2014年の振り返り (7-12月)

今年後半の振り返りです。

■7月

e-Jan Networks様で講演しました

「100円のコーラを1000円で売る方法」の中国語(簡体字)版「把100元的可乐卖到1000元」が出版されました

「コミック版コーラ3」完成、コーラシリーズ全7冊が完結しました

・7月から11月にかけて、大手食品メーカー様へ新規事業戦略をご提供しました

 

■8月

ベライゾンジャパン社長の平手智行さんが、「財界」で私の本の書評を寄稿いただきました

動画編集は苦手でしたが、簡単にできるようになりました

Business Journalの連載を開始しました

・サービス業のお客様に、新事業戦略研修をご提供しました

 
■9月

AERAに、インタビュー「自分を変えるための2つのルールとは」を掲載いただきました

『戦略は「1杯のコーヒー」から学べ』を出版。発売1日目で重版が決まりました

東洋経済オンライン連載「コーヒーで読み解くビジネス戦略」を開始しました。(計8回の連載)

Business Media誠でインタビュー『なぜ海外でウケたのか? ユニ・チャームの紙オムツとコミーの業務用ミラー』を掲載いただきました

 

■10月

経営革新協会様で講演をしました

誠ブログ・オルタナブログ合同オフ会で講演しました

iPhone5から、iPhone6に切り替えました

海外版8冊目となるタイ語版コーラ2「สาวมั่นกับชั้นเชิงการตลาด 2」が出版されました

IBM OB会BBJ若手サロンで講演しました

ジェイカレッジで講演しました

東洋経済オンライン記事『スタバが「ネガティブ広告」に反撃しない理由』が大ブレイク

沖縄タイムズ様主催・沖縄政経懇話会21様で講演しました

 

■11月

今年も日経フォーラム世界経営者会議に参加しました

ニッポン放送で、『戦略は「1杯のコーヒー」から学べ!』が紹介されました

ニッポンクラウドワーキンググループで講演しました

ITmediaエグゼクティブで講演しました

日本経済新聞の記事に、世界経営者会議への私のコメントを掲載していただきました

文化放送「オトナカレッジ」に出演しました

OMNI MANAGEMENT 2014/12号に、「一杯のコーヒーが教えるビジネス戦略」を寄稿しました

 

■12月

Evernoteを使い始め、知的生産性が劇的に増幅することを実感しました

Bizima様の「わくわく著者イベント」で講演しました

静岡県菊川市様・地域経済・産業活性化セミナーで講演しました
 

改めて振り返ると色々な活動をしていますが、自分ひとりで行ったものは一つとしてありません。必ず一緒に汗を流してくださった方々のことが、心に浮かびます。本当に有り難いことです。

また、9月に『戦略は「1杯のコーヒー」から学べ!』を上梓し、その販促の一環で講演・インタビュー・寄稿を行ったことが、その後の活動に繋がっています。本を書くことは、世の中に価値をお届けする上で大切なことだと、改めて実感します。

 

来年も引き続き、活動を拡げていきたいと思います。

よろしくお願いいたします。

2014年の振り返り:年初の抱負は、達成できたか?

今年もそろそろ終わりです。

振り返ってみれば、今年は1月1日に当ブログで「2014年を迎えて、本年の抱負」を書いた際、大きく2つの抱負を持っていました。

1.新しい本を出版する
昨年、大好評だった「100円のコーラを1000円で売る方法」の第三部を書き上げ、「コーラシリーズ」は無事一段落しました。

「コーラシリーズの次に、何を書くか」が、実は自分にとって、とても大きなチャレンジでした。

そこで「コーラシリーズ越え」を目指し、1月1日にまっさらな企画段階だった新シリーズ『戦略は「1杯のコーヒー」から学べ!』を9月11日に出版しました。

今回は「コーラシリーズ」の宮前久美や与田誠、井上クンとはまったく違った登場人物(新町さくら、町田南、永田兆司、藤岡雅治、玉川一郎)を設定、舞台もコーヒー会社に一新して書きました。

多くの方々のご支援で、おかげさまで現時点で7刷まで増刷。

アマゾンのコメントや、各書評サイトを見ても、好意的な多くのご感想をいただいております。有り難うございました。

今後も、難しい経営戦略のエッセンスを、誰もがわかりやすく理解できるような本を書き続けていきたいと思っています。

 

2.クライアント企業様の経営変革ご支援を拡大していく

おかげさまで多くの講演のご依頼をいただき、実施しました。(公開ご承諾分はこちら)

また、ユーカリが丘を開発する民間デベロッパーである山万様をはじめ、ITサービス企業様、大手旅行代理店様、食品メーカー様など、様々な業界の経営者様から研修のご依頼をいただき、各業界でお客様のバリュープロポジションはどうあるべきかをご一緒に考える貴重な機会をいただきました。

 

今年も、多くのことを学ぶことができた1年間でした。

貴重なご縁をいただいた皆様に、厚く感謝申し上げます。

 

来年も、活動をより拡げていきたいと思っております。よろしくお願いいたします。

フォーカスグループインタビューでは、顧客の本音はなかなか検証できない

マーケティングの世界では、「フォーカスグループインタビュー」という方法がよく行われます。

ターゲットとなる顧客グループの人たちに一室に集まってもらいます。そして商品などを見てもらい、質問に答えてもらったり、感想を述べてもらったりします。部屋の一角はマジックミラーになっていて、その商品の関係者が顧客グループの回答の一部始終を観察し、顧客の生の声から、商品の市場性を判断します。

 

このように、フォーカスグループインタビューはマーケティングの世界で広く活用されています。

ただ、ここで考慮点があります。フォーカスグループインタビューは、仮説構築のためには有効ですが、必ずしも仮説を検証はできない、ということです。

フォーカスグループインタビューでは、顧客の本音はなかなか掴めないからです。

 

たとえば、マジックミラーに囲まれた部屋に、ご自身がいる状況を想像してみてください。

何か商品サンプルを見せられ、「いかがですか?」と尋ねられて、内心(全然ダメだなぁ)と思っていても、その感想はストレートに言わず、「うーん。どうですかねぇ。一般的には受けないんじゃないですかねぇ」という第三者的な意見を述べることが多いのです。

私は個人的に、フォーカスグループインタビューは、その場で出る色々な意見をもとに、顧客の課題を推測し仮説を立てるために使うべきなのではないか、と考えています。検証の参考にはなりますが、確実ではないのです。

先日のブログで、『「どれがいいですか?」と言うと、評論家的に「みんなはコレがいいと思う」と考えてしまい、無難なものを選びがちである』というヤッホーブルーイング・井手社長の講演のお話しを紹介しました。同じことです。

 

では顧客の本音はどのように検証すればいいのか?

私がご提案は、実際に商品を、試験販売することです。

実販売であれば、顧客は欲しいものは買いますし、欲しくないものは買いません。確実に本音が検証できるのです。

試験販売のための商品開発が大変な場合もあります。しかしある程度の販売条件を限定すれば、類似コンセプトの商品で代替することも可能です。

 

色々なマーケティング手法がありますが、その特性を考えて活用したいものです。

 

Business Journal連載第4回目『顧客が “買わない”理由の検証は、なぜ失敗する?「ニーズ断捨離」の具体的手法』

Business Jornal様の連載第4回目の記事が掲載されました。

『顧客が “買わない”理由の検証は、なぜ失敗する?
「ニーズ断捨離」の具体的手法』 

 

バリュープロポジション、つまり「お客様がどうすれば買っていただけるか」を、考えることはとても必要なことです。

しかしいくらオフィスの中で頭を使ってこれを考えても、それだけでは絶対に答えにはなりません。

 

ではどうするか?

答えは簡単。実際にお客様が買うか、確かめることです。

ただ、これが難しいのです。

ともすると「単なるお客様の言いなり」になってしまい、差別化できないからなのです。

今回は、そのことについて書きました。

 

よろしければご一読いただければ幸いです。

若者はお金を意外に使う。でも20代前半と後半では傾向が違う (日経MJの調査から)

一般に「若者がお金を使わなくなった」と言われています。

実際のところどうなのでしょうか?

2014/12/15の日経MJに、「日経MJ社会人30人座談会 20代前半 意外に買う」という記事が掲載されています。

この記事では、日経MJが21-30歳の男女400名にこの冬のボーナスを使う割合を調査した結果が掲載されています。

「ほとんど使う」  20代前半 13% 20代後半 5%
「全額貯金に回す」 20代前半 12% 20代後半 21%

「お金を使ってでも充実させたい時間」
  20代前半 多いのは「友人と過ごす時間」
  20代後半 多いのは「一人で過ごす時間」(4割)

「複数で月1回以上お酒を飲む人」
  20代前半 64%
  20代後半 51%

20代前半、意外とお金を使います。特に「仲間との時間を共有する」いう体験にお金を使う傾向が高いようです。

記事では、「親世代がバブルを経験しており、反面教師として無駄な消費をしない傾向が強い」「内輪で受けるファッションやレジャーに積極的に消費する」という分析も紹介されています。

 

50代前半の私から見ると20代の方々は皆同じように見えますが、実際には20代前半と20代後半は、微妙に価値観が違うようです。

私が学生だった頃も、2-3学年違うとかなり価値観が変わっていました。

考えてみると当たり前で、育った時代背景も微妙に違います。

たとえば、大学入試センター試験の前身である共通一次試験は、1979年から1989年まで行われました。私の世代は1980年なので「共通一次試験」世代です。同じ学年の人たちは同じ経験をしています。

このようなことが色々と積み重なって、異なる価値観が生み出されるわけですね。

 

日経MJ記事のような調査データを元に仮説を立てた上で商品を企画してみて、実際にリアルなターゲット顧客が本当に買うかどうかをプロトタイプで検証していくと、より説得力があり、成果が上がるマーケティングができると思います。

価格勝負から価値勝負へのシフトのカギは、「吉野家らしさ」の追求が出発点だった

価格戦争が激しい牛丼業界。

いかに価格勝負から価値勝負にシフトするかは、大きな課題です。

各社、大変な努力をされていますが、本日の日本経済新聞に、こんな記事が掲載されていました。

現場からの逆襲 吉野家、鍋で持ち味再発見
値ごろ・満足感、開発陣が追求 店員も「売る喜び」実感

牛丼チェーン各社の11月既存店売上高は、前年同月比で次の通りでした。

吉野家 19.5%増
ゼンショーHD 1.4%増
松屋フーズ 1.0%減

吉野家の牽引役は、630円の改良版「牛すき鍋膳」「牛チゲ鍋膳」。牛丼の倍近い価格です。

記事では、この商品が生まれたきっかけをこのように描いています。

—(以下、引用)—-

この商品が生まれたきっかけは昨年2月ごろ、会長の安部修仁(65)から出た一言だったという。「(グループ企業のしゃぶしゃぶ店)どん亭にある牛すき鍋膳(当時790円)を『吉野家らしく』出せないか」

—(以上、引用)—

ここから試行錯誤が始まります。

「ぐつぐつと調理するライブ感を出したい」
その結果、コンロも鍋も独自仕様で開発。
さらにタレの味、具材の選択、価格設定と課題は山積み。

記事では、このような言葉が紹介されています。

「我々は長く価格を下げるノウハウを築いてきたが、上げるための付加価値の作り方が弱かった」


いかに「価格勝負」から「価値勝負」にシフトするかは、多くの日本企業にとっての課題です。

この吉野家の取り組みから学べることは多いと思います。


ケンコー「Zeta Quint」から学ぶ、カメラレンズ・フィルターの差別化

コンパクトカメラと比べると、大きく高価なレンズを使うことが多い一眼カメラ。

レンズ表面も大きいので、つい指紋が付いてしまったり、ちょっと落とすと最悪レンズが割れてしまうこともあります。

これを防ぐために、保護フィルターを付けている人も多いと思います。

かく言う私も、全てのレンズに必ずフィルターを付けています。

ここ1−2年でも、ついうっかりレンズを落としてしまい、フィルターは割れてしまいましたが、レンズは無事だったということを2回体験しました。

フィルターのおかげで助かりました。

 

そのようにして使っている保護用フィルターですが、「どのフィルターでも同じ」と思っていたところ、デジカメWatchにこんな記事が掲載されていました。

どうせ買うなら高級品?高機能フィルターは本当に必要なのか
ケンコー最新作「Zeta Quint」に見るフィルターの進化

 

このケンコーの高機能レンズフィルターZeta Quintは、次の5つの特徴があります。

・強化ガラス:通常の光学ガラスの3倍の強度で、レンズをしっかり守る

・ジュラルミン枠:アルミより硬度が高く、「枠が歪んで外れない」状況が減る

・ダストフリーコート:水滴や指紋が付きにくく、付着してもふき取りやすい

・ZRコート:反射率片面0.3%以下と、透過性が高いZero Reflect(ゼロ・リフレクト)

・ガラス外周墨塗り加工:フィルター内部での内面反射防止

 

他にも、薄枠設計、前面ねじ切り、など、きめ細かい配慮がされています。

 

従来型フィルターよりも高価なので、全てのレンズに付けると出費も大変。そこで記事にもあるように、特にお気に入りのレンズにこんなフィルターを付けるといいのでは、と思います。

かく言う私も、先日購入したM.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PROではこのフィルターを付けました。

 

レンズ用フィルターというとコモディティ化されて差別化が難しいと思っていましたが、まだまだ差別化できるのですね。

静岡県菊川市様・地域経済・産業活性化セミナーで講演しました

昨日2014/12/10(水)、静岡県菊川市様が主催された地域経済・産業活性化セミナーで講演しました。

朝、新幹線で新横浜を出て…

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11時前に掛川駅へ到着。

ちなみに新幹線は南口側ですが、北口側は風情のある木造駅舎です。

菊川市講演20141210-0-1.jpg

 

菊川市は、ここからさらにJR東海道線または車で20分ほどの場所にある、人口4万人の市です。

菊川市はお茶の名産地でもあります。

講演の席でも、菊川のお茶が出されました。

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さすがお茶の名産地で作っているだけあって、とても美味しいお茶でした。

漫画家の小山ゆうさんが菊川市ご出身とのことで、このペットボトルの絵も、小山ゆうさんが描いておられます。

 

講演には、菊川市のメーカー系企業やお茶製造業の会社の方々約30名が参加されました。

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このような講演の機会をいただき、有り難うございました。

 

今回で、今年最後の講演です。今年は合計32件の講演を行いました。

 

来年は現時点で1月〜3月に10件の講演予定が確定しており、さらに3件調整中です。

このようにお声をかけていただけるのは、本当に有り難いことですね。来年も頑張ります。

大野耐一著「トヨタ生産方式」…36年前の本ですが、大きな学びがあります

大野耐一さんが書かれた「トヨタ生産方式」は1978年の出版。36年前の本です。

これを読もうと思ったきっかけは、エリック・リース著「リーン・スタートアップ」で、頻繁に本書が引用されていたからです。

アマゾンで調べたところ、Kindle版がありました。これはありがたいですね。

 

ともすると「36年前のビジネス書は古いんじゃないか?」と思いがちですが、素晴らしい本はとても学びがあります。

—(以下、引用)—

 必要なものを、必要なときに、必要なだけ供給する「ジャスト・イン・タイム」をどのようにしたら実現できるかを私は考え続けた。私はものごとをひっくり返して考えるのがすきだ。生産の流れは、物の移動である。そこで私は物の運搬を逆に考えてみた…

 いま「後工程が前工程に、必要なものを、必要なとき、必要なだけ引き取りに行く」と考えてみたらどうか。そうすれば、「前工程は引き取られた分だけつくればよい」ではないか。たくさんの工程をつなぐ手段としては、「何を、どれだけ」欲しいのかをはっきりと表示しておけばよいではないか。  それを「かんばん」と称して、各工程間を回すことによって、生産量すなわち必要量をコントロールしたらどうか、という発想となった。

—(以上、引用)—

「まず必要なアウトプットを考える。そして、そこからさかのぼって考える」という考え方は、「最初にまず買いたいという顧客を見つける」というリーンスタートアップの考え方に大きな影響を与えたのではないかと思います。

 

ではトヨタは、どのようにこれを実現したのでしょうか?

