chatGPTの社内活用判断は、鳥取県庁に学べ

chatGPTが相変わらず大きな話題です。実に興味深いのは、組織によって対応が様々なことです。

まず組織で活用する事例が次々と出てきています。

・パナソニックHD:同社傘下のパナソニックコネクトが開発した対話型AIを国内グループ企業で活用できるようにしたと発表。9万人が対象。情報漏洩を防ぐため、社内情報や営業秘密、個人情報を入力しない利用ルールも整備。

・横須賀市:実証実験を開始。文章作成・要約・誤字脱字チェックから。

・農林水産省:一部業務(ウェブサイトのマニュアル書き換えなど)で活用開始。業務効率化を狙う。公表済みの情報のみ

・広島市:県行政で活用。庁内向けプレゼン資料作成、県民サービス広報を目指し活用方法・課題を探る。

・総務省:情報の取扱いに留意しつつ、試行開始。

・東京都:小池知事が「都政における活用のあり方について検討を深める」

・東大:太田副学長より「傍観せずに変化を先取りせよ」

一方で情報漏洩リスクから社員に注意を喚起している会社も多くいます。

・ソフトバンク:業務利用のルールを周知徹底。

・アマゾン:機密情報を入力しないように注意喚起

・みずほFGなどの大手銀行:社員が業務端末からアクセスできないように設定

明確に禁止する組織もあります。

・ニューヨーク市:公立学校の学内ネットワークで使用禁止

・中国当局:国内主要IT企業にChatGPTのサービスを提供しないように指示。(政権に批判的な回答をしかねないため)

・イタリア:一時的に禁止。個人情報保護の対策中。

・鳥取県庁:答弁資料作成、予算編成、政策決定などの件の業務で使用することを当面禁止。

一方で色々な企業様のお話しを伺っていると、現実には「ChatGPTって使ったことがないので、よくわからない。どうも情報漏洩するらしいが、それは困る。だから念のため社内使用は禁止しておこう」という企業様も結構多いようです。

このように整理すると、世の中でchatGPTの問題として大きく取り上げられているのは、情報漏洩ですね。

しかし情報漏洩は、しかるべき対策を取れば対応可能な問題です。実際にパナソニックHDではそのような対策を取っているようです。

私は、chatGPTを組織で展開する上での問題は、もう一段深いところにあると思います。

ここで参考になるのが、chatGPT禁止を打ち出した鳥取県・平井知事の発言です。

『「charGPT」じゃなくて「ちゃんと地道」に。自治体の意志決定に関わることは機械任せにしない。議会答弁で使うとか色々な構想が語られているが、それは民主主義の自殺だ。入力情報には個人情報も含まれるので、秘密保持の観点でも課題がある』

平井知事は、chatGPTの本質をよく考え抜いた上で判断しているように思います。

いまやAIは、それらしい回答をすぐに作ることができます。しかしこれは、全て過去の情報に基づいています。

そしてAIが答えるのは、ネット上にある「誰それがこう言った」というの「事実」に基づく情報のみ。言い換えれば、「真実」を検証しません。

「事実」と「真実」は異なります。

その「事実」(誰それがこう言った)が「真実」なのか、そして「人として正しいことなのか」を検証できるのも、人間だけです。

そして未来のことを考えられるのも、人間だけです。

つまりchatGPTを業務で活用するには、「chatGPTは、間違っている可能性が高い」という前提で使える人が、組織にどれだけいるのか、という問題に辿り着きます。

現実にはSNSのフェイクニュースに騙される人は、決して少なくありません。お恥ずかしいことに、私もフェイクニュースに騙され、Twitterでリツィートしてしまったことがあります。(後ほどお詫びとともに訂正しました)

「chatGPTの回答は、間違っている」という前提で検証し、活用できることが必要です。

そこで必要なのが「仮説検証思考」です。
「間違っているかもだけど、仮に答えを○○○としておこう」と考え、○○○を実際に検証し、間違っていたら即座に修正し、再度確かめる、という思考法です。

現実には、この仮説検証思考を身につけている方は、多くありません。そこで社内のchatGPT展開とあわせて、この機会に仮説検証思考の習得を社内で徹底し、chatGPT活用との相乗効果を図るのも、一つの方法だと思います。

私が気になるのは、chatGPT活用の解禁や禁止を発表する組織の中で、このことを明言しているのが「議会答弁でchatGPTを使うのは、民主主義の自殺」とまで踏み込んで発言する鳥取県の平井知事しかいないことです。

いまやAIビジネス活用の判断は、待ったなし。
だからこそ、私たちはAIの本質を考えていく必要があるのだと思います。

御社の社内では、chatGPTをどのように活用しますか?


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運は待ってもやってこない

「あー、自分は運が悪いなぁ」と嘆きたくなる時ってありますよね。

いいご縁に恵まれて成功する人を見て、「自分にもいい運が巡ってこないかなぁ」と思う時もあります。

こんな時は、成功した人を観察することですね。

実際に成功した経営者の多くが、「私は運が良かった」と語っています。

ダイソー創業者・矢野博丈社長は、日経ビジネス2017.12.11号で、こう述べています。

『昔は入社式で新入社員に「この会社、いつ潰れるか分からん」って言っとりました。最近は言うのをやめました。今は「運を付けなさい」と言っています。ワシは運が良かったんです。』

松下電器創業者の松下幸之助さんは、こう言っています。

「今日までの自分を考えてみると、やはり、90パーセントが運命やな。しみじみ運命やと思うな」

お話を聞くと、この二人は運が良かったように思えます。

一方で京セラ創業者の稲盛和夫さんは、創業時は悲運の連続でしたが、こう言っています。

「絶対に自分の将来は不幸だと思ってはなりません。自分の未来にはバラ色の幸運が待ち受けていると信じることが大切です」

さらにマクドナルド創業者のレイ・クロックは、こう述べています。

「幸運は汗への配当だ。汗をかけばかくほど、幸運を手にできる」

この二人の話を聞くと、どうやら運は待っていても、与えられるモノではなさそうです。

実際には「運が良かった」と言うダイソーの矢野社長も、かなり苦労されています。「食べることができれば…」と考えて起業したものの、会社がつぶれかけたり、夜逃げしたりして、40歳まで実家に生活の面倒を見てもらっていました。「自分は能力がないから、一生懸命目の前のことをやる以外に手がなかった」と述べています。こうした積み重ねの上で「運が良かった」とおっしゃっているわけです。

「90%が運命やな」という松下幸之助さんも、創業時は病弱で逆境の連続。身近にいた義弟の井植歳男さん(のちの三洋電機創業者)は、「働く熱意は人並み外れているが才能は平凡」と言ったほどです。しかし逆境のたびに危機をチャンスに変えて成長しました。

彼らは運を待つのではなく、運に働きかけているのです。

過去に起こったことは、どう転んでも変えられません。しかし未来は変えられます。

そして過去は変えらませんが、過去の解釈ならば、私たちの考え次第でいかようにも変わります。

そうして行動すれば、未来は変えることができるのです。

運がいい人は、そうやって運を作りだしているのです。

そしてそれは、私たちでもできることなのです。

運は待ってもやってきません。
自分で作り出すものなのです。


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仮面ライダーが教えてくれる「危機は、飛躍のチャンス」

映画「シン・仮面ライダー」がヒット中ですね。
そのオリジナルが、1971年にテレビ放送された「仮面ライダー」。
当時小学生3年生の私は、本郷猛が変身する仮面ライダー1号と、一文字隼人が変身する仮面ライダー2号に夢中。この世代の男の子たちはほぼ例外なく、何かあるとみな「ヘンシン」と言いながら変身ポーズをしていました。

仮面ライダーが大ヒットした要因はいくつかありますが、個人的には、この「変身ポーズ」とライダー1号・2号の存在だと思います。

しかしこの「変身ポーズ」と1号と2号、当初の設定にはありませんでした。
大トラブルの末に編み出された、実は苦肉の策だったのです。

まず仮面ライダー制作が決定した時点で、2号の設定はありませんでした。
本郷猛(1号)を「藤岡弘、」さん(当時は「藤岡弘」さん)が演じる設定でした。

しかし放送前の第9話・10話の撮影中、オートバイの転倒による大事故で、藤岡さんはなんと全治3〜6ヶ月の重傷を負い、その後の撮影ができなくなりました。

未完成分はすでに撮影済の映像でなんとか繋いだものの、その後の話が続きません。そこで色々な案が出されました。

①本郷猛を、交代させる
②本郷猛は、死んだ設定にする
③いっそのこと、仮面ライダーを巨大化させてしまう

結局「子供たちの夢を潰すのはよくない」「(当時、再起不能と言われていた)藤岡さんの復活を待とう」ということになり、本郷猛は海外のショッカー支部との戦いに赴くことになり、後を継ぐ者として、一文字隼人の仮面ライダー2号が登場する設定になりました。

ちなみに一文字隼人役の候補には三浦友和さんも選ばれたのですが、三浦さんの所属事務所が断り、藤岡さんと同じ劇団に所属する佐々木剛さんが演じることになりました。

また当初、藤岡弘さん演じる本郷猛は、仮面ライダー1号に変身する時はバイクで加速し、その風をベルトで受けて、仮面ライダーに変身する設定でした。

しかし2号を演じることになった佐々木さんは、バイクの免許を持っていませんでした。これでは「バイクで加速して変身」ができません。

そこで編み出されたのが、あの手を大きく回す変身ポーズ。

これが社会現象になって、日本中の子供たちが変身ポーズをやるようになりました。こうして小学4年生だった私も、変身ポーズをやっていたわけです。

自分が仮面ライダーのプロデューサーで、主役の藤岡さんが事故で半年入院とか、代役がバイク乗れないという事態に直面することを想像するだけで、思わず頭を抱えたくなります。恐らく当時の製作陣も全く同じだったのではないでしょうか?

こんな時、「ヤバいなぁ。どう考えてもコレ、詰んでいるよね」と思いがちです。

しかしこんな時こそ、知恵の出しどころ。諦めなければ、解決策があるのですね。

「危機は、飛躍のチャンスになりうる」ということを、仮面ライダーのプロジェクトは教えてくれます。


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他は割とどうでもいいけど、大事なのは首尾一貫性

私はIBMで駆け出しマーケターから経験を積み始めただった頃の話しです。

IBMには昔からプロフェッショナル認定制度がありました。

部下がいなくても、専門分野のプロフェッショナルとして認定されれば、役員待遇になったりする制度です。当時新設されたばかりのマーケティング職でもこのプロフェッショナル認定制度がありました。そこでこの認定に挑戦しました。認定されれば部長職になれます。

しかしなかなか受かりません。「三度目の正直」と思って挑戦した三回目も見事落ちました。

この認定プログラムは何段階もステップがあります。その中のペーパーテストが難関で、3回挑戦して全滅でした。このテストはハーバード・ビジネススクールのケーススタディをIBM用に書き換えた事例が出されて、その戦略を3時間以内に作成して答える、という問題が出されます。

このプログラムは世界全体のIBMで行われました。
不思議なことに、日本人の合格率は10%、海外では40-50%なのです。
「英語のハンディがあるからでは?」という話もあって対策したのですが、変わりません。

私はたまたま、過去の海外のIBM社員の合格答案と、日本人の不合格答案を見る機会がありました。これで分かりました。

合格している人が書いた戦略は、こんな感じです。
・戦略の全体の方針を決める(例:顧客に最高の価値を届ける)
→その方針の下で分析して、基本戦略を決める
→その基本戦略に基づいて、各施策(製品戦略/価格戦略/販促戦略/チャネル戦略)を決める
→各施策は首尾一貫させる
→そして各施策の達成状況をモニターする方法も明記する

戦略自体はスゴいことは書いていません。当たり前のことを当たり前に書いているだけです。しかし首尾一貫しています。要は、「凡事徹底」なのです。

不合格な人(多くの日本人)が書いた戦略は、こんな感じです。
・いきなり各施策を説明する。
・施策は凝りに凝っている。スゴいアイデアも結構ある。
・しかし各施策は首尾一貫していない。
・そして、そもそも基本戦略が弱い。結局、何をしたいのかが分からない

各施策のアイデア作りにものすごく力を入れていることは伝わってくるのですが、バラバラなのです。そして実行段階のモニタリングにいたってはほとんどノータッチ。

審査する側の視点で両者の答案を比較して、「なるほど、これでは落ちる筈だよなぁ」と、不合格の理由がよくわかりました。(ちなみに私はこのことが分かったので、再挑戦して無事認定されました)

単なるペーパーテストの話ですが、これはビジネスでも極めて大事なことだと思います。

一生懸命やってスゴいアイデアも出すのに、なぜか成果が出ない人がいます。
一方で地道にコツコツやっているだけに見えるのに、いつの間にか成果が出る人がいます。

前者の人は、努力の方向性が間違っているのです。
本当に必要なのは、後者の首尾一貫性なのです。

もちろん、戦略のスジがいいことは大前提です。しかしその上で、首尾一貫して全体が繋がることを意識して、凡事徹底することが何よりも大事なのです。

ところで、この不合格体験で「首尾一貫性の大切さ」を学んだことが、今では自分の大きな財産になっています。思い返せば不合格のたびにガックリと落ち込みましたし、「もうやめようかな」とも思いましたが、挫折経験から学べることは実に多いですね。


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1989年の雑誌Brutusの「美人特集」

本棚を整理していたら、雑誌Brutusの古い特集号が出てきました。

『美しき隣人たち、ジャパニーズ・ビューティ。』 1989年5月15日号
『侃々諤々 美人論。』1991年5月15日号

当時の女優さんやモデルさん、アーティスト、アスリート、知識人といった女性たち数十名が、それぞれモノクロポートレート写真1枚に収められた特集です。

どれも作品として素晴らしい写真ばかりです。
当時15歳の後藤久美子さんが出ていたりしています。
当時20代だった黒木瞳さんも出ています。驚くべきことに、今とほとんど印象が変わりません。

人気女優たち23名を、ゲイのピーコさんとマンディさんが「性別に由来する偏見や社会的束縛がない」という立場で、辛辣に一刀両断に診断するという6ページの対談特集もあります。この対談は都内の会員限定ホテルの1室を300,000円で借りて行われています。(ちなみにこのお二人によると、1位は大地真央さん、2位は宮沢りえさん、番外で浅野温子さんと浅野ゆう子さんだそうです)

読んでいて実に面白く、思わず見入ってしまいます。
誌面全体からすごくお金をかけていることが伝わってきます。
今はこんな特集は、なかなか作れないかもしれません。

当時はバブルだったことに加え、まだインターネットがありませんでした。
新鮮な情報を入手する主な手段は、雑誌でした。
だから雑誌作りにお金をかけることができました。
そしていい雑誌ほどお金をかけられるので、良質な情報が凝縮されていました。

今はネットのおかげで情報はタダで入手できる時代です。
情報はコモディティー化してしまいました。
お金をかけて情報を編集することは、ますます難しくなっています。

そして消費者の目は、逆に肥えています。
情報はあっという間に消費されてしまうのです。

しかしこの特集を見て改めて思うのは、「十分な手間と時間をかけて作られた情報は、やはり面白いし、深い」ということです。

情報がコモディティ化し、多くの情報発信者が手間と時間をかけなくなった現代だからこそ、ジックリと手間と時間をかけた情報は、相対的に大きな価値を持つことができ、差別化できるのでしょう。

