モメる多数決でなく、「一般意志」を目指せ

2023年12月14日の日本経済新聞夕刊に、JPH代表取締役の青松英男さんが『【十字路】株主の「一般意志」に応えよ』というコラムを寄せています。

私たちは組織の中で、さまざまな意志決定をしています。この時に意志決定の基準を考える上で、とても参考になると思いますので、一部を紹介しながら考えていきたいと思います。

—(以下、引用)—

ルソーは「社会契約論」で主権在民を基本とする民主主義の思想を提示した。統治者と人民の双方は、共同体に属する人民が公共の利益を考えた総意である一般意志を尊重しなければならない。人民は個々人が利益を追求する特殊意志を持つものの、一般意志によって制約されることを受け入れないといけない。

特殊意志の総和である全体意志もあるが、一般意志とは似て非なるものだ。政府が人気取りで全体意志に応えようとすると社会は崩壊する。全体意志とは減税と給付金増額の両方を望むようなものだ。

—(以上、引用)—

この文章では、18世紀フランスの啓蒙思想家ルソーが提唱した「一般意志」「特殊意志」「全体意志」という概念が出てきます。ただちょっとわかりにくいので解説すると、それぞれの違いはこんな感じです。

【特殊意志】各自の意志のこと。(※注)
【全体意志】各自の個別意志が一致している状態。ただ、たまたま一致しているだけで、これは「組織の意志」とはいえません。
【一般意志】組織があたかも一人の人間のように持つ意志のこと。

※注…光文社古典新訳文庫「社会契約論/ジュネーヴ草稿」では「特殊意志」を「個別意志」と訳しています。

どうでしょう? これでもまだわかりにくいですよね。そこで具体的な例で紹介しましょう。

【特殊意志の例】

5人のチームで、3人が「Aがいい」、残り2人がそれぞれ「Bがいい」「Cがいい」と言ったとします。

「特殊意志」とは、各自の「Aがいい」「Bがいい」「Cがいい」という意志のことです。ここで多数決を取ると「Aがいい」になります。でも「Bがいい」「Cがいい」という人たちの不満は残ります。もしかしたら、それは生死に関わる問題かもしれません。多数決ではそうした問題は解決しないわけです。

【全体意志の例】

チーム全員が「Aがいい」で一致した状態の意志が「全体意志」です。でも「これはたまたま特殊意志が一致しただけで、組織の意志とは言えないよね」とルソーは考えました。これが青松さんが「特殊意志の総和である全体意志もあるが、一般意志とは似て非なるものだ」とおっしゃっている意味です。

さらに青松さんは「政府が人気取りで全体意志に応えようとすると社会は崩壊する。全体意志とは減税と給付金増額の両方を望むようなものだ」とおっしゃっています。

わかりやすく言えば、政府が「減税します。しかも給付金も増やします」と言えば、「それ、得になるからいいね!」という全体意志で国民の大多数が一致して支持してくれるはずだ、なんてやっていると、社会が崩壊するよ、ということです。

【一般意志の例】

「Aがいい」「Bがいい」「Cがいい」という特殊意志を持つ個人が喧々諤々の議論をした末に、全員が新たに「Xがいい」と心から納得すれば、それが組織としての「一般意志」になります。言い換えれば、異なる意見を持ち寄って議論することで、はじめて一般意志が生まれるのです。

青松さんが上げた事例で言えば、本来必要なのは、限られた予算をいかに配分するかを喧々諤々と議論して、最後に全員が納得した落とし所を見つけるべきでしょう、ということです。

コラムの中では、青松さんはさらにこの議論を、株主と経営者の関係にまで展開した上で、経営者が「物言わぬ多数株主」の意向を無視して一部株主の特殊意志に応えようとするのを戒め、株主が意見表明するべきだ、とおっしゃっています。

 

ただこの「一般意志」の概念を聞くと、会社などで苦労しておられる方は、こう考えたりするのではないでしょうか?

