世界経営者会議(5) 2日目: LIXIL 藤森義明 社長兼CEO いないのは「プロの経営者」よりも、むしろ「プロのマーケター」

世界経営者会議レポートの続きです。二日目に、LIXIL 社長兼CEOの藤森義明さんが登壇しました。

 

講演から

LIXILは、TOSTEM、INAX、新日軽、サンウェーブ、TOEX,アイフルホーム、HIVICなど、国内住宅生活関連企業が統合した会社だ。

統合のために外部人材を入れ、「住宅のことなら全てが揃う」ことを差別化ポイントとして、統合を進めている。

世界を見ると、都市化が進んでおり、エネルギー需要の1/3は住宅という状況だ。そこでLIXILは「ゼロエネ住宅」を視野に入れて商品開発をしている。

たとえば、世界では28億人が衛生的な設備を持っていないのが課題の一つ。LIXILの回答は、節水・省エネ技術を活かした製品の開発・普及だ。

目標は「住生活産業におけるグローバルリーダーになる」ことだ。そのために、国内事業中心から、真のグローバル企業へ変革していく。

具体的な数値目標として、現在ほぼゼロの海外売上を1兆円に、現在薄利の営業利益を8%にする。

1兆円の海外ビジネスをどう作るか?M&Aを積極的に推進している。低金利の日本で資金を調達し、これを使っている。

M&Aの基準として、まず地域No.1ブランドを狙う。No.1ブランドの会社は、流通網もあるし、利益率も高い。そして、商品力も重視している。

では、どうやって買った会社をマネージしていくのか?会社の形を変えていく。テクノロジーとイノベーションに注力していく。

具体的には、複数企業の集合体だったLIXIL社内を再編する。

LIXIL Water Technology、LIXIL Housing Technology、LIXIL Building Technology、LIXIL Kitchen Technologyという4つのテクノロジーカンパニー、日本の販売・サービスを担うLIXIL Japan Companyの5つのカンパニーに移行した。

その目的は、グローバル化の加速、世界レベルでの人材活用、カンパニー間のシナジーによるLIXILの強みの最大化、だ。地域最適からグローバル最適に変革するとともに、権限委譲と迅速な意思決定を図る。

「One LIXIL Cultureで勝つ」ために、ダイバーシティの推進、世界共通の価値観の確立、世界共通の人事制度確立、さらにグローバルで活躍できる人材育成を図る。

まとめると、真のグローバルリーダーとなるためには、次の5つを推進していく。

(1) M&Aをグローバルで積極的に推進していく
(2) グローバルに通用する文化を育てる
(3) 本社のグローバル化を図る
(4) リーダーシップ教育、人材育成に投資する
(5) 高い収益性を目指す。ROE 15%以上

 

質疑応答から

質問:顧客とのつきあい方をどう考えているか?
→日本企業では、(1)どういう客に対して、(2)どういうコンセプトで商品を作るのか、(3)それをどのように伝えるのか、ということが首尾一貫して考えていない。このプロセスの中で日本企業は、「(3)どのように伝えるか」しか考えていない。真のマーケティングが必要だ。「プロの経営者がいない」と言われているが、むしろ私は「プロのマーケターがいない」ことが問題だ思っている。

質問:日本では流通経路が複雑だが、どうするか?
→「これが欲しい」という最終消費者、「これを売りたい」という取次・卸など、関係者が多い。しかし大切なのは、「どういうセグメントに、どういったモノを提供し、どういった価値を提供するか」だ。
たとえばシャワー付きトイレ。日本国内で考えると「これは素晴らしい製品だ」と考えがち。しかし欧米では、使う上で心理的抵抗感がある。顧客によって感じる価値は異なる。本来、その顧客にとって何が必要なのかを考えれば、別のモノが出来るはずだ。
流通・工務店は、自分たちが理解できないと「我々を外そうとしている」と思いがちだ。彼らをどうやって巻き込むかが課題だ。最終的には「伝える力」だ。私だけが語っていては限界がある。皆が変革を理解し、各々が自分自身の言葉で伝えることが大切だ。この「伝える力」をいかに身につけ、育てていくかが課題だ。

質問:歴史を守るために変えなければならなかったもの。逆に守らなければならなかったものは、どんなものか?また事業継承のプログラムはあるのか?
→変革を起こそうとしている。過去の全てを否定しないと、変革はできない。事業継承する場合も、否定して作れる人でないといけない。過去のことを忘れて、5年・10年先を見て変革を起こすことが重要だ。変革できないのは、自分たちのコンフォートゾーンで仕事をしているからである。コンフォートゾーンを出て、考える力があって、はじめて強くなれる。強い意識を植え付けるためには、常に上に向かって行く資質を植え付けなければならない。自分が語り続け、周りの人も語っていくようにする。90%はコミュニケーションだ。絶対にあきらめてはいけない。歴史を振り返ってみると、世界に拡がった宗教も、そのようにして拡がったのではないだろうか?