この特集を見て、改めてそんな情報を発信する必要性を感じました。


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「SDGsって、結局金儲けしたいんでしょ」というご意見

最近は、私たちの日々の仕事でもSDGsについて色々と言われるようになりました。

一方でこんな話しもあります。

「SDGsで騒いでいるのは日本だけ。欧米はそんなに騒いでないよ。グーグルトレンドで調べても、いまSDGsを検索しているのは日本だけだし」

実は日本は、SDGsの流れに周回遅れなのです。

もともとSDGs(持続可能な達成目標)は、2015年の国連サミットで採択されたものです。17の目標がセットされて2030年達成を目指し、多くの企業が一斉にSDGs達成に走り始めました。

欧米社会では00年代の中頃からSDGsに向けた合意形成が始まり、2015年のSDGsに繋がっています。競争戦略を提唱していたあのマイケル・ポーターも、2011年に「社会課題の解決と、企業としての経済的価値の両立を目指すべきだ」としてCSV (共有価値の創造)を提唱しました。

しかしSDGsは採択された2015年頃、日本企業の反応はこうでした。

「SDGsって何? 17の目標って何のこと?」

しかしいまや欧州などでは、SDGsに取り組み姿勢を見せていない企業は、そもそも取引に参加できなくなっていますし、SNSでも叩かれます。

ここ数年で、お尻に火がつき始めました。

だから日本ではSDGsを検索する人が多く、海外で検索する人が少ないのでしょう。 これって、今さら「スマホ」とか「インターネット」を検索する人はほとんどいないのと同じですね。

一方で、こんなご意見もあります。

「でもさ、きれい事を言ってるけど、要は金儲けしたいんでしょ」

このご意見へのお答えは、「まさしくその通り。で、それで何か問題がありますか?」

この底流に流れているのは、「社会課題解決の収益化」というしたたかな問題意識と算盤勘定です。

一例を挙げると、「人類を救う起業家」と言われてきたあのイーロン・マスクもそうです。

2006年8月2日に、彼が書いた「ここだけの話し」というブログがあります。結構長いのですが、要約してみましょう。

彼は、まずテスラの戦略を述べています。

「テスラの計画は、まずスポーツカーを作り、そのお金でハイエンドのファミリーカーを作り、そのお金で大衆車を作る。」

実際にその後、テスラはセレブ向けのロードスターを作り、2012年にはリッチ層向けのモデルSを作り、2019年には大衆向けのモデル3を作りました。

ただ、このブログを書いた2006年当時のエコカーの代表格はプリウスでした。そこで彼はさらにこう述べています。

「しかもテスラのEVは、石油を使ってもエネルギー効率はプリウスの2倍だ。EVは、火力発電所(高エネ効率60%)の電気を使う。プリウスは、エンジン(エネ効率は25%で劣る)で電気を起こす。現在の化石燃料を使っても2倍の効率。今後、テスラは太陽光発電のソーラーシティの電気を使えるように展開するので、100%自然エネルギーになる」

人生をかけて「地球を救う」と真剣に考えるイーロン・マスクは、収益化によって自分のビジネスを持続可能にすることも真剣に考えているのです。

このように、SDGsで必要なのは「社会貢献と利益の両立」です。

人間は空気と水がないと生きられませんが、空気と水のために生きているわけではありません。

同様に企業も、利益がないと存続できませんが、本来は利益のために生きているわけではありません。

SDGsは、改めて私たちにビジネスのあり方を深く問いかけているのです。

御社はSDGs達成のために、どんな貢献を行いますか?


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「おぱんちゅうさぎ」と「100日後に死ぬワニ」で考えたブランディング

私はテレビをほとんど見ないのですが、唯一、録画して必ず観る番組があります。
テレビ東京の「ワールドビジネスサテライト」です。

先日、この番組で取り上げたのが、こちらでした。

おぱんちゅうさぎ

いま、10〜20代の女性を中心に大人気だそうです。
皆さん、ご存じでしたか? 私は全く知りませんでした。

TikTokを使っている方は、ためしに「おぱんちゅうさぎ」で検索してみると、妙にテンションが高い歌声とBGMでおばんちゅうさぎが出てきます。

人のためにひたむきに奮闘して純粋。健気。
みんなのために頑張るけど報われない。

そんなキャラが、大きなウルウルした目で伝わってきますね。

おばんちゅうさぎをプロデュースしているのが、CHOCOLATEという会社です。番組ではCHOCOLATE代表の渡辺裕介さんが「おぱんちゅうさぎのなぜ?」として3つのキーワードを挙げておられます。

①Z世代はビジネス臭を嫌う。→打算的で作り込まれたものを敏感に感じ取ってしまいます

②作者の業。→作者の徹底したこだわりや背負っているものが、キャラに滲み出てきます

③カギは「接触時間」。→毎日会う人は愛着が湧くように、SNSで日常的なコンテンツを出しつつ、世界観を伝えるために絵本、アニメ、音楽などで五感を刺激していきます

特に①「Z世代はビジネス臭を嫌う」は、「なるほどなぁ」と思いました。

ここで思い出したのが、3年前に流行った「100日後に死ぬワニ」(略称「100ワニ」)です。このブログでも書きました。→記事

Twitterでワニの何げない日常を描く漫画ですが、「死ぬまで99日」「…98日」とカウントダウンしていき、大人気になりました。3月20日の最終回でワニは死んでしまい、多くの人が「泣いた」「感動した」「ありがとう」とコメントしました。

しかし最終回が終わると「書籍化決定、映画化決定、グッズ・イベント」などが矢継ぎ早に発表され、ショップも開店すると、今度は逆に批判が集まりました。

あくまで当初は作者個人のTwitterのつぶやきだったわけですが、多くのファンが付いたことで、「100ワニ」はもはや個人のモノを超えたブランドになってしまったわけですね。

「おぱんちゅうさぎのなぜ?」の3つのキーワードで「100ワニ」現象を読む解くと、色々と見えてきます。

①Z世代はビジネス臭を嫌う。→おぱんちゅうさぎもグッズ展開しているわけですが、ターゲットである若い女性達が欲しいというタイミングで上手に出しています。「グッズ販売も、結局商売でしょ」と思いがちですが、カギはそれを相手が受け容れる状態か否かの見極めかもですね。

②作者の業。→100ワニの作者によると、100ワニを書くきっかけは、友人の事故死で「何があるかわからない。時間を大切にしてほしい」という想いだったそうです。この作者が抱える業が、100ワニを通して伝わったのですね。

③カギは「接触時間」。→おぱんちゅうさぎはこの辺りが実に巧みで、システム化されているように思いました。100ワニもこの辺りをうまくすればいい感じに展開できたかもしれません。(ちなみに「100日後に死ぬワニ」は、その後「100日間生きたワニ」として映画化されています)

SNS時代のブランディングのあり方として、とても参考になると思いました。


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ChatGPTって使えるの? 私の仕事なくなるの?

この1週間でChatGPTがメディアに取り上げられることが急に増えました。私の周囲にいるIT関係者の間でも、いま一番ホットな話題です。

そもそもChatGPTとは何でしょうか?

『ChatGPTは、OpenAIが開発した自然言語処理の大規模なAIモデルです。人工知能による自然な会話ができ、文章の生成や回答、文章の意図理解などを行います。様々な分野において活躍し、自然言語処理の発展に寄与しています。』

上の『』の文章は、Chat GPTに『ChatGPTを知らない人にも分かりやすく100文字で紹介してください』と質問して、ChatGPTが数秒後に返した文章です。

ちょっと驚きですよね。人間が調べるよりも速いし、日本語もAIが作ったとは思えないほど自然ですね。

このChatGPT、無料で使えます。登録もカンタンです。

たとえばこんな質問をしてみました。

質問①『永井孝尚が主催する「永井経営塾」を、中小企業の経営者向けに効果的に宣伝するメッセージを100文字以内で作って下さい。』

回答は下記でした。

回答①『永井経営塾で、あなたのビジネスを成功へ導きましょう。中小企業の経営者向けに、永井孝尚が直接指導する、現場に即した経営トレーニングを提供します。創業期からの経営課題や成長戦略にも対応。自社の強みを最大限に生かし、競争力のあるビジネスを築きましょう。』(123文字)

試しに、顧客ターゲットを中小企業経営者から企業のマネジャーに変えてみました。

質問②『では永井孝尚が主催する「永井経営塾」を、企業のマネジャー向けに効果的に宣伝するメッセージを100文字以内で作って下さい。』

回答は下記でした。

回答②『永井経営塾で、あなたのマネジメント力を飛躍的に向上させましょう。企業のマネジャー向けに、永井孝尚が直接指導する、実践的な経営トレーニングを提供します。人材育成、組織開発、戦略策定など、経営に必要なスキルを効率的に学び、即戦力として活躍できるようになりましょう。他社に差をつけるマネジメント力を手に入れ、キャリアアップを目指しましょう』(166文字)

このまま使えそうなレベルの文章が戻ってきました。
回答①と②を比較してみてください。
ちゃんと経営者とマネジャーの関心テーマを使い分けているあたりがニクいですね。(文字数オーバーですが、そこは大目に見ましょう)

3月の朝活永井塾で取り上げる道元についても質問してみました。

質問③『道元が書いた正法眼蔵を分かりやすく100文字で紹介する文章を作って下さい。』

回答③『正法眼蔵は、鎌倉時代に禅宗の僧侶・道元によって書かれた禅の教典です。直接的な言葉で表現できない禅の世界を、独自の表現力で描写しており、広く禅の教えの根本として受け継がれています。禅の初心者から熟練者まで幅広く読まれる書であり、現代においても、その智慧や啓示は多くの人々に愛され続けています。』

的確なサマリーですね。唸ります。

ただ、要注意の回答もあります。

質問④『内田和成著「論点思考」について100文字で紹介してください』

回答④『「論点思考」は、内田和成による論理思考の入門書です。本書では、問題解決に必要な論理的思考力を養うための手法や、議論の基本的なルールについて解説しています。また、著者独自の視点から、日本人が持つ「仏教的な思考回路」や「情動的な思考回路」の問題点にも触れ、より論理的な思考を身につけるためのアドバイスを提供しています。読者が自分で考え、意見を主張する力を身につけるための一冊です。』

それらしい回答です。でも間違いも多いですね。「おいおい、キミは本を読んでいないだろう」と言いたくなります。

実は、ChatGPTが凄いのはこの後です。こんな質問を返しました。

質問⑤『その答えは間違いです。この本で書かれている論点とは「解くべき問題」であり、論点思考とは「解くべき問題を定義するプロセス」です。本書のメッセージは「論点の設定を間違えると、いくら頑張っても、成果は出ない」ということであって、仏教的な思考回路などの問題点は指摘していません。ちゃんと調べて、100文字以内で紹介してください。』

回答⑤『おっしゃる通りで申し訳ありません。内田和成著「論点思考」は、論点の設定方法について詳しく解説しています。論点とは、解決すべき問題や課題の本質を捉え、それに対する答えを探求するために必要な枠組みです。本書では、論点の設定の重要性や方法、具体的な例を紹介すると同時に、論点を明確にすることで、自分や他者との議論がより建設的になることを伝えています。読者が自分で考え、問題を解決するための一冊です。』

実に素直ですね。ちゃんと反省して、ほぼ正解になりました。

そこで改めて質問④をしてみました。

質問⑥『内田和成著「論点思考」について100文字で紹介してください』

回答⑥『内田和成著『論点思考』は、問題解決に必要な論点を明確に設定することの重要性とその方法について解説しています。論点とは、問題の本質を捉え、その解決策を探求するための枠組みであり、その設定が正確でなければ解決につながらないと内田氏は主張します。具体的な例を用い、論点思考の重要性や効果的な方法を紹介しながら、自分自身や他者との議論においても論点設定を意識することで、より建設的な解決が可能となることを示唆しています。』

なんと、ちゃんと学習しています。ほぼ満点の回答です。

私の感想ですが、現時点では、アウトプットをそのまま使うのはちょっと怖いですね。

感覚的にいうと、上司から質問されると、とりあえずネットでそれらしい答えを検索して答えるような、ちょっとズルくて要領がいい見習いリサーチャーが相棒になった、という感じです。

だから手間は大きく削減できます。そしてこちら側にチェックする力があれば、それなりに使えます。

加えて、質問に対するアドバイスで素直に学習して、精度を上げていく能力もあります。しかも人間と違ってコンピューターは忘れません。疲れることも知りません。時間の経過とともに常に学習し続けて、どんどん賢くなっていく可能性が高いでしょう。(ただ間違った思想やフェイクニュースを正しいと学習してしまうという怖さもあります)

ChatGPTを開発したのは、オープンAIという会社です。この会社にはマイクロソフトが出資していて、同社のオフィス製品にもこの機能を搭載する予定だそうです。

さて、とうとうこんなAIが登場してしまいました。
私たちのホワイトカラーの仕事はかなり代替されそうです。

では私たちビジネスパーソンは、どうすればいいのでしょうか?

ここで参考になるのが、既に数年前にAIの猛威を受けた将棋や囲碁の世界です。
AI開発企業のDeepMind社が開発したAlphaGoは、既に2017年に人間の世界トップ棋士に勝っています。

一方で、弱冠20歳にして将棋五冠(竜王、王位、叡王、王将、棋聖)に輝く藤井聡太さんは、早い時期からAIを活用し、経験をAIで補って素養を開花しました。

この藤井聡太さんの成長と活躍は、AI時代に私たちがどのようにAIを活用するかを見せてくれます。

ありていにいえば、「AIを使い倒した人が勝つ」ということです。

ChatGPTを体験すると「AIって凄いなぁ。人間の価値とはなんだろう?」と思ってしまいますが、実はAI自体は、まったく何も考えていません。

哲学者ジョン・R・サールが提唱した「中国語の部屋」と呼ばれる思考実験をご存じでしょうか?

