個人が目指すべきは、「ブルーオーシャン」ではなく、「ブルーアイランド」

日経ビジネスオンラインの記事「ボロ儲けにはコツがあった!」で、沖有人さんが、「ブルーアイランド戦略」という考え方を提唱されています。

—(以下、引用)—

 正直に言う。私は今、市場を独占している。

 そう言うと多くの読者は驚くかもしれない。だが、何てことはない、自分で市場を創ってしまえばいいだけのことだ。

 ….他人がやっていない小さな事業を見つけて、こっそり始めるのだ。そして一気にノウハウを確立してしまえば、大手企業といえども、簡単には手を出してこない。しかも、市場が小さければ、「まあ、あの分野は面倒だからやめておこう」となる。

 そして、小さいながらも市場の独占が続く。これほど、おいしい事業はないと思う。なにせ、競合相手がいないのだから。

 私はそれを「ブルーアイランド戦略」と名付けることにした。

—(以上、引用)—

 

補足しますと、この「ブルーアイランド戦略」は、「ブルーオーシャン戦略」と対比しています。

「ブルーオーシャン戦略」とは、競争の激しい市場「レッドオーシャン」(鮫がお互いを食い合っていて血の海になっている状態)を避けて、競争のない市場「ブルーオーシャン」を切り開き、そこでダントツのシェアを確保し、先行者利益を享受する戦略です。

しかし、ブルーオーシャンと言えども、いずれ競合が攻めてきて、競争になります。

当記事で提唱されている「ブルーアイランド戦略」は、この市場規模がグンと小さい市場で市場を独占する考え方。

あとから大手が参入しようにも、市場で見込まれる収益よりも参入コストの方が大きく、しかも先行者に勝てる見込みも小さく、結局大手にとっては採算が合わないため、独占を続けることができます。

例えば、業務用ミラーで国内7割以上のシェアを握る社員10名のコミーも、まさにこの例ですね。業務用ミラーとは、よくコンビニや書店の天井にある、あの鏡です。業務用ミラーの市場規模は数億円ですが、コミーの業務用ミラーは、エアバスやボーイングのようなグローバル企業でも採用されています。

 

このように考えると、この「ブルーアイランド戦略」は、市場が小さく、顧客ニーズが特殊である程、成功する確率が高まる、ということが分ります。

大企業にとって、このような小さい市場は参入するのが難しいだけでなく、参入した後でも、大企業は手広く事業をしていることが多いので専任担当者を置くことが困難で、多くの場合、他製品との兼任になることが多いのです。結果として継続性を持って取り組むことが難しくなり、結果的に成功する可能性は低くなります。

小さな会社ではそれが可能になります。全精力をその小さな市場に集中することができます。

 

さらに、小さな会社よりも個人が取り組むと、もっと小さな特定領域に専任でドップリと集中できます。

ネットが普及して、個人でも様々なことを一人で行うことが可能になりました。例えば、セミナー開催の案内や通知。昔は大変で人手がかかる作業でしたが、今は個人でもメールやWebを使えばとても簡単です。

それでも自分でカバーできない部分(例えばセールス)は、その分野に強い会社や個人と協調して補うことができます。

そうやって、自分は自分だけが強みを提供できる特殊ニーズにフォーカスすることで、「ブルーアイランド戦略」は成功する可能性が高くなります。

 

この場合の課題は、

①いかに自分しか持っていない強みを活かせる「ブルーアイランド」を発見するか?

②そのブルーアイランドでいかに素早く自分の経験値を貯めてノウハウを確立し、後からの参入者と差別化できるようにするか?

③その市場に全面的に依存してしまうので、いかにそのリスクを管理するか?

ということですね。

 

個人にとって、ますます面白い時代になってきた、と感じます。

田坂広志先生が、「プロフェッショナル進化論『個人シンクタンク』の時代が始まる」で提唱されている「個人シンクタンクの時代」が、まさに到来しているのですね。

 

 

「カスタマー・マイオピア」という考え方

目の前の顧客からの要望を、全てと思ってしまう。

そして、目の前の顧客が言うあらゆることに、そのまま対応しようとする。

そういうことはありませんか?

 

実際には目の前の顧客以外にも、多くの顧客がいます。他の顧客は、さらに100件の別の要望があるかもしれません。長期的に、顧客全体の要望にどのような優先順位で対応するのかを考えていくことも必要です。

さらに目の前の顧客自身が、全ての自分自身の要望を理解しているとは限りません。気が付いていない要望もあるのです。(例えば、こんな例のように)

 

目の前の顧客からの要望を聞き届けることは、大切なことです。

しかし、目の前の顧客の言っていることだけに対応していれば安泰かというと、そうではありません。

顧客が言うことだけに対応していたら、恐らく、Appleの様々な革新的な製品は生まれていませんでした。素晴らしい製品ばかりですが、機能割切りの製品も多いからです。

日本でも、ウォークマンのような製品も生まれていなかったでしょう。屋外での音楽体験という新しい価値を提供した一方で、録音機能という顧客要望への対応を切り捨てています。

 

目の前の顧客が言うことを全てと考えて、顧客が言っていることだけに忠実に対応することを、欧米のマーケティングの世界では、customer myopia (カスタマー・マイオピア: 顧客近視眼)と言っているようです。

日本語で「カスタマー マイオピア」で検索してもほとんど見つかりませんが、英語で「customer myopia」で検索するといくつか見つかります。

たとえば、こんなサイトや、こんなポスターです。

 

実は現在、執筆中の新著は、この「カスタマー・マイオピア」からの脱却がテーマ。従来のマーケティングの本とは、かなり変わった趣きになる予定です。

秋には、書店に並ぶようにしたいと思っております。

 

 

顧客に言われれば何でも引き受ける→過当競争に→消耗戦→低収益、から抜け出すには

今週・来週とお休みをいただいて、次回の本を書いています。

次回の本は再びマーケティングがテーマ、「顧客志向とは何か?」を掘り下げた本になります。

 

「お客さんが言うことを徹底的に聞き、全て引き受ける」という考え方、多いと思います。

もちろん、お客さんの言うことを真剣に聞くということは大切な姿勢です。しかし、お客さんの全ての要望に徹底的に答えることは、必ずしもよい結果を生まないこともあります。

昨日2011/8/12の日本経済新聞の特集「復興の道筋を聞く」で、コマツの坂根正弘会長のインタビュー記事が掲載されています。坂根会長はここでもまさに同じことを話しておられます。

—(以下、引用)—-

縮む国内市場にプレーヤーがいっぱいいて消耗戦をやっている。世界の製造業に欠かせない部品・素材企業が国内に多いことが震災で分かった。ただ過当競争だから、顧客に言われれば何でも引き受ける。私が社長なら断らせる。こうした体質がいろんな業界で低収益を生んでいる。

—(以上、引用)—-

本当は根っこの部分を抑えているので、強いはずです。それなのに消耗戦を繰り返している。

では、どうするのか?

既に当ブログやこれまでの本で色々と書いてきたことですが、今回の本では、そのあたりを深く掘り下げていく予定です。

できれば紅葉の時期には、書店に並ぶようにしたいですね。

 

売上げのカンフル剤のセールも、乱発すると効果がなくなり、企業の体力も落ちる

日経ビジネスオンラインに『もう「通常価格」が信じられない セールの乱発で消費者が離れるアパレル業界』という記事が掲載されています。

—(以下、引用)–

「あまりにもセールが多すぎる。一体いつが買い時なのか」――。

(中略)

「シークレットセール」「会員先行セール」「ネット限定セール」「ファミリーセール」「延長セール」・・・。まさに、セールの大乱発である。

(中略)

一消費者の立場で見ると、「こんなにセールが多いなら、今慌てて買う必要はない。もう少し安くなってから買おう」と感じてしまうし、何より通常価格に対する信頼を失う。

(中略)

通常価格で売られる期間が数日しかない商品もあるという。うがった見方をすれば、通常価格はもはや、まやかしの価格とも言えるのではないだろうか。

低迷する衣料品業界にあって、セールがカンフル剤となることは十分に理解できる。しかし回数が増えすぎれば、それはもはやカンフル剤としての役割を果たさなくなる。

(中略)

一消費者としても、セールの乱発が治まれば、いつ買えば得なのかと迷わなくて済むし、いつ買っても何となく損した気分にならなくて済む。何より「今しか安くない」というバーゲン独特の醍醐味を楽しむには、その回数は少なく、期間も短い方がいい。

—(以下、引用)–

値引き販売は、カンフル剤というよりも、麻薬と言った方がよいかもしれません。

このことは、2008年にITmediaに連載させていただいた「戦略プロフェッショナルの心得」でも書かせていただきました。

「値引き販売という麻薬」

この記事にも書きましたように、日本国内で値引きと販売状況の関連性を長期的に調査した研究があります。「値引きを頻繁に行う店は、あまり値引きをしない店と比べると、販売が落ちる」という結果が出ています。

消費者は値引きした時しか買わなくなるので、値引きしない時の販売がガクっと落ち、店が閑散としてしまいます。

さらに定価で買った翌日に値引きをしたことを知ったり、自分は定価で買ったのに他の顧客には大幅値引きをしたことを知った顧客は、確実に満足度が下がりますし離れていきます。

 

