業種転換のウソ・ホント…共通するのは、「強みの見極め」

日経ビジネス2015年3月2日号で、「業態転換 常識のウソ・ホント 中小でも富士フイルムになれる」という特集があります。

ここで富士フイルムの名前が出ているのは、言うまでもなく、フィルム市場が消滅しつつある中、液晶や医療など非写真事業を強化して企業を変革し生き残りに成功したからです。

市場の変化が激しい中、富士フイルムが直面した危機が、多くの市場で起こっています。

この記事では、実際に業態転換をした中小企業を例に挙げて、次のように検証しています。

(ウソ1) 業態転換は最後の手段 → (真実1)業態転換は好調時にこそ決断する

(ウソ2) まずは周辺分野を狙え → (真実2)「飛び地」に出るから、知恵が生まれる

(ウソ3)宝は成長分野にある → (真実3)成熟分野にこそ宝は眠る

 

私は拝読して、これら企業に共通するのは「企業の強み」を徹底的に見極めて活かし、足りないスキルを補強している点ではないか、と感じました。

取り上げられている企業をすべて見てみたいと思います。

 

■ブランチ(愛媛県西条市)

業態転換:建設業→カフェ・コーヒー豆の輸入販売

きっかけ:公共事業の急減

活きるスキル:建設業で培った店舗の施工・設計

欠けているスキル:カフェ運営スキル

—(以下、引用)—

 「飛び地だからといって、既存の技術が応用できないとは限らない。むしろ飛び地に活路を求めたからこそ、既成概念にとらわれず事業に取り組めたと思う」と越智社長は振り返る。

—(以上、引用)—

 

■太田組(大阪府松原市)

業態転換:建設業→農業

きっかけ:公共事業の急減

活きるスキル:建設業時代の道具。機械の扱い

欠けているスキル:販売スキル

—(以下、引用)—

 偶然にも太田社長の祖母がたれ作りの名人で、近所の焼肉店に自家製のたれを卸すほどの腕前だったため、そのレシピを再現。思い切って専用の調理設備も導入した。建設と調理と分野は大きく違うが、機械の扱いなら多くの社員が手慣れたもの。こうして2013年、「大阪河内 万能焼肉のたれ」が誕生した。

—(以上、引用)—

 

■ディージータカノ(大阪府東大阪市)

業態転換:業務用ガスレンジの火力調節つまみ→省エネ機能付き水道部品

きっかけ:2005年頃から中国や韓国から低価格部品が流入

活きるスキル:高い加工精度と設計力

—(以下、引用)—

 2009年に発売した「バブル90」は蛇口に搭載するだけで、水の勢いを変えないまま水量を10分の1にできる。その省エネ性能の高さに消費不況に悩む多くの飲食業者が飛びついた。「あるラーメン店では年間120万円かかっていた水道代が66万円になった」(高野社長)。そんな口コミが2014年に一気に全国の飲食業者の間で広がり、累計販売個数が5万個を突破。2014年度の会社全体の売上高は2013年度の20倍に当たる2億円に到達した。

  「他の水道部品と異なり、バブル90の製造には高い加工精度と設計力が必要。海外勢には真似できない」と高野社長は説明する。

—(以上、引用)—

 

■エアウィーブ(東京都中央区)

業態転換:プラスティックス射出成形機メーカー→寝具業界

きっかけ:射出成形機は海外勢に押されて経営が悪化

活きるスキル:ブラスティックス成形加工技術

—(以下、引用)—

 こうして2007年に発売されたのが、“寝ている人の疲れを軽減できる寝具”エアウィーヴだ。同社はその後、敷布団だけでなく、枕など関連商品も開発。2007年は4000万円だったエアウィーヴの売り上げは2014年度には120億円を見込む。国際線のファーストクラスや高級ホテルにも採用されるなど、販路は今も急速に広がっている。

—(以上、引用)—

 

■幸和産業(大阪府堺市)

業態転換:乳母車→シルバーカー→高齢者向け歩行器(介護補助対象商品)

きっかけ:少子高齢化

活きるスキル:シルバーカーや車椅子で培った軽量化、安定化、タイヤの形状工夫スキル

欠けているスキル:販路。介護補助対象商品はGMSやスーパーでは販売していない

—(以下、引用)—

 歩行器事業は現在、幸和製作所の売上高のうち約3割を占める。2014年の会社全体の売上高は44億円。歩行器事業が牽引する形で、ここ数年、年率2ケタ増という急成長が続く。

—(以上、引用)—

 

■オオアサ電子(広島市山北郡)

業態転換:液晶表示装置加工→ハイレゾスピーカーやスマホ保護カバーガラス、タッチパネル式看板

きっかけ:売上8割の得意先からの契約解除

活きるスキル:液晶加工技術を核に、強みと付加価値を洗い出し

欠けているスキル:ずっと下請けで来たため営業がいない。

—(以下、引用)—

 ピーク時300人いた従業員の数は、115人程度まで減ったが、苦しい4年間も解雇はせず、雇用を守り抜いた。ただ、周辺事業が育ちつつあるとはいえ、2014年の売上高は、契約を解除される前と比べて3分の1。長田社長は「事業転換なんてきれいなもんじゃない。ドラマなら面白いかもしれないが、これほど苦しいことはなかった」と話す。

—(以上、引用)—

 

ただ、例外もあります。

■ディライト(奈良市)

創業者の教えで、15-20年ごとにまったく違う事業に業態変更してきました。

肌着生産工場→ホテル業→輸入雑貨販売→結婚式場運営→(将来、カフェ運営/写真館経営)

見極めポイントは、15-20年後に地域で最ももうかる事業ということ。

ディライトは、過去の事業の強みが活きない分野に多角化しています。

しかし実際には、「強み」についても考慮していまるのです。

—(以下、引用)—

もっとも、「15年後にもうかる」という基準で進出分野を決めてしまえば、白羽の矢が立つ事業は往々にして既存事業と無関係の分野になり、現在持つ技術やノウハウの応用は望めない。「だから準備の時間が必要」と出口社長は強調する。

—(以上、引用)—

 

■はせがわ

仏壇販売から墓石販売へ業態転換しました。

1995年に販売絶好調でしたが、バブル崩壊以降、注文住宅が減り狭くなるので仏壇サイズも小さくなることが予想されました。一方で高齢化社会で墓石販売は安定成長が望めます。

一方で、仏壇と墓石は営業方法が違うので墓石問屋へ修業に出し、時間をかけて事業シフトに着手、現在は200万円以上の仏壇はピークの10%に落ち込む一方、墓石事業が会社を支え、2014年の会社の営業利益は過去最高でした。

 

ディライトもはせがわも、多角化したい事業では現在の強みは活きないので、好調なうちに時間をじっくりかけて必要とされる強みを獲得してきました。

裏を返せば、強みはやはり重要と言うことですね。

 

満を持して渾身の新製品を出したのに、すぐにライバルに追いつかれるのはなぜか?どうすればいいか?

市場調査や顧客調査を徹底し、「これだ!」という課題を見つけだし、新製品を開発、満を持して発表します。

市場の受けもいい。

しかし数ヶ月もせずに、間もなく競合が似た商品を出してきて、価格勝負に陥ってしまう。

こんな経験をされている方、多いと思います。

なぜこうなるのでしょう?

 

大きな原因の一つが、「顧客が買う理由」(バリュープロポジション)の見極めが不十分だからです。

では「顧客が買う理由」を考える際に、どの点が不十分なのでしょうか?

 

当ブログでも何回かご紹介しているように、バリュープロポジションは次のように考えます。

(1) 自社の事業は何か?
(2) 自社の強みは何か?
(3) その強みを必要とするお客様は誰か?(= ターゲット顧客)
(4) そのお客様が必要とすることは何か?(= 顧客課題)
(5) お客様が自社を選ぶためにどうするか?(= 解決策)
(6) バリュープロポジション(お客様が買う理由)は何か?

この「(2) 自社の強みは何か?」の見極めが不十分なまま、ターゲット顧客と顧客課題を考えているので、他社に簡単に追いつかれてしまうのです。

 

とは言え、「自社の強みはどうやって見つければいいのか?」と思われる方は多いと思います。

方法論はあります。

たとえば、現在業績絶好調のユニチャームの強みは、

「不織布吸収体の成形加工技術により、
清潔・衛生・新鮮な快適環境を提供できる」

これをよく読むと、二段階構造になってることに気づかれるのではないかと思います。

「不織布吸収体の成形加工技術により、   →技術
清潔・衛生・新鮮な快適環境を提供できる」 →顧客の価値

 実はユニチャームは、2002年頃にこの「自社の強み」を徹底的に考えて、この強みを活かせない既存事業(芳香剤、幼児教育、さらに創業事業である建材事業など)から撤退を決断、そして強みを活かせる5事業に絞り込みました。

 

かつての強かった頃の日本企業も、「技術」+「顧客価値」で強みとなるコア技術を見極め、それをもとに「製品」を作り、成功してきました。

ソニー:小型化技術(技術)による携帯性(価値) →ウォークマン、ハンディカム(製品)

ホンダ:CVCC等のエンジン(技術)による省エネ・排ガス規制対応(価値) →初代シビック

強みを「技術」+「顧客価値」で考える大切さは、ユニチャームの事例を見ればわかるように、現代でも重要です。

ただ一方で、小型化技術で携帯機器を量産するアップルやサムソンに押されている現在のソニーの苦境を見ればわかるように、「強み」には賞味期限があります。

つまり強みは常に見直し、さらに強化していく必要があるのです。

 

とは言え、「自社の強み」は自分たちにとっては当たり前なので、どうしても過小評価してしまったり、気がつかないのが現実でもあります。

別の強みを持つパートナー企業と組んで事業を進めたり、第三者が入ったりして議論をするのも、一つの解決策です。

 

強みをさらに見極めるためには、ジェイ・B・バーニーが提唱しているVRIO分析や、マイケル・ポーターが提唱する「強みは掛け算で考える」といった方法論もあります。何やら難しそうな言葉ですが、考え方自体はシンプルです。

追って当ブログでご紹介していきたいと思います。

 

あなたのメルマガ、もしかしたら迷惑フォルダーに入っていませんか?

