高収益の「消耗品ビジネス」が、消耗してしまうリスク

自宅で使用しているプリンターは小さいとは言え業務用。日々しっかり業務をサポートしてくれています。

今週末、累計5,000枚ほど印刷をした末にトナーが切れてしまいました。そこで事前に買っておいたトナーに交換しました。

このプリンターのトナー、メーカー純正品だと2万円です。消耗品は高いのですね。メーカーはこの消耗品ビジネスで結構稼いでいます。

しかし私はメーカー保証がない「汎用品」と言われるトナーを買いました。5,000円でした。アマゾンの評価もまったく問題がなかったために、プリンター購入と同時に事前に購入しておいたものです。

 

トナー交換のために箱を空けると伝票が出てきました。何かと思ったら宅配便の着払い伝票。「交換済トナーカートリッジのリサイクルにご協力ください」とのことで、配送先住所が印刷されています。返送されたカートリッジにトナーを入れて再販しているのですね。

汎用トナーを販売する会社としては、着払で700-800円程度の配送料を負担してもメーカーの純正トナーカートリッジを入手できるので、十分にペイするわけです。

ユーザーの立場としても使えるモノを捨てるのは躊躇します。送料先方負担でリサイクルしてもらえるならば、ありがたいことです。

汎用品トナーの使用についてはメーカーは非保証ですが、汎用品トナー側では「本トナー使用に伴う故障の修理費用は負担します」としています。

トナーを交換したプリンターは、全く問題なく動いています。

 

メーカーが消耗品で稼ぐ消耗品ビジネスは、ひげそりを安く販売し替え刃で稼ぐ仕組みを作ったジレットで有名になったので「ジレットモデル」とも呼ばれています。

製品本体を販売する際、消費者は価格やスペックを厳しく見るので、主導権は消費者が握っています。一方で一旦買ってしまうと、消費者は消耗品を使い続ける以外の選択肢を持ちませんので、消耗品販売の主導権はメーカーが持っています。

しかし考えてみたら、私が5年前に購入したパナソニックのひげそりは、替え刃を交換することもなく5年間順調に使えています。ひげそりの中には、消耗品が不要の商品も結構あるのです。

 

企業とって消耗品ビジネスは売上をストックビジネス化できることが魅力ですが、消耗品ビジネスと言えども、通常のビジネス同様に常に賞味期限切れのリスクにさらされています。

消耗品ビジネスと言えども、日々顧客の新しい価値を生み続けることに挑戦することが必要なのでしょう。

 

ユーカリが丘の開発に尽力されている山万様で、講演しました

昨日2014/5/30(金)の夜、ユーカリが丘を開発する山万様で、「改めて顧客中心主義について考えよう」と題して、講演を致しました。

20140530  

300名を超える社員の皆様に集まっていただきました。

 

こちらこちらに書きましたように、ちょうど1週間前にユーカリが丘を見学させていただいた経験に基づいて、下記のお話しを致しました。

・顧客中心主義の戦略思考
・ユーカリが丘の魅力を高める「ストックビジネス化」
・現状維持は破滅

皆様、真摯な姿勢でご参加いただき、本当に有り難い限りです。

 

講演後、山万さんの嶋田社長と役員の皆様と、お食事をしながら色々とお話しをお伺いしました。

今回、都合により参加いただけなかった社員の方々もおられますので、来週も2回の講演を予定しております。

 

講演は、経営者やビジネスパーソンがどのようなことでお悩みになっているかを理解し、そのお悩みにどのようにお応えすればよいかを考える上で、私自身、とても勉強させていただける貴重な機会でもあります。

このような機会をいただき、感謝致します。
 

なお、明日6月1日(日) 19:00-20:55のNHK BS1「”里山資本主義”が日本を変える」で、ユーカリが丘が取り上げられる予定です。詳しくはこちら

 

【連載サマリー】

2014/05/23 奇跡のニュータウン、ユーカリが丘に行ってきました (1)

2014/05/24 奇跡のニュータウン、ユーカリが丘に行ってきました (2)

2014/05/25 奇跡のニュータウン、ユーカリが丘に行ってきました (3)

2014/05/31 ユーカリが丘の開発に尽力されている山万様で、講演しました

2014/06/07 山万様で、第三回目の講演を行いました。3日間で計570名が参加されました

2014/06/09  「進化し続ける人や企業は、謙虚にならざるを得ない」…山万様の嶋田社長から学んだ、謙虚さの意味

 

奇跡のニュータウン、ユーカリが丘に行ってきました (3)

一昨日昨日の続きです。

2014/5/22(木)、ユーカリが丘に行ってみました。(「ユーカリが丘って何?」という方は、一昨日のブログを参照ください)

昨日のブログではその途中までご紹介しましたが、今日はマンションからです。

 

マンションの入り口です。通路に屋根が付いていますが、駅からずっと屋根があり、雨でも濡れずにマンションに入ることができます。共用の広い庭もあり、バーベキューが出来たり、ドッグヤードがあったり、子供用の滑り台もあります。

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このマンションの2階には免震施設があり、大地震で揺れを抑える仕組みになっています。

 

マンションの入り口は、事前に住んでいる人の顔を登録しておいて、顔認証で入ることができます。

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大地震などで家族がバラバラに帰宅する際などは、この顔認証のデータを元に、外出先でも家族が帰宅したかどうかをチェックできる仕組みになっているそうです。

後述する自家発電もありますので、災害の際でも、家族がこのマンションに戻っていれば安心です。

 

エレベータには「ペット」ボタンがあります。

このマンションはペット可なのですが、中にはペットが嫌いな方もいます。そこでペットと一緒にエレベータに乗る際には、このボタンを押しておけばペットが乗っていることがわかるので、ペットがダメな方が一緒に乗るのを避けられるということです。(まだ引っ越しが完了していないので、エレベータの中は養生しています)

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29階で街を眺望できる共用スペースに案内をいただきました。まさに絶景。ユーカリが丘線が一周している様子を見ることができます。

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上の写真の左側にある森は、ユーカリが丘の中で発掘された縄文都市遺跡(井野長割遺跡)。ここは4000年前の縄文時代に栄えた集落でした。国の史跡として指定されています。下の写真はその森のアップです。

3000-4000年前にこの森の中にあった集落と、そこで生活してた人々のことに思いを馳せると、感慨深いものがありますね。

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30階にある分譲中のモデルルームを見せていただきました。素晴らしい眺めです。

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昨日のブログで立ち寄った様子をご紹介した街ギャラリーが、十字交差点の左上に見えます。

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このマンションは自家発電施設も持っています。電力供給がカットされても大丈夫。

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ユーカリが丘の北側にある宮の杜公園にも案内をいただきました。自然の野山は昔からの田畑が残っているこのあたりは、まるで信州の山や森の中にいるような清々しい香りが漂います。真ん中には池があります。ここの噴水も太陽光発電で動いています。

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ユーカリが丘には、日本では数少ない建て売りのログハウスも分譲しています。個人のご自宅なので今回ログハウスは撮影はしませんでしたが、まるで別荘のような趣きでした。キャンピングカーを持っている家も多くありました。

東京から1時間強の距離にも関わらず空気もきれいですし、まさに「毎日、別荘から東京に勤務する」といった感覚です。

 

横にある広場とマンションです。画面左の森の中には古くからある神社があります。初詣はここで済ます人も多いとか。

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宮の杜地区にも、山万さんがユーカリが丘で運営するいくつかの保育園の一つがあります。

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ユーカリが丘の駅まで戻ってきました。ここにも「総合子育て支援センター」があります。年間300円払えば、色々なプログラムに参加できます。

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写真は撮っていませんが、街の北側には様々な高齢者向け施設もあります。

保育園と高齢者施設を統合した幼老統合施設の認可も3年かけて取得し、世代を超えた交流を積極的に行っています。子どもたちはエネルギーがあります。元気な幼児と触れあうことは高齢者にとってとてもいいことですし、子どもたちにとっても小さい頃からグループホームにいる高齢者と触れあう経験を通じてやさしさや思いやりを学ぶこともできます。

農場も経営する予定で、ビニールハウスを建てる計画もあるそうです。

ユーカリが丘では、街全体で高齢者と子どもに優しい街作りをされています。

 

他にも実に多くのところを案内していただきました。今回写真でご紹介したのはそのうちのごく一部です。すべてご紹介できないのが残念ですが、プライバシーの関係で住民の方が特定できる写真は撮らないようにしておりましたので、何とぞご容赦ください。

 

街全体で、考えられる限りあらゆる点で「サステイナビリティ」を追求なさっておられる様子がとても強く印象に残りました。

民間のデベロッパーである山万さんが、方針をぶらさずに、開発計画に着手した1971年以来、40年以上、街作りのためにひたすら積み重ねてきた集大成が、ユーカリが丘にあります。

すべて山万さんが管理なさっていることに加え、「住民の皆さんの役に立ちたい」という社員一人一人の強い想いがあることが、色々な施設や仕組みを見ていて伝わってきました。

 

松下電器(現・パナソニック)創業者の松下幸之助氏は、「利益追求が企業の最大命題ではない。企業に大きな利益が与えられるのは、さらに大きな社会貢献を為せとの世の声だ」と語っています。

■サステイナビリティとは自然保護の問題だけでない。あらゆる面で考えていくことが必要である。

■ビジネスとして利益を上げ続けることが、継続性ある『ユーカリが丘の魅力向上』に繋がる。

ということをビジネスの現場で学ぶことができた、貴重な半日でした

 

半日かけてユーカリが丘をご案内してくださった、山万株式会社の高橋常務(右側)と野口取締役(左側)です。

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お忙しい中、本当にありがとうございました!

 

実は来週と再来週、山万グループ社員の皆様に講演する機会をいただきました。

「講演の前に、ユーカリが丘についてしっかり学んでおこう」ということで、今回の見学をご快諾いただきました。

山万さんの社員の皆様にお目にかかれるのが楽しみです。

 

【連載サマリー】

2014/05/23 奇跡のニュータウン、ユーカリが丘に行ってきました (1)

2014/05/24 奇跡のニュータウン、ユーカリが丘に行ってきました (2)

2014/05/25 奇跡のニュータウン、ユーカリが丘に行ってきました (3)

2014/05/31 ユーカリが丘の開発に尽力されている山万様で、講演しました

2014/06/03 山万様で、第二回目の講演を行いました

2014/06/07 山万様で、第三回目の講演を行いました。3日間で計570名が参加されました

2014/06/09  「進化し続ける人や企業は、謙虚にならざるを得ない」…山万様の嶋田社長から学んだ、謙虚さの意味

 
 

奇跡のニュータウン、ユーカリが丘に行ってきました (2)

昨日のブログの続きです。

一昨日(2014/5/22)、ユーカリが丘に行ってみました。(「ユーカリが丘って何?」という方は、昨日のブログを参照ください)

たまプラーザの自宅を朝6時に出て、半蔵門線→東西線→京成本線と乗り継いで、朝8時過ぎにユーカリが丘駅に到着しました。

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この駅の周りはイオンなどの商業施設もあって賑やかです。ホテルもあります。ホテルのカフェに入ってコーヒーを飲んでいたところ、タイからの観光客が大勢朝食を食べていました。国際色豊かです。

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9時過ぎに山万株式会社の高橋常務と野口取締役がお見えになりました。

「タイのお客さんが沢山いますね」とお話ししたところ、このホテルは成田空港から電車で直通20分余りの駅に直結していて交通の便がよく、商業施設で買い物もできるため、東南アジアからの観光客に人気だそうです。

