世の中、朝シフトが進んでいるようです

私はいつも午前6:13鷺沼駅始発の電車に乗って通勤しています。この時間帯なら、発車直前になっても、必ず座れます。….6月30日までは。

7月1日(金)、いつも通り鷺沼駅に到着したところ、かなり混んできました。

それまでは席の半分位は空いていました。しかしこの日は、探さないと空いている席が見つかりませんでした。2-3割増し、といった感じでしょうか?

7月から勤務時間を1時間シフトした会社も増えているようですので、朝シフトが進んでいるのかもしれませんね。

 

一方で、世の中、土日勤務にした会社も多いようです。ウィークディの振替日取得状況によっては、来週月曜日はまた、混雑状況が変わっているかもしれませんね。

 

朝にシフトする方が仕事の生産性が高まります。

日本全体にとっては、よいことなのでしょうね。

 

 

2011-07-03 | カテゴリー : ビジネス | 投稿者 : takahisanagaicom

本日、IBMは100歳!そのIBMの100年間をまとめました #IBM100

1911年6月16日、IBMの前身となるThe Computing-Tabulating-Recording Company (CTR)社が、米国で産声を上げました。

当時のIBMは、秤やタイム・レコーダー、会計機などを製造していた小さな会社でした。

それから73年後の1984年4月。今から27年前の日本IBM入社式。

日本IBM一年生の私達に、当時社長だった椎名武雄さんは、「IBMは昔、肉秤を作っていた。あなた方がボクの年齢になる頃は、今とは全く違う会社になっているよ」と話されました。

それからさらに27年後の現在、私は27年前のIBMに存在しなかったソフトウェア事業部にいる訳で、まさに椎名さんがおっしゃった通りになっています。

現在のIBMは、170カ国以上で事業を展開し、40万人の社員を抱えるグローバル企業となりました。

このように100年間、事業を継続できたのも、社会やお客様、パートナーの皆様、そして先輩IBM社員の方々のおかげです。

本当にありがたいことですね。

 

そんなIBMが、この100年間どのようなことをやってきたのかをまとめたビデオ(日本語字幕付)がYouTubeでご覧になれます。

題して「IBM 創立100周年Film 【100×100】」。(5ヶ月前も、当ブログで英語版をご紹介しましたね)

この100年間に生まれた100人のIBM社員(及びその家族)が、生まれた年にIBMが実現したイノベーションについて語っています。

 

また、IBMが過去に行ってきた様々なイノベーションを、当の本人が語るビデオ(日本語字幕付)、「They Were There -イノベーションと共にいた人々」もYouTubeでご覧になれます。

『The Fog of War』でアカデミー賞長編ドキュメンタリー賞を受賞した、エロール・モリス監督によって撮影されたものです。

 

さらに人々の仕事や生活の在り方を大きく変えた様々な物語が、「歩み続けるIBMの100年の軌跡 – Icons of Progress」でご覧になれます。

これらを見ると、改めてIBMの本質は「テクノロジーカンパニー」であることが分かります。

実際、IBMは年間6,000億円という巨費を研究開発に毎年継続して投資し続けています。

ということで、米国の著名なジャーナリスト3名による、IBMの100年の歴史と未来への展望を綴った本"Making the World Work Better"も、出版されます。(日本語版は9月頃)

 

また、現在や将来に影響を与えるであろうトピックについて、世界各国の大学・研究所で講演やシンポジウムを開催しています。

日本でも5月12日に、東京大学で「IBM Day」を開催、パルミサーノ会長が記念講演を行いました。ありがたいことに、参加した学生さんからは「将来IBMに就職したい」といった感想もいただきました。

7月には、東京基礎研究所主催のサイエンス・シンポジウムで、国内外の学界・産業界・研究所の第一人者やお客様と共に、2030年代におけるテクノロジーのあり方と社会的意義についてディスカッションを行います。

9月には、ニューヨーク市で「THINK: A Forum on the Future of Leadership」を開催。政府・企業・学界・科学のリーダーと各国の次世代リーダー約700名とともに、スマートな地球を実現する方法を模索します。

 

詳しくは、こちらにまとまっています。

 

IBMが100歳を迎えた本日、「ITを通じて世の中の進歩に貢献する」というIBMの大きな使命の下で、私もIBMの一員として、身を引き締めて、仕事を通じて社会貢献していきたいと思います。

 

ちなみに、IBM100周年関連のTwitterハッシュタグは#IBM100です。

ということでタイトルにも入れさせていただきました。このハッシュタグで、世界中のIBM 100周年に関するつぶやきがご覧になれます。

 

 

3月は、7日間連続して在宅勤務。しかし生産性は変わらず、普段通り業務を継続できました

3.11の大震災では、私は午前2時まで会社にいて、やっと動き始めた電車に乗り、3月12日(土)午前4時に自宅に到着しました。

その週末、勤務先の日本IBMからは、「自宅で仕事できる社員は出来るかぎり自宅で仕事をするように」との指示が出されました。

震災直後から、お客様担当のセールスやエンジニアはお客様のトラブル対応で現場に駆けつけていました。

一方で、マーケティング担当者である私の業務は、自宅でもこなすことができます。

結局、私の場合は、震災後は7日間連続して自宅での業務でした。

同様の社員も多くいました。

 

在宅でも、業務の進め方はオフィスと全く変りはありません。

まず、専用のVPNアクセスソフトで、ネット経由で社内システムに繋げます。

これで社内のメールシステム、イントラネット、業務システム等、オフィスで使用する全てのシステムに接続できます。私の場合、一番安価な低速ADSLで接続しているので、さすがにオフィスのLAN環境と比べるとやや遅いですが、それでも業務上は問題ありません。

基本的に連絡はメールでやり取りします。

場合によっては、Sametimeというチャットソフトで、ネット上で相手を見つけてリアルタイムにチャットで会話して仕事を進めます。

会議でも、電話会議システムで、複数人で話しながら進めます。事前にパワーポイントファイルを送る場合もありますし、SametimeやLotusLiveのウェブ会議を使うこともあります。

会議の生産性は、対面の時とほとんど変わりません。

もちろん、相手がどのような表情をしているかは読み取れませんが、お互いに話をして意思表示をしなければ会議が進まないからこそ、生産的な議論ができます。

 

この期間、多くの社員が在宅勤務でした。個人的には、この7日間で仕事の生産性は、普段とほとんど変わらない、という印象です。ただ、これはあくまで非常時モードでのこと。その後、通常勤務に戻しています。

しかし、多くの社員が在宅勤務をしても業務を通常通り継続できるのだ、ということを実証できたのは、会社としては大きな意味があったのではないか、と思います。

 

米国のIBMでは、10年前から会議と言えば電話会議が当り前でした。広大な国内に、社員が散在しているからでしょう。

ちなみに当時の私の仕事相手は、ご主人の仕事の関係でラスベガスに居を構えていました。普段の仕事には全く支障がないとのことでした。

 

日本IBMでは、段階的に在宅勤務を増やしています。

1999年には、育児・介護が必要な社員に自宅勤務制度を試行。

2000年に「e-Work制度」を正式実施。PCや電話会議を活用して、週に数日、自宅で勤務する形態です。現時点で数千名が利用しています。

昨年からは、常時自宅で勤務する「ホームオフィス制度」も開始しています。

 

会社によって業務の性質や、ITインフラの状況は違いますので、実際に在宅勤務をやってみて、初めて学べることも多いのです。

 

大震災後に、在宅勤務導入を検討し始めている企業が多いようです。

在宅勤務はITの活用が大前提です。まずは小規模に試行し、企業としての経験値を貯めることが必要なのかな、と思います。

その際には、日本IBMが10年以上行ってきたように、先行事例として試行錯誤しながら得た経験は、おおいに参考にしていただけるのではないか、と思います。

 

 

2011-04-17 | カテゴリー : ビジネス | 投稿者 : takahisanagaicom

「PM、元気でひまがいい」

仕事でも、プライベートでも、大なり小なり、プロジェクト・マネージャー(PM)的な仕事をする機会を、よくいただきます。

ある程度コンパクトなプロジェクトの場合、全体的にリソースが足りないので、プロジェクト・マネージャー自身もプレイングマネージャーとして色々な仕事をこなすことが必要です。

一方である程度の大きさのチームになると、プロジェクト・マネージャーが現場の仕事を自分で抱え込んでしまうと、全体像をタイムリーに把握する人がいなくなったり、対応が後手に回ったりして、プロジェクト全体が次第におかしな方向に進みはじめます。

 

非常にチャレンジングなお客様の大規模プロジェクトを指揮された、あるプロジェクト・マネージャーが、経験事例の講演で最後に締めの言葉として語っていた言葉を、今でも憶えています。

「PM、元気でひまがいい」

この言葉を聞いたのは15年前。

昔、流行っていたあるCMのフレーズ(「亭主元気で留守がいい」)をもじったものです。

 

当然のことですが、「プロジェクト・マネージャーは大変だから、手を抜いてもよい」という意味ではありません。

 

次から次へと突発的な問題が起こり、プロジェクト・マネージャーが多忙を極めて忙殺されてしまう、という状況。

このような場合、プロジェクト・マネージャーだけでなく、プロジェクトメンバーも多忙を極めて忙殺されてしまいます。

さらに、プロジェクト自体が当初の目的を達成できずに、失敗してしまう可能性すらあります。

このような状況は、避けたいものです。

 

プロジェクトの全体感が常に「見えている」こと。

タスク毎に、明確な優先順位をつけること。

リソース・マネージメントを的確に行うこと。

プロジェクトの進捗状況を見える化しておくこと。

起こる可能性のあるリスクを把握し、予めコンティンジェンシー・プランをいくつか持っておくこと。

何か突発的な事態が起こった場合は、選択肢毎に優先順位を付けて実施すること。

これらは、プロジェクト・マネージャーの重要な仕事です。

 

プロジェクトは、プロジェクト・マネージャー自身がいつも元気で、余裕を持って仕事をしている形で進めたいものです。

 

 

2011-02-02 | カテゴリー : ビジネス | 投稿者 : takahisanagaicom

朝活が普及し、衝突が起こる!?