—(以下、引用)—

 トヨタ生産方式の基本思想を支えるのは、これまで触れてきた「ジャスト・イン・タイム」と、つぎに触れる「自働化」であり、「かんばん」方式は、トヨタ生産方式をスムーズに動かす手段なのである。

(中略)

この自動機にニンベンをつけることは、管理という意味も大きく変えるのである。すなわち人は正常に機械が動いているときはいらずに、異常でストップしたときに初めてそこへ行けばよいからである。だから一人で何台もの機械が持てるようになり、工数低減が進み、生産効率は飛躍的に向上する。

(中略)

いっぽうの「自働化」は生産現場における重大なムダであるつくり過ぎを排除し、不良品の生産を防止する役割を果たす。そのためには、平生から各選手の能力に当たる「標準作業」を認識しておき、これに当てはまらない異常事態、つまり選手の能力が発揮されないときには、特訓によってその選手本来の姿に戻してやる。これはコーチの重大な責務である。

—(以上、引用)—

人が介さない「自動化」と、人が介する「自働化」が生み出す価値を区別して考えることは、ITが普及した現代こそ、再びじっくり考えるべきポイントです。

 

—(以下、引用)—

企業のなかのムダは無数にあるが、つくり過ぎのムダほど恐しいものはない。

—(以上、引用)—

「作りすぎ」を、「過剰在庫」ではなく、「顧客ニーズに合わない製品」と読み換えると、まさに顧客の課題に合っていない売れない商品を作り出している今の企業が抱えている課題そのものです。

だからこそ、トヨタ生産方式を現代の製品開発に進化させたリーンスタートアップのような方法に注目が集まっているのでしょう。

 

トヨタで有名な「五回のなぜ」についても書かれています。オリジナルの本書では、どう書かれているか見てみましょう。

—(以下、引用)—

たとえば、機械が動かなくなったと仮定しよう。

(1)「なぜ機械は止まったか」 「オーバーロードがかかって、ヒューズが切れたからだ」
(2)「なぜオーバーロードがかかったのか」 「軸受部の潤滑が十分でないからだ」
(3)「なぜ十分に潤滑しないのか」 「潤滑ポンプが十分くみ上げていないからだ」
(4)「なぜ十分くみ上げないのか」 「ポンプの軸が摩耗してガタガタになっているからだ」
(5)「なぜ摩耗したのか」 「ストレーナー(濾過器)がついていないので、切粉が入ったからだ」

トヨタ生産方式も、実をいうと、トヨタマンの五回の「なぜ」を繰り返す、科学的接近の態度の累積と展開によってつくり上げられてきたといってよい。

五回の「なぜ」を自問自答することによって、ものごとの因果関係とか、その裏にひそむ本当の原因を突きとめることができる。

私は、生産の現場に関しては、「データ」ももちろん重視してはいるが、「事実」をいちばんに重視している。問題が起きた場合、原因の突きとめ方が不十分であると、対策もピント外れのものになってしまう。そこで五回の「なぜ」を繰り返すというわけである。これはトヨタ式の科学的態度の基本をなしている。

—(以上、引用)—

このように「五回のなぜ」はただやみくもに考えるのではなく、あくまでも「事実」を起点に考えることが必要です。

商品開発の場合も、アイデアを考えるだけではなく、顧客のリアルな反応といった事実をもとに考えていくことが必要です。

そのための方法が仮説検証なのですね。

 

本書のごく一部を紹介しました。

本書は生産方式について書かれていますが、自分の仕事に当てはめて読んでいくと、とても学びが多い本です。

 


Bizima様の「わくわく著者イベント」で講演しました

昨日2014/12/6、読書会Bizima様「わくわく著者イベント」で講演しました。

土曜日の夕方にもかかわらず、20代〜30代の若い方々を中心に、なんと80名以上の方々にお集まりいただきました。

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講演は17:10-18:40まで90分行い、Q&Aが20分、その後は著書のサイン会でした。

ありがたいことにとても多くの方々が著書を持ってきてくださいました。

 

当ブログでも以前書きましたが、実は私は30代中頃まで、マーケティングのマの字も知りませんでした。15年ほど前のことです。

それまでは製品開発の企画やマネージャーをしていました。当時はいいモノを作れば売れると信じていましたし、お客様の満足度も高く、製品も売れました。

しかしあるとき、壁にぶつかり、悩みました。そのように悩んでいた頃、「マーケティングマネージャーにならないか」という話がありました。

異動してマーケティングを学び始めたら、壁にぶつかっていた理由が雪が溶けるようにわかり、マーケティングの知識がどんどん入ってくるようになりました。

 

私は30代中頃を過ぎてからマーケティングというものを初めて知りました。

もっと若いころからマーケティングを学んでいれば、もっと色々なことができたかもしれません。さらにマーケティングを学ぶための情報は、当時と比べて今ははるかに多くなってきています。

日本の若い方々がマーケティングのことを学んで理解すれば、日本はもっと良くなり、世の中もよくなると思います。

 

このように若い方々と一緒にマーケティングを学ぶ素晴らしい機会を作ってくださった、株式会社パワービジョンの山田竜也さんに感謝致します。

ヤッホーブルーイング 井手社長の講演。ヤッホーは、「消費者目線で、他社が躊躇するくらい徹底的に差別化された、ビール製造サービス業」だった

大手ビール会社の味がどれも似たようなものだと感じている方は多いのではないでしょうか?

かく言う私も、そうでした。

しかしある日、近所の酒屋で売っていたクラフトビールやベルギービールを試しに飲んでみたところ、とても美味しいことに気がつきました。

私はあまりお酒は飲めないのですが、美味しいビールは好きです。

こうなると、色々と試し飲みしてみたくなります。

色々飲んだ末、個人的に一番美味しかったのが、ヤッホーブルーイングという軽井沢にある会社の「よなよなエール」と「水曜日のネコ」という、ちょっと変わった名前のビールでした。

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この会社のビール、最近は酒屋やコンビニなど、色々なお店でも見かけます。

そのヤッホーブルーイングを率いる井手直行社長のご講演が、昨日2014/12/2、日本橋で行われた日経電子版ビジネスフォーラムであったので、参加しました。

マーケティング戦略が素晴らしく、とても勉強になりましたので、ご講演内容と感じたことをまとめたいと思います。

 
【講演から】

ヤッホーは1997年から1999年まで、地ビールブームで急成長した。しかしブームが去り、1999年から2002年にかけて売上減少に見舞われた。そこから復活し、急成長。現在9期連続増収を達成中。

 
行ったことは、大きく2つ。

1つ目は、ビールの理想の味を徹底追求したこと。ビールの味のバラツキがあった。そこでビールの力を磨く必要があった。

もう一つは、インターネット通販。それまで大手ビール会社のミニチュア版、つまりスーパーや問屋経由での販売をやっていた。2004年からインターネットで消費者に直接売るようになった。

つまり、消費者目線で差別化された、ビール製造サービス業に進化した。

これが一番大きな変化だ。

 
実はネット販売は1997年から行ってた。楽天も同じ年の創業。当時は三木谷さんも「ネットでビール売ってみませんか」と当社に営業に来ていた。

問屋も酒屋もスーパーも、当社のビールを扱ってくれなかった。仕方ないので、パソコンに慣れない井手さんが独学で、まず人差し指タッチで一人でやり始めた。でもほとんど売れない。

ネット販売は楽天大学で勉強しながら、学んだ。

ある日、楽天大学の講師とこんな会話をした。

講師  「井手さん、デザインできますか?」
井手さん「できないです」
講師  「じゃぁ、何できますか?」
井手さん「ビールのことなら、伝えたいことが一杯あります」
講師  「じゃぁ、ビールのことを書いたらどうですか?」

その夜、ネット販売サイトでビールのことばかりをギッシリと書いた。いきなりその晩、注文が数十件来た。

 

(「マーケティングや市場調査で、ネットをどのように活用しているか?」という質問に対して)

「水曜日のネコ」を事例にお話ししたい。

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市場で類似のビールを調査した。評価要素は「フルーティ」「飲みやすい」が圧倒的に多かった。またこの評価の裏には「苦くない」があると考えた。そこで30代前後の女性をターゲットに考えた。

ブランディングは、「主語(誰が)」×「いつ・どんなときに」×「どうなる・何になる」の掛け算になる。

「水曜日のネコ」は

「TSUBAKIな女性が、仕事終わりにOFFタイムで、リセットするビール」とした。

その上で、飲んでもらったり、インターネットでアンケートに答えてもらったりして、身近な女性に声をかけて確認した。

サンプル数は多くはない。しかし生の声を聞いている。

 

(「コアなファンを広げるにはどうしているか?」という質問に対して)

リアルイベント、つまり一緒にファンとビールを飲むイベントを三種類に分けて実施している。YPP (Yonayona Peace Project)と読んでいる。

・熱狂的ファン向け:宴・仕込み体験。毎月80人強参加。アンケートは7段階評価で、TOP2が93%、TOP1 が62%だ。これで感動・口コミが拡がっていく。

・中級社ファン向け:醸造所見学ツアーTOP1が76%

・初級者ファン向け:ビアパブ見学

インターネット上でも、広く仕掛けている。但しネットでは深くは刺さらない。リアルイベントと組み合わせることが重要だ。コアな顧客を感動させるためには、ネットだけでは弱くなってきている。

 

(「ブランド戦略はどのように考えているのか?」という質問に対して)

ヤッホーはこんなブランドを持っている。

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製品開発の基本方針は次の通りだ。

・差別化を行う
・その差別化も、他社が真似を躊躇するくらい、徹底して行う
・ターゲットは明確に、狭くする
・ブランディングする

さらに、キャラクターを立てる。たとえば、「水曜日のネコ」では、ネコ。

キャラクターを立てると、何がいいか?
まず、わかりやすい。感情移入しやすくなる。擬人化することで、「製品」から「仲間」になる。(「ネコちゃんゲット」「今日はネコちゃんにゃん」みたいになる)

「水曜日のネコ」では、缶のデザインは8種類作った。そしてターゲットの女性層に聞いてみた。選定ポイントは、

・まず、多くの人が選ぶデザインは×。「どれがいいですか?」と言うと、評論家的に「みんなはコレがいいと思う」と考えてしまい、無難なものを選びがちである。これは排除する。
・2−3割の人の強い支持が、心地よい
・賛否両論がある方が良い
・誰が選んだかも重要である。ターゲット層が支持するものであれば、OK。
・選んだコメントも重要。宗教、政治、人種差別的なコメントはNG

 

(「先日、『キリンへの生産の4割を委託する』という発表もあった。流通量が大きくなると、ブランドが希薄化・毀損される恐れはないのか?」という質問に対して)

ヤッホーバリュー(価値基準)を定義している。「クラフトビールの定義とは一線を画し、我々がファンに支持されている価値」として、次の3つを決めた。

1.革新的行動
2.顔が見える
3.個性的な味

どこで誰が作っても、この価値基準をしっかり守っていけば大丈夫だ。

キリンへ生産委託するに際して、長期的なコミットの意味もあって、資本提携してはいる。ただし、傘下に入るのではなく、お互いに対等な提携。記者会見でも、キリンの社長と一緒にYonayona Aleを飲んで、お互いに「うまい!」と言った。

Appleも、アジアの委託工場で作り、大企業になっても、コアなファンが存在し続けている。「自分たちの価値は何なのか?」を見失なわないことが大切だ。

 

(「井手社長は、リーダーはどうあるべきと考えているか?」という質問に対して)

「イノベーションは、会社のカルチャーから生まれる」
こういう企業カルチャーが、常識に囚われず、リスクを恐れず、イノベーションを創出する

まず、ビジョンを明確にしている。「ビールに味を!人生に幸せを!」
それを語り続ける。
そういう環境を作る。

 

【所感】

井手社長がおっしゃっている「差別化を行う。その差別化も、他社が真似を躊躇するくらい行う。ターゲットは明確に、狭くする」は、まさに私が提唱している「ニーズ断捨離」そのものであり、私自身も大いに勇気づけられました。

また「消費者目線で差別化された、ビール製造サービス業」という言葉も、「なるほど」と納得しました。

2年前に当ブログにも書きましたように、アマゾンやアップルも、本質は「サービス製造業」です。消費者に直接働きかけるB2C企業で差別化を徹底するには、これは有力な手段なのだと改めて実感しました。

 

ヤッホーブルーイング、これからも応援したいと思います。

入山章栄さんのダイヤモンド・ハーバード・ビジネス・レビュー連載「世界標準の経営理論」が素晴らしい

早稲田大学ビジネススクール准教授の入山章栄さんが、ダイヤモンド・ハーバード・ビジネス・レビューに「世界標準の経営理論」という論文を連載しておられます。

現時点で4回目ですが、これが素晴らしい連載です。

第1回目(2014/09号
理論を思考の軸に変える ビジネスパーソンは、いまこそ経営理論を学ぶべき

第2回目(2014/10号
SCP理論1 「ポーターの戦略」の根底にあるものは何か

第3回目(2014/11号
SCP理論2 ポーターのフレームワークを覚えるよりも大切なこと

第4回目(2014/12号
リソース・ベースド・ビュー バーニーの理論をようやく使えるものにしたのはだれか

特に連載2回目から4回目にかけて、経済理論の需給曲線から、SCP、そしてポーターから、そのアンチテーゼでもあるバーニーの戦略への展開がお見事です。

しかもフレームワークとして弱いバニーのRBVを、ちゃんとしたフレームワークとして補強したのがポーターだというのも、まさにポーターの「競争の戦略」で書かれていた通りです。

連載を読んでいて、「知的興奮というのは、まさにこういうものなのか」と感じました。

 

「経営理論はアカデミーの世界で、リアルなビジネスからは遠い」と思われがちです。

しかし、世の経営理論がどのような背景と考え方で生まれてきたかを理解することで、自分の仕事でも大いに役立つのではないでしょうか。

 

連載第3回目にある次の文章が、理論を理解する重要性を端的に語っています。

このように、フレームワークの子細をいちいち覚えるよりも、その根底であるSCP理論(すなわち連載前回の内容)を理解して「思考の軸」を磨くほうが、結果的には、よりさまざまな業界・企業の分析に対応できると筆者は考える。

 

フレームワークや理論の詳細ではなく、むしろその背景にあるシンプルな考え方を理解することで、様々な場面での応用が利くようになります。

経営理論に興味がある方には、是非ご一読をお勧めします。

OMNI MANAGEMENT 2014/12号に、「一杯のコーヒーが教えるビジネス戦略」を寄稿しました

一般社団法人日本経営協会様が発行されるOMNI MANAGEMENT 2014/12号に、「一杯のコーヒーが教えるビジネス戦略 仮説検証の繰り返しで学びが確実に蓄積」を寄稿しました。

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本論文は、次の4章構成で、合計4ページです。

1.コーヒー業界は学びの宝庫
2.スタバの経営変革から学ぶ「強みの徹底追求」
3.UCC缶コーヒーから学ぶ「できること」よりも「やるべきこと・たりたいこと」
4.セブンカフェから学ぶ愚直な仮説検証の徹底継続

このような機会をいただき、有り難うございました。

文化放送「オトナカレッジ」に出演しました

昨晩2014/11/28(金) 9:00PM、文化放送「オトナカレッジ」に出演し、

1杯のコーヒーに学ぶビジネス戦略!