「安く買いたい」と考える顧客を満足させて、この「値引き販売という麻薬」を避ける考え方の一つが、「EDLP(エブリーデイロープライス)」という戦略です。毎日最低価格を保障する方法です。決して新しい戦略ではありません。ウォルマートが有名ですが、100円ショップもこれに含めることができるかもしれませんねね。

アパレル業界では、ユニクロやしまむらがこのカテゴリーでしょうか?いずれの会社も低コストで収益を上げる体質を創り上げているので、高収益です。

 

日経ビジネスオンラインの記事でも書いているように、「値引き販売という麻薬」から抜け出すためには、今までの「セールで一気に販売」という手法から脱皮して、新しい価格戦略を考えることが必要なのだとと思います。

 

 

AKB48のビジネスモデル

2011.6.6の日経ビジネスの記事「ビジネスにもAKB48旋風」で、東京大学・妹尾堅一郎特任教授の言葉が紹介されています。

—(以下、引用)—

「”手が届かないスター”を育ててきた昔のアイドル商法とは異なり、AKB48の手法は”どこにでもいる普通の女の子”を集めつつも、組合せを変えたり、総選挙で”部品”単体の価値を高めたりする。CD販売だけでなく、イベントやグッズ、さらには地域ごとに類似グループを作るなど、企業が参考にすべきノウハウが散りばめられている」と妹尾特任教授は話す。

—(以上、引用)—

記事にも書かれているように、自動車のように部品段階から独自技術をすり合わせて作る「インテグラル」型モデルではなく、典型的な「モジュラー型」モデルですね。

今回の記事をきっかけに、改めてWikipediaのAKB48の項目を見てみましたが、かなりシステマティックに運営・構成されていることを再認識しました。

すり合わせで作るインテグラルモデルはパターン化しにくくなかなかシステム化できない反面、モジュラー型はパターン化しやすくシステム化することで強みが出てきます。

このようにシステマティックな仕組みを作り上げて、いわゆる「AKB48というエコシステム」構築まで持ってこれたことが、成功の要因なのかもしれませんね。

 

魚のいないところでは、魚は釣れない

釣り糸を垂れるなら、魚がいそうなところで垂れるべきですよね。

考えてみると当り前のことです。当り前のことなんですけどね。

私は釣りはしないので、釣りをする人の気持ちは実はよく分かっていませんが、

・あの木の下が好きだから、何が何でも釣り糸を垂れよう

とか、

・ここは浅瀬で魚がいないけど、この浅瀬が好きだから釣り糸を垂れよう

なんて思う人は、あまりいないのではないでしょうか?

目的は魚を釣ることなのですから。

 

しかし、マーケティングでは不思議と、その場所に魚がいるかどうか(=その市場に顧客がいるかどうか)、よりも、その場所が好きかどうか(=その市場(あるいは製品や技術)そのものが好きかどうか)で、好きな場所で釣り糸を垂れる人が多いような気がします。

もちろん、私もそんな罠にはまりがちなので、自戒を込めてです。

 

釣りをされる方の中には、「魚が釣れるかどうかに関わらず、その場所で釣り糸を垂れて、時間を過したい」という方もおられると思いますし、そのような釣りのスタイルは必ずしも否定するべきではないと思います。

ビジネスでも、「その市場に顧客がいるかどうかなんて関係ない。単に好きだからやっている」という人がいるかもしれません。

それが。個人が趣味の延長として行っているのであれば、よいと思います。

しかし、多くの人達の貴重な時間を使い、ビジネスで収益を上げて、その収益でさらに継続的に社会貢献することを期待されている企業としては、あるべき姿ではないようにも思います。

釣りをするのであれば、魚がいるところで釣り糸を垂れたいですね。

 

 

スターバックスの650円コーヒー「スターバックス リザーブ」を体験してみた 【写真付き】

先日「スターバックスが650円のコーヒーを販売開始。その意味は?」でご紹介した、スタバの650円コーヒーを、先週土曜日に体験してきました。

ニュースで出ていた銀座マロニエ通り店に行きました。

この店は2Fに客席があるのですが、週末はいつも満席です。

レジにも人が沢山並んでいました。

普段は2Fの席を確保してからレジに並ぶように店からガイドがあるのですが、「650円コーヒーを頼みたいのですが」というと、1Fに「STARBUCKS RESERVE ★/R」と書いてある専用席(3人分)とレジにそのまま案内されました。

VIP扱いです。

Starbucksreserve1

 

忙しい土曜日にも関わらず、このコーナーには店員の方が1-2名ついています。

席に座って注文すると、目の前で専用のコーヒー豆を挽いてくれます。

Starbucksreserve2

 

さらに、米国で特許取得したというバキュームプレスで一杯ずつ作っている様子を見ることができます。

挽いたコーヒー豆にお湯を注ぐと、それがムクムクと盛上がってきて、真空技術で盛り上がりが一気に収縮し、コーヒーが抽出されます。

Starbucksreserve3

 

Starbucksreserve4
 

 

Starbucksreserve5

 

ちなみに、このバキュームプレス、日本では銀座マロニエ通り店と京都の店の2店にしか入っていないそうです。

スターバックス リザーブの専用コーナーで飲んでみました。

Starbucksreserve6

 

普段の300円のスタバのコーヒーと違いますね。

トールサイズのみなのですが、いくら飲んでも、「もっと飲みたい」と思えるような味です。

世の中の700円~1000円のカフェの味と比較すると、….どうかな。これは好みかもしれません。

 

本当は、スタバが「上質のコーヒー」に留まらず、それに伴う「ワンランク上の上質の体験」をも提供してくれる店舗を展開してくれるといいですね。

あのスタバのことですから、既にお考えかもしれませんね。 

 

「朝のカフェで鍛える実戦的マーケティング力」の書評、改めてまとめてみました

2009年9月、秀和システムさんから出版した「朝のカフェで鍛える実戦的マーケティング力」ですが、ありがたいことに、ブログやメルマガなどで多くのコメントをいただいています。

書評のリンクと、本文からコメントの一部を抜粋したものを、まとめてみました。

■Webook (松山真之助さん)
とても読みやすく、また、ためになるマーケティング読本。超おすすめ!

■『中小企業のマーケティング力』 (小さなはちみつ屋の独り言)
初心者でもわかりやすくBtoBの中小企業のマーケティングに良い助けになると思ったので紹介します

■『実践的マーケティング』(小屋番0618さん)
この本をもし私が サラリーマン時代に読んでいたらどんなに助かっただろうか

■『朝のカフェで鍛える実践的マーケティング力』 (porcaroの日記)
感想としては、great!と言いたい。初学者にはうってつけの教材だと思う。マーケティング理論をなるべく平易な内容にした実践に当てはめていくのが非常にわかりやすい

■『朝のカフェで鍛える実戦的マーケティング力』(パラナガさん)
マーケティングに関する本のなかで、社学者にはもっともとっつきやすく、分かりやすい本だと思います

■『今一番興味のある分野かもしれない本 [読書]』(dq さん)
この本を読みながら通勤しているが、商品企画というものに対して非常にとっつきやすい良本だと思う

■『永井孝尚「朝のカフェで鍛える 実戦的マーケティング力」』(hirologさん)
必要なマーケティング手法が優先度づけられ、そのうち優先度が高い内容を、正しい順序で提供していること、それがこの本の素晴らしいところだ。

■『[Book]朝のカフェで鍛える実践的マーケティング』 (Besus’s Blog(β.))
これまで、色々なマーケティング専門書を数十冊以上は読破している私ですが、知識中心であり、実際にどのように使えばよいのかといった点では、分からない
ことが多いのが本当のところでした。この本で、実践的な観点からもう一度これまで身につけた知識を見直すことが出来たので良かったと思います。

■『朝のカフェで鍛える実戦的マーケティング力』 (逍遙乎さん)
本格的にいろいろな本を読む前にこれを読んでおくんだったと、後悔しましたが、これは現実的にありえない感想でした。この本は、今年の10月10日、1ヶ月前に発売されたばかりだったからです。

■『【読書370】「朝のカフェで鍛える実戦的マーケティング力」』(陽平さん)
 マーケティングは、ベタに4P・3Cをベースに論じられたものもありますが、学術的ではなく、需給のバランスなども視野に入れながら実践的に書かれています。

■『まとめて書評とか』(はせぱい。さん)
「スムーズに頭に入る。」という点においてはこの本以上のB2Bマーケティング本はないんじゃないだろうかという感想。どんな業種であれ、最低限のマーケティングは必須知識だと思うので、新卒社員の教育目的で必須図書にしてもいいんじゃないかと思いました。

■『(感想文)「実践的マーケティング力」』 (shinkstさん)
特にマーケティング領域は定義やコンセプトも多く整理が大変なのだけれども、実践でマーケティングを使う場合にどういう流れで行うのかをストーリーでわかりやすく説明している良書だと思う。

■『朝のカフェで鍛える 実戦的マーケティング力』 (読書な日々)
 これは、物語調になっていて非常に読みやすかった。主人公の女性が、希望だったマーケティング部に配属されるところから
話が始まる。叔父さんのアドバイスをもらいながら、一からマーケティングとは何か、どうしたらいいのかを学んでいく。あまり深くは突っ込まれていないが、
ポイントを押さえるのに分かりやすい話の内容であった。

■『朝のカフェで鍛える実戦的マーケティング~MBA流マーケティング入門編~』(マーケティング太郎さん)
 久々にマーケティング理論が詰まった本を読みました。MBA流マーケティングの入門レベルを知るには最適の一冊です。自分が主人公である企画マンになったら・・・という目線で読めるため、ちょっとした企業ドラマと理論の解説付きの内容なのでとても分かりやすくイメージしや
すくなっています。