こんな記事を見つけました。

会議が朝8時開始に!? “朝活ブーム”で追い込まれるギリギリ社員

確かに周りを見ると、7時台に出社している人が増えているように思います。

朝早く出社するといいことが多いのですが、これはあくまで個人の価値観。

人には人のリズムがあります。

他人に強要してはいけませんね。

 

そう言えば、最近、どうしても他の方々との都合が付かず、朝8時開始の会議をセットしたことが何回かありました。

朝早く来ることに慣れていない人達にとっては、結構厳しかったようです。

反省です。

 

大木豊成さん著「iPad on Business」

この三日間、オルタナブロガーの大木豊成さんとのインタビューをお送りしました。

 

■ビジネスパーソンの出版戦略:大木豊成さんインタビュー(その1)「企画に3ヶ月かけた2冊目の本」

■ビジネスパーソンの出版戦略:大木豊成さんインタビュー(その2)「実名ブログを書くと、出版する力がつけられる」

■ビジネスパーソンの出版戦略:大木豊成さんインタビュー(その3)「企画書を書こう!」

 

当インタビューは今年2月に行いましたが、その5ヶ月後の今年7月、大木さんは3冊目の本「iPad on Business」を出版されています。

大木さんインタビュー連載期間終了の昨晩、この新著を読了しました。

 

大木さんご自身、本書について、「iPadの解説書ではなく、あくまでビジネス活用の観点で書いた本」と説明して下さったことがあります。

やはりビジネスパーソンが本を書く際の強みは、自分自身の専門領域について書く場合なのだ、ということなのでしょう。

その理由は、多くの場合、その領域では自分自身が第一人者であるからです。

大木さんが経営されている会社も、スマートフォン法人導入コンサルを提供なさっています。

この本では、iPadを企業で活用する意味を、豊富な事例やインタビューも活用しながら、とても分かりやすく具体的に伝えています。

 

私が興味深いと感じたポイントは下記の通りです。

 

■パソコンでできること全てをiPadでやろうとしないこと。

iPadでは、パソコンでできることはほとんどすべてできますが、すべてをやろうとしないほうがいい、ということです。

iPadではメールの閲覧、資料修正、編集、インターネットの閲覧など、外出時に必要なすべての作業を軽快にこなることができます。

一方でマクロを駆使した表計算を作ったりすばらしい表現のプレゼン資料を作ったりするのは、向いていません。

iPadが発表された日、スティーブ・ジョブスはiPadを「ノートパソコンとモバイルフォンの間に位置付ける」という意味が、こんなところからも理解できます。

 

■クラウド情報端末としてのiPad

iPadの記憶容量は、16GB/32GB/64GBと、比較的小容量です。

「パソコンは、最低300GBはないと」と考える私にとっては、とても小さい容量です。

しかし、iPadはパブリッククラウドサービスを使い、ネットワーク経由で「むこう側」にある必要な情報をその都度取り込んで活用する、クラウド情報端末(=一種のシンクライアント)なのだ、との説明を読んで、その理由とiPadの思想がハラに落ちました。

 

大木さんは、「iPadを使い始めてワークスタイルが一変した、例えば取引先から驚くほど返信スピードが速いと評価され、労働時間もかなり圧縮された」、と書かれています。

実際、大木さんとメールのやり取りをすると、その返信スピードの速さに、いつも驚かされます。

このようなツールを活用することでワークライフバランスを実現できるのであれば、本書でも述べられているように、私たちはiPadでできることを具体的にどのように活用すべきなのか、考えていく価値があると思います。

 

2010-08-18 | カテゴリー : ビジネス | 投稿者 : takahisanagaicom

世界の視点

以前書きましたように、インド・インフォシステクノロジーの2006年度新卒採用人数は36,700人。応募人数は1,302,400人。

日本の1学年全員を超える人数の修士号・博士号を持つ方々が応募し、35倍という激烈な競争を勝ち残って入社しますが、その後の新入社員研修も厳しく容赦なく落伍させられるそうです。

しかも、あくまでインドの一企業での話。

同じようなスケールで、グローバルレベルで激しい競争をしている企業が、世界には沢山あります。

これは発展途上国での出来事…、と言いたいところですが、もはや彼らは先進国の仲間入りを果たしつつあります。

 

一方で、わが国・日本。

7月26日の日本経済新聞の社説「ニッポンを一歩前に――リスク恐れず世界で商機得る人と組織に」を読んで、この問題意識を新たにしました。

—(以下、引用)—

 自動車では、独フォルクスワーゲン(VW)のヴィンターコーン社長が「もはや日本のメーカーには脅威を感じない」と語る。新興国市場に成長の重心が移ってから、日本企業の販売の伸びはパッとしないという意味だ。一方でライバル視するようになったのは韓国の現代自動車。中国や南米、アフリカで急速に販売を伸ばし、VWとぶつかっている。

(中略)

 日本は日本人の新卒一括採用、年功序列型の人事制度を真ん中に据えたままだ。リスクを取らない傾向が以前よりも強まり、これが日本の最大の弱点との指摘もある。人づくりのあり方で見直すべき点は多い。

(中略)

 日本の本社にいるだけでは世界の動きは見えない。グローバルに活躍できる人材を確保して激しい変化についていき、リスクをとって一歩前に出ていく企業に――。人事と組織のあり方を見直し、これからの成長の土台づくりを進めよう。

—(以上、引用)—

主に経営者向けに書かれていますが、個人レベルでも、自分はグローバル化をどのように対応していくか考えたいところです。

「より努力したモノ(=人、企業、町、国)が、豊かになる」

これは単純な事実だと思います。

世界の距離がどんどん狭くなり、フラット化が進んでいる現在、この傾向は強まっています。

努力と言っても、単純に、「長時間働くとか」、「滅私奉公せよ」ということではありません。

自分として、グローバルな視点を持ち、自分の将来のキャリアを考えながら、主体的に仕事に取り組んでいるか、ということだと思います。

 

新聞を読む時に、少しづつでも、世界を意識してみると、だんだんとモノの見方が広がるかもしれません。

2010-07-28 | カテゴリー : ビジネス | 投稿者 : takahisanagaicom

実は買い手の成功確率はわずか50%!M&A(企業買収)を成功させるための5つのポイント

6月22日の日本経済新聞「経済教室」で、早稲田大学の服部暢達客員教授が、「日本のM&A『買い』に偏り 価値創出に綿密な計画を」という論文を書かれています。

最近、企業のM&Aは、ビジネスパーソンにとって身近なテーマだと思います。

私自身、所属しているIBMのソフトウェア事業が数年間で50件以上のソフトウェア会社の買収を手がけていることもあり、身近な話題なので、興味を持って拝読しました。

長い論文なのですが、大変勉強になりましたので、サマリーを掲載させていただきます。

—(以下、引用)—

・日本企業は「買い手」になるM&Aは好きだが、「売り手」になるのは大嫌い

・しかし、M&Aの世界では、売り手の方が買い手よりもはるかにリスクが低いというのが一般常識

・M&Aでは平均して時価総額の+30-40%の買収プレミアムを支払う。

・つまり売り手にとってはプレミアムを受領して事業に対する投資を終了し、投資利回り(IRR)が決まる。リスクは基本的にゼロ

・買い手から見ると、プレミアムを支払ってから投資を開始するので実際に儲かるかどうかはM&A後の経営次第。しかもプレミアムを上回る価値の創出をしないと投資利回りはマイナス

・買い手側から見て、M&Aを成功させるためにはポイントが4つある。

・まず、買い手側は成功確立は5割程度の高リスク戦略であり、負けから始める勝負だと理解すること。これが全ての出発点

・第二は、プレミアムを上回る価値創出のための綿密な行動プランを持っていること

・第三は、実行する権力が必要なので、買収するなら原則として過半数の株式を取得して経営権を持つこと

・第四は、経営権を持っていても、実際に経営する能力がないと意味がない。優秀な経営者を留任させるのは問題ないが、任せるのは最高執行責任者(COO)だけ。シナジーを活かすためには大きな経営方針は自分で決めて指示することが必要なので、最高経営責任者(CEO)を任せてはいけない

・最後に飴(報酬)と鞭(リプレイサビリティ)を使い分ける。

・以上5点の必要条件を慎重に自問、自信がなければ決して勢いだけで実行してはいけない。どうしてもM&Aが必要なら、まず売り手として経験を積み能力を高めてから挑戦すべき。例えば、得意な国内で不採算事業を交渉がタフな外国人を相手に売却し、M&Aを低リスクで経験してみる

—(以上、引用)—

あくまで経営視点での話ですが、参考になります。
(従業員の視点ではまた色々と状況が変わってくるかと思います)

2010-06-26 | カテゴリー : ビジネス | 投稿者 : takahisanagaicom

全体責任は無責任

『これは、我々全体の責任だ』

ということ、よくありますよね。

実際に最終責任を取る人が、メンバー全体に気合いを入れるために、このようなことを言うのであればよいのですが。

個人レベルで誰が最終責任を取るのか、不明確なまま、複数人で分担したり、あるいは最終責任を誰も持たずに組織に持たせることにするケースって、結構あると思います。

これは結局、『誰が責任を取るのか』が不明確だということですね。

今の永田町もそうですが、会社やボランタリーで運営している集団でも、非常によく発生する現象だと思います。

こうなってしまうと、何となく空気が支配してしまい、そのうち誰も責任を取らないで、集団が破綻してしまいます。

「空気の怖さ」って、ここにあります。

第二次世界大戦で日本が論理的な判断ができないまま壊滅的な敗戦に至ってしまったのも、この「空気の怖さ」が大きな原因でした。

全体責任は、結局、無責任

ということなのですね。

気をつけたいですね。

2010-05-16 | カテゴリー : ビジネス | 投稿者 : takahisanagaicom

日本人にとって海外に出るのはローリスク・ハイリターン

4月10日の日本経済新聞『こもるなニッポン(3)98%が外国人―世界と磨く「人間力」』によると、世界で学ぶ日本人留学生が減っているそうです。

米国への日本人留学生は3万人を割り込み、韓国人(7万5000人)の半分以下。ハーバード大学の1年生1600人のうち日本人はわずか1人。

この記事では、北京大学・大学院で国際関係論を専攻されている加藤嘉一さんの言葉が紹介されています。

「日本人にとって海外に出るのはローリスク・ハイリターンです。円は強いし日本人は尊敬される。なによりグローバリゼーションは日本人の宿題なんだから。逆に中国人の留学がどんなに大変か。それでも若者は勉強して留学して世界でキャリアを積もうとする」

確かに海外でのコミュニケーションは最初は大変です。言葉もなかなか通じません、

でも、失うものは何もないのですよね。

私も勤務先の日本IBMに入社した時はTOIECは475点。

仕事で米国人とは全くコミュニケーションできず、入社後2年間は結構落ち込んでいました。

しかし20代の頃に海外との仕事に6年ほど関わっていたおかげで、英語でのコミュニケーションを通じて、世界で98%を占めるいわゆる「外国人」とのコミュニケーションはそれほど苦ではなくなりました。

ふり返ると、確かに失ったものは何もありませんでした。

むしろその後の人生で役立つ財産になりました。

「日本人にとって海外に出るのはローリスク・ハイリターン」という言葉を見て、本当にその通りと思います。

少子高齢化を日本の経済低迷の原因にするのは、もう止めよう。そして成長戦略だけを追い求めるのも、もう止めよう

昨年から日本の人口が減少しています。

そして、最近の経済が低迷の理由を少子高齢化に求める意見もあります。

 

一方で、現在成長が著しい韓国。

実は、こちらに書きましたように、高齢化社会化の目安となる倍化年数は日本の24年に対して韓国は20年。

倍化年数とは、総人口に対する65歳以上の高齢化率が7%から14%に上昇するのに要した時間です。

つまり、韓国は日本以上のスピードで少子高齢化が進んでおり、しかも人口は日本よりもずっと少ないのです。

このような状況で、グローバル化に見事に対応し、競争力も上がっています。

たとえば、サムソンのケータイは、ノキアよりも高いのに売れているとのこと。

このように考えると、少子高齢化を経済低迷の理由にしている日本は大多数の考え方は間違いで、原因は別のところにあることが分るのではないでしょうか?