「それってもの凄く大変だよ。全員が完全に一致するなんて、ムリなんじゃない?」

実は同じ事を、現代の経済学者であり哲学者のアマルティア・センが言っています。

経済学者でもあるセンは、著書『正義のアイデア』で、師でもある経済学者ケネス・アローが提唱した経済学の「社会的選択理論」に注目しました。これは「個人の好みの基準をどんなに緩やかにしても、全員が完全に同意することは不可能」というものです。

アローは「3人以上いると全員が完全に納得の合意を得るのは難しく、誰かが必ずどこかで妥協する必要があること」を、複雑な数式を駆使して証明してしまったのです。このためこの理論には「不可能性定理」なんて名前が付いています。

つまり「一般意志」を目指そうとしても、現実には完全な一般意志を実現することはとても難しいわけです。

そこでセンは「より正義に近くて、より不正義でないマシな選択肢を選ぶことが、現実的な解決策だよ」と言っています。

つまり私たちは、ルソーが言うように『「一般意志」を目指してチームで徹底的に議論をすることが必要』なのですが、一方でセンが言うように『3人以上いると全員が完全に納得するのも難しいので、選択肢を一通り検討した上で、一番マシな選択肢で合意するという現実的な思考も必要だ』、ということなのです。

この特殊意志、全体意志、一般意志、不可能性定理という概念を理解していると、チームでの議論に深みが出てくるのです。

   

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「リスキリング=DX」という勘違い

最近のメディア記事を見て、「これヤバいよ」と実感するのが

リスキリング=DX

となっていることです。

本来リスキリングとは、企業のビジネス力を上げるために行うもの。「DXも大事だけど、その前に色々あるよね」と思っていました。

そう思っていましたら、日経ビジネスの今週号(2023.8.21号)の特集「残念なリスキリング」の中で、『日本企業の間では「リスキリング=DXについて学ぶもの」という発想が根強い』と紹介されてた上で、こんな言葉が紹介されています。

『デロイトトーマツコンサルティングの小野隆執行役員は「日本はとにかくテクノロジーに関するノウハウを学ばせようとしがちだが、実際には仮説を検証したり、周りを巻き込んでプロジェクトを遂行したりするスキルも必要」と話す』

そして記事では「スキル開発は事業戦略に連携させるべき」ということが述べられています。

ここ1〜2年、メディアがリスキリングを取り上げる際には「リスキリング=DX」と結びつけて紹介されることが多かったので、その反省と軌道修正が行われつつあることを感じる記事でした。

私はこの十数年間、人材育成に携わってきましたが、まさに「人材育成は事業戦略そのもの」です。

私が人材育成に携わるきっかけは、日本IBM社員時代に事業戦略責任者として事業本部長をサポートしていた際に、事業本部長から「来月から人材育成責任者をやってほしい」と言われたことでした。

「これまでマーケティング戦略や営業戦略で色々と手を打ってきた。でも人材戦略はちゃんとやっていない。ウチの事業部の人材が、事業戦略に沿ったスキルを身につければ、業績がアップするはずだ。永井さんとボクは一緒に事業戦略を作ってきたから、今度は人材育成で事業戦略を実現してくれないか?」

と言われて、人材育成を担当することになりました。

こうして人材育成の現場で実感したのは、事業戦略に沿って人材育成を行うことで、業績が向上する上に、社員も経営陣もハッピーになることです。現場で次々と起こる新しい問題に直面して、社員も困っています。しかしそんな問題と闘う武器を人材育成プログラムを通じて手に入れられることは、当然のことながら社員にとってもよいことです。

そして、そこで必要になるのはDXスキルではありません。
必要なのは、ビジネススキルです。

それは小野執行役員もおっしゃっているような仮説検証力だったり、マネジメント力、マーケティング力だったりします。

「リスキリング」でグーグル検索すると、ほとんどがDXと紐付いた結果が出てきます。 まさに「リスキリング=DX」になっているのが、日本の現状です。これでは大金と膨大な労力を投じて人材育成しても、なかなか成果には繋がりません。

この3年間、私がKadokawaさんとの協業で永井経営塾を推進しているのも、本来必要とされるリスキリングの場を整備し、リーズナブルな料金で広くご提供するためです。

今週号の日経ビジネスの特集が、「リスキリング=DX」という風潮を見直す一つのきっかけになればと願っています。

   

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学び方を変えると、同じ労力でも成長スピードが全く違う

私がIBMの新入社員だった頃、最大の悩みが英語の習得でした。
入社3ヶ月目に受けたTOEIC(ビジネス向け英語テスト)は475点。
上司に言われました。「これじゃ仕事させてあげられないねぇ」

私の仕事は、海外IBM研究所が開発するソフトウェアの日本語化の技術支援。英語は必須です。IBM社内の規定で、短期海外出張はTOEIC600点、3ヶ月以上の長期出張は730点を取る必要がありました。

