ニーズを意識しているものの誰も対応してくれないので、あきらめている状態にあります。わかりやすく言うと、「これで困っているんだけど、でも仕方ないか…」と思っています。

 

たとえば2002年、アイロボット社は自動お掃除ロボット「ルンバ」を世界に先駆けて開発し、市場に出しました。当時のお客様は、「掃除に手間がかかる」のは当たり前でした。ほとんどの人は「自動で掃除できる」ことは期待していなかったのですね。私自身、この時期にルンバを見て「これってナニ?」と思っていました。

しかし、「困った。何とかしたい」と考えているお客様がごく少数いました。たとえば大都会の共働きの夫婦。2人とも仕事で遅くなることも多いので、掃除をする時間をなかなか作れません。掃除のことで夫婦げんかをすることもあるそうです。ご本人たちからすると結構深刻な問題ですよね。「帰宅したら、キレイな床で迎えて欲しい」というのは、切実なニーズでした。

そんなところへ、アイロボット社は初代ルンバを投入し、大都会の共働きの夫婦に向けて、通勤時間帯に都内の電車広告を出しました。

このように「ニーズのサキドリ」とは、ごく少数のお客様が持っているニーズを理解してサキドリし、誰よりも真っ先に解決策をご提供することなのです。

 

市場に真っ先に解決策を提供する場合、それを待ち望んでいる少数のお客様にとっては「もしあったら、御の字」という状態なので、もともとお客様の期待値はそれほど高くありません。

2002年のルンバ登場時も、自動で掃除できる掃除機は存在していませんでした。
そしてニーズを持っているお客様も、現代と比較すると、ごく少数。
さらに当時のお客様の期待も、「とりあえず掃除できれば、助かる」という状況。現代よりもずっと低い期待値でした。

2002年、このような状況で世に出た初代ルンバは、現在の最新ルンバと比べて機能的に見劣りしていていましたが、それまで自動お掃除ロボットを知らなかった顧客のニーズをサキドリしました。そして低かった期待値を大きく上回る価値を提供することで、初代ルンバは高い顧客満足を生み出したのです。

その後ルンバは顧客に対して価値を高めていき、当初「これってナニ?」と思っていた私のような顧客も満足させるようになっていきました。

 

つまり、

(1) 大きな課題を持っている、少数のターゲット顧客に絞り込む
(2) ターゲット顧客の課題を理解し、最も大きな課題に対応する
(3) ターゲットの顧客に、解決策を提供する
(4) さらに顧客の課題を深く理解して解決策を強化していくとともに、その解決策を他の顧客に拡げていく

 これを愚直に繰り返し、「ニーズをサキドリし、期待を上回る顧客満足を生み出す」ことが必要なのです。

 

新商品開発の立ち上げ段階で、数多くのお客様をターゲットにすると、失敗します。
最初に必要なのは、お客様の徹底的な絞り込みなのです。

 

 

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「市場シェア5%獲得で50億円」は、あり得ない

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「市場規模は1000億円です。この新商品では、シェア5%獲得、売上50億円を狙っています」

新商品を企画しているというその方は、このようにおっしゃいました。

「ターゲットは、どんなお客様なのででしょうか?」
「色々なお客様がいるので、幅広くやりますよ。1000億円市場の5%です。売り込みを頑張れば、何とかなるかなと思っています」
「実際のところ、うまくいっていますか?」
「そこをいわれると厳しいですね。この2年ほど頑張っていますが、なかなか広がりません」

実はバブル期の25年前、私も同じ発想で商品企画を立てていたことがあります。販売活動は大変でしたが、そこそこの売上を達成できました。

しかし現代では、この考え方で新商品開発を進めても成果は出ません。現代のお客様は昔よりもわがまま。ニーズが多様化・細分化していて、お客様の要求レベルも高くなっています。

「市場シェア5%獲得」という目標が問題なのではありません。「シェア5%獲得が目標だから、幅広く販売すればいい」と考えるのが問題なのです。

これは「ターゲットのお客様とそのお客様の課題が、よくわからない」と言っているのと同じだからです。言い換えれば、目的地の地図を持たずに、初めて行く目的地に車を運転して向かっているようなものなのです。

 

時代は大きく変わってきました。

生産志向の時代:「作れば売れる」→力を持つのは、自社工場

製品志向の時代:「よき製品が売れる」→力を持つのは、製品開発チーム

販売志向の時代:「売り込めば売れる」→力を持つのは、自社営業

「市場シェア5%を獲得すれば、50億円」という考え方は、「製品志向」「販売志向の時代」までの発想です。
しかし「販売志向の時代」は既に終わり、時代はさらに変わっています。


顧客志向の時代:「顧客が欲しいものが売れる」→力を持つのは、顧客

社会志向の時代:「社会によきものが売れる」→力を持つのは、社会

 

売ろうとしてもなかなか売れないのが現代。こんな時代に、「どのような顧客が、どんな課題を持ち、どんな商品を必要としているか?」という具体的なシナリオを持たずに、「市場シェア5%を獲得すれば50億円」と考えて、お客様の課題に対する理解が浅いままで幅広いお客様に次々と売り込みを図っても、成功する可能性はほとんどありません。

 

ターゲットとなるお客様のプロフィールと課題を具体的に考える。
「これまで満たされていなかった、どのようなお客様の課題を解決するのか?」という視点で考え抜く。

そして、本当にターゲットとして想定したお客様がいるのか。
そのお客様は本当に仮説通りの課題を持っているのか。
そして解決策は正しいのか。

これらをリアルなお客様で検証し続けることが必要なのです。

そして、ターゲットとして考えたお客様の期待を大きく超える満足を提供することで、高い価値を生み出すのです。

多くの場合、仮説は大きな修正が必要です。そしてリアルなお客様から得られた学び自体が、自社の大きな差別化要因になるのです。

 

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御社の新商品開発は、3〜4倍高速化できる

ビジネス・スピード2

「商品企画がなかなか進まない」
「どんな新商品を作ればよいか、さっぱりわからない」
「開発チームに任せているが、全然進まない。何をしているんだろう?」

新商品や新規事業開発で、このようにお悩みの担当者やマネージャーは、少なくありません。

私も20年以上新商品開発に関わってきました。当初、同じ悩みを抱えていました。「こんな商品を作る」という大まかなコンセプトがあっても、それをなかなか具体的な形に落とせない。さらに新商品開発に関わる多くの関係者との合意形成も大変です。

しかし現在は、かなりのスピードで新商品開発を進められるようになりました。かと言って、徹夜したりしてアクセクと仕事をしているわけではありません。むしろ端から見ると、割とゆったりと仕事をしているように見えていることが多いようです。

この経験を活かし、弊社では「新規事業開発ご支援」を企業様にマーケティング実習の形でご提供しています。参加されたある企業様の社員の方々からは、「仕事のスピードが3〜4倍速くなった」という感想もいただいています。

以前と同じ会社、同じメンバーで新商品開発に取り組んでいるのに、なぜ急にスピードが速くなるのでしょうか?