お知らせしましたように、先週からメルマガを始めています。本日、第2号を配信しました。

配信する際には、必ず自分のメール宛に配信テストを行います。

一昨日の配信テストでは、ちゃんと配信されていました。

昨日、文面を修正し配信テストをしてみたら、……2−3回試しても届きません。

メルマガ配信システムの不調かな、と思ったのですが、あとで調べたら、Gmailが迷惑フォルダーに分類していました。

 

試行錯誤の末、下記の文章を削除したら配信されるようになりました。

—(以下、削除した文章)—

一昨日・昨日と名古屋に出張し、色々なお客様とお話ししました。
皆様との出会いに感謝致します。

—(以上、削除した文章)—

普通の文章なのですが、たとえば「出会い」などの言葉と、他の文中にある「メルマガ」等の言葉の相関度を取って、Gmailが「迷惑メール」と判断したのかもしれませんね。

 

改めて自分のGmailをチェックすると、意外と多くの方々のメルマガが迷惑フォルダーに分類されています。

メルマガを発行する人は、配信テストでGmail等にも配信してみて、確認されるといいかもしれませんね。

時代とともに変わる、顧客満足度数値化の方法論

顧客中心主義を徹底するには、顧客満足度を定量化することが必要です。

 

一般的なのが、NSIという考え方。Net Satisfaction Indexの略で、顧客満足度指数という意味です。

これはたとえば、講演などのアンケートで、「大変よかった」「よかった」「まあまあ」「悪かった」「とても悪かった」の5段階で評価いただき、評価が高い順に100点/75点/50点/25点/0点と加重平均して、平均を出す方法です。

講演やプロジェクトなどで、常にこのNSIの推移を見ることで、参加者の満足度の変化を把握でき、対応策を立てられます。

 

一方で、この方法では「大変よかった」「よかった」「まあまあ」に評価が固まりがちです。

そこで3ヶ月ほど前に当ブログで「スタバのアンケートに、感動した」というエントリーで書きましたように、私は最近のアンケートでは、「感動した」「期待を上回った」「期待通りだった」「期待を下回った」「期待はずれだった」の5段階で評価をいただくように変えています。

「大変よかった」にはチェックしやすいですが、「感動した」はなかなかチェックしにくいので、固まりがちが評価をこれで分散できます。

 

2015年2月17日の日本経済新聞の記事「顧客のホンネ 把握するには 極端な意見尊重/仮説を持ち質問/ニーズを素早く」を読んでいたら、別の事例が紹介されていました。

 —(以下、引用)—

 アンケートの企画・運営を担当する(すかいらーくの)フィールドオペレーション本部の山拓也さん(37)は「真ん中に回答が集まりがち。両端に顧客の本音が出る」と解説する。同社では最上位の「大変満足している」と答えた人だけを、各項目の満足度と解釈する。あるサービスに対し「大変満足」との答えが20%だった場合、その満足度は20%となる。

—(以上、引用)—

この方法も「なるほど」と思いました。特に優れているのは、評価項目を変えていないので、過去のアンケート結果も新しい基準で評価できる点です。

 

顧客の期待値は、ますます上がっています。

高まっていく顧客の期待値に答えるためにも、「いかに顧客満足度の数値化を、時代に合わせてしていくか」は重要なテーマです。

価格競争から脱して、新たな価値を生み出した後に起こることは、新たな価格競争。ではどうするか?

講演で、次のようにお話ししました。

「際限のない価格勝負を続けると企業は体力を消耗してしまい、次々と淘汰されてしまうので、業界全体としては永遠には続けられません。だから価格競争が行き着く先には、必然的に価値競争への転換があります」

そして質疑応答の際に、こんなご質問をいただきました。

「価値競争に転換した後、再び価格競争になる、といったように、それは繰り返されるのでしょうか?」

 

皆様は、このご質問にどのようにお答えになりますでしょうか?

 

私は、このように答えました。

「まったくおっしゃる通りで、価値競争に転じても、再び価格競争になります。

なぜかというと、新しい価値を創り出しても、価値には賞味期限があるからです。

たとえば、一時期「企業寿命30年説」というのが流行りました。新入社員として成長産業に入っても、50歳になった頃には構造不況産業になるケースはとても多くあります。企業が新しい環境に適応できず、新たな価値を提供できないと、成長産業と言えどもいつかは衰退してしまうのです。

だからこそ、常に新しい価値を創り出して、価格競争に陥らないようにしていかなければなりません。
その出発点は、どのターゲット顧客の、どのような課題に、どのような解決策を提供するか、です。」

 

常に、いかに新しい価値を顧客に提供し続けるかは、企業にとって永遠の課題。

そしてそれこそが、企業の存在理由でもあると思います。

 

なぜ「お客様が買う理由」(バリュープロポジション)を作ろうとしても、失敗するのか?

「お客様が買う理由」(=バリュープロポジション)は、仮説として徹底的に考えた上で、リアルなお客様に検証することが必要です。

その方法論は、先日のブログで紹介したり、講演などでも紹介している通り、ごく当たり前でオーソドックスなことです。

 

しかし世の中を見ると、失敗に終わるケースも少なくありません。それは「落とし穴」があるからです。

実は15年前に「バリュープロポジション」という考え方を知った私自身、最初の2年間は「バリュープロポジション」の概念をうまく使いこなせませんでした。3年目にやっと掴むことができました。

その後十数年間、私は様々なプロジェクトに参画し、リーダーとしてプロジェクトの中でバリュープロポジション策定を行ったり、戦略アドバイザーとして策定のご支援をしてきました。

 

私の経験を整理して振り返ると、下記の落とし穴があります。

□ ブレインストーミングに多くの時間を浪費してしまう。頭で考えるても答えは出ない。リアルな顧客の実態を知ることに時間を使うべき。

□ 思い込みで「課題」を作ってしまう。思い込みはあらゆる資源を浪費する。

□ 最終顧客(エンドユーザー)ではなく、普段会っている取引先の意見しか聞けない。そして顧客ニーズから乖離してしまう。本来、最重要は、最終顧客である。

□ 顧客の実態がわからないので、特定の課題に絞り込めない。結局、総花的な製品を作ることになり差別化できない。

□ あるいは十分な顧客ニーズの裏付けを持たずに、いきなり差別化しようとして的外れの尖った製品を作ってしまう。一方で顧客ニーズの裏付けがないので中途半端な妥協をし、失敗する。

□ 「ちょっとした差」程度の差別化しかできていないので、すぐにライバルに追いつかれる。強みの見極めが不十分だと弱い差別化しかできない。

□ バリュープロポジションを検証する際、最初の数名の顧客に「興味ない」と言われ、そこで断念してしまう。実際には、10名中9名の顧客は興味がないのが現実。その中で数少ない「興味ある」顧客を見つけるのがカギ。

□ 「課題」でなく、先に「解決策」を作り顧客に検証してしまう。結局、製品中心の発想から抜け出せない。最初に検証すべきは「課題」。「解決策」は「課題」を検証した後に考えるべきである。

□ 「製品開発前に顧客に商品のことは話せない」という強い思い込みがあり、リアルな顧客に検証しない。

□ 現場が試行錯誤しながら仮説検証して失敗を通じ学びを得るのには時間がかかる。現場が着実に学び成長している一方、この「学びの時間」をマネジメントが待てない。そして今度は別の方法で新製品開発の試みを始めてしまう。継続できないので組織として仮説検証思考が定着しない。

□ トップダウン思考から抜け出せない。この方法論のベースになるのは、「ニーズや課題は顧客の頭に、解決策は社員の頭に分散されている」という考え方。仮説検証は、学びを通じこれらの知識を集めるため。社員の自発性・チャレンジ精神を尊重することが重要である。社員が現場から学び続けている状況では、トップはアドバイスに徹することが求められる

 

上記の落とし穴のうち一つでも当てはまると、うまくいきません。

しかし落とし穴にはまっている当事者は、なかなか気がつかないのが現実。

 

私は経営者や事業責任者から、次のようなお悩みをよくお聞きします。

「新製品開発の失敗が多い」

「『いい製品を作れば売れる』という考え方から、なかなか抜けられない」

「『顧客中心主義』になりたいのだけれども、どうしても『顧客絶対主義』の考え方から脱却できない」

「新事業(製品、販売チャネル、顧客開拓)に、社員がなかなか自らチャレンジしようとしない」

これらは、先の落とし穴に嵌まっている可能性が多いというのが、私の実感です。

 

一つの解決策は、バリュープロポジション策定実績が豊富な経験者から、3ヶ月程度の期間、隔週程度の頻度で集中してガイドを受けつつ、新製品や新事業開発プロジェクト、あるいは事業変革プロジェクトを実施し、実業務を通じて学ぶことです。

社員が身を以て体験を通じて学んだことが、企業の力になるのです。

 

そこで弊社では、このようなことでお悩みの企業様へ、新事業戦略コンサルティングをご提供しています。

ご興味がある方は、こちらにより詳しい概要がまとまっていますので、ご一読を。

 

初めて「バリュープロポジション」という考え方に出会ったのは、15年前でした

「バリュープロポジション」を英語で書くと”Value Proposition”。

直訳だと、「価値訴求」とか「価値提案」といった言葉になります。ちょっとわかりにくいですね。

そこで私はお客様にはわかりやすく「お客様が買う理由」と言い換えて、お話ししています。

 

私がはじめてこの「バリュープロポジション」という考え方に出会ったのは、15年前の2000年。IBMで戦略マーケティングマネージャーとして事業戦略を担当し始めた時でした。

IBM米国本社の戦略部門より「バリュープロポジション」という言葉を初めて聞かされました。

「『バリュープロポジション』って、何だろう?」というのが、その時の自分の反応。意味がよくわかりませんでした。

しかしその後、戦略策定業務を通じてこのバリュープロポジションを徹底的に考えるようになりました。そして、「自社だけが提供でき、他社が提供できない、お客様が求める価値のこと。つまり『お客様が買う理由』のことなのだ」ということが、ストンとハラに落ちて理解できました。

その後数多くの事業で、バリュープロポジション開発を通して戦略を策定し、戦略を実践してきました。

たとえば2002年にCRMソリューションのマーケティング戦略立案・実施を担当した際、「IBMしか提供できない、お客様が必要とするCRMソリューションの価値って何だろう?」と考えた末、バリュープロポジションに基づいたマーケティング戦略立案と実践を行いました。チーム一丸となってバリュープロポジション強化を徹底し、日本市場シェア1位と市場認知度1位獲得に貢献しました。

「強いバリュープロポジションは、事業を大きく差別化させ、成果を生み出す」 ということを、身をもって学びました。

この自分自身の体験で、「バリュープロポジションという考え方は、同質の競争で疲弊している日本企業にこそ、まさに必要な考え方なのではないか」と考えるようになりました。

実は世の中にブログや著書などで積極的に情報発信を始めたのは、この頃からです。

 

とは言え普通の会社員なので、出版社に知り合いはいません。日本IBM在職中の2008年に上梓した初めての著書は「戦略プロフェッショナルの心得」という自費出版の本。本書で「バリュープロポジション」の考え方を紹介しました。

その後、2011年3月に再び自費出版で「バリュープロポジション戦略50の作法」を出版。

さらに同年11月には物語形式で「100円のコーラを1000円で売る方法」でバリュープロポジションの考え方を紹介しました。世の中に「バリュープロポジション」の考え方が広まるのに、少しお役に立てたのではないかと思います。

さらに2013年に日本IBMを退職し独立してからは、講演や研修活動でも、「バリュープロポジション」の考え方を広めています。

 

より多くの企業が、「バリュープロポジション」=「お客様が買う理由」を考え抜くようになれば、日本企業はもっと元気になる筈です。

自称「バリュープロポジションの伝道師」として、少しでもお手伝いをしていきたいと考えています。

「お客様が買う理由」を考えるための枠組みは、当たり前のことだった

色々な業界のお客様にお目にかかって、お話しをしていますが、実感することがあります。

「お客様が買う理由」(バリュープロポジション)がどの業界でも重要であること。

そして「お客様が買う理由」(バリュープロポジション)を考えるための方法論は、どの業界でも比較的共通であることです。

 

最近の講演では、

「お客様が買う理由」をいかに作るか?
「ニーズ断捨離」時代に求められる思考の変革

という演題で講演し、「お客様が買う理由」(バリュープロポジション)を考えるための次の枠組みをご提案しています。

(1) 自社の事業は何か?
(2) 自社の強みは何か?
(3) その強みを必要とするお客様は誰か?(= ターゲット顧客)
(4) そのお客様が必要とすることは何か?(= 顧客課題)
(5) お客様が自社を選ぶためにどうするか?(= 解決策)
(6) バリュープロポジション(お客様が買う理由)は何か?