上司から「475点では話にならない」とダメ出しされ、英語漬けの日々が始まりました。往復3時間の通勤時間は英語を読み、英語を聞き、週末も英語を勉強。時間がかかりましたが、何とかTOEICのスコアはクリア。海外出張に行けるようになりました。

私は海外の人とスムーズに英語コミュニケーションする必要があったので、英語力そのものの力を底上げする必要がありました。ですのでTOEICに特化した勉強はしませんでした。

しかし最近、TOEIC高得点が昇進の条件になっている会社も増えています。ある意味、TOEICに生活がかかっているわけです。TOEIC高得点だけを狙うのであれば、実は別の方法もあります。

10年ほど前までTOEIC高得点最短の方法は、TOEICの問題集を買ってきて、ひたすら繰り返し、問題に慣れることでした。試験問題には一定のパターンがあるからです。

具体的には、問題集の問題ページを見て、自分で時間管理しながら答えを記入。リスニング問題では、自分でCDを再生。テスト終了後、正解ページを開き、自分で答え合わせ。わからない部分は調べます。これを何回か繰り返します。

ところが最近、もっと新しい方法が生まれています。

従来の方法では、本来の勉強とは別の作業(試験の時間管理、CD再生、答え合わせなど)に、意外と時間と労力がかかります。

最近は、パソコンやスマホを使い、ネット経由でTOEICに特化した勉強ができるようにした学習ツールが増えています。文字だけでなく音声や画像も出ますし、答え合わせも自動でやってくれます。思考が分断されるCD再生・時間管理・答え合わせが不要になるので、紙の問題集をやるよりもずっと効率的にTOEIC対策ができます。

学びの方法は、常に進化しているのですね。

完全オンライン形式でご提供している永井経営塾も、いつでもどこでも、厳選されたマーケティング・経営戦略理論を学べる仕組みを楽しくラクに学べるように、リーズナブルな価格で広く日本中のビジネスパーソンに提供したいと思って始めたものです。

忙しいビジネスパーソンが勉強に使える時間は、限られています。

10年以上前の学びの常識に囚われずに、新しいテクノロジーを使った新しい学びの方法を使うことで、得られる学びは格段に大きくなります。

目的にあわせて効率よく学びたいものですね。

 

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「歯の白さ」のマーケティング

ある日、妻に言われました。

「歯が黄ばんでいるよ。歯医者さんでホワイトニングしたら?」

あなたはご自分で、自分の歯がどんな色かをご存じでしょうか?
私は全く意識していませんでした。
洗面所で身支度する時も、口は基本的に閉じたまま。

早速洗面所で自分の歯を見ると、意外と黄ばんでいます。ちょうど湯飲みが茶渋で色が付くのと同じで、長年歯を使っていると食べ物の色で染まるようですね。

そこで早速、歯医者さんにホワイトニングをしてもらうことにしました。

ホワイトニングの当日、まず説明を受けます。

「1回目で、ある程度白くなります。でも2〜3回行うと、より白くなります」

と言われながら、診察台にあるディスプレイで、3人の実例写真(1回目、2回目、3回目)で見せていただきました。歯がもともと白い人。やや黄色い人。茶色い人の3人です。私は茶色い人のケースと同じ状態でした。

どの人も、1回目でそこそこ白くなっています。しかし3回目になると「芸能人?」と思えるほど白くなっています。

説明後に、まず承諾書にサイン。そして実際のホワイトニングです。

施術前に自分の歯の写真を撮り、90分の施術後にまた歯の写真を撮って、ビフォーvs.アフターの比較をします。

結果は事前の説明の通り、そこそこ白くなりました。しかしもっと白くしたいので、早速2回目の予定を入れました。

帰宅して妻にホワイトニングした歯を見せると、「すごく白くなった。もうこれでいいんじゃないの?」と驚かれましたが、「もっと白くなるので、3回目もやることにした」と答えると、「へぇ〜」。

このホワイトニング・ビジネス、なかなかよくできています。カギは「事前説明」です。

人の期待値は主観なので、人によって様々です。だから期待値を事前にセットする必要があります。

事前説明をしないと、こうなりがちです。
「1回で真っ白になると思っていたのに、そうでもないじゃん」
「2回目も必要なの? またお金取るの?」

事前説明した上で、施術前に承諾書にサインをさせることで、こうなります。
「ほぼ事前の説明通りだね」
「2回目と3回目をすると、もっと白くなるのか。予算があればやろうかな」