 

それは、マーケティング的な考え方に基づいた仮説検証プロセスを徹底しているからです。

新商品開発プロジェクトがなかなか進まないのは、「何をすればよいか」が決められないから。「決める基準」がないために、決められないのです。

そこで「新規事業開発ご支援」では、最初に私も参加してメンバー同士で議論を徹底し、短時間で「お客様が買う理由」を仮説として作ります。この際に、参加しているチームメンバー主導で議論をしながら、

(1)我々の強みは何か?
(2)その強みを必要とするお客様は、誰か?(ターゲット顧客)
(3)そのお客様は、何を必要としているのか?(顧客の課題)
(4)そのお客様は、どうすれば我々を選んでいただけるか?(解決策)

これらを仮説として作ります。

その上で、メンバーで実際にお客様に会ったり、必要な調査を分担して行いつつ、この仮説を検証していきます。お客様に検証すると、多くの場合、新たな学びが得られます。そこで学びを元に新しい仮説に進化させていきます。

仮説検証のために必要なアクションをメンバーで合意しつつ、高頻度で回すので、お互いに最新の仮説と検証結果を共有でき、「お客様が買う理由」の仮説を高スピードで進化させることができるのです。

完成度が高い「お客様が買う理由」ができれば、どのような新商品を作ればよいかが明確になります。

さらに「お客様が買う理由」の最新版をマネジメントや他部門と共有することで、新商品開発の最新状況も見える化できます。「チームに任せているが、全然進まない。何をしているんだろう?」という経営者やマネージャーの悩みもなくなります。

また、このプロセスを通じて仮説検証プロセスを参加した社員の方々が身につけることで、その後の新商品開発も迅速に進めることができるようになります。

 

では、仕事のスピードが速いと、何がよいのでしょうか?大きく分けて3つの理由があります。

■業界内の競争に勝てる: 多くの場合、現在の業務スピードは同業他社のライバルと同等です。ライバルの数倍速く動くだけで、ライバルの機先を制して、競争に勝てる可能性が格段に高まります。これは経営者にとってとても大事なことですね

■より多くの仕事がこなせるようになる: 常に数倍のスピードで動けるようになれば、チームで複数の新商品開発を並行して実施できます。部門を預かるマネージャーにとって、部門でこなせる仕事が増えるのは重要です

■仕事が早く終わるので、プライベートが充実し、心身ともに健康を保つことができる: これは個人にとっても見逃せないメリットです

 

私自身、前職の日本IBM社員時代に、個人として、そしてマネージャーとして、この仮説検証プロセスを実施してきました。実際に、人材育成部長として部門の業績を上げつつ、社内の他の業務もこなす一方で、残業はゼロでした。さらにプライベートでは毎年数冊の本を執筆していました。私自身、この仮説検証プロセスを実践し、その威力を体験しています。

 

スピードは、全てを癒やしてくれるのです。

 

 

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「お客様が買う理由」を作るカギは、すぐそこにある

鍵

講演やワークショップで、よくいただく質問があります。

「新規事業に取り組んでいますが、なかなか立ち上がりません。『お客様が買う理由を作ろう』と言われても、ヒントがありません。困っています」

こんな時、私は採用実績と採用したお客様の採用理由をお伺いするのですが、なかなか立ち上がらないケースでは、共通点があります。

ある程度の期間、新規事業に取り組んでいるので採用実績は数件あることが多いのです。しかし採用したお客様がなぜ採用したのか、具体的に把握できていないのです。「実際にお客様には会ったことがない」という場合すらあります。

そこでこんなご提案をします。

「実際に採用したお客様に会って、どのように使っているのかお話しを詳しく聞いてみると、色々なヒントが得られるかもしれませんよ」

そして実際にお客様に会ってみると、お客様は「いやぁ、大きな課題があってね。色々な商品を試してみたんだけど、これを解決できるのはオタクの商品しかなかった。だから採用したんだ」とおっしゃることも多いのです。

つまり、自分たちが想像もしなかった使い方をしているのですね。

 

よくご紹介する事例は、業務用ミラー最大手のコミーが、業務用ミラーを手がけるようになったきっかけです。

40年ほど前、コミーは看板業を営んでいました。ある日、コミーは凸面ミラーを両面に貼り合わせて天井から吊してクルクルと回転させる「回転ミラー」を作り、商品展示会で出展しました。すると1個数万円もする商品にも関わらず、あるスーパーから30個もの注文が来ました。

数ヶ月後、そのスーパーでどのように使われているのかを見に行ったところ、店内の至る所に回転ミラーが吊されていました。なんと万引き防止用に使われていたのです。

万引きで倒産する店もあります。スーパーにとって万引きは死活問題。コミーの回転ミラーは、万引き防止に役立っていました。

これがきっかけで、コミーは業務用ミラーという市場があることを知り、様々な業務用ミラーのメーカーに成長していきました。

 

このコミーのような話は決して例外ではないことを、私は企業のお客様と一緒に新商品開発に関わりながら実感しています。

新商品を採用するお客様は、リスクを取るタイプのお客様です。このようなお客様は、何か大きな課題に直面すると、様々な商品を試した上で、ベストな解決策を見極め、採用します。そしてコミーが当初、回転ミラーが万引き防止用で使えるとは想像もしなかったのと同様、商品を作っている立場ではまったく気がつかなかったヒントを教えてくれることも多いのです。課題を持っているのはお客様だからです。

お客様が買わなかった理由は、高かった、機能が合わなかった、買いにくい、何か気に入らない…、それこそ無数にあります。これらを一つ一つ追いかけるのは大変ですし、買わなかった理由を1つずつ潰していっても、徒労に終わることが少なくありません。

一方で、お客様がお金を出して買った理由は、必ずあります。理由がないのにお金を出す人はいません。何らかの課題を持っているのです。そこを徹底的に掘り下げれば、大きな発見に出会うことも多いのです。

 

「お客様が買う理由」を作るカギとなるお客様の課題は、実際に買ったお客様のところにあるのです。

実際に買ったお客様から、学ぶようにしたいものです。

 

 

 

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阿智村で、講演をしました

2016年5月31日、「そうだ、星を売ろう」の舞台・阿智村で、JTB協定旅館ホテル連盟様の研修があり、この中で『「そうだ、星を売ろう」 阿智村から学ぶ、「コト」発想への変革』と題して講演を致しました。

阿智村講演20160531

参加者合計約60名。全国から日々「いかにウチの地域を活性化していくか?」とお考えになっておられるリーダーの皆様が参加され、質疑や議論も活発でした。

当日の夜、「日本一の星空ナイトツアー」の体験会もありました。残念ながら曇り空でしたが、そのおかげでスターガイドで星が見えない日にどのように対応しているかがよくわかる体験会となりました。

2日間を通したJTB様のワークショップもあり、とても充実した内容でした。

 

参加された方々からいただいた感想の一部をご紹介します。

■地域主導で考えていた傾向があり、お客様が求める、買う理由が足りなかった。今回の講演で勉強になりました。

■一番印象に残ったのは、PDCAは円ではなく、らせんということでした。人の成長が企業の成長、そして地域の成長ということを学ばせていただきました。

■物事を変える手順を間違ってきた気がします。きちんとしたステップを踏んで変化させたい。

■プロセスが時系列でわかりやすく説明していただいたので、非常にわかりやすかったです。今後、8段階のプロセスを念頭に置きながら、地域とコミュニケーションを図っていきたいと思います。

■ターゲットの見極めやチーム作りなど、すぐにでもとりかかりたくなりました。ありがとうございました。

■知育づくりの前に、自社の社内改革にあてはめた時、非常に参考になった。是非、ジョンコッターの8段階プロセスに沿って、社会改革を進めたい。

 

このような機会をいただき、感謝致します。

 

 

「お客様が買うかどうか」は、誰も教えてくれない

迷い

 

「永井さんが言っていた『お客様が買う理由』、自分なりに考え抜きました」

その方は一枚の紙を持ってきました。

「お墨付きをいただいたら、会社に戻って、ヒトモノカネを投入してすぐに全社展開します」

「自分の会社をもっと良くしたい」という誠実で真摯な想いがヒシヒシと伝わってきます。ただ、この方法だと、必ずしもうまくいくとは限らないのです。

 

「お客様が買う理由」は、次のように考えていきます。

・自分たちの強みが、何なのか?
・その強みを必要とするお客様が、本当に存在するのか?
・そのお客様が、本当にその強みで解決できる課題を持っているのか?
・そしてそのお客様が、その解決策で本当に我々を選んでくださるのか?

