天才は回数で勝負、という話

いま、デイヴィッド・ケリー/トム・ケリー著「クリエイティブ・マインドセット 想像力・好奇心・勇気が目覚める驚異の思考法」を読んでいます。

色々なことが学べる良書ですが、特に「なるほど!」と思った部分があります。

—(以下、引用)—

モーツァルトのような芸術家から、ダーウィンのような科学者まで、天才的な創造力の持ち主は、失敗の数も多い。ただ、失敗したからといって、それを挑戦をやめる口実にしないというだけだ。

……最終的に”天才的ひらめき”が訪れるのは、他の人よりも成功率が高いからではない。単に、挑戦する回数が多いだけなのだ。

……彼(エジソン)が白熱電球を発明できたのは、無数の失敗を繰り返し、学んだからだ。エジソンは、「真の成功の基準とは、24時間に詰め込める実験の数だ」と主張している。

—(以上、引用)—

「真の成功の基準とは、時間あたりの実験の数」というエジソンの言葉、重要だと思います。

人生の時間は有限です。実験できる時間は限られています。

Aさん:1週間に1回実験する
Bさん:1日1回実験する
Cさん:1日10回実験する

この3人を比べると、Cさんが成功します。長期的に見れば、圧倒的な差が付くはずです。

「失敗を恐れず、たくさんチャレンジしよう」と言うことです。

既に使い古された言葉です。

「それは今更言われなくても、よく知っている」と思う方も多いでしょう。

しかし、この言葉を愚直に実行している人は、意外と少ないのではないでしょうか?そしてその数少ない人は、成功している人もまた多いのです。

「やはり、当たり前のことを、日々愚直に行うことが大切なのだ」と、改めて思いました。

 

『モチベーション3.0』(ダニエル・ピンク著) ご褒美をあげても、アイデアがなかなか生まれない理由

『モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか』(ダニエル・ピンク著)を読了しました。

本書は、現代の企業では当たり前になってしまった外発的動機付けと、知識社会で求められる内発的動機付けについて考察した本です。

本書では、モチベーションを次の3つのバージョンに分け、主に2.0と3.0について考察しています。

モチベーション1.0…生存(サバイバル)が目的
モチベーション2.0…アメとムチ=信賞必罰に基づく与えられた動機づけ。ルーチンワーク中心の時代には有効
モチベーション3.0…自分の内面から湧き出る「やる気!」に基づく。

モチベーション2.0(アメとムチ)は、200年前の産業革命の時代に生まれ、さらに1900年代にテイラーによって科学的管理法が編み出され、現代社会に定着しています。

要は「これを達成したら、ご褒美をあげる」という方法です。単純労働のケースではこれは極めて有効でした。

 

一方で、自分が心から夢中になっていることに取り組んでいる場合、「寝ても覚めてもそのことばかり考えてしまう」「やめろと言われても、絶対やる!」という経験がありませんでしょうか?これがモチベーション3.0です。

創造的な思考が求められる知的作業では、心から「やりたい!」と思うモチベーション3.0の状態になると、大きな生産性を生みだします。

本書では、「創造的なアイデアを生みだしたら、お金をあげます」と言われると、逆に生産性が落ちてしまう例をいくつか挙げた上で、次のように紹介しています。

—(以下、p.77より引用)—

外的な報酬は、アルゴリズム的な仕事ーつまり論理的帰結を導くために、既存の常套手段に頼る仕事ーには効果があると気づいた。

だが、右脳的な仕事−柔軟な問題解決や創意工夫、概念的な理解が要求される仕事−に対しては、条件付き報酬はむしろマイナスの影響を与えるおそれがあることも明らかにした。

—(以上、引用)—-

つまりモチベーション2.0(アメとムチ)は、前者(アルゴリズム的な仕事)の場合は有効であり、後者(右脳的な仕事)に適用すると逆に生産性が落ちてしまうのです。

本書ではアメとムチの7つの欠陥についても紹介しています。

—(以下、p.93より引用)—

1.内発的動機づけを失わせる
2.かえって成果が上がらなくなる
3.創造性を蝕む
4.好ましい言動への意欲を失わせる
5.ごまかしや近道、倫理に反する行為を助長する
6.依存性がある
7.短絡思考を助長する

—(以上、引用)—

一方で日本を含む先進国では、多くのビジネスパーソンの仕事では、創造性や複雑な問題解決能力が求められます。

企業はどのように考えればよいのでしょうか?

本書では、社員が自律的にアイデアを生みだして仕事ができるような「モチベーション3.0」の環境を作って企業を成長させた、オーストラリアにあるソフトウェア会社の経営者の言葉を紹介しています。

—(以下、p.136より引用)—

「十分な給与を払わなければ、社員は会社から離れていきます。しかし、それにもまして、金銭は人に意欲を与える要因ではないのです。お金よりも重要なのは、このようにクリエイティブな人をひきつける仕組みなのです」

—(以上、引用)—

 

「成果主義って言うけど、なんとなく違うような気がする」と私たち日本人が違和感を感じていたことが、各種研究を引用しながら明確かつ論理的に体系立てて説明されている点が、本書の価値であると思います。

今後、企業の人事制度やビジネス形態は、モチベーション3.0の世界にどんどんシフトしていきます。

長期的に見ると、そうしない限り企業は優秀な人材を確保して業績を上げられないからです。

さらに新規事業開発や経営変革、企業戦略等を考える上で、会社として社員の仕事をどのようにサポートするかは、避けて通れない課題です。

その観点でも、本書は今後の企業のあり方を考える上で、参考になると思います。

 

ちなみに翻訳は大前研一さんで、とても読みやすくなっています。

 

ワーク・エンゲイジメントが高いのか?それともワークホリックか?

1980年代後半頃のこと。

当時、私は日本IBMで25歳の若手社員でした。

現在とは全く様相が異なり、IT業界全体では毎年2桁成長。仕事は沢山あり、やってもやっても終わりませんでした。

そんな当時、「団塊の世代」の私の上司Aさん(当時40代前半)は、残業が大好き。

張り切って色々な仕事を見つけて来ては、深夜まで残業を続けていました。

当時の私は、「自分の仕事はキッチリ終わりましたので、ではお先に」と帰るほどの経験もスキルも残念ながら皆無。つきあい残業をしていました。

「残業は美徳」の時代だったのですね。

当時の私は残業が苦痛で、率直にいうと「仕事が楽しい」とはなかなか思えませんでした。

そんな20代の私を見ていた、残業大好き人間のAさん。ある日飲みながらしみじみと私の目を見て、こう言いました。

「永井さん、仕事そんなに辛いかなぁ?ボクは仕事が楽しくて仕方ないなぁ」

「結構、辛いっす」

と答えながら、(うーん、Aさんはやっぱり、仕事中毒(ワーカホリック)なんだなぁ)というのが、当時の率直な感想でした。

ちなみにAさんからは「永井さんは新人類」と言われていました。当時の若者は、団塊世代の人からは「新人類」と呼ばれていたのですね。

 

こんなことを思い出したのは、DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー2014年9月号に掲載されていた島津明人さんの論文『ポジティブに働くためのコンセプト ワークエンゲイジメント:「健全な仕事人間」とは』を読んだのがきっかけです。

本論文でいう「ワーク・エンゲイジメント」とは、『「仕事に誇りややりがいを感じている」(熱意)、「仕事に熱心に取り組んでいる」(没頭)、「仕事から活力を得ていきいきとしている」(活力)の三つがそろった状態であり、バーンアウト(燃え尽き)の対概念として位置づけられている』状態です。

『ワーク・エンゲイジメントが高い人は、心身の健康度も高く、組織に愛着を感じやすく、仕事を辞めにくく、生産性も高い』としています。

 

その本論文では、こんな一節があります。

—(以下、p.36から引用)—-

ワーカホリックな人は「強迫的に」働くのに対して、エンゲイジメントの高い人は「楽しんで」働く。

…ワーク・エンゲイジメントの高い人は、内発的に動機づけられている。すなわち彼らは、仕事が楽しく、仕事にやりがいを感じ、その仕事が重要だと思い、もっと仕事をしたい(I want to work)と考えていることから、仕事に多くの時間とエネルギーを費やしている。

ところが、ワーカホリックの人はそうではない。完璧主義で、周りから期待以上の成果を常に出そうと思っているため、仕事のことが頭から離れない。また職場を離れると罪悪感を覚え、不安で落ち着かない。つまり、罪悪感や不安を避けるために、仕事をせざるをえない (I have to work)と考え、仕事に多くの時間とエネルギーを費やしているのである。言い換えると、ワーカホリックな人は「リラックスするために仕事をしている」といえるだろう。

—(以上、引用)—

 

あれ?

私が「仕事中毒(ワーカホリック)だなぁ」と思ったAさんは、「仕事が楽しくて仕方がないなぁ」と思っていたわけで、意外なことに「内発的に動機づけられている」「ワーク・エンゲイジメントの高い人」だったのですね。

そう言えば、Aさんは実に楽しそうに明るく仕事をこなしていました。休みには息子さんの野球チームのコーチをしたりと、休みの日に仕事をすることはなく、結構充実した生活を送っていました。

新卒入社でしたが、定年まで勤め上げました。いまもお元気です。

 

若いころの体験を、ある程度の年月が経ってから振り返ってみると、新たな発見がありますね。

ちなみに思い起こせば、私がその仕事をしていて「辛い」と思ったのはその頃がピーク。

スキルも身につき仕事にも慣れた2−3年後には、楽しく仕事をし、仕事を片づけて「じゃぁ、お先に」と帰宅できるようになりました。

ただ新しい部署に異動した途端にまた「辛い」状態が続いて仕事を学び、じきに慣れて楽しく仕事ができるようになる、という繰り返しでした。

このパターンからやっと抜けて、全く違う仕事に移ってもこなせるようになって「楽しくて仕方がないなぁ」と思えるようになったのは40代になってから。(ただ、40代になってから残業はしないようになりました)

奇しくも私がAさんと出会った頃の、Aさんと同じ年代ですね。

当時25歳の私は、40代前半のAさんの気持ちがなかなかわからなかったのです。

逆に、現在の私のメッセージがどれだけ20代の方々にとってハラ落ちする内容になっているか、…改めて考えるべきテーマだなぁ、と思いました。

 

ところで10年近く前、定年退職したこのAさんから毎年いただく年賀状に、こんなメッセージが書いてありました。

「何もすることがありません。でも、忙しい」

もしかしたら、忙しい状態が好きな人だったのでしょうか?

 

しかし、私も仕事から完全にリタイアすると、この気持ちもわかるのかもしれませんね。

 

「グロース・ハッカー」読了

遅まきながら「グロース・ハッカー」(ライアン・ホリディ著)を読了しました。

翻訳はオルタナブロガーの佐藤 由紀子さん。とてもわかりやすい訳でサクサク読めました。


グロースハッカーとは、新規ビジネスを急成長させる仕掛け人のことです。多くのユーザーを獲得する仕掛けを作り、売り上げを劇的に成長させます。

こういうと「それってマーケターの仕事じゃないの?」と思われがちです。確かにマーケターの仕事とも重なりますが、従来的なマーケティング手法や潤沢なマーケティング予算には頼りません。

たとえば本書では、文末に「追伸 愛しているよ。ホットメールで君も無料メールをゲットしよう」と表示することでユーザー数を劇的に増やしたホットメールの事例が紹介されています。

この仕掛けを仕込み急成長させたのは、予算も持たず、マーケティングの経験もまったくない人々です。

このグロースハッカーの方法論について、本書は概略をわかりやすく紹介しています。

本書で「マーケティングの本質はずっと変わらない−顧客が誰で、どこにいるかだ」、「マーケティングにおける最善の決定とは、特定の人々のリアルで切実なニーズを満たす製品や事業を獲得することだ」という言葉が紹介されており、グロースハッカーが目指すところもまさに同じだとしています。

まさに私が日々考えていることであり、「我が意を得たり」と思いました。

特に、次の箇所….

—(以下、引用)—

……だが、最も効果的なのは「ソクラテス式問答法」だ。あらゆる仮定について、繰り返し質問する必要がある。

誰のための製品なのか?
なぜユーザーがこの製品を使うのか?
なぜ私はこの製品を使うのか?