事前説明ではさらにこんな話もありました。

「一度ホワイトニングをしても、歯は徐々にまた色が付いてきます。歯の白さを保ちたければ、定期的なホワイトニングがオススメです」

つまり事前説明により「消費者の期待値」のマネジメントをすることで、
①顧客満足度向上を図りつつ、
②2回目・3回目の予約に繋げて売上拡大を図り、
③さらにリピートオーダーに繋げているのですね。

恐らくホワイトニングの技術や施術道具を販売する会社が、この「事前説明の徹底」というマーケティング手法とセットで、歯科医に売り込んでいるのでしょうね。

ポイントは「1回だけでは白くならない」「白さはホワイトニング後、徐々に失われる」というデメリットを正直に伝えて、そのデメリットをビジネスに繋げている点です。

正直に伝えることで、デメリットを転じて、売上拡大に繋げる。

このやり方は、私たちのビジネスでも参考になるなぁ、と実感しました。

 

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やっとマーケティングの時代がやってきた?

数週間前、8月18日に日本経済新聞にこんな記事が掲載されました。

「ファミマCMOに足立氏 日本マクドナルドを再建 ポスト新設」

マーケティングを統括するCMO(チーフ・マーケティング・オフィサー)に熟練マーケター就任のニュースが、なんと7段抜き記事です。

一企業のマーケティング責任者就任が、まるで経営トップ就任並の扱いの記事。確実にマーケティングがビジネスの中心になりつつあることを象徴する出来事です。

「マーケティング」がここまで注目を集めた時代は、これまでなかったように思います。

2011年に「100円のコーラを1000円で売る方法」を出版した際に、担当編集者と「本のタイトルに『マーケティング』という言葉を入れると、ビジネスパーソンは『難しそう…』と敬遠して手に取らないので、『マーケティング』という言葉は外しましょう」と話し合っていたことを思うと、わずか10年間で隔世の感がします。

11月に出版する本は、この「マーケティング」という言葉をかなり前面に押し出した本になります。
果たしてどんな反応になるのか?
ワクワクドキドキです。

 

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2020-09-29 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : takahisanagaicom

朝活・永井塾 第39回「サービス・イノベーション 〜 製造業のサービス化」を動画配信しました

先週5月13日は、第39回の朝活・永井塾。テーマは「サービス・イノベーション 〜 製造業のサービス化」でした。

今回も動画配信でお送りしました。

多くのものづくり企業は「製品だけではあっという間にコモディティ化してしまう。もう限界だ」と考えています。しかし製造業はサービス化により大きく成長できます。

たとえばGEは、ジェットエンジンの稼働状況の監視サービスが大きなビジネスになっています。
コンピュータメーカーだったIBMは、今やソフトウェアとサービスが売上の8割以上を占めます。
iPhoneもスマホとアプリが一体化しています。

これらはサービス・イノベーションの成果です。
では、サービス・イノベーションとはいかに起こるのでしょうか?

そこで今回は下記をテキストに使いながら、サービス・イノベーションについて学んでいきました。

サービス・イノベーションの理論と方法 近藤隆雄著

今回もこんな感じの動画を配信しました。皆様からメールでいただいた御質問には別途お答えいたしました。有り難うございました。

次回の朝活勉強会「永井塾」は6月3日(水)。テーマは「サブスクとカスタマーサクセス」。
久々のリアルタイム朝活で、Zoomで行います。詳しくはメルマガでご案内しています。
有り難いことに、全国からお申し込みをいただいてます。楽しみです。

「顧客価値の式」で、競争力あるサービスを作り込む

現代のビジネスの7割以上は、サービスビジネスです。
サービスビジネスでは、より高い顧客価値を生み出した会社が勝ちます。
サービス化が進むモノづくり企業も例外ではありません。

では、具体的にどうすればいいのでしょうか?

明治大学大学院で教授を務められた近藤隆雄先生のご著書「サービス・イノベーションの理論と方法」を読んでいたら「顧客価値の式」がありました。

顧客価値=(結果品質+過程品質)/(料金+入手コスト)

この式は、実に理解しやすく実践的です。

たとえば身近なところで、私が主催する勉強会「永井塾」ではこうなります。

■結果品質→そのサービスがもたらす結果の品質。たとえば永井塾に参加すると、現場の仕事で役立つ経営戦略を学べます。

■過程品質→サービス提供過程の品質。たとえば永井塾は申込みはWeb、都心の教室で学ぶことができ、お問い合わせには出来る限り迅速に対応しています。

■料金→サービスの金銭的費用。永井塾の場合、朝活3000円/夜学5000円です。

■入手コスト→サービス入手のために必要な料金以外のコスト。朝活は、早起きして交通費をかけて参加する必要があります。

 