確かに成田へ行くホテルの多くは、バスを使ったり、電車の駅を降りて結構歩くことが多いので、納得です。

ちなみにこのホテルも山万さんの運営です。

 

当日午前の予定を高橋常務からご説明を伺い、9時15分発のユーカリが丘線に乗りました。モノレールのように見えますが、実はゴムタイヤで軌道を走る新交通システムです。この鉄道も山万さんの運営。この日の運転士は入社3年目の女性で、この方も山万さんの社員です。

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ユーカリが丘の真ん中には田畑が残されています。電車からも田園風景が見えます。私が子どもの頃は鎌倉に住んでいて野山を駆け回っていましたが、現代でも同じ環境が東京から1時間強にあるここには残されています。

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ユーカリが丘線を1周して、ユーカリが丘街ギャラリーに案内をいただきました。

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この町では屋外の自販機の上に太陽電池が搭載されています。

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募金もできます。山万さんの社会福祉協議会に寄付されます。寄付金付き自販機は初めて見ました。

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メッセージが表示される自販機も多くあります。災害時などのメッセージボードになります。

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街ギャラリーの横には、電気自動車用の給電スタンドもあります。

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街ギャラリーの横には、山万さんの社員がユーカリが丘の各家庭を巡回する電気自動車も駐車していました。給電中でした。

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ユーカリが丘ではかなり早い時期から、最近言われるようになったいわゆる「サステイナビリティ」を実に様々な面で追求しています。様々な技術も先行して投入し、検証しながらチューンアップされているという印象を受けました。

ここからは京成高速バスも出ています。東京駅まで1時間ほどだそうです。

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コミュニティバスもあります。ユーカリが丘では、どの家からも徒歩10分以内で駅に行けますが、歳を取るとそれでも結構遠く感じます。そこで試験的にコミュニティバスを運行しています。ルート上であれば運転手さんに声をかければどこでも降りることができるそうです。ルート上に自宅があれば、自宅の前にもつけてくれます。これも山万さんの運営です。

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街ギャラリーの中では、ユーカリが丘全体の模型をみせていただきました。こんな模型、実は大好きです。

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これは北から見た様子。

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こちらは商業施設とマンション群。この白いマンションは現在入居中だそうです。

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だいぶ長くなりましたので、続きはまた明日。明日は、この上の写真にある白いマンションの上に上がった様子をご紹介します。
 

【連載サマリー】

2014/05/23 奇跡のニュータウン、ユーカリが丘に行ってきました (1)

2014/05/24 奇跡のニュータウン、ユーカリが丘に行ってきました (2)

2014/05/25 奇跡のニュータウン、ユーカリが丘に行ってきました (3)

2014/05/31 ユーカリが丘の開発に尽力されている山万様で、講演しました

2014/06/03 山万様で、第二回目の講演を行いました

2014/06/07 山万様で、第三回目の講演を行いました。3日間で計570名が参加されました

2014/06/09  「進化し続ける人や企業は、謙虚にならざるを得ない」…山万様の嶋田社長から学んだ、謙虚さの意味

  

ティーザー広告で、世の中の評判がどうなるかを考えてみた

昨日のエントリーでGodzillaのティーザー広告について書きました。そこで改めて、ティーザー広告がその商品やサービスの世の中での評判(社会的評価)に与える効果について考えてみました。

まず「社会的な評価」は、下記の式で定義します。

 社会的な評価 = 一人一人の顧客満足 × 顧客数

そして上記のうち、「一人の顧客満足」は、下記で定義します。

 顧客満足 = 知覚価値 ー 事前期待値

昨日も書いたように、「ティーザー」とは「じらし」という意味です。「ティーザー広告」とは、商品発表前に、商品そのものは見せず、少しずつ見せてじらしながら顧客の興味を高めていく手法です。

ティーザー広告は、顧客の事前期待値を上げてしまう効果があります。先ほどの通り、

 顧客満足 = 知覚価値 ー 事前期待値

なので、事前期待値が上がり過ぎると顧客満足は下がります。期待値が知覚価値を超えてしまったりすると、「期待を裏切られた」となる訳です。

これを絵にすると、こんな感じでしょうか?

ピンクの面積(重なり含む)が、ティーザー広告を行わない場合の社会的な評価、黄色の面積(重なり含む)が、ティーザー広告を行った場合の社会的な評価です。

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このように考えると、ティーザー広告で考えるべきは、「いかに事前期待値を過度に上げすぎず、顧客リーチを広げるか」ということではないかと思います。

ただ最近は、消費者はティーザーという手法がストレスや反感を消費者に与えているとも言われています。実施にあたっては注意も必要ですし、誇大広告は論外です。

 

たとえば「予告編ですごく期待したのに、残念だった」という映画は、過度に期待を煽りすぎた予告編で、事前期待値を上げ過ぎた結果です。

「お客さんが沢山来て売上が上がればOK」と考える方もおられるかもしれませんが、このようなことを繰り返して「残念」と感じた方が増えることは、長期的に考えると、決して望ましい結果にはならないはずです。

今回のGodzilla予告編のように、お客さんも楽しめるようなティーザー広告が望ましいのでしょうね。

(注:正確に言えば、映画のようなサービス財の場合は商品理解・支出・消費のタイミングが同じタイミングなので、商品理解の後に支出・消費が行われるカメラや車といった非サービス財のティーザー広告とは若干性格が異なります)

 

私も、常にお客様の期待を上回るようにしたい、と改めて思います。

 

昨日、全米公開されたGodzilla予告編&ティーザーを集めてみた。そしてティーザーについて考えてみた

ハリウッド版Godzillaが5/16に米国で公開されました。

かねてより様々な予告編やティーザー動画が少しずつ公開されています。

色々なバージョンの予告編があり、似たようなものでも微妙に異なっていたり、ゴジラ以外の怪獣もチラッと映っていたりして、ついつい見入ってしまう方もおられるのではないでしょうか?

そこでYouTubeで動画を拾ってみました。

これは色々な予告編を集めたもの。似たようなものでも、少しずつ出てくる場面が違います。最後にゴジラ登場のコミカルなCMがあったりします。(しかし不思議なことに、下記の静止画像に出てくる多足怪獣は、この動画には出てこないようですね)

これは5分ものの予告編。

これは上記のいずれにも入っていない動画。ラドンのような怪獣が飛翔しています。

これは中国語版。上記にない場面が多く掲載されています。

 

こちらは東宝のGODZILLAサイトに掲載されているYouTube動画。字幕付きです。



 

一般の方が自作された日本版ゴジラ風BGMと組み合わせた予告編もあります。これも風情があります。

 

「ティーザー」とは「じらし」という意味です。発表前に、商品そのものは見せず、少しずつ見せて顧客の興味を高めていく手法です。

確かに”Godzilla”はまさにチラ見の予告編ばかりで、しかも似たようなものでも少しずつ変えています。

商品力が極めて強い場合、「ティーザー」は需要を大きく喚起し話題性を獲得する上で極めて有効です。

ただしティーザーは顧客の事前期待値をもの凄く上げてしまう効果があるので、商品力がさほど強くない場合、顧客は期待を裏切られてしまうために満足度が極めて下がってしまいます。

つまりティーザーは、逆効果になるリスクも抱えています。「予告編でとても期待したけど、期待はずれだった」となり、低評価になる映画がこのパターンですね。

 
 
現在全米公開中の”Godzilla”については、Wikipediaで詳しく紹介されています。(5/17時点ではストーリーは掲載されていません )→リンク

 

ちなみに、”Godzilla”日本語版は7月25日公開です。

 

「プロフェッショナルの視点」(畑哲郎監修)にインタビュー記事を掲載いただきました

2014/5/10に出版された「プロフェッショナルの視点」(畑哲郎監修)にインタビュー記事を掲載いただきました。

こんな感じでp.12-38に掲載いただいています。

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これは2012/7/29に「ベストセラーズチャンネル」の放送でインタビューいただいたことがご縁で、インタビュー内容を元に構成されたものです。→放送の様子はこちら

有り難いですね。

ご尽力をいただいた皆様には、感謝申し上げます。

 

 

ランダル・ストロス著「Yコンビネータ」…起業家精神とは何かを学べる本

「Yコンビネーター シリコンバレー最強のスタートアップ養成スクール」(ランダル・ストロス著)を読了しました。

「Yコンビネーター」(以下、YCと略す)とは、シリコンバレーの起業家養成スクール。本書はこのYCの3ヶ月間の活動に密着したノンフィクションです。

合格率3%を突破した、スタンフォード、MIT、UCバークレーなどの在校生や卒業生からなる64チームが、3ヶ月間かけて、自分たちの事業を立ち上げるために、「デモ・デー」と言われる数百人の投資家へのプレゼンを目指して、寝食を忘れて働き続けます。

各チームの事業は、「デモ・デー」では投資されるかどうかが決まります。

つまりYCは単なるスクールではありません。YCではシーズン毎に3ヶ月間、このようにリアルなお金を投資し、参加者はアドバイスを受けながら、自分の人生をかけて事業立ち上げに挑みます。

YCは基本的に、スタートアップの事業立ち上げのために、少数株と交換で、シード資金を投資として提供する「エンジェル投資」です。ただ実際に成功するのは100件のうち数件というのが現実。投資時点ではどの事業が成功するかはわかりません。そこで定期的に多数のスタートアップに同時に投資し、かつ徹底的にアドバイスをする仕組みになっているのです。

このYCからは、あのドロップボックスも生まれています。

 

本書を読んで、現代のシリコンバレーにおける起業がどのように行われているのか、その一端を知ることができました。

いくつか抜粋します。

—(以下、引用)—

10年前にはソフトウェアスタートアップがベンチャーキャピタルから資金を得るためには、創業者には業界での長い経験が求められるのが普通だった。また起業には高価なサーバーやデータベースソフトの購入、人材の採用のために数百万ドルを必要とした。現在のYC傘下の起業家たちには情熱とプログラミング能力以外何も必要ではない。

—(以上、引用)—

クラウド登場によりサーバーを所有する必要がなくなり、さらにシステムやソフトウェアも進化したことで、多くの場合、投資額は自分たちの人件費がまかなえれば事業が立ち上がる環境になり、起業の状況も変わってきています。

 

また投資案件を決める基準も、興味深く思いました。

YCでは、創業者たちが成功に必要な資質を備えていると思えるならば、アイデアに弱点があっても大目に許しています。

そして思考の試行錯誤が必要なので、立ち上げるビジネスは途中で変わってもOK。提供しようとするサービスやプロダクトの内容も、頻繁に変わります。

 

起業に適した年齢は、「学部学生よりは多少成熟しているものの、まだ家のローンや子育ての重荷を背負っていない」こと。つまり25歳前後。このことについても書かれています。

—(以下、引用)—

スタートアップを始めてもたぶん失敗するだろう。ほとんどのスタートアップは失敗する。それがベンチャー・ビジネスの本質だ。しかし失敗を受け入れる余裕があるなら、失敗の確率が90%ある事業に取り組んでも判断ミスにはならない。40歳になって養わなければならない家族がある状態での失敗は深刻な事態になる。しかしきみたちは22歳だ。失敗してもそれがどうした?22歳で在学中にスタートアップに挑戦して失敗したとしても、23歳の一文無しになるだけだ。そして得難い経験を積み、ずっと賢くなっていくだろう。これが私が呼びかけている学生向けプログラムの概要だ。

—(以上、引用)—

なぜ25歳なのかについても書かれています。

—(以下、引用)—

25歳はスタミナ、貧乏、根なし草性、同僚、無知といった起業に必要なあらゆる利点を備えている。

—(以上、引用)—

新卒一括採用などの仕組みもある日本と直接の比較はできませんが、米国のスタートアップの考え方がよくわかる一文だと思いました。

 

—(以下、引用)—

「まず一般的に言って、失敗を隠すな。きみたちがどんな失敗をしたって金を返せとは言わん。」

….