これまで、IT企業、食品製造業、食品流通業、不動産開発業、旅行業、保険業、地方自治体、出版業、情報資産管理業など、色々な業界で講演や研修を行う機会がありました。

 

そしてわかったことは、この枠組みはどの業界でも有効だということです。

考えてみれば、この枠組みは何も新鮮なことはありません。当たり前のことです。

しかし成功している企業は、常に継続的にこれをリアルな顧客を相手に見直しながら、愚直に取り組んでいます。

「マジックはない。愚直にオーソドックスに継続するのみ」なのだな、と実感します。

私自身も、改めて愚直に継続していきたいと思います。

遠方での講演で、前泊の必要性

遠方への研修や講演に行く際、以前は当日の早朝に家を出発していました。

実際には遠方での講演では、100名、場合によっては数百名もの方々が参加されることがあります。

考えてみると、色々な理由で新幹線や飛行機が運休することは決して稀ではありません。さらに交通手段以外の理由で現地に到着できない可能性もあります。

参加者の皆様も、お忙しい仕事をやりくりして参加いただいています。そんな方々をお待たせして、「講演会場に到着できない」というのは、講演当事者としては、とても恐ろしいことです。

(幸い、今のところ穴を開けることもなく、ほぼすべて万全な体調管理をした上で講演に臨めています)

 

ということで最近、私は遠方での講演では、なるべく前泊するようにしています。2月上旬から中旬に実施した講演でも、東京以外の7回分は前泊しました。

 

実は他にも二つ、よい点があります。

一つは前日に現地入りすることで、その土地のことがわかること。夕食に出かけたり、ショッピングセンターを歩いたり、カフェに入ったりしていると、街の雰囲気というものを感じることができます。

実際の話の内容自体は変わらないかも知れませんが、その土地のことを理解した上でお話しするのと、慌ただしく到着してお話しするのでは、やはり伝わるものが違ってくるように思います。

もう一つは、体調管理。遠方への移動は、仮に座席に座れたとしても、結構疲れるものです。疲れた状態で講演するよりは、疲れがない状態で講演する方がいいのは自明ですね。

 

多くの方々の貴重なお時間をお預かりする講演ですので、できるだけ自分としてベストのお話しができるようにし、「有意義な時間だった」と思っていただけるように、環境を作っていきたいと思います。

みずほ総研様開催「みずほFORUM-M講座」(名古屋/福岡)で講演しました

みずほ総研様が開催された「みずほFORUM-M講座」で、講演いたしました。

□2015年2月12日(木) @ 名古屋
□2015年2月13日(金) @ 福岡

名古屋では約140名のお客様。
みずほ総研様@名古屋20150212-2

福岡では約100名のお客様が参加されました。
みずほ総研様@福岡20150213

このようにたくさんの方々にご参加いただき、本当に有り難く思います。
参加された皆様からのお声を抜粋してご紹介します。

◇『100円のコーラを1000円で売る方法』の本を読んで臨んだので、理解しやすかった。
◇マネジメントを再認識することができました。私の立場ですと、顧客が社員になります。社内でのマネジメントの参考例を学んでみたいです。
◇大変わかりやすく、考え方を見つめ直す機会となりました。ありがとうございました。
◇今後の活動に生かしていこうと思いました。ありがとうございました。
◇事例が身近で理解しやすかった。

参加された皆様、ありがとうございました。

一社単独でなく、パートナーシップで強みを追求する…15年前のIBMの事例から

先日の講演で、こんな質問をいただきました。

当社はIT企業です。ご講演では、「自社単独で強みを追求する」というお話しが中心だったように感じます。一方で自社単独ではなく、他社と協業し、弱みを補いながら、強みを強化するような事例があったら、教えていただけますか?

私はこの場では、あるサービス業界でお互いの強みで弱みを補完し合う事例をご紹介しました。

講演が終わり、「もっといい事例があった!」と思い出しました。

実は9年前の2006年4月、当ブログでも書かせていただきました。

それはまさにIT業界で、しかも私もその渦中にいた、IBMの事例です。

1990年代まで、IBMの強みは「上流コンサルから、サービス、ハード・ソフト等、アプリなど、全てを揃えてでソリューションとして統合できること」でした。当時は自前主義でした。

しかし一方で、1990年代からSAPやSiebelといった業務系アプリケーションベンダーが急成長します。

そこでIBMはケースバイケースで、アプリケーションベンダーと協業しつつも、自社アプリケーションを持つ領域では、アプリケーションベンダーと競合していました。

ある意味、方針は首尾一貫していなかったのですね。

当時、私はCRMソリューションを担当しており、SiebelなどのCRMアプリケーションベンダーはライバルでした。

しかし1999年、IBMは全世界で方針転換しました。

その方針とは、

「今後IBMは、ビジネス・アプリケーション分野は業務系に強いアプリケーション・ベンダーとパートナーシップを組み、IBMの製品・サービスと組合わせて、お客様にソリューションをお届けする」

そしてIBM自社開発アプリケーションについては、既存顧客がいるケースを除き、原則中止しました。

この日を境に、ライバルがパートナーに一転します。

それまでCRMソリューションで競合していたSiebelは、突然、パートナーになりました。

お客様から見ても、IBMがハードやミドルウェア、構築サービスを提供し、その上で先進アプリケーションベンダーの製品を使えた方が、メリットが大きいわけですね。

IBMの強み: インフラや構築サービスに強い

アプリケーションベンダーの強み: 業務系アプリに特化して強い

という、両者の強みを発揮できたわけです。

数多くのアプリケーションベンダーにとって、IBMは強力なパートナーになりました。

それから15年以上が経過し、今や時代はすっかり変わり、クラウドやモバイルを前提として、システムを構築する時代になりました。

パートナーシップの組み方も変わっています。

しかしいずれにしても、「お客様から見た強みはどこにあるか?」がカギであることは変わりはありません。

そのためには、当時IBMが自社アプリをあきらめたように、自社で必ずしもお客に対して高い価値を提供できていない部分は、早急に見直していく必要があります。

強みを判断する基準は、やはりあくまで顧客の価値なのです。

メルマガを始めます

2月2日(月)から2月17日(火)まで、全国各地で講演を8回行いました。

名古屋 5回、大阪 1回、東京 1回、福岡 1回

参加されたお客様は経営者や経営幹部の方々を中心に、合計700名。

質疑応答や懇親会では、様々なご意見やご質問をいただきました。

私の本を「社内で教科書として使っている」という方も多くおられました。

本当に有り難いことです。

そこで、「このような方々に、定期的にメッセージをお届けしたい」と考え、メルマガ『お客様が買う理由を創ろう』を始めることにしました。

配信頻度は月数回程度。色々なことをお伝えしていきたいと思っております。

配信をご希望の方は、こちらからeメールアドレスを登録下さい。

配信開始は、2月下旬を予定しています。

三菱UFJリサーチ&コンサルティング様開催「経営課題サポートセミナー」(東京/大阪/名古屋)で講演しました

三菱UFJリサーチ&コンサルティング様が開催された「経営課題サポートセミナー」で、講演いたしました。

□2015年2月6日(金) @ 東京
□2015年2月9日(月) @ 大阪
□2015年2月16日(月) @ 名古屋

中小企業様の経営者を中心に、東京のセミナーでは約70名、大阪のセミナーでは約50名、名古屋では約30名の方々が参加されました。講演90分+質疑応答30分の合計2時間構成でした。

質疑応答では、事業を陣頭指揮なさっている経営者ならではの切実なご質問を多数いただきました。

参加された皆様からのお声を抜粋してご紹介します。

◇ 自社の強み、顧客の課題をもう一度見つめ直し、なぜ自社のサービスが選ばれているのかを考えたいと思います。その中で新しい課題が見つかれば、それを解決 していきます。買う理由は価格ではないケースが多いというのは理解は出来てもそれが何であるのか見極めるのは難しいと感じました。しかしながらローリスク で始められる実験をする勇気をもって仕事に取り組みたいと、やる気がでました。

◇「目からウロコ」という感じで、視点を変える気づきがありました。「お客様が買う理由」を積極的に考えるということに集中してみたいと思いまし た。

◇新事業を担当するタイミングでのセミナーだったため、部下と共に事業開発ができそうです。

◇弊社も新商品の開発を行っていますので、ニーズ断捨離についての考えを会社に広めていきたい。部下への発想の転換を促していきたい。

◇具体的かつ多様な企業の例で、より興味深くお話しを伺うことができました。社員数の少ない小規模のメーカーですが、今自分たちができている部分 あるいはできているのではないかという部分と、これから力を入れていくべき箇所が見えてきました。特に顧客リサーチはこれからの課題として社で共 有していきたいと思います。

◇たいへん勉強になりました。自社なりの価値創造を検討してみようと思います。「やりたいことをやる」…背中を押していただいたと思います。ありがとうございました。

◇顧客中心に考えることが新しいアイデアを生むことがわかりました。

◇事例がわかりやすく、そしておもしろく、充実した時間でした。ありがとうございました。新商品を企画して行くにあたり、課題の解決策を考えなければ売れないことがわかりました。バリュープロポジションの重要性について、役立てていければと思います。

参加された皆様、ありがとうございました。

ペッパーくんと実際に遊んでみた。そしてビジネス活用について考えた

この数週間、講演のため出張続きです。ということで先日、名古屋駅にあるビックカメラに行ってみました。

家電売場フロアーに行くと、あのペッパーくんがいました。ネスレのコーヒーマシンの説明のために、エスカレータを上がったところで待っていました。

【参考までに、これにはこんな背景があります→】「ソフトバンクのロボ「ペッパー」、ネスカフェマシンの売り子に」(Reuters)

実物のペッパーくんとのご対面は初めてです。

ペッパーくんが「あなたに最適なコーヒーマシンを選びます。お好きなメニューを選んで下さい」と言いいながらiPadを掲げるので、選んでみました。

4つほどの質問に答えると、質問にあわせて「あなたにお勧めのコーヒーマシンはコレです」と、お勧めのネスレのコーヒーマシンを教えてくれます。

このシステム自体は、普通のパソコンやタブレットでも出来ます。音声を付けるのも簡単です。

しかし実際にやってみて、「うまく出来ているなぁ!」と思ったことが1つあります。このおかげで、実は質問し始めると途中でやめられないのですね。

何かというと、ペッパーくんがつぶらな大きい瞳で、じっとこちらの目を見ながら話すこと。

こちらが移動しても、ちゃんと首を動かして追いかけます。目の奥にチラチラと赤い光が見えますが、これが画像(私の姿)を追跡しているそうです。

こちらが移動しても、じっと真っ直ぐに無邪気な顔でペッパーくんにじっと見つめられると、途中でやめるのはなかなか難しいですね。「目」というのは、実はとても強力な力を持っていることを実感しました。