 

以下は、先日ある方とお話ししていた際に言われた言葉です。

「日本は成長戦略が必要とよく言われますが、それは間違っていると思います。GDPは、人口 × 一人当り生産性 ですが、人口は減少します。だからGDPを増やすという発想ではダメなんです。必要なことは、個人、会社、学校、政府等の全ての競争力を上げることでしょう」

10年前の通貨危機でIMFの支援が必要なほど経済的に低迷していた韓国は、その後、競争力を強化し、日本以上のスピードで進む少子高齢化を乗り越え、グローバル経済で飛躍しています。

全ての原因を少子高齢化に求めること、そして、50年前の高度経済成長時代と同じ発想で成長戦略を追い求めることは、そろそろ止めにして、個人・会社・学校・政府、全ての競争力向上を目指すことが必要だと思います。

そして、会社・学校・政府を構成するのは、全て私達一人一人の個人です。

このように考えると、私達自身が、競争力を向上させることが必要なのでしょう。

それは決してただ頑張って長時間の仕事をするのではありません。

いかに自分自身が心から本当にやりたいことを、自分自身で心から楽しみながら(ただし楽をしながらではなく)、追い求めることが必要なのではないかと思います。

2010-03-16 | カテゴリー : ビジネス | 投稿者 : takahisanagaicom

先入観に左右されず、ビジネスチャンスを見極める難しさ

今月の日本経済新聞「私の履歴書」は、ユニチャーム会長高原慶一朗さんです。

3/12(金)の記事では、1960年前半、30歳前後でユニチャームの前身であった大成化工で、新たに女性用生理用品という市場を見つけた時のことが書かれています。

当時発売され始めた女性生理用品は、日本では日陰者扱い。

薬局の奥の棚に置かれていました。

一方で高原会長は、米国視察旅行で、広いスーパー店内で、女性生理用品が一般日用品と全く同列に販売されていることを知りました。

日本も豊かになると米国同様、爆発的に売れていくことを予感、この市場に参入することを決意しました。

このように書くと新市場を発見し切り開いた新規事業開発の成功事例のように見えますが、先入観に左右されずにビジネスチャンスを見極めて判断されたことに感銘しました。

今でこそ、当時の米国同様、日本でも生理用品は日用品扱いで販売されるようになりましたが、このようになったのは1980年代に入ってからではないでしょうか?

実際、その後の連載では、もともと建築資材会社だった大成化工の社内で猛反対があり、そのような中で商品や市場開発を進めていったことが描かれています。

その情熱の根本にあるのは、女性に対する思いでした。

「薬局の奥の棚に日陰者扱いで置かれていた」1960年代に、迷うことなくこの市場に取り組もうと決意された高原会長のベンチャースピリット。

今の日本でこそ、必要なのではないでしょうか?

2010-03-15 | カテゴリー : ビジネス | 投稿者 : takahisanagaicom

ミスター日本IBMの57年間

私が1984年に日本IBMに入社してから26年で、4人が社長をつとめられました。

最初は椎名武雄さんで、1975年から1992年までの17年間つとめられました。

二人目は北城格太郎さんで、1992年から1999までの7年間。

三人目は大歳卓麻さんで、1999年から2008年まで10年間。

四人目は橋本孝之さんで、2009年から現在まで。

 

私が20代の時は、ずっと椎名さんが社長でした。

まさに雲の上の人でしたが、2回だけお会いしたことがあります。

最初は入社2年目に本社に行った時。エレベータに乗ったら、一人で乗っておられました。

「こんにちは」

とお声をかけたところ、ご挨拶を返していただけました。

二回目は、入社7年目であるプロジェクトで伝言した時。「ああ、そう。分かった」というような返事をいただきました。

 

雲の上の人ではありましたが、2年ほど前に椎名さんが社外で講演している様子をウェブの動画で拝見したことがあります。

26年前の入社式でお話されていた椎名さんと全く変わらず、現役そのもの。元気でしたね。

その日はとても嬉しかった記憶があります。

椎名さんがおっしゃっていた

"Sell IBM in Japan, Sell Japan in IBM"

という言葉は、グローバルな世界になった現代こそ、ますます大切になっているように思います。

 

その椎名さん、長く日本IBMの相談役を勤められましたが、ついに日本IBMを退任されることになりました。→ニュース

現在80歳の椎名さんの日本IBMの入社は1953年だったそうです。

実に57年間も日本IBMに在籍なさったことになります。

まさに、「ミスター日本IBM」ですね。

57年間、本当にお疲れ様でした。

まだまだ現役の椎名さん、ますますご活躍を。

2010-02-27 | カテゴリー : ビジネス | 投稿者 : takahisanagaicom

e-Workの実際

時々、平日に会社に行かず、自宅で仕事をします。

日本IBMではe-Workという制度を用意しています。日本IBMのe-Workの説明サイトはこちらです。

 

実際にやってみると、仕事の生産性は、オフィスで仕事する場合と変りがありません。

会社で必要な情報はほとんどイントラネットやNotes DB上にありますし、VPN経由でADSLを使ってダウンロードできるので、アクセスできる情報は、ネットのスピードの差を除けば、オフィスにいる時と全く同等です。

一人で集中して作業する場合は、途中で声が掛かって中断することがないので、むしろ生産性が高いと思います。

ただ、周りの人の席に行って、ちょっと話しをして分らないことを確認する、ということはできないので、この部分はチャット、メールや電話で代替することになります。

 

ところで私の場合、業務データは会社のPCに全て入れていて、自宅のPCには会社のネットに繋げてコミュニケーションする機能(メール、チャット、等)しか入れていません。

これは、自宅のPCには業務データを入れないというセキュリティ上の理由です。

そこで、e-Workする前の日は、いつも会社に持っていく自宅のPCと一緒に、会社のPCも一緒に持って帰る必要があります。

2台で合計3Kg程度でそれほど重いという程ではないですが、女性だと重く感じるかもしれませんね。

2010-02-03 | カテゴリー : ビジネス | 投稿者 : takahisanagaicom

その関係、本当にWin-Win?

Win-Winの関係を築くことは、ビジネスでは非常に大切です。

一方で、この言葉をビジネスの現場で使う場合は、ちょっと注意も必要かな、と思います。

 

自分が「これはWin-Winの提案だ」と思っていても、必ずしも相手がそう思っているとは限りません。

相手にも色々と事情があるので、それをWin-Winと思わない可能性もあります。

 

逆の立場になって考えると、分りやすいかもしれません。

例えば、自分があまり乗り気になっていないのに、「この提案、Win-Winです」と言われると、微妙な気持ちになることはありませんか?

 

Win-Winの関係は、両者が考え・価値観・目標を共有している時に成立します。

本当に相手もWinしているのか、本当は自分が一方的にWin-Winと思っているだけで、実は相手はWinと感じていないのではないか、考えていく必要があるのではないでしょうか?

相手の本当の事情を全部分かろうとしても、なかなか分かることはできません。

「相手のことは、全て分かっている」と考え方自体、もしかしたら傲慢な考えかもしれません。

「Win-Win」という言葉を現場で使う場合は、注意していきたいものです。

2010-01-18 | カテゴリー : ビジネス | 投稿者 : takahisanagaicom

日本発・ベンチャーの卵が集結!慶応ビジネスコンテスト #4th_kbc

慶応ビジネスコンテスト(KBC)の最終審査が、昨日(1月9日)、日吉キャンパスで開催されました。

10月に「慶応ビジネスコンテスト(KBC) Study Tourで講演しました」で書いたご縁で案内をいただき、客席から参加いたしました。

応募は50件近くあったそうですが、一次審査・二次審査を通じて、今回の最終コンテストでは6チームがプレゼンを行いました。

 

「こんなに感激するのは久し振り」という位、すがすがしい、素晴らしいイベントでした。

 

まず、このイベントは全て在学中の学部生が主催・運営しています。

この運営が素晴らしいですね。

オープニングビデオもなかなかの出来ですし、講演会場の照明の調節や、ロジスティックスも細かいレベルまで考えられています。

アナウンスで、講演者や関係者全員に「~様」で呼ぶビジネスマナー。ビジネスパーソンでは当り前ですが、学生の皆さんが当り前にやっているのがよいですね。

あとはリハーサルを行い、細かいちょっとしたミスや行き違いを防ぐようにすると、さらに格段によくなると思います。

 

登壇した6チーム、全て素晴らしいプレゼンでした。

プレゼン時間は10分、質疑応答が7分ですが、全て時間通りで、いずれもシンプルで簡潔、かつエッセンスを伝えるプレゼンでした。

本日の観覧者は100名を超えていましたが、経験豊富なビジネスパーソンや経営者も多く参加し、質疑応答も真剣勝負でした。

まさに「ビジネスが人を育てる」ということでしょうか?