というテーマで、アナウンサーの砂山さんとお話し致しました。

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30年かけ、5回目の挑戦で成功したセブンカフェの仮説検証や、コーヒーのサードウェイブから学べることなどをお話ししました。

 

この番組では、私は「マーケティングアドバイザーの永井孝尚さん」として紹介いただきました。

実はこれには裏話があります。

番組の冒頭、プロデューサーの岩田さんから「永井さんの肩書き、どうやって紹介しましょうか?」というお話しがありました。

考えてみたら、今まで肩書きは明確に決めていなかったのですよね。昨日ご紹介した日本経済新聞の取材でも、編集委員の田中陽さんから「肩書きは何でしたっけ?」というご質問をいただいていました。

「オフィス永井代表」と言っても、世の中の人はオフィス永井が何をやっているかわかりません。

日本経済新聞の取材では、田中さんとご相談した結果、「ビジネス書の著作が多い永井孝尚氏は…」という形になりました。

昨晩の文化放送では、私の仕事の内容をもとに岩田さんとお話しした結果、「じゃぁ、マーケティング・アドバイザーでいきましょう」という結論になり、番組では「マーケティングアドバイザーの永井孝尚さん」として紹介いただきました。

 

岩田さんとお話ししてよくわかったのは、世の中の人は「その人は、どのカテゴリーなのか?」を認識した上で話を聞くので、肩書きはとても重要だということです。

たとえば会社員であれば、勤務先名で、ある程度カテゴリーを予想できます。

また「経営コンサルタント」とか「経済ジャーナリスト」といった肩書きであれば、その人からどんな情報が得られるか、大体予想ができます。

一方でオンリーワン的な肩書きを付ける方もおられるのですが、あまりコアな名称を付けると、このカテゴリー認識がしにくくなるのだそうです。

その観点で言うと、「マーケティングアドバイザー」という肩書きは、急ごしらえではありますが、結構いいのかな、という気もします。

もうちょっと考えてみたいと思います。

 

ということで、アナウンサーの砂山さん、プロデューサーの岩田さん、構成作家の鈴木さん、さらに番組スタッフの皆様には大変お世話になりました。ありがとうございました。 

世界経営者会議(13) 本日の日本経済新聞で紹介いただきました

本日2014/11/28の日本経済新聞で、世界経営者会議二日目の様子が特集されています。

この特集で、日本経済新聞編集委員の田中陽さんが「顧客と歩む姿勢、成長の軸」というまとめ記事を書いておられます。

この中で、私の名前を紹介いただいています。

—(以下、引用)—

欧米の有力企業が東南アジア諸国連合(ASEAN)シフトを本格化していることも明確になった。受講者の一人でビジネス書の著作が多い永井孝尚氏は「BASFのように研究開発拠点をアジアに設けるのは、より顧客に近づいて仮説検証を繰り返すもので象徴的だ」と語る。

—(以上、引用)—

 

前職の勤務先である日本IBMも、研究開発拠点を神奈川県大和市に置いていましたが、お客様プロジェクトに開発者や研究者が入ることが多くなったことに伴い、東京豊洲に研究開発拠点を移転しました。

皆様の身近なところでも、このような動きは意外と多いのではないかと思います。

 

昨年・今年と、2日間の世界経営者会議に参加して感じるのは、ここが最新の経営に接することができる最高の場だということ。

加えて、当ブログで12回に渡ってそのまとめを文章化したことで、より学びを深めることができました。

来年も参加したいと思います。

 

【世界経営者会議レポート】

世界経営者会議(1)1日目:IBM・ロメッティCEO、日立・中西CEO

世界経営者会議(2)1日目:KPMGインターナショナル・ビーマイヤー会長

世界経営者会議(3)1日目:iRobot コリン・アングル会長・CEO 製品中心の会社は、マーケティング力も卓越していた

世界経営者会議(4)1日目: Evernote フィル・リービンCEO

世界経営者会議(5)2日目: LIXIL 藤森義明 社長兼CEO いないのは「プロの経営者」よりも、むしろ「プロのマーケター」

世界経営者会議(6)2日目: チャロン・ポカパン(CP)グループ タニン・チャラワノン会長兼CEO 「中国市場のチャンスは無限だ」「インターネットは飽和し、実体経済の変化が重要になる」

世界経営者会議(7)2日目: SMインベストメント テレシタ・シー・コソン副会長 平均年齢23才と若いフィリピンは、なぜ急成長しお金を持っているのか?

世界経営者会議(8)2日目:タイ石油公社(PTT) パイリン・チョーチョーターウォン社長兼CEO タイはバイオハブになる

世界経営者会議(9)2日目:サンミゲル ラモン副会長、社長兼COO ASEAN統合は、アジアの新たな発展の契機になる

世界経営者会議(10) 再び1日目:欧米製造業の対応 ーなぜ彼らはアジアにR&D拠点を移すのか?

世界経営者会議(11) 再び1日目:アミトコ ニクラス・ゼンストローム 共同創業者件CEO

世界経営者会議(12) 再び2日目:ティファニー・アンド・カンパニー マイケル・コワルスキー 会長兼CEO 「不易と流行」…守るべき歴史と、変えるべきもの。

 

ITmediaエグゼクティブで講演しました

11月20日(木)の夜、ITmediaエグゼクティブの勉強会で、

『戦略は「1杯のコーヒー」から学べ』
「お客様が買う理由」から始まる事業戦略の作り方

と題して講演をしました。

ITMe講演20141120.jpg 

当日は50名ほどのマネージャーの方々が参加されました。

今回、先日当ブログでご紹介したスタバのアンケート方法を、新たに試してみました。結果は次の通りでした。

感動した 8名
期待を上回った 16名
期待通りだった 8名
期待を下回った 0名
期待はずれだった 0名

できれば半分以上の方に「感動した」と思っていただけるような内容にしていきたいところですね。

 

ご感想はこんな感じでした。

「ニーズ断捨離思考という考え方が非常に参考になり、即、自身の業務に落とし込んで実戦していきたいと思います」

「いままさに若手メンバーを集めて「顧客開発モデル」を実戦しています。その意味からも、明日からすぐに役立つ内容でした。自分たちの方向性が間違っていないことが確認でき、自信になりました」

「自社で「お客様が買う理由」を本当に考えなければと感じました。これを考えることで自社の製品開発に活かせればと思います」

「実例を交えてわかりやすく講演いただきありがとうございました。すぐ実践できそうな濃い内容で、とても勉強になりました」

「ターゲット顧客が複数いて、そのそれぞれにニーズがあり、それに解決策を考えていくことが大変参考になった。”やりたいこと”をやるは、自説でもあり、今日のお話しで大変勇気づけられた」

「当部門では皆やりたくない施策を作っている感があるので、皆がやりたいと思う施策はなにかを考えるきっかけになりました」

「個々の項目の中には「その通り」も多々あったが、体系的に話していただき、本当の意味で納得できました」

ご参加くださった皆様、ありがとうございました。

 

世界経営者会議(12) 再び2日目:ティファニー・アンド・カンパニー マイケル・コワルスキー 会長兼CEO 「不易と流行」…守るべき歴史と、変えるべきもの。

世界経営者会議レポートの続きです。

二日目に、ティファニー・アンド・カンパニー マイケル・コワルスキー 会長兼CEOが登壇しました。創業177年という、米国では異例なほど長く経営されている老舗のトップが話す内容は、参考になるところも多いお話しでした。

 

【講演より】

自分は15年間CEOを務めた。間もなくCEOは後継者に譲る。

ティファニーのコアバリューは、5つである。

①まず、デザイン。情熱を盛ってデザインに注力する

②クラフトマンシップ。職人技だ。

③最上級の材料を使っていること。

④サービス。お客様は生涯に渡るお付き合いになる。そこで専門家がサービスを提供する。

⑤責任ある行動。社会からの信頼

これらを踏まえて、我々の戦略は、

①長期的価値にフォーカスすること。公開企業だが、あくまで長期の経営健全性のために投資する。

②妥協することなく成長する。つまり、性急な成長は目指さない。必ずコアバリューに合っているかを照らし合わせ、着実な成長を図る。

③特化した製品ラインを維持する。製品を特化することで、価値を磨き続ける。

④垂直統合したサプライチェーン。製品は全て自分たちで作る。

⑤自前店舗の展開

製品中心の企業であるが、常に顧客の価値(人生の節目の記念、など)にフォーカスし続けている。

 

実はティファニーは、10年前はグローバル企業ではなかった。売上の80%は米国と日本から稼いでいた。そこでグローバル化にあたって、戦略の進化を図った。

①まず、各地域への進出。

②グローバルマネジメントチームを創設。

③製品の品揃えの見直し。

④新興市場においてブランド知識を育成する。

⑤ブランディングをよりわかりやすくする。日本や米国のブランディング方法だと新興国にはわかりにくかった。

これまでのティファニーのコアバリュー、ビジネスモデルは有効である。今後も着実に進化させていく。

 

【質疑応答】

(「資本市場といかにつきあってきたのか」という質問に対して)
株主に長期的ビジネスを伝え続け、理解してもらえた。そういった人たちが株主になっていたということだ。

(「歴史を守るために変えなければならなかったもの。逆に守らなければならなかったものは、どんなものか?また事業継承のプログラムはあるのか?」という質問に対して)
当社は、経営陣刷新の真っ最中だ。5年間をかけて私の後継者に移行している。

基本的なティファニーの強みは変わらない。重要なのは進化だ。誰もが177年の歴史が持つ資産を理解するということだ。

一方で、新興市場から学べたのはマーケティングのメッセージをシンプルかつ明確にしなければならない、ということ。歴史に甘んじてはいけないのだ。

(「今後の消費社会をどう見ているか?」という質問に対して)
もっと経験を重視するようになっていくと見ている。たとえば結婚式を祝う際に、それをいかに人生の重要な一部とするか、だ。製品そのモノだけではなく、顧客はどのように製品が作られているのか、物語を気にするようになっている。顧客とは、作り方や考え方を共有する方向にある。

 

【所感】

マンハッタンの5番街にあるティファニーのお店は日本人にも人気ですし、日本にも多くの店がありますが、ティファニーが10年前までグローバル企業ではなかったというのは、意外でした。

しかし一方で、

■「コアバリュー→基本戦略→グローバル化戦略」、とステップを踏んで構造的に戦略を立てる考え方

■製品中心の企業ではあるものの、常に顧客の価値にフォーカスしていること

これらはまさに「不易と流行」の方法論でもあります。

同じくグローバル化を進める日本企業にとっても参考になるのではないかと思いました。

 

【世界経営者会議レポート】

世界経営者会議(1)1日目:IBM・ロメッティCEO、日立・中西CEO

世界経営者会議(2)1日目:KPMGインターナショナル・ビーマイヤー会長

世界経営者会議(3)1日目:iRobot コリン・アングル会長・CEO 製品中心の会社は、マーケティング力も卓越していた

世界経営者会議(4)1日目: Evernote フィル・リービンCEO

世界経営者会議(5)2日目: LIXIL 藤森義明 社長兼CEO いないのは「プロの経営者」よりも、むしろ「プロのマーケター」

世界経営者会議(6)2日目: チャロン・ポカパン(CP)グループ タニン・チャラワノン会長兼CEO 「中国市場のチャンスは無限だ」「インターネットは飽和し、実体経済の変化が重要になる」

世界経営者会議(7)2日目: SMインベストメント テレシタ・シー・コソン副会長 平均年齢23才と若いフィリピンは、なぜ急成長しお金を持っているのか?

世界経営者会議(8)2日目:タイ石油公社(PTT) パイリン・チョーチョーターウォン社長兼CEO タイはバイオハブになる

世界経営者会議(9)2日目:サンミゲル ラモン副会長、社長兼COO ASEAN統合は、アジアの新たな発展の契機になる

世界経営者会議(10) 再び1日目:欧米製造業の対応 ーなぜ彼らはアジアにR&D拠点を移すのか?

世界経営者会議(11) 再び1日目:アミトコ ニクラス・ゼンストローム 共同創業者件CEO

世界経営者会議(12) 再び2日目:ティファニー・アンド・カンパニー マイケル・コワルスキー 会長兼CEO 「不易と流行」…守るべき歴史と、変えるべきもの。

 

世界経営者会議(11) 再び1日目:アミトコ ニクラス・ゼンストローム 共同創業者件CEO

世界経営者会議のレポートの続きです。

今回登壇した経営者19名の中には、テクノロジーベンチャーキャピタルの経営者もいました。

アミトコ共同創業者兼CEOのニクラス・ゼンストロームさんは、かつてスカイプを創業した方です。

ニクラスさんの話から、よく語られることが多いシリコンバレー視点とはまた別の視点で、テクノロジーベンチャーの今の姿を知ることが出来ました。

 

■アミトコ ニクラス・ゼンストローム 共同創業者件CEO

なぜアミトコを作ったか?

スカイプはシリコンバレーの外で成功した、当時として非常に数少ないテクノロジーベンチャーになった。

実は2002年、スカイプの資金調達をしようとしたが、誰も資金提供してくれなかった。自分はスウェーデン人で、スカイプは欧州生まれだ。シリコンバレーの外では、このような会社に投資する仕組みは、当時なかったのだ。

この経験により、英国でテクノロジーベンチャーキャピタルのアミトコを創業した。シリコンバレーの外で、財務的インフラを提供するためだ。

現在、10億ドル以上の企業価値があるネット企業の6割以上がシリコンバレーから生まれている。たとえばストックホルムで生まれたSpotify(音楽ストリーミング配信サービス)のように、欧州でも新しい会社が続々生まれている。東京でも同様だ。

 

(日本のベンチャーをどう見ているか、という質問に対して)

昔から日本のモバイルを注目していた。多くの技術が日本にある。かつて日本の起業家は国内市場だけを見ていたが、最近になってグローバルも見るようになった。

日本のSmartNewsにも投資をした。パイオニアだと思う。既にニュースの世界でNo.1だし、海外にも出て行こうとしている。創業者が技術にフォーカスしているし、シンプルなユーザー体験を提供している。多くのスタートアップで、若い有能な人たちが増えるといいと思う。

 

(新しい技術のトレンドはどうか、という質問に対して)

人がその技術自体に気がつかなくなっていく方向にある。(気がつくととても使い勝手がよくなっていて、その裏で最新技術を活用している、というイメージ)

色々な技術の組合せて、モノゴトを単純化していくようになっていく。ソフトウェアだけでなく、ビッグデータやクラウドがある。オンライン・オフラインの境目がなくなる。そしてものすごく効率が上がっていく。

 

【所感】

シリコンバレーのようなインフラも、わずか10年間でグローバル化しつつあります。

日本では渋谷を「ビットバレー」と呼び、ベンチャー企業とベンチャーキャピタルが次々と生まれた時期がありました。同じタイミングで同じことが欧州でも起こっていたのです。

一時期、”The World is Flat”という本が流行りました。実体経済では必ずしもフラット化しておらずむしろ民族主義などの問題が起こっています。しかしテクノロジーベンチャーの世界では、世界のフラット化は急速に進んでいると感じました。

 

【世界経営者会議レポート】

世界経営者会議(1)1日目:IBM・ロメッティCEO、日立・中西CEO

世界経営者会議(2)1日目:KPMGインターナショナル・ビーマイヤー会長

世界経営者会議(3)1日目:iRobot コリン・アングル会長・CEO 製品中心の会社は、マーケティング力も卓越していた

世界経営者会議(4)1日目: Evernote フィル・リービンCEO

世界経営者会議(5)2日目: LIXIL 藤森義明 社長兼CEO いないのは「プロの経営者」よりも、むしろ「プロのマーケター」

世界経営者会議(6)2日目: チャロン・ポカパン(CP)グループ タニン・チャラワノン会長兼CEO 「中国市場のチャンスは無限だ」「インターネットは飽和し、実体経済の変化が重要になる」

世界経営者会議(7)2日目: SMインベストメント テレシタ・シー・コソン副会長 平均年齢23才と若いフィリピンは、なぜ急成長しお金を持っているのか?