…グロースハックでは、まず製品がマーケティングに値すると確信できるまでテストを繰り返す。すばらしい製品だと確信が持てたら、成長エンジンを始動させるビッグバンを激しく追い求めるのだ。このビッグバンがなければ、製品がどんなに良くても成功しない。

—(以上、引用)—-

これは私は常日頃から実践しており、またクライアント様に研修でご提供しているコンテンツと同じ考え方です。

この考え方や方法論が理論的に裏付けられており、非常に納得するとともに、改めてとても勉強になりました。

グロースハッカーの方法論は、IT業界に留まらず、全ての業界で適用可能です。本書でも、著者自身が出版業界で適用して成功させた事例が紹介されています。

本書を読み、エンジニアやセールス、あるいはプロフェッショナル職の方々も、グロースハックに基づいたマーケティングの考え方を身につけることで、自分たちのビジネスを大きく成長させていくことができるようになると思いました。

 

宇宙ビジネス・電気自動車・太陽エネルギーに挑戦するイーロン・マスクの実像。「モノゴトに魔法はない。志を持って実行するのみ」

「地球と人類を救う経営者」として最近話題のイーロン・マスクを描いた本「イーロン・マスクの挑戦 人類を火星に移住させる」(別冊宝島、2014年8月)を読みました。

1971年生まれのイーロン・マスク。その経歴は凄まじいものです。

1995年に起業したZip2社をその後売却し、2200万ドル(22億円)を手にします。

1999年にX.com社の共同設立者となり、これが2001年にPayPal社となり1億7000万ドル(170億円)を手にします。

この資金を元手に2002年に3つ目の会社として宇宙ロケット開発のスペースX社を起業。「人類を火星に移住させる」と宣言。

2004年に電気自動車会社「テスラモーター社」の会長、さらに太陽光発電の「ソーラーシティ社」の会長になります。

大学時代、イーロンは「人類の将来にとってもっとも大きな影響を与える問題は何か」と考え、「インターネット、持続可能エネルギー、宇宙開発の3つ」と考え、これらの事業を立ち上げています。

絵空事で終わらせていないのが凄い点です。

2010年12月8日、スペースX社が独自開発した宇宙ロケット「ファルコン9」は宇宙船ドラゴンを所定の軌道に投入、地球を2周して大気圏に再突入し、太平洋に着水しました。

スペースX社創業からわずか8年、民間の宇宙船としては史上初です。

打ち上げコストは1/10まで下げました。今後ロケット再利用を図り1/100まで下げることを狙っています。現在、国際宇宙ステーションに物資輸送を行いつつ、火星移住のための準備も進めています。

テスラモーター社では、ポルシェより速くフェラーリより安い電気自動車「ロードスター」を開発し販売。レオナルド・ディカブリオやブラッド・ビットといったセレブリティたちがこぞって購入しています。

本書では、あるロックスターはパーティでイーロンに、「ロードスターに文句がある。以前から持っているポルシェに全く乗らなくなった」と言った様子が描かれています。

さらに第2弾としてセダン型の「モデルS」も開発・販売しています。

さらにテスラ社の車に無料で充電するための新しいインフラとして、ソーラーシティ社により、太陽光発電による充電ステーション「スーパーチャージャー・ステーション」を世界に設立しています。

上記の一つだけの取り組みでも難題ですが、イーロン・マスクは、全て手がけて結果を出しています。

本書では、イーロンの取り組みや考え方も紹介しています。

感銘を受けたのは、何度も何度も失敗を繰り返し、成功への糧としている点。

3回失敗したロケットしかり、納期遅れとコスト増で苦しみ顧客の前払い金を私財で保証までした電気自動車開発しかり。そこにあるのは、「金儲けではなく“人類と地球のため”に働く・考える・行動する」という志です。

一方で、イーロン・マスクの考え方はきわめて合理的で真っ当。しかし実行するのは大変なことです。

—(以下、p.73より抜粋)—

「会社の名前で製品は売れているのだ」と思い込んでいる人がいるが、それは間違っている。まずは、素晴らしい製品があって会社のブランドを築く。ブランドは信頼であり、消費者は信頼に基づいて製品を購入してくれる。製品が先にあるのだ」

—(以上、抜粋)—

強い企業ブランドを持っていると、ついついそのブランド力に頼りがちです。しかし、本来はブランド力に頼らず、素晴らしい製品やサービスを作ることに全力を注ぐべきです。その結果が、さらなるブランドの信頼に繋がるのです。

当たり前のことですが、我々がつい陥りやすい罠について、的確に述べています。

—(以下、p.74より抜粋)—

「自ら積極的に批判に耳を傾けることが大切」である。では、どうやって自ら批判を求めていけばいいのだろうか?

その質問にイーロンは「友人に作った製品を見せるんだよ。そして、『どこが良いかは言わないでいいから、良くないところを教えてくれ』って頼むんだよ」

—(以上、抜粋)—

「批判に謙虚になれ」

当たり前のことですが、言うは易く行うは難し、です。

しかし批判に謙虚に耳を傾ければ、必ずよくなります。日々実践したいことです。

—(以下、p.75より抜粋)—

スペースX社は劇的にコストを引き下げてロケットを作り成功を収めている。しかし、これについてイーロンは「革命的なブレークスルーによってではなく、コツコツと地道な努力を積み重ねることで成し遂げたんだ」とコストダウンの意外な神髄を語ってくれた。

…「われわれの(コストダウンの)考え方そのものが、革命的なブレークスルーなんだ」

—(以上、抜粋)—

「愚直に積み重ねる」ことは日本人のお家芸だと思いがちですが、イーロン・マスクもまさに愚直に積み重ねています。

革新的イノベーションの時代から、持続的イノベーションの時代に変わりつつあることを、イーロン自身、認識しているのかも知れません。

愚直に積み重ねて実行するのに加えて、その先にシンプルな目標を定めて戦略的に考えている点が、イーロンの凄さだと思います。それは次のエピソードに現れています。

—(以下、p.82より抜粋)—

「我々のEV(電気自動車)はエコカーではなく、プレミアムカーだ」

そう宣言したイーロンのEV戦略は独創的だった。

所有することを切望し、持っている人に憧れ、持てば自慢したくなるEVカーを立ち上げ、まずは力ずくにでも世間の注目を集めるというものだった。

…値段も10万ドルを超える高級車だ。それならマスコミは取り上げ、世間も興味をそそられるに違いない。その次には、5万ドル程度のミドルクラスの4ドアセダンを送り出し、そして、最後は、大衆の手に届く2万ドルクラスのエントリー車を大量に生産する。これがイーロンが考えた型破りな戦略だった。

—(以上、抜粋)—

これは最初の電気自動車「ロードスター」を開発していた時の発言です。

最初にプレミアム車で成功し話題を取る。そのためにレーシングカーの名門・英国ロータス社と共同開発契約を締結。

次に経験に基づき蓄積した技術を活かして、ミドルクラスに広げる。

さらに量産効果でエントリー車を量産する。

電気自動車メーカーで、このようにシンプルでわかりやすい戦略的な製品ロードマップを持って明言しているのは、テスラ社だけなのかもしれません。

このようにイーロンの考え方はまさに王道。「モノゴトに魔法はない。志を持って実行するのみ」ということですね。
本書では、戦略的に考え、ものすごい愚直な実行力と交渉力で実現してしまうイーロン・マスクの姿をわかりやすく描いています。

今後日本でも、イーロン・マスクは大きな話題になっていくと思います。いま、要注目の一人だと思います。

ちなみに、テスラは既に日本語サイトがあり、日本でも販売中です。モデルSが823万円。大阪パナソニックセンターで試乗できます。

 

 

「神頼み」という言葉を、安易に使っていないか?

一瞬の判断ミスで最悪の事態を招く心臓手術の現場。

その心臓外科医として6000例以上執刀し98%以上の成功率を誇り、天皇陛下の執刀医も務めた順天堂大学教授・天野篤さんのコラム「天皇陛下の執刀医は自然体であり続ける 平常心があれば集中力は生まれる」が、DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー2014年9月号に掲載されています。

58歳の現在も年間450例以上の手術を行っている天野さんは、「集中力の源泉は平常心」とおっしゃっています。

この計9ページの記事からは、プロとしての心構えを教えられました。いくつか抜粋します。

—(以下、引用)—

■不測の事態に備えるために、「三の矢」まで考える選択肢もあるだろう。だが、自分の引き出しにある二の矢で絶対にケリをつける、と覚悟を決めるべきだ。

■手術中の平常心を保つためには、自分の引き出しを一つでも多く持っておくことが欠かせない。そのための準備として、私は手術に臨む前のシミュレーションを念入りに行う。

■手術前には、およそ五分間かけて念入りな手洗いを行う。この行為は手を清潔にするだけに留まらず、手術室に入るまでに心に抱いていたストレスや不安、怒りなどをすべて洗い流してくれる。….この手洗いの時間があることで、手術直前には感情をニュートラルな状態に保つことができる。

■身体的な疲労を回復させるためには、寝ることが一番の方法である。「医師は寝るのも仕事」というのはその通りで、活動中の質を高めるためには欠かせない。そう考えると、いかに睡眠の質を上げるかは重要な要素だ。

■心の健康を保つのも医師にとって必要だ。………自分がネガティブな感情を引きずらないためにも、手術であっても、事務作業であっても、私は問題を引きずらないようにしている。

■自分ができることをやり尽くせば、後は神頼みでいい。神頼みというと他力本願のように聞こえるが、やるべきをやった結果、森羅万象を味方にするという感覚に近い。

—(以上、引用)—

 

一貫しているのは、日々の仕事で手を抜かず、ひらすら積み重ねること。

そして心と身体を常に健康に保つための心がけ。

これらが平常心で勝負に臨むための土台であり、覚悟に繋がるのだと思います。

 

「神頼み」という言葉。本来は重い言葉です。

やるべきことはすべてやり尽くした上で、それでもどうしても不確定要素が残る。その不安。祈る気持ちで「ここまでやった。導き給え」と思わず手を合わせる。

安易に使うべきではないですね。

 

天野さんの言葉からは、多くのことを学ばせていただきました。

「やるべきことを、すべてやり尽くしたか?」

本来の意味での「神頼み」が出来るように、日々修業を重ねたいと思います。

 

1日16時間・年間365日働く日本電産・永守社長は、社員にどのような仕事ぶりを求めているのか?

DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー2014年9月号に、日本電産社長・永守重信さんのインタビュー記事「持続的エネルギーの源泉は何か 仕事のストレスは仕事で癒す」が掲載されています。

永守さんと言えば、お母様の「倍働け」「絶対に楽してもうけたらあかん」という教えを守り、1日16時間・年間365日働く経営者として有名です。(休みは元日の午前のみ)

その永守さんが、社員に対してどのような仕事ぶりを求めておられるのか、たいへん興味がありましたので拝読しました。

おっしゃっていることは、極めて真っ当なことでした。

—(以下、引用)—

…むしろいまの人に長時間労働をさせると、仕事の質が悪くなっていきます。…

仕事で問われるのは成果です。必要なのは考える力です。つまり、ハードワークは時間ではなく質の問題に変わりました。勝つまでやる、成果が出るまでやる。それが知的ハードワークという言葉の意味です。長時間働くハードワークで成果が出るのであれば、いくらでも長く働けばいい。しかし、いまのビジネスでそういう仕事はほとんどありません。

….一生懸命努力するという「根っ子」の部分は変わらずに、働き方が変わったのです。

—(以上、引用)—

拙著「残業3時間を朝30分で片づける仕事術」で書いたように、現代の仕事のほとんどは「知的作業」。そして知的作業の仕事のアウトプットは、時間ではなく、品質と価値で決まります。

永守さんがおっしゃる「知的ハードワーク」の意味は、私はとてもよく理解できました。

本インタビューでは、他にも素晴らしい永守さんの言葉が散りばめられています。

—(以下、引用)—

・ノーストライク・スリーボールという余裕ある状態では、一球くらい失敗しても大丈夫だろうという甘えが生まれます。だからこそ、失敗する確率が高いのです。

・なぜ全力で働くか。それは、努力が運を呼び込むからです。

・「三流の人材」は先を見ることが得意ではありません。いま、目の前にある山を越えることに集中するだけです。ところが、…懸命に登ることを繰り返すうちに実力をみにつけます。やがて、一流の人材のはるか先を走るようになるのです。