 

それぞれの企画には、事前に先生方のアドバイスがあったり、社会人で経験が深いメンターが各チームにアサインされたりして、ハイレベルに高められていることも印象的でした。

また、いいアイディアは特許出願を行なったり、最終発表会の関越者には「秘密保持に関する合意」を求める等、知財を守ろうという配慮も行なっています。

 

肝心のプランは、どれも甲乙つけがたい、オリジナリティ溢れたハイレベルな内容でした。

単にアイディアだけでなく、マーケティングプランもしっかりと考えられています。

多くの企画で、慶応大学内や日吉・三田でテストマーケティングを考えているのが印象的でした。

ただ、前述の「秘密保持に関する合意」の関係で、申し訳ありませんが、各プランのご紹介は差し控えます。

デモの時間では、観覧者が各チームのデモを自由に見ることができるように配慮されていました。この場で行なわれる会話でも、様々なアイディアが生まれていました。

 

あとはプランの実行あるのみ。

ただ、この実行が難しいのですよね。

 

KBCは、今年で4回目。

過去に育った案件はこちらにある通りです。皆様が既にご存じのものも多いと思います。

今回の多くの企画からも、実際に世の中を変革していくものが生まれていくと信じます。

コンテストに応募された多くの学生の皆様、今回の企画に関わった30名のKBCのメンバーの皆様、そしてサポートされた多くの社会人の皆様、大変お疲れ様でした。

特に30名のKBCメンバーの方々は、学業の傍らで昨年3月のスタートから10ヶ月かけて本日の最終審査までの運営を担当されたとのこと。

大変だったと思いますが、座学ではなく、KBCの運営を通じて学んだことは、将来の大きな成長の糧になったのではないでしょうか?

また、國領二郎先生、奥村昭博先生、インターネット総合研究所の藤原洋社長、イーモバイルの千本社長、アラン・マイナーさん、MIT-EFJ理事の吉田宣也さん、日本テクノロジーベンチャーパートナーズ代表の村口和孝さん、面白法人カヤック社長の柳澤大輔さん、等、多くの先生方や経営者、ベンチャーキャピタリストの方々のサポートもありました。

参加した全ての人達に共通するのは、「起業を通して世の中を変革していこう」という熱い志です。

私自身も、この日の感動を今後に活かしていきたいと思うとともに、とても微力でしたが、この企画に関われたことをとても誇りに、かつ嬉しく思います。

関係者の皆様、そして何よりも現役塾生のKBCの皆様、本当にありがとうございました。

 

ちなみに、タイトルにある #4th_kbc とは、Twitterのハッシュタグです。

これで検索すると、KBC関連のつぶやきがご覧になれます。もしよろしければ、ご覧下さい。

 

http://twitter.com/takahisanagai

2010-01-10 | カテゴリー : ビジネス | 投稿者 : takahisanagaicom

この二日間、講演が続きました

昨日・木曜日の夜は、30名を超える方々にご参加いただき、九段で「ビジネスパーソンのための出版戦略」の講演でした。ご参加下さった皆様、ありがとうございました。

講演1時間半+質疑応答30分の長丁場でしたが、質疑応答も活発で、あっという間の2時間でした。

アンケートもとらせていただきましたので、後程集計の上、セミナーの様子も含めて詳しくご報告したいと思います。

私にとっては、参加者の方々から沢山のことをお教えいただいた、実り多い講演になりました。

ちなみに、このセミナーはプライベートなもので、業務外です。(但し、日本IBM勤務であることを明かして講演したので、上司の承認は得ました)

講演は夜9時過ぎの終了、そのまま駆け足で東京駅へ。

新幹線で熱海まで行き、JR伊東線に乗り換えて伊東に11時到着。タクシーで40分ほどかけて伊豆の山を登り、日本IBM天城ホームステッドに到着しました。

 

翌日・金曜日の午前は、流通業のお客様セミナーでした。

流通業の経営幹部の方々に、「お客様のビジネス変革をご支援するIBMミドルウェアの価値とは」と題して、IBMソフトウェア戦略の講演を行いました。(こちらは当然のことながら業務です)

1時間15分の講演中、真剣なお客様の「気」が伝わってくるのを感じました。

講演後の昼食では、お客様と、進化していくソフトウェアをいかに業務で活用していくべきかを話し合い、多くのご示唆をいただきました。

 

プライベートと業務で、全く異なる2つの講演のために、この2週間準備をしてきましたが、とても多くのことが得られました。

このような機会をいただいたことに感謝いたします。

 

来週12月4日も、日本IBM幕張事業所のクラウドセミナーでパネルディスカッションに参加予定です。けんじろうさんもブログで紹介されていらっしゃいますね。

このセミナーは、かなり斬新な試みをけんじろうさんの方でご準備いただいています。

お楽しみに。

 

https://twitter.com/takahisanagai

2009-11-27 | カテゴリー : ビジネス | 投稿者 : takahisanagaicom

明日は、「渋谷テクニカルナイト」で講演です

先日お知らせしましたように、明日18:30から、渋谷マークシティにあるIBM SWCOC セミナールームで、

「日本におけるIT投資の現状と、IBMの考えるソフトウェア戦略」

というタイトルで講演します。詳細はこちらにあります。

講演資料も事前にダウンロードいただけます。(尚、この講演資料の中でブランクのページは、講演後に登録する資料で掲載します)

どなたでも参加できますので、ご興味がある方はお申し込みの上、是非いらして下さい。

2009-02-05 | カテゴリー : ビジネス | 投稿者 : takahisanagaicom

IBMソフトウェア戦略の講演をさせていただくことになりました

このたび、

「日本におけるIT投資の現状と、IBMの考えるソフトウェア戦略」

というタイトルで講演させていただくことになりました。

日時:2月6日(金)18:45~20:45 (受付開始 18:30)
場所:IBM SWCOC セミナールーム
  (渋谷区道玄坂一丁目12-1 渋谷マークシティウェスト18階)
主催:日本アイ・ビー・エム株式会社
定員:60名

詳細&申込はこちらです。

日本とIT市場で起こっていることとお客様の課題、これらを解決するためのIBMソフトウェアのお客様にとっての価値とその戦略をご紹介する予定です。

ご興味のある方は、2月初めの金曜日の夜、渋谷までご足労いただければ幸いです。

2009-01-15 | カテゴリー : ビジネス | 投稿者 : takahisanagaicom

IPO幻想の消滅と、社会企業家という考え方

日経BPの記事『上場、もはや「目標にあらず」』によると、2006年に年間187社あった新規株式公開(IPO)が激減し、4~5月は各1社にまで減っているそうです。

かつて、ほんの数年前までは、『いつかはIPO!』が大きな目標であったこともありました。

しかし、記事にもある…

『上場したら外資やファンドに狙われる』
『上場はもう魅力ないなあ。現場をよう知らん人が株主になったらかなわんし』

という声を聞くと、このIPO幻想が消えて現実が見えるようになってきたとともに、世の中の流れが着実に変わってきていることを感じます。

上場に伴う様々なコストに対して、それによって得られるメリットが見合わないことが大きな理由です。

実際、オルタナティブ・ブロガーで会社を経営されている方々でも、「IPOしてもメリットがないし、…」と、あえて上場を行わないとおっしゃる方もおられます。

 

現在、四半期毎の業績が対前年度で数%変わっただけで企業の株価は大きく上下しますし、その結果に投資家や経営者は一喜一憂しています。

そのため、四半期の期末に営業を強化して売上を立てようとしたり、支払いをやり繰りしようとしたり、四半期毎配当をしたり、と、企業は大変な努力をしています。

しかし、このような世の中の流れの変化を見ていると、将来的には上場という考え方自体がなくなり、「以前は、『四半期オペレーション』ということをやっていた時期もあった」「え、何、それ?」と、昔話として語られる日が来るかもしれません。

ちょうど現在、「ほんの十数年前までは、『土地の価格は永遠に上がり続ける』と全員が信じていて、我先に不動産を買っていた」「へー、そんな訳、ないのにね」と語られるように、です。

時代がちょっと変わっただけで、それまで常識だったことが非常識になる、ということですね。

いずれにしても、四半期オペレーションの経営モデルを、見直そうという動きがあるということは、少なくとも言えそうです。

 

田坂広志さんが代表の「社会企業家フォーラム」では、社会企業家を次のように定義しています。

「社会企業家」とは、
社会貢献と社会変革の志と使命感を持ち、
様々な社会的立場から、そして
様々な職業的分野において、
現在の事業の革新と
新たな事業の創造に取り組み、
新しい社会の実現をめざす人々です。

また、松下幸之助さんは、

企業は本業を通じて社会貢献をする。
利益とは社会に貢献したことの証しである。
多くの利益を与えられたということは、その利益を使ってさらなる社会貢献をせよとの世の声だ。

と語りました。

この日本人にとっては古く、かつ、新しくもある考え方、未来の企業のあり方を示しているといえるのではないでしょうか?

2008-05-10 | カテゴリー : ビジネス | 投稿者 : takahisanagaicom

B2Cのよい値引きと、B2Bの悪い値引き

十数年前、よく大阪に出張に行っていました。

大阪のナンバあたりを歩いていると、テキ屋が店頭で啖呵売をしているのを見かけました。

「この時計、きれいやろ。阪急デパートいってみいや。6万円や」

「このきれいな文字盤。天然オパールやで。」

「2万円でどや?」

「誰も買わないんかいな。じゃぁ、1万5千円でどや」

「なんやなんや、あしたは父の日やで。孝行しいや。買うたりや」

「天然オパールでっせ」

「1万円でどや」

「えーい、このキーホルダーもつけたる!」

「この万年筆もつけたる!」

「5000円にしたる。持ってけ、ドロボー!!」

(注:十数年前のことで記憶があやふやですし、そもそもこの関西弁、関西の方からすると変で、気分が悪くなるかも知れません。ご指摘いただければ幸いです)

という数十分間の独演会をお客はニヤニヤして見ながら、最後は皆さん次々と買っていきます。

 

このように芸の領域まで高められた楽しい値引きも世の中にありますが、一方で、こんな記事を見つけました。

「SEを潰した値引き 信頼も連帯感も消えた」

簡単に内容を紹介すると、

・あるコンサルが、ベンダー3社からの提案価格の妥当性をチェックするように依頼があった

・企業の要件を洗い出して精査、X社の提案が妥当と結論したが他社より高かったので、不要な機能を削る等の作業の結果、価格を下げ予算内におさめることができた。一緒に作業したX社の信頼も得、プロジェクトも盛り上がり始めた

・発注元の社長は、「ありがとう。ここから商売人の交渉を見ていてください」と言って、ディスカウントショップの発想で、さらに1割近く値切った

・ベンダーは受注できたが、赤字案件になり、会社の中でも立場が苦しくなり、メンバーから表情が消えた。積極的だったプロジェクトメンバーも、最低限のことしかやらなくなった。

