2019年9月9日(月)に松本市内で、松本空港ロータリークラブ様で、「お客様が買う理由をいかに作るか」というテーマで講演を致しました。
当日は松本空港ロータリークラブ会員に加えて一般参加も含め、経営者や自営業の方々を中心に約200名が参加されました。
多くの方々にご参加いただき、有り難うございました。
2019年9月9日(月)に松本市内で、松本空港ロータリークラブ様で、「お客様が買う理由をいかに作るか」というテーマで講演を致しました。
当日は松本空港ロータリークラブ会員に加えて一般参加も含め、経営者や自営業の方々を中心に約200名が参加されました。
多くの方々にご参加いただき、有り難うございました。
ある菓子メーカー部長の講演を聞く機会がありました。
この会社は自社の最新技術を駆使し、最高級チョコ「ゴディバ」と同等品質のチョコを開発。ゴディバの1/3の価格、同社他商品よりも1〜2割高い価格で販売しています。
「ゴディバと同じ品質で、価格1/3ですよ。こんな商品、当社しか作れません」
部長は自信満々です。
「そうそう。部下が『当社の名前を外して、別ブランドで売ったらどうでしょう?』って提案してきたんで、『当社が誇る最高級チョコだ。当社の名前を外すなんて言語道断!』と一喝してやりました。」
お話しを伺って、少し考えてしまいました。
トヨタは長年米国では「品質は良いけど安い車」というイメージ。メルセデスのような「高いけど欲しい車」ではありませんでした。
そこでトヨタ色を一切排除したブランド「レクサス」を新たに作り、「最高級ブランド」としてメルセデスに対抗しました。トヨタは既存のトヨタ車の顧客ではなく、トヨタがリーチできなかった「最高級で高品質な車が欲しい」という新しい顧客を開拓したのです。
トヨタは「最高級車だからトヨタの名前をつけよう」と考えず、むしろ「トヨタという名前は安物と取られてしまうから、新しいブランドが必要」と現実的に考え、レクサスを立ち上げたのです。
「ゴディバと同等のこのチョコには、当社の名前を外し別ブランドで売りましょう」という部下の真意は、恐らくこのレクサスの考え方と同じです。「当社がリーチしていない新しい顧客を開拓しよう」ということです。
こう考えると、菓子メーカー部長の問題は二つあることがわかります。
①「あえて高く売る」という選択肢を考えていない
部長は「当社のチョコよりも1〜2割も高い。わが社が誇る最高級チョコだ」と考えているのでしょう。しかし価格には「品質表示機能」があります。ゴディバと同等品質でも、ゴディバの1/3の価格を付けた途端、お客さんは「ゴディバの1/3の品質」と考えるのです。
②「自社名ブランド」を至上のものと考え、それ以外の現実的な選択肢を排除している
この会社のブランドは「親近感」はありますが「高級感」はありません。自社ブランドは確かに大切です。しかし現実には、この自社ブランドでは最高級チョコ「ゴディバ」には対抗できません。そして恐らくこの部長の頭の中には、ゴディバへ対抗する選択肢はないのでしょう。
本当は今までのやり方を根本的に見直すところに、新たな飛躍の種があります。この部長は成功体験があるがために、その種を潰してしまっているのです。
成功体験は、本当にやっかいなものです。
自信にもなりますが、新たなチャンスを潰すこともあります。
だからこそ、常に今の状態が本当にいいのか、健全な問題意識を持ち続けたいものです。
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何か企画を立てるとき、絶対に言ってはいけない禁句があります。
「それは自分の仕事じゃない」
企画を立てる人は、映画のプロデューサーに似ています。
映画のプロデューサーは、映画の企画を立ち上げ、資金調達し、監督・脚本・俳優・スタッフを誰にするか決め、宣伝し、映画を公開して、収益を生み出すところまで責任を持っています。
プロデューサー自身は、脚本を書くわけでもないですし、演技するわけでもありません。
しかしプロデューサーは映画制作の総責任者です。プロジェクトでは必ず何らかの問題が起こります。そんなときに、「これは自分の仕事でない」といった瞬間、その映画プロジェクトは失敗します。
だから細部まで目を配り、何か問題が起こったら率先して解決することが必要なのです。
企画も同じです。
「この企画は、全て自分の仕事。全責任が自分にある」と考えるべきなのです。
これは「すべての仕事を抱え込め」と言っているのではありません。
むしろ逆です。
プロデューサーは脚本を書きませんし、演技もしません。
企画責任者も、その道のプロがいれば任せるべきなのです。
そして彼らが成果を出せるようにサポートし、問題があれば先回りして解決すべきなのです。
そのためには、まず自分で抱え込まないこと。
その一方で、徹底的に細部まで目を配り、すべて自分でまとめ上げることが必要なのです。
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マーケティング研修をやっていて実感するのは、「マーケティングの実践」と「自転車に乗る」のが、とても似ているということ。
講演でお話しすると、意外と多いのがこんな反応です。
「言われてみれば当たり前のことですよね。知っていることもあったし。こんなの楽勝ですよ」
そして実際にワークショップをはじめてみると、多くの場合、こんな反応に変わります。
「あれ?ぜんぜんできない」
理解することと、実際にやることは、まったく違うのです。
「自転車に乗るには、自転車にまたがり、身体でバランスを取り、ペダルをこぐ。ハンドルで方向を取ってください」と口頭で説明されると、なんだか乗れそうな気になります。
しかし現実には、それだけでは自転車には乗れません。実際に補助輪をつけて自転車に乗り慣れて、補助輪を外してバランスの取り方を憶え、空中に足を浮かせて自走する、という段階を経て、乗れるようになります。
マーケティングの実践もまったく同じです。
頭で理解するだけでは、出来ないのです。
実際にやってみることです。
マーケティングの世界には、様々なフレームワークがあります。
「実際に自転車に乗ってみる」ことに相当するのが、この「フレームワークに沿って考えてみる」こと。
フレームワークを与えられ、実例を見せられ、それを自分の仕事に当てはめてみても、最初はなかなか考えることができません。
しかし自分なりに考えて、試行錯誤をしながらやってみると、徐々に考えられるようになります。
座学で学んだだけでは、マーケティングは使いこなせないのです。
自分の仕事で、試行錯誤を繰り返すことで、徐々に身体が憶えていくものなのです。
ところで自転車は一度乗れるようになると、身体が憶えていてその後は忘れなくなります。
マーケティングも同じです。一度使えるようになれば、その後も使えるようになります。
それは自分の武器になるのです。
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このような悩みをよく聞きます。
「みんなでいい企画を作ろうと考えているんですけど、なかなかいい企画が思いつきません」
これは勘違いをしています。
それは「考えれば、いい企画が生まれる」と思ってること。
考えるのは、確かに大切です。
しかしそれだけでは、いい企画は生まれません。
企画のキモは「誰かの課題を解決すること」。誰かとは、たとえば顧客や同僚の社員です。
顧客も気づかない課題を見つければ、ヒット商品の種になります。
あるいは、同僚の社員が抱える課題を見つけて、会社が元気になることもあります。
このような課題の発見が、いい企画の種です。
このような企画の種は、会議室に何人も集まって考えているだけでは見つかりません。
いい企画を生み出す出発点は、まずよい情報(=事実)を仕入れることです。
商品開発であれば、顧客を観察してみて、顧客も気づかない課題を見つける。
あるいは同僚の社員を観察して、何で困ってるかを見つける。
考え抜くのはその後です。
顧客も気づかない課題を見つけたら、なんでその課題が発生しているのか、どうすれば解決できるのかを考え抜く。
あるいは同僚の社員が困っていることを見つけたら、なんでそんなことが起きているのか原因を考え抜き、解決策を考え抜く。
私は会議室でお客さんと考える場合、たとえば消費者アンケートなどをプロジェクターで映しながら、気がついた点や違和感を議論することもあります。これも「よい情報(=事実)」に基づいて考える一つの方法です。
材料がないままひたすら「いい企画は何だろう?」と考えても、ただ時間が過ぎていくだけ、ということも多いのです。
まずは、よい情報を仕入れましょう。
考え抜くのは、その後です。
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商品企画で「売れる新商品を作ろう」と考えて、そのための「正しい答え」を探そうとして堂々巡りに陥っている人は、少なくありません。
しかし世の中はますます複雑になり、ニーズも多様化しています。
「売れる商品にするための正しい答えが、どこかにある」と思って一生懸命に答えを探しても、なかなか見つからないものです。
必要なのは「正しい答え」の前に、「正しい問い」を探すことです。
お客様は、何で困っているのか?
お客様は、どんな課題を持っているのか?