これを考え抜いたのは素晴らしいことです。

しかし仮に実績豊富で超優秀なコンサルタントがいて、お墨付きを出したしても、必ずしもうまくいくとは限らないのです。「お客様が買う理由」は、あくまでも仮説。その仮説が正しいかどうかを決めるのは、リアルなお客様だけだからです。

特に変化が激しい時代は、ほんの短い期間で顧客ニーズが激変することもあります。ですからこの仮説が本当に正しいのか、リアルなお客様で検証し続けることが必要なのです。

 

ほとんどの場合、仮説通りには進みません。修正に次ぐ修正が必要です。

うまくいかない時、「まったくダメだ。ゼロからやり直しだ」と考え勝ちですが、ここで大切なのは、ゼロから考えるのではなく、当初の仮説に一度立ち返り、どこが悪かったのかを考えること。

・自分たちの強みの定義が間違っていたのか?
・ターゲットのお客様の設定が間違ったのか?あるいは絞り込みすぎているのか?
・想定していたお客様の課題把握が間違っていたのか?
・課題把握は正しいが、解決策が適切ではないのか?

「お客様が買う理由」は、一見シンプルに見えるので、ともすると簡単に作れそうに思えます。しかし完成させるためには、リアルなお客様に対して、上記の試行錯誤の繰り返しが必要なのです。そしてうまい組み合わせが見つかっても安心できません。時代とともに、賞味期限が切れるからです。変化対応が常に必要なのです。

 

このように考えると、冒頭のやり取りで何が問題なのかがわかるのでないでしょうか?

「お客様が買う理由」が正しいかどうかを決めるのは、お客様だけです。

そしてその答えを見つけて検証するのは、その事業のことが一番よくわかっている自分自身です。どこかにいる第三者ではありません。

私は、その答えを見つけようとする人たちと同じ道を一緒になって歩いて答えを見つけ、そしてその後は、その人たちが独力で歩けるようにご支援したいと考えています。そこで弊社ではこれを企業のお客様に半年間の新規事業開発実習としてご提供しています。

 

「リアルなお客様の反応」という事実に対して、私たちは常に謙虚でありたいものです。

 

 

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新規事業では、ストライク球に集中、ボール球は見送るべし

ストライク

 

「お客さんにご紹介すると、興味を持つ方が多いんです。でも『採用実績は?』とか、『本当に大丈夫?』とか聞かれて、どうも真剣に考えているように見えないんですよね」

その人は、新規事業立ち上げに挑戦中。なかなか案件が進まず、悩んでいるようです。

新商品や新サービスを立ち上げる際、私たちは「こんなの、今までにない。きっとみんな興味を持つはずだ」と思いがちです。しかし「興味は持たれるものの、なかなか売れない」という現実に突き当たる人はとても多いのです。

私もIT業界で色々な新商品立ち上げに関わってきましたが、まったく同じ経験をしてきました。斬新な製品に興味を持つお客様はとても多いのですが、その中で実際に採用にするお客様は意外なほど少ないのです。

なぜこんなことが起こるのでしょうか?

 

この現象を説明する理論があります。「イノベーター理論」です。
まったく新しい商品が発売されると、必ず次の顧客グループの順番で採用が進んでいきます。

 ①イノベーター(全体の2.5%)…新しいモノに真っ先に飛びつく
→②アーリーアドプター(13.5%)…「役立つ」と思うと、リスクを取り採用する
→③アーリーマジョリティ(34%)…「リスクはないぞ」と思ったら、採用する
→④レイトマジョリティ(34%)…「使わないと困るな」と思ったら、採用する
→⑤ラガード(16%)…なんだかんだ言って、最後までなかなか買わない

顧客全体をこのように整理して考えると、冒頭の「興味を持つけど、なかなか買わない」のは、③の「アーリーマジョリティ」以降の顧客であることがわかると思います。このグループの顧客は、リスクがあるものには決して手を出しません。実際に買うのは「使っている人が既に存在しているから、リスクはない」とわかった後。その人たちが、全体の実に84%もいるのです。見込客が10人いたら、8人以上がこのタイプです。

言い換えれば、この人たちに新商品の良さを一生懸命になって売り込んでも、まず採用しません。念頭にあるのが「リスク回避」なので、最初に聞いてくるのが「採用実績はあるのか?」。しかし新商品はそもそも採用実績がほとんどありません。話はすれ違う一方で、商談がなかなか進まないのです。

商談を野球にたとえると、バットを振ってもヒットにならないボール球。全体の実に84%もあるのです。

 

ヒットを打つには、ストライク球に狙いを絞ること。つまり、①の「イノベーター」と、②の「アーリーアドプター」を狙うことです。このグループの顧客は、新商品が役に立ち、「これで他社と差別化できる」と考えれば、ある程度のリスクを取って採用します。「採用実績がない」ことは、この人たちにとっては朗報でもあります。他社と差別化できるチャンスだからです。

しかしこのストライク球は、全体の16%しかありません。

 

では、ストライク球はいかに見極めればよいのでしょうか?ポイントはいくつかありますが、個人的な経験では…

□ 採用実績を気にする顧客のほとんどは、③〜⑤のグループ(=ボール球

□ 採用実績はほとんど気にせずに、むしろ「何ができるか」を気にするのは、①〜②のグループ(=ストライク球

このように指摘されると、「ああ、自分の経験でもそうだ」と感じる方も多いのではないでしょうか?

私もマーケティングを学び始めた時、イノベーター理論でもまったく同じことを指摘していることを知り、「なるほど!」と思ったことをよく憶えています。実務の経験と理論が結びつくと、とても腹オチしますね。

 

新商品立ち上げは、まさに時間との闘い。ストライク球に集中したいものです。

 

 

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「100万社のマーケティング」に寄稿しました

宣伝会議が発行している季刊「100万社のマーケティング」2016年夏号に、記事「今、注目の手法&用語:イノベーター理論とキャズム理論」を寄稿しました。

100万社のマーケティング

知っているようで意外と知られていない「イノベーター理論」と「キャズム理論」について、テスラなどの電気自動車、浅田真央選手で有名になったエアウィーヴ、セールスフォース・ドットコムなどの事例を挙げながら、4ページでわかりやすく解説しています。

よろしければご一読ください。

 

 

 

 

失敗という選択肢はない。だから新しい挑戦なんてできない

失敗2

研修や講演で、こんなご質問をよくいただきます。

「『お客様が買う理由を作ろう』ということですが、今の仕事を抱えて余裕もありませんし、新しい挑戦で失敗するわけにもいきません。結局、今の仕事の延長線上でやるしかないのが現実なんですが」

このようなご質問、とても多いのです。

「失敗という選択肢はない。だから新たな挑戦はできない」ということですね。

 

しかし失敗は、本当に悪いことなのでしょうか?