顧客価値を高めるには、分子(結果品質と過程品質)を大きくするか、分母(料金と入手コスト)を小さくすることです。たとえば永井塾の例では…

■結果品質を高めるには→勉強会の内容をより業務に即した内容にすること。たとえば夜学では、最初に参加される方々が仕事で抱えておられるお悩みをお伺いし、ホワイトボードに書いた上で講義を行い、最後にお悩みがどのように解決できるかを一緒に考えていきます。

■過程品質を高めるには→サービス提供過程の快適性を向上させること。たとえば資料や動画をWeb配信し、遠方で参加できない方や復習したい方が学べるようにしています。

■料金は→慎重な対応が必要です。料金は品質の代表指標です。要は、高品質でも安価なサービスは安物に見えてしまいます。

■入手コストを下げるには→手間を減らすこと。たとえばやむを得ない理由で当日欠席しても、後日動画で学ぶことができます。

実際には永井塾では参加者の顧客価値を高めるために、毎回参加者にアンケートを取っています。朝活と夜学で累計50回近く実施していますが、常にいただいたご意見をもとに様々な改善を図っています。第1回と比べると今や完全に別物です。

 

このようにサービスの顧客価値の構造を考え、それぞれの要素で何をすればいいかを考えれば、やるべきことは見えてきます。そして顧客からのリアルな学びをもとに、常に改善し続けることが必要なのです。

 

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「戦略作りはコンサルや部下に任せている」はダメです

「あ、戦略作り? コンサルや部下に任せていますね。
ちゃんと私がチェックしてます。OKなら、全社方針にしています」

あからさまにこのようにおっしゃる方は、実は滅多にいません。しかし、

「何よりも現場やお客さんが大好き」
「社内の人間関係もとても大切」
「でも戦略を考えるのは、どうも苦手で…」

というトップは、意外と少なくありません。

現場やお客さんが大好きなことも、社内の人間関係を大切にするのも、素晴らしいことです。とは言っても、会社の戦略作りは外注してはいけません。トップが考えるべきものです。

確かに「より多く、より豊かに」が勝つための方程式だった時代は、目標が明確でした。戦略がなくても一生懸命に仕事をすればビジネスは成功しました。

しかしそんな古き良き時代は20世紀で終わりました。
いまは、いかに見えない顧客ニーズを素早く捉え、ライバルに先んじて市場を制することが必要な時代です。20世紀の勝ちパターンを変えずに一生懸命に仕事をしても、間違った方向に努力していると成果が上がらない

「組織が何を目指すのか?」
「それで勝てるのか?」
「それを具体的にどのような行動で実現するのか?」

これらが明確に問われる時代になりました。
これを決めるのが戦略です。

さらにいえば、戦略を作る力はいまやトップに限らず、ビジネスパーソン一人一人にとってもビジネスの基礎力です。
その肝心かなめのビジネスの基礎力を、トップがコンサルや部下に丸投げしていては、ビジネスがうまくいくわけがありません。

最近は戦略企画部門を廃止する会社も出始めました。戦略はトップ自身、あるいは事業部自身が責任を持って考えるべきもの、という考えが浸透し始めているのでしょう。

トップに限らず、日本のビジネスパーソン一人一人が戦略を作る力を高められれば、日本はもっと元気になります。

私が多くの方々がマーケティング戦略のキモがわかるようにわかりやすいビジネス書を執筆したり、朝活「永井塾」や夜学「永井塾」を行っているのも、そんな戦略策定力を一人一人に身につけていただくお手伝いができればとの想いからです。

戦略作りの外注はやめて、自分が戦略を考えられるようにしましょう。

 

 

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町田・相模原経済同友会様で講演しました

2017年3月9日、町田・相模原経済同友会様で講演しました。町田・相模原の経営者の皆様が、数多く参加されました。

随分前にここに住んでましたので、深いご縁を感じます。

 

懇親会にも参加。

かつて経済同友会の代表幹事を務められた、日本IBMの大先輩・北城格太郎さんのお話しも出て、色々といいお話しが出来ました。

有難うございました!