 

 

オルタナブロガーの皆様からも、沢山のコメントをいただいております。

感謝です。

 

■『マーケティングは重要、でもどうやって身につければいいか』 「走れ!プロジェクトマネージャー!」(大木 豊成さん)
マーケティングはツールから入るのではなく、概念を理解することが重要だということ。顧客の言っていることを鵜呑みにするのではなく、本当の課題を見つけ、本当に顧客の役に立つことを考えること。市場は自社製品ありきで考えてはいけないことなど、大事なことが網羅されています

■『「朝のカフェで鍛える実戦的マーケティング力」を読んで』(久野麻美子さん)
これが法人マーケティングを志す方の一冊目となれば、最初から難解で消費財の例ばっかり満載の解説書で挫折することもなく、法人マーケティングのおもしろさと本質が掴めると思います

■『『朝のカフェで鍛える 実戦的マーケティング力』で学ぶマーケティングのおもしろさ』(山口陽平さん)
朝カフェは問題集であり教科書でもあるという点でマーケティングの教材として非常に優れていると思います

■『『朝のカフェで鍛える 実践的マーケティング力』をTwitterでつぶやきながら読んでみた(#twiyomi)』 (林雅之さん)
主人公を中心に会話形式を通じて、マーケティングの理解を深めていくというストーリーのため、非常に理解を深めながら読んでいくことができました

■『【朝カフェマーケ(3/5)】日本IBMのマーケティングを担う永井孝尚氏が、母校・慶應義塾大学の後輩の為に、KBC実行委員の開催するKBC Study Tourでマーケティングをレクチャー(予習編)』 (方波見 豊さん)
この書籍は、非常に長期にわたって売れると思います。シリーズ化をして頂き、いずれは大学や起業の教材となるよう、育っていくことを期待しております

■『永井さん著書「朝のカフェで鍛える実践的マーケティング力」』  (小俣 光之さん)
真の顧客志向とは?何度教わっても、本を読んでも、しばらくすると意識から消えてしまいがちなのですが、本書を読み直して再び反省しているところです。おそらくほとんどの仕事で役に立つ内容だと思います

■『マーケ担当に文句を言う営業も、そしてマーケ担当者自身も目を通してほしい本』 (加藤 恭子さん)
通称「朝カフェ」は、まるで会社の中で永井さんがERPベンダというか、エンタープライズ系のアプリを売っている際に起きうる問題を観察して、書かれたかのような印象を受けました

■『「忙しいのに売れない」「仕事がつらい」と悩んでいる営業にお勧めするこの3冊~「One to One」「朝カフェ」「英語でMBA」』 (吉田賢治郎さん)
ここに出てくるマーケティングの女性の成長を通して、マーケティング、顧客対応のための「視点」が得られるだろう

 

現在出版準備中の本は、本書と、第一作「戦略プロフェッショナルの心得」のエッセンスを元に、その後学んだことも追加しつつ、文章のボリュームは1/3程度に凝縮したものです。

3月下旬には発売できる見込みです。

 


 

 

スターバックスが650円のコーヒーを販売開始。その意味は?

スターバックスが、一部の店舗で、一杯650円の高級コーヒーの販売を始めたそうです。

今回は、豆がなくなり次第終了とか。

 

ここ10年、スタバやタリーズ、エクセルシオールのように、300円位でコーヒーを飲めてくつろげるカフェが世界中に拡がりました。

私も、雰囲気がよいので、よく入っています。

本やブログを書くためにカフェに行くこともよくあります。

実際、「朝のカフェで鍛える 実戦的マーケティング力」は、タイトル通り、かなりの部分をカフェでストーリーを考え、実際に書いて、校正しました。

カフェは結構集中できるので、私は大好きです。

値段が300円程度なのも助かります。

 

一方で、コーヒー一杯700円というカフェもあります。

先日、前から行ってみたいと考えていたカフェが銀座にあったので、入ってみました。

店の調度品全体が骨董品風。

たとえば座る椅子は100年前に教会用に作られたもので、背もたれの後側に聖書を入れられるようなポケットが付いています。

コーヒーがまた旨いこと。後味が爽やかです。

店主曰く、「納得のいく品質のコーヒーを出すためには、この金額が必要」だそうです。

こだわりの店ですね。

お客さんも沢山入っていました。

時には満員で入店できないこともあるとか。人気の店です。

 

そう言えば、スタバやタリーズ登場前、バブル前後の時期は、カフェラミルのように、700円から1000円でコーヒーを出すチェーン店が、都内に結構あったように思います。

料金は高いので普段は入れませんでしたが、落ち着くので、時々入っていました。

 

これだけ300円台のカフェが世の中に拡がった現在、高付加価値・高価格路線のカフェは、300円台のカフェとうまく棲み分けができ、新しいマーケットセグメントとして成立するようにも思います。

今回のスターバックスの試みが好評であれば、新しい市場が生まれる可能性もあります。

普段行くことは難しいかもしれませんが、消費者の私たちにとって選択肢が増えるのはいいことですね。

 

新市場「0泊2食」

2011年2月19日の日経プラスの記事「旅館をお得に利用する」で、初めて見る言葉に出会いました。

「0泊2食」

宿泊なしで、温泉や昼食・夕食を楽しんでもらおう、という旅館のサービスです。

ちゃんと部屋も用意され、昼にチェックインし、夜の8時頃に帰るという使い方です。

「0泊2食」で検索してみると、色々と出てきます。

1泊2食だととても高い高級ホテルや旅館も、かなり安くなるようです。

たとえば、箱根のあるホテルでは、豪華ランチと豪華ディナーだけの料金で考えてもかなり格安で、かつ、温泉も楽しめて、くつろげる部屋も用意されています。

 

記事にもあるように、「料金が高く気軽に行けない」という旅館に対する消費者のニーズに応えたこのサービス。

新しい顧客の需要に応える新サービスで、今までホテルや旅館を使わなかった顧客層を取り込み、新市場を開拓しつつあると言えるのではないでしょうか?

 

 

「なぜ、その商品を買わなければいけないのか?」(ある充電池からの学び)

「オルタナティブ出版」の話しは一休みして、マーケティングの話しです。

先週末、家族に頼まれて、充電池を買うことになりました。

買ったその日に出先で使う予定だったので、充電器セットも持参です。

「充電池なんて、どこも同じだから、サクっと見て、サクっと買おう」

と思っていました。

近所のコンビニに置いていなかったので、ある家電量販店で探すことに。

 

充電池売り場を見たところ、ある商品が目に留まりました。

まず、「充電済」の文字。

これは今日は充電しなくても使えるということ!?

これで、この商品を買うことにしました。

さらによく見ると、

「この電池の充電は太陽エネルギーを活用しています」

うーむ、心のツボを突いていますねー。

速攻で、この商品に決めました。

ちなみに、サンヨーの「eneloop lite」という商品でした。

そう言えば、値段はチェックしなかったような気もします。

 

この商品、消費者に対して「なぜ、その商品を買わなければいけないのか?」という理由付けが明確に提示できています。

「充電池を買ってからすぐに使いたい」という私のような消費者の立場に立ったニーズの理解と、「どうせなら、ささやかでもCO2削減に貢献したい」というツボを押さえたメッセージが効いています。

ここを押さえれば、価格競争から抜け出せます。

まさに、明確なバリュープロポジション。

典型的なコモディティ商品である充電池から、学ばせていただきました。

 

ただし、時間が経って他社が同じことを始めると、再び同質の競争が始まるので、さらなる差別化が必要になります。

バリュープロポジションは、常に磨き続けなければいけないのですね。

 

「何でもできます」は、言わないようにしよう

昨日の「価格競争か?価値競争か?」 の続きです。

「ご専門は?」とお訊きすると、「何でもできます」という答えが返ってくることがあります。

でもこれは結局、「何でもできます」=「何も専門分野を持っていない」=「自分には、『売り』がない」と言っているのと同じだと思うのですよね。

言い換えれば、「何でもできます」=「誰でも出来ることしかできません」と、相手に受け取られてしまうということです。

成熟した市場では、「誰でも出来ることしかできない」ということは、「価値で勝負できない」ということですから、たとえば複数企業でコンペになった場合は価格勝負になり、一番安いところに決まります。

実際には、必ず企業や個人には何らかの「売り」があると思います。

たとえば、ある業界のお客さんのプロジェクトを長年やっていれば、その業界のことにはかなり精通するでしょうし。

あるいは、特定ソリューションを担当していれば、その強みも弱みも、他よりは分かっているはずです。

または、経理や会計、マーケティング、セールスといった職種でスキルを深めている場合もあるでしょう。

その「売り」がそもそも何なのかを考えることは大切なのですが、意外に時間を掛けて考えられていないように思います。

まずは「ご専門は?」と訊かれた時は、「何でもできます」は言わないようにして、具体的な「自分しかできない『売り』」を言えるようにしたいですね。

できれば、誰も手がけていない「ニッチトップ」が理想です。

価格競争か?価値競争か?