・悪い想定をし始めたら行動することができなくなります。そこで私は、まずはプラス思考を大前提として決断し、そのうえで、リスクを見るようにしています。

・仕事で感じたストレスは、仕事で成功しない限り癒えることはないはずです。…ボクサーのストレスは、次の試合で勝つことによってしか消えないはずです。

・休みの日に働くのも、仕事をするのが心から楽しく、気持ちがいいからです。大事なのは、エンジョイすることです。…仕事をつらいものと思ってはいけません。それぞれが持つ性格と仕事の内容がマッチングすれば、必ず楽しくなるはずです。

—(以上、引用)—

 

元気が出てくる記事ですので、もしDIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー最新号をお読みになる機会がありましたら、ぜひご一読をお勧めします。

【変更履歴 2014/8/16】永守さんのお名前を間違っていましたので、修正致しました。関係者の皆様に謹んでお詫び申し上げます。

 

 

マーケティング戦略/営業戦略研修は、クライアント企業別に徹底したカスタマイズが必要だと思う

オフィス永井では、講演や研修をご提供していますが、実は前職で日本IBMにいた時は、企業の人材開発のマネージャーとしてそれなりの予算を持っていました。発注側としてクライアントサイドにいたのですよね。

発注側で常に考えていたのは、「研修で効果を出すこと」です。つまり「研修で社員のビジネス力を上げること」です。

これは経営トップの意向でもありました。本来、研修で社員のビジネス力を上げることは、業績に直接影響を与えます。

研修は、企業にとっては投資です。

正しく設計し実施された研修は、企業にとって投資対効果は極めて高いのです。

そのミッションを受けて、日本IBM在職中、私はマーケティングマネージャーから人材開発責任者に異動することになったのです。

 

研修で「ビジネス力をあげる」ためには、良いコンテンツを目利きすることに加えて、もう一つ課題があります。

「忘却曲線」です。

人間は記憶を忘れるものなので、「いい話を聞いた」と思っても、翌朝には話の7割は忘れてしまっています。時間とともにどんどん忘れていく。これが「忘却曲線」です。

お金を投資する研修責任者の立場で言うと、研修業務はこの「忘却曲線」との戦いです。

 

日本IBMで人材開発マネージャーを担当していた頃、「忘却曲線」を克服するために色々なことを試みました。

1.参加者に事前・事後課題を行っていただく
2.研修数日後に所感を出していただき、振り返りの機会を持っていただく
3.現在困っている実務に即した研修を企画し、該当する人に出席いただく

この中で比較的効果が上がったのが3.です。

やはり業務に即した内容の研修が、一番効果が上がります。

 

1年前に独立し講演や研修をご提供するようになってからも、常に「業務に密着すること」を考え、そのクライアント企業様の業務に密接に関係した内容に仕上げて、丸一日、あるいは数日間の研修を実施しています。

私の専門分野はマーケティング戦略・営業戦略なので、参加者が抱えている事業の営業戦略を研修を通じて作っていく形式にしています。

営業戦略策定のためには、事前にクライアント企業様の企業戦略や事業内容をしっかり把握しておく必要があります。

そこで事前にご担当者とお打ち合わせを重ねる一方で、クライアント企業様の情報を幅広く調査します。場合によっては役員の方に課題や方針を何回も確認することもあります。

このように共通の出来合いプレゼン資料で同一内容の研修をするのではなく、基本骨子として私なりの方法論を持ちながら、クライアント企業様に個別にカスタマイズしてご提供しています。

 

準備に時間と手間がかかるのであまり数多くの研修はご提供できないのですが、参加者された方のご感想を見ると、「これまで参加した研修の中で一番良かった」「明日からの仕事にすぐに役立つ」というご意見を多くいただいています。

前職では、様々な事業部を横串にし、10事業部以上の戦略策定・実施を支援しつつ、事業本部全体の事業戦略を策定することを長年行っていました。この実務経験が、今、とても役立っています。

一方で前職ではIT業界でしたが、独立後は食品業・サービス業・不動産業・倉庫業などのように実に様々な業界おける企業様が抱えるリアルな課題を理解でき、私自身もとても勉強になっています。

 

研修をご提供して実感するのは、各業界で固有の問題がある一方で、「根っ子の部分で抱えている課題は共通」ということ。

たとえばコーラシリーズで描いたように、「顧客絶対主義からの脱却」「成功体験からの脱却」「現状維持の打破」、等です。

 

独立して1年が経過して、いい感じで回り始めているので、この形をさらに進化させていきたいと思っています。

 

なぜ仏教の僧侶が、イスラム史を学ぶためにエジプトに留学したのか?

今月の日本経済新聞「私の履歴書」は、東大寺長老の森本公誠さんです。

第一回目となる8月1日の連載では、森本さんが若いころにイスラム史を学ぶためにエジプトに留学したことが紹介されています。

仏教の僧侶が、なぜイスラム史を学ぶために留学までなさったのでしょうか?

—(以下、引用)—

 もともと仏教と対極にあると思われるイスラムを学べば、仏教の現代的意義も見出せるのではと思ったのが発端だが、異なる視点を持つことができたことは、単に宗教面だけでなく、人間社会の成り立ちや政治の意味、国家の展開などを理解する上で大いに参考になった。

—(以上、引用)—

このことを読んで、会社員時代の自分を思い出しました。

会社員はともすると自分が勤務する会社の視点で物事を考えがちです。

私は前職では日本IBMに30年間勤務していました。比較的社外の世界に触れていた方だと思います。しかし1年前に退職してから、IT業界を離れて実にさまざまな業界の方々とご縁をいただいて仕事をすることで、とても沢山のことを学ばせていただきました。

多様なモノの考え方や視点に触れることは、視野を大きく広げてくれるということを実感しています。

本連載のとおり、仏教の僧侶を養成する寺である東大寺が、「イスラム教を学びたい」という森本さんを快くエジプトに送り出した懐の深さ。素晴らしいですね。

 

宗教者の森本さんが語る今月の「私の履歴書」を、とても楽しみにしています。

 

「プロフェッショナル仕事の流儀」の山本昌投手を見て、改めて「自分も頑張ろう!」と思った

7月28日のNHK番組「プロフェッショナル仕事の流儀」は、中日・山本昌投手でした。

山本昌投手は、現在48歳で現役ピッチャー。日本プロ野球の現役選手で最年長です。

何の気なしに番組を見始めたら、山本昌さんの生き様にグイグイと引き込まれ、結局最後まで見てしまいました。

・入団後、最初の4年間は勝ち星ゼロ。
・ストレートは130Km/h台。しかしキレで勝負。(初速と終速の差が少ない)
・最多勝3回。(93年17勝、94年19勝、97年18勝)
・41歳で、ノーヒットノーランを達成。
・42歳で、200勝。
・2013年時点で、通算218勝164敗。

素晴らしい成績を残しておられますが、番組で山本昌さんはこのように語っています。

「自分には才能も自信もない。だからこそしっかりやっておかないとバチがあたる」

そしてひたすら、基本を地道に積み重ね続けます。

たとえば48歳になった今も、ウォーミングアップなどはベテランの特別扱いでなく、若手と同じメニューを同じ数だけ黙々とこなします。

さらに、年齢とともに落ちていく体力の中でプロとしてのトップレベルを維持するために、技術を進化し続けています。

入団当初の修羅場を経験され、「自分には大した才能はない」との思いが謙虚さを生み、「基本をひたすら積み重ねる」「日々進化する」という姿勢に繋がっているのですね。

 

番組の最後で、「プロフェッショナルとは」の問いに、山本さんはこのように答えておられます。

自分の決めたことを継続して頑張る、
そして諦めずに最後まで究めるために努力する、
っていうことですかね。

私は山本さんの4歳年上。「自分も頑張ろう!」と思いました。

山本昌さんは今年二軍で頑張っておられますが、早く一軍のマウンドで活躍され、さらに今後も活躍し続けていただきたいですね。

 

大切なのは「大義」。戦国武将も、現代ビジネスパーソンも。

私は戦国武将の歴史小説が好きでよく読みます。

ということで、日本経済新聞夕刊に連載中の「天下家康伝」(火坂雅志著)も読んでいます。

7月25日(金)は、信長亡き後に争っていた秀吉と家康が和解する場面。

上洛した家康に対して、秀吉はこのように語ります。

—(以下、引用)—

「若いころ、食うや食わずの暮らしが長かったせいか、わしは多くの民が腹一杯、飯を食うことのできる世をめざしている。そのために、不得意ないくさも知恵のかぎりを絞って戦い、ここまでどうやら生き抜いてきた。わしがいま、唯一、心の底から恐れているのは、徳川どの。そなたじゃ」

—(以上、引用)—

秀吉は、大義を考えていない明智光秀や柴田勝家は恐れていませんでした。しかし自分と同じく常に大義を考えている家康は、心から恐れていたのです。

 

現代のビジネスパーソンや会社経営者の場合、大義は「世の中にどのような価値を提供するか?」になるでしょう。

会社の売上・利益、自分の給与・待遇だけでなく、「世の中に提供する価値」を常に考えているビジネスパーソンや会社経営者も、強いのです。

 

私は講演や研修で、「事業や製品で、どの顧客のどのような課題に、どのような価値を提供するか」を個人で考えたり、チームで議論するワークショップを行っています。

顧客中心に考えることでビジネスを成功させるためなのですが、本質的には、これも企業の大義を考え抜くことに他なりません。

激動する現代だからこそ、「大義」をしっかり考えたいものです。

 

『デキる・デキない』や『常識』を捨て、『やってみたい』気持ちに従うと、人生が変わる

2014/7/18(金)にIBM OB会であるBBJ主催「若手サロン」があり、参加しました。

今回は、ともに日本IBM 2000年入社組の永田ジョージさん小野裕史さんのご講演でした。

 

永田ジョージさんは日本IBM入社後は、ITエンジニア、社内留学でMBA取得、その後はコンサルタント、営業の仕事をされていました。在職中から都内ライブハウス等でライブを行なっておられました。

2012年に日本IBMを退職され、現在はジャズミュージシャンとしてご活躍中です。CDも3枚リリースされ、精力的にツアーを行っておられます。

 

小野裕史さんは、日本IBM入社5ヶ月後、モバイルベンチャー企業に社員第1号として転職。2008年に同社専務を退任され、ベンチャーキャピタルを立ち上げて現在に至っています。出資企業にはあのfreeeやGroupon Japan、中国ではYeahka、DeNA China等があります。

一方で、35年間まったく運動していない状態から、2009年にWii Fitをきっかけにランニングを開始。5ヶ月後にフルマラソン出場、2年後に中国ゴビ砂漠やエジプトサハラ砂漠の250kmマラソン完走、3年後北極点でフルマラソン完走、南極アイスマラソン100kmの部で世界2位。4年後にチリアタカマ砂漠250kmマラソンのチーム戦で世界1位。そして文藝春秋社より「マラソン中毒者」という本を出版したこと。

 

小野さんのプレゼンに、

『デキる、デキない』や『常識』を捨て、『やってみたい』気持ちに従うことが大切

という言葉がありました。まさに永田さんと小野さんの生き方から、このことを学ばせていただきました。

 

人はともすると、『デキる・デキない』や『常識』で判断し、リスクを避けようとします。しかしこれは、過ぎ去った昔の経験で、未来を恐れているのです。

実際は、未来がどうなるかはわかりません。状況も変わるし、自分自身も、何歳になってもどんどん成長していきます。

未来は変えられるのです。そして変える原動力は『ワクワクすることを、やってみたい』という自分の想い。

だからこそ、『ワクワクすることを、やってみたい』という気持ちが、大切なのですね。今回の講演では、永田さんの場合は音楽、小野さんの場合はマラソンやベンチャーキャピタル経営ですね。

絵にすると、こんな感じです。

Photo  

以前ブログでも書きましたように、人は「これをやらなければ!」と思って仕事を頑張るよりも、「これをやりたい」と思ってやる方が、知的作業ははるかに大きなパフォーマンスを生み出します。現代は知識社会。だから「やりたい」ことをやることが、とても大切なのですね。(ダニエル・ピンクの「モチベーション3.0」ですね)

私も「やってみたい」ということばかりやってきたので、お二人の話にはとても共感しました。

また私はクライアント様に事業戦略の研修や講演を行う機会を多くいただくのですが、企業共通の悩みが「いかに会社として新しいことに挑戦するか」ということです。

これも結局、会社の中で「ワクワクする、やりたいこと」を見つけ出して、挑戦することなのですね。

今回の永田さん・小野さんの講演をお聞きして、個人でも企業でも、『コレをやってみたい』ということが何よりも大切なのだ、ということがよくわかりました。

 

永田さん・小野さんに感謝です。

 

絶対は、ない。ではどうするか?