これはお客様に会って話しを聞くだけではわかりません。
お客様にとって問題は当たり前になっているので、何が問題なのかをなかなか言葉にできないのです。
たとえばある食品加工用機械メーカーのセールスが、鶏肉加工工場に商品を納めに行くと、作業員が手作業で鶏モモ肉の骨を外していました。加工業者は「昔からこの業界は、手で骨を取り出すのが常識。それ以外の方法を考えること自体、馬鹿げている」と思い込んでいました。
この作業員を見て、セールスは考えました。
「待てよ。鶏モモ肉の骨を手で取り出しているけれども、もっと効率が良い方法があるんじゃないか?」
彼は自動で脱骨する機械の開発に取り組み、試作品を完成させました。
「バカげている」と言っていた加工業者は、試作品を見て「欲しかったのはコレだよ!」
こうして開発した前川製作所の商品「トリダス」は、ヒット商品になりました。
お客様は「自動で脱骨したい」という課題を持っていましたが、手作業が当たり前になっていたので、課題が見えなかったのです。
前川製作所のセールスは、正しい問いを見つけ、自分でその問いに対する答えを作ることで、ヒット商品を生み出したのです。
商品開発では、まず探すべきは「正しい問い」なのです。
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会社で、こんな光景をよくみかけます。
「社に持ち帰って検討します」
「一度みんな集まって、揉んでみたらどうだろう?」
よく見かける光景ですが、これが日本の長期低迷を生み出しています。
「内部調整はすべて無意味」という意味ではありません。組織がスムーズに動くために内部調整は必要です。
しかし内部調整自体は、新しい価値を生みません。「単なるコスト」です。コストなので最小限にする必要があります。
こういうと反論があるかもしれません。
「あの野中郁次郎先生も名著『知識創造企業』で、『ホンダは三日三晩、合宿で集まってワイワイガヤガヤ話し合って、組織として新しい知識を創造している』と言っていますよ。『内部調整は最小限にしろ』というのなら、あのワイガヤもやめろっていうことですか?」
確かにかつてのホンダはワイガヤを通して、組織としての知識を生み出しています。
しかしこれは「単なる内部調整」ではありません。
参加者一人一人に、徹底的に考えさせています。
「知識創造経営とイノベーション」(野中郁次郎/遠山亮子責任編集、丸善)で、本田技研で長年実務に関わった方が、ホンダ社内で先輩達から鍛えられた様子を論文で紹介しています。
・質問すると、必ず「あんたはどう思うのか?」と聞かれる
・答えられないと「自分の考えや予想もなしに、他人にモノを聞きにくるな」と追い返される
・一般的な意見を言うと、「お前の話、どっかで聞いたことがある話ばかりだな!」
・最悪の評価は、「あんたの話は、つまらねえなあ!」
・ユニークなことをいうと、「面白いこと言うじゃねえか。どこで思いついたんだ?」
・しかし本で読んだと言おうものなら、「なんだ、受け売りか!」と馬鹿にされる
・「昨日友人と新宿を歩いていたら」というような話は真面目に聞いてくれた
ホンダではこうして一人一人が考え抜くことを徹底する社内文化を持った上で、ワイガヤを行っています。
ワイガヤは単なる内部調整ではなく、一人一人が考え抜き、議論を闘わせる場なのです。
議論するのは確かにいいこと。ただし議論は単なる内部調整ではありません。
一人一人が真剣に考え抜いて議論することで、はじめて組織として新しい知識が生まれるのです。
単なる社内調整の問題は、時間と手間が膨大にかかる割に、何も生まないことです。
誰も自分のリスクで真剣に考えていないからです。
全員が満足する落としどころを探る調整だけが目的化し、新たな知識を生み出していないのです。
私は、日本企業が長期低迷から抜け出せない一因はここにあると思います。
単なる内部調整はやめ、一人一人が自己責任で、深く考え抜くことが必要なのです。
しかし一方で「深く考えている積もりですが、なかなか考えられません」という方もいます。
先のホンダの例のように、近道はありません。
近道あれば、既にみんなやっています。
ひたすら深く考え続けること。
一人で数年も続ければ、まったく違ってきます。
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私は企業様の研修やワークショップで、グループワークをしていただくことがよくあります。
1チーム5〜6名で課題を討議していただき、チームで解決策をまとめていきます。
最近、ここでお願いしていることがあります。
「折衷案はやめましょう。首尾一貫したベストな解決策になるように、チームで考え抜いて下さい」
複数人で意見がわかれるとき、人はつい相手の面子を考え、複数の意見を取り込んだ折衷案を作りがちです。
しかしこれは最悪な方法です。
戦略の第一人者リチャード・P・ルメルトは著書「良い戦略、悪い戦略」で、ミニコンピュータ最大手だったDECの戦略会議に参加した経験を紹介しています。当時のDECは低迷中。対応策を話し合う幹部の意見は分かれました。
「今後も使い勝手のよい製品に集中すべきだ」
「それはすぐコモディティ化する。顧客の課題にソリューションを提供すべきだ」
「なんといっても半導体技術がカギだ。半導体チップに本腰を入れるべきだ」
3人とも譲りません。苛立ったCEOはこう言いました。
「何とか意見をまとめろ」
結果、こんな戦略がまとまりました。
「DECは高品質の製品およびサービスを提供するために努力し、データ処理で業界トップを目指す」
耳心地は悪くありませんが、何をするのかよくわからない戦略です。
低迷が続きCEOは更迭されました。
悪い戦略は問題を分析せず、思考をサボり、選択を怠った結果、生まれてきます。
特に私たち日本人は相手との対立を避けるため、ホドホドで折り合って妥協した折衷案を好みがちです。
折衷案の問題は、解決すべき問題が不明確なまま狙いがボヤけて、戦力を集中投下できず、何も生み出さないまま貴重な時間が過ぎ、徐々にじり貧になることです。
折衷案はやめることです。
①問題から逃げず、解決すべき課題が何かを見極める。
②その問題解決のためのシンプルな基本方針を決める。
③その基本方針に沿った、具体的な行動計画を決めて、実行する。
これを首尾一貫し、徹底することです。
1990年代前半にIBMを救ったガースナーは、まさにこれを徹底しました。
①当時「IBMは図体が大きすぎ。分社化すべし」という意見が圧倒的多数。しかしガースナーは「細分化が進むIT業界で、全分野に通じているのはむしろ強み。問題はそのスキルを活かしていないこと。むしろ統合化を進めるべし」と見極めました。
②そして「顧客向けにオーダーメイドのソリューションを提供する」という基本方針を明確にしました。
③さらに基本方針実現のために、サービス事業・ソフトウェア事業を立ち上げ、他社製品の取扱いも始めました。
折衷案はやめ、徹底的に問題を考え抜き、解決策を選び抜く。
首尾一貫して考え抜くことが、必要なのです。
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先週の夜学・永井塾のテーマは「自社の強み」でした。
最後の質疑応答で、こんなご質問をいただきました。
「『強みは、コアの技術と顧客の利益の組み合わせである』ということはわかりました。ただコアの技術はわかるのですが、顧客の利益は何を物差しに考えればいいのでしょうか?」
若干、補足します。
これは「コア・コンピタンス(=中核となる能力)」という考え方です。たとえば1950〜1990年代に世界を席巻したソニーのコア・コンピタンスは、
「電子+機械技術を統合した小型化技術(メカトロニクス)により、携帯性を提供できること」
でした。これを分解すると、こうなります。
コアの技術 = 電子+機械技術を統合した小型化技術(メカトロニクス)
顧客の利益 = 携帯性を提供できること
このおかげで、トランジスタラジオやウォークマンといった世界的ヒット商品を生み出しました。
「ではその後半の『顧客の利益』は、何を物差しにして見極めればいいのか?」が冒頭のご質問です。
顧客の利益を見極める物差しは、「顧客の課題(=痛み)の大きさ」です。
そして顧客の利益を見極めるためには、最初に「ターゲット顧客を絞り込むこと」が必要です。
①まずターゲットの顧客を見極め、
②その顧客が抱える大きな痛みを理解し、
③自社のコア技術を活かし、その痛みにベストな解決策を提供する、
ことが必要になります。
他の顧客ではあまり意味がないコア技術が、その痛みを持つ顧客にはとても有効なことがあります。
ここで事例で考えてみましょう。
1990年代に企業向け文書管理システムを開発・販売していたドキュメンタムはしばらく成長していましたが、ある時期から売上が低迷し始めました。
そこで75分野に手を広げていた文書管理の業務を、2分野に絞り込みました。
絞り込んだ分野の一つが、製薬会社向けの新薬申請業務です。
製薬会社では新薬申請の際に、25〜50万ページもの書類を用意する必要があります。この申請業務のために、人件費などで1日1億円もの費用がかかっていました。
しかも申請が遅れるとその分の特許収入が失われてしまいます。
莫大なコストと、機会損失ですね。
製薬会社の幹部は「お金はかかってもいいから、申請業務を簡単・迅速にしたい」と考えていました。もの凄い痛みを抱えていたわけです。
ドキュメンタムはこの会社に1年間集中、顧客の問題を解決しました。
その後、この新薬申請用文書管理システムは製薬会社40社中30社で採用。さらに同様の課題を持つ様々な業界に拡がっていきました。
ドキュメンタムのコア・コンピタンスは「文書を一元管理できる管理システムにより、膨大な申請業務を簡単・迅速に処理できること」ということです。分解するとこうなります。
コアの技術 = 文書を一元管理できる管理システム
顧客の利益 = 膨大な申請業務を簡単・迅速に処理できること
このように、「顧客の利益」を決める物差しは「顧客の課題の大きさ」であり、その出発点は「ターゲット顧客を見極めること」なのです。
まず考えるべきは、御社の強みを必要としているお客様がどこにいるかを、見つけることなのです。
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経営者の方々からよくこんなお悩みを伺います。
「組織を変えようとしているんですけどね。なかなか変わらないんですよ」
一社員から見ると「トップだから組織なんて自由に変えられるでしょ」と思いがちですよね。かくいう私も若い頃はそう思っていました。しかし現実には、組織はトップの一存ではなかなか変わらないのです。
たとえばトップが「もっと外に出てお客様から学ぼうよ!」と言っても、部下はなかなかそのように行動しません。
組織文化が障害になるのです。
組織文化とは、社員一人一人が仕事で経験してきた「成功体験」が作り出したものです。
たとえば大量生産・大量販売の時代は、お客様に会わずに研究所で商品の性能を高めて売り出せば、売れました。これが「成功体験」です。
しかし今や性能を高めるだけではダメです。
お客様が「これ欲しい」と思わなければ、売れません。
性能を高めるだけでは「これ欲しい」と思ってくれないのです。
ですのでお客様の現場に出て、お客様を観察して学び、どうすれば潜在的なニーズを捉えられるかを考えることが必要になります。
しかし組織の社員は、「研究所で商品性能を高めれば売れる」という「成功体験」を持っています。組織の色々なルールも、この成功体験を元に作られています。
多くの場合、トップはこんな状況に危機感を感じます。
そこで「もっと外に出て、お客様から学ぼう」と言うわけです。
しかし組織全体が「研究所内で商品性能を高める」という成功体験に最適化されていて、社員一人一人も「それが正しい」と腹の底から信じているので、なかなか行動を変えられないのです。
ではどうすればいいのか?