「期日までに仕事ができないと上司に『おい、遅れているぞ』と叱られる。そのままいつまでも仕事が終わらなければ最後にはクビにされるかもしれない。しかしわれわれはきみたちをクビにはしない。しかし市場がきみたちをクビにする。」

—(以上、引用)—

このあたりは、リスクマネーとはどのようなものなのかがわかる部分です。

 

—(以下、引用)—

「実は過去にイライラして口うるさくしたことがないではない。しかし何の訳にも立たなかった。まずい仕事をする人間はいつまでたってもまずい仕事をし続ける。泳ぎを覚えられるか、それともおぼれるか、だ。われわれはきみたちを手助けする。きみたちが望むならわれわれは喜んで手助けする。しかしきみたちがどこか見当はずれな方向にさまよい出てしまっても、われわれはきみたちの襟首をつかんで引っ張り戻したりはしない。これまで成功したスタートアップはみな一切脇目をしないチームだった。寝る、食う、運動する以外はプログラミングしどうしだった。」

—(以上、引用)—

ベンチャーの世界では、何が正しいかわかりません。「これは確実、大丈夫」と思ったアイデアが大失敗し、「これはダメでしょ」と思ったアイデアが思わぬ成功を収めます。だから失敗も多い半面、成功した場合は大きな見返りが得られます。変化が激しい環境では、口うるさく「こうあるべき」と言っても実は間違っているかも知れません。事実に対する謙虚さが求められるのですね。

 

—(以下、引用)—

アメリカの有権者は「アメリカ国民は全体として世界でもっとも起業家精神に富んでいる」と言う。グレアムはそれに強く反論する。彼の意見では、他の国で欠けているのは起業家精神ではなく、多くの創業者が集中する場所だという。そういう場所では多くの人々が起業家として成功する姿を目の前で見られるので起業へのモチベー

「100円のコーラを1000円で売る方法」タイ語版”สาวมั่นกับชั้นเชิงการตลาด”完成しました。

「100円のコーラを1000円で売る方法」のタイ語版が、昨日自宅に届きました。(表紙の左上には日本語タイトルも書かれています)

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バリュープロポジションの図も、ちゃんとタイ語になっています。

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タイ語版の発売は今年3月31日。こちらのサイトで中身の一部もご覧になれます。

 

これで「100円のコーラ..」は、日本語、韓国語、中国繁体語、タイ語の4カ国語になりました。有り難いことですね。

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ご尽力いただいた関係者の皆様に、感謝申し上げます。

 

 

自費出版の「バリュープロポジション戦略50の作法」、増刷決定。4刷目。累計6,000部

2011年3月に自費出版した「バリュープロポジション戦略50の作法」を重版することに致しました。

今回で4刷目。1,000部増刷して累計6,000部。

自費出版としては、かなり多くの方々に読んでいただいた本になったのではないでしょうか?

 

ここ1年間は毎月数十部のペースで売れており、2月頃に在庫が200部を切った時点で、増刷するか、一旦廃刊にするかを検討していました。

不思議なご縁があるものです。ちょうど検討していたその時、ある大手企業様から「幹部の人材育成で推薦図書にしたいと思っています。自費出版とのことですが、在庫は確保できますか?」とのお問い合わせをいただきました。

ご要望にお応えするために増刷することにしました。多くの方々に読んでいただけるのは、有り難いことですね。

 

5月中には増刷を完了し、再び自宅で1,000部分の在庫を持つことになります。ということで自宅のスペースを確保しているところです。

 

人類の歴史は、リスクへの挑戦の歴史

類人猿から人類が枝分かれしたのは、500万年ほど前、アフリカだと言われています。

当時、私たち人類の祖先は、森林の樹上で豊富な食料に恵まれて生活していました。しかし環境が激変して食料が減った時、快適だった樹上から下りて、勇気を持ってサバンナで直立二足歩行を始め、自由になった前肢を手として使い始めたことで、人類として進化を始めた、という説があります。(*注)

一方でリスクを取らなかった類人猿は、当時と同じ姿で森林の樹の上で暮らしています。しかしその森林は少なくなり、生活圏は狭まっています。

 

あえてリスクを取り、未知の世界に踏み出し、未来を築いていく。

この大切さは、現代でも変わりません。

たとえば企業はともすると、自社が得意な製品にこだわってしまう傾向があります。

しかし現在販売中の製品やサービスは、かつてお客様の課題を解決するために開発されたものです。お客様は常に変化しており、かつてのお客様の課題は変わっているかもしれません。

もし現在私たちが得意としている製品が「過去の栄光」になっているのであれば、新しい課題に挑戦することが必要です。

もちろん、挑戦しないことも選択の一つではあります。

ただ長い目で見ると、樹上で生活している類人猿の生活圏が狭まったのと同じ事が起こるかもしれません。

 

常に新しいことに挑戦することで、私たちの未来が開けるのだと思います。

(*注:人類の誕生については、他にも色々な説があるようです)

 

「目的は何で、どんな問題があり、その原因は何で、解決にはどうすることが現実的か」

2014/4/29に日本経済新聞に掲載された「私の課長時代」で、日本精工の大塚紀男社長が、後に会長になる当時の上司だった経理部長の関谷哲夫氏に、若手の頃に鍛えられたことを回想しておられます。

—(以下、引用)—

 例えば資料を作って持っていくと「分析はわかった。おまえはどうすればいいと思うんだ」と突き返されました。徐々に『目的は何で、どんな問題があり、その原因は何で、解決にはどうすることが現実的か』を考える癖がつきました。『どうするか』がないと仕事は完結しない。私の考え方の基礎となっています。

—(以上、引用)—

 目的は何で、
 どんな問題があり、
 その原因は何で、
 解決にはどうすることが現実的か

これはまさに現在、私も常に自分自身に問いかけ、ビジネスの課題を考える場合にクライアント様と考えていることです。

 

しかしこのことを頭で知識として理解するだけでは使えません。実際に日々の仕事で考え抜き、実務を通してまさに「身につける」ことが必要です。

私の場合、マーケティングマネージャーとして自分が担当する事業分野の課題を考え抜いた際に、実務を通じてこの考え方が自然に身についてきました。

大塚社長も、若い頃からこのように常に考える癖を身につけ、実務で実践し続けたことで、僭越ながら、ご自身のビジネスパーソンとしての成長のスピードが格段に高まったのではないかと推察します。

 

常に考え続けたいことですね。

 

藤沢久美著「なぜ、川崎モデルは成功したのか?」…日本ならではのオープンイノベーションの姿が、ここにある

藤沢久美著「なぜ、川崎モデルは成功したのか?」を読了しました。

 

この本と出会えて「よかった」と思いました。元気になるからです。

 

そもそも「川崎モデル」とは何でしょうか?本書のオビには、次のように書かれています。

—(以下、オビから引用)—

川崎市から始まる 政府・省庁も注目 新・中小企業支援。

異色公務員集団が大企業や金融機関を巻き込みものづくりの町・川崎市を元気にする!
話題のオープン・イノベーションの最前線!

戦略は、「密着」「おせっかい」「キャラバン隊」

—(以上、引用)—-

本書では川崎モデルの様々な事例が紹介されています。たとえば、ある企業のケース。

墓石業を営むある会社は、川崎市からデザインコンペにエントリーすることを勧められました。そこでこの会社はガラス墓石の開発を検討しました。

そのことを知った川崎市のキャラバン隊の担当者は、ガラス工芸を手がける市内の事業者を紹介。ガラスを使った新たな墓石「シルエット」が誕生し、デザインコンペで優秀賞を受賞しました。(キャラバン隊とは、実際に企業に出向き、支援施策の情報を提供したり、連携先を紹介したりと、色々と世話をする川崎市のチームのことです)

さらにキャラバン隊は販売のために、市内のガラス工芸作家を集めて「メモリアルガラス研究会」を発足し、「かわさきガラスのお墓」が誕生、国の地域資源の認定を受け、この墓石の販売は拡大しています。

本書では、次のように書いています。

「社外の異分野の人々との協働の場を作り、これまでの常識を覆す新たな商品を生み出した。まさにオープンイノベーションだ」(p.210-211)

 

「役所がこんなことまでするのか!?」と驚かれる方もいるのではないでしょうか?この原動力が、熱い想いを持った、川崎市の公務員の方々です。

本書では、藤沢さんの優しい視線で、この川崎モデルに取り組まれてきた人たちの様子が丁寧に描かれています。

 

実はこの川崎モデル、最初から川崎市が組織全体で始めたものではありません。

1990年代中頃、中小企業についてまったくの門外漢だった若手中堅職員が、川崎市の中小企業が置かれた厳しい現実を知り、まず勉強会を立ち上げました。その熱い想いに共鳴した数名の職員が中小企業経営者の訪問や勉強会を繰り返して、徐々に育てていったものです。

現在の川崎市では考えられないことですが、当初は組織としての反対もありました。

たとえば、ものづくり企業の共同体である「ものづくり共和国」のために補助金を申請しようとすると、「共和国は会社ではないので、申請はまかりならん」。

川崎市のサイトからリンクを張ろうとすると「一企業だけにリンクを張るのは不公平なのでまかりならん」。

しかし今では、中小企業の支援をしているコーディネータは、川崎市だけでなく、国や都道府県の補助金までみつけて、申請支援をすることもあります。

もし「自分たちのミッションは、川崎市の中小企業の支援施策の活用推進だ」と考えると、ちょっとあり得ない行動かもしれません。

しかし「自分たちのミッションは、産業育成によるよりよき社会の実現だ」と考えると、至極まっとうな行動です。

自分たちのミッションを考え抜いて、メンバーで共有しているのです。

 

一人一人の熱い想いが大きな動きを生み出し、「川崎モデル」を作り上げている様子を、本書では様々な事例を通じて、活き活きと描いています。たとえば、このように書かれた一節があります。

「『官民連携』という言葉はどこでも耳にするが、連携の肝は人の交流。そして現場で一緒に本気で汗を流すこと。そして学びあうことだと、川崎市と関わる金融機関の皆さんが体験を通じて教えてくれた」(p.193-194)

コーディネーターには成功報酬はありませんが、中小企業支援のためなら徹夜も厭わないし、面倒な作業にも嫌な顔一つせずに取り組みます。その理由は、まさに「志」。コーディネーターのある一人は、このように語っています。

「喜んでもらえるのがうれしくて、喜んでもらえるために、いろいろとしてしまう」(p.72)

「働くとは、どういう意味なのか」ということを考えるきっかけをいただき、元気にさせてくれます。

 

「この本と出会えてよかった」と思った理由は、先の「読むと元気になる」ことに加えて、もう一つあります。

それは本書がアイデアの宝庫であること。現場で格闘してきた人たちならではの、ビジネスの知恵が散りばめられています。是非ご紹介したいのですが、ネタバレになってしまうので、当ブログでは割愛させていただきます。

  

本書には、日本ならではのオープンイノベーションの姿が描かれています。折りを見て、読み返していきたい本だと思いました。

 

藤沢さんは「社長Talk」という社長とのインタビューを、2006年7月14日の第一回放送以来毎週欠かさず続けておられます。→これまでのアーカイブ

また「藤沢久美の社長Talk News」というメルマガも、このたび配信200回を超えました。→登録はこちら

藤沢さんが積み重ねてこられた、この膨大な日々の蓄積があってこそ生まれた骨太な本なのだと実感します。

 