色々なプロジェクトに取り組んでいます。

 

過去の経験から学び、戦略もキッチリ作り、戦略実行もすべて実施。

仮説も立てて、実際にキッチリ検証。

細心な注意を払って不安な点も徹底的に潰していきます。

 

それでうまく行くか?

実はそれだけやっても、うまく行かないこともあるのですよね。

 

「勝ちパターンはコレ。これまでずっとうまく行ったし」と思っていた経験が、急に時代遅れだったり。

市場や顧客の状況が変わっていて、万全と思っていた戦略に足りない点があったり。

仮説を検証したつもりが、実はちゃんとした検証になっていなかったり。

「これは大丈夫だろう」と思ってあえて優先順位を落としていたことが、実はとても重要だったり。

 

なかなか難しいものです。

リアルのお客様で実際に仮説を検証してみると、検証しないで戦略を実行する場合と比べて、うまく行く確率がだいぶ上がります。

それでも「絶対」はありません。

だから、「失敗する」という前提で考えておくことで、失敗した場合のダメージはだいぶ減ります。
 

難しいものですが、日々の経験や失敗から、謙虚に事実の積み重ねを学び続けるしかないのですね。

「上手に失敗する方法」を学び、小さな失敗を積み重ねることが、大きな失敗を回避するカギなのかな、と言う気がします。

 

最近の私のニュース源

日々、色々な最新のビジネスニュースに接するようにしています。

数年前までは、ニュースサイトが出しているメルマガが主な情報源でした。

しかし私の場合、ある程度時間を確保して気合いを入れてメルマガを読むようにしていました。できれば隙間時間に読みたいものです。

そこで最近は、メルマガから離れて、スマホでもチェック出来る下記を主な情報源としています。

日本経済新聞のサイト
日経電子版の会員になったので、WebやiPad等からチェックしています。やはり有料サイトの情報は品質が高いですね。

My Yahoo!ニュースサイト
これは10年ほど愛用しています。ニュースの更新頻度は多くありませんが、重要な最新ニュースは比較的チェックできます。

SmartNews
一覧性があり、一旦読み込めばネット非接続状態でもサクサク読めるので重宝しています。最近は日韓・日中関係をよくウォッチしているので、「国際」関連のニュースを見ています。

Facebookのタイムライン
友達になっている人の意見を参考に見ています。

どれも隙間時間にチェックできるので、時間が有効活用でき、助かります。

日経ビジネスや東洋経済、週刊ダイヤモンドなどの週刊誌も参考になります。

 

また夜11時開始のテレビ東京「ワールドビジネスサテライト」は既に寝ている時間の放映なので、録画して翌日見ています。54分の番組ですが、1.3倍速再生 + CM早送りでチェックすると30分程度で見ることができます。

 

情報が多すぎて情報に溺れてしまうと、本質を見失ってしまい「木を見て森を見ず」の状態になりかねません。

一方で色々な情報のシャワーを浴びることは、マクロなトレンドを把握する上で重要なことです。

実際、色々な情報に接すると、一見繋がりがないように見える事象でも、実は本質的には関連し合っていることに気づくことも多いのです。

これからも、隙間時間を見つけて情報インプットに努めたいと思います。

 

『人が足りなかったから、突破口が見つかった』…規模10倍のライバルに、常識を覆したディーゼルエンジンで挑んだマツダ

マツダは、社員数2万人で売上2兆円。
一方の業界トップのトヨタは、社員33万人で売上22兆円。

規模10倍のライバルに同じ事をしていては勝てません。そこでマツダは、「スカイアクティブ」という省エネエンジンで差別化しました。圧縮比に注目し、徹底的に圧縮比を高めて燃費を改善。ノーマルのガソリンエンジンでハイブリッド並の省エネを達成し、デミオに搭載しました。

ここまでは2011年時点の情報を元に、「100円のコーラを1000円で売る方法2」でご紹介した話。

実は最近のマツダは、このガソリンエンジンとはまったく逆のアプローチで、ディーゼルエンジンを成功させていることをご存じでしょうか?

 

ディーゼルエンジンの取り組みで、日本の大手自動車メーカーは欧州メーカーに遅れを取っています。ここにマツダはディーゼルエンジン「スカイアクティブD」で挑戦しました。

ディーゼルエンジンは、低速トルクがあって燃費が良いものの、高回転が回らず、排気ガス浄化度はガソリエンジンンに及ばず、価格もガソリンエンジンに比べて高い、というジレンマがあります。

本当は静かでよく回り、排気ガスをキレイにし、価格下げたいところ。

さらに燃料を速く燃やすと窒素酸化物(NOx)が増え、ゆっくり燃やすと黒煙(PM)が増えるので排ガスの後処理装置が必要になり、コストがさらに上がります。

ディーゼルエンジンにはジレンマがあったのです。過去、自動車メーカー各社はここに色々と挑戦してきました。

 

マツダは全く異なる設計でチャレンジしました。このことは下記の記事に掲載されています。

「排ガス対策・静か・高回転」 常識を覆したマツダのディーゼル(モータージャーナル 池田直渡さん

ガソリン版のスカイアクティブでは圧縮率を上げました。

逆に、ディーゼル版のスカイアクティブDでは圧縮を下げたのです。

圧縮を落とせばNOxは減ります。加えて燃料噴射を高精細化して超緻密制御することで、まずNOx抑制エンジンの基本を作りました。

しかしこれだとパワーが出ません。そこで条件がよいときはターボで圧縮を補うようにしました。

つまり通常のディーゼルエンジンは、「エンジン高性能化→排ガス対策」という発想で取り組むところを、マツダは「排ガス対策→高性能化」という逆転の発想で取り組んだのですね。

おかげでディーゼル特有のガラガラ音も激減、強度設計に余裕ができたので鋳鉄製ブロックをアルミに置換して、軽量ディーゼルが誕生。回転部品が軽量化したことでエンジンも高回転化しました。

スカイアクティブD搭載車は走りもよいと評価されています。

 

2011/12/11に掲載された日本経済新聞の記事「イノベーション 成功の法則(3) 『欠乏』『不足』が新機軸生む」で、マツダの人見開発本部長は、『数十人の組織ではあれもこれもできない。一方で必ず燃費の良さは重要になる。エンジンの基本に立ち返り一から考え直すことにした』とおっしゃっています。

さらに『人が足りなかったから、突破口が見つかった』と加えておられます。

この取り組みの結果、圧縮比を上げたガソリンエンジンのスカイアクティブが生まれました。

 

この数年後に挑戦したディーゼル版スカイアクティブDも、方法は全く逆の「圧縮比を下げる」アプローチではありますが、同様の「エンジンの基本に立ち返り一から考え直した」結果生まれたのです。

私たちはつい「リソースが足りない」と思いがちです。

しかしリソースはイノベーションの必須条件ではありません。

むしろスタートアップ企業などを見ていると、リソースがなく、かつしがらみから解き放たれた組織の方が、自由な発想でイノベーションを起こすケースが多いように思います。

 

このマツダの挑戦は、しがらみから解き放たれて発想する大切さを教えてくれます。

 

 

プレゼンにおける話の掴み

一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授の楠木建先生が日経BP社のイベントで特別講演された様子が、日経ITproに掲載されています。

「イノベーションは努力してやるものではない」、一橋大学大学院の楠木建教授

記事はイノベーションの本質について語ったもので、とても勉強になります。

加えて感じたのは、楠木先生はとても分かりやすい比喩を「話の掴み」に使い、持論を印象付けることがうまいこと。

楠木先生のご講演は10年ほど前に拝聴したことがありますが、その時も分かりやすい比喩を沢山使っておられました。

この記事でも、こんな事例を紹介されています。

■ビジネスクラスのリクライニング角度:135度→155度→180度と進歩していった。しかし180度以上にしても、顧客が価値を吸収できない

■アサヒ飲料の「十六茶」を基に、他社が開発した「二十一茶」がある。経営陣が意思決定する際、『十六茶に対してうちの二十一茶は5種類も多い』という可視性の罠に陥っているため。ちなみに、十七茶・十八茶・二十二茶・二十四茶・四十八茶もある。他にも「五穀米」を基に、十穀米・十五穀米・二十穀米もある。

これらの例はとてもわかりやすく、会場のお客さんにも受けたようです。

10年前のご講演では、リクライニングのケースは別の意味合いで使っておられました。「話の掴み」を臨機応変に使いこなしておられます。

 

貴重な時間を使って来ていただくお客さんに、プレゼンで分かりやすくメッセージと価値をお伝えするには、「話の掴み」はとても重要です。

改めて参考になりました。

 

高原豪久著『ユニ・チャーム共振の経営 「経営力×現場力」で世界を目指す』…凡事徹底が生んだ非凡

高原豪久著『ユニ・チャーム共振の経営 「経営力×現場力」で世界を目指す』を読了しました。



 

本書は、2代目社長としてユニ・チャームの経営を創業者から引き継ぎ、その14年後に売上を3倍の6000億円近くまで会社を成長させた、高原豪久社長による初の著書です。

私は「後で読み返そう」と思った箇所は本に直接赤ペンで傍線を引きメモ書きするのですが、本書は真っ赤になってしまいました。読み返したい箇所ばかりだったからです。

 

カリスマ創業者として名高いお父様は、1961年創業から40年間会社を牽引し、ユニ・チャームを年商2000億円規模まで育ててきました。しかしいつの間にか社内は、『「社長に付いていけば大丈夫」という風潮』(p.128)になっていました。

そこで高原社長は、後を引き継いで2001年に39歳で社長に就任した際に、『創業者がひとりで引っ張ってきたユニ・チャームを、社員全員が主体的に自分で考え、自分で行動する「共振の経営」に変革しよう』(p.126)と決意されます。

39歳といえば普通の会社では主任か課長の若手中堅。周りからのプレッシャーは大変なものだったはずです。実際に「こいつが社長で本当に大丈夫か?」(p.1)という雰囲気だったそうです。

では、どのように変革し、成長してきたか?

それは、本書p.152に書かれた節のタイトルに象徴されています。

「凡事徹底が非凡を生む」

本書には、魔法や秘密は書かれていません。

すべてのことを疎かにせず、ひたすら徹底的に考え、ひたすら徹底的に実行すること。

トップとして現場を重視し、14年間真摯に格闘し続けた経営者にしか書けないビジネスの真実が、全てのページに書かれています。

しかもとても読みやすく、ビジネスパーソンにとってハラにストンと落ちる内容になっています。

 

私は本書からはとても沢山の学びをいただきました。全部で5章構成ですが、そのうち第1章と第2章から、いくつか引用します。

■第1章「現場力でアジアを攻める」より

『3現主義』(3現=現場、現物、現時点) p.24-28
誰もが入手できる「二次情報」から優位性を生み出すのは困難である。自分の耳目で集めた「一次情報」が優位性を生み出す。それは顧客の現場にある。「顧客の心にある真実」を直視し、本質を見極めることが必要だ。

「にせものの現場主義」p.37-39
現場が大切だが、現場に行くことを目的化してはならない。現場に行くのは、経営上のヒントや答えを得る情報を探し、経営・戦略・実行のそれぞれの責任者が共に難関を乗り越え「最善の一手」にたどり着くためである。

新興国における新たなコスト・イノベーション発想による差別化 p.43-44
コスト・イノベーション=「より優れた機能、もしくは同等機能を、より安く提供できるようになる」こと。単なるコストダウンではない、新たな価値競争が始まっている。ボリュームゾーンにバリュ・フォー・マネー(価格に見合った価値)をアピールし、需要を喚起し、中間所得者層からの支持獲得を速めることが急務になっている

 

■第2章「顧客は世界に広がる 海外展開の進め方」

メガトレンドを見極める p.49
来年のことを詳細に予想することは難しい。しかし10年後の大まかな方向性を掴むことは比較的容易である。このメガトレンドに逆らわず、素直な心持ちで臨むことが大切。メガトレンドを見極めるために必要な情報は、簡単に入手可能である