業界全体が成熟してくると、様々なものがコモディティ化し、価格競争になります。

価格競争は、スケールメリット勝負。

一番多く生産し売る企業(=トップシェア企業)がコストメリットを享受できるので、最安値で売っても利益を確保でき、生き残ることができます。

ですので、業界全体が成熟化してくると、生き残りのための合従連衝がさかんに行われます。

 

できれば、このような価格勝負から抜け出したいところ。

そのためには、価値で勝負すること必要です。(徹底的な低価格も価値の一つですが、ここでは取りあえずその議論は脇に置いておきます)

価値で勝負するために必要なのは、顧客の課題解決です。

しかし、一言で「顧客の課題解決」と言っても、これがなかなか難しいのですよね。

いかに顧客自身も気がつかない課題を見つけて、新しい解決策を提示できるか?

 

1974年にセブンイレブンは豊洲にコンビニエンスストア第一号店を開店しました。

34年後の2008年、コンビニエンスストア業界の日本国内売り上げは百貨店業界を上回りました。

 

1976年にヤマト運輸は「宅急便」という名前で、宅配便サービスを開始。

初日取扱量は11個でした。

33年後の2009年度、日本国内の全宅配便取扱量は31億個になりました。

これらは、「顧客自身も気づかない課題を見つけて解決した」新規ビジネス開発事例です。

 

価格競争は、究極的にはトップシェア企業が収益を上げます。

一方の価値競争は、顧客の細かいニーズに的確に対応した企業が生き残ります。

 

多くの企業が目指すべき答えは、価値競争だと思います。

 

顧客の不満は、誰が作り出しているのか?

店に行って待たされたり、あるいは注文したり買った品物が満足がいくものでなかったり、サービスが不十分だったりすることは、よく経験します。

なかには、店の店員にすごい剣幕で怒る顧客もいます。

しかし、店員やコールセンター担当者はこの仕組みの中で、対顧客担当として仕事をしています。

彼らにクレームしても、そもそも問題は改善しないことが多いのですよね。

では、誰が顧客の不満を作りだしているのでしょうか?

多くの場合、顧客の不満は、現場の人ではなくビジネスのデザインをする人が作り出しています。

それは経営戦略やマーケティング戦略を考える人間だったり、ビジネス開発をする人間、あるいはそれら全体に責任を持っている経営者です。

たとえば日経ITproの記事「顧客の不満は経営者が作り出している」は、まさにこの問題の本質について、IT投資の視点で指摘しています。

 

だからこそ、そういう立場にいる人こそ、現場で顧客の生の声をもっと聞き、顧客がどのようにすれば深い満足を感じるようになるのか、考え抜くことが必要なのですね。

 

日本経済新聞で、マンガで広告

日本経済新聞の社会面に連載されていたホイチョイ・プロダクションズの4コママンガ「宣伝会議版 気まぐれコンセプト」。

ページの右側下に4コママンガがあり、最後のコマの下に左側への矢印があって「左を見てね」とあり、矢印の先にあるページ左側下にコピーが掲載されている、という形式の広告です。

「広告マスターコース」の広告なのですが、コピーがなかなかよいですね。

2011/01/25のコピーは「検索しても、アイディアは出てこない」

最終回となる2011/01/26のコピーは「「伝わる」は「売れる」のはじまりです」

ううむ、なるほど、確かに。

思わず毎日見ておりました。

朝日や毎日、読売と違って、日経にはマンガがありません。

だから、この形が成立するのでしょうね。

目の付け所が素晴らしいと思います。

同じ広告スペースであっても、読まれる確率は高かったのではないでしょうか?

 

ある種の住宅広告が、どうしても違和感を感じてしまう件について

住宅広告を見ていると、気になることがあります。

お金がかかっていそうなゴージャスな広告。

間取りも広々としていて、素敵な住まいの様子が広告から伝わってきます。

しかし、なぜか肝心の情報がないものが、よくあるのです。

 

それは、住宅の価格です。

 

かなりの比率で住宅価格が明記されていない広告が散見されます。

 

売る立場からすると、

「家は一生モノ。いい物件なら、価格だけで判断すべきではないですよ」

とか、

「大切なのは、まずは物件が気に入るかどうか。価格は気に入ったら考えればいいですから」

という考えがあるのかもしれません。

あるいは、価格が決まっていない状況で、まずは早期に物件を広告し、世の中の認知度を上げたい、という考えがあるのかもしれません。

他にも、色々な考えや、事情があるのでしょう。

 

私は20年近く前に住宅を買いました。

私が住宅を購入した際には、地域、最寄り駅からの距離、間取り、環境と同じくらい、価格が重要な要因でした。

自分の収入で買える物件は決まってきます。

どんなにいい物件でも、自分が手が出ない物件は買えません。

ですので、価格情報がない物件は、最初から検討から除外していました。

同様の方は、多いのではないでしょうか? 

(ちなみに、家は数年前に手放して、今は借り家住まいです)

 

価格情報がない住宅広告を見るたびに、「せっかくお金をかけて広告を出しているのに、顧客が必要とする情報を掲載していないのは、なぜだろう?」という違和感を感じてしまうのは、私だけでしょうか?

 

グルーポンなどの共同購入型クーポンで、どのような顧客が集まるのか?

グルーポンはじめ、共同購入型クーポンが新市場として大きく成長しています。

プロモーションに際して、ある一定以上の顧客数が確保できることは、企業にとって大きな魅力。

圧倒的な低価格で商品やサービスが提供されることは、顧客にとっても大きな魅力。

共同購入型クーポンには、確かに成長する大きな理由があります。

 

ところで、共同購入型クーポンでは、どのような顧客が集まるのでしょうか?

大木さんが「僕がグルーポン(および類似サービス)を使わないシンプルな理由」というエントリーで、次のように書かれています。

5,000円のコースを1,000円で食べた人は、次回5,000円支払って行くでしょうか?僕はここに疑問があります。

「行かないだろうな」

また高木さんも、「グルーポンとソーシャルスキル。」で、次のように書いています。

最近ちょっとショックだったのは、「このお店いいなー、口コミで応援したいな。」と思っていたお店が、クーポンを何千枚も売っていたこと。(笑)

しかも、クーポンを使える曜日や時間帯などを制限していないらしく、予約でバッタバタになっていると聞いて、「あらら、もう常連さん、わざわざ予約しては来てくれなくなるね。」と思ったものです。いいのかなぁ。

ここに答えの糸口があるように思います。

 

2年余り前に、「戦略プロフェッショナルの心得(4):値引き販売という麻薬」で書きましたが、値引きを頻繁にする店には、値引きする時点では沢山の客が集まり、売上が伸びます。

しかしそれはその時だけ。通常価格では客が来なくなります。定価で買う客は離れていくためです。

通常価格では売れなくなり、利益はどんどん削られます。

つまり特売や値引きをすることで、本来は適切な価格で購入していた消費者の買い控えを生んでしまうのです。

値引きは麻薬のようなもの。

このような状態で利益を出すためには、単価を下げざるを得ず、商品やサービスの品質を下げざるを得なくなります。

 

そこで、共同購入型クーポンですが、大幅値引きを求めて集まる顧客は、通常価格では購入しない顧客である可能性が極めて高いように思います。

  

一方で、共同購入型クーポンならではの価値もあると思います。例えば、

・何はともあれ、目玉商品をアピールして、リアル店舗に来て欲しい。

・集客力が弱いので、大量集客をしたい

・一定の固定費がかかっているので、稼働率を向上させることで、収益向上を図りたい

・サンプル商品をお試しで提供し、市場調査をしたい

共同購入型クーポンは、TwitterやFacebookのようなソーシャルウェアを活用して、クチコミで一緒に共同購入する人を拡げていくことができます。

単に低価格を訴求して顧客を集めるのではなく、共同購入型クーポンならではの価値と仕組みを活かして、狙った顧客を集客し、ビジネスに繋げていく仕組みを考えていく必要がありそうです。

 

あなたが何を買うかで、社会の未来は必ず変わる

昨日、電車に乗って車内を何気なく見ていたら、あるエコ系雑誌のつり広告が目に入りました。

市場やマーケティングの考え方を、短い言葉でとても的確に表現されていて、目が釘づけになりました。

こんな言葉でした。

社会を動かすのは、あなたの買い物だ。
何を買うかで、未来は、必ず変わる。

これは市場というモノの性質を的確に捉えた言葉ですね。

 

顧客から共感を得ることで、企業は成長します。一方で昨今の企業の不祥事からも分かるように、顧客からの支持を失うと、企業の業績は急速に落ち、最悪の場合は倒産します。企業の存続を支えているのは、言うまでもなく顧客なのです。

そして、企業の支持・不支持は、顧客である私達一人一人の行動の結果です。

 

企業として、「顧客に支持されているかどうか」を常に意識したいですね。

 

1997年、「異質の戦いにカギを切る」と宣言した、スティーブ・ジョブスの方針

スティーブ・ジョブスと長年仕事をしているKen Segallが、13年前のApple社内でのスティーブ・ジョブスの発言を紹介しています。

コンピュータ界のBMWを目指せ! スティーブ・ジョブスが1997年に決定したAppleの方針

発言のポイントは次の通りです。

・デスクトップの戦いは終わった。我々は敗北した

・何よりもAppleがしなければいけないことは、もう一度Appleらしくあるべきだ

・量は捨てる。そのかわり質と革新性において圧倒する。

 

それまでのAppleはMicrosoftと「同質の戦い」に終始していました。

ジョブスの1つ目の発言は、これに敗北したことを認めたものです。

そして2つ目と3つ目の発言は、「同質の戦い」は止めて、「異質の戦い」を始めると宣言したものです。

その後のAppleの躍進は、ご存じの通り。

 

「差別化」を唱えていても、結局は同質の戦いに終始し、価格競争に陥ってしまうケースは非常に多く見られます。

「差別化」のためには、「異質の戦い」が必要。

そのためには、どうするか。

この事例では非常に分りやすく見て取ることができます。

 

時給112,000円のバイト!その中身は…?