2016年5月10日の日本経済新聞に、ロケットの海上回収に成功した起業家イーロン・マスク率いるスペースX社のことが書かれています。

—(以下、引用)—

「失敗という選択肢はない (Failure is not an option)」。46年前、酸素タンクの爆発事故に見舞われたアポロ13号を無事に帰還させ、「伝説の飛行管制官」と呼ばれた米航空宇宙局(NASA)のジーン・クランツ氏は、2000年に出版した回顧録にこんなタイトルをつけた。

宇宙開発の重みと厳しさを表す言葉としてNASAでは今も好んで使われるが、マスク氏のとらえ方は違う。「失敗という選択肢はないというばかばかしい考え方がNASAにはあるようだが、スペースXでは失敗は選択肢の一つだ。何も失敗していないとすれば、十分にイノベーションを起こしていない証拠だ」。05年の米誌のインタビューでこう語っている。

–(以上、引用)–

従来ロケットは使い捨てでした。イーロン・マスクはロケットを回収することで、打ち上げ費用を1/100にすることを目指しています。そして実際に、彼はロケットの海上回収に成功するまで4回失敗しています。学びがあれば、失敗は素早く成功へ到達するためのステップになるのです。

 

イーロン・マスクは海の向こうの話ですが、同じように素早く成功に到達するために、失敗から学ぶ事例は身近にもあります。

先日上梓した「そうだ、星を売ろう」の舞台である長野県・阿智村でも、世界初の「星空エンターテイメント」への挑戦で、この失敗から学ぶプロセスを繰り返しています。この「星空エンターテイメント」は星が見えない日も行っています。失敗からの学びを通じて、星が見えない日でもお客様に喜んでいただいているのです。

とは言え、失敗して大きな問題になると困ります。そこで本書では「失敗から学ぶための3ステップ」をご紹介しています。

・新しいことを試す。ただし、挑戦に失敗はつきものであると覚悟しておく

・失敗しても大きな問題にならないようにする。実験規模を見極めギャンブルを避ける

・失敗を失敗と認める。失敗を認めなければ、学ぶことはできない

このためには、「失敗から学ぶ」文化が必要です。「失敗という選択肢はない。だから新たな挑戦はできない」と考えから抜け出せない会社は、「失敗から学ぶ」という原体験が必要になります。つまり仮説検証からの学びがいかに価値があるかを体験することです。

 

組織のトップが「失敗から学ぶ組織にしたい」と思っているのであれば、たとえばマネジメントの同意のもとで社内から有志を募り、期間限定で小さなプロジェクトチームを作り、経験者も入った形で仮説検証ワークショップを通じて新商品開発に取り組み、小さな成果を生み出し、「失敗をみとめ、失敗から学んでいく」スタイルを時間をかけて広げていくのも、一つの方法です。

私自身、実習をご提供する立場で、実際にお客様のプロジェクトに入る機会を多くいただいています。

 

「失敗という選択肢はない。だから新しい挑戦なんてできない」

この考えから抜け出すことが、企業で新たな価値を生み出す第一歩なのです。

 

 

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自己犠牲で良い物を安く提供。それは「美談」か?

お菓子

先日テレビ番組で、ある菓子店が紹介されていました。メーカーのエンジニアをしていた方が一念発起し、独立して開店した、単品のお菓子を売る店です。

この方は、「美味しいお菓子を、お客さんが負担なく買えるように、1個200円以下で売りたい」と考えました。市価の半額程度です。

美味しいお菓子を作るためにレシピを考え抜き、沢山の数を作っては試行錯誤を重ね、腕を磨きました。さらにコストを削るために、店舗は駅から遠い物件を借り、人は雇わずに朝から1人で作り続け、包装の無駄も徹底して省きました。

そして1個180円、1日200個限定で夕方から販売開始。美味しい上に安いので、不便な場所にあるにも関わらず、開店前からお客さんが行列して10個単位で購入。開店後わずか1-2時間で売り切れです。出遅れたお客さんは「えー、もう品切れなの?」 残念そうです。

一方で徹底コスト削減しているものの、この店だけでは生活費は十分に賄えない状態です。そこで週2回、別のバイトで生計の足しにしています。曰く、「売上や規模は追いたくない。お菓子作り、バイト、自分にとっては両方とも大切なものだから」

番組キャスターは「いい話だ。生き様を見た。ジーンと来た」と感動していました。

 

皆さんはこの話、「自己犠牲で安くて良い物を提供か。美談だなぁ」と思いますでしょうか?

色々な価値観や見方があると思います。しかし率直に申し上げて、私は「美談」とは感じられませんでした。

 

この美味しいお菓子を作ることができるのは、この人だけです。朝から1人で200個作り、180円で提供しているのは、素晴らしいこと。しかし儲かりません。

180円のお菓子が200個売れているのですから、1日の売上は3万6千円。週2回は他のバイトなので、1ヶ月20日営業として月間売上はおそらく72万円。材料費・人件費・賃料は不明ですが、生計のためバイトする必要があるので、おそらく自分の人件費も利益もギリギリなのでしょう。

確かにバイトの仕事も大切です。しかしそのバイトは、この人以外でもできる人はいるでしょう。そしてこの人がバイトをしている間、その美味しいお菓子は作れませんから、お菓子を待つお客さんに価値を提供できません。

一見、自己犠牲を払いお客さんに安く提供すべく献身的に奉仕しているように見えます。しかしあえて厳しい言い方をすれば、「いいものを安く提供している」という状況に自己満足しているように思えてならないのです。

「生計を立てるために週2回バイトをする」というこのやり方で、本当に継続性あるお菓子作りができるかも、疑問です。

 

この方は「人は雇いたくないし、売上や規模は追いたくない」とおっしゃっています。そのお考えを理解した上で、より多く売ることを考えてみます。

たとえばスタッフ増強で、毎日180円のお菓子を500個作って売ると、1日の売上は9万円。バイトを止めて週1回休みで1ヶ月25日営業として、月売上225万円。売上3倍で、提供できるお菓子の数も3倍です。繁華街で賃料が上がる物件を借りてより多くのお客さんに美味しいお菓子を提供できるし、増強したスタッフを雇う余裕が出ます。さらにお金に余裕ができ、同じ価格でもっと美味しい菓子を作れる可能性もあります。何よりもご自身がバイトで生計を立てる必要もなくなります。

人により、価値観は様々です。「良い物を安く提供したい。でも人を雇わず1人でやりたい。より多くより大きくという発想はしたくないし、売上や規模は追いかけたくない」と考えるのは、あくまで個人の自由。

しかし一方で、「良い物を安く(でも儲からない)」という「ものづくり発想」から、「お客さんを幸せにする(なおかつ儲ける)」という「マーケティング発想」に切り替えれば、より多くのお客様に幸せを、継続的に提供できます。

適度な儲けは悪ではなく、ビジネスを継続させ、お客さんにさらに価値をお届けして幸せにするための手段です。

 

そのためにも、マーケティング発想が浸透すれば、日本はもっと楽しく、よい社会になるのではないかと、改めて思いました。

 

 

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ジェイカレッジで出版記念講演会を行いました

2016年4月28日、日本IBM社員時代からお世話になっており、尊敬するジェイカレッジ校長・松山真之助さんの企画で、「そうだ、星を売ろう」の出版記念講演を行いました。

直前のご案内で、しかも休日前の夜にも関わらず、多くの方々に参加いただきました。

ジェイカレッジ20160428

 

講演では、阿智村の取り組みを中心に、「お客様が買う理由」の作り方、検証の方法、変革の考え方、個人の働く意味などについてお話ししました。

 

アンケートでも色々なご意見をいただきました。

■ご著書のストーリー性と講演の臨場感で、複層的な学びを得ることができました。HPも拝見していていたので、「お客様が買う理由」を見つけることの重要性、本質を深く感じることができました。ありがとうございました。

■単発コンサルティングでは再現性がない。研修でワークショップを行い、5〜7名のグループで強み探し、ターゲット顧客特定を議論して5分発表、それを聞いてまた話し合いの繰り返し。永井さんも中に入って仮説検証を繰り返すことで再現性を生み出すという話。実に良いキーワードを多くいただきました。

■つい課題やニーズから考えていたが、自分の強みを具体的に考えることが大事だということが新たな気づきでした。

■どんな組織においても実現可能なメソッドだと感じました。勇気づけられました。ワークショップに関心があります。

■失敗の方法論はとても腹オチしました。リアルな話で本では得られないような納得感と気づきが沢山ありました。

■いろいろなフレームワークを学ぶことが大事だなと改めて思いました。

ご参加いただいた皆様と松山さんに感謝です!