海外にはエース人材を派遣する p.62-70
「英語ができる若手」がグローバル人材である、と勘違いする会社もある。ユニチャームでは、グローバル人材とは、自社文化を体現し、自分で考え、率先行動し、現地で展開できる人物と考えている。必然的に社歴20年を超える40代になる。新興国開拓には10年かかる。だから10年間動かさず、腰を据えて取り組ませる。新興国開拓には、①「良い商品」、②「強い営業」、③「巧みなマーケティング」の3つが必要なので、必然的に(1)トップブランドを育てた開発部長、(2)経験豊かな工場長、(3)一流の支店長、(4)若手育成経験があるシニアブランドマネージャーの4人をセットで新興国に赴任させねば、成功は難しい。

トレードオフを徹底的に考え抜く。「二兎追わぬものは一兎をも得ず」 p.72-79
すべての仕事は、「顧客の要望にどれだけ応えたか」と「企業としていくら収益が出たか」のせめぎ合いで決まる。いかに2つを同時に達成するか徹底的に考え抜くことが重要である。安直な二者択一やトレードオフ発想の課題解決策では、「どこかで聞いたことがあるような常識的な答え」に落ち着き結局差別化できない。 たとえば、上位集中が進む成熟国市場では、常に新しい価値を提案し続け、かつシェアと店頭価格を維持する必要があるので、トップブランドを守ると同時にコストダウン対応が必要になる。一方で新興国市場では、積極的な地場企業と競争しつつ、都市部の大型スーパーに科学的分析に基づく提案をするとともに、地方の小さな雑貨店へは足で稼ぐ訪問販売が必要になる。このように「二兎を追う」戦略を考え、実行しなければ、持続的成長はできない。

 

第3章「市場をつくる 常に新しいことを提案する」、第4章「自立的な人と組織をつくる」、第5章「仕事についての考え方」からも、実にさまざまな学びが得られます。

特に第4章ではユニ・チャームが展開しているSAPS経営の考え方が紹介されています。これは全社員が「目的」「数値目標」「課題」「戦略」「判断基準」「行動」(OGISM(A))を明確にして日々の仕事を考え、毎週見直し、それを組織で共有しながら仕事を進めていく方法です。

仮説検証思考を組織全体に拡げ、経営陣と社員が振り子が共振するように大きな成果を生み出す、まさに「共振の経営」を実現するための仕組みです。

「創業者に付いていけば大丈夫」という雰囲気だったユニ・チャームを「共振の組織」に変革できたのも「凡事徹底が非凡を生んだ」結果なのでしょう。

 

文章からは、高原社長の誠実なお人柄が伝わってきます。

最前線で現実のビジネスと格闘している経営者にしか書けない、最新ビジネスの現実が学べる本です。

 

企画書は、退屈なものなのか?

新規ビジネスや事業、あるいは新製品やサービスを立ち上げる場合、多くの企業では企画書が作成されます。

企業に勤めるビジネスパーソンであれば、社内で作られた企画書を目にすることも多いのではないかと思います。

皆さんは、実際に企画書を読んで、どのように思われますでしょうか?

「難しいことが色々書いてある」
「わかりにくい」
「数字の羅列だ」
「正直、ちょっと退屈」

このように思うことも、少なくないと思います。

しかし一方で、中にはこう感じさせる企画書もあるのではないでしょうか?

「なんか、とてもわかりやすいし、面白い」
「目から鱗だ。こんな方法があるのか!」
「読んでいて、ワクワクしてきた。元気が出る」
「自分も、この企画に参加したいなぁ」

後者のような企画書が、本来、企画書のあるべき姿なのだと思います。

 

本来企画書は、ビジョンと志・革新性・具体性で、読む人をワクワクさせることが求められています。

だから人が動き、アイデアが集まり、生まれた成果により顧客が感動するのですね。

 

田坂広志著「企画力」では、「優れた企画書は、 最高の推理小説だ」と書かれています。

読む人自らが、行動を変えていきたいと思わせるのが、よい企画書です。

そんな企画書、是非作っていきたいものです。

 

e-Jan Networks様で講演『今、「夢中」になれることは何ですか?』

昨日2014/7/1の夜、e-Jan Networks様で『今、「夢中」になれることは何ですか?』と題して講演しました。

Ejan_networks20140701  

これは、自分が仕事をしたり、ライフワークに取り組む意味を考えてみるための講演です。

先日当ブログに書いた『仕事が不満で仕事を変えても、「やりたい仕事」に出会えない。その理由と対策は、「やりたいこと」「やるべきこと」「できること」をわけて考えるとわかる』を元に、講演とワークショップで考えるように構成しています。

実は1週間前にあるお客様で講演した内容を、坂本さんとご相談しながらe-Jan Networks様向けに作り直し、さらに参加される皆様がご自身にあてはめて「やりたいこと」「やるべきこと」「できること」を考えた上で、「10年後どうありたいか?」「1年後どうありたいか?」「今日からどうするか?」をワークショップで考えて発表する形にしました。

e-Jan Networks社長の坂本さんもブログでご紹介くださったように、皆様から有り難いコメントを頂戴しました。

 

講演で皆様からの感想をいただくことで、私自身もとても勉強になります。アンケートコメントだけでなく、無言で講義を聴いている皆様の様子や表情からも、実に色々なことを学ばせていただいています。

このような機会をくださった坂本さんと、e-Jan Networks社員の皆様に、感謝申し上げます。

 

なぜ『事業戦略の見える化』なのか?どうすればいいのか?

私は講演や研修で、「事業戦略を、見える化しましょう」とご提案しています。

しかしなぜ『事業戦略の見える化』が必要なのでしょうか?

戦略は実行することが必要です。しかし必ずしも当初の狙い通りうまく行くとは限りません。むしろ予想外のことばかりが起きます。

そのために、実行結果を検証することが必要です。

戦略→実行→検証→戦略→実行→検証→….

と繰り返して、継続的な改善を図ることが必要なのです。

しかし「見えないもの」は改善できません。だから『事業戦略の見える化』が必要なのです。

 

どうすればいいのか?

私の場合、事業戦略は次のパターンでまとめています。

1 対象顧客と課題 対象顧客と課題を明確に定義。リアルな顧客の声で検証
2 解決策 新事業で解決することを定義。自分たちの強みを考慮
3 新事業概要 上記1/2をもとに、新事業概要を明確化。
4 現状分析 市場、顧客、競合の観点で、新事業の市場性の分析
5 課題とアクション プロジェクトの課題と対応策の洗出し
6 ビジネスプラン 必達売上目標の明確化。どの時期に何をして売上を確保するか
7 予算・人員計画 リソースの確保。関係部門と交渉する
8 組織体制 組織体制の明確化。社内外関係部門との協業体制明確化
9 実施案 新事業実現の行動計画の策定。いつ誰が何をやるかを明確化

戦略実施後の検証段階では、上記1-9を元に、下記をまとめます。

10 ビジネス評価 上記6を元に、実施結果をビジネス観点で検証
11 アクションの評価 上記5-9の結果を、実施結果を行動面で検証する
12 学びと次のアクション 上記10-11を元に、次のアクションを策定する

この資料をパワーポイントやワードにまとめて、常にアップデートし、最新版を関係者と共有するようにしています。

この資料をプロジェクト実施のための「基本設計図」として位置づけ、戦略を「見える化」することで、戦略の可能性と問題点がより明確に把握できますし、事業戦略の狙いと現状を関係者と密接に共有できるようになります。

実際にやってみると、新規事業をスムーズに進める上で、とても役立ちます。

 

「事業戦略がなかなかうまく進まない」という方は、是非お試しを。

 

目的と目標の違い

目標と目的は、違います。しかしプロジェクトでは、ともすると両者は混同されがちです。

「わが社の目的は、1000店舗展開だ」とか「わが社の目的は、時価総額xxxx億円達成だ」と言うケースがありますが、それらは目的ではなく、本来は目標であることが多いのです。

 

目的とは、最終的に目指したいものです。絵でたとえてみるとこんな感じです。

1  

「この頂を究める」のが目的。「そのために、今日中にここまでたどり着こう」というのが目標、と考えると、わかりやすいのではないでしょうか?

同じ目的であっても、異なる目標を設定する場合もあります。たとえば下図のように、あえて厳しい経路で目標を設定することもありえます。

2   

プロジェクトでは、「そもそも、このプロジェクトでは何を目指すのか?(=目的)」、「そのために、当面どんなアウトプットを目指すのか?(=目標)」というように、プロジェクトの目的と目標を分けて定義したいものです。

 

 

「お客様企業のビジネス状況や経営課題を、速効で理解したい」。そんな場合に使える簡単な方法は?

法人ビジネスを担当している場合、お客様企業のビジネス状況や経営課題をできる限り速く理解しなければならないケースがよくあります。

このような場合、会社のHPを詳細にチェックすることが多いのではないでしょうか?日経テレコン21を使うケースもあるでしょう。あるいはネット検索する人もいるかもしれません。2ちゃんねる情報で裏情報を取ったりする人もいるかもしれません。

いずれも参考になる情報ですが、私の場合、お客様が上場企業であれば、最初にお客様企業のIRサイト(株主・投資家向け情報)をチェックします。(IRとはInvestor Relationsの略です)

 

上場会社の場合は、決算情報がIRサイトで公開されています。説明会資料がPDFで掲載されているケースも多いですし、中には説明会の動画も掲載している場合もあります。

たとえば、ソフトバンクが2014年5月7日に行った2014年3月期 決算説明会の資料や動画は、こちらに掲載されています。

米国スターバックスの場合は、こちら。トップマネジメントの社外講演資料もあり、勉強になります。

 

このようなIR資料は、様々な株主がすぐに理解できるように、売上・利益の推移、経営上の問題、今後の対応や戦略、将来計画などが、わかりやすくまとまっていますので、会社のビジネス状況や経営課題を短時間で理解する上で、とても役立ちます。

他にもアニュアルレポートなども参考になります。

 

第三者ではなく会社が作成した情報ですが、昨今、企業には客観的で透明性がある情報を公開する責任がますます求められていますので、信頼性が高い情報であると思います。

Googleで、「会社名 IR」で検索すると、多くの場合、ヒットします。

  

上場企業に限られる方法ではありますが、もしお試しになっていない方は、是非お試しを。

 

知的作業のパフォーマンスを上げるには、「予定表を埋める」のでなく、「予定表に空きを創り出す」。その方法は?

現代では、ビジネスパーソンの仕事の多くは、知的作業。

知的作業のパフォーマンスは、時間に比例しません。知的作業の効率を上げることで、仕事は短い時間で済み、品質も大きく高まります。

では、どうすればいいか?

2014/6/24の日本経済新聞の記事「ドラッカー流は? 考えるための2時間作れ 「記録→整理→業務再配置」」にヒントが書かれていました。

—(以下、引用)—

…優れた企画を生み出すには「自由に使える時間を大きくまとめる必要がある」というのだ。

 大事なことを考えるには2時間程度の長さが欲しい。1日にまとまった2時間枠をいくつ確保できるか。「スケジュール帳を埋めるのではなく、空欄をつくる」のが、ドラッカー流だ。

—(以上、引用)—-

「予定表を埋める」のでなく、「予定表に空きを創り出す」ということです。

記事では、次の3ステップを提示しています。

1つ目は時間の使い方を「記録する」。2週間、全ての活動を記録すると、自分のクセが見え、ムダも浮かび上がる。

次に、「捨てる(やめる)」「人に任せる」「組織的な問題を見直す」という3つの視点で業務を整理。

そして、残った業務を予定表に再配置し、時間の塊をつくる。(例:来客予定を午前中に集める、等)

 

この方法、具体的でいいですね。

私の場合、資料作りや執筆は自宅のオフィスで行うことが多い一方で、お客様やお取引先との打ち合わせもあります。そして打ち合わせは都内のオフィスで行っています。

ただ、打ち合わせのたびに都内に出かけると、資料作成や執筆を考える時間が減ってしまいます。そこで、できる限り1週間分の打ち合わせを同じ日にまとめて行うようにしています。

日によっては、一日でひっきりなしに4−5回の打ち合わせをこなす日もあります。しかしそのおかげで、他の日は資料作りや執筆に専念できます。

昨日のブログで仕事のスピードを上げることを書きました。色々な方法を組み合わせることで、仕事のスピードを格段に上げて、かつ、品質を向上させることができるのですね。

 

「仕事で企画や提案をしたい。しかし、日々の仕事が忙しい」→どうするか?

ある講演でビジネススキルについてお話ししました。Q&Aタイムに、若い方からこんな質問をいただきました。

「仕事で企画や提案をしていく必要性は、よくわかりました。
 しかし、日々の仕事が忙しく、企画提案する時間がないのが現実です。
 何かアドバイスはありませんか?