2017-03-25 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : takahisanagaicom

堀江会計事務所様主催 平成29年度 新春セミナーで講演しました

2017年1月14日(土)、広島県呉市にて、堀江会計事務所様主催 新春セミナーで講演しました。

 

堀江会計事務所様は、呉市の企業様に対して経営コンサルティングを行っておられます。若い方々が多く、とても活気がある会社でした。これは講演前に、堀江会計事務所様の皆様と撮った集合写真です。

堀江会計事務所集合写真

中橋社長に「社員の皆さん、挨拶もハキハキしていて、体育会系ですね」と申し上げたところ、「うちは居酒屋のような接客を目指していますから」とのこと。素晴らしいですね。

 

講演会では、堀江会計事務所様のクライアントである呉市のビジネス関係者の皆様が、100名以上参加されました。

堀江会計事務所様講演1

今回、1時間40分の講演を行いました。

堀江会計事務所様講演2

参加された皆様からは、こんな感想をいただきました。

■新しいことにチャレンジすることに迷いがなくなった。

■とてもわかりやすく色々気づく点も多く、今後の課題が明確になりました。今後の人材育成に役立てたいです。我が社を好きになって貰えるように取り組むことが大切。これが原点。

■企画・キャンペーンを検討する上で常に意識する内容でした。阿智村のストーリーは以前テレビで見たことがありました。すばらしい話しにさらに論理的なマーケティング内容を加えたお話し、楽しかったです。

■すばらしかったです。解決するためのヒントを得たように思います。どんなときも、最後は「人」ですね。

■すべては「人」だと改めて学ぶことが出来ました。自社の強みをもう一度考え、理解することの大切さを学びましたので、社内で実践してみます。自社の素晴らしい価値を大切なお客様へ提供し、お客様の期待を上回り続けることを行います。

■お客様の喜びが我々の喜びと日頃思っていたので、我が意を得たりです。

 

講演後、堀江会計事務所様の中橋社長とツーショットです。

堀江会計事務所握手

このような機会をいただき、有り難うございました。

 

ところで今回の講演では広島に前泊し、講演当日の朝、呉市に入りました。

呉駅

呉は瀬戸内海でも良港に恵まれた街で、戦国時代は村上水軍の拠点、戦前は帝国海軍、戦後は海上自衛隊の拠点になっています。

呉の港

あの世界最大の船艦・大和も、ここで建造されました。

ということで、早めに到着しましたので、講演前に、大和ミュージアムへ立ち寄りました。

これは戦艦大和の1/10模型です。全長26mもあります。

戦艦大和

海上自衛隊呉資料館もあります。ここは通称「てつのくじら館」とも言われ、退役した本物の潜水艦も展示され、実際に中に乗船することができます。

潜水艦

前々から「呉の街に来たい」と思っていたのですが、今回願いが叶いました。
呉市には、呉市ならではの強みもあることを改めて実感しました。 

そして改めて思ったのは、平和はとても大切だということ。戦争がない世の中にしたいですね。

 

 

2017-01-16 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : takahisanagaicom

長野IBMユーザー研究会様で講演しました

2016年10月26日、長野市内で行われた長野IBMユーザー研究会様セミナーで講演しました。

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昨年11月19日に続き、2度目となる長野IBMユーザー研究会様の講演でした。

このようにお招きをいただき、本当にありがたいことですね。

 

参加された皆様からは、このようなご感想をいただきました。

・今回も気づかされることが多く、大変参考になりました。

・前回からバージョンアップした内容で、ためになりました。

・当社は物からサービスを売る転換期として、非常に良いテーマで参考になりました。

・「ターゲット顧客は?」という考え方に留まらず「社員に感動を与えるには?」「モチベーションをUPさせるには?」といったヒントをいただきました

・現在、社内プロジェクトで、フレームワークを実施しており、自社の強み、消費者の課題等、事例を元にとても参考になりました。

・とても参考、勉強になりました。来年も是非ご講演いただきたいです。

・永井様の講演をまたやっていただきたいです。

 

皆様、ありがとうございました。

 

2016-10-27 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : takahisanagaicom

価格を上げつつ、顧客離れを防ぐ方法は、一つしかない

比較するビジネスウーマン

価格には「弾力性」と言われる性質があります。

価格を下げると需要は高まり、価格を上げると需要は減ります。

そこで「価格を下げて需要を高めよう」と考え、品質度外視で価格勝負に陥り、悪循環に陥ってしまう業界も少なくありません。

そこで拙著「100円のコーラを1000円で売る方法」では、「価格を下げずに価値を上げよう」と提唱致しました。

 