まず、中国語を理解できない英国人を、小部屋に閉じ込めます。
小部屋には小穴があって、外と紙切れだけをやり取りできます。
外から中国語の文字列が書かれた紙が差し入れられます。
英国人の彼には、「●×△□※★」という記号にしか見えません。
彼の手元には、どんな質問にも答えられる分厚い中国語の辞書があります。
辞書には各記号に対応した、別の記号が書かれています。
彼の仕事は、紙に書かれた記号に対応する記号を辞書で見つけること。
そして、紙に書き足して小穴から戻すことです。
こんな感じです。「●×△□※★」→「■▽→※」
小部屋の外にいる人はこう思います。
「この小部屋の中に、中国語を理解する博識の人が入っているぞ」
しかし英国人は、中国語も質問の内容もわからず、定型作業をしているだけです。

実は現代のAIがやっているのは、基本的にこの「中国語の部屋+英国人」と同じです。これをとてつもないスケールで巨大クラウド上でやっているだけです。ChatGPTも例外ではありません。

ですから過度に恐れる必要はありません。
ChatGPTといえども、あくまで道具に過ぎないのです。

まずは自分の仕事でどう使えるか、試してみることがお勧めです。


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上高地の自然は、100年間かけて人が丁寧に育てたものだった

写真展「水の景色 – 時間のアート、上高地 」(富士フイルムフォトサロン/2015)より

長野県・上高地は、私が大好きな場所です。
上高地の豊かな自然に接すると、本当に心が洗われますね。

「やっぱり自然っていいなぁ」と思ってしまいます。

でも意外かも知れませんが、上高地の自然は100年間以上かけて多くの人が育てて来たものなのです。

江戸時代、上高地では松本藩による木の伐採事業が行われていました。現在の安曇村に住む人々が松本藩から割り当てられた量の木を伐採し、伐採した木は上高地を通る梓川の川の流れを使って松本まで運ばれました。

明治維新で上高地一帯の森林は、松本藩の藩有林から国有林になりました。でも伐採は続いていました。

明治の末になると自然保護の機運が高まり、1909年に高山植物が採取禁止され、1916年に学術参考保護林に指定されて、森林伐採が取りやめになりました。そして1914年からカラ松の植林が始まります。

いまの上高地ではカラ松が多く見られますが、あれは100年以上前から人が植林したものなのです。

一方で、上高地は観光地として人気が高まり始めました。
大正から昭和にかけて登山者が増え、1933年にバス運行が始まって上高地を訪れる人が増えていきました。1969年には安曇村に4つのダムができたのに伴って、上高地に入る国道158号が完成しました。

道路ができたことで1960年代からクルマで上高地に来る人が増え、上高地の道路はクルマで渋滞するようになります。路肩駐車も増えて植物が踏み荒らされるようになりました。そこで1975年から夏期の上高地へのマイカー乗り入れ規制が始まり、1996年には年間を通じて一般車の乗り入れが全面禁止になりました。

さらに観光客が増え始め、ゴミが目立ち始めました。そこで1963年、地元有志により上高地を美しくする会が結成。1970年からヘリコプターが山小屋のゴミを回収を始め、1974年からは、山小屋のゴミ預かり所へゴミを持ち寄る呼びかけが行われるようになり、現在は「自分のゴミは自分で持ち帰ろう」運動が定着しています。

【参考】上高地の人と歴史(上高地ビジターセンター)
https://www.kamikochi-vc.or.jp/learn/history/

上高地を訪れると「人の手が全く入っていない自然って、いいなぁ」と思ってします。しかし現実には、人間がいるだけで自然は甚大なダメージを受け続けているのです。だからこそ自然を維持するには、人間が努力し続けて自然を守ることが必要だということを、100年以上に渡る上高地の自然保護運動は教えてくれます。

そしてこの100年以上の上高地の挑戦は、SDGsやESGがビジネスで求められている背景も教えてくれるように思います。

ご参考までに。上高地で撮った写真作品で、2015年に東京ミッドタウンにある富士フイルムフォトサロンで写真の個展を行いました。
こちらで全作品がご覧になれます。よろしければ、気分転換にご覧下さい。


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生活が超快適になったお勧めグッズ。ビジネスモデルも凄かった

私はアレルギー性体質で、鼻がよく詰まるのが悩みです。
睡眠中も鼻づまりで鼻から息を吸えず、口呼吸していました。
口呼吸していると、喉がカラカラになります。
そして時々夜中に起きてしまい、熟睡できません。
結果、昼間はすぐ眠くなるので、知的生産性が落ちてしまいます。

時々、たまに鼻詰まりがなく快適に鼻から呼吸できる時もあります。
こんな時は、まるで別世界のように快適。

「いつも鼻から呼吸して眠れるといいなぁ」と思っていました。

鼻呼吸は、実は身体にとっても大事です。
まず吸い込んだ空気を適温に暖め、湿り気を与えて適切な湿度にし、異物もフィルタリングしてくれます。口呼吸だとこの3つがなくなるので、身体にも悪いわけですね。

そんな時に、家族が耳鼻科の先生から勧められたのがこれです。

「ハナクリーン」

私はこの会社から対価をもらっていませんのでリンクは貼りませんが、アマゾンでも買えるのでご興味があったらチェックしてみてください。

これは体温と同じ温度の塩水を約150cc入れて、鼻腔を洗える道具です。
鼻腔は鼻の穴の奥に拡がる空間です。
ここに花粉とか空気中の埃などの色々なモノが溜まり、鼻づまりが起こります。
ハナクリーンはここを塩水で洗い流してくれるわけですね。

就寝前に鼻を洗うと、鼻がスッキリして熟睡できるようになりました。
昼間に眠くなることも少なくなりました。

ポイントは体温と同じ温度の塩水を使うところ。水で洗うと鼻が何かに突かれたように痛くなりますし、普通の温度の水だと刺激が強すぎます。

そこでハナクリーンでは、絶妙な塩分濃度になるように洗浄剤もセットで販売しています。

ちなみに器具は、ハンディタイプ(ボディプッシュ式)で約3,000円。
洗浄剤は1回分を1.5gの塩+少量のペパーミント&メントールで小包装したもので、1回あたり約20円です。
「食塩を調合しても大丈夫なのでは?」と思いがちですが、ハナクリーンのサイトによると、長期使用すると、食塩に入っているミネラル分が鼻粘膜に悪影響を与えるそうです。

この製品、なかなかよくできたビジネスモデルを実現しています。

・顧客の悩みに、ストライクゾーンで答えている
・消耗品ビジネスモデルを実践している(本体は安く、消耗品で高収益。値ごろ感もほどほど)
・長期間使用するほど満足

ということで、我が家ではこの数年間、使い続けています。
こんなビジネスモデル、作ってみたいですね。


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「独禁法で、値引き禁止はムリ」を突破したパナソニック

日経ビジネスの今週号(2023年1月23日号)の特集「殻を破れ!Panasonic」で、実にいいお話しがありました。記事の一部をオンラインでも読むことができます。

さらば家電の安売り パナソニック、マイナーチェンジ地獄脱す

この記事のポイントは…

・パナソニックの商品は、競争力があっても常に量販店で値引き販売されていた
・そこで「値引き販売は一切禁止にしよう」ということになった
・ここで問題になるのが「独占禁止法」。独禁法があるので「メーカーが販売店に価格を強制するのはNG」が常識だと思っていた
・そこで公正取引委員会に確認した。回答は「パナソニックが在庫リスクを引き受ければ、販売店に価格を指定してもOK」
・販売店が在庫を抱えれば、独禁法にひっかかる。しかしパナソニックが在庫を抱える形にすれば、販売店は単なる取次になり、パナソニックが直販する形になって独禁法にひっかからない
・そこで、価格を指定して販売店に納品、返品を常に引き受ける体制にした

私たちは「独禁法があるから、値引き禁止なんてムリ」という常識に陥りがちです。しかしこんな常識に縛られると、打つ手が限られてジリ貧に陥ります。そこで必要なのが、あらゆる常識を疑ってかかること。

この記事はその常識を疑う大切さを教えてくれます。

ちなみに現在のパナソニックの代理店販売に大きく影響を与えたのが、1964年に行われた「熱海会談」。熱海のニューフジヤホテルで、創業者・松下幸之助さんと主要代理店が二昼夜徹して行った伝説の意見交換の合宿です。

ある販売代理店の創業社長が苦情を言ったら、松下幸之助さんは…

「あなた、血の小便が出るまでやっていますか。私はやっていますよ。そこまでやってから言いなさい」

共存共栄という理念についても…

「共存共栄というのは、強い者同士でしか成立しませんよ。あなた方は強い者じゃないですね」

まさに真っ正面から本音で喧々諤々の議論をしたわけです。
最後の最後、決裂になるかと思った時に、松下幸之助さんは涙をこぼして…

「本当に申し訳なかった。改革をやります。しばらく時間を下さい」

そして自ら営業本部長代行を兼務。69歳で現場に復帰。「一つの県に代理店は一つ」「現金販売は報奨金」などの大改革を行いました。

松下幸之助さんは「松下の商いは3割減る。年間利益150億円は2年間なくなるので300億円。それで済んだら安いもんや」とハラを括り、徹底して経費節減して、合理化分は販売代理店に還元。

しかし2年間で300億円の損失を覚悟した改革は、2年間で487億円の利益を生み出しました。

松下さんは役員に、のちにこう言っています。

「そもそも一店舗のナショナルショップが10個買うてくれたら、全国で50万個売れる仕掛けを作ってあるのや。その製品が、小売店の倉庫に止まっているのか、お客さんの手元にまで届けられているのか。要は、わしが作った仕組みがちゃんと機能しているかどうかを見るのが、お前たちの仕事や」

※以上、熱海会談は、下記文献を参照しました。
「松下電器の経営改革」(伊丹敬之・田仲一弘・加藤俊彦・中野誠著、有斐閣)p.306
「血族の王 松下幸之助とナショナルの世紀」(岩瀬達哉著、新潮文庫)p.295-301

しかしこの仕掛けも、のちに家電量販店が登場して危機に直面します。「経営の神様」と称される松下幸之助さんが完璧に作り上げた仕掛けですら、時代ととも賞味期限が切れるわけです。

しかし大きな会社ほど「現在の仕組みは大前提で変えられない」と思い込みがちなので、常識にがんじがらめに縛られているのです。

そこで必要なのが、今の常識を全て疑い続けること。だから外部の人や、新しく組織に入ってきた人の「素朴な疑問」は、実は問題の核心を突いていることが多いのです。

そして大きな組織は「賞味期限が切れた常識」が至る所にあります。

値引き禁止・定価販売に舵を切ったこのパナソニックの取り組みは、そんな大切さを教えてくれます。

あなたの組織は、どんな「賞味期限が切れた常識」に挑戦していますか?


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D2C時代のリアル店舗戦略

スマホであるアパレルショップのサイトを見ていた妻が言いました。
「この服、いいなぁ…」

でもその場では買いませんでした。
「念のためお店でチェックするね」

散歩のついでに私も近所の店について行きました。

実際に妻が店で試着したところ、微妙なフィット感や色合いがイマイチ。
一方で前々から買おうと狙っていた服を試着したところ、ベストフィット。
結局、フィットする方を買うことにしました。
ちなみにこのお店からは、妻が欲しそうな商品が入荷すると、LINEでメッセージが届きます。

いまやありとあらゆる商品がスマホで売れます。
あの数百万円のテスラも、スマホでテスラ社から直接買えます。アマゾンで本を買うのと同じ感覚です。
私も昨日、4万円の加湿器をバルミューダ社のサイトからスマホで買いました。
そんなわけで、製造メーカーが直接消費者に売るD2C企業(Direct to Consumer)が増えています。

一方でD2C企業にも悩みがあります。
触ってみないとわからない実商品の場合、スマホではその感触がなかなか伝わらないのです。

妻の服はまさにそんな例です。

私の場合は、昨年発表されたApple Watch Ultraです。
私はネットで新商品発表を知ると、即「これ欲しいスイッチ」が入りました。
デザインもいい。機能も沢山。しかも電池の持ちが2倍です。
ただ毎日身につけて使うものです。念のためアップルストア表参道で実商品を付けてみたら、意外とアウトドア志向。「ビジネスシーンで身につけるには違和感があるなぁ」と感じました。結局、Apple Watch Ultraは購入を見送りました。

こうやって確認出来るのも、リアル店舗があるおかげですね。

そこで多くのD2C企業は、次々とリアル店舗を展開しています。

彼らは、ネット以外の販路を開拓して売上拡大するためにリアル店舗を出しているのではありません。
顧客に商品を実体験してもらい、顧客の満足度を上げて、全体の売上をかさ上げするために、リアル店舗を出しているのです。

現代の消費者は、ある程度こだわる商品を買う場合は、色々な形でスマホを使います。ですからチャネル戦略も、デジタルを大前提に考えていく必要があるのです。

御社のチャネル戦略は、デジタルを大前提に構築されているでしょうか。


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EV化の裏で静かに進む、水平 vs.垂直の戦い

街を歩いていると、気がつかない間にクルマがスーッと横を通り過ぎることが増えました。クルマがEV化で静かに走るようになったおかげです。最近、街中でもEVをよく見かけるようになりましたね。

世界全体で見ると、この1〜2年でEV化が一気に進んでいます。
各地域別のEV普及率はこうなっています。

【世界全体】 21年 8.1%
【欧州市場】 19年 1.9% → 20年 5.6% → 21年 11% (対前年比64%増 119万台)
【中国市場】 20年4.4% → 21年 13% (対前年比69%増 352万台)
【米国市場】 20年 1.6% → 21年 2.9%
【日本市場】 21年 0.9% → 22/1H 1%超

こうして全体を眺めてわかることは、

・欧州と中国は2022年に、普及の壁=キャズム(普及率16%)を突破している感じですね。

・米国と日本は、欧州・中国を2-3年遅れで追いかけています。

ガソリン車→EV化で、クルマの構造が大きく変わります。
大胆に単純化して言えば、こんな感じです。

【ガソリン車】ガソリンを燃やしてエンジンで動力発生→シャフトで車輪に動力を分配→車輪を回す
【EV】各車輪にモーターを付けて、電気制御して車輪を回す

このためEVではガソリン車で必要だった部品が一気に減る上に、電気でクルマの動きを自由に制御できます。

こんな状況の中で、クルマ業界内とクルマ業界外のメーカーが入り乱れて起こっていることが、水平統合と垂直統合の戦いです。

ガソリン車は複雑な構造なので、品質を高めるには、エンジン、ポンプ、トランスミッション、シャフト、サスペンション、ブレーキなどで微妙な擦り合わせ調整が必要でした。

日本企業が得意なのがこの「擦り合わせ技術」です。クルマ業界では、この擦り合わせで大成功したのが日本が誇るトヨタです。

このような擦り合わせを「垂直統合」といいます。細かい部品一つ一つから最終製品までを、メーカーで細かく統合していくわけです。

ところがEV化でクルマの構造がシンプルになりました。一時期は「CPU,メモリー、マザーボード、電源などの部品を買ってきてパソコンを組み立てるのと同じ感覚で、クルマも作れるようになる」と言われた時期もありました。(実際にはEVの場合でも、そこまで単純ではないようですが…)

このように、部品同士の擦り合わせ作業が少なく、部品を組み合わせることで最終製品に統合できることを「水平統合」といいます。

EV化によってクルマ業界で起こっているのは、まさにこの垂直統合と水平統合の戦いです。

トヨタなどのガソリン車の王者は、ガソリン車で確立した垂直統合の仕組みをEVでも実現した方が、自社の既存の強みを活かせるので有利です。ですので、バッテリーなども含めてできる限りEV関連の部品を内製化して、垂直統合モデルにより高品質化を極めようとします。

一方で中国自動車メーカーのようなクルマ業界の新規参入者にとって、参入障壁が一気に下がるEV化は大きなチャンスです。そこで様々なEVの部品メーカーとできる限り部品を標準化して外部調達することで、水平統合モデルにより低コスト化・デリバリー迅速化を図ろうとします。

そして世の中は、水平統合の方向に大きく進んでいます。この中でどうするかが、垂直統合の覇者・トヨタのジレンマでもあります。

日本でも、水平統合で勝負を賭けている会社は数多くあります。

ソニー・ホンダモビリティ(ソニーとホンダによるEV合弁会社)も、水平統合を志向しています。

日本電産は、永守会長が「EVのモーター供給会社となり、EVの価格を1/5にする」と言っています。

さらに日本のスタートアップ「ティア・フォー」は、EV用の基本ソフト(OS)である「オートウェア」をなんとオープンソースソフトウェアにより提供しようとしています。オートウェアは、台湾の鴻海精密工業が進めるEVの自動運転用プラットホームで、OSとして採用されました。

この垂直統合 vs. 水平統合の勝負は、これから3〜5年ほど続くでしょう。注目していきたいと思います。


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今年どうなるかは予想できない。ではどうする?