私も20代の頃は、実は全く同じことで悩んでいました。

とにかく仕事が忙しく、時間が足りないのですよね。

 

そこで当時の私は、「まず仕事のスピードを上げて、誰よりも早く仕上げられるようにしよう」と目標を立てて仕事をしていました。

とはいっても、大したことではありません。とても小さなことばかりです。

 

たとえばパソコンで文書作成をするために、ショートカットキーをいくつか覚えました。

コピペの作業で10秒かけて

「範囲選択→編集を選んでクリック→コピーを選んでクリック→カーソル移動→編集を選んでクリック→ペーストを選んでクリック」

とやるよりも、2秒で

「範囲選択→Ctrl-C→カーソル移動→Ctrl+V」

とやれば8秒の節約。

1つのメールでこの反復作業が8回あると1分の節約。

1日で20件のメールを書くと、1日で20分の節約。

結構大きな差になりますよね。

 

他にも仕事を速く進めるノウハウは沢山あります。小さなことであって、積み重ねると意外と大きな差になります。

数年間続けているうちに、周囲の人と比べると、たとえば資料を半分の時間で作れるようになりました。

このように仕事のスピードがあがると、より速く仕事を片づけることができ、余った時間を、企画に使うことができます。

 

他にも、小さな自分の締切を設定する方法もあります。2014/6/24の日本経済新聞の記事「締め切り、小刻みに設定 漫画家・弘兼憲史さんの時間管理術」で弘兼憲史さんがおっしゃっていたことが、参考になります。

—(以下、引用)—

当然、(原稿の)締め切りは守らなくてはならない。そこで僕は「小さな締め切り」を自分で決めるんです。

 …例えば今3時で、取りかかっているページが1時間で終わりそうなら「4時」、次のページは「4時45分」、その次は「6時」、というように。自分で設けた締め切りを守るという目標に集中するのです。自分で締め切りを設定することで、ゲーム感覚が生まれ、やる気を高めることができる。

 ….こんな生活を続けるうちに何かしら経験が積み重なっていく。目の前のことを一生懸命やり続けることで経験値が積み上がり、仕事の質も高めていけるのではないかと思っています。

—(以上、引用)—-

「目の前の仕事をやり続ける」ことが積み重なって、仕事力が上がっていきます。

しかし私は30代中頃になってから、「仕事のスピードを上げるだけでは、どうも越えられない壁があるようだ」と感じてきました。

実は仕事には2種類あります。

「やるべき仕事」「やらなくてもいい仕事」です。

「やらなくてもいい仕事」を一生懸命に速くこなしても意味はありません。

むしろ、たとえゆっくりであっても「やるべき仕事」だけに集中した方がいいことが多いのです。

これは仕事のスピードの問題ではないのですよね。

 

他人から言われたばかりをやっている状態に陥ると、このパターンになりがちです。

ですので、やはり自分で企画・提案していくことはとても大切なのです。

 

そこで私は30代中頃になってからは、意図的に「やるべき仕事」を考える時間を増やすようにしました。調べ物、人間関係作り、スキル向上等に時間を配分し、企画・提案に繋げていきました。しかしこのようなことができるのも、「仕事のスピードを上げる」ことが前提です。

ですので、

・まずは、目の前の仕事を速く仕上げるような、仕事力を付ける
・空いた時間を、企画・提案に使っていく
・そして「やるべき仕事」(自分がやりたい仕事)に徐々にシフトしていく

このように取り組むことが必要なのかな、と思います。

 

仕事力に、男女差があるか?

結論から言うと、当たり前ですが、まったくないと私は思っています。

 

私が社会人になり、日本IBMに入社したのは1984年。翌々年の1986年、職場での男女平等を確保し、女性が差別を受けずに家庭と仕事が両立できるよう作った「男女雇用機会均等法」が施行されました。

日本IBMは元々女性社員が活躍している会社だったので、私にとっては、女性の上司、同僚、部下と一緒に仕事するのは、30年前から当たり前のことでした。

 

もちろん、色々な女性がいます。もの凄く頭が切れたり、人物の器がとても大きい方もいる一方で、中には感情的になったり、なかなか周囲の人とうまくできない人もいます。

しかし後者のよくない例を取り上げて、「女性というものは…」と一般論でいうのは全くもってナンセンス。

男性でも、急に感情的になったり、周囲の人とうまくできない人はおられます。

 

男女で仕事力に差はありませんが、男女では性差はあります。

たとえば、きめ細やかな気遣いができる方は、女性の方が多いように思います。

また、こちらに書かれているように、脳の構造が異なるという説もあります。女性よりも男性の方が空間認識力が優れている一方で、女性は言語能力が優れている、という説もあります。

しかしこれらは、個人が一人一人が個性が異なるのとまったく同じレベルの話だと思います。

また当然ですが、男性はどんなに頑張っても子供は産めません。女性は子供を産む期間は仕事ができませんが、仕事に戻れば男性と同様に仕事ができるようになります。

「子供を産むから女性には仕事を任せられない」という意見を稀に聞きますが、これはむしろ女性にとってのハンディキャップであり、ちゃんとしたサポート体制を整えるべきなのでしょう。

いずれにしても、個性の差です。男性同士で個性の差があるのを理由に、「仕事力が違う」という人はいないのと同様、男女間でも仕事力に違いはない筈です。

 

私はこれが当たり前のように思っているのですが、その一つの要因は、仕事をしてきた環境が、女性の仕事力は男性とまったく変わりがないと実感できるものだったなのでしょう。最近の若い人たちも、これが当たり前になっているように感じます。

一方で、女性問題で失言を繰り返す男性も散見されます。「仕事力に男女差はない」と実感する機会がなかったことが、大きな理由なのかもしれません。残念なことですね。

 

 

仕事が不満で仕事を変えても、「やりたい仕事」に出会えない。その理由と対策は、「やりたいこと」「やるべきこと」「できること」をわけて考えるとわかる

ビートたけしさんが、テレビ番組「ゆとり世代は日本を救うのか!?」という企画で話した内容が、一時期話題になりました。

ビートたけし ゆとり世代にキッパリ反論「自分の好きなように仕事なんかできるワケない」

—(以下、引用)—

…ゲスト出演したゆとり世代の一般男性が「会社に縛られて拘束されるよりは、自分のやりたいように働いていく」と発言すると、たけしは「それは間違いだね。自分の好きなように仕事なんかできるワケない。仕事というのは社会が結びついて仕事というモノを編み出すもんであって…」とキッパリ反論。

—(以上、引用)—

実際に番組のこの部分を見てみましたが、「なるほど」と思いました。

私は日本IBMに約30年間勤務しましたが、実は在職中、

 「永井さんって、好きなことしか、しないんですね」

とよく言われていました。

実際、日本IBMでのほとんどの異動は、自分の希望に基づいたもの。「これをやりたい」と考えて異動し、キャリアを作ってきました。

このように言うと、「いいなぁ、やりたい仕事ばかりできて」と言われます。ただ、このようにおっしゃる多くの人が誤解していることがあります。

希望する部署に異動しても、「異動先の部署では、やりたい仕事ができるとは限らない」ということです。むしろ最初の仕事は「やりたい仕事ではない」ことが多かったのが、自分の実感です。

「『希望して異動したのに、やりたい仕事でない』って、なんで?しかもそれなのに『永井さんって、好きなことしか、しないんですね』と言われるのって、矛盾していない?」と思われるかもしれませんね。

これは仕事を、「①やりたいこと」、「②やるべきこと」、「③できること」の3つに分けて考えるとよく理解できます。

この3つに分ける考え方は、先週、IBMの大先輩であるシグマクシスCEO・倉重英樹さんの講演でお聴きして「なるほどなぁ」と思い、さらにその後、自分の経験に当てはめて考えてみたことですが、ご紹介します。

まず、会社を離れたオフタイムで、趣味のジョギングや写真をするときのことを考えてみましょう。

「やりたいから、やる」のが趣味です。「やりたいこと≒やるべきこと」ですよね。

ただ、「やるべきこと=できること」とは限りません。必ずしも上手ではないかもしれませんよね。たとえば写真が好きでも、実際に撮る写真はイマイチかもしれません。上手であるに超したことはありませんが、お客さんがいるわけではありませんし趣味なので楽しければいいわけですね。

絵にすると、オフタイムの趣味は赤い部分。これが大きいほど、オフタイムは楽しくなります。

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では、仕事ではどうでしょう?

人は、無理矢理「これをやらなければ!」と思って仕事を頑張るよりも、「これはぜひやりたい」と思ってやる方が、はるかに大きなパフォーマンスを生み出します。(これはダニエル・ピンクという人が、「モチベーション3.0」で述べたことです)

特に知識社会になると、「やりたいことをやる」ことで、知的作業のパフォーマンスが大きく高まります。

ですので、できる限り「やりたい仕事をやる」ことが理想です。その方が本人も幸せですし、仕事の成果も高まるからです。

知識社会にいる現代人、特に若い人たちはこのことがよくわかってるので、「自分がやりたいように働きたい」と考えるわけですね。

一方で、ビートたけしさんが「仕事というのは社会が結びついて仕事というモノを編み出すもんであって…」とおっしゃっている通り、仕事は、仕事をする当事者の希望とは別に、あくまで社会の事情で発生するもの。

つまり、趣味とは異なり、「お客さんがいて、自分のアウトプットに対してお金が払われる」のが仕事です。(時々、「外回りじゃないので自分は別です」という方がいますが、間接部門の仕事であっても、自分のアウトプットを社内で受け取る人がいる筈。仕事の対価としてもらう給与は、会社でなく、回り回ってお客さんが払っているのです)

このようになっているので、仮に希望する部署に異動したとしても、異動先でアサインされる仕事が「やりたいこと=やるべきこと」とは限らないのです。

一例を挙げると、「マーケティング戦略の立案をしたい」と希望して、マーケティング部門に異動したケース。

異動先では、戦略立案はシニアな先輩たちが既にやっていて、市場調査の仕事しかないかもしれません。

また異動先では、その人が「できるだろう」と判断された仕事がアサインされます。「本人は戦略立案が希望だけど、まだ無理そうだな」と思われた場合、代わりにできそうな仕事がアサインされます。

絵にすると、異動先でアサインされる仕事は、図の右側の赤い部分。

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この赤い部分が大きいと幸せ。小さいと辛く感じてしまうのです。

ビートたけしさんが番組で、

「そもそも働くことは生きがいじゃなくって、色んな事があって、辛いのが当たり前だとオイラは教えられているんで。『いいことあるわけねぇんじゃないか』って感じがあるんだけどなぁ」

とおっしゃっているのは、仕事がこの図のようになっているからですね。

それでも、本人の希望にできるだけ配慮して仕事の配分をしている会社も多いのです。

実際、私が日本IBMでマネジメントをしていた際にも、できる限りご本人の希望に沿って部内メンバーの仕事を調整・配分し、異動もご本人の希望を最優先に尊重して応えるようにしてきました。

やるべき仕事はある程度決まっていますし、メンバーの人数も多いので、できるだけ多くの人の希望を叶えるために、仕事配分の最適解を探すのは、結構大変な作業です。この調整作業は、マネジメントの仕事の中でかなり大きな比率を占めます。

ただ、そうは言ってもお客さんがあることなので、必ずしも本人の希望に沿えないことも多いのです。

そもそも、職場でアサインされる仕事はこのようになっているので、仮に今の仕事が不満で新しい職場に移っても、なかなかやりたい仕事には出会えず、同じことの繰り返し、という状況に陥ってしまうのです。

マネジメントの立場で考えてみると、昔からいる部下の希望・能力・実績はある程度把握していますが、新しく異動して来た人の希望・能力・実績は十分に把握していないため、「希望はわかったけど、まずはお試しで…」とならざるを得ないのです。

では、どうすればいいのでしょうか?