・「最低限の動くもの」は出来たが、完成度は低かった。

・発注元の企業はわずか1割近く値切ったばかりに、その数倍の損をした

ううむ、なかなか辛い話ですね。

B2C等の世界で仕入れ値が決まっていて、どの価格で最低限の利益が得られるか明確な商品の価格付けの場合と、B2Bの世界のサービスの価格付けの場合は、全く違うように思います。

例えば、店頭で値切った商品は、値切ったからといって、性能が劣化することはありません。

また、赤字になるような過度な値引きを要求するお客様に対しては、「ごめんなさい」とお断りすることもできます。店からすると、そのお客様に売るために先行投資をしていない(さらにコミットしていない)ので、辞退も簡単です。

先のテキ屋のケースも、恐らく売っているのは非常に安く仕入れたバッタ品なので、5000円で時計+キーホルダー+万年筆を売っても、十分に利益が出ている筈です。

 

一方で、B2Bでシステム構築サービス等を行う場合は、価格の大部分は人件費になります。

従って、サービスを値切られた場合は、作業項目を減らすか、利益を削るか、人件費を削るか、のいづれかの対応になります。

先の例では、コンサルの方が作業項目を減らす努力をしました。この段階で、利益・人件費には手を付けていません。

その後、発注元の社長はさらに値切りました。その結果、作業項目をギリギリまで削っているベンダーは利益を削るしか方法がなく、赤字案件になってしまったことになります。もしかしたら、人件費にも手を付けている可能性もあります。

我々は「それなら、受注しなければいいじゃないか」と思い勝ちです。

しかし、大型案件の大詰めで選定ベンダーが自社だけになったりした場合、ベンダーは受注確実と見て先行投資をすることもあります。

他にもB2Cの世界にはないB2B独特な会社同士のしがらみや利害があって、採算割れになったからと言って則辞退する訳にいかない状況も多いようです。(ただ会社によっては、受注時に、赤字案件は一切認めないという規則を徹底しているところもあります)

まぁ、この業界では非常によくある話であるとは思います。

結局、このようなことを避けるためには、よく言われることではありますが、いかにお客様の課題を深く把握し、お客様の課題を的確に解決できる品質の高いソリューションを提案し、ある程度高くても喜んで契約していただけるようにして、価格勝負を避けるか、が勝負なのでしょうね。

他に、お客様毎の個別対応ではなく、提供するサービスそのものを標準化してコストを低くしコスト割れを防ぐのも一つの方法でしょうね。

いずれも言うは易く行なうは非常に難し、ですが、IT業界全体が求められていることでもあります。

それでも値引きされた場合は….ううむ、苦しい….。

2008-04-04 | カテゴリー : ビジネス | 投稿者 : takahisanagaicom

「もっと仕事をすればよかった」という経営者はいなかった、という話

昨日(2/25)の日本経済新聞の第一面特集『働くニホン それぞれの報酬 「何のために」終わらぬ問い』で、心に残る言葉がありました。

ベンチャー企業を興したある若手経営者が、米ハーバード大ビジネス・スクールに留学した時の話です。

—(以下、引用)—

………そこでたたき込まれたのは最新の経営手法だけではない。こんな講義が印象に残る。

死の床にある経営者たちに人生を振り返ってもらった。すると「もっと仕事をすればよかった」という人はいない。誰もが「家族や自分のため時間を使いたかった」と話す――。どんなに成功しても自分なりの「働く意味」を見いだせなければ幸せになれない。そう教え込まれた。

—(以上、引用)—

この話は、「自分の人生は何なのか?」という人間の生き方そのものに対して、大きな問いを突きつけます。

言うまでもなく、仕事は人生の時間の中で非常に大きな割合を占めます。

1年間は、合計8,760時間。
睡眠時間が6時間半として、約2,400時間。
睡眠時間を除外した残りは6,360時間
230日働き、1日12時間を仕事と通勤で使うとして、2,760時間。

これを平均的なビジネスマンとすると、起きている時間のうち実に43%を仕事に使うことになります。

逆に言えば、57%の3,600時間は仕事以外のことに使っている、とも言えます。これも貴重な時間です。

中にはスーパー仕事人間な方もいるでしょう。

上記に追加して月150時間の残業をしたとして、仕事で4,560時間。
この場合、起きている時間の72%を仕事で使います。逆に言えば、28%の1,800時間は他の事に使っている、とも言えます。

仕事が人生の大きな割合を占めることが改めて分かると、それが自分にとってどのような意味があるのか、我々は考えざるを得ません。またそれ以外の時間をどのように使うかも、重要なテーマです。

一方で、以前このブログのエントリーでも書きましたように、大病により21歳の若さで世を去らざるを得なかった詩人・矢澤宰は、死の直前の最後の日記で、以下のように語っています。

私の命の真の目的は何であったか。生きることである。……

自分の人生の目的とは何だろう?

この終わりのない問いを、それぞれ全く違った状況にある私達自身で問い続けること自体が、私達の人生そのものなのかもしれません。

利益を最大化するのは、売上増+コスト削減ではない

モーニングに連載されている三田紀房「エンゼルバンク」

愛読している人も多いと思います。かく言う私もその一人。

前回は、転職支援会社に勤める元高校英語教師・井野さんが、担当した転職希望の山口さんに「あなたの会社は、将来性があるいい会社だから、転職は思いとどまった方がよい」とアドバイスしました。

この結果、山口さんは、今の会社で仕事を続けることを選択します。

その一方で井野さんは「私がしたことは、自分の会社のためになったのだろうか?」と悩み、上司の海老沢さんに相談します。

海老沢さんは「全く問題ない。会社にとって何のマイナスにもならない」と言い切ります。

今週号は、その後のやりとりを描いています。

ちょっと長いですが、非常に含蓄が深いので、その後のやり取りを引用します。

—(以下、引用)—

井野 「転職が成功しなくても会社にはなんのマイナスにもならないってどういうことですか? だって転職者を多く出すことがこの会社の利益になるはず。なのにどうして」

海老沢 「じゃぁ 井野さんに質問。 会社の利益ってどうやって最大化する?」

井野 「利益の最大化? 売り上げを増やして、経費を削減すれば…」

海老沢「全然違う。それじゃたかがしれている」

井野 「違うって、そんなわけないじゃないですか。 コツコツと売り上げを積み重ねるしか…」

海老沢 「利益を最大化するのはね。 信用だよ」

井野 「信用……」

海老沢 「そう。 信用なんて無形のものはお金にならないって思いがちだけど」

井野 「それは…」

海老沢 「わかる?」

井野 「理想はそうでしょうけど… 実際、信用だけじゃどうにも…」

海老沢 「まず信用を得る。売り上げや儲けは二の次。これ 商売の鉄則…」

海老沢 「ウチの会社で考えてみて。 転職者を出せば出すほど売り上げも利益も上がる。 利益だけが目的だと無理をする。 とにかく転職させようと、強引に導いてしまう。 短期的に会社は潤うが、そんなもの長続きしない。 無理は必ず破綻する」

井野 「じゃぁ、転職者増やすことよりも、会社の信用を増やすよう努力しろと…」

海老沢 「そういうこと。信用というのは、あせって求めちゃいけないものなんだよ」

井野 「あせって?」

海老沢 「人はつい、信用に対する利益をすぐに欲しがってしまう。それじゃ信用を失うし、利益も小さい」

(中略)

海老沢 「信用は無形だから、値がつけられない。値がつけられないものに値がつくと莫大な利益になる。 目の前の小さな利益を追い求めている時は、利益を最大化できない。じっくり耐えて、信用を得ることがビジネスのコツだ」

(中略)

海老沢 「だからいいんだよ。一人の転職希望者に固執しなくても。山口さんの影響力なんてたかがしれている。時間がかかるけど、こういうのを積み重ねていくと会社の信用度が増すんだよ」

井野 「はあ…なるほど。そういうものなんですね」

—(以上、引用)—

信用がいかに企業にとって大切か、このように現実的に分かり易く描いたものは、なかなかありません。

実体験としても納得感が非常に高く、とても参考になります。

 

偽装や法令違反等の不祥事で、長年築き上げてきた信用が一気に崩壊し、経営が傾いてしまう企業が多い昨今です。

コンプライアンス等が非常に大切であることは改めて言うまでもありません。

しかし、単に法令順守だけに留まっていては、お客様の信用は勝ち取れないでしょう。

さらにその先に、お客様からいかに本当の信頼を勝ち取るのか、企業のメンバー全員が常に考え続けるような企業文化を創りあげることが大切です。

 

一方で、グローバルな競争がますます激しくなってきている昨今、企業は四半期毎に利益を上げ続けるように株主等のステークホルダーからプレッシャーを受け続けています。

このようなビジネス環境だからこそ、海老沢さんの

じっくり耐えて、信用を得ることがビジネスのコツだ」

という、この言葉は重いですね。

2008-01-19 | カテゴリー : ビジネス | 投稿者 : takahisanagaicom

まだ割と知られていない、「iPodに隠された謎」

週刊東洋経済2007/12/08号で、「iPodに隠された謎 iはだからスゴイ!」という特集があります。

今まで報道され尽くした感のあるiPodですが、この特集では今まであまり広く知られていなかったSPAモデルスーパーEMSについて深掘りしており、参考になりました。

1.SPAモデル

SPAとはGAPやユニクロで有名な「製造小売型アパレル」の意味です。

ご存知の通り、GAPやユニクロは、自社デザイナーが商品のデザイン選定や素材コントロールを行い、販売は直営店舗、店舗の内装デザインもブランディング、一方で製造はアウトソーシングし自社工場は持っていません。品質は「安かろう悪かろう」ではなく、「安いのに高品質」です。

iPodは同様の仕組みでビジネスを行っています。

かつてアップルは、全てを自社で製造するという考えで自前の最新工場を持っていましたが、本当の付加価値はマックで培った使い勝手のよいソフトウェアと製品デザインにあると割り切り、工場を閉鎖し、台湾EMSへの委託生産へと切り替えました。

また、今や全社売上の20%を占める直営のアップルストアは、アップルのブランドイメージ醸成の役割を担っていますし、また、大量仕入れにより、小売価格は競合よりも安く設定しています。

記事では様々な事例を通じて、いかにSPAモデルを実現しているかを紹介しています。

2.スーパーEMS

iPodの試作段階や部品供給に日本メーカーが多大な貢献をしていることは衆知の事実ですが、実際に量産しているのは台湾に本社を置くEMS(電子機器製造請負サービス)のホンハイです。日本の最先端技術に短期間でキャッチアップし、量産してしまいます。