コンビニコーヒー、引き続き成長中

本日2014/4/29の日本経済新聞に、「コンビニコーヒー13億杯 大手5社、14年度の販売倍増」という記事が掲載されています。

この記事によると、昨年ブレイクしたコンビニコーヒーは、今年も成長し続けています。

2013年、コンビニコーヒーは全国で7億杯売れました。うちセブンカフェは4.5億杯。

2014年の各社の販売計画は、13億杯です。うちセブンカフェは6億杯。

セブンでは、全店舗の6割にあたる9,000店舗でコーヒーマシン2台を体制にし、さらに夏には一店舗当たりの販売能力を100杯から150杯に引き上げるために、アイス用氷を供給する小久保製氷冷蔵も工場を増強するそうです。

ミニストップもポット保温方式から1杯ずつ抽出する方式に変更、ファミマもSサイズを120円から100円に値下げします。

 

コンビニ各社がコンビニコーヒーに力を入れるのは、「ついで買い」効果のためです。菓子パンなどを一緒に買う人が多いためです。セブンも1万店舗で菓子パンコーナーを3割広げて、コーヒー売り場の近くに移動します。

 

記事では併せて、コンビニコーヒー利用者が、どの購入を減らしたかも報告しています。

缶コーヒーなどが大きな影響を受けていますが、カフェやファストフードの購入を減らすとした人も少なくありません。

一方で、スタバのような「第三の場所」として認知されているカフェでは、相変わらず行列ができています。

コンビニコーヒーのおかげで、安い手軽なコーヒーを求める顧客が広がる一方で、より上質な美味しさを求める消費者もいます。

また私自身をふり返っても、出かける先によって自分が行くカフェは決まっています。コーヒーは習慣性があるので、お気に入りのカフェが決まれば、消費者はなかなか変えようとしないのですね。

 

コーヒービジネスに魅力を感じている企業は多いのは、消費者の固定化が図れるという効果が大きいためです。

最近のコーヒー業界の動きを見ていると、まさに「マーケティングを学べる事例の宝庫だ」と実感します。

 

5回目の完成原稿ができました。あと3-4回

昨年末から時間をかけて、次回作に取りかかっています。

1週間ほど集中して、昨晩ほぼ完成原稿ができました。

とは言え、この「ほぼ完成原稿」が出来たのは、これで5回目です。

恐らくこれからさらに3-4回、完成原稿を作り続けます。

 

どうしてこうなるのかと言うと、

1.色々と調べて構想する
2.大まかなプロットを作る
3.2.に基づいて、じっくり書く
4.見直して、納得いくレベルの完成原稿にする
5.しばらく放置する。身近な人たちにもチェックしてもらう
6.再度チェックして、修正すべき点を確認する
7.1に戻る

というプロセスを、何回も繰り返しているからです。

納得いくレベルの原稿を作っても、あとで見直すと、結構、アラが多いものです。

また、第三者の視点でチェックすると、気が付かなかった点も色々と出てきます。この場合、相手の指摘は一切否定せずにいったん全て受け容れ、自分の中である程度の時間をかけてじっくり消化することが必要です。第三者の視点は読者の視点でもあり、とても重要ですし、本はいったん出版したらほとんど修正できないからです。

絵にすると、いつも講演でお話ししている螺旋状のPDCAを何回も回しているイメージです。

Pdca

これを回す回数が多いほど、いいものができるのです。

しばらくこの作業が続きそうです。
 

  

「恋するフォーチュンクッキー」を進化させた、「ISETAN-TAN-TAN」で考える、企業における広報活動と広告活動

あのAKB48「恋するフォーチュンクッキー」は、実に色々な企業が挑戦して広がっています。私が永年お世話になった日本IBMもチャレンジしています。

一方で、新しい試みもあります。

この動画では、矢野顕子さん作詞作曲のオリジナル曲「ISETAN-TAN-TAN」で、世界中の伊勢丹の従業員の皆さんが踊っています。

オリジナル曲+オリジナル振り付けで行うあたり、さすが伊勢丹です。

このように、企業で働く人たち一人一人が見えるコミュニケーションって、どんな会社かがよくわかりますし、身近に感じられていいですね。

オリジナル曲やオリジナル振り付けで行うのはお金がとてもかかりますし、社員の皆様も準備が大変かと思いますが、考えてみると、従来型の宣伝や広告もかなりお金がかかります。

費用対効果を考えた場合、こんなアプローチも親近感が沸きますし、現時点では新鮮ですし、より効果が高いかもしれません。

今後企業がこのようにメッセージを出すケースが、増えてくるように思います。

 

これまで広報活動では、企業がメディアに対してメッセージを出し、メディアがそれを解釈・加工して、社会や個人にメッセージを出していました。

一方で広告・宣伝活動では、企業がメッセージを作り、それをそのままマスメディア経由で個人に届けていました。

ソーシャルメディアの時代になり、企業がメディア企業を介さずに直接顧客にメッセージを届けられるようになりました。

現代において、広報と広告・宣伝の境界は次第に薄れつつあることを、「恋するフォーチュンクッキー」や「ISETAN-TAN-TAN」はわかりやすく見せてくれています。

 

テレビの視聴時間が、急激に減少中?

InternetWatchに、総務省情報通信政策研究所が4/15に発表した「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」の速報結果が掲載されています。

40代・50代がテレビ離れ開始か? 10代・20代はSNS時間倍増、メールを逆転

この調査によると、2012年から2013年にかけて、テレビの視聴時間は次のように変わっています。

(n=3000)
全体 184.7分 →168.3分 (-16.4分/- 9%
10代 102.9分 →102.5分 (- 0.4分/- 0%)
20代 121.2分 →127.2分 (+ 6.0分/+ 5%)
30代 158.9分 →157.6分 (– 1.3分/- 1%)
40代 187.4分 →143.4分 (-44.0分/-23%)
50代 219.2分 →176.7分 (-43.5分/-19%)
60代 263.0分 →257.0分 (– 6.0分/- 2%)

一方で、ネット利用時間は次のように変わっています。

全体  71.6分 → 77.9分 (+ 6.3分/+ 9%)
10代 108.9分 → 99.1分 (– 9.8分/- 9%)
20代 112.5分 →136.7分 (+24.2分/+22%)
30代  76.5分 → 87.8分 (+11.3分/+15%)
40代  74.6分 → 70.0分 (– 4.6分/- 6%)
50代  51.3分 → 61.8分 (+10.5分/+20%)
60代  33.9分 → 36.7分 (+ 2.8分/+ 8%)

20代では既にネット利用時間がテレビ視聴時間を上回っています。

1年間で全体で-9%、特定世代で-20%の減少は、極めて大きな変動です。

また、平成25年6月の「青少年のインターネット利用と依存傾向に関する調査」(n=2609)によると、「スマートフォンを持ったことによる時間の変化」で短くなった時間では、スマホ所有者の29.2%が「テレビを見る時間」をあげていて、これは減った項目の第一位になっています。

 

私は「顧客中心主義」のテーマで講演する際に、テレビの使い方を事例にしてお話しすることがよくあります。

その際に、会場におられる参加者に「この10年間でテレビを見る時間が増えた方は挙手ください」と聞くと、挙手する方はほぼゼロ。多くても1名いるかどうか。一方で、「減った方は?」と聞くと挙手する方はほぼ8割。

これは、これまで20回以上の講演で全て同じ傾向でした。

記事では、この調査は2012年と2013年の2回しか実施していないため、「忙しい」などの要因でテレビ視聴時間が減った可能性も否定できない、としています。しかしながら、これら調査結果は、私の実感と整合性があります。

 

既に前々から言われてきたことではありますが、メディアとしてのテレビの役割は、現在進行形で急速に変わっています。

マーケティングコミュニケーションで成果を出さなければならないあらゆる企業にとって、メディア活用方法の見直しが急務になってくると思います。

 

アマゾンは、あらゆる消費者体験を革新しようとしている

アマゾンのニュースを数多く目にするようになりました。

ここ数日のニュースに限っても、…

『「Amazon Dash」はネットショッピングに革命を起こしそう』

Amazon Dashを一言で言うと「買い物専用インプットデバイス」。

商品のバーコードを読み取り、注文できます。現在はPC経由。将来的にはこのデバイスが単独で直接ネットに繋がり、消費者が商品を手にしてバーコードを読み取った途端に直接注文できるようになっていく可能性が高いのではないでしょうか。

 

『「Amazon Prime Air」のドローンは第6世代試作機の飛行テスト中、第8世代が設計段階』

ドローン(無人航空機)を使って注文後30分以内に配達することを目指している「Amazon Prime Air」は、2015年の実現を目指しています。

一見ホラ話に思えますが、アマゾンは真剣に取り組んでいます。既に試作機の飛行テスト中で、2kg強の荷物を抱えて16km飛行できるだけの能力とバッテリーを搭載しようとしています。

 

『Amazon Fire TV について知っておくべき10のポイント』

99ドルのセットトップボックスです。テレビを見ていて、「これ買いたい」と思う場面は多いと思います。その際の購買の手間を大きく削減することになるのではないでしょうか?

 

(4/14 7:30AM追記) ■アマゾン、6月にもスマホ発表―9月末までの出荷目指す

Amazonはスマホ販売を検討していると報じられています。これも消費者がスマホ経由で購買することを考えると、アマゾンにとって自然な流れなのかも知れません。

 
 

数多くの消費者が日常的にアマゾン経由で購買するようになると、購買取次をするアマゾンの収益は莫大なものになります。

消費者を増やせば増やすほど、儲かります。

消費者を増やすためには、入り口の敷居をなるべく低くすること。

たとえば、Amazon DashやAmazon Fire TVのデバイスを無料で配布したり、Amazon Prime Airを極めて低料金で提供することで、将来的には莫大なキャッシュフローが得られます。

まさに消耗品の「ジレットモデル」に近い収益モデルを構築できる訳ですね。

 

ちなみに、日本国内ですが、最近もこんなニュースもありました。

『Amazon.co.jpが酒類の直販に参入 ビールや日本酒など5000種以上』

クール便対応などが行われるようになると、従来の酒屋のビジネスは変革を迫られそうです。

 

最近のアマゾンは、小売ビジネスにおけるある種の「クリティカルマス」を越えた感じがあります。

消費者の購買体験をより容易に簡単にすることにより購買機会を増やすために、廉価な最新テクノロジーを活用して、考えられうる様々な方法を展開しているように見えます。

 

ここしばらくの間は、アマゾンの動きから目を離せない状況が続きそうです。

(4/14 7:30AM追記) …赤字部分

 

「人とカネは無限にあると考えよ!」

DIAMONDハーバードビジネスレビューのウェブ連載記事「盛田昭夫 グローバル・リーダーはいかにして生まれたか」第10回目「人とカネは無限にあると考えよ!」で、トリニトロン開発責任者だった井深さんの考え方を、当時開発スタッフだった唐澤英安さん次のようにまとめれておられます。(「フレキシブルPERT法」と名付けています)

①時間は競争優位に立つ唯一の条件である
②おカネは無限にあると考えよ
③人も人材も無限にあると考えよ
④制限条件に頼って発想するな。制限条件は挑戦の対象としてモデルを作れ
⑤前例は常に打破すべきであり、従うことは恥