もう一つ凄いと思ったのは、相手をするお客さんがいなくなると、周りをキョロキョロして、近くを歩いているお客さんに「いかがですか〜」と声をかけること。ペッパーくん、なかなか優秀な売り子さんでもあります。

これはタブレットやパソコンではできないですよね。

ということで、一旦話し始めたお客さんは、なかなか掴んで離さないペッパーくんでした。

現時点では話題性と物珍しさも手伝って、お客さんが集まっていますが、今後、本当に販売実績に繋げるためには、お客さんの悩みに当意即妙に答えるなど、もう一工夫必要かな、とも思いました。

考えてみると、ペッパーはクラウドベースで感情や経験を「集合知」として共有できる仕組みを持っています。

たとえば数年間のレンジで、店舗のお客さんから要望や質問をクラウドで蓄積し、集合知に基づいて回答する仕組みを作って運用すると、単なる話題性から脱して、大きな武器になりうるのではないかと思います。

明朝のbayfm (ベイエフエム)に生出演し、コーヒーのトレンドについてお話しします

明朝2015/2/16(月)の午前7時半に、千葉県を中心に放送されているbayfm (ベイエフエム)に生出演することになりました。

POWER BAY MORNINGという番組で、「コーヒーのトレンド」についてお話しします。

『戦略は「1杯のコーヒー」から学べ!』がきっかけで、お話しをいただきました。有り難いですね。

時間は7:28から10分間の予定です。

ラジオ電波は千葉県周辺ですが、radikoを使えば、インターネット経由でどこでもお聴きいただけます。→radikoへのリンク

実はこの日は講演のため名古屋へ出張中ですので、名古屋のホテルから、電話での出演になります。

 

2015/2/20 付記:番組のサイトでも、紹介いただきました。

 

原田泳幸氏インタビューから学べる、経営者の覚悟

昨日の続きで、President Onlineの下記記事についてです。

ベネッセホールディングス会長兼社長 原田泳幸「疫病神批判に答えよう」

 

引用しながら、考えたことをまとめたいと思います。

—(以下、引用)—

「トップダウンで強引だ」という声があることは承知しています。しかし、いわゆるクライシス(危機)に直面している会社のトップが、「誰がついてきて、誰がついてこないか」と心配していたら、誰もついてきません。

—(以上、引用)—

私は最近、有り難いことに講演などで経営者の方々とお話しする機会を多くいただきます。その多くは、社員数数十名から数百名程度の、オーナー経営者です。

実感するのは、経営者と企業のマネージャーの間にある意識の違い。誤解を怖れずに言うと、「覚悟の違い」と言ってもいいかもしれません。
私自身も会社員をしていたので経験がありますが、企業の中にいるマネージャーは、「会社が悪いのはココのせいだ。オレだったら、こうする」と言いがちです。

しかし実際に、その発言を実行する人は少ないのが現実。

その中でも問題意識がある人は、業務を超えた範囲であっても、自分で出来ることを実行し始め、そして成果を挙げていく人もいます。

このように考え実行する人は、素晴らしいですね。ちなみに経営者層もそういう人のことは、見ていないようでいてちゃんと見ていることが多いのです。

しかし一方で、現実に見えているのは、自分の業務範囲であるのは事実です。山で喩えれば、登山の最中に山の中腹で、山脈全体の中における山の位置づけを想像しながら考えています。

 

私も零細ながら会社経営に2年近く携わっています。まだまだ修業の入り口ですが実感するのは、経営者の場合、会社が悪いのは全て自分の責任。当たり 前のことですね。会社員生活を30年近く続けてきた私も、独立する前から理解していたつもりでした。しかし想像することと実際に経験するのは、やはり違 う。

経営者の場合、責任の業務範囲は、企業の製品開発・営業・総務系業務・保守・購買・財務・会計・人事など、あらゆることに拡がっています。そして売上・利益という結果責任を全て負います。

そして会社をよりよくする上で本当の阻害要因が何か、各要因の繋がりは何かを見極め、優先順位と繋がりをどう考えるか、常に考えています。

さきほどの山で喩えると、山腹ではなく、たとえそれがどんなに小さな山であっても山頂に登って山頂からまわりの山脈を見ながら、山脈全体の中におけ る自分の山の位置づけを考えています。山頂だから良い見晴らしとは限りません。近くに嵐がすぐに迫ってきているのが見えたりしますが、これは山腹にいても なかなかわからないことも多いのです。

これは、「いい」「悪い」ということではありません。

経営者は、山頂の風景を見て、会社として何を行うべきかを判断するのが仕事。(そして規模が小さい場合は遂行責任も伴います)

マネージャーは、会社の中で任された業務を遂行することが仕事。

経営者とマネージャーは、役割が違います。
しかし考えたことを実行しようとすると、多くの場合は社員との問題意識と乖離があるため、経営者が言葉を尽くして説明しても、なかなか理解されることが難しいのです。

特に今やっていることと正反対のことをやろうとすると、現場の反対は大きくなります。

山腹の登山の最中に、いくら言葉を尽くして山頂からの風景を話し、「目標を変えてコッチではなくアッチの山に登ろう」と言っても、なかなか伝わらないのと同じです。
私も講演の際に、経営者ならではの問題意識を抱えた重い質問をいただくことがよくあります。そのたびに身が引き締められる思いがします。

原田さんのようにハラを括る必要性は、実際には多くの経営者が実感していることだと実感します。
原田さんというと、「強引」「現場無視」というお話しをよくお聴きします。

本当は、現場重視で社員に優しく、かつ、どんな反対にも屈せず果敢かつ臨機応変に判断して改革を断行できる経営者が理想ですね。

ただ、これらは本質的に矛盾し合う要素です。

そもそも経営者の仕事は、会社の業績向上を果たすこと。仮に社員満足度が大きく上がっても会社を潰してしまったら、それは経営者失格なのです。
「ベネッセの仕事を、ビジネスにおける人生最後の集大成にする意識で臨みたい」と常々おっしゃっている原田さんのインタビューからは、そんな原田さんの覚悟を感じました。

原田泳幸氏インタビューから学べる、自社の強みと顧客価値の徹底追求

President Onlineで、こんな記事を読みました。

ベネッセホールディングス会長兼社長 原田泳幸「疫病神批判に答えよう」

勇気があるタイトルですが、読み応えがある良記事でもありました。引用しながら、考えたことをまとめたいと思います。

—(以下、引用)—

私が常に考えてきたのは、お客さまのこと。「顧客は何を求めているのか」「顧客のためにヒト・モノ・カネをどれだけ戦略的に使っているか」。これは普遍的です。

目的は顧客価値の向上です。商品の価値には、有形と無形のものがある。いまは有形の価値ではなく、無形の価値を高めているところが勝っている。レストランビジネスでも、ハンバーガーそのものより、利便性やスピード、つまり無形の価値が重要です。

ベ ネッセの価値も、実は教材の内容そのものにはありません。教材はどこにでもある。価値を生み出しているのは赤ペン先生や教材の編集者など学びへと導くノウ ハウを持つ「人」です。そういう無形の価値をどうつくるか。もっというと、情緒的・精神的価値をどうつくるか。それはずっと変わりません。

—(以上、引用)—

原田さんはこのインタビューで、

マクドナルドの強み… 利便性とスピード

ベネッセの強み… 学びへと導くノウハウを持つ「人」

と述べておられます。

私も、「まず自社の強みを徹底的に考えましょう。そしてその強みを必要とするお客様は誰か、そのお客様は何を必要としているか、お客様が自社を選ぶためにはどうすればよいかを考え、愚直に実行しながら学びましょう」とご提唱しています。

原田さんも、お客様にとって価値がある自社の強みをキチンと見極めた上で、戦略を立てておられます。

そしてこの強みをより活かすために、マクドナルドでは「メイド・フォー・ユー」というシステムを導入されましたし、現在ベネッセでは直接の顧客接点「エリアベネッセ」を全国500カ所を目標に展開しようとされています。

戦略を実行し、実行しながら学んで、実行の質を上げています。

特に、「実行しながら学ぶ」ことが大切です。戦略は賞味期限があります。実行して学ぶのは、その賞味期限をチェックすることも目的です。

恐らく「メイド・フォー・ユー」は現時点で賞味期限が切れた施策になっていますし、「エリアベネッセ」も長期的に見るとどこかの時点で賞味期限は切れます。だから「実行しながら学ぶ」ことが必要なのですね。

私にとって、学べるところがとても多い記事でした。

ちょっと長くなったので、続きは明日のブログで。

 

ブルーボトルの秘密は、日米の強みの融合にあった

ついにブルーボトルコーヒーの海外初出店となる店舗が、清澄白河にオープンしました。このタイミングで、創業者のジェームス・フリーマンCEOも来日されました。

そのフリーマンさんに、Business Media誠が取材した記事が掲載されています。

ブルーボトルコーヒー創業者が語る、日本進出が必須だった理由

これまでのコーヒーのサードウェイブ本で紹介されていたフリーマンさん。本記事は最新メッセージでとても参考になりましたので、ご紹介したいと思います。

 

—(以下、引用)—

米国での事業を海外に拡大するのがゴールだったわけではなく、サービス精神やホスピタリティの高い日本に進出することでBlue Bottle Coffeeのビジネスが発展すると考えていました。つまり、Blue Bottle Coffeeにとっては日本ありきだったのです。その日本という国がたまたま海外だったわけで、海外戦略のために日本に進出してきたということではありません。

—(以上、引用)—

フリーマンさんが日本に古くからある喫茶文化に大きく影響されてブルーボトルを始めた、という話しは有名です。

このフリーマンさんの言葉からも、日本の喫茶文化は、ブルーボトルのアイデンティティの一部であることがうかがえます。

 

—(以下、引用)—

温度、酸味、焙煎や抽出などに関する細かなデータを取っています。こうしたデータに基づき、一杯一杯コーヒーをおいしく入れるのにこだわった仕組みを次々と店舗に導入しています。日本でここまで厳密にやっているコーヒーショップはまだ少ないので、サンフランシスコの文化を持つBlue Bottle Coffeeの良さを広めていきたいです。

—(以上、引用)—

ここ(特に太字)を読んで「なるほど!」と思いました。

ブルーボトルは、コーヒーのサードウェイブという流れを象徴する店です。

コーヒーのサードウェイブとは何か?