 

 

乾いた雑巾をさらに絞る。それでもアイデアが枯渇しない理由

雑巾

「このアイデアは結構いいな。もったいないから次の機会に取っておこう。今は、とりあえず手持ちのアイデアで対応しようか」

このように考えることがないでしょうか?

しかしそんな場合、次のアイデアはなかなか生まれてきません。言い換えれば、アイデアを出し惜しむことで、アイデアは枯渇してしまうのですね。

 

逆の場合もあります。

私も著書執筆、お客様のプロジェクト、あるいは写真作品などのほとんどの仕事で、いつも新しいアイデアを生み出すことを求められています。そこでいつも頭を捻りながら、「ああでもない、これでもない」と考えながら、アイデアを生み出しています。

仕事では常に「その時点でベストのもの」を提供しようと思っているので、こんな時、出し惜しむ余裕などはまったくありません。時にヘトヘトになり「もうこれ以上は無理。考えられない」という状態まで追い込むこともしばしばです。

そんな時、まるでカラカラに乾いた雑巾を絞りに絞って、やっと一滴の水が滴るかのように、アイデアが生まれます。

では、そんな限界まで追い込んで、その先のアイデアが枯渇するかというと、そんなことはないのです。徹底的に追い込んだ後なのに、不思議と次にもっとよいアイデアが生まれてきます。

まるで「カラカラに乾いた雑巾」と思っていたのに、また新しい水滴が滴ってくるのです。

 

同じことを、日経ビジネス 2016.4.18号の特集「MBAでは学べない 永守式リアル経営学」で、日本電産の永守重信 会長兼社長が次のように述べておられたので、「まさにその通り」と思いました。

井戸掘り経営というのは、地球上大抵のところで井戸を掘れば水が出てくるでしょう。ただし、次々とくみ上げないと新しい水は湧いてこない。経営の改革・改善のためのアイデアも同じです。くみ上げ続けると必ず、出続ける。これだけアイデアを出したからもう終わりということはなく、くみ続けることが大事です。

「アイデアを出し惜しむと枯渇する」のは、「井戸をくみ上げ続けないと枯渇する」のと全く同じことなのですね。

 

アイデアを生み出す雑巾は、一見「カラカラに乾いた雑巾」に見えても、実は絞りに絞ると次々と水滴が滴ってくる「魔法の雑巾」なのです。

徹底的に絞り絞って、常にアイデアを出し続けたいものです。

 

 

爆買い需要を貪欲に刈り取り続ける、中国資本から学べること

大阪

お客様への講演や研修で、大阪によく行きます。今月大阪に出張した時、心斎橋商店街を歩いてみました。歩く人たちの半分が海外観光客。とても賑わっています。その海外観光客の多くが中国人。ドラッグストアや昔ながらの大阪の店で買い物をしています。いわゆる「爆買い」ですね。

数年前、海外観光客が少なかった頃は、商店街も人が少なかったそうです。

数年前までの風景から一変した大阪を歩きながら、気がつきました。

 

心斎橋商店街に店を構える「ラオックス」も、中国人観光客で賑わっています。東京・銀座や秋葉原などでもよく見かける風景です。

家電量販店の雄として一時は全国に100店舗展開していたラオックスは、量販店間の競争に敗れて業績が悪化し直営店を数店舗に縮小。2009年には中国の大手家電量販店チェーンである蘇寧電器の傘下になりました。今は中国出身の羅怡文さんがトップになり、免税店チェーンとして全国展開しています。爆買需要の成長に沿うように、売上と営業利益はこのように爆発的に成長しています。(ラオックス業績ハイライトより)

ラオックス売上・営業利益

日本国内に生まれた中国の爆買い需用を、中国資本により、中国人トップが陣頭指揮を執って、刈り取っているのですね。

 

心斎橋・ラオックスに吸い込まれていく中国人観光客を見ながら、思い出したのが、大阪出張に来る新幹線車中で読んだ雑誌「Wedge」の記事「訪日外国人を囲い込む 中国民泊」です。

 

「民泊」とは、旅行者が一般人の民家に対価を払って宿泊すること。インターネットで、ホストとゲストを仲介するAirbnb(エアビーアンドビー)が有名です。日本では旅館業法などの規制で、民泊は条件が限定されています。そこで2015年から規制緩和の検討が始まっていますが、既存のホテル・旅行業界の利害もあり、なかなか進展していないのが実情です。

しかしこの記事では、中国に本社を置く民泊業者が、日本を含む世界中でサービスを展開していることを紹介しています。

中国人観光客増加により、日本国内には膨大な宿泊需要が生まれています。実際、私が宿泊するホテルでも、朝食バイキングでは中国の方がとても多いことに改めて気づかされます。その中国人観光客の膨大な宿泊需要を、中国資本の民泊業者が刈り取っているのです。

 

中国人が日本国内で民泊を展開するというと、たとえば「タワーマンションの隣りの部屋が民泊で使われて住環境が悪くなる」というイメージを持つ方もいるかもしれません。 この点について、この記事ではある中国人事業家の言葉が書かれています。

「…その点、民泊目的で投資する中国人は、マンション丸ごと買い取るケースが多いので強いのです…」(「Wedge」2016年4月号 p.19より引用)

確かにマンションが丸ごと民泊に使われるのであれば、苦情は激減します。苦情対応はない方がよいわけで、合理的な考え方ですね。

 

しかし日本ではまだ民泊は規制緩和中。その点はどうなのでしょうか?本記事では、中国系民泊仲介事業者最大手「自在客」トップを務める張志杰CEOのインタビューも掲載されています。

−−現行の日本の法律では、特区等を除いて民泊は禁止されている。

張 中国では既に政府が民泊を許可しており、世界各国で合法化の流れがある。それに比べると、日本はやや法規制が遅れている印象がある。

−−現在、厚労省や観光庁が中心となって、民泊のルールづくりを進めているが、誘いがあればこの会議に参加する気はあるか?

張 呼ばれることがあれば、喜んで参加したい

−−これまでのトラブル事例は?