こちらにバイトの概要があります。

ネタではなく、リアルなバイトで、ちゃんと応募できます。

内容は「映画『インシテミル 7日間のデス・ゲーム』のイベントお手伝い」、応募資格は「年齢学歴不問、テレビや新聞などに出ることが可能な方。未経験者大歓迎」、「10月7日だけの超短期」とのこと。

9月14日(火)から9月23日(木)まで募集。

書類審査で選ばれるようですね。

「制服貸与」とのことなので、何かやるのでしょうか?

 

Gigazineによると、

「インシテミル 7日間のデス・ゲーム」は米澤穂信原作の同名推理小説を原作とした映画で、「7日にわたる心理学の実験」に参加すると時給11万2000円の報酬がもらえるという募集に対し、大金を必要とする男女10名が集まり心理戦を繰り広げるという内容。

だそうです。

 

募集人数が不明ですが、仮に映画と同じく10名と仮定し、時給112,000円x実働3時間だと、支払合計336万円。

実際には、この手のプロモーションでは、総額で結構なお金がかかります。

たとえば、新聞で全面広告を打つと、数千万円かかります。(ただし、映画の広告では、必ずしも新聞は適切なメディアではありませんが)

336万円で大きな認知度が得られるのであれば、マーケティングコミュニケーションとして投資効率は高いですね。

しかも、単に奇抜なだけではなく、映画の内容とリンクしています。

現にGigazineにも紹介され、私は某メルマガで知り、こうやって自分のブログに書いています。

実際、他にも多くのメディアで紹介されたり、ブログやツイッターでも話題になっています。

 

マーケティングコミュニケーションとして成果を出すためには、単に話題性獲得だけはなく、いかに商品(=映画)の価値を正しく伝えるかが、成功のカギになると思います。

10月7日のイベントがどのようなものになるのか、興味深いですね。

 

低価格路線による減収減益を脱して、戦略的値引きで最高売上を達成した、マクドナルド

日経BPネットで、財部誠一さんが「原田マクドナルド、躍進の秘訣は低価格にあらず」という記事を書いておられます。

マクドナルドは、現在の原田社長が就任する前は、低価格路線で値引きをしていました。

以下、記事からの引用です。

—(以下、引用)—

原田が社長に就任した04年以前の7年間、日本マクドナルドは減収減益だったという。何度となく安売り攻勢で業績回復を狙ったが、それは客単価を下げるばかりで、売上アップにはなんの効果も発揮しなかったばかりか、社内全体のモラールダウン、接客レベルの低下へとつながり、客足は遠のくばかりであった。

—(以上、引用)—

値引きが売上をどんどん減らすバッドスパイラルに陥っていたということですね。

 

現在のマクドナルドは、2010年上期売上は過去最高。

8月も月間売上高が史上最高を記録。

躍進が続いています。

 

一方で、値引きは頻繁に行なっています。

記事によると、この値引きは単なる値引きではなく、周到に考えられた、戦略的な値引きです。

 

原田社長は、就任した2004年1月から1年かけて、マクドナルドのQSC(品質、サービス、清潔さ)を徹底的に向上させ、「いかにお客さんに気持ち良く食体験をしていただくか」を追究しました。

このQSC徹底で変身したマクドナルドを、新生マクドナルド未経験の顧客に体験していただくために、期間限定で大幅値引き商品を看板に客を集めている、ということです。

実際、価格700円のクォーターパウンダーセットが大ヒットしたように、客単価は向上し続けているそうです。

 

単なる値引きは企業の体力を疲弊させる麻薬的効果がありますが、周到に考えられた戦略的な値引きは固定客を増やし客単価も上げる効果があることが分かります。

マクドナルドの場合、そのカギは、QSCという顧客価値の徹底。

この事例からも、顧客価値が価格戦略の軸になっている、ということが分かります。

ニッチトップ企業にとって、ますます重要になるマーケティング戦略力

先週、日本経済新聞に『ニッチトップ強さの秘密』という記事が連載されました。

市場を絞りに絞り、顧客ニーズに徹底的に対応し、そこでダントツのシェアを獲得する。

「ニッチトップ」は、これをとても的確に表現した言葉だと思います。

9月4日には、『ニッチトップ強さの秘密(5)「夜光塗料」の根本特殊化学』という記事が掲載されていました。

—(以下、引用)—-

….この夜光塗料で、根本特殊化学(東京・杉並)は世界シェア8割の「ニッチトップ企業」だ。時計向けではほぼ100%のシェアを持つ。

(中略)

….90年前後に転機が訪れる。放射性物質を含むそれまでの塗料を廃止する動きが時計メーカーに広がった。
 夜光塗料は当時の売上高の4分の1を占めた収益の柱。技術的に研究し尽くされてはいたが、代替品を開発しなければ会社の未来はない。「社運をかけて研究に取り組んだ」(根本郁芳会長)

 3000回以上の実験を重ね、放射性物質を含まない物質を主体に新塗料を開発。できあがってみると従来より明るさが10倍、発光時間も10倍高まり、あっという間に世界の市場を手中に収めてしまった。

—(以上、引用)—-

これ以上の進歩が見込めない分野であっても、さらに突き詰めてみると大きなブレークスルーができる典型的な例だと思います。

この背景にあるのは、技術と顧客知識の蓄積ではないでしょうか?改めて自分の会社を見直してみると、自分たちは当り前に思っていても、実は自社しか持っていない資産というものが結構あるのではないかと思います。

それをいかに活用するか、です。

—(以下、引用)—-

(中略)

 それでも存亡の危機を味わっているだけに、現経営陣は創業者の「どんな事業も30年と続かないよ」という言葉を肝に銘じている。自ら実践したように、ひとつの技術で市場の構図は大きく塗り替わる。業績が悪い時でも売上高の8%を研究開発につぎこみ、次の一手を狙い続けるのはそのためだ。この比率は中小製造業で一般的な2%程度を大幅に上回る。

 根本特殊化学が今、開発を進めているのは現行よりさらに10倍明るく発光時間も長い新塗料。時間は短いが、発光ダイオード(LED)の1割程度の明るさまで出せるようになった。その先にあるのは、日中の光を蓄えて夜間に発光する電気不要の「エコ照明」だ。

 松沢隆嗣社長は「夜光塗料が街灯に代わる世界を実現したい」と話す。照明に用途が広がれば「ニッチ」ではなくなる。

—(以上、引用)—-

ニッチトップが、技術的なブレークスルーで大きなビジネスに育つ可能性もあります。

たとえば、インターネット検索。1990年代後半はインターネット・ビジネスの一分野でしたが、今や大きな市場に育ちました。

このように技術的ブレークスルーで世界市場を獲得するには、技術力に加えて、自社のバリュープロポジションを効果的に訴求するためのマーケティング戦略も必要になります。

グローバル化が進展する現代、ニッチトップ企業にとって、自社独自技術を活用しグローバル展開を見据えたマーケティング戦略の構築力・実践力は、今後、ますます重要になってくると思います。

新型iPod発表を見て、伊丹十三さんの「本当の顧客満足とは、顧客の欲するものを顧客の予期せぬ形で提供することだ」という言葉を思い出す

こちらの記事にありますように、今日の明け方にアップルが新製品を発表しました。

iPod nanoの新型とか、3GのiPodとか、新型iPhoneとか、色々な噂が流れましたが、いつもながら、秘密主義のスティーブ・ジョブスは、事前に一切情報はリークしませんでした。

しかし、アップルの新製品に様々な人達が関心を持っているためか、メディアの事前予想も、あながち的外れではなくなってきているようです。

 

4年前、当ブログで「なぜスティーブ・ジョブスは、顧客を熱狂させるのか?」というエントリーを書きました。

顧客満足の観点で、改めて考えてみました。

 

顧客満足を構造的に見ると、次のようになります。

顧客満足 = 事前期待値 - 感じた価値

 

ここから分かることが色々とあります。

・顧客満足は、顧客が感じた価値が、事前期待値を上回るときだけ生まれる
・感じた価値と事前期待値の差が大きいほど、顧客満足は大きくなる
・事前期待値がゼロだと、顧客満足は最大になる

ダイヤモンドオンラインに紹介されていた、伊丹十三さんの表題の言葉、

「本当の顧客満足とは、顧客の欲するものを顧客の予期せぬ形で提供することだ」

は、このことを的確にわかりやすく語ってくれています。

 

ちなみに、私は重量1.4Kgで500GBのハードディスク搭載のMacBook Proが欲しいと思っています。

しかし、これは「顧客が欲するもの」であり、実際に「予期せぬ形で提供」されると、…恐らく思わず買ってしまうのでしょうね。

『戦略プロフェッショナルのエッセンス』、6月23日~8月31日のまとめ + 今後の展開

6月23日から、Twitterでほぼ毎晩お送りしていた『戦略プロフェッショナルのエッセンス』、昨晩8月31日の夜に最終回をお送りしました。

2ヶ月余り、ほぼ毎晩、70回近くお送りしたことになります。

Retweetして下さった方も多くおられ、厚く感謝いたします。

 