このホンハイ、2006年の売上は4兆円でEMSでは世界一、前年度比成長率はなんと44%です。中国・深センに13万人の従業員を擁しています。

ホンハイはiPod以外にも、HPのパソコン、任天堂のWii、ソニーのプレステ、等々を生産しています。私達は、知らないうちにホンハイで生産された製品を使っていることになりますね。

今後、私達はこのような巨大なEMSの存在を前提に、自社ビジネスを定義していく必要があるのでしょうね。

この特集、他にもアップルの過去と未来を俯瞰したり、キーデバイスからデザインまでの日本企業や個人の関わりを描いたり、と非常に読み応えのある特集になっています。

ご興味のある方は、ご一読を。

数字で語らないと、戦略構築を誤る

思い入れ深く、ビジョンを思いで語ることは大切なことです。

しかし一方で、実際にビジネスを進める上では、思いだけではなく、数字で裏付けて語ることも極めて重要です。

例えば、ビジネス結果を反省する際、思い込み(=仮説)を主体に対策を考える場合があります。

しかし実際にデータで検証してみると、その思い込みは意外と間違っていることもあります。

実際、現在、今年から始めてきたプロジェクトの進捗状況確認と対策を講じるタスクを行っていますが、当初は問題点と考えていたいくつかの要因は、実データで検証してみると、実は問題点ではありませんでした。

逆に、データを詳しく検証していくと、今まで気付かなかった問題点が出てきています。

日頃、ビジネスの現場で仕事に取り組んでいる私達は、自分達のビジネスの問題点は、自分自身が全て分かっていると思い勝ちです。

しかし、一歩下がって、様々なデータを集めて時間をかけて検証することで、自分の思い込みが実は間違っていたり、逆に新しい発見を得たりすることもあります。

このような検証は、本来人任せにすべきではないと思います。実際にツールを操作するかどうかは別として、問題意識を持っている責任者自らが行う必要があります。

私自身も、現在、このような検証を時間をかけて行っています。数日間かけて、仮説検証を繰り返しながら地道にデータを様々な観点で見直す作業で、集中力が必要な作業です。

しかし、これは面白いですネ。

なぜ面白いかと言うと、今まで誰もが気が付かなかった新しい発見があり、その発見を元に、組織全体の戦略を再構築できるからです。

「常に事実と数字でモノゴトを語る」というスタイルを、日頃の仕事で身につけていきたいですね。

2007-07-10 | カテゴリー : ビジネス | 投稿者 : takahisanagaicom

「IBMのビジネス変革」について、大学院でお話しする

この週末、多摩大学・大学院の授業「情報システム論Ⅰ」で、「IBMのビジネス変革」と題して1時間のお話をさせていただきました。

多摩大学・大学院は、社会人中心の大学院で、週末と平日夜間に集中して授業を行っています。私も2000年から2002年にかけて、通常勤務の傍らで、在籍していました。

ということで、多摩の丘に戻るのは5年振りでした。当然のことながら、院生の顔ぶれは5年前と全く変わっていましたが、先生方の顔ぶれは変わっておらず、ちょっと懐かしく思いました。

80分の授業で、50分間は以下の内容をお話させていただき、残りの30分で質疑応答をしました。

■1990年代初頭の業績悪化から、IBMは世界全体でいかに変革を行い、ハードウェア製品主体の売上構成(製品提供)を、サービス主体の売上構成(ビジネス・バリューの提供)に変えていったか?

■そのために、どのような施策を行ったか?

■施策に伴い、社内のビジネス・プロセス(営業プロセス・ワークスタイル・営業ツール・人事制度・新しい価値観の共有)をどのように変えていったか?

■世界のフラット化に伴い、IBMは次の変革のステップとして、いかに自社を真のグローバル企業に変えようとチャレンジしているのか?

■一連の変革を通じて学んだ教訓(Lessons Learned)は何か?

同じ業界の方や、ユーザー企業の方もいらっしゃって、質疑応答では様々な観点でご意見を伺うこともできました。

授業の後は飲み会をセットしていただきましたが、この授業をご担当の松谷先生ご自身が、多摩大学で教鞭をとられる前は新日鐵に30年間勤務され、製鉄所全自動化プロジェクト等で日本IBMともお付き合いがあったとのことで、当時のことを色々と教えていただきました。

このように異業種の人達と集まって勉強すると、本当に様々な発見がありますね。

得られたものも大きかった、有意義な一日でした。

2007-07-08 | カテゴリー : ビジネス | 投稿者 : takahisanagaicom

ある経営者の引き際

私が勤務する日本IBMでは、「天城ホームステッド」というお客様エグゼクティブ向け宿泊研修施設があります。

ここでは、お客様の経営幹部をお招きし合宿形式で経営課題を話し合います。

10年近く前、ある企業のセッションを行いました。

この企業は、立志伝中の社長が創業し、強力なリーダーシップで成長させた会社で、現在の売上は数千億円。名前を言えば誰でも知っている会社です。

セッションでは経営幹部約50名が集まりました。創業者と苦楽を供にした実力派の古参の部下に加えて、次期の経営を担うであろう若手の課長・部長クラスも多く参加しました。

このセッションで、この社長はなるべく発言せず、部下同士の議論に委ねていらっしました。

既に経営から手を引き後進に譲ろうとなさっていました。自分がいなくてもこの企業が存続できるように企業の文化を変えたい、との思いなのでしょう。

セッション二日目、経営課題と情報システムの将来計画を巡るテーマについて、古参の部下と若手で激論がありました。双方譲り合わず収拾がつきません。

おそらく昔は鶴の一声で場を収めた社長は、この議論には一切加わりません。

社長は私達日本IBM社員に小声で

「すいません、ちょっといいですか?」

と声をかけ、こっそりと広い会議室の隅に集めた。

「今、議論しているこのテーマ。これはどのように収拾すればよいのですか?」

私達からは、今後進めていく上でのいくつかのアイディアをご提案しました。

「分かりました。是非その方向で、後日、私どもにご提案ください。何卒よろしくお願いいたします」

私達に深々と頭を下げられました。

自分の時代に自ら幕を引き、次の世代の議論に口出しをなさらない潔い態度、しかしどうしても心配で仕方がない誠実な姿勢は、今でも強く印象に残っています。

このセッションが終わって数日後、この社長から、セッションに参加した日本IBM社員一人一人に、丁寧なお礼のeメールが届きました。

2007-06-15 | カテゴリー : ビジネス | 投稿者 : takahisanagaicom

事例でよく分かる、数年後に活きる情報投資

本日(2007/6/14)の日刊工業新聞に掲載された記事「企業 コマツ 神経系の改革」は、経営力強化のための情報投資をいかに行って、どのように役立てるかを学ぶ上で、非常にいい事例だと思います。

以下、ポイントを引用します。

—(以下、引用)—

「建設機械業界は世界的な需要増で追い風が吹いているが、コマツと競合他社の収益率に(最低でも)2-3ポイントの差がつき当社が優位に立っている。その差は『販売、生産、在庫』(販生在)のマネジメントレベルの差だと思っている」-。コマツ社長の坂根正弘は、事あるごとに同社の競争力の源泉の一つとして販生在のマネジメントを引き合いに出す。

……

坂根の販生在の経営判断に対する自信は、どこからくるのだろうか。坂根の自信の秘密を読み解くカギは、…(中略)…情報インフラ-神経系の改革にある。

……

….「それまではインハウス(自社開発)のシステムだった。しかし、自前の仕組みでは海外進出した現地でスタッフを雇っても『SAP』やバーンなどのERPになじんでいてコマツ独自のシステムは動かせない。ある程度のことを犠牲にして世界で使えるERPを使おうと決めた」….

……

ERP導入の最大のメリットは工場間のシステムが共通にでき、生産機種移管や新機種の世界の工場での同時立ち上げなどが短期間で行えることだ。「この2年半で3倍の増産をやる一方、20機種以上の生産ラインを国内工場で移動した。以前は1機種動かすだけで1年はかかったが、今は2-3ヶ月でやってしまう」(野路次期社長)

……

野路は「機種の設計や作り方の工夫と10年前からERPを入れて(工場の)インフラを統一した目に見えない力があって、はじめてできること」と力説する。経営環境が苦しい時代に断行した神経系の改革だったが、坂根は「当時の情報投資が今になって生きている」と実感してる。

—(以上、引用)—

情報システムで向上した経営力。企業にとって大きな差別化ポイントになりますが、これが実を結ぶまでには全社の仕組みを断固として変えるトップの強いリーダーシップと、大きな投資、数年間の長い時間が必要になることがよく分かりますね。

この事例で重要なのは、独自システムで時間とコストをかけて作り込むのではなく、世の中に出回っている標準的なモジュールを活用した、という点だと思います。

標準パッケージの採用が進んでいる米国と比べると、日本のITシステムは作り込みの比率が際立って高くなっています。

もちろん、作り込みのよさもあります。

どの企業でも独自の要件を持っています。この要件は、企業で働く従業員の暗黙知を反映したものである、とも言い換えることができるでしょう。

終身雇用・年功序列が当たり前で、ビジネスを国内だけで展開していて、市場の変化も今ほど激しくなかった時代は、例えコストと時間がかかっても、企業の独自要件に忠実にシステムを合わせて、従業員の暗黙知を反映したシステムを作ることが、企業の競争力維持のためには合理的であったと思います。

しかし、終身雇用・年功序列がなくなり、グローバルにビジネスを展開し海外で雇用した従業員もシステムを使うようになり、かつ市場も常に変化しM&A等が日常茶飯事になっている現代、コストと時間をかけて従業員の暗黙知を忠実に反映するためにシステムを作り込むことは、必ずしも合理的な選択肢ではなくなってきています。

このためには、多少の使い勝手は犠牲にしてもパッケージを採用する、ということがより合理的な選択肢になってきます。

また従来型のパッケージを使用せずに、SOAを活用することで、短期導入できるよさを活かしつつ、より柔軟に企業の様々な要件に応える方法もあります。

例えば、ビジネス・プロセスをビジネス・レベルのコンポーネントとして取り扱い、ビジネスの状況や重要度や緊急度に応じて、最適なコンポーネントを組み合わせたり、再利用したりする方法です。

このような取り組みは数年後に経営力向上という目に見える大きな企業の差別化に繋がってきます。

言うまでもなく、IT導入の目的はビジネス課題の解決です。

ここで挙げたコマツの事例では、販生在のマネジメントという明確なビジネス課題がありました。

ITを提案するベンダーも、この視点は常に忘れずに持ち続けたいものです。

2007-06-14 | カテゴリー : ビジネス | 投稿者 : takahisanagaicom

IBMの企業文化

吉田さんが「社内報が伝えるIBMのDNA」というエントリーを書かれています。

これは、同僚として、私も書かざるを得ませんね。(笑)