コーヒー豆は農産物です。他の農産物同様に、産地・種類・栽培方法などによって色々な個性があります。しかしともすると、これまではそのような個性はあまり重視されず、むしろ味を一定品質に保つために複数の豆をブレンドしたり、深煎りして豆の個性を消していました。

そこでコーヒー豆の個性を重視し、「シングルオリジン」というコーヒー豆単品の個性を活かしたコーヒーを提供していこう、という考え方が、コーヒーのサードウェイブです。「サードウェイブ=浅煎り」とも言われますが、豆の個性を活かした味わいにするために浅煎りになるのですね。

様々な個性のコーヒー豆があり、焙煎や抽出も様々な方法があるので、組合せは千差万別になります。

そこでデータを取ることが必要になります。かつてコンピューターが普及していなかった時代は、恐らくこのような情報を職人が感覚的に身につけたり、メモに取っていたのでしょう。しかしこの方法では、網羅できるコーヒー豆の種類は限定的です。

シングルオリジンでデータ量が爆発的に増えるので、必然的に細かにデータを取り、それを共有しあうことになります。言い換えると、コーヒーのサードウェイブはITが支えている、という見方もできます。

 

—(以下、引用)—

スペースが空いているから出店するのではなく、その環境がBlue Bottle Coffeeらしさを表現できるかどうかが重要です。厳選して検討していきたいです。

……ビジネスありきで始めたわけではありません。自分が本当に好きなコーヒーを飲みたいと思って、店を開業しました。

—(以上、引用)—

拙著『戦略は「1杯のコーヒー」から学べ!』でも、「お客様に価値を提供するには、自分らしさを徹底的に考えることが必要」ということをご提案していますが、まさにフリーマンさんもそうおっしゃっています。

  

—(以下、引用)—

日本は伝統的な職人気質があり、コーヒーに対するオリジナルの技法やナレッジをその人だけが知っているという特徴があります。一方で、米国は直接農園に出向いてコーヒー豆を買い付けてくるといった調達の面で進んでいます。また、焙煎の温度やコーヒー一杯あたりの重さ、量など細かい数値データを蓄積、分析している点も優れています。この両者の良いところを合わせ持ったのがBlue Bottle Coffeeだと考えています。

—(以上、引用)—

この部分も新たな気づきでした。

日本の強み:日本は伝統的な職人気質

米国の強み:コーヒー農園からの直接調達+データ蓄積&分析

ブルーボトルの強み=日本の強み+米国の強み

ということですね。

 

新たな価値は、異なる複数のモノが融合することで生まれるのだ、という1つの事例が、ブルーボトルなのではないかと思いました。

 

最初の面談で、「お客様は何でお困りなのか」仮説を立て、ご提案を用意する

日本IBMの大先輩であり、オルタナブロガーとして「レジェンド営業塾」を書いておられる竹内雄司さんのエントリー「013そのプレゼン&デモでお客さんの心を捉えることできますか?」を拝読しました。

①お客様の事前期待は何か?
これが一番大事であり、この掘り下げ次第で準備の質が決まります。

「まったく、その通り」と思いました。

竹内さんのこのエントリーは「RFPへの営業マンの対応」という観点で書かれています。

一方でRFPがない状況で、お客様と最初の面談がある方も多いと思います。

かく言う私もRFPをいただくことはなく、オフィシャルサイトからのお客様のご依頼で最初の面談をすることが多いので、自分の経験で考えてみました。

私の場合、お客様と最初に面談する際には、「そもそも何でお困りになって、依頼されたのだろう?」ということを考えます。

事前にメールなどでお客様に直接お伺いすることも多いのですが、多くの場合、お客様ご自身も困っていて問題が整理しておられないことも多いのです。

そこで事前資料を読み込んだり、お客様のホームページを見たりして、「恐らく、こういうことで困っているのではないか?」と仮説を立てます。

IR情報があれば真っ先に丹念に読み込みますが、お客様が非公開企業であることも多いので、そんな場合は一般公開されているホームページやパンフレット、あるいはインターネット上の記事を読みます。

たとえば、お客様の会社ホームページに掲載されている、「当社の強み」が、具体的ではなく抽象的なことがよくあります。たとえば「高品質なサービス供」、「丁寧なフォロー」、「迅速な対応」といった言葉がある場合です。

裏返すと、自社の強みが十分に発揮できておらず、その結果、差別化できずに価格勝負に陥るジレンマを抱えておられる可能性もあるのです。

そこで、「このお客様の業務の場合、どのようにバリュープロポジション策定をご支援すればよいか」を仮説として考えます。たとえば、想定される潜在 的な強みは何か、類似の状況にあって強みを発揮している事例(他業界も含め)はあるのか、本来の対象のお客様は誰になるのか、などを考え、できるだけお客 様の業務に沿った内容の提案を仮説として考え、準備した上で、最初の面談に臨みます。

もし仮説が間違っていても、土台があることで、面談の中でどこが間違っているかを把握できれば、その場で修正提案が可能になります。

こうして多くの場合、その後の仕事に繋がっていきます。

ここまでは、お客様からのお問い合わせがあって最初の面談がセットされるケースで書きました。

実際の営業活動では、逆にこちらから最初の面談を申し入れするケースも多いと思います。

むしろこの方が、最初に仮説を作ることが必須です。お客様が必要としているのは、商品の説明ではなく、自分の課題解決だからです。(お客様の立場で「当社の素晴らしい商品を説明するお時間を下さい」とお願いされても、自分の貴重な時間を割く人は少ないと思います)

インターネットが普及している現在、多くの情報はすぐに入手できます。

情報が溢れている現代だからこそ、溢れている情報からエッセンスを整理・抽出し、お客様の事前期待を想定し、それを上回る提案を仮説として準備し、実際に目の前のお客様に検証する仮説検証力が、営業の現場でモノを言うのだと思います。

そのようにエッセンスを抽出し仮説を構築する力は、日々の仮説検証を愚直に繰り返し、学んでいくことで培われていきます。

一見難しいように思えますが、モノは考えようです。今日、今から始めればいいのですから、実は簡単、とも言えます。そして習慣化できれば、3年後には必ず大きな成果が上がっているはずです。

高画素競争が新段階にステップアップしてきたデジカメ

CP+2015を控えて、超高画質のデジタル一眼が増えてきました。

キヤノン EOS 5Ds……有効5,060万画素/フルサイズ→記事

オリンパスOM-D E-M5 Mk II……8枚合成で4000万画素/フォーサーズ→記事

既にソニーも3640万画素のα7Rを出していますし、ニコンも3635万画素のD810を出しています。

これだけ高画素になると、得られる画像が圧倒的に高画質になりますが、ファイルも巨大です。

キヤノンのサイトによると、EOS 5Dsの5,062万画素で得られる画像サイズは8688×5792ピクセル。ファイルサイズはJPEGでも14.1MB。RAWだとなんと60.5MBになります。

デジカメWatchの記事に よると、有効1,605万画素のセンサーを0.5ピクセルずつずらして16Mの画像を計8枚を撮影する40Mハイレゾショットを搭載したオリンパスOM- D E-M5 Mk IIで、40Mハイレゾショットを撮ると、JPEGで約20MB、RAWだと約100MBとのこと。

以前だったら考えられない巨大ファイルです。

しばらく2000万画素前後で推移し、高画素競争が一段落していたデジカメの世界ですが、8Kの普及が視野に入り、スマホのデジカメ機能向上の影響もあるためか、ここ1-2年で新たな段階にステップアップしているように感じます。

『「価格勝負から抜け出して、価値を創り出し、価値勝負にしよう」というお話しはとても共感します。ただ現実は、値引きの要請がとても強いのが現状で、価格勝負からなかなか抜け出せません。』→本当に、お客様に会えているのか?理解しているのか?

「お客様が買う理由を考えよう」と題して講演した後、懇親会でこんなお話しをいただきました。

「価格勝負から抜け出して、価値を創り出し、価値勝負にしよう」というお話しはとても共感します。ただ現実は、値引きの要請がとても強いのが現状で、価格勝負からなかなか抜け出せません。

そこで「御社の商品の品質や価値は、他社と比べてそんなに変わらないのでしょうか?」とお伺いすると、「他社と比べてまったく違います。絶対の自信があります」というお答え。

詳しくお話しをお伺いすると、このお客様では、ありがちな「製品中心」の考え方には陥っておらず、本当に消費者からの評価も高いようです。

では、なぜ価格勝負に陥ってしまうのか?

より詳しくお話しをお伺いして、なるほどと思いました。

皆さん、理由はわかりますでしょうか?

 

実は営業の日々の仕事が、問屋やメーカーといった取引先に会うことで忙殺されていて、最終消費者に会えていないのです。

言い換えれば、営業チームが、消費者の生の声を把握できていないのです。

そこで「当社の製品は高い品質で、消費者からも支持いただいています」と言っても十分な説得力がなく、「そうですか。いいですね」とスルーされてしまい、「で、これだけの量を買いますが、値引きはコレでお願いします」という価格交渉に陥っていたのです。

 

では、どうすればいいのか?

お客様には、「最終消費者」と「仲介者」の2種類があります。

本当に必要なことは、最終消費者に接し、最終消費者が何を必要としているのかを学び続け、最終消費者が「少々高くても、是非欲しい」という商品を育てること。

商品の価値を享受するのは、最終消費者だからです。

 

以下は、1年半前に上梓した『「戦略力」が身につく方法』(PHPビジネス新書)でご紹介した事例です。

ある樹脂メーカーは、顧客である塗料メーカー向けに新しい化学樹脂を開発しました。「環境に優しい塗料が必要」と想定して環境性能に優れた樹脂を新開発し、その樹脂を使った塗料を発売しましたが、顧客の顧客である塗装業者の反応は冷ややかで、売れませんでした。

そこで樹脂メーカーはどうしたか?

塗装業者に調査をしました。意外なことがわかりました。環境性能の優先順位は高くないこと。そして一方で、塗装コストのほとんどは人件費で、実際の塗料コストは全体のわずか一五%だったことです。

そこで樹脂メーカーはバリュープロポジションを見直し、塗料に用いると乾燥時間が短くなる化学樹脂を発売しました。標準の1.4倍の価格でしたが、塗料メーカーに飛ぶように売れました。乾燥時間の短縮によって塗装業者の生産性が向上し、人件費の削減につながったからです。

素材メーカーや問屋販売の商売であればなおさらのこと、「最終消費者が、何でお金を払うか」を理解することがとても大切になります。

「デジタルが全てを壊す」…写真作品制作のデジタル化から

私は1980年代から1990年代まで、写真の個展を開催するなど、かなり写真活動に力を入れていました。

この頃は、写真を撮った後、作品プリントに仕上げるまでこんな感じでした。

0日目:現像所受付に行き、フィルムを現像に出す

1日目:翌日、現像所受付に行き、現像フィルムを受け取る

2日目:プリントする写真を選んで、現像所受付に行き、プリント依頼する

7日目:現像所受付に行き、プリントを受け取る(仕上がりが合っていない場合は、再プリントを依頼)

数えてみると、現像所受付には最低4回行く必要がありました。

当時は勤務していた所属部門の事情で都内事業所を頻繁に引っ越ししていました。オフィスが引っ越すと最初に行ったのは、夜遅くまで開いている現像所を探すことでした。

赤坂に勤務していた頃は、六本木1丁目にある日本発色に行ってましたし、築地に勤務していた頃は、銀座のコダックイマジカや日本発色の常連客でした。

仕事が終わって会社を出て、閉店間際の現像所受付に駆け込んで、現像の注文をしたり、仕上がりを受け取ったりしていたのですね。

こんなことを繰り返しながら作品を溜め、写真展を行っていました。

今は、作品プリントも含めて、現像所に行く必要が一切なくなりました。

まず現像が不要。撮影したら、イメージが残っている間にすぐにRAW現像し、JPEGデータを作ります。

そしてプリントも簡単。(ちなみに私は、カラープリンターは持っていません)

たとえば富士フイルムのスーパーデジタルプリントクリスタルでは、ネットで高品質のクリスタルプリントの注文ができ、自宅に配送してもらえます。クレジットカード決済以外にも、後日の銀行振込なども用意しているので安心です。