当ブログでも時々ご紹介していますが、この『戦略プロフェッショナルのエッセンス』は、現在書いている本のベースとなっているものです。(但し、当初つぶやいた内容をかなり見直しています)

この本は、バリュープロポジションの考え方を基本にして、顧客中心主義の骨太なマーケティングを構築し、実行し、検証するための50のヒントをわかりやすく120ページ程度でまとめたものです。

まだ出版社は決まっていません。

恐らく電子書籍による個人出版になる可能性が高いと思います。

近々、ドラフトを当ブログで限定公開しようと思っております。

引き続き、よろしくお願いいたします。

 

尚、この2ヶ月余りにお送りした『戦略プロフェッショナルのエッセンス』はこんな感じです。

ご覧いただいた皆様には、感謝です。

#ms50e 市場規模を把握し、リスク評価する方法では、新規市場は生み出せない。誰も気がつかないビジネスの芽を見いだし、情熱をかけて育てていくことで、新市場が生まれる

1974年、セブンイレブンは東京江東区の豊洲にコンビニエンスストア第一号店を開店。
34年後の2008年、コンビニエンスストア業界の売上は百貨店業界を上回りました。

1976年、ヤマト運輸は「宅急便」という名前で、宅配便サービスを開始。初日取扱量は11個。
33年後の2009年度、国内の全宅配便取扱量は31億個になりました。

 

他にも、インターネット検索、ドライビール、深夜ビジネス、書籍ネット販売、….

世の中では、様々な新市場が日々生まれています。

 

新市場が生まれる場合、必ずニッチから始まり、時間とともに育っていきます。

 

このような新市場は、先駆者が誰も気がつかなかった新規ビジネスの芽を見出し、誰も自分と同じことをしていない孤独な状況の中で、暗中模索で、情熱をかけてビジネスを育て上げているうちに、生み出されているのです。

 

新市場が一般に認知され、市場規模が把握されるようになった段階では、既にその市場の黎明期から努力し続けてきた先駆者が一定の地位を確立しています。

つまり、市場規模やリスクを評価する方法では、市場参入時期を逸していることが多いのです。

新市場は立ち上がり当初は誰も気づかないからこそ、新市場なのです。

 

そのように既に形成されている新市場に参入を考える場合、既にリーダーとして君臨し実績もある先駆者と同じことをやっても、勝負になりません。

いかに先駆者に追いつくか、だけでなく、その新市場でいかに自社が差別化していくかを考えたいものです。

#ms50e T.レビット曰く、『1/4インチのドリルを購入した人々が必要としているのは、直径1/4インチの穴である』。顧客志向と製品思考の違いを理解したい場合、この言葉を思い出したい

表題は、ハーバードビジネスレビューの編集長も勤めたセオドア・レビット教授が紹介した言葉です。

既に40年以上前に語られた言葉ですが、この言葉の重要性はいささかも色褪せていません。

しかし残念ながら、現代でも、直径1/4インチの穴を必要としている顧客の事情を考えずに、自社のドリルの性能を一方的に語るマーケティングが多いのも現実です。

 

さらに言えば、「1/4インチの穴がほしい」背景も様々です。

例えば、顧客が工具を使いたくない場合は、穴を空ける有償サービスを提供する方法もあります。

あるいは、部品を固定するために穴を必要としている場合、もしかしたら接着剤の方がより好ましい解決策かもしれません。

私たちは、「1/4インチの穴がほしい」という顧客の表面的な要望だけを考えるのではなく、要望の背景にある顧客の課題も考えて、どのように解決するのかを考えたいものです。

 

「顧客は、なぜドリルを買うのか?」

少なくとも、ドリルの性能を求めて買う顧客は、それほど多くないはずです。

#ms50e 多くの市場調査レポートは過去を延長して未来を予測しており、常に賞味期限の問題を抱えている。市場調査を鵜呑みにせず自分で実際に確認、仮説検証をすべき

ある時期、私が担当したある市場は、当初多くの調査会社が「年二ケタ成長する高成長市場」と報告していました。

しかし、私が担当を始めた時期は、多くの顧客が採算性の観点で一斉にプロジェクト見直しを開始しており、セールス案件がほとんど消滅していました。

調査会社が調査を見直しして低成長率になったと発表したのは半年後。

私が担当を始めた時期は、奇しくも市場の転換点でした。

 

市場調査は、市場という地形を歩くための「地図」です。

この地図、過去データの集まりですが、変化が速くなった現代、この地形が頻繁に変わっているのです。

しかも、新しい建物(=競争相手)が建っていたり、山(=目標)がなくなっていたり、谷(=障害)ができたり、新しい海(=新市場)が生まれたり、という地殻変動レベルの変化が短い時間で起こっています。

一方で、市場調査レポートは、ある時点の「事実」を示しています。

だからこそ、私達は市場調査レポートで、市場を客観的に、かつ俯瞰的に把握し続け、変化が起こった場合はその理由を考えていく必要があるのです。

同時に市場調査による予測を鵜呑みにせずに、顧客の声で検証する等、必ず自分自身で確認することも必要です。

変化を先取りした対策を講じることで、市場で有利な立場に立つことができます。

さらに、自分自身で地殻変動を起こして地図を書き換えることも可能な時代です。

 

市場調査レポートは、受け身に見るのではなく、自分のシナリオを支える多くの情報源の一つとして、活用していきたいものです。

#ms50e マーケティング・インテリジェンスが機能するためには、仮説が必要。仮説がなければ、インテリジェンスは生まれない

マーケティング・インテリジェンスという言葉があります。

インテリジェンスとは知見という意味。

つまり、マーケティング・インテリジェンスとは、「市場や顧客の知見を得ること」です。

 

マーケティング・インテリジェンスで、知見を得るために必要なもの。

それは仮説です。

 

例えば、ある商品の使用率が低下している、という現象があったとします。

私達が必要としているのは、「どの程度使用率が低下している」という詳細な事実データだけではありません。

具体的な対策を講じるために必要なのは、「なぜ、使用率が低下しているか」という知見です。

もしかしたら、顧客ニーズが変わって、その商品を既に必要としなくなったのかもしれません。

あるいは、顧客ニーズはあるものの、代替となる商品が生まれているのかもしれません。

あるいは、何らかの理由で、顧客自体の数が減少しており、それが使用率が下がったように見えている、という可能性もあります。

そこで、予め上記のような仮説をいくつか立ててみて、調査の中にその仮説を検証するように質問事項を組み込み、調査結果で仮説を検証することが必要です。

 

調査に求められるのは、このような仮説を立てて検証した結果から得られる知見です。

これにより、次に取るべき対応策が定まるのです。

#ms50e サンプル数が数百件程度の調査では1-2%の違いはほとんど意味を持たない。市場調査を評価する際は必ず調査サンプル数を見た上で、調査対象のプロフィールが目的と照合して偏りがないかを把握すること

市場調査の場合、対象全てを調査するのはコストと時間の両面で無理です。

そこで一部だけを調べて、全体を推測する方法が「推測統計」という方法。

テレビの視聴率調査は、その典型的な例です

 

ところで、昔ほどではありませんが、テレビ番組の視聴率が1%上がった、下がったということで話題になります。

実は、統計上では、視聴率1%の差はあまり意味がありません。

ビデオリサーチ社は関東地区では600世帯の協力を得て、「推測統計」という方法で視聴率調査をしています。

非常に大雑把に言うと、この場合、視聴率2%程度は誤差の範囲内です。

サンプル数を4倍にすると精度は倍になりますが、その代わり調査コストも4倍になります。

 

同様に、調査サンプル数1000件程度の調査レポートを見て、1%の違いを議論するのもまた、あまり意味がありません。

調査レポートを見る際には、必ずサンプル数とその調査プロフィール(サンプルの偏り)を把握して、そのレポートの内容が意味するところを考える習慣を身につたいところです。

#ms50e 市場を大きく考えるほど顧客ニーズはぼやける。特定ニーズにフォーカスし、顧客満足させることを考えると、顧客満足度は高まり成功する可能性が高まる。そして競合を圧倒するダントツのトップシェアを獲得できる

戦略を立てる際、あなたは、市場を大きく考えるべきと思いますか?

小さく絞って考えるべきと思いますか?

 

大きく考えるとビジネスも大きくなって、一見よさそうです。

しかし市場を大きく考えると、顧客ニーズはぼやけます。

 

例えば参考書市場。

「高校3年の受験生」市場よりも、「早稲田大学理工学部進学を検討している受験生」市場の方が、ニーズが明確です。

顧客ニーズが明確な市場を狙った方が顧客満足度が高まり、成功する可能性も高まります。
さらに競合も少なく希少価値が出るため、プレミアム価格も期待できます。

 

例えば、「防犯ミラー」という市場。

コンピニ、スーパー、駅といった人が集まるところにかかっているあの大きな鏡。

それが、その市場です。

 

規模は年間数億円という非常に小さい市場ですが、ある企業はここでダントツのシェアを持っています。

ここの会社の社長は、鏡でどのように社会をよくするか、お客さん視点で常に四六時中考えています。

市場規模もそれほど大きくなく、顧客を熟知している圧倒的なリーダー企業がいるので、他社もこの市場に参入しません。投資しても見合わないからです。

ある特定市場に集中し、常に徹底して顧客目線で考えた上で、顧客に圧倒的な価値を提供すると、ダントツのシェアを獲得できるという、いいお手本ではないでしょうか?