「企画・提案」+「他人を動かすこと」で、この状況を自分で変えることです。

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まず、「やりたいこと」を「やるべきこと」に近づけるためには、「やりたいこと」を企画して、提案することです。

先の「マーケティング戦略の立案をしたい」と希望して異動したのに「市場調査」の仕事をしているケースで考えると、市場調査で得られた知見を元に、新たな戦略を「企画」し、それを上司や先輩に「提案」するのです。

最初は却下されることも多いかも知れません。しかしどこが悪かったかを学び、修正して反映することを繰り返せば、企画力・提案力も向上していきます。そして提案が通れば、「やりたいこと」が「やるべきこと」に一歩近づくことになります。

これを1年間、「今は修業」と考え愚直に継続するだけでも、かなりの実力が付くはずです。3年必死でやれば、第一人者になっているかもしれません。

もう一つは、「できること」を「やるべきこと」に近づけること。

自分ひとりでは出来ないことでも、周りの人たちを動かすことで「できること」に変わってきます。

そもそも、仕事はチームでやるものです。周りの人たちの力を借りれば、やれることは何倍・何十倍にもなります。

逆説的でありますが、孤高の存在でいる限り、自分がやりたいことはなかなかできないのです。

こうすることで、重なる赤い部分が徐々に増えていきます。

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私の場合に当てはめると、現在の仕事が一段落した状況で、「自分のキャリアを考えると、次にこの仕事を究めたい」と考え、異動します。

そして異動先では、「せっかくこの仕事をやるんだったら、こう変えたい」といつも考えています。そしてやりたいことを企画・提案し、賛同する仲間を増やして、実現するようにしています。一方でやらなければならない仕事が多いのも事実。しかしそれらはできる限りササッと済ませるようにしています。

「永井さんって、好きなことしか、しないんですね」とよく言われていたのは、この結果なのですね。

結局、会社の中で「やりたい仕事をやる」には、ビジネスパーソンとして今の仕事に見合った実力を付けること。それが一番の早道ではないかと思います。

「それでも、嫌なものは嫌。自分のやりたいように働きたい」と思う方もおられるでしょう。そういう考え方で会社を立ち上げ、自分でリスクを取り、やりたいことを追求している方もおられます。そのような選択肢も、それでお客さんが存在し、自分が食っていけるのであれば素晴らしいと思います。

しかし会社で仕事をしている限り、仕事に見合った実力をつけずに「自分がやりたいように働きたい」というのは、難しいかも知れませんね。逆に仕事に見合った実力があるのであれば、どんどん企画・提案することでやりたい仕事が増えていきます。

私が現在独立して「自分がやりたい仕事」に集中できるのも、会社員時代に、周りの皆様のおかげでビジネスパーソンとして食っていける力を、修業を通じて身につけた結果だと思います。

今ふり返っても、「あの力は、あの2年間の悪戦苦闘で身につけたなぁ」「この力は、あの時の3年間で無我夢中で仕事に取り組んだ結果だな」と思い出せる時期が、いくつもあります。

会社のいいところは、自分が成長すると、より高いチャレンジの「場」が用意されていることです。独立するとその「場」を自分で作らなければいけません。日銭を稼ぎながらこれをするのはなかなか大変です。

私が著書で書いたり、講演や研修でお話ししているのも、そうやって学んだことばかりです。

ただ、修業には終わりはありません。独立後も仕事を通じて、まだまだ修業を続けたいと思います。

私の場合は独立するのに30年間かかりましたが、考え方は人それぞれ。「今がタイミングだ」と思えば、その時に行動するのがよいのでしょうね。

以上、とあるクライアント様で来週このことを講演するので、自分の頭を整理するためにブログでまとめてみました。ご参考になれば幸いです。

「自分にできないことを部下に求めるのは卑怯」→「管理職として落第だな」…その理由は?

今月の日本経済新聞「私の履歴書」はアサヒグループホールディングス相談役の福地茂雄さんです。

2014/6/11の連載では、福地さんが初めて管理職になり、支店長から「君はどういう考えを持って部下に接するのか」と尋ねられた時のことを述懐されています。

福地さんは「自分にできないことを部下に求めるのは卑怯です。自分にできることはしっかりやらせます」と答えました。

それに対する支店長の答えは…..

—(以下、引用)—

 すると「君は管理職として落第だな。それだと君のコピーばかりできてしまう」とずばり言われる。「支店長である私もそうだが、自分の仕事以外のことも見ないといけない。役目上、自分がやれないことも求めなければならない」というわけだった。

 得心した。確かにプロ野球チームの監督はすべてのポジションをこなせるわけではない。自分が経験のないところでも一流を求め、育てないとチームは強くならない。名古屋支店長の教えを受けて以来、教え子が師匠より優れた人物になる「出藍の誉れ」を意識し、部下と接しようと考えたし、アサヒビール、NHKで経営者になる心得を教わった気がする。

—(以上、引用)—-

私がIBM在職中に、人事権を持ったマネージャーになった時、IBMではマネージャーの役割を

Lead high performance through people
(人材を通じて、高い業績をリードしていく)

と明確に定義していることを知り、「なるほど!」と納得したことをよく憶えています。

そして、それまでの部下を持たずに一人で最高のパフォーマンスを目指していた考え方から、大きく切り替えました。

 

自分で出来ることには限界があります。

「自分に出来ないことを部下に求めないようにする」と、いつの間にか部下と能力を競い合うようになってしまいかねません。

部下の仕事力が上がるように、自分よりも高い能力を持つように、支援していく。

本来、マネージャーに求められるのは、そのようなことなのだと思います。

 

最近、ときどき夜シフト

会社員時代は、朝シフトで仕事をしていました。(こんな本も出版していますので)

満員の通勤電車に乗るのを避けて、空いている早朝電車で朝7時に出社し、午後5時から6時頃には退社していました。おかげで朝は頭がクリアで、仕事もはかどりました。

 

ただ独立後、最近は午後6時や7時からクライアント様への講演の仕事が入ることがよくあります。

朝シフトのデメリットは、午後4時を過ぎた頃から頭があまり動かなくなってしまうことです。講演は大勢の方々の貴重なお時間をお預かりしますので、やはりスッキリした頭で行いたいもの。「あー、うー」という状態に陥るのは避けたいところです。

 

ということで最近、夜の講演が多い週は、比較的遅い時間に起きるようにしています。

講演当日は、朝のコーヒーは控え目にし、講演直前の夕方に飲むようにしています。

やはりクライアント様に喜んでいただくためには、最も仕事の能力が求められる時間帯に頭がスッキリしていることが必要なので、可能な限り時間を調整するようにしています。

 

一方で、仕事や予定が立て込んでいる場合は、そうも言ってられないケースもあります。そういう時は自分を鍛えるよい機会と考え、頑張って乗り切るしかないですね。
 

 

仮眠は、知的作業の生産性を大きく向上させる

昨年7月から独立して11ヶ月が経ちました。

色々なことが変わった中で、比較的大きく変わったのが時間の使い方。

30年間勤務していた会社では、昼休みに自分の席で15分程度の仮眠を取ることができた程度で、勤務時間中は予定が立て込んでいましたし、当然のことながら眠ることはできませんでした。

独立してからは、お客様に約束した時間以外は、自分の時間は自分の思うとおり使えます。

私の場合、文章を書いたり資料を作ったりする作業が多いのですが、そのような作業にはアイデアや集中力が必要です。アイデアや集中力が失われると、途端に生産性は数十分の一に落ちてしまいます。

そこで、「2-3時間徹底的に集中して仕事→頭が疲れてきたら回復するまで短時間仮眠」を1日2-3回程度繰り返しています。

これでアウトプットの量とクオリティがが大きく上がるのを実感しています。

 

現在の企業における仕事の多くは、知的作業です。

一般企業においても、知的作業の生産性を高めるためにも仮眠を認めるようにすると、会社全体の生産性が高まるのではないかと思います。(ただ、労働基準法の関係で色々と配慮が必要なのかもしれませんね)

 

スマホメモ、PCメモ、手書きメモの使い分け

何か思いついたときは、手元にあるiPhoneのメモ機能を使うことがよくあります。

特に深夜、寝ている最中に思いついたことはすぐ忘れやすいのでメモを取ることが必要です。しかし夜中なので、メモるためには灯りを付ける必要があり、家族を起こしてしまいます。こんな時、スマホのメモ機能は助かります。

 

一方で昼間などに、頭に浮かんだことをメモっているうちに、それがきっかけになって他にもアイデアが次々と浮かぶこともあります。

こんな時は、スマホやPCのメモ帳だと、文字入力でワンクッションを置くことが障害になり、なかなかアイデアが続けて出てきません。

こんな時は、やはり手書きメモを重宝します。

そしてある程度のアイデアを出した後に、それらをわかりやすい言葉にする段階でPCなどにテキスト入力をしていくと、うまくまとまることが多いのです。

 

アイデアを生み出す段階と、それをまとめる段階で、メディアを変えることは大切だな、と思います。

 

なぜストーリーで語ることが大切なのか?

東洋経済オンラインにこんな記事がありました。

ストーリーで語るべき、これだけの理由

ポイントは下記の通りです。

—(以下、引用)—

ストーリーで語るには、物事を深く突き詰めて考えないと説明できません。ネットで考える力が弱まった私たちには、ストーリーで語ることが必要です。

….

順を追って説明すると理解は深まります。

….

感情的なストーリーでほかの人を行動させることができます。

—(以上、引用)—

 

これは実感します。

プレゼンでも、ストーリーがキッチリできているとわかりやすいですし、お客様の理解も進みます。

これはプレゼンの前にリハーサルが必要な理由でもあります。リハーサルで自分で話していて「なんか話しづらいな」と感じる箇所は、よく見直すとストーリーがきちんと繋がっていない場合がほとんどなのです。

相手に物事をわかりやすいストーリーで伝えるには、物事の本質を因果関係も含めてキッチリと理解した上で、「要は、こういうこと」とエッセンスをサマリーできることが必要なのです。

 

ストーリーでわかりやすく、かつ相手が面白く思っていただけるように伝えるのはなかなか難しいことですが、だからこそやりがいがあるのでしょうね。

 

「目的は何で、どんな問題があり、その原因は何で、解決にはどうすることが現実的か」

2014/4/29に日本経済新聞に掲載された「私の課長時代」で、日本精工の大塚紀男社長が、後に会長になる当時の上司だった経理部長の関谷哲夫氏に、若手の頃に鍛えられたことを回想しておられます。

—(以下、引用)—

 例えば資料を作って持っていくと「分析はわかった。おまえはどうすればいいと思うんだ」と突き返されました。徐々に『目的は何で、どんな問題があり、その原因は何で、解決にはどうすることが現実的か』を考える癖がつきました。『どうするか』がないと仕事は完結しない。私の考え方の基礎となっています。

—(以上、引用)—

 目的は何で、
 どんな問題があり、
 その原因は何で、
 解決にはどうすることが現実的か

これはまさに現在、私も常に自分自身に問いかけ、ビジネスの課題を考える場合にクライアント様と考えていることです。

 

しかしこのことを頭で知識として理解するだけでは使えません。実際に日々の仕事で考え抜き、実務を通してまさに「身につける」ことが必要です。

私の場合、マーケティングマネージャーとして自分が担当する事業分野の課題を考え抜いた際に、実務を通じてこの考え方が自然に身についてきました。

大塚社長も、若い頃からこのように常に考える癖を身につけ、実務で実践し続けたことで、僭越ながら、ご自身のビジネスパーソンとしての成長のスピードが格段に高まったのではないかと推察します。

 

常に考え続けたいことですね。

 

林總著「成果が出ないのは、あなたが昔の『燃費の悪いアメ車』な働き方をしているからだ」…本来の自分の仕事における使命と、生み出すべき価値を考えれば、仕事が変わってくる

林總著「成果が出ないのは、あなたが昔の『燃費の悪いアメ車』な働き方をしているからだ」を読了しました。

本書は、会計視点での経営変革を考えていく物語です。

「ドラッカーと会計の話をしよう」で、見事にイタリアンレストランのオーナーが抱えていた問題を解決した、経営者であり経営コンサルタントでもある西園寺周作が、本書でも登場します。

 

今回は、経営破綻の危機にある病院が舞台。主人公は病院の経営立て直しに挑戦する医師です。

「病院は非営利組織だから、赤字でもしかたない」
「理事長の儲け主義には反対だ」
「最高の医療を提供すべきだ」

と考えている主人公に対して、そもそも病院のミッションは何か、「患者視点」で現在病院で行っていることは正しいのか、ということを、ドラッカー+会計視点で鮮やかに解きほぐしていきます。

 

本書では特に、知識労働者のあり方についても切り込んでいます。

ドラッカーの言葉を引用しながら、知識労働者はコストではなく資本財と考える必要があり、量ではなくまずは質で中心に据えて考えていくことが必要である、と述べています。

「患者の視点で、病院の価値は何か?」ということを考え抜き、量での勝負ではなく付加価値をいかに生み出すかということを考えていくと、やるべきことが変わってきます。

「病院」という、誰でもお世話になる舞台で、実際の数字を使って説得力のある解決策を展開しています。

 