トリニトロンは1968年に発表されました。既に46年前です。

しかしこの方法論は、現代でも通用する重要な考え方だと思います。

たとえば、我々はともすると、与えられた予算内で新規プロジェクトを定義し、進めようと考えがちです。

たしかに予算内で納めなければならない場合も多いでしょう。しかし一方で、売上が未知数の新製品などの場合は、価値を最大化する方が優先順位が高い場合があります。

予算などの制約条件のことはいったん忘れて考えるべきケースが多いのもまた事実です。

そしてそのようなプロジェクトには、不思議とヒト・モノ・カネが集まってきたりします。

 

改めて自分が進めている仕事を、この5つに照らし合わせて考えてみたいと思います。

 

昨晩、ITmedia エグゼクティブ勉強会で講演+ワークショップを行いました

昨晩(2014/4/10(木) 18:30-20:00)、ITmedia エグゼクティブ勉強会で講演+ワークショップを行いました。

参加者は約40名。企業の管理職の方々がメインでした。

Itme20140410  

昨年来の講演やワークショップの学びを活かして、今回から、構成を若干変えました。

講演「顧客中心主義の戦略思考」 (40分)
ワークショップ「私たちの価値は何か?」(30分)
講演「コアとなる強みは何か」(20分)

ワークショップは、バリュープロポジション(お客様が買う理由)をご自身の業務に当てはめて考えていただき、発表をいただくスタイルになっています。

これまで実施してきたワークショップでは、「バリュープロポジションは、顧客から最初に考えるべきなのか、自社の強みから考えるべきなのか」というご質問をよくいただいていました。

実際には、「コアとなる強みをいかに把握し、それを活かせる顧客要望を踏まえて、どのような製品を開発し、市場開発していくか」という流れになります。

そこで今回から、「自社の強み→対象顧客→顧客の課題→バリュープロポジション」の順番で考えていただくように変更しました。

これに伴い、チェックリストや事例も変更しました。

その上で、「コアとなる強みは何か」を具体例でご紹介し、理解を深めていただく内容にしています。

実施後のアンケートでいただいたご感想からも、「今回のワークショップの方法論を、会社で役立てたい」というご意見を多数いただきました。

「社内研修などでこのワークショップを使ってみます」
「10年後に向けた事業戦略策定のツールとして役立てます」
「自社の強み(コアとなる技術)をいかに顧客要望につなげるか、再度強みを抽出し、どんな応用ができるかを考え提案していきたい」
「事例がわかりやすく本質の理解が進んだ。発想の転換のポイントがあるということに気づかされた」
「一方的な情報だけでなくワークショップで脳が刺激されました」
「『私たちの価値は何か?』のフレームワークは活用したいと思います」
「顧客絶対主義になっていたことが大きな気づきです。他社に勝てるコア技術をすぐに気づかないのが弊社の弱点かもしれません。部門内で本日のセミナー尚陽を共有し、企画に活かすようにします」
「企画に従事していますので最大限活用させていただきます。コアの見極め、難しいけれども取り組むしかないな、と」
「大変勉強になりました。得意先に対して商談を担当しておりますが、価格競争にまきこまれている状況も事実あります。顧客中心主義な思考に切り替えていく努力をしていこうと思います」

このスタイルでワークショップを初めて実施しましたが、企業の現場でお悩みのリーダーの方々が抱えておられる問題解決に、この手法が有効であることがわかりました。

今後、展開していきたいと思います。

ご参加された皆様には、感謝です。

 

 

学んだことや秘訣は、どんどんオープンにする

自分が学んだことや秘訣は、情報としてどんどん公開していくべきと考え、このブログでも書いています。

 

「自分だけのモノにとどめて、公開すべきではない」という考え方もあるかもしれません。それも一つの考え方でしょう。

また、企業のトップシークレットなどは厳重に守る必要がありますので、厳密に言えばケースバイケースになることもあろうかと思います。

たとえば私も、執筆中の著書については、版元の出版社とお話しした上で、公開しても問題ない段階(多くは出版の数週間前)で当ブログでご紹介しています。それは出版社から見ると、執筆中の著書は機密情報でもあるからです。

 

一方で物理的なモノは「共有すると価値を減じる」性質を持っていますが、情報は「共有することで価値が上がる」という性質を持っています。

また、もしすべてをオープンにして、それ以外に何も残っていなければ、それはたいした強みを持っていないことの裏返しとも言えます。しかし本当の強みなのであれば、実際にはそんなことはないはずです。それはどうしても公開できない暗黙知のようなものであったりします。

むしろオープンにすることで、色々な人たちからの情報がどんどん入ってくるようになり、自分の強みもさらに強化できるようになると実感しています。

そしてそれは、学び続けることが前提になると思います。

 

ということで、差し支えがない範囲で、学んだことや秘訣といった情報は、どんどん公開するといいのではないか、と思っております。

 

4月16日発売の「図解 100円のコーラを1000円で売る方法」、見本が完成!

昨日、KADOKAWA中経出版様から、見本いただきました。

表紙はこんな感じ。

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裏表紙はこちら。網羅されている理論や、コーラシリーズ読者の皆様のご感想も紹介されています。

Photo_2  

中身はこんな感じ。

2    

見開き2ページで1テーマをご紹介し、30テーマを、全96ページの薄い本に、図解でコンパクトにまとめています。

コーラシリーズ全3巻に収録されている幅広い最新ビジネス理論のキモを、クイックにわかりやすく学べる、かなりお得感がある本だと思います。

若手ビジネスパーソンは仕事の学びのために、経験豊富なビジネスパーソンの方は知識の棚卸しに、学生の皆様は社会勉強に、お役立ていただけるかと思います。

1週間後の4月16日に発売開始。アマゾンでも予約受付中です。
 

 

供給過剰が終焉し、需要が上回った。だから今こそ、価値創造が大切

本日2014/4/8の日本経済新聞のコラム「一目均衡」で、編集委員の西條都夫が「供給過剰時代の終焉」というコラムを書いておられます。

内容をサマリーすると、1990年代初頭のバブル崩壊後に、雇用・設備・債務の「3つの過剰」が流行語になったのを皮切りに、過去四半世紀の日本の課題は「供給過剰」にどう対処するかでした。それがここに来て、状況が大きく変わっている、という話です。

「雇用」は、幅広い業種で人手不足が深刻。

「設備」も、再編やリストラによる調整が進行。鉄鋼業界は大手2社に集約され、4年前には月産100万台を超えていたテレビの国内生産も5万台程度まで急激に縮小。

「債務」も、むしろ日本企業の「現金ため込み体質」が批判されようになりました。

 

先日の当ブログで、「需要をいかに科学して「お客様が買う理由」を作り上げるか?」というエントリーを書きました。

このエントリーでCCC社長・増田宗昭さんの「今は需要と供給は逆転、供給が圧倒的に大きい。今の日本に一番欠けているのは、需要を科学し、需要力を上げること」とおっしゃった発言を引用させていただきました。

供給が需要を下回ったのであれば、「それじゃぁ、問題解決じゃん。よかったぁ!」と思いがちです。

しかし、当コラムでは、西條さんは次のように締め括っておられます。

—(以下、引用)—

企業経営者にとっては別の課題が浮上する。過剰を削り、身を縮めることが経営の主軸だった時代が終わり、新しい価値の創造がこれまで以上に求められることになる。

—(以上、引用)—

 

需要が供給を上回ったのに、なぜ「新しい価値の創造」が必要なのでしょうか?

その一つのヒントが、本日2014/4/8の日経記事「アマゾン、酒類を直販 6000品目スーパー並みに安く 」に書かれています。

即日配送で8割、翌日配送なら9割の地域をカバーできるアマゾンの流通網は、酒類小売店にとって脅威です。アマゾンは次々と事業領域を広げ、顧客需要を吸収し、成長し続けています。

このアマゾンに代表されるように、高い価値を提供する業者(特に海外のライバル)が次々と現れているので、供給不足の状況になっても、顧客は、従来業者ではなく、より高い価値を提供する新しいライバルへと、容易に流れてしまうのです。

消費者でもある自分自身の行動を振り返ってみると、よくわかるかも知れませんね。

「需要が供給を上回り始めた」ということは、「より高い価値を提供するライバルが成長するスピードが速まる=市場シェアを奪われる」ということでもあるのです。

 

過去の歴史を考えてみると、人類は常に新しい価値を創造し、進化し続けてきました。

たとえば、馬車で移動するのが当たり前だった時代がありました。しかし「需要が供給を上回っている」と考えて馬車のビジネスに安住していたら、蒸気機関車や自動車のイノベーションは生まれなかったでしょう。

 

需要が供給を上回るようになった今こそ、「新しい価値の創造」を考えることは、ますます大切になっていると思います。

 

実はボツになったかもしれない、歴史的写真

この雑誌の表紙写真をご覧になって、覚えている方は、多いのではないでしょうか?

これは、「National Geographic史上、もっとも有名」と言われている「アフガンの少女」の写真です。当時のソ連(現・ロシア)がアフガニスタンに侵攻した1984年に撮影され、1985年6月号に掲載されました。

このアフガン難民の12歳の女の子は、ソ連軍の爆撃で両親を失い、祖国を追われているところを、撮影されました。

 

戦争の悲惨さを世界に訴えた歴史的写真であり、一度見ると忘れられない写真ですが、実は「表紙にはキツすぎる」と言われ、他にも色々と反対があり、ボツになりかけた写真だそうです。

その経緯を書いた記事が、National Geographicのサイトに掲載されています。(記事は2013年10月のもの)

実はボツ写真だった史上もっとも有名な「アフガンの少女」

企業は、顧客の反応を予想したり想像しながら、何を提供するかを常に考えています。大コケする場合もあれば、思わぬ大ヒットになることもあります。

「アフガンの少女」の経緯を知り、改めて、難しいものだと思いました。

 

ちなみにこの「アフガンの少女」を撮影したスティーブ・マッカリー氏が、東日本大震災で撮影した写真もあります。→こちら

 

写真の力は偉大です。

 

需要をいかに科学して「お客様が買う理由」を作り上げるか?

日経ビジネスオンラインに掲載されていた、カルチュア・コンビニエンス・クラブ社長・増田宗昭さんと、川島 蓉子さんの対談を拝読しました。
    
「今、一番ダメな経営とは、「効率を求める」こと」

ポイントは、

昔はモノがなく作れば売れた。
最初から需要=お客さんがいた。
効率を上げれば利益率が高くなり儲かった。

今は需要と供給は逆転、供給が圧倒的に大きい。
今の日本に一番欠けているのは、需要を科学し、需要力を上げること

ということですね。

 

「需要を科学する」というのは、「お客様が買う理由を作る」、つまりバリュープロポジションを創造する、ということでもあります。

多くの方々に「100円のコーラを1000円で売る方法」を読んでいただいたのも、恐らくこの「需要を科学すること」、あるいは「バリュープロポジションの考え方」を、世の中が必要としているからではないか、と思います。

一方で現在、世の中のニーズは、「バリュープロポジションの考え方は理解した。では具体的に、どのようにそれを作っていけば良いのか」という段階にステップアップしているように感じています。

そのためには、自社の強みを把握した上で、それを必要とするお客様を開発していくことが必要なのではないか、と思っています。

 

近々、何らかの形でご紹介できるようにできれば、と思います。

 

「100円のコーラを1000円で売る方法」3巻分をギュッと1冊に凝縮した図解版を、4月16日に上梓します

「100円のコーラを1000円で売る方法」同2同3の全3巻では、下記のマーケティング理論・経営理論を紹介しました。

市場志向の事業定義、顧客ロイヤルティ、マーケットリーダー・マーケットチャレンジャーの戦略、ポーターの競争戦略、ブルーオーシャン戦略、バリュープロポジション、マーケティングミックスの設計、チャネル戦略、EDLP戦略、統合マーケティングコミュニケーション、イノベーター理論、キャズム理論、クライゼヴィッツ戦争論、失敗の本質、ランチェスター弱者の戦略・強者の戦略、孫子の兵法、仮説検証思考、論点思考、PDCA、ダイバーシティ、ニッチマーケティング、創発戦略、組織的知識創造、イノベーションのジレンマ、グローバライゼーション、サービス製造業の概念、ソーシャルメディア、フリーミアム、買収戦略、BATNA、企業文化、オープン戦略

 

これらの理論を100ページに凝縮した図解版が、4月16日に出版されます。

【図解】100円のコーラを1000円で売る方法

大人気コーラシリーズ3巻分をギュッと1冊の「図解」に凝縮!!