#ms50e 現在の顧客がテクノロジーサイクルでどの段階かを把握することはきわめて重要。ユーザー層の違いで必要なアクションは全く異なる。それは戦略の成否を左右する

新商品に飛びつく人。

他人を見て判断する人。

ずっと懐疑心で見る人。

 

マーケティングの「イノベータ理論」では、各々に名前を付けています。

・イノベータ:新商品を即買います。別名「人柱」
・アーリーアダプター:「流行っていないけど、よさそうじゃん」と思い、買います
・アーリーマジョリティ:「実績あるし、大丈夫かな」と思い、買います
・レイトマジョリティ:「そろそろ不便」と買います
・ラガード:「それでも絶対買わない」という頑固者。一生買いません

この比率は決まっていて、イノベータは全体の2.5%、アーリーアダプターは13.5%、アーリーマジョリティとレイトマジョリティは34%、ラガードは16%。

 

例えば私は早い時期にiPhoneを買いました。携帯電話会社から見ると、アーリーマジョリティです。

一方で、恐らく今後も、私は髪を染めません。髪染めメーカーから見ると、ラガードです。

同一人物でも商品によって異なるのですね。

 

普及状況で顧客の行動が違うので、マーケティング戦略もギアシフトが必要です。

新商品発売時は、全体の16%のイノベータやアーリーマジョリティに絞って、先進性を訴求し、商品情報を提供しつつ、事例蓄積を図ります。

普及段階はアーリーマジョリティ獲得狙い。豊富な事例を活用しパートナー販売で販路も広げます。

現在の普及状況と、対象顧客の行動にあわせた戦略で、ビジネス効率は大きく上がります。

今、商品は、どの段階か?
今、接触している顧客は、誰か?

成功している知合いのベンチャーの社長さん達は、例外なくこれを徹底して考えています。

長年の経験に裏打ちされた知恵なのでしょう。

 

常に考えて、意識していきたいものです。

#ms50e 誰もが消費者だと『世の中の商品はみな同じだ』と思う。不思議なことに同じ人が会社では『ウチの製品はオンリーワン』と考えがち。年間二千種類ある新発売の清涼飲料水、いくつ知っているだろうか?

私達が商品を買う多くの場合、次の2つがあります。

・商品を求める動機
・他の商品ではなく、その商品を選んだ決め手

つまり、

「あなたが求めている、その商品だけが持つ、他商品にはない価値」

それが買った理由です。

これを企業から見ると、こうなります。

「顧客が求めている、自社だけが持つ、競合にはない価値」

これがバリュープロポジションです。

「バリュープロポジションって言うのは簡単。でも作るのは難しい」

よく言われます。

しかし私達は商品を買う時は、無意識にその商品のバリュープロポジションを考えています。

 

企業にいると、ともすると私達は「お客さんは、きっと分る」と思いがちです。

・企画段階で、「世に出せば、きっと分る」
・セリングで、「使えば、きっと分る」
・苦情を受けて、「使い込めば、きっと分る」
・売れずに販売中止になって、「実は分っていないと、そのうちきっと分る」

 

一方で消費者の私達は、常に「分っていないなぁ」と思っています。

・商品を見せられても、「何がいいの?どこがいいの?みな同じじゃん」
・さらに勧められても、「欲しいものは、特にないし」

 

日本では、1年間で新発売される清涼飲料水は、2000種類以上あるそうです。

どれも、清涼飲料メーカーにいる精鋭のマーケティング担当者が、徹底的に議論を重ねてバリュープロポジションを定義し、世の中に出した商品ばかり。それだけやっても、生き残るのはごく少数。

 

それでもあなたは、バリュープロポジションを考えないでも、よいと思いますか?

#ms50e 人は常に一貫性のある自分でありたい、と考えている。この『認知的不協和』の考え方は、顧客を理解し、プロモーションを通じてブランドを確立し、戦略を展開する上できわめて重要である

こんな経験はありませんか?

・車を買った後に、その車の記事ばかりを見ている
・高価な服を買った後に、その服の広告が気になる

多くの方々が経験されているこの現象、なぜ、起こるのでしょうか?

それは、人は「一貫性のある自分」であり続けたいがために、購入後も「自分は正しい選択をした」ということを証明してくれる情報を集めようとするためです。

これは「認知的不協和」と呼ばれます。

 

マーケティング戦略では、この考え方は非常に重要です。

 

広告やプロモーションの対象は、実は見込み客だけではありません。

購入済の顧客が「選んで良かった」と思わせる効果もあります。

 

顧客は、正しい買い物をしたという証明が得られれば、それをほかの人にも伝えます。

結果としてクチコミで顧客も増えます。

さらに、この人は、将来ふたたび購入します。

「この商品を選んで良かった」と思ってもらうことが重要です。

 

このように考えると、頻繁に行う値引きは、既に購入した顧客に「あのとき、買わなければ良かった」と考えさせ、顧客離れを起こす危険性をはらんでいる、ということがわかります。

「強いブランドを確立し、維持するために、値引きは一切しない」という高級ブランドの戦略も、認知的不協和を考慮した結果と考えれば、わかりやすいのではないでしょうか?

#ms50e 顧客満足は、顧客が感じた価値が期待値を上回った場合に生まれる。さらに感じた価値と期待値の差が大きいほど、顧客満足は大きくなる。しかし我々は、顧客の言いなりになり期待値以下の価値しか提供できない過ちをおかし勝ちだ

私達はこのように考え勝ちです。

・顧客満足は、企業にとって大切。
・これは疑いようもない真実
・顧客満足度を徹底的に高めれば、必ずビジネス成果に繋がる

たしかに、顧客満足は極めて大切です。

一方で、過当競争の業界で、顧客サポートに力を入れて顧客満足度業界#1を獲得したにも関わらず、それが売上に繋がらず、業績不振で身売りした企業もあります。

 

顧客満足は、精神論にとどまらず、構造的に考える必要があります。

顧客満足 = (事前)期待値 - 感じた価値

つまり、

・顧客満足は、顧客が感じた価値が事前期待値を上回った場合に生まれます
・感じた価値と事前期待値の差が大きいほど、顧客満足は大きくなります

そこで、顧客満足を高めるために必要なのは、

・顧客の期待値を把握し、
・その期待値に対して働きかけ、
・そして、その期待値を上回る価値を提供し続けることです

しかし往々にして次のようになりがちです

・顧客の期待値(=課題)を把握できない
・期待値が分からないので、働きかけられない
・断片的な顧客要望を、顧客の期待値と考えて、全てに対応しようとする
・あるいは事前に、提供できる価値以上の期待をさせてしまう
・顧客の期待値を満足させられず、あるいは価値が期待値を上回らず、顧客の満足を得られない

注意すべき点は、こちらに書きましたように、顧客自身が、自分にとっての価値(課題に対する解決策)を知らない場合があるということです。

拙著『朝のカフェで鍛える 実戦的マーケティング力』では、顧客の個別要望全てに細かく対応しているA社が、なかなか顧客の言うことを聞かず価格も高いX社と競合した末に、負けてしまう場面を描きました。

これは、顧客が言うがままに対応し値引きなどの期待値を高める一方でそれ以上の価値を提供できないA社に対して、X社はユーザー目線で顧客の真の課題を把握しようと常に努力をし、顧客の期待値を圧倒的に上回る提案(=価値の創造)を行っていたからです。

単に顧客の言いなりになるのではなく、顧客が気づかない真の価値を創造し提供することこそ、顧客満足につながります。

#ms50e カルロス・ゴーン曰く「5年後の車について消費者は答えを持たない」お客様は全知全能の神様ではなく間違うこともある。むしろお客様は大切なパートナー。だから私達もお客様を選ばなければいけない

「お客様は神様です」

日本が誇る、ある国民的歌手の言葉です。

もとは、「ステージを見に来て下さっているお客様を、神と敬い、その前で自分の歌(=仕事)を披露するのだ」、という考え方でした。

しかし、この言葉にはとても強い力があり、ともすると我々は顧客を絶対と考えてしまったり、顧客は全知全能と考えがちです。

 

このことを考えさせられた事例があります。

場面は、ある鶏肉加工工場。

作業員は、手作業で鶏モモ肉の骨をはずしていました。とても非効率です。

熟練作業者曰く、

「この業界では、昔から手で骨を取り出している。
それ以外の方法を考えること自体、ばかげている」

ある機械製作会社の担当者は、考えました。

「自動脱骨機を作ろう」

実機デモを見た顧客は、一目で商品の価値を理解。大ヒット商品になりました。

「自動で脱骨する」というニーズは存在していましたが、顧客は気づいていなかったのです。

 

カルロス・ゴーン曰く、「5年後の車について消費者は答えを持たない」

 

「顧客中心主義」とは、顧客課題最優先で考えること。

しかし「顧客の言いなりになる」ことではないのです。

顧客が気がつかない課題を、真剣に考え、解決策を創造することが、企業の存在意義です。

 