張 トラブルはほとんどない。事前に「土足厳禁」「ゴミ分別」などのルールをゲストに周知していることが功を奏しているのだと思う。

−−今後の目標を。

張 既に日本では、1万2000室を提供しており、2万6000室を提供しているAirbnbを上回りたいと考えている。……日本へ多くの観光客を呼び込む役割を担っていきたい。

(以上、「Wedge」2016年4月号 p.20より引用)

 

この民泊需要でも、日本の行政で「民泊をいかに規制緩和するか?」を議論している最中に、中国資本がリスクをとってビジネス展開を先行しています。

 

ビジネスで大切なのは、いかに商機をライバルに先んじて掴むか、ということ。

言い換えれば、いかに市場のニーズをサキドリするか。

タイミング勝負です。

ですから、あえてリスクをとることが必要になります。

 

先の記事でも、日本で民泊を展開しているある若い中国人事業者はこう語っています。

「いろいろ心配されているのはわかるのですが…民泊を提供しているわれわれのような業者の感覚は、一般の方が抱くものとは少し違っているようです。というのも、われわれは”事故”や”トラブル”をあまり恐れていないからです。民泊を求める市場のニーズも観光客が増えるという見通しも、その潜在的パワーに比べたら、民泊に吹いている逆風など、あまりにも小さな障害だと言わざるをえないからです。現在の日本の法律では、民泊事業はグレーだと知っていますが、実態として多くの人が利用していますし、この流れを止めることはできないでしょう」(「Wedge」2016年4月号 p.17より引用)

 

大阪出張を通して、「日本国内に生まれている中国人の爆買い需要に対して、内向き思考でなかなかリスクを取れない日本人をよそに、利にさとい中国資本家達はリスクを取ってしたたかに刈り取り続けている。ここから私たち日本人が学べることは、実はとても多いのではないか?」と実感した次第です。

 

 

なぜ悩みに悩んで買った商品なのに、広告が気になるのか?

カメラ写真201600412

私のライフワークは写真です。学生時代から約30年余り、色々なカメラやレンズに散財してきました。

気になるカメラやレンズが発売されると買うべきかどうかを色々と調べて、悩みに悩んだ末に、やっと買うわけです。しかし不思議なことがあります。買った後なのにも関わらずそのカメラの広告やメディア記事が目に入ると、じっくり読んでしまうのです。

たとえば新車を買ったりして、同じような経験をされている方は、多いのではないでしょうか?

車と女性

他にも、時計とか、ゴルフクラブとか、ファッションなどでも、同じようなことが起こったりします。

悩みに悩んで買った商品なのに、買った後もつい色々な情報に見入ってしまうのは、考えてみると不思議ですよね。

 

マーケティングの世界では(より正確に言うと社会心理学の世界ですが)、これを説明する理論があります。

これは「認知的不協和の解消」をしようとしている行為なのです。

「認知的…???」なにやら難しそうな名前ですが、簡単に言うとどういうことなのでしょうか?

 

多くの人は「常に一貫性ある自分でありたい」と思っています。商品を買った後も、「これだけ高い買い物をしたんだ。自分は正しい判断をしたんだ」と思っています。しかし実は一方で、「本当に正しい買い物をしたのだろうか?」という密かな不安も抱えているのです。

たとえば、こんな心当たりはありませんでしょうか?
「このゴルフクラブ、飛距離が出るって聞いて買ったんだけど、本当なのか?」
「この車、走りがいいって評判で買ったんだけど、実はもっといい車があったんじゃないかな?」

実は私も「このカメラ、買ったはいいけど、すぐ後にもっといいカメラが出るかもしれないなぁ」とか、「プロ用なんだから、すぐに壊れる…なんてことはないよね」と密かに思っていたりします。

このように人は、ある程度の高額商品を買った後は、この相矛盾する状態に陥っていることがよくあります。これが「認知的不協和を抱えた状態」です。

そこでこの「認知的不協和」を解消するために、消費者は買った後も「自分は正しい買い物をした」という情報を集めようとするのです。だからつい買った商品の広告やメディア記事に目が行ってしまうのですね。

 

つまり商品を購入した消費者に、「この商品を選んだ自分は正しかった!」と思っていただくことは、マーケティング戦略の上でも、とても重要なことなのです。

商品を購入してくれたお客さんは、新たにお客さんになってもらうための費用(新規顧客獲得コスト)をかけることなく、今後も継続して自社商品を買ってくれる可能性が高い、とてもいいお客さんでもあります。私も実際にその後、「このカメラ、買って正解だった」と思ったので、その後は新しいカメラメーカーの軽量なカメラボディやレンズがいつの間にか増えていきました。

広告や宣伝、広報などのメディア記事は、新たなお客さんを獲得するためだけではなく、既存のお客さんも意識することが必要なのです。その積み重ねが、ブランドを育てていくのです。

 

一方で、もし「自分は正しい買い物をした」と思いたがっているお客さんが、「この買い物をして失敗だった」と思うと、「認知的不協和」を解消するために「それでは、この商品は二度と買わない」という行動をすることになります。

こうして良いお客さんが去って行くのです。

 

ご縁があって購入してくださったお客さんには、失望させずに、「買って正解だった」と思っていただけるようにしたいですね。

 

 

新著「そうだ、星を売ろう」の見本が到着。来週発売です。

本日、新著「そうだ、星を売ろう」の見本が到着しました。

そうだ、星を売ろう

「100円コーラ」シリーズ同様、10章のストーリーでマーケ理論が学べる構成になっていて、目次はこうなっています。

プロローグ 廃れた温泉郷が、ディズニー超え?
第1章 温泉郷の強みは、温泉か? 【大量生産・大量販売時代の終わり】
第2章 そうだ、星を売ろう! 【「当たり前のもの」が強みに変わる】
第3章 星の村 【コッターの企業変革力】
第4章 星のガイド 【ヒト・モノ・カネより大切なもの】
第5章 見えない星空 【リスク管理と失敗の3ステップ】
第6章 星のタウンミーティング 【抵抗勢力を味方につける】
第7章 星の絆 【「やりたいからやる」モチベーション3.0】
第8章 星の特産品 【1を100に育てるリーンスタートアップ】
第9章 五平餅協力隊 【ビジネスは合理的に判断できない】
第10章 星の模倣 【競争優位性の終焉と終わらない変革力】
エピローグ 成功体験を捨てる勇気

 

いよいよ来週発売。書店に並ぶのは4月18日頃から。既にアマゾンでは予約受付中です。

 

オムニマネジメント2016年4月号に連載第11回『新企画が通らない。どうすればいい?』が掲載されました

一般社団法人日本経営協会様が発行する月刊オムニマネジメント2016年4月号に、連載『新企画が通らない。どうすればいい?』が掲載されました。

オムニマネジメント201604

会社組織では、ときに理不尽なことが起こります。必ずしもいい企画が通るとは限りません。自信を持ってつくった商品企画が却下されることもあります。では、どうするか?

本論文では2つの事例を紹介しています。

一つ目はキリンFIRE誕生物語。実は当初は当時の社長に大反対をされました。その反対を乗り越えたカギが仮説検証。二つ目はその仮説検証を新事業立ち上げで活用したザッポスの事例です。

いずれも商品企画担当者は商品のあらゆるプロセスに積極的に関わっています。商品企画担当者の仕事は「商品の企画を作ること」ではなく、「商品を買う顧客を作ること」。商品企画担当者は、自分の仕事のあり方について、考え方を変える必要があるのです。

本論文ではそのことを述べました。

 

もしご覧になる機会がありましたら、お手にとってご一読いただければ幸いです。

 

主語を切り替えれば、良い方向に回り始める

若いビジネスマン2

私たちは、ともすると、このように考えがちです。

「○○が悪い」
「○○が間違っている」
「○○が□□をしてくれない」

○○は、「主語」ですね。多くの場合、この○○には社会や国、勤務先などの組織、個人である上司や部下、先輩や後輩、家族、パートナーなどが入ります。たとえば、こんな感じでしょうか。

「社会が悪い」
「会社の方針が間違っている」
「妻(あるいは夫)が□□してくれない」

しかし、主語が他人になっている間は、なかなか状況は変わりません。ましてや組織ならばなおさらのこと。

なぜなら、他人を変えることは至難の業だからです。
一人の他人を変えるのも大変なのですから、他人の集合体である組織を変えるのは、さらに大変です。

結局、他人を主語にしている間は、言いっ放しで終わり、何も変わらないのです。

 

ではなぜこうなるのでしょうか?