『100円のコーラを1000円で売る方法』3巻分のビジネス理論を1冊に! 「キシリトールガムが売れた理由」などエピソード満載でマーケティングから競争戦略、イノベーションまでMBAビジネス理論が身につく!

 

既に下記サイトで予約受付も開始しています。

アマゾン

e-hon

楽天ブックス

BookWalker

セブンネットショッピング

 

本書では、見開き2ページで1トピックのスタイルで、図解を使ってわかりやすく解説しました。

すぐに理解いただけるように、新たに図と解説文も作成しています。

本シリーズを既に読まれた方は、理解を深める上で役立つと思います。

また本シリーズをまだ読んでいない方にとっても、ビジネスで役立つマーケティング理論・経営理論のエッセンスを押さえる上で、オススメの1冊になるかと思います。

表紙は最終デザイン中です。できましたら当ブログでご報告します。
 

 





ルンバのアイロボットCEO曰く、「日本の顧客を幸せにできれば、世界中の顧客を幸せにすることができる」

東洋経済オンラインに、こんな記事が掲載されています。

自動掃除機で独走状態、「ルンバ」強さの秘密
アイロボットCEOの描く「10年戦略」とは

本記事でアイロボットのコリン・アングルCEOは、次のようにおっしゃっています。

—(以下、引用)—

アングル氏は、「日本の顧客を幸せにできれば、世界中の顧客を幸せにすることができる」と言う。開発テストでは、畳の上をはだしで歩いて、細かい粒状のゴミが感じられないかをチェックした。

—(以上、引用)—

この考えで、新型「800シリーズ」は、日本で先行販売したそうです。

先日のブログでも書きましたように、我が家もルンバ870を購入しましたが、確かに旧型の577と比べて格段に能力が上がっています。

拙著「100円のコーラを1000円で売る方法3」では、「日本企業が成功するための解決策」として、与田誠に次のように語ってもらいました。

—(以下、p.28から引用)—

「(世界で一番レベルが高い日本の)ユーザーの要求に、個別にカスタマイズせずに標準品で対応して世界中に展開すること。意思決定のスピードを速めること。そして何よりも考えるだけでなく実行することです。」

—(以上、引用)—

これらは考え方や問題解決アプローチを変えることで出来ることです。

しかし、なかなか出来ないのが現実。クライアント様とお話ししていると、組織の問題が大きいように感じています。

逆に過去のしがらみがない新しいベンチャー企業では、このあたりはリーダーの考え方次第で、軽やかにクリアなさっているようです。

 

マーケティングの問題と、組織論は、かなり深いところで繋がっているのではないか、というのが、最近の実感です。

 

再び日本企業が世界の変革をリードし始めている…日経記事「日本企業を再評価 来日したハーバード大教授18人」から

日本経済新聞のサイトに、下記の記事が掲載されています。(有料会員限定記事です)

「日本企業を再評価 来日したハーバード大教授18人」

本記事では、ハーバードビジネススクール(HBS)教授の次の言葉が紹介されています。

ノーリア学長「日本は島国根性で停滞状況にあるといわれるが、日本を実際に訪れればそれは誤りだと分かる」

ラインハート教授「日本は世界の未来を象徴する国だ」「日本は高齢化、人口過密、資源不足、食糧問題などにいち早く直面してその解決策を模索してきた」

バーンスタイン助教授「前回に日本に来たときよりも、起業家活動が活発になっている」「HBSがミッションとして掲げているのは、世界に変革をもたらすリーダーの育成。いまの日本の企業には、そうしたリーダーが出てきている手応えを感じた」

HBSのマイケル・ポーター教授も、2011年に「クリエーティング・シェアード・バリュー(CSV)」と呼ぶ概念を打ち出し、社会と企業の共栄共存を目指すことが、これからの企業に求められると唱えています。これは松下幸之助に代表される日本の企業経営者が、昔から提唱していたことでもあります。

 

記事では動画も掲載されています。多くの日本人の経営者が、英語で堂々と自社の戦略を語っておられるのが印象的でした。

バブル崩壊後の20年間、停滞のニュースばかりが伝えられてきた日本ですが、2011年の東日本大震災や、2013年のアベノミックスが契機となり、再び世界の注目が集まり始めています。

ご興味ある方は、本記事のご一読をお勧めいたします。
 

 

お客の数が10の何乗かで、営業スタイルが変わってくる

「週刊ダイヤモンド」2014/3/22号の特集は、『速効!「営業」学』です。

本特集のp.34-36に掲載されている大前研一さんの講義がとても参考になりました。

大前さんは、

「営業の基本はお客さんの数を「10の何乗か」で、考えることです。それによって、向いている営業マンのタイプや身につけるべきスキル、また必要な経験量がまったく違います」

とおっしゃっています。

■10の0乗=1名
タイプ:日本で1人しかいない。防衛省に武器を売るようなケース
方法:過去に実績ある企業が、組織としてアプローチする。個人で営業しても相手にされない

■10の1乗=10名
タイプ:日本で10人程度。電力会社相手のようなケース
方法:20-30年の取引実績がある企業が、数年に1回新しいタービンを売るような世界。営業マン個人が出る幕はない

■10の2乗=100名
タイプ:石油会社に巨大タンカーを売るようなケース
方法:設計トップが訪問し技術面の解説をして優位性アピール。経験ある技師長が活躍する世界。技術がわからない営業では難しい

■10の3乗〜10の4乗=1,000〜1万名
タイプ:産業機械を製造業に売るようなケース
方法:30-40代の営業マンの腕の見せ所。相手先企業の収益性・生産性まで常に把握し、タイミングを見て提案。売れないときは訪問を欠かさずに続ける。性能アピールだけでなく、相手の課題を解決する能力が必要

■10の5乗=10万名
タイプ:商店にキャッシュレジスターを売るようなケース
方法:技術的議論や問題解決よりも、心の琴線に触れるコミュニケーションが大切。「今は夜遅くまで売上集計していますが、レジ導入で夕方までに終われば、ご家族と晩ご飯をご一緒できますよ」

■10の6乗〜10の7乗=100万名〜1000万名
タイプ:マスマーケティング
方法:ソーシャルメディア登場によりマスメディアの効果が薄れている。従来のマスメディアで不可能だったナローキャスティングによるマイクロマーケティングが可能になっている。(例:観覧車が空っぽならば、観覧車の上からの風景写真をソーシャルメディアに流し、GPSで半径1Km以内の人たちに「今なら半額」と呼びかける、等) お客さんの立場になって考える「バイヤーズ・エージェント」の重要性が高まる。

大前さんは、「若い人が営業力をつけたいなら、10の6乗〜10の7乗の分野で、こうしたソーシャルメディアを使った、サイバー営業力ともいうべき、新しい営業スキルを磨く方が重宝されます」とおっしゃっています。

 

自分の仕事を振り返って考えてみると、2002〜2004年にCRMのマーケティングを担当した際のお客様は大企業のコールセンター長でした。

私が把握していたお客様の数は、日本全国で1000名程度(10の3乗)。個別にお客様の会社名・部署名・住所・メールアドレスを把握した上で、全社データベースで一括管理し、2-3年間、お客様担当営業と連携して、色々なキャンペーンを実施しました。

この規模であれば、個別のお客様のお悩みや課題もよく見えます。とても面白い仕事でした。

  

お客さんの規模にあわせて営業方法を考えることは重要ですが、「10の何乗」という形でシンプルにまとめるという発想は、とてもわかりやすいと思いました。

 

 

バナナのたたき売りから考える、価格勝負の是非

簡略化のために、下記はバナナのたたき売り全業者で同じ条件という前提で考えます。

・バナナ一本の仕入れ値:1本10円 (変動費)
・叩き売りの台:台一つで1,000円 (固定費)
・上記の二つがあれば、バナナの叩き売りビジネスを開始できる

 

上記条件では、バナナ1本当たりの単位製品コストは、次のようになります。

■販売量 10本の場合
単位製品固定費100円/本 + 変動費 10円/本 = 110円

■販売量 100本の場合
単位製品固定費10円/本 + 変動費 10円/本 = 20円

■販売量 1,000本の場合
単位製品固定費1円/本 + 変動費 10円/本 = 11円

■販売量 10,000本の場合
単位製品固定費0.1円/本 + 変動費 10円/本 = 10.1円

 

販売量が少ない場合は、バナナの叩き台(固定費)の費用負担が大きくなり、単位製品コストは大きくなる。

販売量が増えれば増えるほど、バナナの叩き台(固定費)の費用負担は小さくなり、単位製品コストは少なくなる。

これは当たり前のことですよね。

さらに10,000本売る人は、大量購買をするので、仕入れ業者から特別に格安で調達できる可能性もあります。もし半額の5円/本で仕入れることができれば、バナナ1本当たりの単位製品コストは5.1円になります。

 

「叩き売りの台」=「会社の固定費(工場、店舗、施設など)」と考えれば、これは会社にも当てはまります。

沢山売る人が、一番安いコスト構造を持てる、ということです。

価格勝負をするためには大きな販売量を確保する必要があります。また逆に大量に販売しないのであれば、何らかの理由で安いコスト構造を実現していない限り、やはり価格競争は避けるべきなのです。

 

 

チャレンジして失敗から学び、成功につなげるための3ステップ

現代では、様々な新しいことにチャレンジしていくことが必要になります。

一方でチャレンジには失敗が付きもの。ともすると、失敗を恐れて、なかなかチャレンジできないのもまた、現実です。

しかし、チャレンジして失敗から学べば、成功する可能性もまた大きくなります。

「爆速経営 新生ヤフーの500日」(蛯谷敏著、日系BP社)では、ヤフー・宮坂学CEOの次の言葉を紹介しています。

「今よりも10倍挑戦して、5倍失敗して、2倍成功する」

しかし「5倍失敗する」にしても、損失はなるべく最小限にしたいものです。

具体的に、どのようにしればよいのでしょうか?

 

昨日ご紹介した、「アダプト思考」(ティム・ハーフォード著、ランダムハウスジャパン)で、この具体的な方法について触れている箇所がありましたので、ご紹介します。

—(以下、p.327から引用)—

アダプトの基本原則を企業や日常生活に応用するには3つのステップがある。…

第一に、新しいことを試す。ただし、挑戦に失敗はつきものであると覚悟しておく。

第二に、失敗しても大きな問題にならないようにする。そのためには失敗しても大丈夫な保護区をつくるか、小さなステップで少しずつ進むことだ。…ここではどのくらいの規模で実験するかを見きわめることがカギとなる。違いを生むには十分な大きさでなければいけないが、失敗したらすべてが終わってしまうようなギャンブルにしてしまってもいけない。

第三に、失敗を失敗と認める。それができなかったら、失敗から学ぶことはできない。

—(以上、引用)—-

1990年代後半、IBMが従来のビジネスを、IT活用を前提にした「eビジネス」にシフトすることを世に問うた際に、“Start Small, Grow Fast”というアプローチを提唱していました。

ハーフォードが述べた上記の3つのステップは、まさに“Start Small, Grow Fast”の具体的な方法論でもあります。

 
ハーフォードが提唱する3つのステップの中で、一番難しいのは、もしかしたら「失敗を認める」ことなのかもしれません。

ともすると私たちはなかなか失敗を認めることができません。しかし、失敗を認めない限り、次の進歩もないのですよね。

そして失敗を学ぶ際には、犯人捜しに陥ることなく、原因特定と対策立案に集中したいものです。

 


 

「ミシン1台買った人に、2台目を2割引」→このプロモーション、成功したでしょうか?