組織文化は「成功体験」が創り出しています。
組織文化は時に足かせになりますが、一方では見えない企業の強みも生み出しています。
ですので組織文化を否定し破壊するのは危険です。
一方でどんな組織にも危機感を持つ人は少数ながらいます。
その人たちで新しい挑戦を行い、成果を生み出し、徐々に広げていくことです。
そして新しい成功体験を蓄積し続け、今の組織文化を少しずつ変えていくことです。
高速で航行する大型タンカーが舵を切ると、最初は直進し続けます。
しかし舵を切り続ければ、徐々に進路は変わっていきます。これと同じことです。
まず少人数で危機感を共有。
そして具体的な行動で、小さな成果を出す。
そして、徐々に広げていく。
これをひたすら継続し続けることで、組織文化は徐々に変わっていくのです。
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いま「デザイン思考」が大ブーム。多くの企業が取り入れ始めています。
一方で、私は危うさも感じています。
よく誤解されがちですが、デザイン思考とはアップルのようなカッコイイ商品を作るためのものではありません。問題解決の方法論です。
デザイン手法を問題解決の方法論へ進化させて、イノベーションを生み出すためのものです。
デザイン思考では、「表面化したニーズ」と「潜在的なニーズ」のうち、誰も気がついていない「潜在的ニーズ」を発掘することで、誰もやっていなかったイノベーションを生み出すことを狙います。
ここでアイデアを重視します。しかし部屋に籠もってウンウン考えていても、いいアイデアは出てきません。
そこで現場に出て「観察」します。リアルな顧客を自分自身の目と耳で見聞きし、人が何に困っていて、どう使うか観察し、アイデアを重視して試作し、本当に役立つか確認します。
たとえばワルシャワにあるソフトドリンク会社は、テレビでデザイン思考の特集番組を見て、こう思いました。
「あれ?意外と簡単だな。自分たちもできるかも…」
彼らは地元の駅で乗客にドリンクを売るヒントを探すため、観察を開始しました。
現場で観察すると、一定のパターンに気づきました。
乗客の何名かが、電車到着前の数分間、一度飲料スタンドを見て、自分の腕時計を見て、その後にホームの先を見ているのです。
そこでこの会社は、時計を大きく目立たせた飲料陳列棚のプロトタイプを作成しました。すると売上が急上昇しました。飲料スタンドに時計があるので「到着前にドリンクを買える」とわかるからです。
このようにデザイン思考では、顧客を観察し、アイデアを出し、プロトタイプを作り、検証します。
その根本にあるのは、「すべての人には創造性はある!」という考え方です。
一方で、デザイン思考を取り入れようと考えている企業の多くは、このように考えているようです。
「デザイン思考、いいぞ!良いアイデアが出てこないウチの社員も、デザイン思考を学べばアイデアを出してくれるはずだ」
しかしこの考え方でデザイン思考を導入しても、失敗するのではないかと私は考えています。
たとえばデザイン思考では、ブレインストーミング(ブレスト)を重視します。
しかし現実には多くのブレストは失敗します。デザイン思考を提唱したIDEOのトム・ケリーは、著書でブレストの6つの落とし穴を挙げています。
(1).鶴の一声で始める …発想の自由が奪われる
(2).全員に順番が回る …強制してもアイデアはでない
(3).専門家以外は参加禁止 …凄いアイデアは素人発想
(4).社外で行う …その環境を社内につくるべき (vs. ホンダ)
(5).ばかげたアイデアを否定 …奇抜なアイデアが革新の種
(6).すべて書き留める …その間はアイデアは出ない
共通しているのは、発想の自由度を縛っていること。アイデアを生み出すためには、自由な発想が必要です。
「ウチの社員、アイデアがないの。いつもアイデア出しているのはマネージャーのオレばかり…」
こういうマネージャーがいたとしたら、そのマネージャーが、部下のアイデアが出ない元凶なのです。
デザイン思考で成果を生み出すためには、考え方を変えることが必要です。
「指示する」でのはなく、「自主性を尊重する」
「マネジメント」ではなく、「個人の自発」
「ティーチング」ではなく、「コーチング」
「コンサルテーション」ではなく、「ファシリテーション」
「社内に籠もり考える」ではなく、「現場で顧客から学ぶ」
もしデザイン思考を学んだ部下が奇抜なアイデアを出しても、上司のマネージャーが「そんな馬鹿げたアイデア、失敗するに決まっているだろう。やり直し!」と言うと、どうでしょうか? せっかく会社としてデザイン思考に投資しても、その投資はムダです。
デザイン思考は部下だけでなく、経営陣まで含めたマネジメントも、基本的な考え方を学ぶことが必要なのです。
先に紹介した下記の言葉は、前出のトム・ケリーの言葉です。
「全ての人には、創造性がある」
「部下は創造性がない」と考えるのではなく、「すべての部下は創造性に富む」と信じることが、デザイン思考の第一歩だと思います。
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先週の第1回「夜学永井塾」のテーマは、戦略。ポーターの競争戦略や、ミンツバーグの創発戦略、ルメルトの「良い戦略、悪い戦略」が題材でした。その中でお話しした内容の一部です。
先日、セブン―イレブン・ジャパン(以下、セブン)が、コンビニ弁当などで消費期限切れ寸前の商品を5%ポイント還元すると発表しました。
ポイント還元とは言え、実質は値引き。
このニュースだけ見ると、こう思いがちです。
「絶対に値引きをしない方針だったあのセブンが、ついに値引き。いよいよ価格勝負がコンビニ業界でも始まるのか?」
私は、この捉え方は違う、と考えています。
値引きの理由は、ライバルとの競争が激しくなったからではありません。
また顧客からの値引き圧力が理由でもありません。
マイケル・ポーターの「5つの力」で読み解くと、わかります。
「市場の競争は、同業者だけで行われているのではない」というのが「5つの力」の考え方です。具体的には次の5つとの力関係で競争状況が決まります。
■売り手…セブンに商品や労働力を提供する業者です。PB商品の製造元などです。
■買い手…セブンから商品を買う人です。我々消費者ですね。
■新規参入業者…コンビニに参入する業者です。参入障壁は高いコンビニですが、新技術で無人コンビニを模索するアマゾンGOなどです。
■代替品…コンビニの替わりになる業者です。品揃えを充実させているドラッグストアやEコマース業者などです。
■同業者…同じコンビニ業者です。セブン、ローソン、ファミマですね。
(ここまでは拙著「MBA必読書50冊を1冊にまとめてみた」で紹介した内容のサマリーです)
今回、コンビニ弁当5%ポイント還元策の発端は、セブン本部とフランチャイズ(FC)オーナーとの間で起こった問題が発端です。
世にあるセブン店舗のうちセブン直営店は10%以下。残りの90%以上は、自営業者であるFCオーナーがセブン本部とFC契約し、運営ノウハウやセブンのロゴ使用、さらに商品供給や経営支援を受けることで、店舗を運営しています。
いま人手不足や人件費高騰で、FCオーナーは厳しい状況に追い込まれています。
つい最近も「24時間営業はムリだ」と声を挙げたFCオーナーが話題になりました。
さらに店に並べる商品はFCオーナーが本部から買い上げています。仕入れした商品は廃棄しても、本部に仕入れ値を支払わなければいけません。廃棄食品の負担も、FCオーナーの利益を削っています。
本来、24時間営業、本部からの商品仕入れ規則、さらにお金の取り分などは、FCオーナーが店舗を開くときに、FC契約でキッチリ取り決めして合意しています。このFC契約のおかげで、セブン本部はFCオーナーには強い立場でした。
しかし「24時間営業はムリ」とあるFCオーナーが声を上げたことがきっかけで、「FCオーナーは搾取されている」という世論が盛り上がりました。経済産業省の世耕大臣もコンビニ各社の社長を集めて、24時間営業の見直しの指示をしたこともニュースになりました。
今や世論の後押しで、コンビニ本部はFCオーナーに対して「弱い立場」になりつつあるのです。
そこでセブン本部も、24時間営業の見直しや、廃棄前のポイント還元に着手せざるを得ないのです。
ただ5%ポイント還元と言っても、実際には電子マネーnanacoでのポイント還元。セブン本部が費用を負担しますが、その分は次のセブンの買い物で使うことになります。この辺りはよく出来ていると思います。
このようにコンビニ弁当5%ポイント還元策を「5つの力」で読み解けば、問題の本質もわかってきます。
「5つの力」のような経営理論を学ぶことで、このようなことも構造立てて洞察できるようになるのです。
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1ヶ月前に「MBA必読書50冊を1冊にまとめてみた」を出版しましたが、メルマガを読まれている方からこんな質問をいただきました。
「永井さんはなぜこのタイミングで、しかも既に数多く出版されてるMBAをテーマに、本を書かれたのでしょうか? 事前リサーチで『必ず勝てる』と判断された根拠は何ですか?」
色々な編集の方々とお付き合いしてきましたが、そもそも本が売れるか売れないかは、編集のプロでも「わからない」そうです。
一方で私は、「全ての新著は新規事業である」と思っています。
ですので本の執筆をする際には、新規事業立ち上げの方法論を使って1冊ずつ企画をしています。新規事業立ち上げですから、企画はあくまで仮説。『必ず勝てる』保証はありません。実は私も結構空振りしています。しかし仮説の精度を上げれば、勝率を上げることは可能だと思っています
著者としての企業機密も若干入っていますが、差し障りがない範囲で紹介したいと思います。
皆様が商品開発を企画する際に少しでも参考になれば幸いです。
【なぜ本書を書こうと思ったのか?】
私は著書で必ず参考文献を引用しています。担当編集の方と相談しているうちに、「順番を逆にして、参考文献を主体にした本を書くといいのでは?」というアイデアが出ました。そこでテーマを思いっきり絞って「海外MBAエリートが読む本」とし、インパクト重視で「50冊」にしました。
【そして分析】
世の中にある本を調べてみると、ビジネス書の要約本はそれなりに多いのですが、「海外MBAエリートが読む骨太な必読書」という視点で数十冊をまとめた本は、ありそうで意外とありません。あってもその理論を使った日本事例がなかったり、本の要約を箇条書きにしていたり、複数の人が分担していたり、10冊程度をサマリーしたものが多いのです。
【分析からの知見】
・「海外MBAエリートが読む骨太な必読書」の視点で50冊選ぶのは意外と価値がありそうです。
・それらを一人の著者が首尾一貫して、図や日本の事例も入れて噛み砕いて面白く読めるようにし、かつ50冊で相互の関連性も示すのは結構大変。ビジネス書著者にとって、負荷が大きいですよね。(私も正直にいうと「本当にこんな本、書けるのか?」と思いました)
【知見からの仮説】
・これは、「みんなが欲しいのに、ありそうで意外とない本」になるのではないか?