世界経営者会議(8)2日目:タイ石油公社(PTT) パイリン・チョーチョーターウォン社長兼CEO タイはバイオハブになる

世界経営者会議(9)2日目:サンミゲル ラモン副会長、社長兼COO ASEAN統合は、アジアの新たな発展の契機になる

世界経営者会議(10) 再び1日目:欧米製造業の対応 ーなぜ彼らはアジアにR&D拠点を移すのか?

世界経営者会議(11) 再び1日目:アミトコ ニクラス・ゼンストローム 共同創業者件CEO

 

世界経営者会議(10) 再び1日目:欧米製造業の対応 ーなぜ彼らはアジアにR&D拠点を移すのか?

世界経営者会議のレポートの続きです。

ここ数回、アジアの経営者の声を紹介してきました。ここで欧米の製造業トップの講演をご紹介したいと思います。

 

■BASF マルティン・ブルーダーミュラー副会長

2050年、世界の人口は90億人になる。リソース・環境・気候、食品と栄養、生活の質が重要になる。これらを解決する上で、化学はイネーブラー(enabler)だ。

BASFはサステイナブルな未来のために化学を作っていく。それが新しい企業戦略、”We create chemistry”だ。

R&D 18億ユーロ(2600億円)のうち、1/3は気候変動、エネルギー開発に投資していく。

市場規模と成長率を見ると、アメリカ地域が1900億ユーロ(28兆円)で年+6%。欧州中東アフリカ地域が2000億ユーロ(29兆円)で年+6%。アジア地域が2400億ユーロ(35兆円)で 年+9%。

つまりグローバルでは、アジアが最大市場で、かつ最も成長が速い。

そこで1/4のR&D支出をアジア に振り向け、アジアでイノベーションを推進し、世界に広げる戦略だ。

パートナーシップも重要だ。その際には、どのように関係性を管理するかが課題だ。

社内でも、別事業のR&D担当者同士が話し合うことで新しいアイデアが生まれている。R&Dだけでなく、SCMや生産も同様だ。

頭脳をつなげていくことが大事だ。一緒になることで効率性もスピードも高まる。全ての社員が、「我々はBASFという一つの会社である」という考えを持つことが大切だ。

 

■シュナイダーエレクトリック ジャンパスカル・トリコワ会長兼CEO

当社は25年前は電力管理を中心とした事業だった。

今や売上250億ユーロ(3.6兆円)。内訳はビルディング関連 102億ユーロ、インフラ関連 57億ユーロ、インダストリー関連 59億ユーロ、IT関連 34億ユーロだ。

R&Dに売上の4-5%を投資している。43%は新興国だ。さらに45%の人材がアジアにいる。

そこで本社をパリから香港に移した。当社では全世界45拠点に、11,000名のR&Dエンジニアがいる。顧客がいる現場近くに配置している。

パートナーシップも重要である。日本は生産性が高く、東芝、富士電機、TEPCOなどともパートナーシップを拡大している。

パートナーシップでは色々なものを組み合わせるので、複雑性との戦いになる。だから規格はオープンスタンダードでなければならない。標準化が必要だ。

大切なのは、小さい段階で失敗すること。その際、相手を信用できるかどうか。要は人である。人に尽きる。

 

■マイクロン・テクノロジー マーク・ダーカン CEO

マイクロンはメモリー半導体専業だ。

今、ムーアの法則が鈍化している。これまでデータセンターのデータが中心だった。今はモビリティとクラウドが普及しIoT (Internet of Things、モノのインターネット)のデータが急拡大している。

こんな時代の課題に、1社で全てに対応するのは難しい。だからパートナーシップが必須となった。

研究者たちのパートナーシップを拡大している。 パートナーシップのためには、Win-win(双方にとってのメリット)が何なのかをキチンと定義することが必要だ。真のWin-Winであれば競争ではない。これが真の差別化要因になっていて、持続できるかどうかがカギだ。

 

【所感】

欧米の製造業トップ3名の講演と対談でした。

共通して、R&D拠点としてアジアを重視していることが印象的でした。

現代では、多くの企業は顧客の近くにR&D拠点を置いています。その一つの理由は、R&Dの段階で顧客に「課題」を検証する必要性が、かつてよりもはるかに高まったからではないかと思います。

20−30年前は、門外不出の研究を本国で行うことが多く、R&D拠点も本国に置いていました。現代に比べてプッシュ型のアプローチ、つまり製品主導でも売れていましたし、顧客の課題が多様化していなかったから、というのが背景です。

しかし今は、この方法で製品開発を進めると、多様化・細分化・激変する顧客の課題を間違ったまま開発してしまい、製品を出してもまったく売れないということが起こってしまいます。

だから顧客の近くで、顧客に課題と解決策を検証しながら、製品開発を進めることが必要なのです。

このように考えると、欧米製造業各社が世界で一番成長しているアジア地域にR&D拠点を設置し始めているのは、ある意味必然なのでしょう。

 

昨年の世界経営者会議では、たとえば「欧米企業の多くは、いかにアジアの成長に対処するか苦慮している」という欧州・ヘンケルCEOの発言のように、アジアの成長への対応に悩む欧米企業トップの声が聞かれました。

一方で今年は、欧米企業はアジアの成長に対して、積極的に自社を変革してでも腰を据えて対応しようとする姿勢が印象的でした。

 

この世界経営者会議のレポート、登壇された19名の経営者のうち、まだ6名残っているので、もう少し続けます。

  

【世界経営者会議レポート】

世界経営者会議(1)1日目:IBM・ロメッティCEO、日立・中西CEO

世界経営者会議(2)1日目:KPMGインターナショナル・ビーマイヤー会長

世界経営者会議(3)1日目:iRobot コリン・アングル会長・CEO 製品中心の会社は、マーケティング力も卓越していた

世界経営者会議(4)1日目: Evernote フィル・リービンCEO

世界経営者会議(5)2日目: LIXIL 藤森義明 社長兼CEO いないのは「プロの経営者」よりも、むしろ「プロのマーケター」

世界経営者会議(6)2日目: チャロン・ポカパン(CP)グループ タニン・チャラワノン会長兼CEO 「中国市場のチャンスは無限だ」「インターネットは飽和し、実体経済の変化が重要になる」

世界経営者会議(7)2日目: SMインベストメント テレシタ・シー・コソン副会長 平均年齢23才と若いフィリピンは、なぜ急成長しお金を持っているのか?

世界経営者会議(8)2日目:タイ石油公社(PTT) パイリン・チョーチョーターウォン社長兼CEO タイはバイオハブになる

世界経営者会議(9)2日目:サンミゲル ラモン副会長、社長兼COO ASEAN統合は、アジアの新たな発展の契機になる

世界経営者会議(10) 再び1日目:欧米製造業の対応 ーなぜ彼らはアジアにR&D拠点を移すのか?

 

世界経営者会議(9)2日目:サンミゲル ラモン副会長、社長兼COO ASEAN統合は、アジアの新たな発展の契機になる

世界経営者会議レポートの続きです。

サンミゲルはビール会社として有名ですが、多角化を積極的に推進され、今やフィリピンのインフラを担う大企業になっています。

2002年から社長兼COOを務められているラモン副会長が登壇されました。

【講演より】 

フィリピンは何十年かぶりに回復しつつある。そこで急成長するアジア市場で成功するための秘訣をお話ししたい。

フィリピンはGDP 7%成長で推移している。ビジネスが堅調なのにはいくつか理由がある。

まず、健全な財政運営がされている点。そして安定した輸出セクター。消費者支出も堅調だ。海外で働きフィリピン人の送金も増額している。この結果、格付会社からフィリピンは「投資適格」のランク付けをもらっている。

平均年齢23才という若い国民が1億人いる。この国へは日本企業も進出している。2012年からメトロ地域にユニクロも12店舗展開している。ラーメンの一風堂も進出している。

フィリピン政府は50以上のプロジェクトを進めており、サンミゲルは様々なプロジェクトに参画している。

サンミゲルは過去6年間、多様性に富んだ企業にすべく多角化を進めてきた。社会的インフラプロジェクトに投資してきている。その結果、サンミゲルの総資産額は270億ドル、売上は170億ドルになっている。

日本が技術や資金を提供してくれることで、フィリピンはより成長できる。ではどうすれば成功できるか?5つのポイントをお話ししたい。

1つ目は、正しい情報を得ることだ。不慣れな地域では様々なリスクが隠れている。信頼できるプロフェッショナルを雇うことだ。

2つ目は、適切なパートナーを選ぶこと。

3つ目は、信頼関係を築くために時間も含めた投資を怠らないこと。

4つ目は、挑戦すること。プレミアムブランド戦略は、このような新興国では機能しない。製品の価値と価格競争力を両立させることが必要になる。

5つ目は、想定されたリスクを取ることだ。

優勢な立場に立つためのチャンスを見極め、常にイノベーティブであることが必要だ。時間が経てば必ずよいものが出てくる。新しいものを作ることを恐れてはいけない。

そしてチームワークと対話が必要だ。効率の良い「対話戦略」と、事前計画を持つことが必要だ。

 
【質疑応答より】

(「中間所得者層が急拡大したこの10-20年で何が変わったか?」という質問に対して)
海外労働者からの送金は年間250億ドル、アウトソーシングは年間200億ドルの規模だ。これらのお金がフィリピンに入ってきており、国内で再投資され、ビジネスがさらに増えている。フィリピンは若いのでこれからもアジアの他の国よりも高成長が期待できる。政府は緊急なインフラプロジェクトをしてくれないと困る。フィリピンには莫大なチャンスがあるからだ。このチャンスを逃してはならない。

(「チャンスは多いが、課題は何か」という質問に対して)
マルコス時代に戒厳令があったこともあり、1980年代から色々な問題があって、フィリピンは遅れている。たとえばセメント消費量は1人当たり150Kgだ。他国は1000Kgなので少ない。だから不動産はまだまだ成長できる。多くの外国人がフィリピンに来ないのは、拉致や誘拐を恐れているかも知れないが、今はそんなことはない。

(「AEC (ASEAN経済共同体)が2015年末から始まると言われているが、これはうまくいくと思うか?」)
ASEAN統合は間違いなく実現される。フィリピンではリスクはあまりないと思う。消費者にとっては価格がより安くなり、入手しやすくなる。フィリピンにとってよいことであり、フィリピンの強みになる。

(「この5年、10年の中国の役割を聞きたい。特に中国が提唱しているAIIB(アジアインフラ投資銀行)についてどう思うか?」という質問に対して)
→中国は全ての近隣諸国に友好的であるとともに、全ての国と協力して、問題から遠ざかるべきだ。

 

【所感】

SMインベストメントのテレシタ・シー・コソン副会長もフィリピンの企業でした。今回の世界経営者会議に登壇された19名のうち、フィリピンからは2名の経営者が参加されています。それだけフィリピンの成長が著しいということでしょう。

実は対談は、記者と、ラモン副会長、SMインベストメントのコソン副会長、PTTのパイリンCEOの4名で行われました。

ASEAN統合や、中国の話題、AIIBの話に対する3名の反応を見ていると、アジアではさらに大きな躍動が始まっていることを実感します。

新聞記事でも経営者の講演や対談の様子を読むことができますが、やはりライブで見て得られるものは大きいですね。

 

2015年の世界経営者会議は、2015/11/10(火)と11/11(水)の予定です。ここでしか学べないことも多いので、また参加したいと思っています。

 

【世界経営者会議レポート】

世界経営者会議(1)1日目:IBM・ロメッティCEO、日立・中西CEO

世界経営者会議(2)1日目:KPMGインターナショナル・ビーマイヤー会長

世界経営者会議(3)1日目:iRobot コリン・アングル会長・CEO 製品中心の会社は、マーケティング力も卓越していた

世界経営者会議(4)1日目: Evernote フィル・リービンCEO

世界経営者会議(5)2日目: LIXIL 藤森義明 社長兼CEO いないのは「プロの経営者」よりも、むしろ「プロのマーケター」

世界経営者会議(6)2日目: チャロン・ポカパン(CP)グループ タニン・チャラワノン会長兼CEO 「中国市場のチャンスは無限だ」「インターネットは飽和し、実体経済の変化が重要になる」

世界経営者会議(7)2日目: SMインベストメント テレシタ・シー・コソン副会長 平均年齢23才と若いフィリピンは、なぜ急成長しお金を持っているのか?

世界経営者会議(8)2日目:タイ石油公社(PTT) パイリン・チョーチョーターウォン社長兼CEO タイはバイオハブになる

世界経営者会議(9)2日目:サンミゲル ラモン副会長、社長兼COO ASEAN統合は、アジアの新たな発展の契機になる

世界経営者会議(8)2日目:タイ石油公社(PTT) パイリン・チョーチョーターウォン社長兼CEO タイはバイオハブになる

世界経営者会議レポートの続きです。

タイ石油公社(PTT) 社長兼CEOのパイリンさんは、東京工業大学に留学され、修士と博士を取得された方でもあり、「東京は第二の故郷」とおっしゃっています。

 

【講演より】

PTTはグローバルFortune 84位にランクされる国営石油公社だ。積極的に多角化を進めている。そこで世界で何が起こっているか、その中でPTTの戦略が何かをお話ししたい。

世界では経済的・社会的な変革が起こっている。

高齢化が進展し2050年には65才以上の人口が3倍になる。グローバル化も進んでいるし、気候変動・資源減少の問題もある。一方で人々は、ICTの発達でソーシャルネットワークによりいつでもどこでも常に繋がるようになり、仕事とプライベートの境界が失われつつある。つまりノンストップでビジネスが進んでいる。

ビル・ゲイツが1999年に著書で「全てがリアルタイムに繋がり、ネットワーク化していく」と述べている状況が、まさに生まれている。

私は2014/4/21にシスコCEOのジョン・チェンバレンの招きでシスコ・リーダーシップ・カウンシルに参加した。その際、チェンバレンCEOは「企業は常に環境変化についていくことが必要だ。全ての企業がテクノロジー・カンパニーになっていく」と述べている。

常にイノベーションを生み出し続ける企業が生き残るということだ。だから私も、PTTをそういう会社になるように主導している。

では、イノベーションの観点でどうあるべきなのか?

社会は「サプライ・プッシュ」から「デマンド・プル」に変っている。供給が需要を生んでいたのは昔の話だ。新しい技術に基づいた新しいニーズが、革新的な製品を作る。最終的には消費者ニーズそのものが市場を作り出し、イノベーションがより速い速度で進んでいる。

では未来のマーケティングはどうあるべきなのか?

フィリップ・コトラーは「マーケティング3.0」で、「価値観と人間のスピリットが大切になる」と言っている。さらに我々は環境への影響が大きい生活をしている。持続可能性(サステナビリティ)がビジネスの場でも重要になっている。

 
では世界では何が起こっているのか?