2011年、IBMは100周年を迎えます。

「え、IBMって、そんなに古い会社だったの?」と、意外に思われる方も多いかもしれません。

先日のエントリーでも書いたように、現在のIBMの企業文化の基盤は、トーマス・ワトソン・シニアにより1920年代から1950年代を通じて創られ、今に引き継がれています。

当然のことながら、1920年代と今とでは、IBMの商品は全く異なっています。

しかしながら、お客様にとってのIBMの価値は、お客様のビジネス課題の解決であり、この点は1世紀近く経っても変わっていません。

実際、1920年代の統計機械も、現代のハードウェア、ソフトウェア、サービス等の商品やサービスも、その価値を実現するための手段です。

言い換えると、お客様のビジネス課題を解決するためにこれらを組み合わせ、統合し、お客様のイノベーションを実現することが、IBMの価値です。

このIBMの価値を1世紀近く維持できたのは、価値観を全社員で共有してきた企業文化があってこそ、だと思います。

この価値観を共有する企業文化のおかげで、市場が激変し続けた100年間を通じて商品構成がダイナミックに変わっても、IBMは企業として存続できました。

この企業文化を維持するために、トーマス・ワトソン・シニアは繰り返しIBMの価値を従業員に語りました。これは現在のIBMの経営陣も非常に注力している点です。

吉田さんがブログに書いてくださったおかげで、会社の机の上に置いていた社内報を改めて読み直しましたが、ここにはIBMの価値や企業文化のエッセンスが凝縮されています。

ある意味、日本IBM社員にとっては永久保存版かもしれません。(笑)

2007-05-31 | カテゴリー : ビジネス | 投稿者 : takahisanagaicom

ガースナーとパルミサーノの社内講演

ちょっと古い記事ですが、日経BPの谷島さんが、「マスコミを徹底して嫌ったIBM会長」という記事を書かれています。

—(以下、引用)—

IBM会長時代の末期、ガースナー氏が日本の経営者を前に講演したことがあり、それを聞いた。40分近い講演中、ステージをゆっくり歩き回り、観衆を見渡しながら、何も見ないで見事に話し切った。講演後の来場者との質疑応答の時の表情は生き生きしていて、記者向けとは別人のようだった。

日本IBMの広報担当者に、「記者会見とは別人ですね」と言ったところ、こういう答えが返ってきた。「確かに全然違います。アナリスト向け、プレス向けの会見では非常に慎重になり、面白いことは絶対言いません。顧客向けは今日ご覧になった通りです。でも一番すごいのは社内の講演です。遠慮が全くなくなるせいか、本音がどんどん出てきて非常に面白いです」。そこで社内の講演ビデオを見せてくれるよう頼んだが、企業秘密なのか、いまだに見せてもらえない。

—(以上、引用)—

ガースナーが会長だった頃に、彼の社内講演を生で聞いたり米国での社内講演を聴く機会が何回かありましたが、確かにすごいですね。

10年程前の社内講演に参加した際には、2000人規模のホール一杯に入った日本IBM社員を前に、プロジェクターを使わず、メモも一切見ることなく、自分の思いを情熱的に語っていきました。

社員との質疑応答も、全く事前の問合せもなく、自由に質問できました。実際、私の同僚がやや技術的な質問を投げかけましたが、ガースナーは的確に自分の考える戦略を答えました。

ガースナーの後を継いだパルミサーノも、ガースナー同様、マスコミへの露出は少ないようです。しかし彼の社内講演もガースナー同様、非常に明快にIBMの戦略を本音で語りかけていきます。

彼らの思いは、ビシビシ伝わってきます。

ガースナーやパルミサーノの講演を聴いていると、IBMのような大きさの企業の舵取りを行うためには、数年単位の長期戦略をぶらすことなく、1年程度の最新の中期戦略を常に社員に語りかけていくことが、いかに大切かがよく分かります。

2007-05-26 | カテゴリー : ビジネス | 投稿者 : takahisanagaicom

妥協せず戦略を徹底すること

昨日(2007/4/16)の日本経済新聞「私の履歴書」では、セブン&アイ・ホールディングスの鈴木会長がセブン-イレブンを立ち上げた頃の話が書かれています。

戦略を冷徹なまでに徹底することの重要さが具体的に描かれており、大変勉強になります。下記、引用します。

—(以下、引用)—–

 「江東区から一歩も出るな」
 豊洲店の近隣にフランチャイズ店を集中させる。ドミナント(高密度多店舗出店)戦略は地域での認知度を高めるが、物流面でも小口配送が実現しやすくなる。

…..(中略)

 枠を外せば楽になる。しかしドミナントが実現できなければこの事業は失敗する。原則は絶対崩さない。決めた戦略は徹底する。

—(以上、引用)—–

セブン-イレブンのドミナント戦略は現在も引き継がれています。

まだ知名度が低かった設立当初に、フランチャイズ店を江東区だけで展開するという方針を徹底するのは、並大抵の努力ではできないと思います。スタート当初だからこそ、このような戦略徹底が極めて重要になるのですね。

—(以下、引用)—–

 年中無休の営業のため正月の商品配送を求めたときもそうだ。業界の常識からすれば無理難題もここに窮まれりだ。一時的に倉庫を借り、正月分を確保する苦肉の案も社内で出たが私は突き返した。

 これから先五百店、千店に増えたらどうするか。初めから仕組みをつくるべきで、困難でも取引先と交渉させた。

 断られても諦めず、お店の主人や取引先を説得する日々を重ね、一号店から二年後の七六年五月、総店舗数は百店に到達する。

—(以上、引用)—–

最初から将来の姿を想定しそれに併せて最初から仕組みを徹底して作ったこと、その上で決して諦めない忍耐強さを持ち続けたことが、この短い文章からもよく分かります。

日本人が得意な徹底した愚直さで実行し続けることに、骨太な戦略が組み合わさることで、セブン-イレブンの歴史的な成功に結び付いたのではないでしょうか?

翻って、私達自身は当初の戦略を徹底しているのか、情に負けたり状況に妥協して戦略を曲げていることはないのか、この記事から改めて考えてみるべきかもしれません。

妥協することは、高すぎる理想を現実に合わせたり、その場にいる人達への配慮のために行うことが多いと思います。必ずしも悪いことばかりではないかもしれませんが、戦略を徹底すべき時は妥協すべきではありません。

この判断は難しいものがありますが、この辺りは、最終的には鈴木会長の個性に基くリーダーシップに拠るところが大きかったのでしょう。

記事では、百店突破の記念式典での挨拶で、鈴木会長が感極まり言葉につまって涙をこぼした様子も描かれています。このようなエピソードを聞くと、ほっとしますね。

2007-04-17 | カテゴリー : ビジネス | 投稿者 : takahisanagaicom

全体最適のメジャー、個別最適の日本球界

本日(2007/04/01)の日本経済新聞の記事「米スポーツビジネス、アジア開拓急ピッチ、戦力均衡で収益拡大」で、米大リーグのスポーツビジネスへの取り組みが紹介されています。

大リーグ観客動員数は、1993年の7000万人から、野球離れを招いたストライキで1994年・1995年に5000万人に落ち込みましたが、その後立ち直り、昨年は7000万人を超えるまでになりました。

記事では、この理由の一つとして、下記を挙げています。

—(以下、引用)—

徹底した戦力均衡策がミソで、〇二年の労使協定で強化した富裕な球団から貧しい球団への収入再分配制度により、過去七年で七球団がワールドシリーズ王者になった。今年の再分配額は三億四千三百万ドルに上る。シーズン終盤まで目が離せない仕組みだ。

—(以上、引用)—

1994年の危機で、大リーグをより面白くするために、戦力均衡を図れる仕組みを導入し、全体最適を図ったということのようです。

翻って日本のプロ野球では、言うまでもなくジャイアンツの意見の影響力が強く、残念ながら球界全体でこのような視点を共有していないように思います。

私も以前はジャイアンツ・ファンでしたが、長嶋監督退団後は急速にプロ野球への興味が薄れてしまいました。

ここ数年、日本球界も危機感を持ち始めていますが、抜本的な改革を図るカギは、全体最適を図っていかにお客様であるファンを惹きつけるか、という点だと思います。

球界を離れて、一般の企業でも、個別最適でうまく行っていた仕組みが限界に突き当たり、企業変革を通じて全体最適を図ろうしています。

個別最適から全体最適への移行することは、必然なのかもしれませんね。

2007-04-01 | カテゴリー : ビジネス | 投稿者 : takahisanagaicom

書評「貫徹の志 トーマス・ワトソン・シニア IBMを発明した男」

このブログでも何回かご紹介した「貫徹の志 トーマス・ワトソン・シニア IBMを発明した男」(ケビン・メイニー著、有賀裕子訳)を読了しました。500ページを超える分量で、読み応えがあります。

結論から申し上げると、とても得るものがありました。

私が勤務するIBMは、独特な企業文化を持っています。

会社の中にいると、この企業文化が会社の至る所に根付いていることがよく分かります。

この企業文化をよりよく理解する一助になればと思い、私は様々なIBMに関する書籍を読みました。

特に、先代CEOのガースナーが引退直後に書いた「巨像も踊る」は、外部から来た人の視点で、IBMの内部や企業文化について述べており、特に参考になりました。

ただ、多くの著作が現在のIBMの文化をgivenのもの(=既に与えられた前提条件)として捉えているものが多く、IBMの企業文化がどのようにして生まれ育っていったのかについて、腹に落ちるような説明は得られませんでした。

このトーマス・ワトソン・シニアの本は、現在のIBMの企業文化の基盤が、1920年代から1950年代を通じていかに培われてきたか、徹底した調査を元に非常に克明に描いています。

IBMの企業文化が培われてきた様子を、このように克明に描いた書籍に出会ったのは、初めてです。

著者は、ワトソンの数々の遺産の中で、下記3点が特筆に値するとしています。

1.情報という種から産業を芽生えさせた

「統計機械やコンピュータはワトソンがいなくても発明・販売されていたが、それをビジネスに仕立て上げて情報処理関連の製品を企業・大学・政府・軍部に売り込む手法を編み出し」、その結果、「情報処理は一つの産業としてまとまりを保ちながら発展していった」と述べています。

2.企業文化に大いなる可能性を見出した

「ワトソン以前には、社風は経営陣が意図して育て慈しみ分析することはなかったのに対し、ワトソンは明快で躍動感あふれる社風を培い、どうすれば新たな息吹を吹き込めるかに絶えず心を砕いていた」と述べています。