今年はどんな年になるのでしょうか?

1つだけ確実に言えることがあります。今年の年末、「今年の年初には、こんなことは想像もできなかったですね」と振り返っているだろう、ということです。

ナシーム・ニコラス・タレブが著書「ブラック・スワン」で述べたように、想像もしない出来事が起こり、グローバル規模で想定外の大きな影響を与える時代です。タレブはこのような出来事のことを「黒い白鳥(ブラック・スワン)」と呼びました。

現代ではごく少数のブラック・スワンが社会に甚大な影響を与え、私たちは翻弄されます。昨年だけでも「ウクライナ紛争」「中国のゼロコロナ政策」、それらに伴う「超ドル高=超円安」「エネルギー危機」「米国のインフレ」など様々なブラック・スワンが発生しました。

ブラック・スワンの影響力は、ますます高まっています。
ブラック・スワンの予見は、そもそもムリ。
では、どうするか?

まず「誰も未来を予想できない」と理解すること。
そして想定外が起こった場合は、それを強かに利用することを考えること。
そのために、全体でリスクを取る部分は10-15%程度に留め、残りについてはリスクを徹底的に回避することです。

リスクを取らない部分を見極めてリスクを徹底回避しておけば、「想定外」が起こっても余裕を持てますし、逆に「想定外」をチャンスに変えることができます。

資産投資にたとえると、日経平均が1/10に落ちても、資産の9割をキャッシュで持っていれば、超底値で株式を買えるようなものです。

たとえばコロナ禍の場合、研修業の人たちは対面研修が全部キャンセルになり、大変な目に遭いました。しかしいち早くオンライン研修に切り替えた人は、逆にこれをチャンスに切り替えて、いち早く新規事業を立ち上げることができました。(手前味噌ですが、完全オンラインの永井経営塾もそうやってKadokawaさんとの協業で2021年年初から立ち上げたビジネスです)

このためには、日頃から余裕がある経営を心がける必要があります。

現代では「想定外は予想できない」ことを強かに利用していく思考が求められる時代になったのです。

今年の年末も、こころ穏やかに迎えたいものですね。


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「謙虚さ」は、リーダーと組織を成長させる

私たちは、部下がいるいないに関わらず、リーダーのお役目をいただくことがあります。

たとえば、仕事でプロジェクトチームのとりまとめ役になる。
宴会の幹事を拝命する。
バンドのライブを任される。
マンションの管理組合の幹事になる。

どれもリーダーの仕事です。

そこでありがちなのが、「デキるリーダーにならなきゃ」と勘違いすること。これはたいてい不幸の始まりです。何か偉そうにしているけど、どこかイタい。的確にアドバイスしようとして、実は間違いだらけ。そんな人にチームの人たちはなかなかついていこうとはしません。

そこで必要なのが「謙虚さ」です。

でも「謙虚さ」は、さんざん使い古された言葉ではありますが、意外とちゃんと理解されていません。

「謙虚さ」とは、「自分はすべて答えを持っているわけではないし、未来も見通せない」と認めることです。そして自分を偽らずに誠実に行動し、自分がわからないことはわからないと認め、他人に対してリスペクトすることです。

「そんなのでいいの? 頼りにならないじゃん」と思うかもしれませんが、研究によると、リーダーが謙虚さを示すと、チームは学習行動の積極性を増すことが確かめられています。

謙虚なリーダーは、チームメンバーの意見に真剣に耳を傾けます。するとチームの人たちは自分で考えるようになり、チーム全体で自ら学ぶ習慣がついていきます。そして耳を傾けるリーダーも学んで成長していきます。

この「謙虚さ」の出発点は、繰り返しになりますが、「自分はすべて答えを持っているわけではないし、未来も見通せない」と認めることです。

常に謙虚でありたいものです。


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意味のない「差別化」をしていませんか?

「これがウチの差別化ポイントです!」

このようにアピールしている会社をよく見かけます。一方で、意味のない差別化をしているケースが実に多いのも現実です。たとえば…

①機能の違いをアピールする

例:「ユニクロのジャケットはフードが外れます。当社のジャケットはフードと一体化しました」
→でも、「フードが外れないからこの商品買おう」という人はあまりいませんよね。

顧客にとって意味のない機能をいくら追加しても、差別化にはなりません。

②ライバルよりも目立たせる

例:ライバルは「90日で成果が出る英語レッスン」ってアピールしているから、当社は「30日で成果が出る英語レッスン」とアピールしよう
→そのうち「1週間で…」「1日で…」「10分で…」なったりします。言ったもん勝ちの世界ですよね。

でも消費者はバカではないので、この手の意味のない数字ごっこには騙されません。

③ライバルと比べた優位性をアピールする

例:「全国ゆるキャラグランプリで、申込み3000件中、うちは10位です!」
→ 2021年時点でゆるキャラは全国に1553体あるそうです。ゆるキャラは地域のイベントを盛り上げる効果がありますが、ゆるキャラ自体は差別化にはなりません。

ライバルと比べて少々優位性があっても、顧客にとって意味がなければ差別化にはなりません。

④技術をアピールする

例「業界では誰も採用していない最先端のWeb3技術を活用して、後継者問題に悩む中小企業と若い起業家を結びつけることができます」
→何かとても有り難いものに思えてしまいますが、その中小企業の経営者と、若い起業家がその技術を使えないと、意味がありません。

課題の見極めの前に解決策を前提に考えてしまうと、最先端技術を使っても、大抵はスジの悪いビジネスになります。(頭脳が優秀な人ほど陥りやすい罠です)

これらの「イタい差別化」に共通しているのは、差別化というものをそもそも勘違いしていることです。

「要は、相手と違えば、差別化だよね」

これは差別化ではありません。

差別化戦略は、1980年頃に経営学者マイケル・ポーターが提唱しました。

本来の差別化は…

「このニーズに応えられるのは当社だけ」という状況を作ること

そのニーズが大きいほど、消費者は喜んで買うようになります。

たとえば、以下は差別化の例です。

ゴディバ →定番のバレンタイン本命チョコ
ブラックサンダー →定番の義理チョコ
エアウィーヴ →「質」の高い睡眠環境

そのお客様の課題やお困りごとに対して、業界でベストの解決策になることが、本当の「差別化」なのです。

御社は、差別化ができているでしょうか?


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アサヒ「白湯」のブルーオーシャン戦略

「これは参りました!(笑)」と思いました。
先月(2022年11月)、こんな商品が発売されていたのです。

『アサヒ おいしい水 天然水 白湯』

白湯(さゆ)です。
要は、ミネラルウォーターを温めて店頭に出したドリンクです。

「え?それだけ?」と思ってしまいますよね。
私は、ありがちな会社の社内会議でこの商品企画を提案するとどうなるか、つい想像してしまいます。

担当者「白湯を提案します」
部長 「天然水を温めただけじゃん。こんなんで売れるの?」

しかしこの商品、ヒットしているのです。

Twitterで「アサヒ 白湯」で検索してみると、こんな声が次々と出てきます。

「本当美味しい よく分かってるアサヒ」
「これからの季節に嬉しい!」
「水筒持ち歩かないからペットボトルの白湯ありがたい。Asahiに感謝」
「ついに出た!!ペット白湯〜!! ずっと欲しかったからコンビニで見かけて即買い!」
「美味しくてビックリ」

ちなみにコンビニやスーパーのホット飲料コーナーで、白湯の適温(約50~60℃)に温めた状態で販売されています。

アサヒの発表によると、白湯の飲用経験率は2009年の11.8%から、2022年には61.0%と5倍になっています。男性の飲用経験率も54.4%。なんと13年で5倍に成長する、隠れた超成長市場だったのです。

どんな時に飲むかというと、女性は「冬場の冷えや寒さ対策」「体に良さそう」、男性は「朝からカフェインを取りすぎないように、意識して白湯を飲んでいる」、といった感じです。健康志向ですね。

確かに私も白湯を飲むと、身体がリラックスした感じになります。

でも飲みたいときに買えないんですよね。

まさに「ありそうでなかった、とても欲しいモノ」ですね。

「既存知×既存知」がイノベーションと言われますが、この商品も「天然水×ホット飲料コーナー」という既存知同士の掛け算で生まれたイノベーションとも言えると思います。

この商品には、ポイントが2つあると思いました。

まず「白湯」というネーミング。実は2014年に「ホット天然水」という商品を出したのですが、売れなかったそうです。確かに機能面を考えると「温めた天然水=ホット天然水」ですが、健康志向を考えると「白湯(さゆ)」の方が消費者の心に刺さりますよね。

もう一つはタイミング。6割の人が白湯の飲用経験を持つ2022年という絶好のタイミングだからこそのヒットなのでしょう。

「レッドオーシャン」と思われがちな市場でも、消費者の隠れた不満は必ずあります。その隠れた不満の発見がブルーオーシャンになることを、この商品は教えてくれているように思います。


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Facebook「いいね」機能は、経営陣は反対だった

SNSに投稿する人たちがどうしても気になるのが「いいね」の数ですね。「いいね」の機能は、FacebookがSNSの世界で初めて実装しました。Facebook急成長の1つの要因はこの「いいね」機能でした。いまやTwitterやInstragranなどの多くのSNSが「いいね」機能を標準装備しています。

でもこの機能、当初は経営陣が反対していたことをご存じでしょうか。

この機能は2007年に、同社のプロダクトマネジャーだったリア・パールマンが中心になって開発した機能です。

当時のFacebookは創業3年目。問題を抱えていました。人気投稿にはコメントが沢山つきますが「すごい」「おめでとう」という簡単なモノが多く、意味のあるコメントが埋もれていたのです。

パールマンたちは「解決策はないか?」と社内で議論を繰り返し、9ヶ月かけて辿り着いたのが「awesome (すごい)」というボタンを付けること。実際にプログラムを作って動かしてみたら、社内の評判も上々です。

しかし2007年年末、ザッカーバーグCEOなどの経営陣に最終承認を得ようとしたところ、「簡単に応答できてしまうと、ちゃんとしたコメントが減るんじゃないの? あとawesome(すごい)よりは、like(いいね)がいいと思う」と反対されてしまいました。

そこで開発チームは「この機能でユーザー同士のやり取りは増える」という実データを見せて、経営陣を説得。そして「awesome(すごいね)」は「like(いいね)」に変更しました。

2009年2月、ザッカーバーグの最終承認の後、2009/2/10、「いいね」機能は発表されました。当時の発表文はこちら

この「いいね」機能のおかげで、Facebookは極めて強い拡散力を獲得し、GAFAの一角を占めるまでに成長しました。

(以上は、こちらの記事を参考にしました)

当時、Facebookの開発チームも経営陣も、この小さな「いいね」機能が、SNS全体をここまで変貌させる強力な機能だったとは知りませんでした。

このように「実際にやってみないとわからない」という話は、世の中にたくさんあります。

マクドナルドがビッグマックの肉を大幅増量した「メガマック」を発売した際にも、「ヘルシー志向の世の流れと逆行するのでは?」という反対もありました。しかし大ヒットしました。

さらに昔でいうと、日本ビクターが開発したVHSビデオも当初は社内で大反対のお荷物プロジェクト。しかし大成功して、ビデオデッキの標準になりました。

商品が成功するかどうかなんて、事前にはなかなかわかりません。サケの産卵のようなものです。サケは3000個の卵を産みますが、成魚になるのは2-3匹。卵を一つ一つ選別しても、それが成魚になるかなんてわからないのと同じです。でも「成功確率は2/3000で低いから、産卵なんてやめよう」ともしサケが考えたとしたら、サケは絶滅してしまいます。

だから大ヒット商品を生み出すには、現場社員が様々なことに自由に挑戦し、意思決定者(日本企業では部長や部門長レベル)が反対しても現場社員が対等に反論できるような組織文化が必要です。

あなたの組織はいかがでしょうか?

 

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プレゼンは事実でなく、インサイトを示せ

多くの人のプレゼンを見てきました。

感覚的な話しですが、全体の8〜9割くらいの人が「プレゼン資料で、このポイントを改善するだけで、説得力が格段に上がるのになぁ」と感じることがあります。

それは、事実だけを述べていること。

たとえばプレゼンで、こんなチャートをよく見かけます。

でもこれだけの情報を見せられても、聴き手は「で?」なんですよね。

こんな事実を次々と列挙する話を延々と聞かされて終わり…というプレゼンも、たまにあります。確かに事実は大事なのですが、プレゼンで事実を伝えるだけでは、聴き手の時間をムダにしています。

プレゼンの目的は、聴き手を動かすこと。
聴き手が知りたいのは、「だから、要はナニ?」なのです。

このように資料を変えると、資料にメッセージが宿ります。(これは先週のコラムで紹介したGOの事例を、私がチャートに書き起こしたものです)

ポイントは、「この事実には、こんな意味がある。だから私はこうしたい」なのです。

聴き手がそのメッセージに共感すれば、聴き手は動きます。「聴き手を動かす」という目的を達成できるプレゼンとは、事実ではなく、インサイト(洞察)を伝えるプレゼンなのです。

そのためには、その事実を元に「これはどういう意味か?」→「自分はこの事実を元に、何をしたいのか?」を考えて、言葉にすることです。

あなたの今度のプレゼンに、インサイトはありますか?