・本書を出すことで、私自身の使命である「日本のビジネスパーソンのビジネス力向上」に少しでも寄与できるのではないか?
・さらに、永井個人の著者としての強みも活かせるのではないか?
・結果として、本書も差別化できるのではないか?
【仮説の検証】
・実際に執筆途中のエッセンスを朝活・永井塾でご紹介したり、メルマガに書いたりして検証しました。このおかげでどのポイントに関心があるかを掴みながら書くことができました。(皆様に感謝です!)
ところで上記はわかりやすくするために、あたかも私一人で頑張っているように書いていますが、実際には本の企画は、担当編集の方との密接な協同作業で進めています。これは企業の商品開発チームと全く同じですね。今回もとても優秀な担当編集の方に恵まれ、色々と教えていただきました。さらに営業面でもご尽力いただきました。有り難い限りです。
こうして、2018年7月から6ヶ月間かけて書き上げたのが本書です。
当初の想像以上で、かなり大変。(笑)
この半年間は朝から晩まで、原書と原稿と格闘し続けました。
おかげさまで書店を中心に売れており、「この内容を研修して欲しい」とのご依頼も企業様から何件かいただいております。
新商品を企画するポイントは、「実は皆が欲しいんだけど、ありそうで意外とないもの」であることを、今回改めて実感しました。
ということで、もしよろしければ周囲の方にも本書をお勧めいただければ、とても嬉しく思います。
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かつて「ユニクロ野菜」と呼ばれた新事業をご存じでしょうか?
ユニクロを展開するファーストリテイリングは、2002年に生鮮野菜の生産・販売事業「SKIP」を始めました。「なぜアパレルのユニクロが、野菜を?」と思ってしまいますが、勝算はあったのです。
ユニクロはアパレル業界で生産・流通合理化を徹底してムダを省き、低価格でよい商品を提供してきました。彼らから見ると、野菜や果物の生産と流通はムダだらけに見えました。「アパレル業界で培った合理化スキルが活かせる」と考えたのです。しかも当時、食の安全・安心に人々の注目が集まり始めており、安心して食べられるおいしいものがなかったのです。チャンスがあると考えました。
「安くていい衣料を消費者に届けてきたユニクロでの経験は、食の世界でも活かせるはずだ」と考えた担当者が、新規事業としてSKIPを役員会に提案しました。役員は全員反対でしたが、社長の柳井さんだけは違いました。
「やってみろ」
2002年、こだわり野菜を実店舗9箇所とネットで販売するSKIPがスタート。
実は当時、かくいう私もこのSKIPの野菜を注文していました。美味しい野菜でした。
しかしSKIPは、ファーストリテイリング史上で最大級の大失敗プロジェクトになり、一年半後に30億円の大赤字を出した末、担当者と柳井会長は撤退記者会見を開きました。
「会社を辞めるしかない…」と覚悟を決めた担当者に、柳井さんはこういったそうです。
「一回失敗したくらいで何をいっている。経験を次に活かせ。そして、カネを返せ」
そして柳井さんは、社内の課長職以上を全員集めて、反省会を開催しました。マネージャーたちは「あの野菜事業はとんでもない」と率直な意見を出し合いました。反省ポイントは3つありました。
①顧客ニーズの把握が甘かった。「よいものを作れば売れる」という商品中心の考え方で、顧客の視点がなかった。多忙な主婦は1カ所で全部買いたいと考えていたが、SKIPは野菜だけ。しかも通販で選べない。
②野菜の生産・流通・小売りの全行程について勉強不十分だった。ユニクロは「農産物の企画・生産・流通を全部コントロールすればOK」と考えた。しかし実際には、農産物業界の人たちは何十年も苦労してきた。ファーストリテイリングはアパレルでは業界経験を蓄積していたが、農産物業界では経験を持っていなかったのである。
③パートナーである関係者への影響に関する認識が甘かった。農家、出店先の百貨店などの期待を裏切ってしまった。
担当者は、この反省会の結果を小冊子にまとめました。SKIPの大失敗から、ファーストリテイリングは確実に学んだのです。
数年後、担当者は大赤字だったGU事業の副社長を任されました。SKIPの大失敗から「消費者にインパクトを与える商品が必要だ」と考え、990円ジーンズを投入。大ヒットさせてGUは黒字化し、息を吹き返しました。
しかしその成功も長くは続きません。1年経つと売上は前年を割り始めました。
そんな時、担当者はGU社長に指名されます。ちょうどH&MやZaraなどの強力な外資系ファストファッションが次々と日本に上陸している時期。廉価版ユニクロなんて誰も求めていません。どういう商品があれば消費者は嬉しいかを考え抜きました。
女性社員に「どういう服が欲しいか?」聞いて回ると、「日本人がデザインしているファストファッションって、ありそうでない」。
これがヒントになり、外部デザイナーに委託していたのを、自社デザイナーに切り替えた。その後GUは成長を続けています。
「数え切れないほど失敗をしている」が口癖の柳井さん自身、「一勝九敗」という著書も出しています。
ユニクロは数多くの新しい挑戦を行い、数多くの失敗もしていますが、失敗しても素早く見切って損切りしています。そして失敗からは確実に学んでいます。だからユニクロは成長しているのです。
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旅行業のエイチ・アイ・エスは「変なホテル」を2015年から展開しています。
「変なホテル」は、2015年に「初めてロボットがスタッフとして働いたホテル」としてギネス認定されました。
受付では恐竜や女性のロボットが宿泊客を出迎えます。ルームサービスや掃除など、ありとあらゆるサービスをロボットで自動化しています。
「へぇ。ずいぶん変わったことをしているなぁ」
こう思いがちですよね。
実は変なホテルが目指しているのは、究極の生産性向上と収益性です。
2015年から2年間、エイチ・アイ・エスはハウステンボスで変なホテルをパイロットとして営業してみました。結果は開業当初はスタッフ30名で72室を運営していたところ、2年後には7名で144室運営できるようになりました。実に8倍の生産性向上です。(バスルームやトイレ掃除の最終チェックは人間が行っているそうです)
客室稼働率は9割。運営利益率は、通常のホテルでは30%のところ、倍近くです。
2018年10月の決算では、エイチ・アイ・エスのホテル事業の総売上は120億円。営業利益は21億円。しかも高成長を続けています。4年後には台湾・ベトナム・タイなどの海外展開も含めて、100店舗・1万室の展開を目指しています。一大ホテルチェーンになりますね。
人手不足は将来も解消しません。それならば、機械に出来ることは機械に任せた方が、宿泊客を待たせることがなくなるし、宿泊客のストレスも減ります。そしてホテルスタッフは人間しかできないことに集中できます。
こうして変なホテルは、3.5星クラスの利便性が高い多彩なサービスを徹底無人化により提供することを目指しています。結果として高収益を実現しています。
これまでのホテルの常識は、「品質が高いサービスを提供するには、人間のスタッフが必要」ということでした。しかしこれをゼロから抜本的に見直し、ホテルを再定義しているのです。ちなみに「変なホテル」の「変」には「変わり続ける」という意志が込められています。
変なホテルの挑戦は、他業界でも参考にすべきだと思います。
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「愚直に継続するのが最強」といわれます。
よくウサギとカメのたとえが使われますよね。
でもそもそも、なぜ「愚直に継続するのが最強」なのでしょうか?