質問:最後に、日本社会・日本企業へのメッセージがあったら、教えて欲しい。
→もっとダイバーシティを推進すべきだ。様々な人たちの多様な意見を尊重することで、新しいアイデアやイノベーションが生まれてくる。ダイバーシティを推進すれば、日本のイノベーションや革新力は、もっともっと出てくると思う。

 

所感

これまで雑誌記事などで藤森さんのお考えに接し、「是非お聴きしたい」と思っていました。今回、その願いがかなったのですが、共感するところがとても多い講演と質疑応答でした。

 

まず、「世界の都市化が進んでおり、エネルギー需要の1/3は住宅」という状況に対して、「ゼロエネ住宅」を視野に入れ、「住宅のことなら全てが揃う」ことを差別化ポイントにして、「住生活産業におけるグローバルリーダーになる」ことが目標としている点。

そして、海外売上1兆円(現在ゼロ)、営業利益8%(現在薄利)という具体的数値目標。

さらに、達成のための積極的な海外M&Aと、それを活かすためのグローバル最適化を目指した社内体制変革

「One LIXIL Cultureで勝つ」ためのダイバーシティ推進、世界共通の価値観・人事制度確立・人材育成

 

「社会のニーズ→企業のビジョン・差別化ポイント→数値目標→具体的施策」という全てのストーリーがきっちりと繋がっています。

私がIBMで学んできたビジネスプロセスも、まさにこの通りでした。

 

また、

「日本では、プロのマーケターがいないのが問題」

「どの客に、どういうコンセプトで商品を作り、どう伝えるか、一貫して考えられていない」

という点も、私が日頃感じ、講演や研修でお客様にお話ししていることです。

弊社ではこのテーマで多くの引き合いをいただいておりますが、この問題を切実に考え始めている日本企業が増えてきたためだと改めて実感しました。

 

今後、国内事業中心だったLIXILがグローバル企業に変革することで、多くの日本企業のお手本になると思います。

今後のLIXILの変革から、私も学んでいきたいと思います。

 

【世界経営者会議レポート】

世界経営者会議(1)1日目:IBM・ロメッティCEO、日立・中西CEO

世界経営者会議(2)1日目:KPMGインターナショナル・ビーマイヤー会長

世界経営者会議(3)1日目:iRobot コリン・アングル会長・CEO 製品中心の会社は、マーケティング力も卓越していた

世界経営者会議(4)1日目: Evernote フィル・リービンCEO

 

世界経営者会議(2) 1日目:KPMGインターナショナル・ビーマイヤー会長

前回の続きです。KPMGインターナショナル会長のお話は、自分の仕事の上でも、とても学ぶところが大きいものでした。

■KPMGインターナショナル ジョン・ビーマイヤー会長

KPMGは世界155ヶ国に15.5万人の社員がおり、売上240億ドル(2.5兆円)。会計監査や税務の助言を行っている。

400社のCEOに対してインタビューした結果を、KPMG CEO Studyとしてまとめた。他社の調査と違うのは「今後3年間、どう考えているか」にフォーカスしていることだ。これを紹介したい。

 

驚くべき点は、世界のCEOは楽観的になってる、ということだ。「今後3年間の成長についてどう思うか?」という質問に対して、「より自信がある」が55%、「今と同じ」が41%、「自信がない」はわずか4%だ。

また「今後のフォーカスは何か?」という質問に対しては70%が「成長」と回答している。リーマンショック後遺症が残る数年前ならば「日々の業務の効率化」だった。CEOの意識は変わっているのだ。

元々CEOは楽観的な性格であることを割り引いても、注目に値する結果だ。これは雇用拡大に繋がっていくだろう。

 

米国の製造業は回復しつつある。市場を変革する技術革新(3Dプリンターなど)が生まれ、エネルギーも米国内で自給自足できるようになり、どこに製造拠点を置くかは問題ではなくなってきた。これまでほどグローバルサプライチェーンを気にしなくてもよくなったのだ。

さらにIBMのロメッティCEO、日立の中西CEOもおっしゃったように、世界のCEO自身がビッグデータ活用技術により「収集したデータを日々の経営で活用できる」と考え始めているのだ。

 

では、「CEOの懸念」は何か?