2014/11/2に開催されたIPCC (気候変動に関する政府間パネル)は、「2050年までに再生可能エネルギー比率を現在の30%から80%に増やさなければいけない。さもないと、21世紀終わりには気温が5度上がる」と提言している。

また2014/9/23のClimate Summit 2014では、世界のリーダーたちが「世界の温度上昇を2度に抑える」と合意している。

エネルギーの供給サイド、需要サイドでも取り組みが始まっている、

まず供給サイド。世界最大の石油ガス会社であるサウジアラムコのCEOは2014/10/1に、CO2回収実証プロジェクトを始めるとともに、研究開発費を5倍に増やして排出削減を図ることを表明している。

一方の需要サイドでは、イケアも2014/9/23に、2020年まで販売する家具製品を100%再生可能にすると表明している。

 

このような状況で、PTTの戦略をお話ししたい。

まず「Bio-material (生物材料)時代が始まった」ということだ。

PTTは公営石油会社だが、資源ベースから知識をベースにした企業に変革していく。

既にPTTはバイオプラスティックスでは世界のリーダーだ。さらにタイを「バイオ・ハブ」とするために、エコな工業団地を建設するとともに、バイオハブのバリューチェーンを構築していく。2020年には売上の2%をグリーン関連製品から生み出す目標だ。

 

【質疑応答より】

(「中間所得者層が急拡大したこの10-20年で何が変わったか?」という質問に対して)
タイは日本に似ている。出生率は低く、高齢化が進み始めている。こういった経済的プレッシャーから、共働きがほとんどだ。色々なサービスが生まれている。たとえばガソリンスタンドがコミュニティセンターになっている。夫婦が待ち合わせをして、買い物をしたりおしゃべりをしたりして帰る。ライフスタイルがどんどん変わってきている。コンピュータも24時間x365日運用であり、アジア大陸全体を網羅している。X世代、Y世代が増えるに従って、こういうインフラも増えていく。デパートに行かなくなりガソリンスタンドに行くようになっているので、消費者に対応できるようにするため、たとえばPTTのガソリンスタンドではコーヒーも売っている。このような個人主義的な消費者に対応できるようにしている。

(「チャンスは多いが、課題は何か」という質問に対して)
タイは資金はあるが、ASEAN全体では資金が足りない。いかにして資金を調達するかが課題である。またタイは人的資本が不足している。失業率はマイナスになっているので、近隣諸国から移民を取り込んでいる。自由な労働力の流れが、ASEANの経済に追い風になっている。

(「AEC (ASEAN経済共同体)が2015年末から始まると言われているが、これはうまくいくと思うか?」という質問に対して)
PTTは色々な国で既に数百億ドルもの投資を行ってきた。AECが実現すれば、その投資を拡大していきたいし、ASEANを再活性化できる。6億人の人口を抱えるASEANは中国やインドとも繋がっている。中国やインドとビジネスをしたい人たちにもASEANに来て欲しい。
ASEAN統合はタイにとっても強みになるし、フィリピンと補完関係にある。まだまだ投資が必要だ。ASEAN諸国が我々の投資先になっていく。共同体には期待が高い。政府は、ASEANの他国は、ライバルではなくパートナーなのだ、というように考えを変えなければならない。

(「この5年、10年の中国の役割を聞きたい。特に中国が提唱しているAIIB(アジアインフラ投資銀行)についてどう思うか?」という質問に対して)
→AIIBは、最も歓迎する中国からのメッセージだ。インフラ投資を拡大するにはAIIBはよいコンセプトだと思う。
米国はアジア開発銀行(ADB)を主導している。AIIBとAIDは、もう一つの米中対決なのかもしれない。両国の狭間に入ってしまうので、いかにASEANが独自性を持つかというゲームなのかもしれない。ADB、 AIIBいずれであっても、ASEANにキチンと投資してくれるのであれば歓迎したい。

【所感】

まずパイリンさんのマーケティングへの深い造詣に感服しました。必死にメモを取り、後日、動画と講演資料も見直しました。

アジアで、しかも公営企業が、大きなマーケティング戦略をもって、このようにグリーンプロジェクトに統合的な取り組みをなさっていることに感銘しました。

一方の日本は要素技術はあるものの、このように全体を統合した取り組みはなかなか見られないのが現実ではないでしょうか。むしろ対抗しようとするのではなく、このようなプロジェクトには積極的に参画し、協業していくことが必要だと思います。

ASEAN統合本番が迫っていて、アジア各国の企業が大きな期待を寄せていることも印象的でした。

SMインベストメントのコソン副会長のお話と併せて、アジアのダイナミックな経済活動の一端に触れることができた、貴重なお話しでした。

 

明日も、ASEANにある他企業トップの講演をご紹介します。

 

【世界経営者会議レポート】

世界経営者会議(1)1日目:IBM・ロメッティCEO、日立・中西CEO

世界経営者会議(2)1日目:KPMGインターナショナル・ビーマイヤー会長

世界経営者会議(3)1日目:iRobot コリン・アングル会長・CEO 製品中心の会社は、マーケティング力も卓越していた

世界経営者会議(4)1日目: Evernote フィル・リービンCEO

世界経営者会議(5)2日目: LIXIL 藤森義明 社長兼CEO いないのは「プロの経営者」よりも、むしろ「プロのマーケター」

世界経営者会議(6)2日目: チャロン・ポカパン(CP)グループ タニン・チャラワノン会長兼CEO 「中国市場のチャンスは無限だ」「インターネットは飽和し、実体経済の変化が重要になる」

世界経営者会議(7)2日目: SMインベストメント テレシタ・シー・コソン副会長 平均年齢23才と若いフィリピンは、なぜ急成長しお金を持っているのか?

世界経営者会議(7)2日目: SMインベストメント テレシタ・シー・コソン副会長 平均年齢23才と若いフィリピンは、なぜ急成長しお金を持っているのか?

世界経営者会議レポートの続きです。

SMインベストメントはフィリピンの複合企業です。登壇されたコソン副会長は、中国から移り住んだお父様の靴屋で商売を覚え、今は大企業になった SMインベストメント副会長として、フィリピンで資産規模最大のBDOユニバンク銀行会長も務めておられます。

 

【講演より】 

フィリピンは今、大変良い状況だ。債務よりも海外外貨準備高の方が高い。一人当たりGDPも3000ドルを超えた。

要因は二つある。まず海外にいるフィリピン人の送金が毎年250億ドルにも及んでいる。さらに海外からのアウトソーシングも急増しているので、家庭にお金が貯まり始めている。

このおかげで、小売業が急拡大している。都市化が進み、低金利もあって不動産事業が急拡大し、不動産価格が上がっている。さらにサービス業も強いし、農業・漁業・森林・鉱山事業も活発だ。

SMインベストメントグループはフィリピンで50年以上サービスを提供してきた。着実な成長を果たしてきた結果、不動産、銀行、小売といった3つのコア事業分野で市場を独占している。

フィリピンには天然資源や観光資源もあり、経済的には活況を呈している。労賃も安く経済的にも良くなっているので、ビジネスを行うにはよい場所だ。一方で技術面やインフラ面では課題がある。日本企業にとってチャンスでもある。

フィリピンにはかつて政治的なノイズもあった。そこでフィリピンへの投資は中長期的な視点で考えるべきだ。中長期的視点であれば、得られるものも大きいはずだ。

 

【質疑応答より】

(「中間所得者層が急拡大したこの10-20年で何が変わったか?」という質問に対して)
当社は何十年も中間所得者層を相手にしている。所得が増えているのは素晴らしいこと。そういう消費者が望む価値を提供している。そのために技術をどんどん導入し、革新も進めている。次々と市場に参入する業者と協業するようにしている。

(「チャンスは多いが、課題は何か」という質問に対して)
フィリピンについて関心が払われていなかったこと。今やビジネスは加速している。

(「AEC (ASEAN経済共同体)が2015年末から始まると言われているが、これはうまくいくと思うか?」という質問に対して)
フィリピンは全体的に若い。その一方でタイは高齢化が進んでいるのが問題だ。このようにASEAN各国によって状況も課題も異なる。ASEANの統合が起こると、各国の違いが調和する。ASEAN統合により、たとえば日本企業から見ると、タイに本社を置いて、フィリピンでビジネスをする、というような形でも展開できる。ASEANは6億人の消費者がいる大きな市場だ。皆で調和した市場ができれば、移動も簡単になり、金融的な安定性も高まる。統一市場になることで、マイナスよりもメリットが大きい。

(「この5年、10年の中国の役割を聞きたい。特に中国が提唱しているAIIB(アジアインフラ投資銀行)についてどう思うか?」という質問に対して)
→中国は大きい国である。我々が輸出・輸入双方にとって中国が必要である。特にアジア統合というプロジェクトにおいては、AIIBは必要だ。

 

【所感】

コソン副会長が「フィリピンは経済的に今はとてもよい状況にあり、ビジネスチャンスは莫大だ。しかし関心が払われてこなかった」とおっしゃる通り、私もフィリピンについては古いイメージが残っていたため、現在の成長についてはよく知りませんでした。

ASEAN統合の動きや、中国に対する考え方についても、ASEANの大企業トップが何を考えているのかがよくわかりました。

豊かになりつつあるアジアには大きなチャンスがあり、企業のトップはその果実を得るためにとても現実的に考えていることが、講演や対談からもよくわかりました。

 

明日・明後日も、ASEANにある他企業トップの講演をご紹介します。

 

【世界経営者会議レポート】

世界経営者会議(1)1日目:IBM・ロメッティCEO、日立・中西CEO

世界経営者会議(2)1日目:KPMGインターナショナル・ビーマイヤー会長

世界経営者会議(3)1日目:iRobot コリン・アングル会長・CEO 製品中心の会社は、マーケティング力も卓越していた

世界経営者会議(4)1日目: Evernote フィル・リービンCEO

世界経営者会議(5)2日目: LIXIL 藤森義明 社長兼CEO いないのは「プロの経営者」よりも、むしろ「プロのマーケター」

世界経営者会議(6)2日目: チャロン・ポカパン(CP)グループ タニン・チャラワノン会長兼CEO 「中国市場のチャンスは無限だ」「インターネットは飽和し、実体経済の変化が重要になる」

世界経営者会議(7)2日目: SMインベストメント テレシタ・シー・コソン副会長 平均年齢23才と若いフィリピンは、なぜ急成長しお金を持っているのか?

 

世界経営者会議(6)2日目: チャロン・ポカパン(CP)グループ タニン・チャラワノン会長兼CEO

「中国市場のチャンスは無限だ」「インターネットは飽和し、実体経済の変化が重要になる」

世界経営者会議レポートの続きです。二日目に、チャロン・ポカパン(CP)グループのタニン・チャラワノン会長兼CEOが登壇しました。

中国出身のチャラワノンさんは、1969年以来45年間、タイ最大の財閥であるチャロン・ポカパン(CP)グループを率いてこられた華僑です。チャラワノンさんのお話しは、日本経済新聞・井口アジア編集総局長との対談で進められました。

 

【対談より】

団結し、安定することが必要だ。分権し、リーダーを決め、委ねるのだ。必要なのはスピード。民主的な話し合いだと時間がかかりすぎてしまう。だからリーダーが主導権を持つことが必要だ。私の場合も、二人の兄が「お前がリーダーをやれ。私たちがサポートするから」と、リーダーシップを私に委ねてくれた。

7割正しく3割間違いであれば、進めるべきだ。たくさんやれば、成功するからだ。

私が唯一許さないのは、間違った時に人のせいにすることだ。間違いを自分のこととして、なぜミスに繋がったのかを考えることが大切だ。失敗は成功の母である。ミスしてもそこから学べば、一歩先に行ける。だからミスをしても私はサポートする。

ライバルと競争して一位になることは大切だが、利益が出ないのならば意味がない。自分たちがトップになれると判断した上で、参入するのが我々のやり方だ。一位になれる見込みがあるかで、事業を選ぶのだ。場合によっては一位になれる人とWin-Winの関係を結ぶ。

権限委譲する際には、範囲を明確にする。「自分が社長なのだ」と考えさせるようにし、処遇も与えた上で、意思決定させる。

CPグループの経営哲学は、国家、国民、CPグループのメリットを考える「三方良しの原則」だ。まず国家、そして国民、最後にCPグループだ。その国の国民がサポートしてくれることが最優先だ。国民に利益をもたらさないと成功するわけがない。国と国民が利益が上がれば、CPグループも利益が出る。まず与え、貧しい国が豊かになっていくことで、利益が生まれる。その1%を得るだけでも莫大な利益だ。「先に与えて、後で得る」のだ。儲けたいのならば、その国にとってよいことをすることである。

(「中国でビジネスをする日本企業へのアドバイスは?」という質問に対して)
中国企業は、世界中に投資するのが上手い。日本の起業家は、発展途上国が何を必要としているかを理解することだ。いかなる発展途上国であっても、日本の力は活きるはずだ。第二次世界大戦後、日本は全てを失ったが、発展した。このモデルをもって、発展途上国に利益をもたらすことを考えるべきだ。日本は技術を持っているし、市場を提供して世界で売るのを手伝うことも出来るし、資金もある。

(「中国経済については、どう考えているか?」という質問に対して)
中国の経済成長は減速しているが、それは必然だ。大きくなりすぎたのだ。今、成長の第二段階に入っている。今日の中国の改革がもう一歩進めば、大きなチャンスが生まれる。変化がなければ、チャンスはない。たとえば中国の土地は、現在全て国が所有している。売買されていない。さらに5億人の農民が、これから豊かになっていくし、都市部の貧しい人たちが豊かになりつつある。これまでのような高成長は不可能だが、中国国民13億人が購買力を付け始めている。成長率6%でも大変なものだ。中国市場のチャンスは無限である。東南アジア全体も同じような状況だ。

(「CPグループはタイで一日33万羽ものの鶏を生産している。生産性の秘密は何か?」という質問に対して)
CPグループは世界の変化を捉えている。モノを作る人にとってもチャンスである。たとえば鶏の生産では、今まで500名で生産していたのを、現在は十数名で生産している。最新機械を導入し、一人で20万羽を養うことができる。こういう時代になったのだ。
当社ではポイントを見極めて投資をしている。個人的には、間もなくインターネットは飽和すると見ている。誰もがネットで買うようになったその時が、飽和点だ。そうすると、モノを作る実体経済の変化や輸送ロジスティックスが重要になる。オンラインで配送できないモノ(実体)は、運ばなければならないからだ。だから今、人を物流に回している。陸運・海運・輸送装置・物流が重要になる。ストライキしないロボットを使わない手はない。モノは必要である。将来は、必ずその方向に進むと見ている。

【所感】

華僑の経営者のお話を聞く機会はあまりなかったのですが、このような形でお話しを伺い、大きな視野とロジカルな思考に感銘を受けました。

「7割正しければ実行する。沢山チャレンジする。但し、失敗したら必ず学ぶ」は、私も講演や研修などでお話ししていることで、とても共感しました。

また、「インターネットは飽和する」というお話しも説得力がありました。確かに、かつての「実体経済 > インターネット経済」の時代は、インターネットは実体経済を徐々に代替していくことで成長してきました。しかし代替可能な部分を全て代替すれば、「実体経済=インターネット経済」となり、実体経済そのものの成長が問われることになります。こうなると今度はCPグループのように、昔からある商材を扱う伝統的な産業が最新技術を取り込み、成長していく時代にシフトしていくのでしょう。

また中国市場についても、新たな視点を得られました。

日本国内ではともすると「中国の成長は既に限界。魅力的な市場ではなくなった」と言われています。海外からの投資縮小も報道されています。しかしチャラワノンさんが中国出身であることを割り引いて考えたとしても、中国市場のビジネスポテンシャルは課題を抱えつつ膨大であることに変わりはありません。