北海道のコンビニでシェアトップは、セブンではなく、北海道の地元コンビニであるセイコーマート(以下セコマ)です。
セコマは北海道以外ではほとんど展開せず、北海道に特化しています。大手コンビニで当たり前にやっている全店24時間営業や、ドーナツ/おでんなどの商品取り扱いもやりません。その代わりに広大で僻地も多い北海道に特化するため、FCにこだわらず自社店舗を展開し、店舗配送も自社で行い、コストを下げるために北海道の安くて美味しい食材を活用して自社で食品も製造販売しています。
いまやセコマは北海道の生活基盤。昨年の北海道地震で道全域が停電する中、セコマの95%の店舗は営業を続けました。これも北海道に特化し、暴風雪や災害対策を見直し続けた結果です。
競争戦略の第一人者であるマイケル・ポーターは「活動システム」という考え方を提唱しています。活動システムとは「やらないこと」を明確にした上で、様々な活動をシステムのように密接に連携させる仕組みです。
セコマの場合、こうなります。(拙著「世界のエリートが学んでいるMBA必読書50冊を1冊にまとめてみた」からの引用です)
一つ一つの活動は、やろうと思えば真似できるかもしれません。
しかしこれが積み重なることで、誰も真似できない圧倒的な強みになるのです。
たとえば、一つの活動を模倣できる可能性が70%とします。
■2つの連携した活動を模倣できる可能性は、49%。
■3つの連携した活動だと、34%。
■5つの連携した活動だと、17%。
この程度であれば、相手が頑張ってやろうと思えば真似されてしまいます。
■10個の連携した活動だと、2.8%。
この辺りになると、とても真似されにくくなります。
■20個の連携した活動だと、0.08%。
■30個の連携した活動だと、0.002%。
こうなると、まず絶対に真似できません。
現在のセコマの経営者は、「広い土地、少ない人口、高い配送コスト。生き残りを考えたら、自然とこうなった」とおっしゃっています。
お客様にとって意味ある活動を考え抜き、それを愚直に積み重ね続けることで、ライバルが絶対に真似できない強みを創り上げることができるのです。
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月6,800円で高級バッグ使い放題というサービスを提供しているのが、ラクサスです。
いま流行のサブスクリプション(サブスク)モデルですね。
女性にとって高級バッグ選びは一大イベントです。
ヴィトンのような高いバッグだと数十万円の投資です。
買った後に「やっぱりイヤ…」だと、ショックが大きいですよね。
男性には意外なことですが、女性にとってバッグ選びは意外と「苦しみ」があるのです。
そこでラクサスは、返済義務なし・いつでも交換可能にして「バッグを選ぶ苦しみ」から解放しました。お客さんは価格比較サイトなどを見てから申し込んでいるそうです。お得感もあるのですね。
ラクサスの児玉昇司社長は、「返済義務をなくし、選ぶ苦しみから解放するには、サブスクしかなかった」といっています。
ラクサスでは「継続率」を最重要KPIとして見ています。
顧客の継続率は平均90%。9ヶ月以上使い続ける顧客は95%以上。使い続ける顧客ほど継続率が100%に近づきます。使い続けるためには、高い顧客満足度の徹底追求が必要です。そこでバッグの品揃えを強化したり、沢山あるバッグから欲しいバッグが見つかるようにAIでマッチングをしたりしています。
もう1つ大事なポイントが、「クレーマーや困った客は一発退場」ということ。
当初は月29.800円でした。バッグを汚して返却したり、しつこく苦情を言ってくる客への対応のためお金がかかっていました。
しかし実際には、マナーの悪い客は全体の1%だけ。
1%のマナーが悪い客のために、残り99%が割を食っていました。
これって、フェアじゃないですよね。
そこで「クレーマーや困った客は一発退場」というルールを決めて、6,800円を実現しました。実に1/4です。おかげで値ごろ感が出て、顧客も大きな価値が得られるようになりました。
ラクサスの他にも、あえて顧客を選ぶサービスがあります。
私は蔵書をデジタル化するためにBookScanというサービスを使っています。とても重宝していますが、BookScanでも「トラブル防止のための注意事項」として、このような一文が書かれています。
「様々な意見はございますが、弊社では従業員第一主義のもと、お客様のご協力とご理解があってこそ、様々なサービスをベストエフォートでの提供と割り切り、数百円という低価格で実現しております。お客様とのやりとりの中で、注意事項をお読み頂いていない場合や、お客様が当社に求めるクオリティに満足頂けず、今後も当社では改善が見込めない場合、サポートセンターでの暴言や恫喝等があった場合、ミスに対して執拗に謝罪を求める行為や金品・及び追加サービスを要求されるお客様には、誠に勝手ではございますが、お取引を一方的に終了させて頂く場合もございます。あらかじめご了承ください」
いずれもあえて顧客を選ぶことで、サービスレベルを上げています。
お客様は、神様ではありません。
お客様は、大切な人です。
だから、あえて自分で選んで良いのです。
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「あ、戦略作り? コンサルや部下に任せていますね。
ちゃんと私がチェックしてます。OKなら、全社方針にしています」
あからさまにこのようにおっしゃる方は、実は滅多にいません。しかし、
「何よりも現場やお客さんが大好き」
「社内の人間関係もとても大切」
「でも戦略を考えるのは、どうも苦手で…」
というトップは、意外と少なくありません。
現場やお客さんが大好きなことも、社内の人間関係を大切にするのも、素晴らしいことです。とは言っても、会社の戦略作りは外注してはいけません。トップが考えるべきものです。
確かに「より多く、より豊かに」が勝つための方程式だった時代は、目標が明確でした。戦略がなくても一生懸命に仕事をすればビジネスは成功しました。
しかしそんな古き良き時代は20世紀で終わりました。
いまは、いかに見えない顧客ニーズを素早く捉え、ライバルに先んじて市場を制することが必要な時代です。20世紀の勝ちパターンを変えずに一生懸命に仕事をしても、間違った方向に努力していると成果が上がらない
「組織が何を目指すのか?」
「それで勝てるのか?」
「それを具体的にどのような行動で実現するのか?」
これらが明確に問われる時代になりました。
これを決めるのが戦略です。
さらにいえば、戦略を作る力はいまやトップに限らず、ビジネスパーソン一人一人にとってもビジネスの基礎力です。
その肝心かなめのビジネスの基礎力を、トップがコンサルや部下に丸投げしていては、ビジネスがうまくいくわけがありません。
最近は戦略企画部門を廃止する会社も出始めました。戦略はトップ自身、あるいは事業部自身が責任を持って考えるべきもの、という考えが浸透し始めているのでしょう。
トップに限らず、日本のビジネスパーソン一人一人が戦略を作る力を高められれば、日本はもっと元気になります。
私が多くの方々がマーケティング戦略のキモがわかるようにわかりやすいビジネス書を執筆したり、朝活「永井塾」や夜学「永井塾」を行っているのも、そんな戦略策定力を一人一人に身につけていただくお手伝いができればとの想いからです。
戦略作りの外注はやめて、自分が戦略を考えられるようにしましょう。
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居酒屋「鳥貴族」は、2017年10月に28年ぶりに価格改定して、全品280円を298円に6%値上げしました。
その後、3月まで15ヶ月連続で前年比で既存店の売上高・客数ともに減り続けています。
さらに値上げ1年が経過した2018年10月以降は、客単価も前年比2-3%減っています。
(以上、鳥貴族IR情報より)
一方で「QBハウス」は今年2月1日に1080→1200円へ11%も値上げしました。
私は昨年8月に当コラムで、「値上げ後も、意外と客離れは少ないのではないか」と書きました。
結果は、値上げ後2月/3月の売上は、既存店は2月は+9.6%。3月は+9.9%。客離れは6%の予想でしたが2%に留まりました。
(以上、QBネットIR情報より)
両者の違いは、何なのでしょうか?
鳥貴族の場合、格安居酒屋は他にも沢山ありました。ですので「安いから鳥貴族に行く」というお客は、「値上げしたから、別の店に行こう」となります。しかも値上げニュースがメディアで大きく伝わったので、実態以上に「高くなった」というイメージが定着してしまいました。
低価格をウリにすると低価格目当てのお客が集まり、低価格目当てのお客はたとえ6%値上げでも離れるということです。
ちなみに家具のニトリが「同じ商品は絶対に値上げはしない」という方針を貫いているのは、この怖さを知っているからです。
一方でQBハウスは、大手理髪チェーンでは代替がありません。さらにQBハウスに行くお客は、価格だけでなく「10分でカットできる」という価値も評価しています。ですので11%も値上げしても、意外と客離れが少なかったのでしょう。
鳥貴族が28年も280円で頑張ったのは、実に凄いことだと思います。しかし鳥貴族といえども、6%の値上げでこんなに苦しんでいます。
競争が激しい市場で低価格戦略を選んだら、絶対に値上げしてはいけない、ということを、鳥貴族とQBハウスの事例は教えてくれます。
やはり低価格戦略は、できる限り避けるべきだと私は思います。
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戦略は、一つに絞ることが必要です。
しかしともすると私たちは、なかなか戦略を1つに絞り込めません。特に意志決定者の意見が割れたりすると、折衷案として「戦略を1つに絞るのはリスク」と考え、「リスクヘッジ」の名目で、複数の戦略を立てることがあります。
しかし複数の戦略はリスクヘッジとはならずに、逆にリスクが増えます。
1941年12月に始まった太平洋戦争は、緒戦の半年間は日本軍は米軍に対して圧倒的に優勢でした。日本軍が劣勢に転じたきっかけは、1942年半ばのミッドウェイ海戦でした。(ミッドウェイは、日本とハワイの中間地点にあります)
ミッドウェイ海戦では、日本軍の目的は2つに分かれていました。
帝国海軍・連合艦隊では、戦略の目的は「米海軍の空母機動部隊の撃滅」でした。当時、米国海軍の空母艦隊は健在だったので、「太平洋の制海権を取るために、彼らを撃滅しなければ」と考えたのです。
一方で軍令部では、戦略の目的は「ミッドウェイ島攻略」でした。直前に日本本土が少数の米軍機で空襲されたので、「本土再空襲阻止のために、ミッドウェイ島の攻略が必要だ」と考えたのです。
両者譲らず、戦略の目的は一本化できませんでした。
そこで「米国海軍機動部隊を殲滅するとともに、ミッドウェイ島の攻略を図る」という曖昧な戦略目的が立てられました。
結果は、惨敗。
空母の甲板上で、日本海軍の攻撃機が陸上基地攻撃用爆弾を抱えて攻撃準備していました。しかし「敵空母発見」の方を受けて攻撃用魚雷に1時間かけて換装することになりました。このタイミングで米国海軍急降下爆撃機の爆撃を受けました。爆弾と燃料満載の空母甲板が直撃され、日本海軍の主力空母を4隻喪失してしまいました。