一方で、円安進行で原材料の輸入価格が増えてしまい、値上げをせざるをえない会社が増えています。その結果、顧客の買い控えを招いてしまっているケースも少なくありません。

先にご紹介したように、価格には弾力性がありますので、価格を上げると需要が減るのは必然です。

価格を上げて、なおかつ価値も上げることで、顧客離れを防ぐことができます。

 

「そんなのは、難しい」と思われるかもしれません。しかしそれを見事に実行したのが、昨年4月の消費税増税の際のセブンの対応です。

消費税増税に価格引き下げで対応して苦戦しているライバルを尻目に、「安くはないけど高品質」を売りにセブンプレミアムの品揃えを強化し、消費税増税後も成長が続いています。

 

価格を上げつつ顧客離れを防ぐには、結局価値を高める方法しかありません。当たり前のことですね。

そして顧客に対する価値を高めることは、企業として常に努力し続けなければならないことなのだと思います。

 

2015-05-11 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : takahisanagaicom

安いだけでは、人はモノを買わない。安さにも戦略が求められる

ビジネスでは、私たちはつい「価格を下げれば顧客は振り向いてくれるだろう」と思いがちです。

しかし消費者の私たちは、安いだけでは決してモノを買おうとしません。

買い物

 

私は講演で参加された方々に「どうしても欲しいと思ってモノを買った時、決め手は何でしたか?」とお尋ねします。ほとんどの場合、参加者からは「利便性」「価値観」「お気に入り」などが理由として挙げられます。

中には1/4ほど「価格が安かったから」を理由に挙げる方もおられます。しかしその際には必ず「利便性」「価値観」「お気に入り」といった理由と組み合わさっています。

つまり私たちは、自分が消費者としてお金を出す場合のことを振り返ると明らかな通り、満足できないものには、安くてもお金を出しません

しかしビジネスの世界に戻ると、このことをつい忘れがちです。

 

2015/3/5の日本経済新聞の記事『安さにも「戦略」不可欠 好調組は付加価値で勝負』でも、同じことが書かれています。

—(以下、引用)—

単純な価格の見直しでは顧客は振り向いてくれない。戦略性のある「安さ」が求められている。

……その中で好調なのは鳥貴族だ。

主力メニューの焼き鳥の原材料には国産鶏を使用。串刺しなど店内調理を維持することでおいしさを守る。一方でメニューはできるだけ増やさず、お通しも出さない。この結果、料理だけでなく、「ザ・プレミアム・モルツ」(中)などメニューはすべて280円。「安くてうまい」という理由から若者から圧倒的な支持を集めている。

……集客増へ値下げは手っ取り早いが、需要の先食いという面もあり、質を伴わないと効果は続かない。低・中価格帯でも個性のない商品には消費者が振り向かないボリュームゾーン不況の時代、値下げにも不断のイノベーションが欠かせない。

—(以上、引用)—

価格勝負をする際にも、単に安いだけではなく、さらに付加価値も求められているのです。

 

 

2015-03-12 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : takahisanagaicom

毎日ブログを書くことのありがたさ

先日のブログでも書きましたように、ここ5年以上、毎日ブログを書いています。

「よく続きますね」「大変ですね」と言われることが多いのですが、自分としては「朝晩歯を磨く」「毎日風呂に入る」のと同じ位の感覚で、日課になっています。

 

あらためて感じるのは、ブログを書くこと自体が、自分の知識の整理になるということ。

そして積み重ねることで、自分の力が徐々に蓄積されていくということ。

 

新しい本を書いたり、講演の題材を考える際には、インプットした情報を整理して、自分なりのアイデアにして、それをわかりやすく伝えられるようにすることが必要です。

「文章を書く」という作業は、そのような自分の思考をまとめる上で、実に有効な手段です。

実際、文章を書いているうちに、断片が次第に繋がり、関係が見えてきて、潜在意識の底からアイデアが生まれることもよく経験します。

また、長年ブログを書き、見直す作業を続けていると、自分の文章のわかりにくさを自分で客観的に見ることができるようになり、よりわかりやすい文章を書かなければ、と考える意識付けもできるようになります。

 

日頃、問題意識を持っている内容をブログに書き、後日整理・統合して、記事にしたり、本や講演に使うことも多いのです。

 

特に「第三者の方々が読んで下さっている」という点が重要です。自分だけが読める環境で書いても、毎日書く動機付けや、読みやすくする動機付けがなくなります。

私自身、あまり意思が強い方ではないので、「毎日書いています」と宣言したりして、ある程度強制的に自分を追い込む環境が必要です。

 