価格もデジカメ普及前のクリスタルプリントは六つ切で1枚2,500円位だった記憶がありますが、半額以下の1,008円。かなり安くなっています。

ちなみに「デジカメでキレイな写真を撮れたな」という方は、一度、この富士フイルムのスーパーデジタルプリントクリスタルを試してみることをお勧めします。きっとプリント品質の高さに驚かれるのではないかと思います。

実はこの変化が起こっている裏では、現像する人、写真を焼く人(プリンター)、そしてフィルムを開発・生産・流通・販売する人たちの仕事がなくなっています。

その一方、写真のデジタル化が進んだことで、写真作成に関わるあらゆるプロセスが迅速化・高品質化・低価格化しています。

日経ビジネス 2015.2.2号で、米アクセンチュアのピエール・ナンテルムCEOによる「デジタルが全てを壊す」という対談を掲載しています。

記事によると、アクセンチュアは、①あらゆる分野で進むデジタル化に対応するサービスと、②顧客企業の合理化や生産性向上を支援するサービスの2つにフォーカスし、マーケットシェアを伸ばしています。

写真作品制作のデジタル化で起こったのと同じことが、今、あらゆる業界で起こっています。

中部マーケティング協会様で講演しました

2015年2月3日、名古屋にある中部マーケティング協会様で、『お客様が買う理由を、いかに作るか? − 「ニーズ断捨離」時代に必要な、考え方の変革 』と題し、2時間の講演をいたしました。

平日の午後3時開始という時間にも関わらず定員100名のところ150名のお申し込みがあり、当日は140名以上もの方々が参加いただきました。

20150203 中部マーケティング協会.jpg
 

後ろの席の方向けにプロジェクターをもう一台セットいただきました。

 

本を読んできて下さった方々も多く、中には社内の若手営業向け研修で私の本を教材に使っているという大手企業マネージャーの方もおられました。

また、「本で学んだことをもとに、社内で新商品開発をしていて、もうすぐ出荷間近です」という方もおられました。

本当に、有り難い限りです。

 

今回も多くのご意見をいただきました。一部、アンケートから抜粋します。

・とても勉強になりました。自分自身も消費者の一員であり、常にお客様目線でお客様の困っていることなど改善、満たせる商品を作ることが、売上に繋がると感じました。やるべきこと、やりたいことを、やっていきたいと思います。

・今、開発している商品について改善ポイントのヒントがもらえました。学んだことを実行していきます。

・挑戦する気持ちになった。したいことをする重要性を学んだ。新常識の考え方をハラに落とし、社内で育みたい。

・とても勉強になりました。すべての業態業種で活かすことのできるノウハウだと思いました。自信の仕事でも活かしていきたいと思います。

ご参加下さった皆様に感謝です。

ITMediaエグゼクティブ勉強会講演の記事を掲載いただきました

2014/11/20にITMedia Executive勉強会で行った講演の様子を、ITMedia Executiveに掲載いただきました。

「ルンバ、トリダス、UCCミルクコーヒー」――ヒットの影にニーズの断捨離あり

講演の様子を、かなり詳細にまとめていただきました。

ありがとうございました!

この40年間で、消費者の価値観が大きく変わりつつあることを示すデータ

私は講演の冒頭で、参加されている皆様に、「最近、どうしても欲しいと思って買ったモノと、買った決め手を教えて下さい」とお聴きするようにしています。

とても興味深いのは、「機能が豊富だから」と答える人と、「安かったから」と答える人が、ほとんどいないこと。

多くの人は「どうしても欲しい」と思ってモノを買う場合は、「価値観」「利便性」「お気に入り」といったことが理由になっています。この3つの理由は「個人の嗜好」です。

「どうしても欲しいと思って買うモノは、個人が好きなモノ」という、言われてみれば当たり前の結果ですが、昔はちょっと違っていたのではないかと思って色々と調べてみたら、これを裏付けるデータがありました。

 

内閣府「国民生活に関する世論調査」(リンク先はこの調査を引用している環境白書)によると、「今後の生活で重視するのは?」に対する答えは、この40年間でこのように変わってきています。

      1972年 2012年
心の豊かさ 37.3% 64.0%
物の豊かさ 40.0% 30.1%

 
心の豊かさ:物質的にある程度豊かになったので、これからは心の豊かさやゆとりのある生活をすることに重きをおきたい

物の豊かさ:まだまだ物質的な面で生活を豊かにすることに重きをおきたい

 

「個人の嗜好」=「心の豊かさ」と考えると、この40年間で時代が大きく変わったことがよくわかります。

40年前の「物の豊かさ」が大切だった時代は、大量生産・大量販売で、多機能で廉価な商品が受けていました。

しかし現代の「心の豊かさ」が大切な時代は、全体の5%の顧客ニーズに絞って「少々高くても、是非欲しい」という商品を提供することが必要です。

当ブログでも何回か書いている「ニーズの断捨離」の大切さは、こんなデータからも読み取ることができます。

家電売場が、意外と面白い

私はマーケティング戦略の講演をする際に、よく身近な商品を例に取り上げてお話しします。身近な商品に喩えるとわかりやすいので、お客様の理解が進むためです。

 

そんな私たちにとって身近な商品の一つが、家電商品です。

私は講演の題材を探すために、時々家電量販店の売り場に行きますが、「こんな商品が出たんだ」とか「こんな商品が売れているんだ」という驚きがあって、とても面白いですね。

先日行った赤坂見附にある家電量販店のあるフロアで、フロア売れ筋No.1の商品が、これでした。

フィリップスのヌードルメーカー

10分で、うどん、そば、パスタなど、本格的生麺が出来上がるという、自動製麺機ですね。昨年7月5日に当ブログでご紹介した商品です。ブログから一部を引用します。

—(以下、引用)—

この製品開発を担当したのは、フィリップス日本法人に在籍する製品企画担当者です。

開発に先立ち、徹底した市場調査を実施。週1回以上麺を食べている人が全体の90%いる一方、自宅で手作りする人は3%しかいないことがわかりました。

そこで、「自動製麺機を提供すれば、新たなニーズを掘り起こし、97%に食べてもらえる」と考えました。そしてフィリップスのグローバルの製品開発部門と一緒に製品を開発しました。

—(以上、引用)—

新しいニーズを見つけ、解決策を創り出した商品ですが、ヒットしてるようですね。

 

他にも、これまで見かけることがなかった精米器がスペースを取って展示されていたりしています。最近、高級炊飯器が売れているので、精米したての米にこだわる顧客が増えているためのようです。

 

家電売場はビジネスパーソンにとってあまり馴染みが内場所かも知れませんが、ちょっと見てみると、意外と面白い発見がたくさんあります。

Business Journal連載第5回目『際限のない価格&質劣化競争が行き着く果て スタバ誕生秘話と牛丼業界の変遷より考察』

Business Jornal様の連載第5回目の記事が掲載されました。

『際限のない価格&質劣化競争が行き着く果て
 スタバ誕生秘話と牛丼業界の変遷より考察』

 

世の中を見ると、価格競争で疲弊している業界は少なくありません。

しかし、価格競争が永遠に続くことはありません。

価格競争は、必ずどこかで、価値競争に転じているのです。

ただ、すべての企業が価値競争に移行できるわけではないのです。

 

今回は、そのことについて書きました。

 

よろしければご一読いただければ幸いです。

ゆるキャラから考える地方創世:あなたはいくつのゆるキャラがわかりますか?

いきなりですが、質問です。

ここに10体のゆるキャラがあります。

あなたはいくつご存じでしょうか?

ゆるキャラ1.jpg

 

 

「ちょっとマイナー過ぎるんじゃないの?」

「一つもわからない」

という方が多いのではないかと思います。

 

実は、この10体は、「2014年 ゆるキャラ グランプリ」の1位〜10位にランキングされたゆるキャラです。

答えは、こうなっています。

ゆるキャラ2.jpg

 

ちなみに、この「2014年 ゆるキャラグランプリ」の応募総数は1699体。その中からの選りすぐりが、この10体です。

いわば「甲子園組」とも言えるゆるキャラです。

でも、意外と知られていないのが現実なのですね。

 

では、なぜ地方自治体がこぞってゆるキャラに力を入れているかというと、恐らくこの方の影響が大きいのではないかと思います。

ゆるキャラ3.jpg

 

1244億円の経済効果って、スゴイですよね。ちなみに日銀熊本支店の試算だそうです。→詳しくはこちら

興味があったので、内訳を調べてみました。

1244億円のうち、物品販売効果は1232億円だそうです。実に99%です。商品としての「くまモン」は大成功ということですね。

一方で、観光消費効果は12億円。全体の1%。熊本県内観光地のアプリダウンロード数(14万)と、くまモン誕生祭来場者数(4.5万人)から試算したそうです。

あくまで試算なので、実際には12億円よりも多いかも知れませんし、実はそれよりも少ないかもしれませんね。

 

あの大成功したくまモンでも、観光集客効果は限定的です。

考えてみたら、「くまモンがあるから、熊本に行ってみた」という人は、それほど多くないのではないでしょうか?

私も試しに回りの人たちに聞いてみましたが、そういう方はいらっしゃいませんでした。

 

観光振興の一環でゆるキャラに力を入れている自治体が多いのですが、ゆるキャラグランプリへ1699件応募があったという話を聞いたりすると、つい「同じお金と時間、手間をかけるのならば、もっと大事なことがあるのではないかな」「ゆるキャラが有名になれば、地域振興ができると短絡的に考えておられるのでは…?」と心配してしまいます。

本来、ゆるキャラは「地域の魅力を高める一つの手段」に過ぎないのであって、目的ではないはずです。

 

いま、「地方創世」が日本で大きなテーマになっていますが、もっと地方自治体が、「自分たちの地域らしさは何か?」を考えるようになれば、日本の地方ももっと元気になるのではないかと思います。

「コーヒーにまつわる本」の売上ベスト3位に紹介いただきました

最近書店を回っていると、実にさまざまなコーヒー関係の本があることに気がつく方も多いのではないでしょうか?