その後、太平洋の制海権を失った日本軍は劣勢に転じ、そのままジリジリと敗戦の道を歩み始めました。
ちなみにこの時の米国海軍の戦略目標は、「日本空母の殲滅」と首尾一貫して明確でした。
あいまいな複数の戦略目標を持つことが、リスクヘッジになるどころか、むしろ戦力が分散し、大きなリスクを抱えることになるのです。
しかしこのような意見もあるかもしれません。
「そうは言っても、失敗したときの二の矢、三の矢が必要なのではないか?」
これは全くその通り。二の矢、三の矢を考えることはとても重要です。
しかし、一の矢、二の矢、三の矢は、すべて同じ戦略目標に対して準備するものです。
二の矢、三の矢は、あくまで一の矢が失敗したときにバックアッププランなのです。
戦略で一番難しいのが、「選択」です。
難しい選択を避けるから、戦略が失敗してしまうのです。
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かつて「模倣戦略」という戦略がありました。成功している他社商品の模倣をすることで、商品開発のリスクや開発コストを下げようとする戦略です。
しかし現代は、模倣戦略ではなかなか成功できません。
理由は2つあります。
一つ目は、ヒット商品の賞味期限が短くなっていることです。
中小企業研究所の調査によると、ヒット商品のライフサイクルは、1970年代では50%以上が5年以上でした。2000年代になると50%以上が2年以下になりました。2004年の調査なので今はもっと短くなっています。
ヒット商品の成功を見て、「自分もやろう」と商品やサービスを開発して売っても、既にヒット商品の旬が終わっていることも多いのです。
二つ目は、顧客のニーズが細分化していることです。
勝つのは、細分化したニーズに最適化した商品です。ここで必要なのが、顧客ニーズに関する知識。これは既に顧客に使ってもらっている先行商品の会社が圧倒的に有利です。
模倣戦略で後から商品を出しても、顧客知識が追いつかないのです。
「ヒット商品の賞味期限が短くなっている」「ニーズが細分化している」という2つの理由で、模倣戦略は成功しないのです。
模倣戦略の行く末には、激しい価格勝負のレッドオーシャンが待っています。
このように考えると、新規事業は「お宝探し」に似ています。
「お宝を見つけた」という人の話しを聞いて、そのお宝の場所に行っても、既にお宝はありません。
だから学ぶべきは、「お宝の場所」ではありません。
「どうやってそのお宝を見つけたのか?」という戦略の考え方です。
新商品開発でも、成功した商品を模倣するのではなく、その商品を成功させた戦略を学ぶべきなのです。その戦略の考え方を自分たちの場合に当てはめて考えれば、自分たちらしい成功を導き出すことが出来るのです。
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このような方によくお目にかかります。
「自分は、企画力にはとても自信があります」
しかしよくお話しを聞いてみると、「企画を考えるまでが自分の仕事。それを実行するのは他の人」と考えている方が少なくありません。「企画を考えるのは得意だけど、資料を作るのは苦手…」「人との交渉は面倒くさい…」というわけです。
言い方は厳しいかもしれませんが、これは子供の考え方です。ビジネスパーソンの考え方ではありません。
ビジネスパーソンの場合、企画を形にするところまで含めて、企画力です。
「企画を形にする」とは、このようなものです。
・その企画を通して、関係者を納得させる
・さらに、予算を付ける
・さらに、企画を実行する
・さらに、実行してアウトプットを生み出す
・そして、アウトプットにより、当初の成果を挙げる
たとえば製品開発では、
・考えた商品企画に対して、商品開発部門・営業部門を納得させる
・さらに、管理部門と交渉し開発予算を付ける
・さらに、商品開発する
・さらに、商品を出荷し、顧客に届ける
・そして、実際に売上を挙げる
あるいはイベント企画では、
・考えたイベント企画に対して、イベント予算を持つ部門を納得させ、予算を取ってくる
・さらに、実際にイベントの段取りを考え、ターゲット顧客を集客する
・さらに、企画通り実行する
・そして、予定通りの集客を達成し、お客様に満足していただく
アイデアを生み出すだけでは、「企画力がある」とは言えません。
斬新なアイデアを考えるだけなら、恐らく発想の制約がない幼稚園児の方が、はるかにイノベーティブです。
ビジネスの世界では、実行した上で「成果を挙げる」ところまで形にして、はじめて「企画力がある」と言えるのです。
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私は本を書く際に自分の文章を読み返して、「なんかここはモヤモヤするなぁ」という部分があります。
そういうところはたいてい、ロジックが明確でなかったり、わかりにくかったりします。私がモヤッとする部分は、読者の方もモヤッとするわけで、これは問題です。
そこで、なぜモヤモヤするのかを考え、色々と調べてみると、それまで知らなかった新しい発見があることも多いのです。こうしてロジックを明確にしたり、わかりやすくすると、「それまでモヤモヤしていた部分」が「光りモノ」「読みどころ」に変わることも多いのです。
ビジネスも同じだと思います。
「何かモヤッとする…」というところに、ビジネスの大きなヒントが隠されていることも多いのです。
たとえば、旬八という青果店があります。普通の青果店の野菜や果物は傷もないし、サイズも形も揃っていますが、現実には農家で育てられた農作物は、サイズも形も違うし傷もあります。これらの規格外は市場で入れないので、廃棄されています。これが全体のなんと3割。もったいないですよね。
そこで旬八は農家と直取引をして、規格外品を半値で仕入れています。農家は捨てていた野菜が売れるので大歓迎。お客さんも安く買えます。旬八も粗利50%とのこと。
これも「モヤモヤ」を解決した結果です。
旬八の左今社長は学生時代、ファストフードなどの不本意な食生活を繰り返していました。一方で地方に行くと、食生活は豊かでも高齢化や定収入で先行き不安な農家が多い現実に出会いました。これって、なにかモヤモヤしますよね。
そこで「農家と消費者を繋げて、農家も都市の食生活も豊かにしよう」と考えて、青果店では常識だった青果市場からの調達を見直し、農家から規格外の野菜や果物を直接調達することで、激安でもすべての関係者が儲かるビジネスを創り上げました。「モヤモヤ」を解決した結果、新しいビジネスが生まれたのですね。
あなたの近くにも、「モヤモヤすること」ってありませんか?
それは意外と大きなビジネスチャンスかもしれません。
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3月4日、広島で行われたJTB協定旅館ホテル連盟中国5支部様の合同宿泊増売連絡会議で講演を致しました。
会場には、JTB旅ホ連の広島・鳥取・島根・岡山・山口各支部から、約80名の皆様がお集まりになりました。
講演では、長野県・阿智村の取り組みを中心に、いかに強みを活かして価値を創るかというお話しをいたしました。
このような機会をいただき感謝です。
こんなお悩みを抱える経営者やマネージャー、少なくありません。
「ウチの社員、やる気がなかなか出ないんだよね」
「起業家の発想で事業に取り組んで欲しいんだが。結局オレが指示しないと何もしない」
しかしこの発想は、そもそも間違いなのです。
「やる気」とは、外部から与えられるものではありません。
自分の内部から沸き上がってくるものです。
外部から与えられるモチベーションを「外発的動機付け」といいます。
自分の内側から沸き上がるモチベーションを「内発的動機付け」といいます。
腹ペコのオットセイが飼育係が持つ魚を目当てに、前ビレで拍手したり観衆に手を振ったり、という曲芸をやるのが、外発的動機付けです。餌が目当てなので、餌がなくなると曲芸をやめます。
一方で猿にパズルを与えると、何も報酬を与えないのに、熱心に楽しそうにパズル解きに取り組みます。心理学者のバリー・ハーロウはこの「自ら学びやる」という現象を内発的動機付けと名付けました。
では外発的動機付け(=報酬)で内発的動機付けがどう変わるのでしょうか?心理学者のデシは学生を2グループに分けて、パズル解きの実験をしました。
報酬を与えたグループ(=外発的動機付けチーム)は、実験が終わるとパズル解きをやめました。
報酬を与えなかったグループ(=内発的動機付けチーム)は、実験が終わってもパズル解きが「面白い」と思って続けました。
前者のチームは外発的動機付けのおかげで、パズル解きの面白さ(=内発的動機付け)を感じなくなってしまったのです。
人は誰からも指図されず自分で行動を選べる時、活き活きと行動します。
人は「自律性を持ちたい」と思っているからです。
自律性とは、自分の行動を自分で決めることです。
外発的動機付けは自律性を弱めます。「誰かに統制されている」という感覚になり、「自分でこの行動を選んだ」という感覚が弱まり、内発的動機付けも弱まるのです。
デシはさらに追加実験を二つ行いました。
「パズルが解けないと罰する」という脅し文句を使ってみると効果があり、パズル解きは順調に進みました。しかしパズルを楽しむ感覚はすっかり消滅しました。(人に圧力をかけるという点で仕事の目標押しつけ・締切設定・監視も「脅し」の一種です)
さらに二人一組でパズル解きを行い、相手と競争させてみたところ、内発的動機付けが弱まってしまいました。
報酬・脅し・目標設定・監視・競争で、内発的動機付けは弱まったり、消滅してしまう、ということです。
人は自らが行動を選択することで、その行動に意味を感じて納得します。
選択の機会が、内発的動機付けを高めるのです。
世の中の新規事業を立ち上げる人たちは例外なく、「自分でこれをやりたい」という強い想い(=内発的動機付け)を持って事業を立ち上げています。
「ボスに言われたからこれをやらなければ…」と新事業を立ち上げて成功した人は、私は寡聞にして知りません。
私もクライアント企業様をご支援する際には、様々な方法で参加メンバーの内発的動機付けを引き出す工夫をしています。
「オレは部下をオットセイだと思っていないし、餌で釣っていない」
こう思う方もいるかもしれません。
しかし悪気はまったくないのにいつの間にか部下の内発的動機付けを殺しているマネージャーや経営者は、決して少なくありません。
あなたは部下の内発的動機付けを、本当に尊重し育んでいるでしょうか?
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近所にある普通のスーパーが、全国から食材を取り寄せたお洒落なグルメ売り場に改装しました。
「この沿線に住む専業主婦は、グルメが多いから」
ということのようです。
改装から数週間後…。
改装前は夕方にはレジ待ち行列があったのですが、改装後は行列が消えました。レジ待ち行列の減り具合から推察すると、売上3割減です。
「沿線に住む、グルメな専業主婦」をターゲットに、お洒落な高級食材店に生まれ変わったのに、なぜ売上が減ってしまったのでしょうか?