今一度考えてみるだけでも、今度のプレゼンの説得力は、大きく変わってくると思います。

 

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タクシーに乗って、DXの本質を知る

先日、タクシーでやや長距離を移動したときのこと。

私は長距離は、なるべく個人タクシーを使うようにしています。
運転が丁寧ですし、道に迷うことがまずないからです。
しかしこの時はラッシュ時で、個人タクシーが掴まりません。
そこでタクシーアプリの「GO」で、日本交通のタクシーを呼びました。

5分程度で来てくれました。運転手は20代の若い男性です。いつも通り道順を伝えると…。

「その道順よりも、こっちの道順の方が3分ほど早く着きますが、いかがしましょう?」

GOでタクシーを呼ぶ際、目的地の住所指定をしたので、行き先はカーナビに自動セットされているのですね。(ちなみにタクシーを呼ぶ時は住所入力は不要で、地図上で建物をクリックするだけです)

お任せしたところ、「こんな道あったの?」と思うほどの抜け道を走り、あっという間に到着しました。

でもこの若い運転手が、抜け道を知っているわけではありません。カーナビの通りに走ったわけですね。

2022年11月18日のテレビ東京・ワールドビジネスサテライトを見ていたら、まさにこのことを紹介していました。

番組に登場した20代の女性運転手は、乗務歴4ヶ月。でも既に売上は営業所の平均です。その秘密が、GOの活用。

これまでタクシー運転手は、空車の時には流しで運転し客を掴まえるのに独特の勘が必要でした。運転には土地勘も必要でした。つまりタクシー業界は、ベテラン運転手が稼げる市場だったわけです。

しかしGOなら、自動的に乗客と車両をマッチングして、行き先も丁寧に教えてくれます。つまり知識がなくても稼げるわけです。しかもタクシー運転手は、比較的時間に拘束されずに自由に働けます。ですので20代でタクシー運転手になる人も増えています。

GOを運営するMOT(モバイルテクノロジーズ)の中島宏社長によると、タクシー会社に入社して数ヶ月で年収600万円稼げる方も出てきているそうです。

このため、GOでは決済システム、配車アプリ、タクシーに乗せるタブレットなどが全て連動しています。この結果、タクシーは利用者にとっても実に使いやすくなりました。

・乗車率 6割(GO開始前)→9割(GO開始後)
・支払い時間 40秒(車内決済)→15秒(GO決済)
・待ち時間 6分半(電話配車)→3.4分(アプリ配車)

この先のビジネスもあります。

GOに登録する全国15,000台のタクシーは、常にドライブレコーダーで道路の状況を撮影して走っています。そこで撮影画像から標識や信号をAIが自動検知し、地図会社と連携して地図データ更新に活用しています。1日で地球10週分の走行距離の情報量。まさにビッグデータです。

さらにこのデータを活用して、自動運転の研究も進めています。

DXの本質は、ケタ違いの利便性と大きな価値を生み出して、業界を変革し、市場を拡大して、新たなビジネスを創造することです。

これまでタクシーは不便が沢山ありました。しかしその不便さは、同じ業界にいる人ほど、ある意味で当たり前でした。その不便を解決したのがGOでした。

GOの前身は、ジャパンタクシーというタクシー会社である日本交通が設立した会社です。10年前に「このままでは日本のタクシー業界は、ぜんぶUberにやられる」という危機感を持った日本交通トップ・川鍋一朗さんが、タクシー配車アプリを始めたのがきっかけです。

このGOの挑戦は、まさにDXの本質です。

あなたの業界では、どのような危機感を持っていますか?
その危機を克服するために、どんな取り組みをしていますでしょうか?

 

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「役職定年」、賛成? 反対?

2022年11月9日の日本経済新聞に、こんな記事が記載されていました。

「NEC、さらば役職定年 管理職に1000人復帰」

役職定年とは、ある年齢(55歳とか)になったら一律管理職から外す制度です。 組織の新陳代謝を図り、人件費を削減することが目的です。だから管理職を外れた方は、収入も減ります。この「役職定年」は多くの企業で導入されていますが、最近、この制度を廃止する企業が増えているという記事です。この記事ではNECが1000人を管理職に復帰させた例が紹介されています。

これは色々な見方ができますね。

「もっと若手に機会を与えるべき。役職定年は継続すべきだ」
「55歳で一律給料を減らすのは、やる気を失わせる。廃止に賛成」
「ウチの部長、役職定年でいなくなってよかったと思ったら、役職定年廃止で部長に復帰だよ。カンベンして欲しい」
「会社に数十年勤めているということは、スキルが高い裏返し。もったいない。廃止に賛成」

どれもごもっともな意見に見えます。あなたはどのように考えますか?

私は年齢的に、会社員だと役職定年をされる立場です。
ですので私の同年代の会社員と会う機会が多いのですが、彼らを見ていると、役職を外されたり給料が下がったりして、ちょっとつらそうです。

高いスキルを持つ人も多いので「これって、社会全体で見て損失じゃないの?」と思ったりします。

もちろんシニアにもいろいろあります。時代遅れのスキルしか持っていなければ、責任ある仕事はちょっとムリでしょう。ですので役職定年を廃止する場合でも、ちゃんとその人が役職に見合ったスキルを持っているかを検証することが大前提だと思います。

年齢で役職を区切るのは、そもそも年齢的な差別でもあります。
しかし本来、これはシニアだけの問題ではありません。

「女性だから管理職はどうかな」というのも差別。
「若いからまだ課長には早い」というのも差別。
「日本人じゃないから管理職は無理じゃないの?」というのも差別です。

女性だったり、若かったり、外国籍だからという理由で役職に就けないのも「社会全体で見て損失」ですし、公平とは言えませんよね。

役職定年は確かに不公平ですし社会の損失ですが、日本では他にも様々な点で不公平と社会の損失があります。

不公平がなくなり、誰もがやりがいをもって能力を発揮できる世の中になるといいですね。

 

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発破をかけるほど、イノベーションは起きない

仕事で大手企業の経営幹部の方とお話しすると、時々こんなお悩みをお伺いします。

「イノベーションを生もうとして、私は社員に発破を掛けているんですよ。でもねぇ。社員からなかなかいい提案が挙がってこないんですよ。困ったもんです」

実は大手企業で成果が挙がらない最大の原因の一つは、「その企業の心理的安全性の低さ」にあると常々感じています。こういう会社、実に多いのです。

心理的安全性とは「ここでは何でも言える。心置きなくリスクが取れる」と感じる雰囲気のことです。経営学者のエイミー・エドモンドソンが提唱した概念です。

たとえば現場社員が、手間と労力をかけて新事業アイデアを考え、経営幹部に提案する、ということはよくあります。「自分たちのビジネスを少しでも良くしたい」という想いですね。実に素晴らしいことです。

しかしそんな提案に、こんな対応をする経営幹部もよく見かけます。

「うーん。ダメだね。話にならん」
「こんなの何も目新しくないよ」
「あなた、今のお客さんを何だと思っているの? 無責任な発言はやめよう」

実はこう言っている経営幹部は、心の中でこう考えていることもよくあります。

「その心意気、いいね。実は提案もいい線行っているんだけどね。もう少し鍛えてやれば、よくなるな」

しかし厳しく言われた社員は、発言を額面通りに受け取って、こう思ってしまうのです。

「自分の力不足か。提案しない方がよかったのかなぁ」
「この会社、もう何を言ってもダメなのかな。…転職考えようかなぁ」

このような会社が「心理的安全性が低い会社」です。

終身雇用だった昭和の時代は終わっています。今の会社員は、転職の選択肢があります。やる気がある社員ほど「提案すると厳しく言われてチェックされるけど、なかなか話しが進まない」心理的安全性の低い職場から、「何でも言えてリスクも取れて、サクサク挑戦できる」心理的安全性が高い職場へと、次々と流れていきます。

そして心理的安全性が低い職場には、言われたことしかやらない社員が残ります。これで新しいイノベーションを起こすなんて、ムリです。

「発破かけているんだけど成果が挙がらない。困ったもんです」と苦笑いする経営幹部は、実は自分自身が原因であることに気付いていません。

これは日本企業独特の問題ではありません。あくまで、その会社の問題です。

エドモンドソンは心理的安全性を提唱した名著「恐れのない組織」で、「福島第一原発事故の根本原因は、権威に異を唱えず盲目的服従をする日本文化に深く染みついた慣習が問題」という調査委員会の報告書に対し、こう反論しています。

「それは日本文化に限ったものではない。心理的安全性のレベルが低い文化に特有のものだ」

しかしこう言うと、こんな声も聞こえてきそうです。

「いやぁ。でもウチの会社はそういう社風ですからねぇ」

そのような社風だと、発破をかければかけるほどイノベーションが生まれなくなり、心ある社員が離れていきます。そのまま放置していいのでしょうか? いいわけ、ありませんよね。

あなたの会社は、心理的安全性は高いでしょうか?

 

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それって本当に事実ですか?

安倍元首相の国葬が行われた際に、官房長官として安倍内閣を支えた菅さんの追悼の辞が、感動的だったと話題になりました。

すると翌朝、とある放送局のモーニングショーで、とあるアナウンサーがこう発言しました。

「演出側の人間として、それはそういう風に作りますよ。これ、電通が入っていますから」

この後、実際には電通は入っていないことが発覚。このアナウンサーの思い込みでした。アナウンサーは後日、番組で謝罪することになりました。

世の中を見ると、このように「それって本当に事実ですか?」といいたくなる情報が多いですよね。ワイドショーなら笑い話ですが、ビジネスでこのあたりの判断を間違えると、場合によっては致命傷になります。

ここで参考になるのが、ハロルド・ジェニーンは1984年に刊行したベストセラー「プロフェッショナル・マネジャー」です。(10月の朝活永井塾でテキストに使用しました)

ジェニーンは、1959年に米国のコングロマリット・ITTのCEOに就任。58四半期連続増益を達成。18年後に辞任するまでに売上・利益20倍、「フォーチュン500」で第11位の企業に育て上げた経営者です。

ジェニーンは…

「ほとんどのサプライズは悪い知らせだ。だからマネジメントの基本は『ノーサプライズ』。95%のサプライズを未然に防げば、残りのエネルギーを本当に必要なことに注ぎ込める。そこで必要なことは、本当の事実を、それ以外の情報から嗅ぎ分けることだ」

とした上で、こう述べています。

「4つの事実を見極めよ」

具体的には次の4つです。

❶表面的事実

例「この商品は売れ筋の最重要商品!」

→表面的に売れ行き好調に見えても、実は赤字販売だったら、最重要商品ではありません。

❷仮定的事実

例「品質は絶対的に重要だ!」

→ある日本の鉄鋼メーカーは品質に絶対の自信を持っていましたが、ある自動車メーカーへの入札で敗れました。この自動車メーカーは普及車のグローバル生産を目指していたので、そこそこの品質で、かつ全世界で調達できることを重視していたのです。このように盲目的に「品質は絶対」と信じている方は多いのですが、実は過剰品質に陥っていることも少なくありません。

❸報告された事実

例「○○さんがこう言っていた」

→冒頭の話しのように裏付け不十分なことも少なくありません。たとえば私たちは「テレビの情報だから正確だ」と思い込みがちですが、実際には正確ではないことも実に多いのです。私もテレビのワイドショー制作会社の担当者から「明朝放送分のこの情報を教えてください」と急に電話がかかってくることがよくあります(結構ドタバタ状態で制作していることもあるようです)。情報は盲目的に信じずに、ちゃんと裏を取りたいものです。

❹希望的事実

例「この案件、競合はいません」

→実は希望的観測でそう思い込んでいるだけで、実はお客様は想像もしなかった別の選択肢を検討中だったりすることもあります。

事実を見極めるには、その情報がまずこの4つのいずれかに該当しないかをチェックして、フィルターに通すことです。

そのためはジェニーンはこう言ってます。

「必要なのは、事実を確認するひたむきさ。知的好奇心。必要に応じて無作法さ」

出発点は「なんとしても事実を突き止めるぞ」という知的好奇心です。

そのためには、場合によっては相手に根掘り葉掘り聞く必要もあります。
「それはどうやって確かめたの?」「誰が言っているの?」「その人がそう言っている根拠は?」

実は私も何かあるとこのように色々と聞くので、煙たがれることも少なくありません。
ただ事実を見誤って間違った方向にいくよりはマシです。

知りたいのは事実であって、相手を信じていないわけではない、ということを伝えた上で、事実を見極めたいものです。

 

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どうすれば学びが定着するのか

色々と本を読んだり講義を受けたりしてマーケティングを勉強している。
でもなかなか身につかない。
こんなお悩みをお持ちの方、多いかも知れませんね。

ちょうど先週、永井経営塾を受講されている方から、こんなご質問をいただきました。

「学びを定着するための良い方法があれば、教えてください」

永井経営塾では毎月2時間、様々なマーケティングや経営戦略理論を講義動画でお伝えしています。そこでいい機会なので、回答内容を共有したいと思います。

現実には、座学だけではなかなか身につきません。そこで私はこんなことを心がけてきました。

①実際に学んだ事を仕事で使ってみる

理論を頭で理解したつもりでも、十分に自分の中で消化していないと、仕事で使えません。頭で理解したことと、実際にやってみるのとは、全く違うからです。

たとえば、泳げない人が泳ぎ方を本で学んだとします。でもそれだけでは、プールに入っても泳げません。身体がちゃんと動かないからです。本で学んだ方法をプールの中で実際に試して、身体で覚えることで、泳げるようになります。

ここで大事なのは本で学んでおくということ。

本で学ばずにプールに飛び込み自己流で色々やってる人でも、いつか泳げるようになるでしょう。でも、予め本で学んだ人と比べると、泳げるようになるのは遅いですよね。

マーケティング理論や経営戦略理論も同じです。
理論を学んだ上で、実際に仕事で使ってみることが大事なのです。

実際に仕事で使ってみると、色々とうまくいかない部分が出てきます。
泳ぎ方マニュアルの通りに身体が動かないのとまったく同じです。
そして試行錯誤しながら調整していくと、学びが定着していきます。

②学んだ事をアウトプットする

私の企業研修を受講された方で、学んだ内容を元に、営業所内や自分の課で勉強会を開いている方が多くいらっしゃいます。これは実に素晴らしい方法です。

何かを学んだらそれを人に教えて、質疑応答して学びを深めることは、自分自身の学び定着のためにも有効です。しかもチームの力も向上します。

人に教えるためには、自分が教える内容の本質を理解する必要があります。本質とは「要は、こういうこと」と一言で言えて、相手がハラ落ちすることです。この教える準備をする過程で、理解が進み、知識が定着します。

一方向に教えるだけでなく、できれば教えた後に相手から率直な意見をもらうことをオススメします。これで教える側の自分の理解度も確認できます。

私も会社員時代、社内の勉強会を引き受けてお話ししたり、学んだ事をブログに書いてアウトプットしていました。

学んだ事はどんどん仕事で使ってみて成果を出し、あわせてアウトプットする。

こうすることで学びは定着していくのです。

 

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「10年前に挑戦してよかった」となるために

「もう○○歳だから、いまさら挑戦するなんてムリだよなぁ」

こんな言い方したりすること、多いですよね。
○○は、いろいろな数字が入ります。

「もう30歳だから、いまさら新しい仕事に挑戦するのなってムリだよなぁ」
「もう50歳だから、いまさら英語に挑戦するなんてムリだよなぁ」
「もう60歳だから、いまさら新しい仕事に挑戦するのなってムリだよなぁ」

そしてその10年後、たいていこう思います。

「10年前に挑戦しておけばよかった」

でも10年前の時点では、なかなかこのように頭が切り替えて決断ができません。

「10年前に挑戦してよかった」となるためには、どうすればいいのでしょうか?