「競合他社にビジネスを奪われる」が90%、「新規参入者にビジネスモデルを破壊される」が59%だ。

破壊的変革は業界に関係なく起こっている。

さらに顧客は、たとえばアマゾンと同じ顧客サービスレベルをまったく別業界でも期待する、といったように、別業界と同じレベルのサービスを期待するようになっている。顧客の期待レベルが上がっているのだ。

だから企業は、顧客の中でどのような課題と期待が作られているか、常に敏感であるべきだ。

 

また、実に3/4のCEOが企業変革を進めている。32%が「評価または計画段階」、44%が「変革完了または実施段階」、24%が「検討していない」と回答している。

さらに、「3年以内に、自社の製品やサービスの賞味期限が切れる」と考えているCEOが72%いる。つまり、既存製品をいかに変革するか、いかに時代に適合したものにしていくかが重要だ。

 

これらの変革を進める上で重要なのが、人材。これまで企業にとっては、財務資本が重要だった。しかし今後100年は、人的資本がより重要になっていく。

 

(民主党が中間選挙で敗北した。この影響についてどうか、という質問に対して)
むしろ米国のCEOはより楽観的になっている。共和党が企業にとって有利な政策を進めていくことで、ビジネスメリットが生まれると考えているからだ。

(変革を促進するには?、という質問に対して)
多くのCEOは、変革の障害は「文化だ」と回答している。要は、「人をいかに変えるか?」が重要だ。社員一人一人が責任を持って、自らがクリエイティブに変革していくことが重要になっている。

 

(講演では他に税制改革についても触れられていましたが、割愛します)

 

講演を拝聴し、色々と考えました。

オフィス永井では、『「お客様が買う理由」を考え抜き、実際に検証をした上で、商品・サービス開発を進めましょう』とご提案し、長期間の研修やワークショップをご提供しています。

ありがたいことに「自社で行いたい」というご要望も多くいただきます。

自分の感覚では、まさに経営者は、ビーマイヤー会長がお話になった

「多くのCEOが、3年以内に自社製品・サービスが賞味期限切れになると懸念」
「顧客の期待と課題を把握すべし」
「変革で重要なのは、人の考え方」

という問題意識を持っていると感じています。

オフィス永井が提供すべき価値は何か、改めて考えを整理し、深めることができたすばらしい講演でした。

 

世界経営者会議では、他にも多くのことを学ぶことができました。また追ってご紹介してまいります。

 

明朝11/14(金)のニッポン放送で、紹介されます

明朝11/14(金)のニッポン放送「高嶋ひでたけのあさラジ」のコーナー「ひでたけのやじうま好奇心!」で、『戦略は「1杯のコーヒー」から学べ!』をご紹介いただけるとのお知らせをいただきました。

午前7時40分から7時50分の予定です。

RADIKOでお聞きになれます。→リンク

「コンビニだけじゃない!コーヒーを巡るアツい戦い」と題して、紹介いただきます。

東洋経済オンラインの記事「セブンカフェの成功の裏にあった30年戦争」をお
読みになったニッポン放送のご担当者が企画されました。

有り難うございます。

 

世界経営者会議(1) 1日目:IBM・ロメッティCEO、日立・中西CEO

2014/11/11-12開催の日経フォーラム世界経営者会議に参加しています。当ブログでその様子と学んだことを順次ご紹介していきたいと思います。

初日のトップバッターは、IBMのロメッティCEOと日立の中西CEOでした。お二人の講演の後、竹内弘高ハーバード・ビジネス・スクール教授が加わり、3人で対談されました。

なお、今回の第16回目世界経営者会議では、初めて全てのセッションを英語にしています。(同時通訳レシーバーで日本語も聞けます)

初日に登壇した9名の経営者のうち、日本人は中西さん1名。中西さんも、司会を務められた竹内先生、関口論説委員も、英語でした。日本のグローバル化はこんなところでも進んでいるのですね。

■IBM バージニア・ロメッティ会長/社長/CEO

3つの技術シフトが起こっている。

1つ目はビッグデータ。産業界における天然資源になりつつある。産業界におけるデータは年間40%で増大している。これをアナリティックス技術で分析するかどうかで、勝者と敗者が明確に分かれる時代となった。

2つ目はクラウド。90%の新規ソフトウェア開発がクラウド上で行われている。クラウドの意義は、業務におけるスピードとアジリティ(俊敏性)の獲得、および新たなビジネスモデル構築が容易になったことだ。