最近流行の「ジョブ理論」で読み解くと、理由がわかります。
ジョブ理論は「ジョブ」「雇用」「解雇」という独特の言葉で商品を買う理由を考えます。具体的には、顧客の立場に立って次の質問を問い続けていきます。
「どんな『ジョブ(用事)』を片づけたくて、顧客はその商品・サービスを『雇用』するのか?」
実は改装前のスーパーは、普段の食材や台所用品などの日用品が1カ所で揃うので、我が家も重宝していました。しかしグルメな食材に特化したため、洗剤などの日用品が棚から消えてしまい、とても不便になってしまいました。
ジョブ理論的に考えると、以前のスーパーは「夫や子供の帰宅前に夕飯づくりを済ませるため、短時間で買い物を済ませたい」という主婦たちの「ジョブ」に「雇用」されていました。
しかしグルメ食材店に特化したことで、主婦達の「必要なものをすべて短時間で買い揃える」という「ジョブ」に応えられなくなり、「解雇」されてしまったのです。そして隣にある昔ながらのちょっと古めなスーパーは大賑わいです。顧客がゴッソリと移動してしまったのですね。
本来必要なことは、表面的に顧客を「沿線に住むグルメな専業主婦」と捉えるだけでなく、顧客を徹底的に観察して「解決したいジョブ」を見極め、「雇用」されることなのです。
ちなみに売上3割減はさすがに困ったのでしょう。このスーパーは改装5ヶ月後にも関わらず、現在再改装中です。この判断の速さは素晴らしいですね。地元住民としては「今度はちゃんと私たちのジョブに応えられる店になって欲しいなぁ」と願っています。
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ライバルとの競争が激しい市場で商品を企画する時、「いまの売れ筋はコレだから、この商品を作ればきっと売れる」と考えて企画を立てる人が少なくありません。
しかし先行する売れ筋商品よりも売れることは、ほとんどありません。
競争が激しい市場ほど商品寿命は短くなっています。
売れ筋商品が売れている時点で、その売れ筋商品の賞味期限は切れつつあります。
そんなタイミングで企画を立てて、商品を開発して売り始めても、所詮は二番煎じ。
しかも劣化版コピーにしかなりません。
確実な方法は、ライバルに先行することです。
「ライバルに先行するのなんて難しい」と思うかもしれません。
しかし、必ずしも難しいことではありません。
お客様を観察していれば、必ずお客様のお困りごとが見つかるはず。
お客様が困っているということは、「誰も解決策を提供していない」ということ。
既にライバルが解決策を先行して提供していれば、お客様が困っていません。
お客様のお困りごとを徹底的に探し出し、真っ先に解決すれば、ライバルに先行できます。
そしてお困りごとの潜在的な大きさが大きいほど市場は大きく、売れるのです。
ここで必要なのは、1歩も2歩も先に行かないこと。
お客様がついてこれないからです。
常に半歩程度先に「お困りごと」を解決することが必要なのです。
売れ筋商品は逆です。見つけた時点で既に半歩後ろにあります。だから売れないのです。
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私たちが日常生活で見かける「販売」は小売店にいる消費者相手の売り子さんが多いのですが、現実には世の中の多くのセールスは、企業相手の法人セールスです。
法人セールスの現場では、セールスマネージャーとセールスがこんな会話をしがちです。
「ヤマダ君。売れそうかな?」
「大丈夫です!行けますッ!」
でもその根拠は感覚だったり、勘だったりすることが多いものです。
私がIBMにいた時、セールス案件ごとに「この場合、CRAは何だろう?」と議論することがよくありました。
CRAとは“Compelling Reason to Act”の略。日本語で「お客様がどうしても買わなければならない差し迫った理由」のことです。
消費者は「これ、なんか好き!」で衝動的に買ったりしますが、法人のお客様は常に合理的に買うかどうかを判断します。
だからCRAが大切になるのです。
ここで1つの指標になるのが、顧客の反応です。顧客の反応は、大きくわけると次の4つに分けられます。
1.成長志向型:求める結果が、現状よりも高く、ギャップがある
2.トラブル型:求める結果に、現状がトラブルで追いつかず、ギャップがある
3.平静型:求める結果と現状が一致している
4.自信過剰型:求める結果に対して、認識している現状はずっとよい
図にするとこうなります。
「成長指向型」「トラブル型」は売れる可能性が高いのですが、「平静型」は売れる可能性は低く、「自信過剰型」は売れる可能性ゼロです。
お客さんの反応を見ながら、お客さんが「成長指向型」「トラブル型」いずれの課題を抱えているのかを見極めていきたいものです。
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今朝、第24回朝活勉強会「永井塾」を行いました。
テーマは「法人営業のための戦略販売」。
会社で営業を担当している方の多くは、法人セールスです。
ともすると現場では、こんな指導をするマネージャーを見かけます。
「オフィスで考えるのは時間のムダ。お客様に自分を売り込め!」
確かにお客様と話すことは大切です。しかし場当たり的なセールスは成功確率が低いのも現実です。法人セールスでは多くの人たちが複雑に絡むので、戦略が必要です。
この法人営業で世界のバイブルと言われているのが、R.B.ミラーの「戦略販売」。30年以上前の本ですが、世のセールス本の多くはこの本がベースになっています。そこで今回の永井塾では、本書で紹介している法人営業の6要素を紹介した上で、最新の考え方もご紹介し、法人営業に関わっている方々と生の体験を話し合いました。
今回はお申し込みが30名。多くの方々にご参加をいただき盛況でした。有り難うございました。
次回の朝活勉強会「永井塾」は3月6日(水)。「企業の強みを考える(コアコンピタンスとVRIO)」というテーマで行います。
詳しくはメルマガでご案内していますので、参加希望の方はメルマガにご登録いただければ幸いです。ご参加をお待ちしております。
戦略は仮説です。仮説だから、いくつかの仮定に基づいています。
しかし現実には「その戦略、仮定と仮説は何ですか?」と尋ねても、「は?仮定と仮説って何のこと?」とポカンとされることが少なくありません。
1970年代にこのように考えた洋服販売会社がありました。
【仮定1】紳士服は百貨店で買う高級品というのが常識だが、消費者は安い紳士服を求めているはずだ
【仮定2】米国では郊外で巨大駐車場を併設するショッピングセンターが大賑わい。日本では自家用車が急速に普及し続けているので、カーショッピングの流れは来るはずだ
【仮定3】都会の店に立ち寄る顧客は一見客が多いが、カーショッピングだと目的買いの客なので、買う可能性が高いはずだ
【→仮説】郊外ローサイド型店舗(幹線道路の脇に建てて車で買い物に来る店)を作れば、繁盛するはずだ
こうして田んぼの真ん中に突然現れたのが、紳士服専門店「洋服の青山」の1号店。
店を見た同業者は「気がふれたか」と笑っていました。実際にオープン当初、客は一人も来ませんでした。
しかし仮定に立ち戻れば、客が来ない理由がわかります。仮定1〜3が間違っているわけではありません。しかし店から眺めると、目の前の幹線国道を走るのはトラックやライトバンの商業者ばかりだったのです。
問題は、認知度でした。
そこで手持ちぶさたの店長と販売員は、手分けして半径15Kmにくまなくパンフを定期的に配りました。
半年間これを継続すると、徐々に客が来るようになり、仮定3の通り来店客はほぼ100%買いました。
この経験で、2号店移行は事前に販売活動を徹底してから開店するようにしたところ、開店日から売れるようになり、洋服の青山は急成長を始めました。
このように、戦略はいくつかの仮定をブロックのように組み合わせて、仮説として考えます。そして上手くいかなければ、ブロックの仮定に立ち戻って検証します。
御社のその戦略、仮定と仮説は何でしょうか?
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悪役専門の芸能事務所「高倉組」をご存じでしょうか?
ドラマやバラエティ番組で、凄い存在感で悪役を演じている人が数多く在籍しています。
それもその筈、所属する約60人のうち8割が元暴力団員や不良です。
この高倉組に入るには、「3つの条件」があるそうです。
①5年以上、反社会的勢力と関係がないこと
②仕事を持ち、収入面で自立していること
③守る人がいること
辛い経験をして、警察の協力で組織とやっと縁を切った人も多いのですが、カタギになっても今度は普通の会社がなかなか雇ってくれません。そんな中で頑張っている人も多いそうです。
元暴力団員などの社会復帰を支援する「再チャレンジ」の場でもあるのですね。
「誰もまったく演技ができない。でも今までの経験を活かして本物と同じくらい悪役を演じられるのが強み」だそうです。
ちなみに動画はこちらにあります。
人は一人一人違う。
必ずその人ならではの強みがある。
その人しか持っていない強みを必要とするビジネスは、探せばある。
そう思いながら、つい動画に見入ってしまいました。
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1月9日(水)、ITmedia Executiveで「なんで、その価格で売れちゃうの?」の出版記念講演会を行いました。
50名の方々にご参加をいただきました。
有り難うございました!
公衆のお手洗いに、ハンドドライヤーがありますよね。
最近ちょっと気になって、外出先のお手洗いで手を洗った後、何カ所かで試してみてわかったことがあります。
どのメーカーのハンドドライヤーも、30秒で温風が自動停止するのです。30秒かければ、手は完全に乾きます。 実はせっかちな私は10秒ほどで切り上げてしまっていました。「30秒で自動停止する」というのは新しい発見でした。
実はこれをリサーチしようと思ったきっかけは、先週の熊本出張でした。
出張先にあった百貨店のお手洗いに、ダイソンのハンドドライヤーがあったのです。この脇にこう書いていました。
「12秒で乾き、99.9%除菌します」
実際にやってみたら実に強力な温風。手はみるみる間に乾きポカポカしてきて、青白い光も当てられ、確かに除菌されている実感がありました。(ちなみに写真が、そのハンドドライヤーです)
ハンドドライヤーで手がなかなか乾かない経験を繰り返していた私にとって、これは実に新しい体験でした。
これがきっかけで、「そもそも、ハンドドライヤーって何秒で乾くようになっているんだろう?」と疑問を持ち、冒頭の実験を繰り返してみたのです。
ダイソンの強みは強力モーター技術です。
ダイソンは強力モーター技術を活かし、様々なお客様の隠れたニーズに応えています。
このハンドドライヤーでは「時短」です。お手洗いの後、手を乾かす時間が、30秒から12秒に短縮するのは、せっかちな私のような人間にとって大きな価値があります。さらに施設から見ても、混雑を緩和するメリットもあります。
多くの人は、通常のハンドドライヤーでは30秒も手を乾かさないのではないでしょうか?
実は乾いた手よりも、濡れた手の方がはるかにウィルスが付着しやすくなるそうです。中途半端なハンドクリーナーの使用で、感染の危険性がむしろ増しているということです。(ちなみに「ハンドクリーナーのリサーチ」という目的ができたので、せっかちな私も30秒かけて手を乾燥するようになりました)
ダイソンは他にも、強力モーター技術を活かして、扇風機や掃除機、最近ではヘアドライヤー、さらに将来は電気自動車にも挑戦しようとしています。
ダイソンのハンドドライヤーを体験してみて、改めて「お客様をじっくりと観察して自社ならではの強みを活かせるところはどこかを考えることが必要なのだ」と思いました。
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12月17日、熊本県およびくまもと産業支援財団様主催の「リーディング企業創出支援セミナー」で、半日間のワークショップを実施いたしました。
熊本県は「1年間の事業で10億円以上の付加価値額を生み出す企業」をリーディング企業と名付け、戦略的にリーディング企業の創出を図っています。→熊本県の発表資料
くまもと産業支援財団様は熊本県からこのセミナーの企画運営の委託を受けています。
今回、第1回目の「リーディング企業創出支援セミナー」で講師を務めさせていただきました。
リーディング企業を目指す企業などから60名の方々にお集まりいただき、実際に発表も行っていただきました。
アジェンダは下記の通りです。
14:00-14:15 オープニング
14:15-15:00 講義「お客様が買う理由をいかに作るか?」
15:00-15:30 ワークショップ「お客様が買う理由を作る」
15:30-15:45 休憩
15:45-16:45 ワークショップ発表
16:45-17:20 講義「お客様が買う理由を検証する」
17:20-17:30 クロージング・質疑応答
時間の関係で発表は5名の方々でしたが、実に様々なお取り組みをお話しいただきました。私自身も勉強になりました。
このような機会をいただき、感謝いたします。
今月、スマホ決済アプリを提供するPayPay(ペイペイ)が、同社アプリをスマホにダウンロードし、現金でなく同社アプリで商品を買うと、代金の2割を払い戻すという「100億円還元キャンペーン」を行いました。
たとえばアップルの新型MacBook Air 25万円をPayPayで購入すると、何と5万円も戻ってきます。しかも抽選で全額返ってくることも。
なんとも太っ腹なキャンペーン。100億円の還元金がなくなるまでキャンペーンを続けると発表しました。
結果、システム障害が起こるほどお客さんが殺到し、わずか10日間で還元キャンペーンは終了しました。
「なんで、その価格で売れちゃうの?」という価格戦略の本を出したばかりですが、価格戦略的にこのキャンペーンはどうなのでしょうか?