自分の仕事における使命と、生み出すべき価値、仕事のやり方などを考え直してみたい、という人にとって、本書はよいきっかけを与えてくれます。

 

田中将大投手から、私たちが学べること

ヤンキースの田中将大投手が大活躍しています。

球速や多彩な変化球の素晴らしさもさることながら、ウォールストリートジャーナル日本語版には、こんな記事が掲載されています。

早くも偉大な才能を見せつけた田中将大

—(以下、引用)—

「自分にこう言い聞かせる。この失点のことはあきらめよう。だか、これ以上は与えるな。では、次の打者に向かおう」。田中は通訳を通じてこう話した。簡単なように思える。だが、彼と同じように気持ちをコントロールできる投手はほとんどいない。

—(以上、引用)—

日本にいた頃から言われてきたことですが、米国でも、田中投手のメンタル面の強さが注目されています。

過去は変えられない。
未来は変えられる。

過去をくよくよ悩まずに、未来のことを考える大切さは、わかってはいても、実行するのはなかなか難しいことです。だから田中投手の強さが特筆されるのでしょう。

田中投手の活躍から、私たちも学べるところは多いと思います。

 

グループワークの進め方

色々な集まりで、グループワークで課題を与えられて、議論した結果を発表するように求められることがよくあります。

参加者がそれぞれアイデアを出し合って、集めるというアプローチもあります。確かに多くのアイデアを必要とする時は、この方法もよいでしょう。

一方で、課題解決が求められている場合は、総花的なアイデアを列挙するだけでは、問題は解決できません。

時間もあらかじめ決められていることも多いので、長時間議論することもできません。

こんな場合私は、問題解決の方法論を使って、次のようにグループの参加者で議論しながら進めるようにしています。

1.最初に、その課題の目的は何かを把握する。

2.その上で、どのような成果や価値を生み出すことが求められているのかを把握する。

中には、課題が与えられた時点で、上記が決められておらず、「自由に考えてよい」という場合もあります。その場合は、1と2を自分たちで仮決めします。

3.対象は誰か?

4.その対象の人たちは、何で困っているのか?

3と4を考えた結果、場合によっては、上記2.を修正することもあります。

5.対象となる人が困っていることを解決するには、どんな対応策が必要か?

6.参加メンバーが過去に経験したケースで、参考になるものはないか?

7.具体的な実行計画はどうなるか?誰が実行するか?実行者がいない場合、誰がやるべきか?

8.あとで確認すべき事項は何か?

基本的にはこの順番で考えますが、必要に応じて最初に戻って修正します。

 

このアプローチは、様々な問題解決にも応用が利くと思います。

 

「辻褄が合わない」のは、実は「価値を生み出すスイートスポット」である

本や記事を書いていたり、講演や研修の準備をしていて、何回も見直していると、

「あ、なんかここ、全体の中で、うまく辻褄が合ってないなぁ」

という部分が、必ず出てきます。

 

このような箇所は放っておかずに、全体を見直しながら、「なんで辻褄が合わないのだろう?」「どうすればいいのか?」と突き詰めて考えていくと、意外と新しい発見があることが、とても多いのですよね。

それは、辻褄が合っていない箇所は、ロジックが欠如している箇所でもあるからです。

このような「ロジックが欠如している箇所」は、徹底的に考えて話が通るようにすることで、「新しい価値を生み出すスイートスポット」に変わることも多いのです。

このような箇所を直すことで、ストーリーもスムーズに流れるし、相手の理解も深まるのです。

徹底的に考え抜くことは、決して裏切らないのですね。

 

「100円のコーラを1000円で売る方法」3巻分をギュッと1冊に凝縮した図解版を、4月16日に上梓します

「100円のコーラを1000円で売る方法」同2同3の全3巻では、下記のマーケティング理論・経営理論を紹介しました。

市場志向の事業定義、顧客ロイヤルティ、マーケットリーダー・マーケットチャレンジャーの戦略、ポーターの競争戦略、ブルーオーシャン戦略、バリュープロポジション、マーケティングミックスの設計、チャネル戦略、EDLP戦略、統合マーケティングコミュニケーション、イノベーター理論、キャズム理論、クライゼヴィッツ戦争論、失敗の本質、ランチェスター弱者の戦略・強者の戦略、孫子の兵法、仮説検証思考、論点思考、PDCA、ダイバーシティ、ニッチマーケティング、創発戦略、組織的知識創造、イノベーションのジレンマ、グローバライゼーション、サービス製造業の概念、ソーシャルメディア、フリーミアム、買収戦略、BATNA、企業文化、オープン戦略

 

これらの理論を100ページに凝縮した図解版が、4月16日に出版されます。

【図解】100円のコーラを1000円で売る方法

大人気コーラシリーズ3巻分をギュッと1冊の「図解」に凝縮!!

『100円のコーラを1000円で売る方法』3巻分のビジネス理論を1冊に! 「キシリトールガムが売れた理由」などエピソード満載でマーケティングから競争戦略、イノベーションまでMBAビジネス理論が身につく!

 

既に下記サイトで予約受付も開始しています。

アマゾン

e-hon

楽天ブックス

BookWalker

セブンネットショッピング

 

本書では、見開き2ページで1トピックのスタイルで、図解を使ってわかりやすく解説しました。

すぐに理解いただけるように、新たに図と解説文も作成しています。

本シリーズを既に読まれた方は、理解を深める上で役立つと思います。

また本シリーズをまだ読んでいない方にとっても、ビジネスで役立つマーケティング理論・経営理論のエッセンスを押さえる上で、オススメの1冊になるかと思います。

表紙は最終デザイン中です。できましたら当ブログでご報告します。
 

 





失敗を恐れて成功確率を狙うか?あるいは、失敗を恐れず成功の回数や大きさを狙うか?

為末さんのTweetを元に書かれた、こんなブログを見つけました。

成功確率が高い人=チャレンジしていない人

「まったくその通り」と思いました。

時間をかけて絶対成功確実なことを狙えば、成功確率は100%近くになります。しかし挑戦する回数は限られるので成功の数も限られますし、リスクも少ないので成功の大きさも小さくなります。

限られた時間内で小さい挑戦を積み重ねていけば、成功確率は低くなります。しかし挑戦する回数が多いほど、成功することも増えますし、誰もやっていないことに挑戦すれば成功も大きくなります。さらに挑戦し続けて学ぶことで成功確率も徐々に高まるかもしれません。

「失敗を恐れ、成功確率を狙うか?」
「失敗を恐れず、成功の回数や大きさを狙うか?」

この違いは大きいと思います。

1週間前に当ブログで「チャレンジして失敗から学び、成功につなげるための3ステップ」というエントリーを書きましたが、失敗から学んで成功に繋げるのにも、方法論があります。

失敗を恐れず、挑戦し続けるようにありたいと思います。
 

 

OZ plus 2014年5月号に、インタビュー記事を掲載いただきました

本日(2014/3/28)発売のOZ plus 2014年5月号の特集「いいわたしをつくる いい朝習慣」で、インタビュー記事を掲載いただきました。

Ozplus201403282  

ちなみにOZ plusとは、仕事を頑張りつつ、自分の生活も大切にするような女性の方々向けの雑誌です。今月号の表紙は井上真央さんですね。 



 

今回インタビューいただいたテーマは、「出社からランチまでの行動習慣」で、効率よく仕事し、残業を減らし、自由時間を増やすために、

①駅から会社まで

②出社直後

③始業から30分後まで

④30分後からランチまで

の4つにわけて、提案をさせていただきました。合計3ページの記事です。

2011年に出版した「残業3時間を朝30分で片づける仕事術」をお読みになったOZ plusの編集の方からお声がけをいただきました。

このような機会をいただき、有り難いですね。

思い返せば、今月初めにご紹介した「師長主任業務実践」の寄稿記事「残業3時間を朝30分で片づける仕事術」をお読みになった編集の方からお声がけをいただきました。

「朝時間活用」は、ますます盛り上がっているようです。

 

キャリアの脱皮を成功させるコツ−永井の場合…リンダ・グラットン著「ワークシフト」から

遅まきながら、2012-2013年にベストセラーになった「ワークシフト」(リンダ・グラットン著、プレジデント社)を読了しました。

アルビン・トフラーの未来論、トーマス・フリードマンの「フラット化する世界」、さらに個人のキャリア論などの要素も含んだ力作で、とても参考になりました。

 

p.276-277に、「キャリアの脱皮を成功させる3つのコツ」が紹介されています。

私は30代前半の頃から「50歳になったら独立しよう」と考え、1年遅れで51歳になった2013年に独立しましたが、自分のことを振り返るととても納得できる内容でした。

 

■「第一は、新しいチャンスが目の前に現れたとき、未知の世界にいきなり飛び込むのではなく、新しい世界を理解するために実験をすること

私は1984年から2013年まで日本IBMに会社員として勤務していました。2006年頃から「本を出版したい」と考えていました。そこでまず、当ブログを始めてみました。

1-2年間書き続けてコンテンツは溜まりましたが、出版社のツテが全くありませんでした。

初めての本を出版したのは2008年。自費出版でした。

その後、2冊目(初の出版社経由)は2010年、3冊目(自費出版)は2011年3月。どれも、あまり売れませんでした。

並行して2009年から2010年にかけて、色々な方々に取材して本の企画を数本立てましたが、いずれも没。出版は実現しませんでした。

4冊目は2011年7月。初めて重版がかかり、とても嬉しかったことを覚えています。

5冊目が2011年11月に出版した、「100円のコーラを1000円で売る方法」。これはおかげさまで、2012年度の年間ベストセラーになりました。

しかしこの1冊だけでは、独立して食っていける自信は全くありませんでした。

第2巻目(2012年9月)が10万部の増刷になり、第3巻目の目処が経って、やっと独立の踏ん切りが付きました。

2006年から6-7年かけて、仕事で学びを得て、それを本に書く、という経験を積み、この世界について学びを貯めたおかげで、スムーズにキャリアを変えることができたのではないかと思います。

もし「100円のコーラを1000円で売る方法」が売れた2011年にいきなり独立していたら、恐らく経験・理解ともに不十分で、迷走を続けていたでしょう。収入が絶たれた状態で仕事が迷走状態に陥ると、様々な面で余裕を失い、かなり厳しい状況になります。

いきなり飛び込まず会社員を続けながら、忙しいながらも余裕を持ってじっくりと試行錯誤できたのがよかったと思います。

また、勤務先の日本IBMが社員個人がプライベートの時間を使って本を出版することについてとても理解があることも、大変有り難いことでした。

ただ当たり前ですが、会社やお客様・取引先の機密情報・専有情報については書けません。

加えて会社の勤務時間は執筆できません。独立までの5年間、週末/夏休み/GW休暇/正月休みなどのプライベートの時間をすべて使い執筆をしていました。この5年間、勤務先の仕事量も増える一方でした。完全休養の日はほとんどなく、時間的な余裕はほぼゼロでした。

 

■「第二は、自分と違う大勢の人たちと接点をもち、多様性のある人的ネットワーク(ビックアイデア・クラウド)を築くこと。」

おかげさまで、このオルタナティブブログを中心に、社会人大学院である多摩大学大学院、「朝カフェ次世代研究会」、出版関係、その他、本業以外の知り合いの皆様とのご縁にはとても恵まれていたと思います。

有り難いことです。

この1つのきっかけは、ブログや本、講演などで情報発信を継続してきたからではないかと思います。「情報を発信する」ところには、「情報が集まる」ということのようです。

 

■「第三は、はじめのうちは本業をやめず、副業という形で新しい分野に乗り出すこと。」

私にとって、出版は「ギブバック」でした。

自分がスキルや経験を付けたのは、世の中の先輩方のおかげです。だから、「世の中に自分の学びをお返ししていきたい」。これが「ギブバック」という考え方です。

そのため私にとっては、出版は「副業」という意識はありませんでした。事実、自費出版を続けていた最初の2-3年間は、毎年数十万円の単位で持ち出しが続いていました。

結果的に、本業である会社員を続けながらその学びを情報発信し続け、独立後の現在はその情報発信そのものが本業になった、という形になっています。

 

この「3つのコツ」は、色々な形で応用が利くのではないかと思いました。