人は「自分は正しい。正義は自分にある」と思いがちだからなのかもしれません。しかし自戒を込めて考えると、「正義は自分にある」と思った瞬間、人は自分のエゴが見えなくなります。そして間違ってしまうのです。

 

しかし自分の考え一つで、比較的容易に変えられるものがあります。

それは「自分」。

現実には、自分の考えを変えるのも、それほど簡単ではありません。
しかし、コントロールできない他人を変える場合と比べると、はるかに容易です。

そこで冒頭の言葉で、主語を他人から自分に変えて、このように考えてみるとどうでしょうか?

「社会が悪い」→「自分は、何をできるだろう?」
「会社の方針が間違っている」→「この方針の元で、自分ができることは何だろう?」
「妻(あるいは夫)が□□してくれない」→「自分が妻(あるいは夫)に□□してあげよう」

自分の考えが変わると、色々なことが動きそうです。そして成果を上げれば、他人や組織もそれを認め、結果的に他人や組織も変わっていきます。

誰もが「状況をいい方向に変えたい」と考えています。

しかし「自分は正しい。相手がこのように変わるべきだ」と考えても、なかなか物事は変わりません。

ここで「今の自分がこのように変わるべきだ」と自分を主語にした考え方に変えてみると、色々なことが少しずつ変わってきます。自分も成長していきます。さらに小さな変化でも時間をかけて積み重なることで、大きな変化になっていきます。

 

主語が他人である限り、なかなか状況は変わりません。

主語を自分に切り替えれば、良い方向に回り始めるのです。

 

 


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文化放送オトナカレッジ 最終回「価値を生み出すビジネスは、社会貢献である」

昨日3月24日(木)の夜は、文化放送オトナカレッジへのレギュラー出演の最終回でした。

今回は「価値を生み出すビジネスは、社会貢献である」と題して、お話ししました。

 

今回の講義は、これまでの14回の総まとめの意味もあります。

ということで、今回の講義内容レジュメです。

1.「価値の創造」を追求すると、「社会貢献」になる!
2.何年たっても高齢化しないニュータウンの経営手法とは?
3.企業が生み出す利益は、企業が社会貢献をするための手段

 後半のお話しでは、さらに深く掘り下げた上で、14回の振り返りをしました。

 

私が14回の講義を通じてお伝えしたかったことは、「お客様に売ろう」ではなく、「お客様が喜んで買う理由を作ろう」ということに尽きます。

かつては作れば売れました。だからニーズに対応していればよかったのです。しかし今は豊かな社会です。色々なニーズがある一方で、モノは余っています。だからお客様の言いなりになるのではなく、お客様が「欲しい」と思うようなニーズをサキドリして、見せることが必要です。

そのためには、(1) 自分の強みは何かを考えて、(2) その強みを必要とする人が誰かを具体的に考えて、(3) その人が何で困っているかを考え抜いて、(4) その上でどうすれば自分たちを選んでいただけるかを考えることが必要です。

さらに考えるだけでなく、それが正しいのかを試行錯誤して失敗を通じて学んでいくのです。

目の前に喜ぶお客様がいれば、仕事も次第にやりたい仕事になっていきます。そして、価値を創るということは、社会貢献につながり、よりよい世の中を作っていくことに繋がります。

私たちがマーケティングを学び、日々、実践することで、必ず世の中はもっとよくなるし、私たちも幸せになる。

これが14回を通じて、皆様にお伝えしたかったことでした。

今回のレギュラー番組を通じて、皆様に何らかの「価値」をご提供できたのであれば、とても嬉しく思います。

 

今回の講義前半の様子は、「オトナカレッジ 聴く図書館 Podcastアーカイブ」でもお聴きになれます。→今回分はこちら

 

今シーズン最後のアナウンサー・砂山さんとのツーショットです。

オトナカレッジ20160324

これまで 「生放送のラジオで話す」なんて考えたこともなかった私が、無事半年間、14回のレギュラー番組を務めることができたのも、砂山さんをはじめ経験豊富な番組スタッフの皆様のおかげです。感謝しております。

 

14回の放送をお聴きくださった皆様、ありがとうございました!

 

苦情を受けた百貨店が、喜ぶ理由

苦情対応

週刊モーニングで、「銀座空丸百貨店 お客様相談室」というコミックが連載されています。舞台は、銀座にある老舗百貨店のお客様相談室。お客様の無理難題な苦情に対応する姿を描いた物語です。

お客さんの苦情を受けるのは、誰でも辛いもの。

この物語では、相談室スタッフが、お客さんの苦情に苦慮しながら対応する姿が描かれています。一癖二癖あるお客さんが多く、その対応もまた秀逸です。

先週の連載第27話(2016/3/17発売 第16号掲載)では、相談室スタッフの会話が描かれています。

『んー…』
『何よ?どうかした?』
『あ…いえ。週末に届いた苦情メールをチェックしているんですけど、量が多くて…』
『なーんだ、そんなこと?室長を見てみなさいよ』
『え?』
『さっきからうれしくて仕方がないって感じで、苦情の投書を読み込んでいるわよ。まるでお礼の手紙をいただいたような表情(かお)で』
『室長の口ぐせは「苦情は宝の山」ですからね…… いや 頭では理解できても、ハートが追いつかないっす』

 

実際、百貨店は苦情への対応に多くの人手、手間、お金をかけています。
しかしなぜ百貨店は、このように苦情対応を徹底しているのでしょうか?
そしてなぜこのお客様相談室の室長は、まるでお礼の手紙をいただいたような表情をするのでしょうか?

室長の口癖「苦情は宝の山」に、ヒントがあります。

その背景にあるのが「ジョン・グッドマンの法則」。第一法則から第三法則まであるのですが、ここでは第一法則のみをご紹介します。

 

第一法則は、不満を持った消費者が、苦情を言った場合と言わなかった場合で、再購入率がどのように変わるかを示したものです。

まず不満を持った場合、96%のお客さん、つまり大多数は苦情を申し立てません。その中で再購入するのはわずか9%(1万円程度の高額商品の場合)。 残りの91%は無言で去っていき二度と買わないのです。怖いですね。

一方で苦情を申し立てるのはわずか4%。25人中1人だけ。しかしこのうち、不満が迅速に解決され大変満足した人は、実に82%が再び購入します。つまり、苦情に迅速に対応して満足すると、その後は贔屓客になる可能性がとても高いということです。

「ジョン・グッドマンの法則」については、顧客ロイヤルティ協会のサイトで詳しく解説されています。(第二法則・第三法則も面白いので、ご興味がある方はご一読を)

 

私自身、「苦情に迅速に対応することで、贔屓客になる」ということは、顧客の立場で経験しました。

10年ほど前、アマゾンで買ったパソコン部品がうまく動きませんでした。困ってアマゾンに電話で相談したところ、親切丁寧に対応していただき、無償(かつ送料アマゾン負担)で迅速に商品交換に応じてくれました。