習近平主席も中国国内で汚職撲滅など様々な改革をしたたかに進めていますし、一方で懸念だった日中外交も雪解けの様相が見えてきました。

今回の世界経営者会議では、他にも中国やアジアの経営者が多く講演しました。

彼らの話からも中国ビジネスの現実がよくわかりましたし、アジア各国の企業が中国のビジネスチャンスを現実的に捉えていることも伝わってきました。

そこから見える姿は、国内メディアで伝えられる中国像とはまた違ったものでした。

 

後ほどの世界経営者会議のご報告でも、ご紹介していきたいと思います。

 

【世界経営者会議レポート】

世界経営者会議(1)1日目:IBM・ロメッティCEO、日立・中西CEO

世界経営者会議(2)1日目:KPMGインターナショナル・ビーマイヤー会長

世界経営者会議(3)1日目:iRobot コリン・アングル会長・CEO 製品中心の会社は、マーケティング力も卓越していた

世界経営者会議(4)1日目: Evernote フィル・リービンCEO

世界経営者会議(5)2日目: LIXIL 藤森義明 社長兼CEO いないのは「プロの経営者」よりも、むしろ「プロのマーケター」

世界経営者会議(6)2日目: チャロン・ポカパン(CP)グループ タニン・チャラワノン会長兼CEO 「中国市場のチャンスは無限だ」「インターネットは飽和し、実体経済の変化が重要になる」

 

世界経営者会議(5) 2日目: LIXIL 藤森義明 社長兼CEO いないのは「プロの経営者」よりも、むしろ「プロのマーケター」

世界経営者会議レポートの続きです。二日目に、LIXIL 社長兼CEOの藤森義明さんが登壇しました。

 

講演から

LIXILは、TOSTEM、INAX、新日軽、サンウェーブ、TOEX,アイフルホーム、HIVICなど、国内住宅生活関連企業が統合した会社だ。

統合のために外部人材を入れ、「住宅のことなら全てが揃う」ことを差別化ポイントとして、統合を進めている。

世界を見ると、都市化が進んでおり、エネルギー需要の1/3は住宅という状況だ。そこでLIXILは「ゼロエネ住宅」を視野に入れて商品開発をしている。

たとえば、世界では28億人が衛生的な設備を持っていないのが課題の一つ。LIXILの回答は、節水・省エネ技術を活かした製品の開発・普及だ。

目標は「住生活産業におけるグローバルリーダーになる」ことだ。そのために、国内事業中心から、真のグローバル企業へ変革していく。

具体的な数値目標として、現在ほぼゼロの海外売上を1兆円に、現在薄利の営業利益を8%にする。

1兆円の海外ビジネスをどう作るか?M&Aを積極的に推進している。低金利の日本で資金を調達し、これを使っている。

M&Aの基準として、まず地域No.1ブランドを狙う。No.1ブランドの会社は、流通網もあるし、利益率も高い。そして、商品力も重視している。

では、どうやって買った会社をマネージしていくのか?会社の形を変えていく。テクノロジーとイノベーションに注力していく。

具体的には、複数企業の集合体だったLIXIL社内を再編する。

LIXIL Water Technology、LIXIL Housing Technology、LIXIL Building Technology、LIXIL Kitchen Technologyという4つのテクノロジーカンパニー、日本の販売・サービスを担うLIXIL Japan Companyの5つのカンパニーに移行した。

その目的は、グローバル化の加速、世界レベルでの人材活用、カンパニー間のシナジーによるLIXILの強みの最大化、だ。地域最適からグローバル最適に変革するとともに、権限委譲と迅速な意思決定を図る。

「One LIXIL Cultureで勝つ」ために、ダイバーシティの推進、世界共通の価値観の確立、世界共通の人事制度確立、さらにグローバルで活躍できる人材育成を図る。

まとめると、真のグローバルリーダーとなるためには、次の5つを推進していく。

(1) M&Aをグローバルで積極的に推進していく
(2) グローバルに通用する文化を育てる
(3) 本社のグローバル化を図る
(4) リーダーシップ教育、人材育成に投資する
(5) 高い収益性を目指す。ROE 15%以上

 

質疑応答から

質問:顧客とのつきあい方をどう考えているか?
→日本企業では、(1)どういう客に対して、(2)どういうコンセプトで商品を作るのか、(3)それをどのように伝えるのか、ということが首尾一貫して考えていない。このプロセスの中で日本企業は、「(3)どのように伝えるか」しか考えていない。真のマーケティングが必要だ。「プロの経営者がいない」と言われているが、むしろ私は「プロのマーケターがいない」ことが問題だ思っている。

質問:日本では流通経路が複雑だが、どうするか?
→「これが欲しい」という最終消費者、「これを売りたい」という取次・卸など、関係者が多い。しかし大切なのは、「どういうセグメントに、どういったモノを提供し、どういった価値を提供するか」だ。
たとえばシャワー付きトイレ。日本国内で考えると「これは素晴らしい製品だ」と考えがち。しかし欧米では、使う上で心理的抵抗感がある。顧客によって感じる価値は異なる。本来、その顧客にとって何が必要なのかを考えれば、別のモノが出来るはずだ。
流通・工務店は、自分たちが理解できないと「我々を外そうとしている」と思いがちだ。彼らをどうやって巻き込むかが課題だ。最終的には「伝える力」だ。私だけが語っていては限界がある。皆が変革を理解し、各々が自分自身の言葉で伝えることが大切だ。この「伝える力」をいかに身につけ、育てていくかが課題だ。

質問:歴史を守るために変えなければならなかったもの。逆に守らなければならなかったものは、どんなものか?また事業継承のプログラムはあるのか?
→変革を起こそうとしている。過去の全てを否定しないと、変革はできない。事業継承する場合も、否定して作れる人でないといけない。過去のことを忘れて、5年・10年先を見て変革を起こすことが重要だ。変革できないのは、自分たちのコンフォートゾーンで仕事をしているからである。コンフォートゾーンを出て、考える力があって、はじめて強くなれる。強い意識を植え付けるためには、常に上に向かって行く資質を植え付けなければならない。自分が語り続け、周りの人も語っていくようにする。90%はコミュニケーションだ。絶対にあきらめてはいけない。歴史を振り返ってみると、世界に拡がった宗教も、そのようにして拡がったのではないだろうか?

質問:最後に、日本社会・日本企業へのメッセージがあったら、教えて欲しい。
→もっとダイバーシティを推進すべきだ。様々な人たちの多様な意見を尊重することで、新しいアイデアやイノベーションが生まれてくる。ダイバーシティを推進すれば、日本のイノベーションや革新力は、もっともっと出てくると思う。

 

所感

これまで雑誌記事などで藤森さんのお考えに接し、「是非お聴きしたい」と思っていました。今回、その願いがかなったのですが、共感するところがとても多い講演と質疑応答でした。

 

まず、「世界の都市化が進んでおり、エネルギー需要の1/3は住宅」という状況に対して、「ゼロエネ住宅」を視野に入れ、「住宅のことなら全てが揃う」ことを差別化ポイントにして、「住生活産業におけるグローバルリーダーになる」ことが目標としている点。

そして、海外売上1兆円(現在ゼロ)、営業利益8%(現在薄利)という具体的数値目標。

さらに、達成のための積極的な海外M&Aと、それを活かすためのグローバル最適化を目指した社内体制変革

「One LIXIL Cultureで勝つ」ためのダイバーシティ推進、世界共通の価値観・人事制度確立・人材育成

 

「社会のニーズ→企業のビジョン・差別化ポイント→数値目標→具体的施策」という全てのストーリーがきっちりと繋がっています。

私がIBMで学んできたビジネスプロセスも、まさにこの通りでした。

 

また、

「日本では、プロのマーケターがいないのが問題」

「どの客に、どういうコンセプトで商品を作り、どう伝えるか、一貫して考えられていない」

という点も、私が日頃感じ、講演や研修でお客様にお話ししていることです。

弊社ではこのテーマで多くの引き合いをいただいておりますが、この問題を切実に考え始めている日本企業が増えてきたためだと改めて実感しました。

 

今後、国内事業中心だったLIXILがグローバル企業に変革することで、多くの日本企業のお手本になると思います。

今後のLIXILの変革から、私も学んでいきたいと思います。

 

【世界経営者会議レポート】

世界経営者会議(1)1日目:IBM・ロメッティCEO、日立・中西CEO

世界経営者会議(2)1日目:KPMGインターナショナル・ビーマイヤー会長

世界経営者会議(3)1日目:iRobot コリン・アングル会長・CEO 製品中心の会社は、マーケティング力も卓越していた

世界経営者会議(4)1日目: Evernote フィル・リービンCEO

 

世界経営者会議(4) 1日目: Evernote フィル・リービンCEO

世界経営者会議レポートの続きです。

Evernote CEOのフィル・リービンさんが登壇しました。
 

【講演より】

現代では情報不足は解消し、むしろ情報過剰になっている。そこでEvernoteでは、「書く」「集める」「見つける」「発表する」の4つのことが出来るようにした。

■書く (write):現代ではプリントアウトはしない。フォントやマージン設定などの必要性は少なくなっている。この結果、ワープロは過剰機能になっている。今必要なのは、書く内容のクオリティそのものだ。これをサポートする。

■集める (collect):必要な全ての情報を簡単に収集できることが必要だ。

■見つける (find):検索(search)ではない。検索能力は不要だ。わかっていなかったけど知りたかったものが、自然に出てくることが必要だ。

■発表する(present):現代の生産性でプレゼンは最悪だ。きちんと発表できていない。

よりよい意思決定のためには、この4つが重要だ。Evernoteにはこれらの機能が全て入っている。製品の背後にあるテクノロジーが、常に何かを探してくれるイメージだ。

 

どんなわがままも聞いてもらえる「子ども」。

周りが働いてくれる「CEO」。

自分の能力が飛躍的に高まる「スーパーマン」。

あなたはどれになりたいだろうか?

私の場合は「スーパーマン」だ。能力を高めて色々なことを実現したい。Evernoteはそれを可能とするのだ。

そこで私が提唱しているのは、Augmented Intelligence (知能増幅)。テクノロジーを活用して、人間の知能を増幅するのだ。

そもそもEvernoteは、私が欲しいものを作った。

だからEvernoteは、Apple Watchなどの全てのウエラブルデバイスにも対応すべく準備してきた。デバイスがシームレスに繋がるようになる。たとえばiPhoneでメモを見ている時に電話がかかってきて、iPhoneの電話機能で話し始めたら、自然とApple Watchにメモが表示される、といったイメージだ。人間にはとてもスムーズな動作であり、自然に対話に入ることが出来る。これをテクノロジーでサポートする。実は背後にあるテクノロジーは高度なものだ。

 

【質疑応答より】

質問:人工知能についてはどう思うか?
→我々は、人工知能ではなく、人間と組み合わせることで、人がより賢くなることを目指している。これがAugmented Intelligence (知能増幅)だ。

質問:10年後にはどんな技術が生まれてくると思うか?
→今後はいくつかの技術の組合せになっていく。ローコスト・ローパワーな組合せが無限の計算能力を生み出せるようになる。技術面の限界はバッテリーくらいのものだ。実は本当の限界は、むしろ人間の想像力にある。現時点ですばらしい技術があるのに、想像力が足りないために使えていないのが現状だ。

→95%の人は、新しいものに接すると、まず否定に走りがちだ。たとえば2万年前に文字が生まれた時は、「文字なんて使っていたら馬鹿になる。ちゃんと覚えて口伝で伝えるべきだ」と言った人がいた筈だ。しかし文字があったから文明が進化した。火も「火事になる」と言って使わなかったら、文明は生まれなかった。ドローンなどの新技術も同じことだ。どのような可能性があるかを考えるべきであり、その上で、いかにリスクを下げるかを考えるべきなのだ。

 
【所感】

フィル・リービンさんのお話を聞くのは初めてでしたが、まさに「ビジョナリー」であり、すばらしい内容でした。

私はEvernoteは使っていなかったのですが、この講演の夜から使うようになりました。このブログもEvernoteを使いながら書いています。とっても便利です。

 

世界経営者会議(3) 1日目:iRobot コリン・アングル会長・CEO 製品中心の会社は、マーケティング力も卓越していた

世界経営者会議レポートの続きです。

お掃除ロボット「ルンバ」を開発してるiRobotを創業したコリン・アングル会長・CEOが初日に登壇。私も個人的に楽しみにしていた講演の一つでした。

 

【講演より】

本当の意味でのロボット、「日々の生活の中に入ってくるロボットを作りたい」と思い、創業して24年が経った。

日本市場に参入して10年間、日本市場では比類ない成功を収めている。

お掃除ロボットのような新市場においては、競争からはイノベーションは生まれない。お客様の価値をいかに作り出すかが重要だ。たとえばお掃除ロボットで人々が必要としているのは「きれいになった床」だ。人に似たロボットではないし、吸引力でもない。吸引力を大きくするあまりに背が高くなって、ソファの下に入り込めないのであれば本末転倒だ。

新規ビジネスにおいては、製品が提供するコストあたりの価値が、最小限の顧客からの支持に必要な閾値を超えれば、一気に普及する。(New capabilities unlock new opportunities to corss relevancy threshold)

解決すべき実に多くの問題がある。会社はこれらを解決するために存在するのだ。

 

【質疑応答より】

質問:人工知能についてはどう思うか?
→もっとインテリジェンスが必要だ。プロセッサーも賢くなる必要がある。クラウドに接続されるようになれば、限界のない演算力を手に入れることができる。IBMのワトソンのような能力を、何百万台ものマシンで使えるようになる。

(質疑応答で、「人は新しいものが出てくると否定に走りがち」という話題に対して)
→日本でロボットを導入した時は、反応はポジティブだった。実は他の国ではネガティブだった。日本ではロボットが生活の中に入るのには違和感がないようだ。

(「日本の電機メーカーはiRobotより先にお掃除ロボットを作ったにも関わらず、『ダメだ。怪我をしたらどうする?』と反対され、発売されなかった」という話を振られて)
→ルンバも開発の際には複数の安全装置を組み入れたりして、リスク防止をしてきた。

 

【所感】

楽しみにしていたコリン・アングルさんのお話しでしたが、とても学ぶところが多い話でした。

特に「人が必要なのは、キレイな床であり、吸引力ではない」というお話しは、セオドア・レビットが50年近く前に紹介した「人が欲しいのは1/4インチの穴であり、1/4ドリルではない」という言葉を彷彿とさせます。

講演ではお話しされていませんでしたが、実はiRobotは、当初14件の異なるビジネスに参入したものの、うまくいかなかったそうです。そうした中で成功したのが、ルンバと福島第一原発でも使われた原発用ロボットでした。

失敗が重なる中でも継続できたのは、「日々の生活の中に入ってくるロボットを作りたい」という信念でした。

 

iRobotは製品中心の会社です。ロボット技術も卓越しています。ただそれだけでなく、大きな意味でのマーケティングも卓越しています。

多くの企業において、マーケティング発想と製品技術発想は相反してしまう傾向にあります。その原因は、古くからの成功体験に基づくセクショナリズムや人間関係など、企業の中での組織や人の問題に起因することが多いように思います。

しかしコリン・アングルさんがおっしゃるように、マーケティング発想と製品技術発想は、相反するものではありません。本来、お互いに補完関係にあるべきものです。そして相互に補完し合うことで、企業は大きなパワーを発揮できます。

製品技術に優れる日本企業が、マーケティング思考を身につけることで、日本企業はまだまだ強くなるはずです。

 

マーケティング思考への転換はますます求められていることを再認識したセッションでした。

 