そんな中、ダ・ヴィンチニュースで『戦略は「1杯のコーヒー」から学べ!』が、「コーヒーにまつわる本」の売上ベスト3位として紹介していただきました。

いま、増えている「コーヒーにまつわる本」売上ベスト5

本当に有り難いですね。

 

コーヒーを飲んでいると、頭がスッキリして澄み渡り、仕事もサクサク進むように感じます。

コーヒーを片手に、ここで紹介されているコーヒー本を読んでみるのもいいかもしれませんね。

JTB中部圏誘致協議会様 2015年新年賀詞交換会で講演しました

昨日2015/1/20、名古屋のウェスティン・ナゴヤ・キャッスルで行われたJTB中部圏誘致協議会様の2015年新年賀詞交換会で、『お客様が訪れたくなる理由をいかに作るか? ニーズ断捨離時代に求められる「おまけ付き思考」からの脱却』というテーマで講演しました。

 

参加者500名。実に多くの皆様にご参加いただきました。 

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中部圏の旅行業・宿泊業の皆様、航空会社・鉄道会社・バス会社などの輸送業の皆様、さらに国土交通省中部運輸局幹部の方々ほか自治体関係の皆様、旅行販売業の皆様、さらにJTB中部様をはじめとしたJTB関連会社の皆様でした。

参加された半数以上が、旅館経営者といった感じでしょうか。

 

日本の中部地方は、様々な観光資源の宝庫でもあります。

その中部地区のインバウンド観光拡大を目指し、30年近く継続してきたのが、このJTB中部圏誘致協議会です。

このように講演にお招きいただいたこと自体、とても名誉なことです。

  

講演時間は90分。前半30分は「ニーズ断捨離の考え方」をご紹介し、後半60分は観光業における価値創造について、中部地区での観光業の事例をもとにお話しをしました。

 

講演後は賀詞交換会でした。

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壇上に上がらせていただき、ご来賓及びJTB役員の皆様と一緒に、鏡開きをさせていただきました。

鏡開きをした3つの酒樽のうちの一つです。

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会場の真正面の窓からは、名古屋城も一望できました。

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賀詞交換会では、多くの方々と意見交換ができ、とても勉強になりました。

今回、講演の機会をいただいて観光業のことを学ばせていただき、「観光業が日本を元気にする」との確信を持ちました。

このような機会をいただきましたJTB中部の皆様に、深く感謝致します。

「マーケティング戦略」のエッセンスは、子どもでも楽しく理解できる

多くの日本企業にいま求められている力が、マーケティング戦略力です。

「マーケティング戦略力」というと、一見難しそうですが、実はマーケティング理論や戦略理論は、決して難しくありません。

たとえば数多くのMBA理論を網羅した拙著「100円のコーラを1000円で売る方法」の最年少読者は、小学生です。ある方が「自分用に買ってきたんだけど、小学生の娘が夢中になって手放さない」とおっしゃっていました。

このように一見難しいMBA理論も、そのエッセンスは子どもでも楽しく理解できるのです。

子どもは、わかりやすく本質を伝えて、はじめて理解して興味を持つもの。それに、「商売の本質」を解きほぐすMBA理論はとても面白くワクワクするものなのです。

子供たちがマーケティング戦略の面白さに目覚めれば、きっと大人になって大きな武器になるはずです。

さらに考えてみれば、多忙な現代の経営者やビジネスパーソンにとっても、マーケティング戦略理論のエッセンスを理解して、定石を把握すれば、日々の仕事にとても役立つのです。

マーケティング戦略をわかりやすくお伝えし、よりよい世の中になるように貢献していきたいと思っています。

なぜ店舗数が少ない地方が、ネット購買が少ないのか?

スマホがますます拡がっていますが、地方でネットでの購買が拡がっている話はあまり聞きません。

これについて、日経ビジネス2015.01.12号の記事「経済教室 2015年の潮流を読む 第1回」で、アイリスオーヤマの大山健太郎社長が書いておられます。

—(以下、引用)—

ネットは本来、店舗数の少ない地方の消費者こそ高い利便性を享受できます。ところが、アイリスオーヤマではネットビジネスの4割が都市部の消費者。地方の消費者はまだパソコンやスマホでモノを買うことに慣れていないからです。ネットリテラシーの問題をクリアできれば、新しいユーザーはまだまだ増えるはずです。

—(以上、引用)—

言われてみれば「なるほど」というお話しですね。

数字で裏付けるべく調べたところ、「トップの東京都は50.5%、最下位県の約1.6倍…都道府県別スマートフォン利用率動向(2014年)(最新)」(gabagenews.com)という記事がありました。2013年年末の調査です。

スマホでインターネットを使っている比率の全国平均値は42.3%、最高は東京都の50.5%、最低は高知県の31.7%でした。

平均値よりも高いのは、関東では東京、埼玉、神奈川。中部では、愛知県。関西では大阪、兵庫、京都、滋賀といったところで、都市部に集中しています。確かに大山社長がおっしゃる通りですね。

ただ、いずれネットは使われていく方向にあるわけで、この変化のスピードを見極めるのがポイントになってくると思います。

『「製品開発の前に、プロトタイプで顧客へ検証を」と言うが、現実にはプロトタイプ開発には時間もお金もかかるので、無理』という思い込み

顧客が「少々高くても、是非欲しい」と思うようなマーケティング志向の製品を開発するにはどうすればよいか?

本格的な製品開発に入る前に、対象となる顧客とその課題、そしてどのような価値を提供するかを見極めて、さらに製品のプロトタイプ(試作品)で、それらの仮説が正しいかを検証することです。

 

しかし、このように考えるケースも多いのではないでしょうか?

『確かに一見もっともな意見だが、現実にはプロトタイプと言っても、開発には時間もお金もかかるので、無理』

 

しかし多くの場合、これは思い込みです。

プロトタイプで検証すべきなのは、仮説として考えた課題と解決策が、正しいか。

必ずしも完全な製品は必要ないからです。

 

たとえば以前に当ブログでご紹介したオンラインの靴販売サイト・ザッポスでは「靴をオンラインで買う顧客がいる」という仮説を立てました。

しかし巨額をかけてリアルなオンライン販売管理システムを構築することはありませんでした。

そのかわり、近所の靴屋で写真を撮ってサイトに並べ、注文の度に店で売値で買うようにしました。この方法なら、個人でも簡単にサイトを作れることが出来ます。

こうして仮説を検証し多くの学びを得て、ザッポスは成長を始めました。

 

また、あるまったく新しい鼻の外科手術器具の開発では、医療機器メーカー、外科医、デザイン会社で、構想を議論しました。

しかしまだ誰も見たことがない未発明の製品です。立場が異なる参加者はそれぞれ身振り手振りで説明するも、話は堂々巡りを続けます。

その会議の途中、若手エンジニアが席を立ち、5分後にあるモノを持ってきました。

ホワイトボード用マーカーの根元に、黒い写真フィルム容器をテープでぐるぐる巻きに括り付けて、さらにフィルム容器の端っこを洗濯ばさみで挟んだものでした。→ここにその写真があります。

制作時間にして5分。費用 数百円程度でしょうか?

身振り手振りを繰り返していた外科医は、「そう、まさにこれだよ!」

この製品は、業界スタンダードの電子メスになりました。

Ideo “Diego Powered Dissector System for Gyrus ACMI, ENT Division”より。

 

プロトタイプで検証すべきは、仮説と解決策。

絞り込んで考えると、色々なアイデアが出てくるはずです。

トム・ケリーやデイヴィッド ケリーが提唱する「デザイン思考」は、その方法論を提供してくれます。(出典: 「イノベーションの達人」 トム・ケリー著 p.53-55)

企業が抱える課題で、業種を問わず共通なことは何か?

色々な業界のお客様と仕事をしていますが、講演や研修、事業戦略構築のお手伝いを通して、感じていることがあります。

「製品を作る」のではなく、「顧客を作る」

「すべての顧客に安く多機能を」ではなく、「5%の顧客に高くても光り物を」

■「モノを売る」のではなく、「コトを売る」

「失敗は回避する」のではなく、「小さく失敗し学ぶ」

これらは業界共通で必要となる変化である、ということです。

 

お客様とのお打合せでも、最初に上記のお話しをすることで、「そうなんだ。ウチの業界でもまさにそう変わらなければならないんだ。具体的には………」といったように、話が一気に拡がっていきます。

そして上記の課題を、各業界別の具体的な課題に深掘りし、お客様毎に考えていきます。

 

常にお客様の課題に向き合い、学び続けることは大切だと実感しています。

なぜモノクロ写真しか撮影できない95万円のカメラを、熱望する人がいるのか?

「すべてのお客さんに、安くて多機能を提供する」のではなく、「5%のお客さんに、高くても光り物を提供」するために、「ニーズの断捨離が必要」だとご提案しています。

ライカMモノクロームは、まさにそんなカメラです。

 

レンズ交換式デジカメは10万円以上の製品が多いのですが、このカメラはなんと95万円。(価格.comの最安値は83万円)。

しかもカラー写真は撮れません。モノクロ写真のみ。

「モノクロしか撮れない95万円のカメラを、誰が買うの?」と思いますよね。

かく言う私も、最初はそうでした。

 

しかし、「このカメラが欲しい」という方が結構いるのです。

【新製品レビュー】ライカMモノクローム ~モノクロ派”やみつき”の異色レンジファインダー機

ライカ M モノクロームの解像感がスゲーーー!!

新型 ライカMモノクローム ~後継機への妄想~ Leica M Monochrom

現行オーナーで、「後継機が出たら150万円でも買う」という人もいます。

 

その理由は、画質が素晴らしいから。

カラーを捨てたことで、カラーフィルターがないフルサイズセンサーの各画素が輝度を忠実に記録でき、きわめてシャープで解像感と階調に優れた画像を実現できるからです。

これはライカのサイトから、カラー素子とモノクロ素子の比較画像です。

ライカM.png

 

たとえば、こんな写真が撮れます。(ライカMモノクロームの作例サイトより)

ライカM作例.jpg

Photo Yodobashiの記事でも、素晴らしい階調の写真が紹介されています。

モノクロ写真で、圧倒的な階調を表現できるのですね。

 

「5%のお客さんに、高くても光り物を提供」を超越し、まさに「0.5%のお客さんに、すごく高くても、超光り物を提供」という事例ではないかなと思います。

私はいくら欲しくてもここまで高いととても買えませんので、愛用しているOM-Dを使い続けたいと思います。

『「戦略力」が身につく方法 「現場を動かす力」とは何か』(PHPビジネス新書)の電子書籍版、リリースされました

2013年9月18日に出版した『「戦略力」が身につく方法 「現場を動かす力」とは何か』(PHPビジネス新書)の電子書籍版がリリースされました。

本書は「会社員の経験をしっかり残そう」と思い、独立してすぐに執筆した、思い入れのある本です。

下記の通り、Kindle、Google play、パブリ、Kinoppy、Galapagos、ReaderStore、honto、BookLive、Kobo、7net、iBook、Yahoo!ブックストアから購入できます。

電子書籍版.png

こちらに上記の各社電子書籍版のリンクがまとまっています。ご興味ある方は是非どうぞ。

なぜ、製品の開発前に、顧客に会うことができないのか?

従来の「事業開発モデル」は、こんな感じでした。

①開発、営業、企画が一緒になって、製品を企画する

②1年程度の期間をかけて開発する

③製品を発表、出荷し、販売する(この時点で顧客にお披露目)

高度成長期まではこの方法が通用していました。しかし現代では、このモデルで製品を開発してもなかなか売れません。顧客のニーズとかけ離れてしまうことが多いためです。

 

現在必要とされるのは、「顧客開発モデル」。

①少人数の顧客開発チームが、顧客の課題と解決策を仮説として作り、ターゲットとなる顧客に徹底的に検証する

②その過程で、バリュープロポジションをチューンアップする(つまりどんどん変えていく)

③一通り検証できたら、最終製品の開発に投資し、販売していく

この「顧客開発」という方法論は、「リーンスタートアップ」(エリック・リース著)や、「アントレプレナーの教科書」(スティーブン・G・ブランク著)にも紹介されている方法論です。

ハイアールの張瑞敏CEOも、製品開発者に「君は製品を開発しているわけではなく、市場を開拓しているのだ」と教えています。同じ考え方ですね。

 

ただ、多くの日本企業のお客様に接していて私が感じるのは、この「製品開発前に、リアルな顧客に検証すること」が、一つの心理的な壁になっていて、なかなか実行できない人が意外と多いということです。

それはなぜでしょうか?