「アダプト思考 予測不能社会で成功に導くアプローチ」(ティム・ハーフォード著、ランダムハウスジャパン、2012年)に、こんな事例が出ています。

—(以下、p.343-344から引用)—-

ジョ・アン・ファブリックスという手芸用品チェーンがあっと驚くキャンペーンを打ち出した。驚くほど創造的だったり、驚くほど気前がよかったりしたわけではない。びっくりするほど下手だったのだ。ミシンを1台買ったら、もう一台を二割引でご提供します、というのである。

—(以上、引用)—

このプロモーションを見て、どう思われるでしょうか?

プロモーションの経験がある方だと、「普通、二台も買う人はいないでしょ?うまくいかないだろうな」と思われる方もおられるかもしれませんね。

実は私も、最初はそう思いました。

しかし、結果はこうでした。

—(以下、p.344から引用)—-

しかし、このキャンペーンはあっと驚く成功を収めた。

顧客にとっては、ミシンを1台につき1割引で買えるというのはとても魅力的な条件だったので、ミシンが欲しいと思っているかもしれない友人を探し始めた。つまりこの奇抜なキャンペーンは、アマチュアのセールススタッフが営業をするという予想外の結果をもたらしたのだ。

—(以上、引用)—

このキャンペーン、実はこの会社(ジョ・アン・ファブリックス)が試行錯誤を繰り返して見つけました。

サイトでいくつかのタイプのキャンペーンを試行してみた結果、この「2台目を2割引」のキャンペーンが、サイト来訪者一人当たりの売上が3倍以上に増えたのです。

 

クライアント様の現場責任者の方々とお話しする機会をよくいただくのですが、皆様の共通のお悩みが、「『考えるよりもまずは実行が大切』というのはよく分かる。しかし現実は、現場にはそんな余裕はない」というもの。

確かに人は減る一方で仕事は増えている中、私たちは厳しい環境にいます。

しかし一方で、このキャンペーンのように、日々の業務の一環として、限られた時間の中で小さな試行錯誤を沢山行って、より正しい正解を見つけることが可能な時代でもあります。

そのように正解を見つけることで、成果を劇的に向上させることも可能になります。

日々の仕事の中で、意識して小さな試行錯誤を繰り返していきたいものです。

 

 

ハイアール専門系列店が、お客さんが自分の実店舗で商品を買わずにネット店舗で買っても、全く気にしない理由

日経ビジネス2014.3.17号の特集はハイアールです。

ハイアールというと、「中国で成長中の家電メーカー」と思いがちですが、本特集、特にp.33を読んで、私は見方が大きく変わりました。

ここでは、中国のある地方にあるハイアール専門系列店の店長の言葉が紹介されています。

「店なんて完全にショールームになっちゃっていいのよ。客がネットで買えば伝票を書く必要もないし」

私たちの感覚で考えると、「店で商品を見るだけで、ネットで買われたりすると、商売あがったりだ」と思いがちです。

しかしハイアールは、強力な物流機能とネットサイトも持っており、お互いに連携しています。そして受注してから1時間程度で家まで商品を届けられることもあるそうです。

—(以下、引用)—

…中国にはハイアールよりも速く商品を届けられる企業は存在しないのだ。

その力の前には、中国のEC(電子商取引)最大手アリババグループさえも兜を脱ぐ。ハイアールは昨年アリババと提携し、アリババがネットで売った商品の配送を請け負い始めた。実店舗を持つ多くの企業がアマゾンのサイトに出店、同社の物流網で商品を届ける日本や諸外国とは、完全に立場が逆だ。

—(以下、引用)

もはや「家電メーカー」という枠を大きく超えているということですね。

記事では「『パナソニック+ヤマダ電機+ヤマト運輸+楽天』。ハイアールの機能を日本流に言うならそんな具合だろう」と述べられています。

 

本誌では、ハイアールを18ページに渡って特集しています。

ハイアールも、日本の様々な企業から学び、試行錯誤した結果、今の姿があります。

躍進するハイアールから、逆に日本企業が学べる点は多いのではないかと思います。

ご興味がある方は、本特集、ご一読をお勧めします。

 

2012年6月のPresident掲載記事「100円コーラを1000円で売る方法はあるか」が公開されました

2012年6月にPresident本誌へ掲載いただいたインタビュー記事を、President Onlineに掲載いただきました。

100円コーラを1000円で売る方法はあるか
職場の噂、巷の評判[バリュープロポジション]

思い返せば、この取材をいただいたのは2012年4月頃。もう2年前です。

当時は日本IBMのソフトウェア事業部で人材育成責任者の仕事を始めたばかりでした。「100円のコーラを1000円で売る方法」第1巻を出版して数ヶ月後でした。

日本IBMの広報担当者と相談してご同席いただき、日本IBMの箱崎本社25Fで業務の合間に取材をいただきました。

中経出版で編集をご担当なさった谷内さんにも同席をいただきました。

懐かしい記事です。

 

孫さんは、戦いを略(はぶ)く意味を理解し、それを徹底的に実践されている

昨日ご紹介した孫さんのインタビュー番組を見ていて、気が付いたことがあります。

IT業界における多くの企業をとても肯定的に捉え、「自社と共存共栄である」とアピールし、対立軸を作らないように配慮している点です。

アップルは、当然ながら賞賛しています。
マイクロソフトも、「偉大な会社だ」
グーグルも、「素晴らしい才能を持った人たちがいる」
サムソンも、「技術もあるし、情熱もある」
その他のIT企業も、「我々はIT革命インフラ事業者として、皆さんがイノベーションの花を咲かせるのを手伝いたい」

競合する米国の携帯通信事業の上位2社に対してすらも、責めることはせずに、「彼らが悪いのではない。競争する環境にないから価格を下げない。だから競争する環境を作り、切磋琢磨する」

少なくとも公の場では、ライバルと名指しするのをできる限り避けている様子がわかります。

 

「戦略」と書いて、「戦いを略(はぶ)く」と書きます。

中国春秋時代の思想家である孫武も、兵法書「孫子」の謀攻篇で、

「百戦百勝は善の善なるものに非ず。

戦わずして人の兵を屈するは善の善なるものなり」

と述べています。

一方で、最近は減ってきましたが、米国のIT業界では自社の敵を明確に名指しして、「ライバルと比較して、当社は圧倒的にここが凄い。ライバルはこんなに悪い」と明言するケースが多かったように思います。

孫さんの発言は日本人からするととても自然なことに聞こえます。しかし米国スタイルのIT企業の発言に慣れた米国人から見ると、「大人の考え方」に見えるのかもしれません。

 
改めて昨日ご紹介したBloomberg TV番組を見て、孫さんは、「戦いを略(はぶ)く」という「戦略」の意味を、よく理解しておられるように思いました。

 

デジタルドキュメントサービス研究会(D.D.S.S.)様で講演いたしました

昨日2014/3/14(金)夕方、大阪・弁天町で行われたデジタルドキュメントサービス研究会(D.D.S.S.)様の第17回通常総会の特別講演で、

顧客中心主義の戦略思考
- 現状維持は破滅。新たな顧客と市場を創り出せ! -

と題して、講演致しました。

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デジタル・ドキュメント・サービス研究会(D.D.S.S.)様は、印刷・複写・製版・DTPなどの情報サービス関連業界におられる経営者の皆様が、業界の発展に寄与する為に1997年に設立した任意団体です。

会員企業は45社。毎年活動を積み重ねて、今回の総会が17回目。

富士ゼロックス様が事務局として運営に参画、活動の支援を行っておられます。

講演に先立って行われた総会にも同席をさせていただきました。年間を通じて密度の濃い勉強会を多数実施され、スキル育成を通じて高付加価値化、現状打破にチャレンジしておられます。

業界団体として、このように20年近く中身が濃い活動を継続できるのも、日々のご努力の賜物だと思います。素晴らしいことですね。

20年近くD.D.S.S.様を事務局として支えてこられた富士ゼロックス様からも、役員の皆様が多数参加されました。全社でバックアップしておられます。

  

実は私は、昨年の第16回D.D.S.S.様総会で講演のご依頼をいただいていたのですが、当時は日本IBMに勤務しており、平日の講演だったこともあって、承れませんでした。今年、再度お声がけをいただき、講演の機会をいただきました。大変有り難いことです。

 

講演は1時間45分。内容は下記の通りでした。

(1)顧客中心主義の戦略思考
・なぜ、あなたは買ったのか?
・なぜ、顧客は買うのか?
・企業がいいと思っていても、ほとんど伝わっていないのが現状。
・目の前にいるお客様の言いなりになった末路
・お客様は、自分の問題を知らない
・価格勝負は怖い
 ①2位以下は負ける
 ②最安値目当ての顧客が集まる
 ③よき顧客は去っていく
 →価格勝負は、筋肉増強剤
・際限なき価格勝負の日々→ 本当に正しい苦労か?
・ダイエットのリバウンド
・「価格を下げる=食事を減らす」だけが解決策か?
・顧客絶対主義と顧客中心主義の違い
・強く具体的で明確な「お客様が買う理由」を作ることが大切
・それは誰も教えてくれない。自分自身で徹底的に考え抜き答えを出す

(2)現状維持は破滅
・パンフレット印刷、競合は、実はLancers? (低価格・短納期・高品質)
・3年前のクラウドソーシング原体験:価格1/20の衝撃
・真空管ラジオと、トランジスタラジオ
・新たな顧客を創造し、覇権を握ったトランジスタラジオ
・既存の顧客だけに向き合い、衰退した、真空管ラジオ
・イノベーションのジレンマ 過剰性能→価格暴落
・UCC缶コーヒーも「どこでも飲める」顧客を創造した 
・イノベーションは常に繰り返され、覇者は入れ替わる
・ジレンマ状態は「茹でガエル」。実はとても心地よい
・しかし、市場が崩壊中。数年で消え去ることもある
・常識を見直そう
 - まずは「ヒト、モノ、カネ」
 - ものづくり。個別にきめ細かくカスタマイズ
 - 違法コピーと闘い、著作権で稼ぐ
・「現状維持は破滅」(三井物産 飯島彰己社長 2012年年頭の辞)
・「新たなニーズ、未充足のニーズが私たちの現場にはまだまだあるはず」
・当たり前と思っていることに、疑問を持とう
・解決できていないお客様の課題は、何か?
・「今よりも10倍挑戦して、5倍失敗して、2倍成功する」
・失敗は、成功の母。奨励すべし。(ただし、学ぶこと)

 

今回は60名のご参加でした。半分以上は、印刷・複写・製版・DTPなどの会社を経営なさっている経営者の方々。まさに市場全体が大きく激変している大海原のまっただ中で、会社の舵取りを任されている皆様です。

講演は一方的に話しているように見えますが、実は会場におられる皆様の真剣なお気持ちも、話す側にはリアルに伝わって来ます。

講演の場を通じて、私自身、大変勉強になりました。

このような機会をいただいた富士ゼロックス様、デジタル・ドキュメント・サービス研究会(D.D.S.S.)様に感謝申し上げます。

  

速く動き、間違ったらすぐに方向修正することが、大きな競争力を生み出す

今の世の中は、すごい勢いで動いています。

場合によってはアクションが1週間遅れれば、ヒト・モノ・カネをいくらかけても取り戻すのが難しい状況に陥ってしまうこともあります。

 

たとえば私は、2011年11月に「100円のコーラを1000円で売る方法」を出版しました。

実はこの第1巻を出版する2ヶ月前、2011年9月に、第2巻第3巻の企画書を作成し、版元の中経出版様と打合せをしていました。

このおかげで、第2巻を10ヶ月後の2012年9月に、第3巻をさらに9ヶ月後の2013年6月に、それぞれ上梓できました。そして第2巻・第3巻を出すことで、第1巻も売れるという好循環を作ることができました。

もし第1巻出版の3-4ヶ月後の2012年3月頃に、「第1巻が売れたから、第2巻の企画を立てよう」と考えていたら、どうでしょう?