ここで参考になる本があります。

「プロフェッショナル・マネジャー」(ハロルド・ジェニーン著)

ファーストリテイリングの柳井正社長が「これが私の最高の教科書だ」と絶賛する一冊です。

30代中頃にユニクロを中部地方で数店舗展開していた柳井さんは、ジェニーンのこんな言葉に衝撃を受け、「経営者として自分はまだまだ未熟だ」と痛感したそうです。

「経営は、終わりから始めて、そこに到達するために、できる限りのことをせよ」

当時の柳井さんは「カジュアルウェアの郊外店、面白そうだな」と思ってユニクロを始めて、未来の具体的な姿を描かないまま、「このままやっていればうまくいくんじゃないかな」と思っていたそうです。

そこで
「①世界一になる」
「②その前に、日本一になる」
「③その前に、売上1000億円になる。その時に、経営陣を一新する」
「④その前に、100店舗を展開して株式上場する」

と考えた上で、
「⑤いまは中国地方に数店舗。④を実現するために何をするか?」
と考えました。ユニクロの快進撃はここから始まったのです。

この「未来のある時点に何になりたいか?」と考えて、逆算して今何をするかを考える方法は、私たち個人も使えます。

①今から10年後、自分はどうなりたいかを考えてみる。
②そのためには、5年後にどうなる必要があるかを考えてみる。
③そのためには、3年後にどうなる必要があるかを考えてみる。
④そのためには、いま、何をすればいいかを考えてみる。

このように考えれば、

「もう○○歳だから、いまさら□□□するなんてムリだよなぁ」

と考えることもなくなりますし、

「10年前に挑戦しておけばよかった」

と悔やむこともなくなります。

ちなみに私は22歳に新卒で日本IBMに入社しましたが、実は「プロの写真家になりたい」という夢が捨てられませんでした。

そこで仕事に慣れ始めた24歳に、こう考えました。

「30歳までに都内有名ギャラリーで写真の個展を行う」

周囲からは、

「会社員でしょ。プロの写真家でも個展なんてできないのに、ムリムリ」
「あなた、月に残業200時間もやっているんでしょ。ムリムリ」

とバカにされましたが、「20代後半で写真展を行うとしたら、今何をすべきか?」と逆算して色々と準備をしているうちに、27歳、銀座キヤノンサロンで写真展を開催できました。

そしてこれがきっかけでプロの写真家は夢の世界でないと知り、「自分は写真が好きなのであって、写真で仕事をしたいわけでない」と分かり、プロの写真家として食っていくのはやめて、ビジネスの世界で生きることにしました。

これも写真展に挑戦したからわかったことですね。
もし挑戦していなければ、今も「あの時、プロの写真家を目指せばよかった」と思っていたかもしれません。そして写真はいまもライフワークとして楽しんでいます。

「いい歳して、新しい挑戦なんて…」と思う必要はまったくありません。

私も50歳で始めて人材育成の仕事に関わりましたが、今や人材育成は天職です。

何事も10年間続ければ、人間はかなりのことを達成できます。
「10年後の自分はどうありたいか」を考えて、どんどん挑戦を続けましょう。

 

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学び方を変えると、同じ労力でも成長スピードが全く違う

私がIBMの新入社員だった頃、最大の悩みが英語の習得でした。
入社3ヶ月目に受けたTOEIC(ビジネス向け英語テスト)は475点。
上司に言われました。「これじゃ仕事させてあげられないねぇ」

私の仕事は、海外IBM研究所が開発するソフトウェアの日本語化の技術支援。英語は必須です。IBM社内の規定で、短期海外出張はTOEIC600点、3ヶ月以上の長期出張は730点を取る必要がありました。

上司から「475点では話にならない」とダメ出しされ、英語漬けの日々が始まりました。往復3時間の通勤時間は英語を読み、英語を聞き、週末も英語を勉強。時間がかかりましたが、何とかTOEICのスコアはクリア。海外出張に行けるようになりました。

私は海外の人とスムーズに英語コミュニケーションする必要があったので、英語力そのものの力を底上げする必要がありました。ですのでTOEICに特化した勉強はしませんでした。

しかし最近、TOEIC高得点が昇進の条件になっている会社も増えています。ある意味、TOEICに生活がかかっているわけです。TOEIC高得点だけを狙うのであれば、実は別の方法もあります。

10年ほど前までTOEIC高得点最短の方法は、TOEICの問題集を買ってきて、ひたすら繰り返し、問題に慣れることでした。試験問題には一定のパターンがあるからです。

具体的には、問題集の問題ページを見て、自分で時間管理しながら答えを記入。リスニング問題では、自分でCDを再生。テスト終了後、正解ページを開き、自分で答え合わせ。わからない部分は調べます。これを何回か繰り返します。

ところが最近、もっと新しい方法が生まれています。

従来の方法では、本来の勉強とは別の作業(試験の時間管理、CD再生、答え合わせなど)に、意外と時間と労力がかかります。

最近は、パソコンやスマホを使い、ネット経由でTOEICに特化した勉強ができるようにした学習ツールが増えています。文字だけでなく音声や画像も出ますし、答え合わせも自動でやってくれます。思考が分断されるCD再生・時間管理・答え合わせが不要になるので、紙の問題集をやるよりもずっと効率的にTOEIC対策ができます。

学びの方法は、常に進化しているのですね。

完全オンライン形式でご提供している永井経営塾も、いつでもどこでも、厳選されたマーケティング・経営戦略理論を学べる仕組みを楽しくラクに学べるように、リーズナブルな価格で広く日本中のビジネスパーソンに提供したいと思って始めたものです。

忙しいビジネスパーソンが勉強に使える時間は、限られています。

10年以上前の学びの常識に囚われずに、新しいテクノロジーを使った新しい学びの方法を使うことで、得られる学びは格段に大きくなります。

目的にあわせて効率よく学びたいものですね。

 

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諸刃の刃の「ほめ言葉」。使用上の注意

以前、私が生徒として受講していた、とある先生のクラスでの話です。

この先生、とにかくほめます。ほめまくります。その生徒が「ほめて欲しい」というツボを見つける力がきわめて高く、ほめられた生徒はたいていは嬉しそうにしています。

さてこの方法、皆様はどう思われますか?

教育の現場では「ほめて育てろ」とよく言われます。エリザベス・B・ハーロックは、1925年にこんな実験をしました。子供たちを3つのグループにわけて、算数のテストを5日間実施したのです。結果は…

①常にできた箇所をほめる →71%の生徒が成績向上
②常にできていない箇所を叱る→2日目、20%の生徒が成績向上。その後、次第に成績低下
③何も言わない:2日目、5%の生徒が成績向上。その後、ほぼ変化なし

この結果を見る限り、確かにほめると成績が上がります。こう考えると、「とにかくほめる」というこの先生のやり方は王道に見えます。

一方でこの先生、ほめると喜ぶ生徒に対しては「これってほめる所なのか?」という所でも、とにかくほめるのです。

一方でほめてもあまり喜ばない生徒は、あまりほめません。(ということで私はあまりほめられませんでした)

私は、この先生のほめるという行動から、「この人を気持ちよくさせておけばいいんだ」というどこか操作主義的な意図を感じていました。

過剰にほめる生徒でも、間違いをしていることもありますが、ほとんどの場合、この先生は間違いを指摘しません。しかし時に大きな間違いをしていることもあります。こんな時にさりげなく間違いを指摘するのですが、ほめられて自己肯定感が強くなっているその生徒は、たいていそのさりげない間違いに気付きません。そして時に強く間違いを指摘すると、一気にやる気をなくしてしまうのです。

ほめるって、実はなかなか難しいのですよね。

教育心理学者の鹿毛雅治先生は、著書「モチベーションの心理学」で、ほめ言葉の使用上の注意を紹介しています。

まず優れたほめ言葉は、良質のフィードバックです。励ましのメッセージであると同時に、効果的なアドバイスでもあるのです。

つまり何でもかんでもほめればいいわけではありません。「これはいい。本人に伝えるべきだ」と思ったら、ちゃんとほめる。それが本人の気づきとなり、行動の継続につながるです。

一方で、ほめ言葉にはデメリットもあります。

①「これでいい」と過度に正当化する。なんでもかんでもほめ続けると低いレベルで満足してしまうのですね。

②ほめられることが目的になる。「この先生からほめられたい」と考えてしまい、ほめられることが目的になったとしたら、本末転倒ですよね。

③プレッシャーを感じてしまう。人によっては「ほめられた。これからも期待に応えなきゃ」と感じることもあります。

不適切なほめ方は、むしろやる気に悪影響を与えます。これって教育の現場だけでなく、ビジネスでもまったく同じですよね。

ほめるべき所があったら、アドバイスの形でちゃんとフィードバックする。

当たり前のことですが、このやり方が間違いないようです。

 

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やる気を育てる方法

KOKUYOサイトより https://www.kokuyo-st.co.jp/stationery/yarukipen/

小学生くらいの子どもって、「宿題やりなさい!」と言えば言うほど、悪ふざけして誤魔化して、ますますやろうとしませんよね。お悩みの親御さんたちも多いと思います。

そんな中、使ってみたら8割の子どもが勉強をやる気になった(*)というスグレモノがあります。 それが「KOKUYOしゅくだいやる気ペン」です。→リンク先の動画をご覧下さい。

(*) コクヨしゅくだいやる気ペンモニター調査 (2019年6月2日~6月16日実施。N=86)

「しゅくだいやる気ペン」の素晴らしい点は、「やらない→叱る」から「がんばる→ほめる」へ変えたところです。

■まず「自分でがんばる」
頑張って勉強するとペンの色が変わり、勉強後にペンをスマホアプリに付けると水を注ぐ音がコポコポ鳴って「やる気の木」が育ちます。育っていくとアイテムゲット。楽しいですね。

■「やる気の見える化」
勉強時間は記録されます。母親がアプリでチェックして、花マルのフィードバックができます。親子コミュニケーションですね。

動機付けには大きく分けて、外発的動機付け内発的動機付けがあります。
外から動機を与えられる(ご褒美やお叱り)が、外発的動機付けです。
自分がやりたいからやるのが、内発的動機付けです。

継続性があって楽しいのは、内発的動機付けですよね。

この内発的動機付けで重要なのは、自律性と有能感を尊重することです。
「しゅくだいやる気ペン」は、この内発的動機付けの本質を見事に突いています。

■まず「自分でがんばる」
→「言われたからやる」ではなく、「楽しいからやろう」という自律性の尊重ですね。

■「やる気の見える化」
→「叱られるからイヤ」ではなく、「勉強が進んでほめられた。ボクにもできる」という有能感の尊重です。

このように内発的動機付けで大切なのは、自己決定感です。
自ら学ぶことで、成果も上がり、満足を得る、というわけですね。

ビジネスもまったく同じです。

「人は管理しないと動かない。だから統制する」と考えるマネジャーは、外発的動機付け重視です。

「人は自ら学び成長する。だから一人の人間として尊重し、自律性を支援する」と考えるマネジャーは、内発的動機付け重視です。

前者は「やらない→叱る→ますますやらない→ますます叱る」という悪循環の子どもと同じで、長期的に見ると成果はなかなかあがりません。

後者は「がんばる→ほめる→もっとがんばる」という好循環の子どもと同じで、長期的に見ると成果があがっていきます。

働くならば、やる気を育てる組織で働きたいですよね。

 

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「顔ダニ」の存在を知り、企業の行く末を学ぶ

先週日曜(2022/9/4)の日本経済新聞に、こんな記事がありました。

『「顔ダニ」、人間の一部に 絶滅危機回避、共生へ進化中』

なかなかショッキングな記事です。簡単に内容を紹介しますと…。

実は私たちの顔には「顔ダニ」が住んでいます。図のように、生息地は人間の毛穴。大きさ0.3ミリ。細胞の数はわずか900個。あの小さなショウジョウバエでもこの500倍ありますから、とてもシンプルな生き物です。

この顔ダニ、最小限のゲノム(遺伝子情報)しか持っていません。そもそも生き抜くための重要な遺伝子を欠いています。

なぜかというと、地上で最強生物・人間の顔での生活では、外敵がいないからです。敵は人間が追い払ってくれます。加えて食料である人間の皮脂は豊富。そこで顔ダニは、使わない遺伝子は次々と手放してしまいました。

日光で目覚める遺伝子もないし、夜の活動に必要なメラトニンも作れません。寄生先の人から拝借すればこと足りるからです。

こうして顔ダニは、人の顔という最高の生存環境に最適化していきました。進化というべきか、退化というべきか、なんとも微妙です。快適で外敵のいない環境だと、生物はどんどん退化していくのですね。

でも人間が絶滅した瞬間、顔ダニは人間の顔の外では生きられませんから、絶滅してしまいます。

なんか、色々と考えさせられます。

まず、こんな会社、時々見かけますよね。政府などの規制で守られていて、ほとんど競争がない業界は、日本にはまだ数多く残っています。こんな会社は、外敵がほとんどいない環境に最適化しています。

だから規制撤廃は、自分たちの生死がかかるわけで、強硬に反対します。

しかし世の中は全体として、常に規制緩和の方向に進んでいます。規制がなくなった瞬間、未経験の激烈な競争に晒され、たいへんなことになります。

競争が厳しい業界ほどエクセレントカンパニーが多いのも、同じことですね。厳しい競争環境では、エクセレントカンパニーに進化しない限り、生き残れません。

さて、御社の環境はどちらでしょうか?