3.企業経営者が著名人(セレブ)として扱われるさきがけとなった

「ワトソンはIBMが小粒だった当時からすでに著名人の仲間入りを果たしており、名を上げるための努力を惜しまなかった」と述べています。

また、本書では、ガースナーの著書「巨像も踊る」のガースナーの言葉を引用しています。

「IBMでの日々をとおして痛感した。企業文化は数ある要素の一つではなく、これこそがすべてを決めるのだと。…..突き詰めていけば組織とは、一人ひとりの価値を生み出す力が積み重なったものにほかならない」

このIBMの企業文化を生みだす企業遺伝子を理解する上で、本書は大変参考になると思います。

2007-03-04 | カテゴリー : ビジネス | 投稿者 : takahisanagaicom

従業員満足が、顧客満足に繋がる

ある美容室を経営している企業のビデオを見ました。

この会社は創業10年で社員80名。年間100%成長を続けていますので、ご存知の方もいらっしゃるかもしれません。

急成長をしていますが、売上中心主義ではありません。むしろ、数字はあまり気にしていません。「中身がよければ売上は自然とついてくる」という考え方です。

社長によると、昔は売上中心主義で続けたところ全然ダメだったそうですが、人を育てることを中心に考えるようにしたところ、売上げが大きく成長するようになったそうです。

学ぶところが非常に多かったので、特に気になったポイントをご紹介します。

  • お客様は技術だけを求めているのではない。それ以上のモノ、ふれあいを求めている。そのために必要なのは人の魅力作り。魅力的な人は、やはり売上げも上がっている。

私は美容業界にはあまり詳しくはありませんが、本来はこの業界では技術が非常に重要なのではないかと思います。ただ、単に技術を持っているよりも、お客様との密接な関係(Customer Intimacy)の方がさらに重要で、そのためにはそこで働く人が魅力的な人でなければならない、ということです。

これはIT業界にも全く同様に当てはまるのではないでしょうか?

  • 月一回の朝のミーティングで、感動的な本の一節を皆で音読。

これはビデオを見ていて、非常に印象が強かった部分です。いかにもイマ風の20代の若者が集まって、最初は半分テレながらコピーで配られた本の一節を一人ずつ読んでいますが、そのうち涙を拭いながら読み進むようになります。

実際、泣ける人と売上げの上がる人は一致するとのこと。これは、相手に共感できる力=共感力があるか、ということなのではないでしょうか?

いかに魅力的で「共感力」を持つ人達を育てようとしているかが、この場面で伝わってきました。

  • 働く人のことを考える。そうしないと、お客様はファンにならない。

Customer Satisfactionのためには、Employee Satisfactionを考えなければならない、ということです。

確かに、働く人が本当に楽しそうにしていないと、お客様も楽しくないですし、ファンになり得ません。

チャーチルが、

誠実でなければ人を動かすことはできない。
人を感動させるには、自分が心の底から感動しなければならない。
自分が涙を流さなければ、人の涙を誘うことはできない。
自分が信じなければ、人を信じさせることはできない。

と言った通りですね。

  • 若い人たちにとっては、毎日が自分との闘い。それを支えるのは先輩である。

この会社では、若い人達と先輩がそれこそ家族のように非常に仲良く仕事をしています。ある若い人は、「人生の悩みを先輩に相談したら5分で解決した」と感動しながら話しています。昔は上司や先輩に人生の悩みを相談するケースも多かったと思いますが、最近の企業ではなかなかこのようなことはないのではないでしょうか?

考えてみたら、「人を育てるのが企業の役目」というのは、かつての日本の企業のよさでもあったと思います。

もちろん、このようなよさを持ち続けている企業も多いと思いますが、現代こそ、改めて考え直したいですね。

いま改めて、ドラッガーが語る「ITより重要なもの」を考える

ITProの『ピーター・ドラッカー氏が指摘する「ITより重要なもの」』は、2003年のインタビュー記事ですが、今見ても全く色褪せていないばかりか、ここでの指摘はますます重要になってきています。

記事は12ページにも渡る力作ですが、自分への備忘録の意味も兼ねて、気になった点をサマリーします。

—(以下、引用)—

●もっとも重要なのは、「労働力構造の変化」と「人口」。日本にとって特に重要。

●先進国にとって、来る10年における大きな課題は、会社で働くすべてのナレッジ・ワーカーをマネジメントする方針を確立し、生産性を上げることで。彼らの多くは、法的にはその会社の社員ではない。また、自分の知識をどのようにして仕事に活かそうかと考えるが、会社の使命についてはあまり真剣に考えていない。彼らが、自らの仕事を会社の共通の目標に向けていくようにしなければならない。現在、我々はその方法を学んではいるが、まだ分かっていない。

●だから、労働力の変化は情報の変化より重要。情報やITはツールに過ぎない。専門性を持つナレッジ・ワーカーの仕事内容に経営側は口出しできない。

●テクノロジストまたはナレッジ・ワーカーにとって重要な情報とは、外部の情報。もっとも重要な外部情報の一つが「非顧客(ノン・ユーザー)」の情報。他に重要な外部情報としては、自分の顧客、自分の市場、見込み客、見込み市場、競合会社の情報。もっとも難しいこととして、最新かつ今までと異なるテクノロジーの情報が必要。

●変化は常に顧客ではなく、非顧客の間に起こっている。新しい顧客は購入方法も違うし、それが新しい市場となる。従って何よりも非顧客を観察する必要がある。インターネットはそのような情報を教えてくれない。

●だからこそトップは、外部の情報を必要とし、外部の情報を体系化すべき。しかし外部情報の体系化に真剣に取り組んでいる人や企業はまだ非常に少ないのが現実。経営側にとって最も困難なことは、市場の変化を認識すること。

●中国の最大の弱点は教育を受けた人材が不足している点。一方、中国の最大の強みは、その素晴らしい労働力。彼らは非常に素早く物事を学び、命令に従うよう訓練されている。また彼らは、行政上の問題、そして広大な土地における輸送問題を解決することに慣れている。

●初めての製品を中国で発売しないこと。売るのは完全に成熟した製品のみにすべき。なぜなら製品の改良に慣れていないから。

●過去50年ほどにおける日本の大きな強みは終身雇用。現在、日本は柔軟な雇用が必要な時代に突入している。日本の政府は日銀は、大量の失業者を出さないと決めており、できるだけ長く今のシステムを続けていくとしている。日本は変化させる必要がある。

●日本人は、意外と日本の輸出量が非常に少ないことを知らない。国際取引は日本のGDPの8%で主要国と比較してもかなり低い。ドイツは40%、米国は12%。純粋に国内でビジネスをしている中規模企業が大量に存在する。これらの企業が国際的に競争することを学ばなければいけない。

●現在、日本の大企業数社の生産性は、他国の会社、米国企業やドイツ企業の生産性を大きく上回っている。日本はこれを武器に戦うべき。日本は中国と比較して、1時間当たり3倍から4倍の仕事結果を得られるだろう。

●全ての企業は、世界で自分達が一番になれる分野は何か、じっくり考える必要がある。何が自分達を差別化し、傑出した存在にできるか。一部の日本企業はその答えを既に見つけている。例えばトヨタは自らの主な強みを生産と位置づけ、それについて考え抜くことについて、世界のほとんどの企業よりも抜きん出ている

—(以上、引用)—

今回は以上です。

緻密な計画よりも、大雑把な計画の方がうまくいくらしい

米国人とプロジェクトを進める場合、あまりにも計画が大雑把すぎて、当惑する方も多いのではないでしょうか? 実は私もそうでした。

実際、米国でのプロジェクトの進め方を大雑把に述べると、

  • 大体の方向性のベクトルを合わせて、とりあえず始めてみる
  • 進捗状況のチェックポイントのスケジュールを予め決めておき、そこで適宜方向修正する
  • チェックポイントでは、必ずしも詳細な資料は求められない。(口頭の説明でもOKの場合が多い)
  • 途中でゴール設定そのものが修正されることもある

こんな感じなので、プロジェクト責任者に半年後のプランを聞くと、「こんな感じ」と非常に大まかな方向性のみについて説明を受けることが多く、より詳しい説明を求めてもちゃんとした回答が得られません。

「こういう場合、どうするのか?」「こうなった場合のシナリオは?」と尋ねても、「オー、グッド・クエスチョン。でも決まっていない」という回答が返って来るのがほとんどです。

「いいのか?それで…」と思ったりしますが、とにかくプロジェクトを始めてしまいます。そして、それなりの成果を出してしまいます。

一方で、日本での進め方はこんな感じではないでしょうか?

  • 市場状況、競合状況、お客様状況等をキッチリと時間をかけて把握する
  • 詳細な戦略・戦術をキッチリと作る
  • 関係者と十分な根回しを行う
  • その上で、実行に移す

実行に移すまでに時間がかかり、かつ、当初立てた戦略・戦術はなかなか変えません。市場の変化に柔軟に対応できないこともよくあります。

何故、米国ではこのようなスタイルになったのか、米国人に聞く機会がありました。

彼によると、このようなスタイルになったのは第二次大戦後だそうです。詳細な戦術計画を持つ部隊よりも、大まかでも柔軟性を持つ戦術計画を持つ部隊の方が勝率が高かったことが分かり、これがきっかけだったそうです。

ちなみに、第二次大戦の米国陸軍で活躍したパットン将軍も、"A good plan implemented today is better than a perfect plan implemented tomorrow"と述べています。

一方で、田坂広志さんは、著書「まず、戦略思考を変えよ」で、『「山登り」の戦略思考を捨て、「波乗り」の戦略思考を身につけよ』と述べています。(ちなみに個人的に、この本は現代の戦略に関する最高の著書の一つだと思っています)

現代の市場では「地形」そのものが刻々と変わり、「山」が突然「谷」になり、「谷」が突然「山」になってしまいます。従って「波乗り」の比喩で述べると「波乗りで向かうべき方向を定め」「乗っている波の刻々の変化を感じ取り」「波の変化に合わせて瞬時に体勢を変化させ」「波と一体になってめざすべき方向に向かっていく」戦略思考のスタイルが求められる、と田坂さんは述べています。

現代の市場の変化が激しくなってきたことで、米国のスタイルがマッチし始めている、ということなのかもしれません。

全て米国式がよい、という訳ではありませんが、このスタイルについては、我々が米国式を学ぶ価値はあるのではないかと思います。

2006-11-21 | カテゴリー : ビジネス | 投稿者 : takahisanagaicom