ニッポンクラウドワーキンググループで講演しました

2014/11/13(金)、ニッポンクラウドワーキンググループで講演致しました。

ニッポンクラウドワーキンググループは設立三周年。この三周年記念講演で、同じオルタナブロガーの林雅之さんとともに、講演を致しました。

参加されたのは約100名でした。

Ncwg20141113  

私はIT業界に長くお世話になりましたが、ともすると、IT業界は顧客絶対主義に陥りがちです。

「顧客の言いなり」から脱却するためには、「ニーズ断捨離」の徹底、つまりターゲットの顧客と課題を絞り込み、リアルな顧客への仮説検証を迅速かつ愚直に積み重ねていくことが必要です。

実はクラウドは、この愚直な仮説検証を迅速に積み重ねる上で、大きな武器になりえるのです。

今回の講演では、「ニーズ断捨離」が必要な理由、そのためのバリュープロポジションの構築と、検証の方法をお話しした上で、最後にニッポンクラウドワーキンググループの皆様へのご提案を致しました。

 

私の前に講演された林さんのスマートマシンのお話しも、IT業界がどのように未来の社会に影響を与えるのかを考察された内容で、とても勉強になりました。

 

このような機会をいただき、有り難うございました。

 

世界経営者会議(2) 1日目:KPMGインターナショナル・ビーマイヤー会長

前回の続きです。KPMGインターナショナル会長のお話は、自分の仕事の上でも、とても学ぶところが大きいものでした。

■KPMGインターナショナル ジョン・ビーマイヤー会長

KPMGは世界155ヶ国に15.5万人の社員がおり、売上240億ドル(2.5兆円)。会計監査や税務の助言を行っている。

400社のCEOに対してインタビューした結果を、KPMG CEO Studyとしてまとめた。他社の調査と違うのは「今後3年間、どう考えているか」にフォーカスしていることだ。これを紹介したい。

 

驚くべき点は、世界のCEOは楽観的になってる、ということだ。「今後3年間の成長についてどう思うか?」という質問に対して、「より自信がある」が55%、「今と同じ」が41%、「自信がない」はわずか4%だ。

また「今後のフォーカスは何か?」という質問に対しては70%が「成長」と回答している。リーマンショック後遺症が残る数年前ならば「日々の業務の効率化」だった。CEOの意識は変わっているのだ。

元々CEOは楽観的な性格であることを割り引いても、注目に値する結果だ。これは雇用拡大に繋がっていくだろう。

 

米国の製造業は回復しつつある。市場を変革する技術革新(3Dプリンターなど)が生まれ、エネルギーも米国内で自給自足できるようになり、どこに製造拠点を置くかは問題ではなくなってきた。これまでほどグローバルサプライチェーンを気にしなくてもよくなったのだ。

さらにIBMのロメッティCEO、日立の中西CEOもおっしゃったように、世界のCEO自身がビッグデータ活用技術により「収集したデータを日々の経営で活用できる」と考え始めているのだ。

 

では、「CEOの懸念」は何か?

「競合他社にビジネスを奪われる」が90%、「新規参入者にビジネスモデルを破壊される」が59%だ。

破壊的変革は業界に関係なく起こっている。

さらに顧客は、たとえばアマゾンと同じ顧客サービスレベルをまったく別業界でも期待する、といったように、別業界と同じレベルのサービスを期待するようになっている。顧客の期待レベルが上がっているのだ。

だから企業は、顧客の中でどのような課題と期待が作られているか、常に敏感であるべきだ。

 

また、実に3/4のCEOが企業変革を進めている。32%が「評価または計画段階」、44%が「変革完了または実施段階」、24%が「検討していない」と回答している。

さらに、「3年以内に、自社の製品やサービスの賞味期限が切れる」と考えているCEOが72%いる。つまり、既存製品をいかに変革するか、いかに時代に適合したものにしていくかが重要だ。

 

これらの変革を進める上で重要なのが、人材。これまで企業にとっては、財務資本が重要だった。しかし今後100年は、人的資本がより重要になっていく。

 

(民主党が中間選挙で敗北した。この影響についてどうか、という質問に対して)
むしろ米国のCEOはより楽観的になっている。共和党が企業にとって有利な政策を進めていくことで、ビジネスメリットが生まれると考えているからだ。

(変革を促進するには?、という質問に対して)
多くのCEOは、変革の障害は「文化だ」と回答している。要は、「人をいかに変えるか?」が重要だ。社員一人一人が責任を持って、自らがクリエイティブに変革していくことが重要になっている。

 

(講演では他に税制改革についても触れられていましたが、割愛します)

 

講演を拝聴し、色々と考えました。

オフィス永井では、『「お客様が買う理由」を考え抜き、実際に検証をした上で、商品・サービス開発を進めましょう』とご提案し、長期間の研修やワークショップをご提供しています。

ありがたいことに「自社で行いたい」というご要望も多くいただきます。

自分の感覚では、まさに経営者は、ビーマイヤー会長がお話になった

「多くのCEOが、3年以内に自社製品・サービスが賞味期限切れになると懸念」
「顧客の期待と課題を把握すべし」
「変革で重要なのは、人の考え方」

という問題意識を持っていると感じています。

オフィス永井が提供すべき価値は何か、改めて考えを整理し、深めることができたすばらしい講演でした。

 

世界経営者会議では、他にも多くのことを学ぶことができました。また追ってご紹介してまいります。

 

明朝11/14(金)のニッポン放送で、紹介されます

明朝11/14(金)のニッポン放送「高嶋ひでたけのあさラジ」のコーナー「ひでたけのやじうま好奇心!」で、『戦略は「1杯のコーヒー」から学べ!』をご紹介いただけるとのお知らせをいただきました。

午前7時40分から7時50分の予定です。

RADIKOでお聞きになれます。→リンク

「コンビニだけじゃない!コーヒーを巡るアツい戦い」と題して、紹介いただきます。

東洋経済オンラインの記事「セブンカフェの成功の裏にあった30年戦争」をお
読みになったニッポン放送のご担当者が企画されました。

有り難うございます。

 

世界経営者会議(1) 1日目:IBM・ロメッティCEO、日立・中西CEO

2014/11/11-12開催の日経フォーラム世界経営者会議に参加しています。当ブログでその様子と学んだことを順次ご紹介していきたいと思います。

初日のトップバッターは、IBMのロメッティCEOと日立の中西CEOでした。お二人の講演の後、竹内弘高ハーバード・ビジネス・スクール教授が加わり、3人で対談されました。

なお、今回の第16回目世界経営者会議では、初めて全てのセッションを英語にしています。(同時通訳レシーバーで日本語も聞けます)

初日に登壇した9名の経営者のうち、日本人は中西さん1名。中西さんも、司会を務められた竹内先生、関口論説委員も、英語でした。日本のグローバル化はこんなところでも進んでいるのですね。

■IBM バージニア・ロメッティ会長/社長/CEO

3つの技術シフトが起こっている。

1つ目はビッグデータ。産業界における天然資源になりつつある。産業界におけるデータは年間40%で増大している。これをアナリティックス技術で分析するかどうかで、勝者と敗者が明確に分かれる時代となった。

2つ目はクラウド。90%の新規ソフトウェア開発がクラウド上で行われている。クラウドの意義は、業務におけるスピードとアジリティ(俊敏性)の獲得、および新たなビジネスモデル構築が容易になったことだ。

3つ目はソーシャルとモバイル。日本は一人当たりのソーシャルデータが世界一だ。パーソナライゼーションが進んでいる。ここではセキュリティが課題だ。

このように3つの大きな技術シフトが同時に起こったことで、全産業界に影響を及ぼしている。IBMはこのために、ワトソンに10億ドル(1150億円)を投資している。

ここでロメッティCEO自身で、ワトソンの活用事例のデモを行いました。私が記憶する限り、IBMのCEOが自身でデモをするのを見たのは、これが初めてです。

ニューヨークのがんセンターで実際に使われている乳がんの診断の画面の様子でした。症例データを元に数百の治療方法の中から、1000万ページの文献データを元に、診断結果を、その診断理由とともにワトソンが提示します。

ロメッティCEOは、「これは『見る』『知る』『予測する』という意思決定プロセスの変革である」と締め括りました。

パッションを持ってプレゼンしつつ、全ての言葉をキッチリと数字でロジカルに裏付けているあたり、さすがだと思いました。

 

■日立製作所 中西宏明会長兼CEO

日立の1990年からの25年を見ると、1998年、2001年、直近では2008年に大きな赤字を出した。現在復活している。

ソーシャルイノベーション事業を進め、事業ポートフォリオを組み替えた。2009年と2013年の売上比率を比較すると、消費者向け事業は16%から7%に減少する一方、高技術素材は36%から44%に拡大、ITは27%から28%に、電力インフラ・産業用は21%で変わらずだ。

ソーシャルイノベーション事業を進めているのは、市場と顧客、社会トレンド、技術革新といった3つの変化があるから。そこでクラウドとビッグデータというITを活用して、ソーシャルイノベーション事業を推進している。

たとえばハワイ・マウイ島では、2030年までに再生エネルギー比率40%を達成するために、エネルギー管理システムを提供している。

水資源の有効利用も進めている。インドでは海水の淡水化事業を進めている。

顧客視点でのソリューションとサービスを提供する。

顧客の課題→製品・システム→保守→システム運用→課題解決

このように運用まで一括して請け負えるのが日立の強みだ。

 

■竹内弘高ハーバード・ビジネス・スクール教授と、ロメッティCEO・中西CEOの対談(敬称略)

竹内:お話しを聞いていて、二人とも事実に即した楽観主義 (fact based optimism)だと感じたが、どうか?中西さんにはアベノミクスに対するお考えも含めお聞きしたい。

ロメッティ:現代は、災害や疾病など、とても困難な課題が山積している。しかし一方でそれらを解決するための技術もある。だからfact based optimismが大切だと考えている。

中西:アベノミクスで一番重要なのはデフレ脱却。マインドセットは変わったと思う。日本企業の課題は課題はグローバル化だ。どこに目標を定めて、どう攻めるかだ。ここで日本の高い技術が活きる。だから私もfact based optimismだ。

竹中:いかに企業文化を変革したのか、ご自身の体験でお話しいただきたい。

ロメッティ:会社を改革するのは、私の任務だ。まず、長期的な視点を持つ。そして過去にこだわらない (don’t protect the past)。そして自分たちを製品で定義しないことだ。特に技術系企業は製品や競合で定義しがちだ。そして人材への投資も必要だ。IBMではThink academyという仕組みで最新技術を学んでいる。

中西:「日立復活」と言われたが、事業ポートフォリオ変革のために、リソースを未来へシフトする意思決定自体はそんなに難しくなかった。重要なのは、考え方の変革だ。社員をいかにアグレッシブにして過去にこだわらないようにし、顧客に目を向けさせるか。これまで国内市場中心だったが、グローバル化を推進する必要がある。多様化がキーワードだ。異文化、海外の同僚との交流などを推進していく。

 

日米を代表する企業のトップのお話をお聞きし、改めて企業変革において、社員の考え方の変革がカギになることを実感しました。

オフィス永井が企業様にご提供している「戦略的研修」について、3週間前に当ブログで書きました

改めてこの「戦略的研修」が現代の企業に対する一つの解決策であり、さらにそこで得られた学びを著書の形で広く世の中のビジネスパーソンにお伝えしていくことで社会に貢献できることを実感しました。

 

世界経営者会議では19名の経営者が登壇しています。また追って当ブログでご紹介していきたいと思います。

 

「コーヒーブレイク」というコンセプトで、新市場が創り出され、コーヒー市場は拡大した

あるコンセプト(概念)が世に広がり、人々に認知されることで、新市場が創り出されます。

その一つの例が、「コーヒーブレイク」という考え方。

 

ずっと仕事をやっていて、一息入れたい時に、「じゃぁ、コーヒーでも飲むか」と考える人は多いのではないでしょうか?

実は、この「コーヒーブレイク」という概念は、1952年にアメリカで生まれたものなのです。きっかけは自販機でした。

「コーヒーの歴史」(マーク・ペンダーグラスト著)では、このように紹介されています。

—(以下、p.299より引用)—

自動販売機は、アメリカ人が最も大切にしている伝統的な習慣、つまり「コーヒーブレイク」の定義を促進した。…この言葉は1952年に汎アメリカ・コーヒー局によって発明されたものだった。年に200万ドルの予算で、同局はラジオや新聞や雑誌を使ったキャンペーンを開始した。テーマは「あなた自身にコーヒー・ブレイクを贈り、コーヒーがあなたに贈るものを受け取ろう」というものだった。…戦時中に軍需工場で始まった習慣に名前と市民権を与えたのだ。

コーヒーを飲むための休憩時間は、軍需工場の労働者たちにほどよい休憩とカフェインによる元気づけを与え、生産性を向上させたのである。このおおがかりなキャンペーンは、新聞の一般的なニュースとしても取り上げられた。

—(以上、引用)—

生産性が向上するという実利的な効果もあり、コーヒーブレイクは至る所で広がり、この言葉は英語の一部になりました。

 

では米国でどの程度普及したのでしょうか?

本書では次のように書いています。

—(以下、p.299より引用)—

数年前には,コーヒーを飲むための休憩時間などというものは誰も聞いたことがなかったのに、1952年に世論調査では、調査の対象となった会社の80パーセントがコーヒーブレイクを導入していた。

—(以上、引用)—

 
短い期間で多くの人たちが「コーヒーブレイク」という言葉を認知していたことがわかります。

  

多くの人たちがある概念を認知することで、市場が生まれます。

たとえば「スマートフォン」という概念が生まれ、多くの人たちが認知したことで、「スマホ関連市場」が生まれました。

企業の生産性を高める「コーヒーブレイク」という概念も、「工場の休憩時間にコーヒーを飲む」という新市場を生み出し、コーヒー市場の拡大に一役買っていたのですね。

 

 

人々が交流するカフェは、新しいビジネスを生み出していく

2014/11/6の日本経済新聞夕刊の記事「個人経営カフェ 個性で勝負」で、個人経営のカフェが交流の場を生み出している様子が紹介されています。

—(以上、引用)—

 「コーヒー+α」を楽しんで――。個人経営のカフェが打ち出すイベントが人気を集めている。幼児向けの音楽教室を開いたり、ミシンを置いて裁縫ができるようにしたりと内容は様々だ。大手チェーンの出店競争やコンビニのコーヒー強化で、苦しい状況の店舗も少なくないが、地域住民が交流できる場所としてもアピールし、個性で活路を見いだしている。

—(以上、引用)—

 

この記事で紹介されているのは、

■「イダカフェ」(川崎市中原区)

子育て世代の教育熱心な母親が多い地域で、幼児が音楽に合わせて踊りや歌を楽しみ、音感や情操を養うリトミック教室を開催する等、地元の人が気軽に集える場作りをされています。

■「ミシンカフェ&ラウンジnico」(東京都世田谷区)

オーナーの中嶌さんからミシンの指導が受けられます。「カフェで開いている裁縫教室には主婦層が来てくれており、地元住民の交流の場にもなっている」

■その他

民家を改装した店舗で宿泊
果樹園が併設カフェ

記事では、「カフェには好みを同じくする人たちを結びつける魅力がある。人のつながりを築くことで個人カフェの文化を守っていきたい」というイダカフェ・三瓶さんの言葉が紹介されています。

 

歴史的に見ても、人々が交流する場であるカフェは、ビジネスが生まれる場となっています。

たとえば、17世紀に英国で生まれた保険市場ロイズも、そうです。

「コーヒーの歴史」(マーク・ペンダーグラスト著)では、こんな事例が紹介されています。

—(以下、p.40より引用)—

エドワード・ロイドの店は、もともと船員や商人に食事を出していた。ロイドは、客たちに保険を勧めるために店に出入りする保険業者向けに、定期的に「船舶一覧」を作成していた。これがロンドンの有名な保険会社ロイズ社の始まりである。