私は二つの点で、かなり秀逸なキャンペーンだと思います。
■まず「100億円の還元金が終われば終了」と条件を付けている点。値引きで怖いのは、値引き価格がお客さんにとって当たり前になることです。行動経済学的にいうと「値引き価格でアンカリングされる」ということです。しかし値引きなく条件付き還元キャンペーンなので、これが起こりません。
■190万人がアプリをダウンロードした点。日本のスマホ決済市場はまだ勝者がいない黎明期です。さらに決済サービスは、ユーザー数が多ければ多いほど儲かるので「規模の経済」が効きます。この市場立ち上がりの時期に一気に190万人獲得したことは、今後の決済サービスの戦いの上で、とても有利に働いてくるでしょう。
今後の課題は、今回アプリをインストールしてくれた190万人のユーザーに、今後も使い続けてもらうこと。100億円で190万人獲得ですから、1ユーザーあたり5,000円のお金を払って、アプリをインストールしてもらったことになります。この投資を生きた投資にする必要があります。
まず決済できる店を急拡大すること。今回獲得した190万という数字は、協力店を増やす上でとても大きな材料になってきます。
さらに他決済(現金や他決済アプリ)よりも高い使い勝手を提供し、ユーザーが高頻度に使いたくさせることも必要です。
PayPayはヤフーとソフトバンクの子会社です。
ヤフージャパン執行役員の小澤隆生さんによると、今回の戦略は孫さんも入ってヤフーとソフトバンクで徹底的に議論して決定したとのこと。
ソフトバンクは2000年頃にも街中でADSLモデムを無償配布する「パラソル部隊」を展開、立ち上がり始めたADSL通信市場を一気に押さえ、現在に至る通信ビジネスの足がかりを作りました。
戦略でとても大切なのは、このタイミング感と、的確に狙った目標へのピンポイントでの戦力集中です。
改めて価格戦略はビジネス戦略そのものだと実感します。
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先週に続き、星野リゾートの星野佳路社長のプレゼンで「なるほど」と思った話です。
星野社長がプレゼンした後、質疑応答でこんな質問がありました。
「私も旅館を経営しています。ただウチの地域は交通アクセスが悪くて、お客さんが来ません。何かアドバイスはありますか?」
私も2年前に「そうだ。星を売ろう」を出版したのがきっかけで、観光関係者とお話しする機会をいただくようになりましたが、同じ悩みを持つ方は多くおられます。
星野さんはこう答えていました。
「アクセスが良すぎるのもマイナスな場合もあります。アクセスが最も重要ではないと思っています。逆にアクセスが悪くても、来たい人は来ます。たとえば『秘境』といったように、なかなか行きにくいことが大きな価値になることもあります」
これは「価値をどう考えるか?」について教えてくれる話です。
「交通が不便なこと」は、あくまでその地域に与えられた条件の1つです。それがいいかどうかは状況によって違うのです。
せっかくなら与えられた条件を、いい方向に使いたいものです。
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星野リゾートの星野佳路社長のプレゼンを聴く機会がありました。先月行われた世界経営者会議です。
実に勉強になるお話しばかりでした。その中で1つ紹介します。
日本のホテルや旅館は、ほぼすべてオーナーが運営しています。一見当たり前ですが、海外では運営と所有が分かれており、ホテル運営に特化している会社が多くあります。
実は日本でも「ホテルや旅館は所有したいけれども、運営はしたくたい」というホテル経営者が意外と多いのです。さらにホテル業は、需要が供給を下回ると(つまりお客様が少なくなると)運営が上手い会社が成長します。
ということで「ホテルや旅館をオーナーに代わって運営します」というのが、星野リゾートです。
星野リゾートは、今後10〜20年で世界に通用する運営ノウハウを蓄積しようとしています。
しかし海外で西洋式ホテルを展開しても、海外ホテルチェーンと厳しい戦いを強いられます。
そこで星野リゾートは、海外に日本型温泉旅館を展開する、日本初のホテル運営会社になることを目指しています。
経営学者マイケル・ポーターは『戦略でまず考えるべきは「何をやらないか」だ』といっています。
星野さんは数多くの経営戦略理論を学び、それをご自身の経営で実践しています。星野リゾートも「物件は所有せず、運営に特化する」「海外で西洋式ホテルはやらず、温泉旅館を展開する」という戦略を徹底しているのです。
私たちも、経営戦略論を学んで、自分に役立ちそうな部分を日々のビジネスで実践したいですね。
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「差別化するために、わが社は何をすべきか?」
こう考えて新しくプロジェクトを立ち上げることは少なくありません。
しかしなかなか上手くいかないことも多いのが現実です。
これは「差別化しよう」という出発点が、そもそも間違っているのです。
出発点として考えるべきは、「お客様が困っていて、どうしても解決したいこと」です。
「お客様が困っていて、どうしても解決したい状態」というのは、言い換えれば、「他に解決策がない状態」でもあります。
そのお困りごとを見つけ、解決策を提供すれば、それは他社が提供できないことになります。
その結果として、差別化になります。
差別化は、あくまで結果なのです。
「差別化しよう」と考え、差別化するポイントを一生懸命に探し、商品名を変えたり、商品デザインを変えたり、宣伝文句を変えても、お客様から見て他に選択肢があれば、差別化するのは難しいのです。
だからまず考えるべきは、「お客様が困っていて、どうしても解決したいこと」なのです。
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価格戦略の本をご紹介すると、企業のマネージャー、特に営業部長さんたちからこんな質問をいただきます。
「なるほど価格の本ですかぁ。いつも値引き要求ばかりで悩んでいるんですよね。
高い価格で売るためには、どうすればいいんでしょうね」
半分ため息をつきながら、こうおっしゃいます。
そんな時、このようにお答えします。
「まずは、お客様からのご依頼を断れる状況を作ることが、大事だと思いますけど」
安売りせざるを得ない状況は、二通りに考えられます。
1.本当は高く売れるのに、安くしている(実は高付加価値)
2.本当に安くしか売れないので、安くしている(実際には低付加価値)
お客様からのご依頼を断れるようになると、どうなるでしょうか?
1.の場合、お客様は「困るので提案して欲しい」と依頼してきます。実は安くしすぎなのです。(中には相見積もりの当て馬としてお客様が依頼する場合もありますが、そのような駆け引きはここでは除外して考えます)
2.の場合、お客様は「あ、そう。じゃあ、他社に頼む」となります。この状況を続けている限り、絶対に高く売れません。
お客さんから見て低い価値しか提供していないのに、高く売るのは不可能です。他社の真似をしたり、お客様の課題を把握しないまま製品中心で考えていると、こうなりがちです。
2.の状況に陥っている場合、高い価値を作り上げることが必要です。お客様の課題を考え抜き、自社しか提供できない高い価値を作り上げた上で、お客様が「高いけど、さすがだ」という値ごろ感ある価格をつけるべきなのです。
現実のビジネスの現場では、お付き合いが深いお客様に面と向かって断ると色々と差し障りがあります。とはいえ、「まずはお客様からのご依頼を断れる状況を作る」ことが、高い価格を付けるための第一歩なのです。
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スターバックスはお洒落で居心地のよいカフェですね。
しかし10年ほど前に、ちょっと感じが変わった時期がありました。ちょうど東京ミッドタウンが出来た頃の時期です。当時、私もスタバに失望することが増えました。味も落ち、狭い店内で肩をすぼめて座らされたりして、居心地がいい空間でなくなったのです。次第にスタバから足が遠のいていました。
実はこれは世界的な現象だったのです。
何が起こっていたのか?この時期に創業者として復帰したハワード・シュルツが書いた「スターバックス再生物語」に、そのことが書かれています。
スタバを創業したシュルツは、2000年まで15年間をかけて成長させ、CEOを退任し会長職に専任していました。
その後もスタバは成長を続けました。10年間で全世界で1000店舗から13000店舗に急拡大しました。
しかし成長の代償が出てきたのが、2007年頃だったのです。
急成長するために、店舗デザインは簡素化され、バリスタは訓練不十分なまま客にコーヒーを淹れるようになり、中には作り置きを出す店もあり、さらに効率化のためにコーヒーの粉を袋詰めして店に出荷するようにしたために、店舗からコーヒー豆を挽く重厚で豊かな香りが失われていました。
成長と効率第一主義で、スタバは自ら「スタバ体験」をコモディティ化したのです。
図のように、2007年には急成長の代償が表面化し、顧客離れが顕著になり、利益も落ち始めました。
CEOに復帰したシュルツは、迅速に手を打ち、現状を改善するとともに、抜本的な変革も行いました。そのベースになったのは「スタバらしさとは何か?」を全従業員で考え続け、原点回帰しつつ、未来志向で新しいスタバを作ることでした。
規律のない成長を戦略としてしまったために低迷したスタバは、徹底的に「らしさ」を極め、その後は再び成長しています。
スタバは居心地のよい空間を取り戻し、いまは再び多くのお客さんが来店しています。
企業には、企業ならではの「らしさ」「強み」があります。
「自社らしさとはなにか?」を常に考えることが大切なのです。
一方で、ちょっと気になるのが最近の既存店売上成長率の低下。10年前の2007年の状況に似てきました。飲食業界では「10年間」というのは一つのキーワードのようで、マクドナルドも10年毎に危機に見舞われてきました。
今後が注目されます。
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