恐らく第2巻の出版は2013年、第3巻は現時点でも出版されていなかったでしょう。

あるいは第2巻の出版のタイミングを逸してしまい、シリーズ化は出来なかったかもしれません。

編集の方々のご協力をいただいて、企画を早めに立てて検証し、スピード感を持って前倒しで企画を進めたから、タイミングよくシリーズ化できたのですよね。

 

このように、スピードはそれ自体、大きな競争力です。

しかし、「スピードが大切」と言葉ではわかっていても、実際の自分の行動に繋げている人は、意外に少ないように思います。

 

見方を変えると、「私達は意識して速く動くだけで、凄い強みを発揮できる」、ということなのではないかな、と思います。

仮にヒト・モノ・カネが潤沢でなかったとしても、「速く動き、間違ったらすぐに方向修正する」ことを日々継続するだけでも、成功する可能性は大きく高まるのではないかと思います。

 

「自社ならではの強み」は何か?いかに育んでいくか?

「自社ならではの強み」は何か?

今年1月末に「「バリュープロポジションが大切」…と言っても、どうやってバリュープロポジションを考える?」で書いたように、その一つの方法はコア技術を考えることです。

 

たとえば、デジカメの台頭で、本業である写真フィルム市場の90%が蒸発してしまった富士フィルムでは、コア技術は「写真フィルム」ではなく、「有機材料」「無機材料」「薄膜技術」「光学」「画像」「メカ・エレキ」の6つと考えました。そして化粧品や高機能材料などに多角化を進め、高収益を維持しています。

このように考えると、「写真フィルム」はコア技術ではなく、「製品技術」であることがわかります。

 

この「コア技術」について考える際に、とても参考になる書物が、「コアコンピタンス」という考え方。

「コアコンピタンス」という考え方自体は、1990年にゲリー・ハメルらがHarvard Business Reviewに寄稿した論文”The Core Competence of the Corporation”で登場し、広まった概念です。

もう24年前の論文ですが、ここには高度成長期の絶頂にあった多くの日本企業が登場します。

 

「コアコンピタンス」の考え方は、ゲリー・ハメル著「コア・コンピタンス経営 」(日経ビジネス文庫)にまとまっています。

既に20年近く前の本ですが、「コアコンピタンス」以外にも多くのことに触れられており、学ぶことがとても多い本でした。

本書から、特にコアコンピタンスについていくつか取り上げてみたいと思います。

 

—(以下、抜粋)—

(p.72から)

製品の開発は100メートル競走のようにスピードの勝負だが、産業の発展や変革を巡る競争は、100マイルの自転車競争、遠泳競争、マラソンを合わせたトライアスロンに相当する。

—(以上、抜粋)—-

ここでは後者がコアコンピタンスに相当します。製品開発とコアコンピタンスを明確に分けて、考えることが大切であり、時間軸のとらえ方を変える必要があるのです。

ともすると私たちは「製品こそが強み」と考え勝ちですが、そうではありません。そのことについて、次のように書かれています。

—(以下、引用)—

(p.134から)
コアコンピタンスとは、もっと広い意味の顧客にとっての付加価値を意味している。たとえば、アップルコンピュータの「ユーザーフレンドリー」や、ソニーの「ポケットサイズ」、あるいはモトローラの「コードレス」などである。キヤノンにはカメラ事業、コピー機事業、プリンター事業などいろいろな事業部門がある。しかし、キヤノンが自社をそれぞれのマーケットに対応した戦略的事業部門の集まりとしてしか見ていなければ、次のカメラ、次のコピー機、次のプリンターというイノベーションしか起きない特定の製品と市場をセットで自社を定義してしまう企業は、自社の運命を市場の運命に縛りつけてしまうことになる。

(p.315から)
コアコンピタンスとは、顧客に特定の利益をもたらす一定のスキルや技術を言う。ソニーにとってその利益とは携帯性で、そのためのコアコンピタンスが小型化である。フェデラルエクスプレスが提供する利益は定時配達で、そのための高いレベルのコアコンピタンスが物流管理である。

(p.319から)
コアコンピタンスは幅広い製品やサービス全体の競争力に貢献する。この意味でコアコンピタンスはどんな特定の製品やサービスよりも上位に置かれる存在であり、また社内のどの事業部よりも大切である。

(p.364から)
空白エリアのビジネスチャンスを明らかにするには、市場ではなくコアコンピタンスから始めて、ある特定の企業力を特定の顧客にもたらす利益を利用することを考えなければならない

—(以上、引用)—-

このように考えると、コアコンピタンスは「コア技術」の集合体でもあり、事業などのコアビジネスは市場や顧客ニーズに対応できるようにコアコンピタンスを元に生まれてくるものであり、製品はコアビジネスの周りで生まれるものである、ということがわかります。

 

このコアコンピタンスは不変なのか?それについては次のように述べられています。

—(以下、引用)—

(p.336から)
一〇年単位で見たときに、ある時期にコアコンピタンスであったものが、次の時期の単なる能力の一つになってしまうことがある。

(p.244-246から)
企業の経営資源をしのぐような野心やレバレッジする力がないと、ありあまるほどの経営資源があっても戦略の決定がおろそかになりかねない。….野心が経営資源を永遠に上回っているというストレッチこそが、競争優位を生み出すエンジンの燃料である

—(以上、引用)—

つまり、コアコンピタンスは陳腐化するし賞味期限がある、ということです。

たとえばかつてのソニーは本書にあるように「小型化技術」がコアコンピタンスでしたが、今や多くの企業がこの能力を身につけてしまいました。現在のソニーの苦境は、ここにあるのかもしれません。

 

5年・10年単位で常に「自社はどうあるべきか?」を考え、自社のコアコンピタンスを見据えて、長期的にどのように伸ばしていくか考えていく。

そのためには常に背伸びをし続けていくことが必要なのでしょう。
 

 

新しいアイデアを、いかに言葉として紡ぎ出すかが大事

何か新しいアイデアや概念が生まれても、そのままではなかなか相手に理解してもらえません。

そして他の誰かに理解してもらえないことには、そのアイデアや概念は消えてしまいます。

ではどうするか?

相手が共感できる言葉にすることが大切です。

 

「コア・コンピタンス経営」 (ゲリー・ハメル著、日経ビジネス文庫)に、こんな言葉があります。

—(以下、p.159から引用)—

未来図を描く過程で一番難しいのは、それを表現する言葉を見つけることだ。

—(以上、引用)—

 

これを具体的にした言葉が、「思考 日本企業再生のためのビジネス認識論」(井関 利明, 山田 眞次郎著、学研パブリッシング)にもありました。

—(以下、p.55から引用)—

「新しい現象や事例を認識するためには、それらを表す新たな用語体系一式が必要なのです。たとえば、21世紀に入って、”ブルーオーシャン”や”ロングテール”などという用語が生まれて、初めてその用語に対応する現象が浮かび上がってきたわけです」

—(以上、引用)—

言葉を紡ぎ出すことが大事ですが、そのためには本質を理解しなければなりません。

本質を理解してこそ、誰もが「ああ、なるほど」と思えるような、わかりやすい言葉が生まれます。

 

新しいアイデアを生み出すだけではなく、その本質を理解し、いかに言葉に紡ぎ出すか?

なかなか難しい作業です。しかし、とても大切なことだと思います。
 

 

なぜ目の前に商品があるのに、その場で買おうとしないのか?—スマホが店舗まで入り込んだ今こそ、「リアル店舗の価値」を考える時期

消費者庁の「消費者意識基本調査」(2012年度)で、こんなデータがあります。(n=6,690)

Photo

つまり、

■現物を見てから買う人が70%
■同じ店舗を利用する人は2/3

ということです。

 

このデータを見る限り、実物を確認できて、しかも実際に売っているリアル店舗は有利なはずです。

しかし一方で、このようにおっしゃる方もおられます。(例えば、書店)

「お客さんは、店で商品の現物を確認して、アマゾンで購入する。困ったものだ」

本来、お客さんは既に店舗で商品を手にしているので、本来はその場で買った方が、すぐに手にして読めるはず。

しかしわざわざ店舗で買わずに、スマホや自宅のPCを使ってネットで商品を買っているのです。しかも到着は1-2日後になります。

その場で現物を見たのに、なぜお客さんはわざわざ一手間も二手間もかけて、ネットで購入するのでしょうか?

 

それはネット店舗の方が、「商品を買いたい」と思わせる何らかの価値を、リアル店舗よりも多く持っているからなのかもしれません。言い換えると、「消費者にとって、リアル店舗は、魅力がない」のです。

それは単なる利便性やポイント制度などではなく、総合的な顧客体験や信頼感といったものかもしれません。

 

例えば私は、アマゾンで購入したパソコン関連商品に不具合が発生し、商品を交換したことがあります。

コールセンターに電話したところ、応対はとても丁寧でしたし、送料もアマゾン持ちで、非常にスムーズに交換できました。

他のネット店舗ではこのようにはいきませんでした。これは私がアマゾンに信頼感を持った大きなきっかけになりました。

 

この体験から私が考えたことがあります。

恐らくアマゾンは、顧客とアマゾンが直に接するコンタクトポイントは、絶好の「アマゾン体験」を提供できる場と考え、採算度外視でサービスレベルを上げているのかもしれません。

トランザクション単位で考えるとコスト割れしているでしょう。しかしLTV(顧客生涯価値)の観点で考えると大きなプラスになっているはずです。実際私も、パソコン関連商品はアマゾンで買うことが多くなりました。

 

しかし考えてみると、リアル店舗では直接お客さんとふれあう場面ばかりです。

実際、私の近所のスターバックスは店員の方々の挨拶は徹底していますし、お客さんと親密な関係を築こうとなさっています。この店は平日の昼であってもいつも行列が出来ています。

しかしリアル店舗は、店員の方がホスピタリティあふれる店ばかりか、というと、必ずもそうではないように感じます。

当たり前のことですが、

・挨拶の徹底

・お客様との緊密な関係構築

というあたりがまずは出発点であり、魔法の解決策はないのかもしれません。

 

ネット店舗にはネット店舗ならではの、リアル店舗にはリアル店舗ならではの「価値」があります。しかしその「価値」は不変ではありません。世の中の変化に合わせて、常に進化し続ける必要があります。

スマホでリアル店舗にもネットが入り始めている今だからこそ、「リアル店舗の価値とは何か」を、改めて考え直すタイミングなのかもしれません。