一方で勤務先に最適化した会社員も、よく見かけます。その会社の中だけで通用する作法は完璧に身についているのですが、社外で汎用的に通じるスキルは皆無という方です。このような方は、いまの勤務先がなくなったり、色々な事情で勤務先から離れると、途端に困るわけです。

顔ダニの生き様から、考えさせられます。

 

ところでこの記事、読んでいるとちょっと顔がムズムズしてきますね。

 

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「歯の白さ」のマーケティング

ある日、妻に言われました。

「歯が黄ばんでいるよ。歯医者さんでホワイトニングしたら?」

あなたはご自分で、自分の歯がどんな色かをご存じでしょうか?
私は全く意識していませんでした。
洗面所で身支度する時も、口は基本的に閉じたまま。

早速洗面所で自分の歯を見ると、意外と黄ばんでいます。ちょうど湯飲みが茶渋で色が付くのと同じで、長年歯を使っていると食べ物の色で染まるようですね。

そこで早速、歯医者さんにホワイトニングをしてもらうことにしました。

ホワイトニングの当日、まず説明を受けます。

「1回目で、ある程度白くなります。でも2〜3回行うと、より白くなります」

と言われながら、診察台にあるディスプレイで、3人の実例写真(1回目、2回目、3回目)で見せていただきました。歯がもともと白い人。やや黄色い人。茶色い人の3人です。私は茶色い人のケースと同じ状態でした。

どの人も、1回目でそこそこ白くなっています。しかし3回目になると「芸能人?」と思えるほど白くなっています。

説明後に、まず承諾書にサイン。そして実際のホワイトニングです。

施術前に自分の歯の写真を撮り、90分の施術後にまた歯の写真を撮って、ビフォーvs.アフターの比較をします。

結果は事前の説明の通り、そこそこ白くなりました。しかしもっと白くしたいので、早速2回目の予定を入れました。

帰宅して妻にホワイトニングした歯を見せると、「すごく白くなった。もうこれでいいんじゃないの?」と驚かれましたが、「もっと白くなるので、3回目もやることにした」と答えると、「へぇ〜」。

このホワイトニング・ビジネス、なかなかよくできています。カギは「事前説明」です。

人の期待値は主観なので、人によって様々です。だから期待値を事前にセットする必要があります。

事前説明をしないと、こうなりがちです。
「1回で真っ白になると思っていたのに、そうでもないじゃん」
「2回目も必要なの? またお金取るの?」

事前説明した上で、施術前に承諾書にサインをさせることで、こうなります。
「ほぼ事前の説明通りだね」
「2回目と3回目をすると、もっと白くなるのか。予算があればやろうかな」

事前説明ではさらにこんな話もありました。

「一度ホワイトニングをしても、歯は徐々にまた色が付いてきます。歯の白さを保ちたければ、定期的なホワイトニングがオススメです」

つまり事前説明により「消費者の期待値」のマネジメントをすることで、
①顧客満足度向上を図りつつ、
②2回目・3回目の予約に繋げて売上拡大を図り、
③さらにリピートオーダーに繋げているのですね。

恐らくホワイトニングの技術や施術道具を販売する会社が、この「事前説明の徹底」というマーケティング手法とセットで、歯科医に売り込んでいるのでしょうね。

ポイントは「1回だけでは白くならない」「白さはホワイトニング後、徐々に失われる」というデメリットを正直に伝えて、そのデメリットをビジネスに繋げている点です。

正直に伝えることで、デメリットを転じて、売上拡大に繋げる。

このやり方は、私たちのビジネスでも参考になるなぁ、と実感しました。

 

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恥の多い人生を送っていた21歳の私

「恥の多い生涯を送って来ました。」
これは太宰治の名著「人間失格」第1の手記の書き出しです。

かく言う私も振り返ると、21歳の就活で、恥の多いことを散々やっておりました。

基本的に内気で根暗だった学生時代の私は、就活では「明朗快活。やる気に溢れ、ポジティブな若者」を演じ、いい会社に入ろうと考えました。

やろうと思えば、これは意外と簡単なのです。

雑誌でよく性格診断テストなどがあります。これで「今日は優等生キャラで回答」「今日はパッション系キャラで回答」と頭を切り替えて回答すると、その通りの結果になります。これはいい訓練になりました。

さらに就活面接では他の就活生とひと味違う「問題意識がある意識が高い若者」感を出すために、「この面接先の会社に対する自分の問題意識は何だろう?」と考えて、集団面接で質問するようにしたりしました。

たとえば日本IBMの集団面接で、IBMに務めるOB社員から「何か質問ありますか?」と聞かれた時、こんな質問をしました。

「IBMは、今年の初めにTIMEで特集されましたよね。実際にIBMでお仕事をなさっていて、いかがですか?」

(お。こいつ。ちょっと問題意識がありそうだな)と思われることを狙っての質問でした。改めてこうやって書き出してみると、もの凄くイヤなヤツですね。

幸いながら当時のIBMは新卒大量採用をしていたこともあり、無事IBMに入社できました。(実は並行して某中央官庁の面接も受けていました。こちらは若手官僚の方々と延々と面接を繰り返した末に、見事落ちました)

最近になって就活生の方々とのやり取りをする機会があります。そこで気がついたことがあります。

就活生だった私は色々と演じていたわけですが、熟練ビジネスパーソンから見ると、そんな就活生のたくらみなどはすべてお見通しである、ということです。

ヒントは、至る所に転がっています。

メールのちょっとした言葉遣い。電話のやり取り。面接時のわずかな仕草や振る舞い。他の人に対する気遣い。目線のかすかな動き。呼吸…。対面で話したりすると、自分では気付かないようなわずかな所作でも、その人の内面がありありと見えてきます。(Zoom経由でも結構わかります)

そして演じているキャラとわずかな所作にギャップがあると、無意識にセンサーが働き「この人、演じているな」と感じるのですね。

就活当時の私のこざかしい考えなどはすべてお見通しだったわけです。しかし当時はまったく気付きませんでした。いま振り返ると、実に恥の多い人生を送っていた21歳の就活生だった私でした。

社会人になってもしばらくの間、そうやって演じていた私ですが、気がつくとやめていました。

いろいろやっているうちに、「結局、素の自分が好感度を持たれることが一番である」とわかってきたのですね。20代後半くらいから、私の座右の銘は「自然体」になりました。

最近になって「あるべきリーダーの姿」を演じるのは間違いだ、という考え方が出てきています。この半世紀、リーダーシップの研究者は1000以上の調査研究で「あるべきリーダーの姿」を探ってきました。しかし理想のリーダーシップ像は突き止められませんでした。共通の特徴・特性・スキルはなかったのです。

そこで広がりつつあるのが「オーセンティック・リーダーシップ」という考え方です。オーセンティックとは「本心に偽りのない」「本物の」という意味。つまり「自分らしさを貫くリーダー」です。

ムリめにリーダーを演じても、人間の脳には、わずかな感情や行動の表現を読み取る「共鳴」(レゾナンス)という仕組みが備わっていて、偽りを察知します。違和感を感じると瞬時に不快な感じがしたり、「この人は本心で話しているな」と共感すると瞬時に好意を持つようになるのはこのためです。

つまり「ウソはすぐバレる」。だから自然体が一番なのです。そして自然体で振る舞っても好意を持たれるためには、まず自分を磨くことです。

自然体で、常に自分磨きをしていきたいものです。

 

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毎日一生懸命やる。するといつの間にか終わっている

今月(2022年8月)の日本経済新聞「私の履歴書」は、俳優の山崎努さん。

8月14日の連載13回目は、黒澤明監督「天国と地獄」(1963年公開)で、山崎努さんがオーディションを受けた時の回顧録でした。

「天国と地獄」は誘拐事件を描いた作品。三船敏郎、仲代達矢、志村崇といった黒澤映画を代表する役者が登場する中、犯人役には当時新人だった山崎努さんが抜擢されました。

当時、山崎努さんは25歳。この頃の山崎努さんは「演技はこうあるべし」という強い信念を持ちつつも、試行錯誤を繰り返していました。「天国と地獄」ラストシーンの狂気じみた演技は鳥肌ものです。

「私の履歴書」では、オーディションの演技テストが終わり、山崎努さんは黒澤監督に「この役、やる気ある?」と問われ、「黒澤組はキビしいと聞いているので、やりたくない気持ちもあります……」と答えた後のことが紹介されています。

—(以下、引用)—

黒澤さん、苦笑。そして

「あのね、映画作りは、自動販売機にコインを入れてジュースを買うようなわけにはいかないんだよ。毎日毎日、目の前にある仕事を一生懸命やる。そうするといつの間にか終わっているんだ」

この言葉を僕は今も大切にしている。

—(以上、引用)—

「まさに仕事はそうだよな」と思いました。

黒澤作品はどれも大作。2時間を超える大作映画の企画立上げ、脚本、オーディション、撮影、編集といった膨大な作業を想像すると、まさにエンドレスにも思えます。

しかし、結局、毎日毎日、目の前にある仕事を一生懸命やって、順番に片づけるしかありません。そうすれば必ず終わります。

現在、私も膨大な時間を費やして次回作の執筆中です。書いていて「この作業、本当に終わるのか?」と雑念がよぎることもあります。

しかしこれも目の前の仕事を毎日全力を挙げて粛々と片づけるしかありません。そうするといつの間にか終わっています。うむ。確かにこれまで書いてきた二十数冊の本は全てそうですね。

当たり前のことかもしれませんが、一歩一歩の積み重ねで頂上に向かう山登りとまったく同じであることを、改めて教えていただきました。

今日も、お互いにお仕事、頑張りましょう。

 

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商品づくりよりも、組織づくり

ソニーの創業は1946年。
戦争が終わってまだ1年。日本は焼け野原でした。
当時のソニーは、東京通信工業という社名でした。

この時、ソニーはラジオの修理や改造をする傍ら、様々な商品を開発していました。

たとえば電気炊飯器。木のお櫃(ひつ)にアルミ電極を貼り合わせたものです。でもお米は炊けませんでした。失敗作第1号です。

電気座布団も開発しました。紙の間にニクロム線を入れて温かく過ごせる、というもの。温度調節もできないしろものでしたが、売れに売れました。ただ自社の名前を付けるのは気が引けて、「銀座ネッスル(熱する)商会」という名前を付けました。

この間、創業者の井深大(まさる)さんは商品開発よりも恐らく大事にしていた仕事がありました。それは、こんな文章で始まる「設立趣旨書」です。

「真面目なる技術者の技能を、最高度に発揮せしむべき
 自由闊達にして愉快なる理想工場の建設」

そうして東京通信工業(のちのソニー)は、まさにこの趣旨書にあるような創意溢れる技術者たちが集まり、様々なイノベーションを起こしていきます。

時は60年以上が経過して、2012年。

成長を続けて大企業になったソニーは、業績低迷で苦しんでいました。この時、ソニーの舵取りを任されたのが、平井一夫CEOです。

平井さんは、井深さんが作った設立趣旨書を穴が開くほど読みました。ここに書いていることは、まさにソニーの原点。しかし平井さんは、この設立趣旨書は時代に併せてアップデートする必要がある、と感じました。そして考えに考えた末に、新たなソニーのあるべき姿を一言にまとめました。

「感動 KANDO」

既にソニーはグローバル・カンパニー。日本人以外の海外社員が過半数です。そこで平井さんは、世界中のソニーの拠点を回ってタウンミーティングを続けて、『ソニーは「感動 KANDO」を生み出す会社なんだ』ということを、日本語で、時に流暢な英語で、語り続けました。

そしてソニーは見事、復活しました。

「ビジョナリー・カンパニー」を書いたジム・コリンズは、業界トップを何十年も維持する超一流企業を「ビジョナリー(未来志向)・カンパニー」と名付け、世界で18社のビジョナリーカンパニーを選び、共通する8つの基本原則を本書にまとめました。その最初の基本原則がこれです。

『時を告げるのではなく、時計をつくる』

「時」とは、商品づくりのたとえです。

トップが陣頭指揮で商品作りしても、商品には必ず寿命があります。トップがいないと商品が作れない組織は、トップがいなくなると途端に低迷を始めます。

しかしトップが社員の創造性を引き出し、優れた商品を次々生み出せるような優れた組織を作れば、会社は成長し続けることができます。(なお「組織作り」とは、単に「組織図を作ればいい」ということではありません。「組織作り」とは、組織の行動原理や使命、基本理念を作るということです)

ソニーはまさに、創業時に井深大さんが『時を告げるのではなく、時計をつくる』ことに注力して成長しました。そして低迷した時に、再び平井一夫さんが『最新型の時計にアップデートする』ことで復活したのです。

あなたの会社は、時計を作っているでしょうか?

 

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スマホの「フィード」が、私たちの認知に影響を与えていく

スマホは便利ですね。待ち時間などで手持ち無沙汰にしているとついスマホを見ています。

スマホでSNSを眺めていると、様々な情報が次々流れていきます。私たちは人差し指でスクロールし続けるだけ。自分がフォローしている情報(つまり自分が関心ある情報)だけ表示されるので、楽しいわけですね。自分の投稿への反応も気になりますよね。

そんなわけで、気がつくと1時間SNSを見続けたりします。

先日、永井経営塾ゲストライブに、最新メディアにお詳しい藤村厚夫さんをお招きし、色々とお話しを伺いました。藤村さんはITmedia会長を務められた後、SmartNews創業時にシニア・ヴァイス・プレジデントに就任してメディア事業開発を担当され、2018年より同社フェローを務めておられます。

藤村さんは、最新メディアで現在最も注目している動きの一つが、この冒頭の状況だとおっしゃっています。この仕組みを「フィード」と呼びます。

これは、人類は初めて経験する究極のメディア体験です。

❶様々な情報(文字・写真・音声・動画)が融合されている

❷見る側のエネルギー消費がほぼゼロ。暇があればずっと見ている

❸自分の興味関心にあった情報にカスタマイズされている

❷を補足すると、人間は情報入手の際には、通常ある程度手間をかけます。ネット検索でも、「①キーワードを入力」→「②検索をクリック」→「③検索結果から必要なものを探しクリック」という手間がかかります。しかしフィードは、人差し指を縦になぞるだけ。面倒な操作は不要。頭をほとんど使わず、次々と情報が得られます。

❸を補足すると、フィードされる情報を見た人は「世の中はこうなっているのか!」と刷り込まれていきます、しかしそれは自分用に濾過された情報。自分の知らない世界は、完全に遮断されています。

最近、安倍元首相の国葬について色々と議論されています。賛成派も反対派も、こんな感覚なのではないでしょうか?

「私の周りは、私と同じ意見の人が多いんだよね」

これはSNSでは同じ意見の人をフォローする傾向があるからです。つまり、自分用にカスタマイズしてフィードされた情報を見た結果を見ています。トランプもこの仕組みを巧みに活用して大統領に選ばれました。

フィードの問題は、多様な意見に接しなくなることです。

私たちは他の人から「あの人に、こんなことを言われちゃったよ。心外だなぁ。落ち込むなぁ。でも確かにあの意見ももっともかもな。ちょっと考えてみるか」というような経験を通じて、自分の知見を広げていきます。

しかしフィードでは、そのような情報は自動的に除外してしまいます。これはSNSのビジネスモデルも関係しています。

多くのSNSでは、広告が基本的なビジネスモデルです。フィード上に、自然な形でできるだけ多くの広告を出せば、売上は拡大します。

ユーザーに「心外だなぁ。落ち込むなぁ」なんて思わせずに、「そうそう。自分もそう思っていたんだ。いいこと言うじゃん」と心地よくワクワクしてもらった方が、SNS上に長時間滞在してくれます。

そうすればユーザーも情報を発信するので、SNSが賑やかになります。こうしてSNSビジネスが繁盛するわけです。(注:広告モデルではないSNSもあるので、全てのSNSがこうなっているわけではありません)

結果、世の中の見え方が変わってしまうわけです。

これはSNSを非難しているのではありません。SNSとはそういうものなのです。

現代の私たちは、このようなメディア・リテラシー(言い換えれば「自分の見ている情報は、こんな形でバイアスを受けている」ということを認識する能力)を身に付けていくことも必要なのでしょう。

 

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自動化は、DXではありません

ITの世界で、RPAという考え方があります。RPAとは、ロボティック・プロセス・オートメーションの略。パソコン操作を自動化してくれる仕組みです。キーボードやマウスの操作が自動化されます。

たとえばクラウド上からファイルをダウンロードして、データを転記したり集計する作業とかありますよね。これまでこのような作業は、人間がマウスとキーボードを操作して、人手をかけてやっていました。でもRPAを使えば、そんな作業を自動でやってくれます。

この手の作業が膨大にある企業は少なくありません。たとえばメガバンクは、データを大量に処理する事務作業があります。そんな職場では、RPAが絶大な労働コスト削減を実現してくれます。