—(以上、引用)—-

いま、世の中はコーヒーブームですが、このような歴史の流れも踏まえて現代起こっていることを考えてみると、興味深いですね。

 

スタバのアンケートに、感動した

昨日、近所にあるスターバックスのコーヒーセミナーに参加しました。

コーヒーのことも色々と学べましたが、今回、大きな発見がありました。

それはアンケート。

通常のアンケートでは、多くの場合、次の5段階評価で採点をしていただきます。

・大変よかった
・よかった
・まあまあ
・悪かった
・とても悪かった

こうすると、多くの人があまり考えずに、「まあまあ」「よかった」をチェックします。よほどのことがない限り、「とても悪かった」を付ける人はいません。

つまり点が高い方に集中してしまうので、実態を評価する際にはその点を割り引いて考える必要があるのです。

全体を把握するために、上から順に100点・75点・50点・25点・0点で加重平均を取り、満足度を算出します。

満足度60点だと「まあまあ」と「よかった」の間なので、数字上は一見問題なさそうです。しかし自分の経験では、60点だとほとんどの参加者は不満を持って帰っています。

私も講演ではいつも参加された皆様にこの採点方法でアンケートご記入をお願いしており、「満足度90点」を一つの基準に置いています。

一方で昨日のスタバ。

記憶がやや曖昧ですが、確かこのようになっていました。

・感動した
・期待を上回った
・期待通りだった
・期待を下回った

(もし正確にご存じの方がおられましたら、お教えいただければ嬉しく思います)

こうなると、「自分は感動しただろうか?それほどでもないな。でも期待はかなり上回ったかも」というように、どれをチェックするのか、ちょっと考えますよね。

点が高い方に集中することはなくなり、比較的分散します。その分、実態をリアルに評価できそうです。

実態をリアルに把握できれば、次の対策も打てます。こうして常に改善し続ける仮説検証サイクルが回り始めるのです。

「100円のコーラを1000円で売る方法」第1巻でご紹介した「顧客満足の式」で考えると、両者の違いがよくわかります。

顧客満足度 = 感じた価値 − お客様の期待値

このように考えるとスタバのアンケートは、下記のどの状態にあるのかを把握しようとしていることがわかります。

Photo_3

このアンケート。自分でも取り入れられないか、考えてみたいと思いました。

東洋経済オンライン連載 最終回『セブンカフェ成功の裏にあった「30年戦争」』

東洋経済オンライン連載、第8回目が公開されました。

セブンカフェ成功の裏にあった「30年戦争」
ただひたすらに、市場の声を聞け!

8

今では、皆さんが普通に飲んでいるセブンカフェ。

昨年初めの登場時には、「本格的レギュラーコーヒーが24時間365日、100円で飲める!」ということが、大きな衝撃でした。

しかしセブンカフェは、セブンにとって30年越し、5回目の挑戦であることは、あまり知られていません。

そしてその取り組みからは、私たちが学ぶべきことがとても多いのです。

今回はそのことについて書きました。

 

過去の本連載記事も、あわせてご覧いただければと思います。

■連載第1回目『日本人の”コーヒー偏差値”を変えた、あの一杯』

■連載第2回目『「スタバの次」の時代到来は必然である?』

■連載第3回目『”ネスカフェ復権”の裏に「古典的戦略」?』

■連載第4回目『よみがえったスタバに学ぶ、「らしさ」の経営』

■連載第5回目『最も革新的なのは、45年前のコーヒー?

■連載第6回目『「俺のフレンチ」も取り入れた、常勝戦略 T型フォード、ドトールも同じ戦略だった!』

■連載第7回目『スタバが「ネガティブ広告」に反撃しない理由』 

 

本連載は、おかげさまで大きな反響をいただきました。

特に連載第7回目は、あの超人気サイトの東洋経済オンラインで、なんと週間アクセス一位でした。あまりに嬉しかったので、記念に画面をキャプチャーしました。(笑)

20141031  

本連載も、これで最終回です。

編集を担当いただいた吉川様、本連載のためにご尽力いただいた谷内様に深く感謝致します。

コーヒーにまつわるビジネス戦略について、もっと詳しい話を知りたい方は…..拙著『戦略は「1杯のコーヒー」から学べ!』をご覧いただければと思います。

 

沖縄出張講演でお話しした、「沖縄へのご提言」

昨日のブログで、沖縄政経懇話会21様で講演したことを書きました。

講演の最後にお話しした「沖縄へのご提言」をまとめたいと思います。

エッセンスは、観光業の振興です。

 

世界全体で見ると、国際観光は成長産業です。

下記は2014年度観光白書から引用した、国際観光旅行客の推移です。

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では、世界の中でどこが増えているのか、というと、アジア地域です。

世界全体の国際観光客受入数の中でアジア太平洋地域が占めるシェアは、2003年から2013年の10年間で、17%から23%に増えています。

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このように特にアジア地域で国際観光客数が急増している中、日本の国際観光客数は、世界33位です。

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・1位のフランスは、8302万人。日本の10倍。
・12位の香港は、2377万人。面積ではるかに小さいのに、日本の3倍。
・23位の韓国は、1114万人。人口と国土面積が半分なのに、日本の1.5倍。

高度成長期までの日本は、国内旅行客需要が大きかったですし、アジアも豊かでなかったので大きな問題はありませんでした。しかし今後、人口減少で国内旅行客からの需要は減少します。

日本にとって、国際観光客の受入はまだまだ伸びしろがありますし、国内市場縮小の観点でも取り組まなければならない課題なのです。

 

このような状況で、沖縄の強みはどこにあるのか?

地理的に、世界の中でも国際観光客が急増している東アジアの中心に位置していることです。

那覇を中心とした1500Kmの同心円内に、ソウル、台北、マニラ、上海、香港、東京が入ります。(下記の図は首相官邸より)

006  

円安の追い風もあって、ここ数年間、日本への観光客が急増しています。日本の「おもてなし」文化はアジア各国からも注目されているのです。

日本人からすると当たり前になっていますが、日本の旅行はとても安心です。

海外を旅行したことがある方はおわかりだと思いますが、なかなか安心して旅行できる国はありません。ある欧州の国に行ったときは、店の勘定が合っているか必ず確認しました。人数をごまかされて過大請求されることが頻繁にあるからですが、日本ではまずこういうことはありません。夜中に安心して歩ける国も、多くはありません。

「日本人は優しい」「日本が好きになった」ということは、日本に観光に来た海外旅行客がよくおっしゃることです。

アジア各国からすぐ近くにある沖縄に、この日本文化があることは、大きな強みでもあります。

2年前に繁華街である国際通りに行った時は、ほとんど日本人観光客でした。今は中国人観光客で賑わっています。中国人観光客のビザを緩和したことによるものだそうです。

つまり、沖縄は「アジアと日本の架け橋」になれるポテンシャルがあるのです。

 

さらに2020年の東京オリンピックで、国を挙げて国際観光客誘致に取り組んでいます。

「それって、2020年までの一過性な需要ではないか?」と思われるかも知れません。

実際には、過去オリンピックを開催した国では、様々な施策を行うことで、オリンピック以降も観光需要が成長しています。(2014年度観光白書から引用)

Photo_4  

オリンピック開催は、外国人旅行客のインバウンド観光にとって追い風になるのです。

 

「天の時、地の利、人の和」という言葉があります。

天の時:アジアの国際観光客数が急増している。加えて日本政府も、東京オリンピック開催で2020年まで国を挙げて観光業振興に本腰を入れる

地の利:東アジアの中心地であり、アジア各国からすると、東京まで行かなくても、身近に日本のおもてなし文化を体験できる。

人の和:沖縄全体で、いかに沖縄の産業を振興させるかを考えている

このように考えると、沖縄の立ち位置を活かして、当面の目標を2020年オリンピック開催に置いて、アジアの観光需要取り込みを図るにはベストなタイミングではないかと思います。

沖縄の半分の面積しかない香港に、日本の3倍もの国際観光客が集まっていることを考えると、市場の潜在規模は極めて高いはずです。

 

そのためには、沖縄の強みを活かして、観光客が「是非沖縄に行ってみたい」と思う「お客様が買う理由」(バリュープロポジション)を創り出すことが必要です。

そして沖縄におられる様々な人たちが自分の強みを徹底的に考えて、様々なターゲット顧客に対して、「是非沖縄に行ってみたい」という理由を数多く創り出していくのです。

たとえば、琉球古武術のことを知れば、少ないながらも「是非学び、体験したい」という人がいるでしょう。

あるいは、リゾートとしての沖縄に魅力を感じる人もいるでしょう。

琉球文化も、素晴らしい観光資源です。

現在検討されているカジノ構想で、是非沖縄に来たいという人もいるでしょう。

そのようなターゲット顧客とニーズを絞込み、「お客様が是非買いたいという理由」を創り上げていく。

それらを数多く作り、情報発信していくことが、沖縄の振興に繋がっていくのではないかと思います。

 

沖縄のますますのご発展を願っております。

  

沖縄出張二日目・沖縄政経懇話会21様で講演しました

昨日2014/10/29(水)、沖縄タイムズ様が主催された「沖縄政経懇話会21」で講演しました。

沖縄政経懇話会21は、沖縄県内の企業や公的機関の代表約130人が会員となっている組織で、ひと月に一回、講師を招いて政治・経済・外交・文化などをテーマに、講演会を行っておられます。今年7月に行った第500回目の講演会では、オリックスの宮内義彦シニアチェアマンが講演されたとのこと。

その503回目の講演会に、講師としてお招きをいただきました。

 

参加された方々は、沖縄の政財界を代表される経営者約80名と、沖縄タイムズの皆様約20名、合計100名でした。

Photo  

「お客様が買う理由を、いかに作るか?」と題して、90分間の講演をしました。(カメラマンの方が撮影された写真をいただきました)

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最後に「沖縄へのご提言」と題して、世界的に見て成長産業であり、日本としてまだまだ伸びしろがある観光業界の中で、沖縄の絶妙な立ち位置と、2020年の東京オリンピックのタイミングを活かして、アジアの観光需要取り込みを図ること、そのために数多くの「ニーズの断捨離」を実践し、「お客様が是非買いたい」という理由を様々な場面で作り上げていくことをご提案致しました。

 

皆様から、こんなご意見をいただきました。

■お客様が買う理由を考えることは、商品開発〜販売、販促に至るまで、多くの場面で大変役立つと思います。

■製造業・小売業を営んでおりますので、本日の講演はとても参考になりました。また、今後の沖縄についてもお話しくださり、考えさせられることも多かったです。ありがとうございました。

■水道哲学型の自分に気がついた。その「壁」をどう打ち破るかー?考え方を改めようというきっかけを得た気がする。

■自社の新事業の整理をするポイントとして、利用したいと思います。事業の差別化、お客様が買う理由のポイントがわかりやすかったです。

■今回は代表代理で出席しましたが、私の業務と重なる実戦的な内容で、参考になりました。ワークショップ形式はいいですね。

■観光振興への提言は特に参考になった。

■自分たちの会社にいかせないか、考えてみたいです。

 

講演前日の2014/10/28に、沖縄タイムズでもこんな記事が掲載されていました。

20141028  

今回、ご尽力をいただいた沖縄タイムズの濱元様、銘苅様、具志堅様はじめ多くの皆様に、厚く感謝申し上げます。

Business Journal連載第3回目『ルンバ成功のカギ、ニーズの断捨離とは?』が公開されました。「水道哲学」から「ニーズ断捨離」へ、いかに思考変革するか?

Buisness Journal連載「企業の現場で使えるビジネス戦略講座」の第3回目が、公開されました。

ルンバ成功のカギ、ニーズの断捨離とは?
「すべての人に安く」から「5%に光るモノ」へ

今回の記事では、8月公開の連載第1回目『なぜ日本メーカーはルンバをつくれない?「ニーズの断捨離」で新しい常識と顧客を創造』でご紹介した、『水道哲学思考』から『ニーズ断捨離思考』への思考変革の方法論について、より具体的にイメージできるようにご紹介しています。

 

最近の講演では、『「水道哲学」から「ニーズの断捨離」へ考え方をシフトしましょう』とお話しすることが多いのですが、時々、こんなご意見をいただきます。

「それって、昔からあるニッチ戦略に過ぎないんじゃないの?」

このご指摘は、確かに半分当たっていますが、半分間違っています。

その点をより深く掘り下げてみました。

よろしければご覧ください。

 

東洋経済オンライン連載 第7回目『スタバが「ネガティブ広告」に反撃しない理由』..なんとアクセスランキング1位に!

東洋経済オンライン連載、第7回目が公開されました。

スタバが「ネガティブ広告」に反撃しない理由
マクドナルドの攻撃をスルーした、スタバの真意

Photo  

たいへん有り難いことに、東洋経済オンラインでアクセスランキング1位もいただいています。

 

最近の国会で、野党と与党が相手の揚げ足取りに終始しているのを見て、「もっと有意義な議論をしてほしい」とうんざりしている人は多いのではないでしょうか?

実はこれ、政党vs.国民を、企業vs.消費者に置き換えても、まったく同じなのです。

それがわかっている企業の一つが、スタバ。スタバの広告、ご覧になっていない方も多いのではないでしょうか?

今回は、そのことについて書いてみました。

 

本連載過去6回分の記事も、あわせてご覧いただければと思います。

■連載第1回目『日本人の”コーヒー偏差値”を変えた、あの一杯』

■連載第2回目『「スタバの次」の時代到来は必然である?』

■連載第3回目『”ネスカフェ復権”の裏に「古典的戦略」?』

■連載第4回目『よみがえったスタバに学ぶ、「らしさ」の経営』

■連載第5回目『最も革新的なのは、45年前のコーヒー?

■連載第6回目『「俺のフレンチ」も取り入れた、常勝戦略 T型フォード、ドトールも同じ戦略だった!』

 

本連載も、残りあと1回。

引き続きよろしくお願いいたします。

 

日経新聞に広告を掲載いただきました。

昨日2014/10/23の日本経済新聞に、『戦略は「1杯のコーヒー」から学べ』の広告を掲載いただきました。

120141023  

本書は発売当日に、即・重版決定。順調に重版を重ね、昨日、第五版目も決まりました。

週間販売で1位を獲得する書店様も出てきました。本当に有り難いことです。

 

アマゾン書評でも、こんなご感想をいただいています。書評の一部を抜粋してみました。

■小説を読むだけで、物やサービスを売るためのビジネス戦略が把握できるのが魅力です。

■価値の作り方を具体的に理解できるため、提案書や新事業を考えている人に最適な1冊。

■読み終えて、自分の事業の「価値」が意外と曖昧だと気づき、より深く考えました。

■物語仕立てで理解させてくれる本書のつくりは「100円のコーラ」よりもさらにうまくできあがっています。

■エンターテインメント性のある作品。ビジネス書にカテコライズされるのはもったいない。

■巻末を見て、沢山のビジネスエピソードから凝縮抽出されたコンテンツが盛り込まれているのに驚きです。

■マーケティングの知恵がふんだんに盛り込まれています。

■強烈な出だしからぐいぐい引き込まれ、久々に一気読みできました。主人公の新町さくらと一緒に難しいビジネス理論を学べ、頭の中にスラスラと 入ってきます。

■テンポがよくすぐに読めてしまいますが、2・3回、腹落ちするまで読むのがお勧め。

■マーケティングの本を読んで、具体的に考える切り口を理解したのは初めてです。

 

実に多くの方々に支えていただいています。有り難うございます。