ただ困ったことにその交換した部品も不具合を起こしました。ダメモトでアマゾンに相談したところ、再び迅速に無償交換してくれました。

当時、ここまで商品交換を徹底している他社はありませんでした。私はその後、ネットでの購入のほとんどがアマゾン経由になりました。万が一の場合も商品交換に応じるので、安心だからです。ただ、その後は商品交換することはありませんでしたが。

 

私のこの経験は、贔屓客になると、何がいいのかを教えてくれます。贔屓客を獲得した企業は、利益が飛躍的に上がるのです。

10年前の出来事以来、私がネット経由で商品を購入する場合は、ほとんどがアマゾンで買っています。見方を変えると、私個人という顧客からアマゾンはかなりの利益を上げています。

新規顧客を獲得するにはお金(新規獲得コスト)がかかります。しかし贔屓客の場合、この新規獲得コストはかかりません。さらに返品はお客さんにとっても手間です。品質管理を徹底すれば、悪質なクレーマーを除けば、商品返品は頻繁には発生しません。その結果、一取引当たりの利益も上がります。さらに長期間購入し続けることで、累積売上高も上がり、累積利益をさらに押し上げます。

こうして、贔屓客の顧客生涯価値(=顧客の生涯で企業に払う価値)は、極めて高くなるのです。

 

一般に、取引や買い物には、様々な不満がつきものです。

不満を感じたお客さんの96%は苦情を言わず、そのうち91%が何も言わずに去ります。つまり不満を感じたお客さんに投下した新規獲得コストの多くは、無駄になっています。

しかし不満を感じたお客さんのうち、わずか4%は苦情を申し立てます。そしてそのようにして届いた苦情は、見方を変えると、贔屓客を生み出す大きなチャンスを秘めているのです。

そして苦情を申し立てたお客さん(あるいは困ったと言ってくるお客さん)の問題を解決し、贔屓客にすることが、長い目で見ると、企業に莫大な利益をもたらすのです。

 

 

文化放送オトナカレッジ 第13回「<モチベーション3.0>とは何なのか?」

昨日3月17日(木)の夜は、文化放送オトナカレッジへのレギュラー出演第13回目。

今回は「<モチベーション3.0>とは何なのか?」と題して、お話ししました。

 

私たちは何のために仕事をしているんでしょうか?大変な仕事でも頑張れるのは、なぜなんでしょう?
仕事、中でも知的生産性を上げるためのキーワードが、モチベーション3.0と呼ばれるものです。

ということで、今回の講義内容レジュメです。

1.どうしたら仕事に対するモチベーションが上がるのか?
2.お客さんの喜びがモチベーションを上げる!
3.「やりたいこと」を仕事にする方法
<モチベーション1.0>は、生き残るために頑張る。
<モチベーション2.0>は、目標を与えられ、目標達成のために、頑張る。→定型業務で生産性が高い
<モチベーション3.0>は、自分がやりたいから、やる。→知的生産性が高い(現代ではこれが求められている)

 

後半のお話しでは、様々な事例について掘り下げてお話ししました。

今回の講義前半の様子は、「オトナカレッジ 聴く図書館 Podcastアーカイブ」でもお聴きになれます。→今回分はこちら

 

恒例、アナウンサーの砂山さんとのツーショットです。実はこのお話しは、4月14日に発売する新著「そうだ、星を売ろう」の一部を先行してご紹介したものです。

オトナカレッジ20160317

 

次回の第14回目は、来週3月24日(木)。ついに最終講義ですね。『価値を生み出すビジネスは、社会貢献である』というテーマでお話しします。

商品企画会議でヒット商品を生み出す3つのヒント+1

商品企画会議

 

「商品企画会議、ウチもやっています。みんなで知恵を出し合っているのですが、なかなかヒット商品が生まれません。どうすればいいのでしょう?」

先週出演した文化放送「オトナカレッジ」で、「ヒット商品を生み出すヒントは、社員やお客さん一人一人の頭の中に散りばめられている。これらを集めることが大切」とお話しした後、こんなご質問をいただきました。

 

私もまったく同じ経験をしてきました。

参加者は誰もが力があるのに、なかなかいいアイデアが出てこない。
議論も深まらない。

しかしある時から、企画会議の生産性が急に高まるようになりました。それは次の3点を意識するようになってからです。

【その1:簡単な叩き台を作る】

「議論が発散するだけだった」という経験をされた方は多いのではないでしょうか?簡単な議論の「叩き台」を用意することで、これを防ぐことができます。できれば叩き台には、(1)現状の事実、(2)課題、(3)解決策をまとめておきたいところです。これを用意すれば、それぞれについて意見を言えるようになり、いいアイデアが生まれます。

必ずしも時間をかけて完璧な叩き台を作る必要はありません。むしろ方向性を誘導しつつ、適度に突っ込める「緩さ」があった方が議論が活性化します。

 

【その2:アイデアを肯定する】

企画会議でよいアイデアを殺すのは簡単です。アイデアが出た瞬間「それはダメだ」と言うことです。参加者は萎縮し、次第に誰もアイデアを出さなくなります。

たとえ荒唐無稽なアイデアでも、まず「いいですね!」と言うように習慣づけてはいかがでしょうか?そしてそのアイデアを否定せずに尊重した上で、そのアイデアをよりよくするためにどうすればよいのかを話し合うと、意外な方向でアイデアが育っていきます。

 

【その3:顧客視点を入れる】

商品企画会議でありがちなのは、技術重視で顧客不在のまま突っ走ってしまうこと。強みの源泉となる技術は大切ですが、顧客にとって価値がなければヒット商品になりません。「これはどんな顧客が考えられるだろうか?」「その顧客は何で困っていて、これはどのように課題を解決できるだろうか?」という顧客視点で議論するように習慣づけたいところです。

 

もう一つ、重要な点があります。一回の企画会議だけで終わらせず、プロジェクトとして継続することです。

経営学者の入山章栄先生は近著「ビジネススクールでは学べない世界最先端の経営学」で、「ブレインストーミングのアイデア出しは、実は効率が悪い」ということを、最近の研究を引用しながら紹介しておられます。

個人で分担してアイデアを出すのと比較すると、実は複数人でのアイデア出しは「他人への気兼ね」と「集団で話す際、他人の話を聞いている時に思考が中断する」ことで、生産性はむしろ低くなるという研究結果があります。

つまり「その場でアイデアを出す」という観点だけで見ると、実は効率が悪いのです。

ではブレインストーミングは意味がないかというと、そうではありません。多くのクリエイティブと呼ばれている組織は、ブレインストーミングを重視しています。

ブレインストーミングは、誰が何を知っているのかを知り、さらにブレインストーミング後も継続して意見交換し、非公式な場でアイデアを生み出す効果があるのです。つまり、組織全体で学習能力を高めるのですね。

確かに私自身も振り返ってみると、高い生産性を生み出してきたのは単発の商品会議ではなく、「プロジェクト」として継続して定期的に行う商品企画会議でした。

 

あくまで感覚的なものですが、よい企画会議は、5人いればアイデアが5倍になるのではなく、アイデアがアイデアを生み出す相乗効果で増幅され、アイデアが数十倍・数百倍にもなります。

しかし一回限りの会議でアイデアが生まれることはむしろ稀です。継続することが必要です。

 

たとえ最初の商品企画会議でアイデアが出なくても、一回だけで終わらせず、定期的に継続していきたいですね。