今後もブログを書き続けていきたいと思います。

 

2015-03-09 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : takahisanagaicom

「お客様が買う理由」を考えるための枠組みは、当たり前のことだった

色々な業界のお客様にお目にかかって、お話しをしていますが、実感することがあります。

「お客様が買う理由」(バリュープロポジション)がどの業界でも重要であること。

そして「お客様が買う理由」(バリュープロポジション)を考えるための方法論は、どの業界でも比較的共通であることです。

 

最近の講演では、

「お客様が買う理由」をいかに作るか?
「ニーズ断捨離」時代に求められる思考の変革

という演題で講演し、「お客様が買う理由」(バリュープロポジション)を考えるための次の枠組みをご提案しています。

(1) 自社の事業は何か?
(2) 自社の強みは何か?
(3) その強みを必要とするお客様は誰か?(= ターゲット顧客)
(4) そのお客様が必要とすることは何か?(= 顧客課題)
(5) お客様が自社を選ぶためにどうするか?(= 解決策)
(6) バリュープロポジション(お客様が買う理由)は何か?

これまで、IT企業、食品製造業、食品流通業、不動産開発業、旅行業、保険業、地方自治体、出版業、情報資産管理業など、色々な業界で講演や研修を行う機会がありました。

 

そしてわかったことは、この枠組みはどの業界でも有効だということです。

考えてみれば、この枠組みは何も新鮮なことはありません。当たり前のことです。

しかし成功している企業は、常に継続的にこれをリアルな顧客を相手に見直しながら、愚直に取り組んでいます。

「マジックはない。愚直にオーソドックスに継続するのみ」なのだな、と実感します。

私自身も、改めて愚直に継続していきたいと思います。

「できること」でなく、「やるべきこと」を考える

私たちはともすると、「できること」「やってきたこと」「言われたこと」をもとに、新製品などの戦略を立てがちです。

確かにそれらも必要なことはあるでしょう。しかしこれらは、現在から過去を見ています。「できること」だけしか考えないと、発展性がなく、いずれ行き詰まります。

 

本来、考えるべきは、「やるべきこと」や「あるべき姿」。

たとえば、「お客さんが実はこんなことで困っている。こうやって解決できるかもしれない。だからこんな製品を開発しよう」という考え方ですね。

「やるべきこと」や「あるべき姿」は、現在から未来を見ています。言い換えれば、未来志向の考え方です。

 

ただ多くの場合、「やるべきこと」と「できること」は一致しません。

たとえば、必要な技術が不足していたり、販売手段を持っていなかったりします。

しかし「やるべきこと」と「できること」を見極めておけば、そのギャップが把握できます。

たとえば、どんな技術が不足しているのか。あるいは現在の販売チャネルに加えて何を補強すればいいのかがわかります。

ギャップがわかれば、そのギャップをいかに埋めるのかを考えていくことになります。

「現状」を「あるべき姿」に、ステップを踏んで近づけることになります。

 

「できること」「やってきたこと」だけではなく、「やるべきこと」「あるべき姿」は何か、常に未来志向で考えるようにしたいものです。

2015-02-25 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : takahisanagaicom

「時間管理」を考える前に、必要なこと

4年前に「残業3時間を朝30分で片づける仕事術」という本を書いた関係もあって、「時間管理」に関する取材依頼をよくいただきます。

そこで改めて考えてみました。

 『そもそも、「時間管理」って、何だろう?』

実は、「時間管理」という言葉は、誤解を与えかねない危険性があるように感じています。

「何のための時間管理なのか」というと、「自分の時間」、より広い視点で考えると、「自分の人生」を、より意味があるものにするためではないかと思います。

人生の時間は、誰でも有限です。

いつ人生の終わりが来るかはわかりませんし、過ぎ去った時間は、二度と戻りません。

「時間管理」とは、「いかに意味のある時間の使い方をすべきなのか」を考えることなのではないでしょうか?

では、ビジネスの世界で「時間管理」はどのように考えればよいのか?

最初に必要なのは、「目的管理」。

次に、その目的を達成するための「成果管理」。

「時間管理」は、限られた時間の中で、必要とされる成果をいかに生み出すか、という観点で考えるべきではないか、と思います。

このように考えると、

 目的管理 → 成果管理 → 時間管理

という順番で、検討することが必要なのではないかと思います。

2015-02-24 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : takahisanagaicom