顧客は、時には間違えるけれども、大切なパートナーです。

だからこそ、パートナーを選ぶように、幸せにするために誰を顧客にするのか、私達は考えたいですね。

世界にアンテナを張る企業と、ウチにこもる企業

ちょっと出遅れましたが、週刊ダイヤモンド7/17号の「ツイッター・マーケティング特集」を読んでいます。

Looopsの斉藤さんのインタビューもあったりして、読み応えがあります。

この中で、気になった一文

—(以下、p.45から引用)—

 たとえば笠井氏が自身のブログで韓サムスン電子について書いたとき、同じ日のうちにサムスンのサーバからアクセスがあったことに気がついた。

 アクセスログをさらに検証してみると….(中略)…どうやら異なる4人であることが分かった。また、笠井氏のページをグーグルの翻訳機能を使って英訳した記録も残っている。「日本メーカーのことを書いても、まず反応はない」と笠井氏。

 自分達がどう見られているか、何を言われているか、サムスンは世界中にアンテナを張っていることがよくわかる。

—(以上、p.45から引用)—

自社のことがインターネット上のブログで話題になっているかどうかを調べるのは、それほど大変なことではありません。

私事で恐縮ですが、私はGoogleアラートを使って、自分の名前や著書が話題になっていないかを毎日チェックできるようにしています。

また、2ちゃんねるのようなサイトも、全文検索できるサービスを使って、自分のブログが引用されていないかをチェックしています。

パーソナルブランディングを考える上では、重要なことだと思うのですよね。(もちろん、仕事に関するキーワードもチェックしています)

 

このようなことを調べる無償のサービスはいくらでもありますし、かつ自動化できますので、それほど手間がかかる作業でもありません。

だから、このようなアンテナを張るかどうかは、「世の中で、自社(や自分)に関して交わされている情報に、興味を持っているかどうか?」に尽きると思います。

マーケティングの基本でもありますが、ウチにこもらず、もっと外の世界に目を向けたいモノです。

「『お客様は神様です』は、必ずしも正しくない」と考えると、見えてくること

こちらで紹介しましたように、「お客様は神様です」という考え方は、必ずしも正しくありません。

では、お客様は何なのか?

 

色々と考えてみると、

お客様は、大切な恋人

あるいは、

お客様は、無二の親友

という考え方が、しっくり来るように思います。

 

お客様は間違うこともあります。「お客様は神様です」と考えて、お客様の言うことに全て対応すると、必ずしもいい結果を招かない場合があります。

しかしお客様を、「大切な恋人」とか「無二の親友」と考えると、常に相手のことを理解しようと努め、仮に相手が間違っていたとしても、相手が幸せになるよう、努力し続けるのではないでしょうか?

 

一方、私達がだれと恋人や親友になる場合は、相手次第です。

ですから、

「自分が幸せにできるような人を、お客様として選ぶこと」

も、この考え方のポイントですね。

 

バリュープロポジションを定義する際には、相手のニーズの絞り込みが必要になります。

この時点で、「誰をお客様にするか」を絞り込んでいる訳で、バリュープロポジションを徹底的に考えることが、現代のマーケティングではますます重要であると思います。

 

さらに、自分が望む顧客との関係を構築する場合、ソーシャルメディアを活用したマーケティングは、非常に有力な手段になります。

まだまだソーシャルメディアの企業活用は始まったばかり。

バリュープロポジションをしっかり考えた上で、ソーシャルメディアを活用していきたいものです。

高木芳紀さん著『従業員7人の「つばめや」が成功した たった1年で5000万円売上げを伸ばす仕組み』

オルタナブロガーの高木芳紀さんが書かれた『従業員7人の「つばめや」が成功した たった1年で5000万円売上げを伸ばす仕組み』を読了しました。

この小さくコンパクトな本の中に、小さな会社が商売するためのエッセンスが、とても分かりやすく詰まっています。

この本のいいところは、あくまでマーケティングの基本に忠実な点。

奇をてらったアイディアはありませんが、豊富な実際の経験を蓄積している高木さんだからこそ語れる、ウェブマーケティングの珠玉の知恵が詰まっています。

SEO対策で、「検索エンジンのアルゴリズムの検証・研究、これはやめましょう」というあたりは、なるほどと思いました。

リソースが限られた小さい会社にとって、研究すべきは自社のビジネスや顧客であって、検索エンジンではありません。

当り前のことですが、忘れがちかもしれません。

アカウント名のつけ方、ヤフカテ登録、tweetmapの活用方法、お客様一本つりのためのGoogleの使い方、等、目から鱗になるアイディアも散りばめられています。

社員十数名程度までの会社で、顧客とのいい関係を構築し、収益化するウェブページを作りたい人には、お勧めの本です。

あ、そうそう、私が書いた「戦略プロフェッショナルの心得」も、参考文献として掲載いただいています。ありがとうございます!

 

Twitterで、『戦略プロフェッショナルのつぶやき』を開始しました

先週、待ち合わせで20分程の時間ができたので、2年前に出版した『戦略プロフェッショナルの心得』を、読み直してみました。

自分で執筆したものなのですが、改めて色々と発見がありました。

この本は、各章の章末に、その章のエッセンスを箇条書きでまとめています。

各章末のこの箇条書きを読むだけでも、この本で言いたいことが的確にまとまっています。

そこで、思いつきました。

「もしかしたら、この箇条書きをTwitterで配信すると面白いかも」

ということで、6月23日から、Twitterで『戦略プロフェッショナルのつぶやき』を一日一回のペースで始めています。

こんな感じです。

「多くの市場調査レポートは過去を延長して未来を予測しており、常に賞味期限の問題を抱えている。市場調査を鵜呑みにせず自分で実際に確認、仮説検証をすべき」(『戦略プロフェッショナルの心得』より http://www.takahisanagai.com/book2008/ )

「市場規模を把握し、リスク評価する方法では、新規市場は生み出せない。誰も気がつかないビジネスの芽を見いだし、情熱をかけて育てていくことで、新市場が生まれる」(『戦略プロフェッショナルの心得』より http://www.takahisanagai.com/book2008/ )

「現在の顧客がテクノロジーサイクルでどの段階かを把握することはきわめて重要。ユーザー層の違いで必要な対応策は全く異なる。それは戦略の成否を左右する」(『戦略プロフェッショナルの心得』より http://www.takahisanagai.com/book2008/ )

「情報は常に客観的に見るべきだ。希望的観測で主観的に見る弊害は大きい。空気が行動規範である日本人は注意が必要。情報を評価する場合、場の空気に左右されてはいけない」(『戦略プロフェッショナルの心得』より http://www.takahisanagai.com/book2008/ )

 

この『戦略プロフェッショナルの心得 つぶやき』は、私のTwitterをフォローいただくと、ご覧になれます。(尚、当ブログのエントリーのお知らせや、私の日頃のつぶやきも混じっていますので、その点、ご容赦下さい)

また、既にご案内の通り、『戦略プロフェッショナルの心得』全文のPDF版とePub版をこちらから無償ダウンロードできますので、ご興味ある方はどうぞ。

 

2010/6/27 9:00AM変更:『戦略プロフェッショナルの心得 つぶやき』だと語呂が悪いので、『戦略プロフェッショナルのつぶやき』に変更しました

 

■Twitter→  http://twitter.com/takahisanagai
■初心者向け
法人マーケ入門→  『朝のカフェで鍛える 実戦的マーケティング力』
■超早朝勉強会、隔週で開催中→  『朝カフェ次世代研究会』

消費者と企業の間に横たわる深い溝。そして、それを乗り越える方法

私達が新商品やサービスを開発する時、おそらく、誰もが強く想うことがあります。

「お客さんは、きっと分る」

お客さんは、この新商品のよさがきっと分ってくれる。

そして、この商品は、お客さんに愛されるだろう。

 

自分が関わる商品に思い入れをもつ自体は、極めて健全ですし、大切なことだと想います。

そして、ともすると、想いはこのように続きます。

商品企画段階では: 世に出せば、きっと分る

初期の販売苦戦段階では: 使えば、きっと分る

ユーザーからクレイムを受けた段階では: 使い込めば、きっと分る

……..

商品が売れず撤退する段階では: 実は分っていなかったということが、そのうちきっと分る

(….最後は半分冗談です)

 

共通するのは、"We are only one"、つまり「我々は唯一の存在である」という信念であり、想いです。

私も新商品の企画や立上げに長年関わってきましたし、プリセールスで色々なお客様に価値を説明して回ったので、同じ信念を持ってやってきました。

 

しかし、顧客の立場からすると、全く違う様相が見えてきます。

それは、消費者でもある私達が、世の中に氾濫する様々な商品に対して取る行動を考えると、わかると思います。

ともすると、以下のように思うことはありませんでしょうか?

何がいいの?どこがいいの?

みな同じじゃん

欲しいものは、特にないし

共通するのは、世の中に氾濫する商品に対して、"You are one of many"、つまり「選択肢は、他にも沢山ある」という醒めた視線です。

 

例えば、1年間に、日本国内で新発売される清涼飲料水。

何種類あると思いますか?

 

実に、2,000種類以上あります。

それぞれの商品は、それこそMBAを出てマーケティングを究めたプロフェッショナルが、ユーザーインタビューや市場調査などを駆使して企画して、世の中に出しています。

 

しかし、私達が思い出せる清涼飲料水は何種類くらいあるでしょうか?

恐らく十数種類程度なのではないかと思います。

消費者から見ると、選択肢は非常に沢山あるのです。

 

興味深いのは、同じ人間が、ある時は企業側の立場にいて、ある時は消費者の立場にいて、全く違う思考方法をしがちであることです。

このようなことを考えてみると、顧客の立場に立つ難しさと同時に、顧客の立場に立つための心得が、少しわかってくるような気がします。