これまで日本の多くの企業は「モノつくり」にこだわってきました。職人気質で、徹底的に技術にこだわり、製品を作り上げて、それを顧客に披露する、というやり方です。

それはまるで、自分の鋭敏な味覚を信じ、こだわり抜いた食材を選び、腕を振るって最高の日本料理を振る舞う寡黙な板前を連想させます。

しかし今、企業に求められているのは、この寡黙な板前の方法論を変革すること。つまり、顧客がどんな食材を求めているかを常に顧客と対話して理解し、時に一緒に食材を選び、顧客と対話しながら料理を作ることなのです。

つまり、これまでのモノつくりの基本的なアプローチを変えていくことが必要なのです。

 

しかしものは考えようです。これまでのモノつくりで身につけた技術は、そのまま活かせます。開発の手順を変えるだけなのです。

思考方法を柔軟に変えれば、この方法論は実践できるはず。

もし「製品の開発前には、顧客に会わない」と考えていたら、その考え方を変える、小さな一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか?

製品開発を顧客始点で考えるアイリスオーヤマ

昨日のブログでアイリスオーヤマの事例をご紹介しました。

別の本で、「アイリスオーヤマ 一目瞭然の経営術」(三田村 蕗子著)があります。この本も、アイリスオーヤマに綿密な取材を行い、その経営の秘密に迫っています。

 

本書の冒頭で、LED事業参入の様子が描かれています。当初、2009年2月にアイリスオーヤマの小野さんという社員の方が、社長にLED事業着手を提案しました。大山社長は大乗り気ではないものの、特に反対もありませんでした。

この時はLED電球を中国メーカーからOEM調達し、試験を重ねて、当時の市価の半額(4980円)で発売されました。ただ当初はあまり売れませんでした。

風が吹いたのは、この後です。

—(以下、引用)—

2009年11月末、LED事業にあまり関心を見せていなかった大山社長は、突然小野氏にこう命じた。

「内製して、4万時間持つLED電球を作り、いまの半分の値段で売れ」

—(以上、引用)—-

まさに晴天の霹靂。いきなり市価の1/4で、しかも内製です。

リーダーの小野さんは早急に対策を立てて「半年後の2010年5月なら発売できます」と回答しますが、社長にひどく怒られ、「何がなんでも2ヶ月縮めて3月発売にしろ」と指示されます。

そもそも大きなチャレンジ。しかも4ヶ月間しかありません。

しかし、なぜ3月なのでしょうか?

本書ではこのように書かれています。

—(以上、引用)—

電球の売れる時期は1年のうち、3月、4月と12月に集中している。とりわけ、人々が新生活に突入し、引っ越しが多く、電球を買い替える機会が爆発的に増える3月を逃す手はない。この時期を逸すれば、消費者は「もう電球は替えてしまったから」と考え、その後の買い替え行動は12月まで期待できない。

「だったら3月に発売時期を早めるしかないでしょう」

これが大山社長の論理だ。

—(以上、引用)—-

大きなチャレンジ。しかも他社は100人体制のところ、アイリスオーヤマはわずか6名。トラブル続きで開発プロジェクトを進め、解決したのは発売予定日の3週間前。

2010年3月26日、小売価格2300〜2500円のLED電球8種類が発売されました。

さらに2010年11月には実売価格1980円のエコルクスを発売。アイリスオーヤマのシェアはグンと上がりました。

2011年3月の大震災の影響で、省エネ製品の需要が高まり、さらに成長していくことになります。

 

私たちは、「現体制で、製品がいつ開発できるか?」「コストがいくらかかり、価格がいくらで作れるか?」と考えがちです。

しかしアイリスオーヤマの場合、「お客様はいつ製品を必要としているか?」「いくらなら買ってくれるか?」から逆算して製品を開発しています。

製品開発を顧客始点で考えているアイリスオーヤマの考え方は、参考になるのではないでしょうか?

なぜアイリスオーヤマは、わずか3年間でLED事業を売上240億円に育てることができたのか?

「アイリスオーヤマ」と言えば、私は「ガーデン用品や家具などを作っているメーカー」というイメージを持っていました。

しかし最近、家電事業にも参入しています。

たとえば、LED照明事業の参入は2009年8月。2012年には240億円に成長。

白物家電は2007年に参入、調理家電を中心に売り上げを伸ばし、2012年度の売上高は165億円。

照明や白物家電といった成熟事業で、どうしてこのような急成長が出来たのか興味がありました。

情報を探していたところ、「ロングセラーが会社をダメにする ヒット商品は消費者に聞け」(大山健太郎著、日経BP社)という本を見つけました。本書は2013年の日経ビジネス連載「経済新潮流」に加筆訂正したものです。150ページ程度で文字数も少ない本ですが、アイリスオーヤマの経営の概要がわかりやすくまとまっています。

 

本書の冒頭、その理由を大山社長ご自身が語った言葉が紹介されています。

—-(p.15-16から引用)—-

大山社長はこともなげに言う。

「お客さんの不満を解消し続ければいい。幸せに暮らしていても、どこかに不満は生じる。それを解消する商品やサービスを、顧客が納得する価格で提供すればいいだけのこと」

—(以上、引用)—-

 

具体的には、どういうことでしょうか?大山社長はこのように続けておられます。

—-(以下、引用)—-

(p.26)
ここから私が考える変化対応のコツを提示したいと思います。それは、顧客の代表になることです。

(p.36)
他社が対応できない顧客の依頼に応え続けること。それが、どんな環境下でも利益を生み出し、ひいては企業を存続させることにつながるということを忘れないでください。

—(以上、引用)—-

 

本書のタイトルにもなっている「ロングセラーが会社をダメにする」は、その考え方の一つです。発売3年後までの商品を「新商品」と定義し、売上の6割以上を常に新商品で上げることを一つの指標としています。

顧客ニーズは常に変わっていきます。だから、常に商品の新陳代謝が必要。新たに生じ続けている顧客の不満を、常に解消し続ける一つの指標が、売上の新商品比率なのです。

では、「新商品比率を高くする」にはどうするか?

それはビジネスのスピードを超高速化することです。

本書では他にも「プレゼン会議」の超スピード決裁をはじめとする超高速経営の方法論や、メーカーと問屋を兼ねる経営手法、急な需要に応えるために稼働率7割以内に抑える工場経営方法、人事評価制度などが紹介されています。

 

最近、アイリスはなんとコメ事業にも参入しています。

—(以下、p.71-72から引用)—

実は、大山社長がコメ事業への参入を考えたのは、発表のわずか3ヶ月前の2013年1月のこと。………コメビジネスの可能性を考え始めたところ、「伸びシロの塊」ということに気づいた。……製造業として、付加価値創造と生産性向上のノウハウを持つアイリスであれば、生産者と消費者をともに満足させる仕組みが作れるのではないかーー。

—(以上、引用)—

 

「超高速で、顧客の不満を解消し続ける」という勝ちパターンを会社全体で身につけたからこそ、可能なアプローチです。

アイリスはコメ事業も年商200億円のビジネスに育てる考えです。

「旧来型のビジネスモデルが横行する業界はとてつもなく大きなビジネスチャンスが眠っている」(p.80より)ということです。

 

新規事業・成熟事業を問わず、顧客の不満を迅速に解消し続けて成長するアイリスオーヤマから学べることは、とても多いと思います。

「オンラインで靴を買う顧客は存在する」という仮説を、簡単な実験で検証したザッポス

2009年11月、アマゾン・ドットコムは約9億ドルもの大金を投じて、靴・アパレルのネット販売大手ザッポスを買収しました。

このザッポスの創業は1999年。靴のオンライン販売立ち上げを皮切りにビジネスを始めました。

 

1999年はネット販売が普及、急速にあらゆるものがネットに移行し始めた時期です。

当時、「靴のオンライン販売ビジネスを立ち上げよう」と思いつき、実行したのは凄いですね。 仮に思いついたとしても、「そもそも靴は履き心地を重視する。オンラインで売るのは無理」と考え、そこで思考停止する人が圧倒的に多いのではないかと思います。

Women shoes. many high heels.

 

実はザッポスの創設者ニック・スインマーンは、「靴をオンラインで買う顧客は存在する」と仮説を立てました。

ではどのようにその仮説を検証すればいいでしょうか?

1999年の当時、ネット販売サイトを作るだけでも大変です。

 

スインマーンは、実に簡単な方法でこの仮説を検証しました。

その事業立ち上げの頃の様子がエリック・リース著「リーンスタートアップ」で描かれています。

—(以下、引用)—

スインマーンは実験からスタートすることにした。まず、靴をオンラインで買う顧客がいるという仮説をたてる。そしてその仮説を検証するため、近所の靴店に頼んで在庫品の写真を撮らせてもらった。撮った写真はウェブに掲載し、それを誰かが買ってくれたらお店の売値で買うからと言って。

このようにザッポスはごく小さくシンプルな形でスタートした。このときの目的は、靴のオンラインショッピングにおいて優れた体験のニーズが十分に存在するか否かという問いに回答を得ることだった

—(以上、引用)—-

「靴のオンラインショップ」というと、「倉庫を用意して、複雑な受発注システムを構築したりしなければならないので大変だ」と思いがちです。さらに事業立ち上げの際には、我々は市場調査に頼ったりします。

しかしスインマーンはシステム構築は行わず、市場調査にも頼らず、1−2日あれば誰でも作れる簡単な仕組みでサービスを開始し、「お、これは売れるぞ」と検証してみたわけですね。

 

当時は靴をオンライン販売で売る業者は存在しませんでした。

しかし実際にやってみたら「売れた」のです。「顧客が存在するという事実」はビジネスを立ち上げる上では、何百時間もの議論よりも、はるかに貴重なデータです。

スインマーンは、実際に靴が売れたことがわかっただけでなく、様々なことを学びました。

–(以下、引用)—

ザッポスは以下のことが学べたのだ。

1.顧客の望みについて精度の高いデータが得られた。頭の中で考えただけの質問を発するのではなく、顧客が実際にどう動くのかを観察したからだ。

2.現実の顧客とやりとりする立場に自らを置き、顧客のニーズを学んだ。………

3.顧客が予想外の動きをする場合があり、そのときザッポスは、たずねようとも思わなかった情報を入手した。たとえば顧客が靴を返品してきた場合などだ。

ザッポスが行った実験からは、十分な数の顧客が靴を買う、あるいは買わないという、明快で定量的な結果が得られた

……小さくスタートすれば、全体的なビジョンを損なうことなく、実行時の無駄を大幅に減らせる。

—(以上、引用)—

 

新規事業を立ち上げる際に陥りがちな罠は、「考えすぎてしまう」ことです。しかしいくらオフィスで考え抜いても、決して正解にはなりません。

むしろザッポスのように、実際に行動して顧客に販売することで、学べることも多いのです。

さらに「オンラインで靴を売るのは無理」と考える人が圧倒的に多かったからこそ、「実は買う顧客が存在する」ということを発見したザッポスがブルーオーシャンを切り開けたのです。

顧客が洗練され、変化が激しい現代においては、「仮説を立てた上で、リアルな顧客から学ぶ」という仮説検証のプロセスが重要なのです。