このように言うと…。

「なるほど、RPAを活用して、我が社もDXを推進するぞ!」

と考える方もおられるのですが、これはRPAとDXの大きな勘違いです。

ちなみにDXは、デジタル・トランスフォーメーションの略です。
デジタルを使って、いまの仕事のやり方を一気に変えてしまうのが,DXです。

RPAとDXは、実は真逆なのです。

3年ほど前に、「書類の押印作業を自動化する」という押印自動化ロボットが展示会で出展されて、「そもそも押印作業を不要にすべきじゃないの?」と話題になりました。この場合、「押印作業をロボットで自動化しよう」と考えるのがRPAで、「そもそも押印作業をなくそう」と考えるのがDXだ、と考えると分かりやすいと思います。

RPAの大前提は、「いまのパソコン定型作業を、自動化する」。たとえば、「①クラウドから顧客情報をダウンロードして→②Excelで開いて→③顧客の情報を転記して→④ファイルしたらクラウドにアップロードする」という現在の作業を、自動で行います。つまり、現在の業務を肯定します。

DXの大前提は、「いまの業務を根本的に変える」。たとえば「そんな作業は廃止しよう。顧客がスマホ入力したデータを、直接クラウドに反映させた方が、コスト削減できるし、顧客もリアルタイムでデータを確認出来るから、サービスレベルも上がるよね」と考えます。つまり、現在の業務を否定します。

既存業務を高速化するよりも、既存業務をなくした方が、全体の業務プロセスはスピードアップすることが多いですよね。DXはそこを狙うわけです。

現場主導で考え、現場の生産性を大きくアップするのがRPA。
経営者主導で考え、会社の業務そのものを変えて、生み出す価値と効率性を変革するのがDX。
このように考えると、分かりやすいと思います。

自動化の意外な盲点ですが、「自動化=DX」ではなく、むしろ真逆なので、注意したいですね。

 

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「日本は○○だから、大丈夫」という思い込み

「安倍元首相、奈良市で不審な男に襲われる」

この一報を日経新聞の速報メールで知ったのは、2022年7月8日11:59AMでした。

この時点で、メールのタイトルを見た私は、(「襲われた」というけど、ここは安全社会の日本だ。周囲にはSPもいるだろうし、大ごとにはなっていないだろう。でも安倍さんも大変だなぁ)と思い込んでいました。

その後、続々と入ってくるニュースで、安倍さんが深刻な状況にあることを知り驚愕。その日の夕方、安倍さんは亡くなりました。

これと同じ体験をしたのは、11年前の東日本大震災で「福島第一原発が大変らしい」というニュースが伝わってきた時のこと。

この時も私は、(日本の原発だから大丈夫な筈だ)と思っていました。しかしこの時に、既にメルトダウンが発生していたのです。

我が身を振り返って感じたのは、(日本は○○だから、大丈夫なはず)というのは、幻想に過ぎないということです。

考えてみると、(日本は○○だから、大丈夫)というロジックには、何の根拠もありません。

認知心理学では「人間にはさまざまな認知バイアスがあって、事実を大きく歪めて認識してしまうことがある」と考えます。たとえば…

【確証バイアス】先入観に基づき、都合のいい情報を集めて先入観を補強する。[例] 「戦後、要人の暗殺はなかった→だから今後も大丈夫」「日本では大きな原発事故はない。品質も高い→だから大丈夫」

【正常性バイアス】災害が予想される状況でも、都合の悪い情報を無視して、「今回は大丈夫」と過小評価したがる。[例] 「あの人、不審行動しているけど問題ないだろう」「電源が失われたけど、原発事故は起こらないだろう」

(日本は○○だから、大丈夫)と思っていた私も、振り返ってみると、まさに認知バイアスに陥っていたのです。

今回の件で「SPは何やっていたんだ」と憤る方もおられるようです。確かに緩んだ警備体制見直しは急務でしょう。

一方で、ビジネスで責任を持っている私たちは、どうでしょうか?
仕事で根拠もなく、(○○だから大丈夫)と思い込んでいないでしょうか?

「今、仕事が順調でいい感じ。だから何の問題もない」
たいていはそんな時に、大きな問題の原因が見えないところで発生しています。

あらゆる人が「自分が見えていないところで何か問題が起こっていないか」と考えるようになると、メンタルにストレスがかかってしまいます。

しかし、ビジネスで責任を持つ立場であれば、自分が責任を預かっている範囲は「自分が見えないところで、何か問題が起こっていないか?」という意識を持つことが必要だと思います。

それが「経営者目線を持つ」ということだと思います。

今回の件で、一度我が身を振り返り、身を正す機会にしたい、と思いました。

 

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デル・モデルを実現・進化させたテスラ

成長を続けるテスラは、テクノロジーに注目が集まりがちですが、最近こんな記事がありました。

『【記者の目】テスラ、製造業で異例の「運転資金不要」』
(日本経済新聞、2022年6月23日)

じっくり読むとなかなか凄いお話しなので、解説しながらご紹介したいと思います。

普通はモノを作る時、まず原材料調達や生産にお金を払った後に、商品を売って売掛金を回収します。この「お金を払ってから、売上を回収するまでの期間」を、会計ではキャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)といいます。

この自動車業界ではこのCCCは、記事によるとトヨタが31日フォルクスワーゲン(VW)が74日。世界に冠たる「トヨタ生産方式」を推進するトヨタがVWの半分というのは、さすがです。トヨタの方がVWよりも効率的にお金を回せるということです。

しかしテスラは、なんとCCCはマイナス15日。

つまり、お客からお金をもらい、そのお金で生産しているということです。こうなると運転資金が不要になり、余剰資金が生まれます。その分の資金を新たな投資に回して、成長できるわけですね。

記事によると、テスラは様々な方法を駆使してこれを実現しています。

【ものづくり革新】ガソリン車の部品は3万点ですが、EVは2万点に減ると言われています。テスラはさらに少ない1万点程度。たとえばクルマを制御するECU(電子制御装置)は、通常のクルマでは50〜70個ですが、テスラは数個だけ。おかげで配線も少なくて済みます。複雑な形状の大型部品も一度に成形できる巨大な鋳造設備も導入しました。さらに車種も絞り込んでいます。モデル3とモデルYのⅡ機種で生産台数の95%。内装もシンプル。メーターやボタンはなく、中央にタッチパネルがあるだけです。

【地産地消】テスラはEVが成長する中国でも、現地に工場を作りました。おかげで生産して販売までの時間が短くなります。

【自社直販】自社店舗の販売をやめて、オンラインでお客に直販します。

こうして、調達・生産から顧客に届けるまでのバリューチェーン(価値連鎖)を最短化することで、CCCをマイナスにしているのです。

一見すると、これは1980年代にPC業界で、デルが確立した「デル・モデル」です。デルも…

・販売店やディーラーを通さずに、顧客に直販
・全てお客の希望にあわせてカスタマイズする注文販売
・サプライチェーンマネジメントを徹底効率化。在庫を徹底追求
・自社は技術を持たず、他社の最新汎用技術を採用し、いち早く製品化

こうしてデルも、PC業界で唯一CCCマイナスを実現しました。デルはデル・モデルを磨き込み続け、2001年にパソコン業界で世界トップシェアを獲得。その原資で、今やIT総合ベンダーに進化中です。

テスラは、このデル・モデルを自動車業界で実現した、という見方もできます。
しかもテスラは、デル・モデルを進化させています。

・最新汎用技術を採用したデルとは異なり、テスラは自社で先進技術を研究開発し続けています

・さらに一台当たりの単価は、デルは10万円。テスラは500万円。50倍です。デルモデルも様々な業界にインパクトを与えましたが、実にすそ野が広い自動車業界で新たなモデルを実現することによるインパクトは計り知れません。

・単品PCのデルとは異なり、テスラのクルマは様々な仕組み(自動運転や充電ステーションなど)と連動することで価値を発揮します。クルマはその一手段にすぎません。

テスラが創りだした「テスラ・モデル」とも言うべきこのビジネスモデルは、今後大きな影響力を持ってくると思います。

 

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マーケティングはビジネスパーソンの必須科目

私がマーケティングの仕事を始めたのは、1990年代です。

当時、私はIBM社員でした。1994年、破綻寸前に追い込まれたIBMは、ガースナーがCEOに就任。様々な手を打って復活を果たしたのですが、その一つがマーケティングの強化でした。このためにガースナーはアメックス社長時代にマーケティング分野の右腕だった元部下(アビー・コンスタン)をIBMに招き、マーケティング部門を任せたのです。

「マーケティング専門職を育成しよう」と考えたアビーは、IBM社内でマーケティング専門職を育成することにしました。

この時、製品開発マネジャーだった私は異動して、マーケティング専門職の一期生になりました。IBMはマーケティング専門職の人たちの人材育成に戦略的に投資しました。

当時、マーケティングはマーケティング専門職の人が学ぶものだったのです。

これが、現代ではまったく変わりました。
あらゆる仕事で、マーケティングは必須科目になったのです。

私は企業向けにマーケティング研修を行っています。営業、商品開発、生産、管理、人事など、様々な職種の方々が参加していますが、マーケティングを学ぶと例外なくこうおっしゃいます。

「早くマーケティングを学べば良かった。これ、自分の仕事ですぐに役立ちます」

永井経営塾にも、実に様々な職種の方々が参加しておられます。

理容・美容店の美容師さんたちも拙著「100円のコーラを1000円で売る方法」を読んでいます。理由を聞くと、「だって100円のコーラを1000円で売りたいじゃないですか」。

これはマーケティングが「顧客の潜在ニーズを見つけ出し、価値を創り出して、顧客に提供し、ビジネスにすること」を、首尾一貫した方法論でまとめた考え方だからです。

モノを作れば売れる時代はとうの昔に終わりました。
現代は価値を創らないと売れない時代です。
だからマーケティングがわかれば、一気に仕事力がアップします。

最近注目されているリスキリングで、DXやITだけでなくマーケティングにも注目が集まっているのは、こんな理由です。

ただマーケティングを学ぶ上での大きな壁が、横文字の専門用語や一見難しそうに見える理論。この壁が意外に大きくて、多くの方々が挫折してしまうのです。

実はマーケティングは、いったん理解してしまえば、その本質は子どもでもわかるほどシンプルなものです。難しいことは、本質を理解した上で実践していくうちに次第に分かってきます。

ビジネスパーソンにとって大事なのは、限られた時間と労力の投資で、仕事で成果を挙げること。

そのためにも、いまやビジネスでは必須科目となったマーケティングを一人でも多くのビジネスパーソンに学んでいただける環境作りをしていきたいと思います。

 

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福利厚生アピールで人材募集。いいの?


こんなお話しを聞きました。

中小企業には、なかなか人材が集まりません。
そこで合同で採用面接会をすることがあります。
しかしそれでも応募者がゼロで、悩んでいる社長さんがいました。

あるコンサルタントが、こんなアドバイスをしました。

「福利厚生をアピールするといいですよ」

そこで社長さんは「当社は福利厚生が充実。夫婦で1泊付の人間ドックも受けられます」とアピール。すると面接希望者が殺到し、社長さんのお悩みが一気に解決しました。

さて、あなたはこの話を聞いて、どのように思われるでしょうか。

まず私は「とても現実的な方法だな」と思いました。
人手不足で悲鳴を上げている社長さんは、かなり助かるでしょう。
一方で「これでいいのだろうか?」とも思いました。

従業員の採用は、言うまでもなく会社にとって大きな投資です。この会社の問題は、会社のビジョンや業務内容よりも、表面的な福利厚生で判断する人材を集めていることです。確かに働く人にとって福利厚生は重要ですから、そうして会社を選ぶのは大事なことでしょう。

一方で、会社にとってこの方法が有効か否かはケースバイケース。「従業員に何を期待するか」で変わってきます。

仕事が単純作業のルーチンワークで、「このやり方でやってください」と指示すれば誰でもその通りできるような仕事であれば、「福利厚生が充実していますよ」とアピールして人手をかき集める方法も有効でしょう。実際に、そのような仕事は、まだまだあります。

しかしもし仕事が様々な創意工夫を必要とする創造的な仕事であれば、意欲的で自律的に動ける人材が必要です。そこで必要になるのが、福利厚生だけを求めるのではなく、会社が目指す方向に心から共感する人材です。

でもこのように言うと、この社長さんからこのように言われそうですね。

「確かにウチも創意工夫が必要な仕事だ。でもそれは理想論だね。まずは会社を動かさなければいけない。そのためにはまずは人が必要なんだ。それにいくら募集しても、うちのような会社に、目指す方向に共感するような人材なんて来ないよ」

もしそうだとしたらば、求職者から見て会社の目指す方向が明確でなかったり、仮に目指す方向が明確でもその方向に共感する人がいなかったり、情報発信が不足していることの方が、問題なのかもしれません。

これは企業経営者だけでなく、会社のマネジャーでも同じです。

自分の課や部が人手不足で新しい人材が必要な場合、自分の部門で何を目指すのかを明確にして、そのために必要な人材を社内から探して、「ここで仕事をしてみたい」と思っていただくことです。そんな人材が集まる部門が、強い部門になるのです。

 

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イノベーションは、「猿まね」で起こせ

2022/5/31付の日本経済新聞 経済教室で、早稲田大学の井上達彦教授がこんな論文を寄稿しておられます。

「【経済教室】日本企業、戦略不全からの脱出(上) 「猿まね」批判を恐れるな」

本論文で井上教授は、日本企業が長期の戦略不全状態でイノベーションが起こらない原因は「イミテーション実践力=模倣力の喪失である」と述べています。

そして『世界的に見て日本は「模倣的創造」にたけた民族である』として、下記の例を挙げています。

・トヨタ生産方式(ジャスト・イン・タイム方式)は、大野耐一さんが米国のスーパーマーケットの仕組みを応用したもの

・セブン・イレブンも、米国で展開していたセブン・イレブンの考え方を取り入れつつ、マニュアルを全て日本流に作り変えたもの

「模倣的創造力」は日本人の強みなのだから、自ら捨てる必要はない、ということです。

シュンペーターが100年前に「イノベーションは既存知の新しい組み合わせ」といいました。こう考えると、「創造的模倣」がイノベーションを生むという考え方は納得です。むしろ「模倣的創造が、イノベーションの本質」とも言えるかもしれません。

思い返せば1980年代まで日本企業が成長していた頃、海外からは「日本製品は猿まねばかり」とよく言われていました。しかしその猿まねは、実は「模倣的創造」だった、と解釈すれば、本論文の指摘はとても腹落ちします。

当時は「欧米に追いつき追い越せ」が原動力になり、海外から必死に学びつつ、日本流に作り変えることが「創造的模倣」になり、結果としてイノベーションを生み出したのでしょう。

現在の日本は、「失われた30年」といわれる停滞に陥っています。これは裏を返せば、「海外には学ぶべき先行事例が山のようにある」ということです。

いまこそ日本人の強みである「模倣的創造力」を発揮する絶好のタイミングなのかもしれません。

そのためには、

・「イノベーション=全く新しいものを創造すること」という思い込みを、まず捨てる

・アジアを含む海外から、謙虚に好奇心を持って学んでいく

ということが必要なのだと思います。

 

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