3つ目はソーシャルとモバイル。日本は一人当たりのソーシャルデータが世界一だ。パーソナライゼーションが進んでいる。ここではセキュリティが課題だ。

このように3つの大きな技術シフトが同時に起こったことで、全産業界に影響を及ぼしている。IBMはこのために、ワトソンに10億ドル(1150億円)を投資している。

ここでロメッティCEO自身で、ワトソンの活用事例のデモを行いました。私が記憶する限り、IBMのCEOが自身でデモをするのを見たのは、これが初めてです。

ニューヨークのがんセンターで実際に使われている乳がんの診断の画面の様子でした。症例データを元に数百の治療方法の中から、1000万ページの文献データを元に、診断結果を、その診断理由とともにワトソンが提示します。

ロメッティCEOは、「これは『見る』『知る』『予測する』という意思決定プロセスの変革である」と締め括りました。

パッションを持ってプレゼンしつつ、全ての言葉をキッチリと数字でロジカルに裏付けているあたり、さすがだと思いました。

 

■日立製作所 中西宏明会長兼CEO

日立の1990年からの25年を見ると、1998年、2001年、直近では2008年に大きな赤字を出した。現在復活している。

ソーシャルイノベーション事業を進め、事業ポートフォリオを組み替えた。2009年と2013年の売上比率を比較すると、消費者向け事業は16%から7%に減少する一方、高技術素材は36%から44%に拡大、ITは27%から28%に、電力インフラ・産業用は21%で変わらずだ。

ソーシャルイノベーション事業を進めているのは、市場と顧客、社会トレンド、技術革新といった3つの変化があるから。そこでクラウドとビッグデータというITを活用して、ソーシャルイノベーション事業を推進している。

たとえばハワイ・マウイ島では、2030年までに再生エネルギー比率40%を達成するために、エネルギー管理システムを提供している。

水資源の有効利用も進めている。インドでは海水の淡水化事業を進めている。

顧客視点でのソリューションとサービスを提供する。

顧客の課題→製品・システム→保守→システム運用→課題解決

このように運用まで一括して請け負えるのが日立の強みだ。

 

■竹内弘高ハーバード・ビジネス・スクール教授と、ロメッティCEO・中西CEOの対談(敬称略)

竹内:お話しを聞いていて、二人とも事実に即した楽観主義 (fact based optimism)だと感じたが、どうか?中西さんにはアベノミクスに対するお考えも含めお聞きしたい。

ロメッティ:現代は、災害や疾病など、とても困難な課題が山積している。しかし一方でそれらを解決するための技術もある。だからfact based optimismが大切だと考えている。

中西:アベノミクスで一番重要なのはデフレ脱却。マインドセットは変わったと思う。日本企業の課題は課題はグローバル化だ。どこに目標を定めて、どう攻めるかだ。ここで日本の高い技術が活きる。だから私もfact based optimismだ。

竹中:いかに企業文化を変革したのか、ご自身の体験でお話しいただきたい。

ロメッティ:会社を改革するのは、私の任務だ。まず、長期的な視点を持つ。そして過去にこだわらない (don’t protect the past)。そして自分たちを製品で定義しないことだ。特に技術系企業は製品や競合で定義しがちだ。そして人材への投資も必要だ。IBMではThink academyという仕組みで最新技術を学んでいる。

中西:「日立復活」と言われたが、事業ポートフォリオ変革のために、リソースを未来へシフトする意思決定自体はそんなに難しくなかった。重要なのは、考え方の変革だ。社員をいかにアグレッシブにして過去にこだわらないようにし、顧客に目を向けさせるか。これまで国内市場中心だったが、グローバル化を推進する必要がある。多様化がキーワードだ。異文化、海外の同僚との交流などを推進していく。

 

日米を代表する企業のトップのお話をお聞きし、改めて企業変革において、社員の考え方の変革がカギになることを実感しました。

オフィス永井が企業様にご提供している「戦略的研修」について、3週間前に当ブログで書きました

改めてこの「戦略的研修」が現代の企業に対する一つの解決策であり、さらにそこで得られた学びを著書の形で広く世の中のビジネスパーソンにお伝えしていくことで社会に貢献できることを実感しました。

 

世界経営者会議では19名の経営者が登壇しています。また追って当ブログでご紹介していきたいと思います。

 

今日と明日は、日経フォーラム世界経営者会議

先日のブログでご紹介した通り、本日と明日(2014/11/11-12)、第16回 日経フォーラム世界経営者会議が開催されます。私も聴衆として参加します。

 

私は昨年も参加しました。昨年の世界経営者会議で学んだことは、この1年間、大いに役立ちました。

世界を代表する企業で、経営の第一線で陣頭指揮を執る経営者が発する生のメッセージは、やはり圧倒的です。

この世界経営者会議に登壇した19名の経営者のメッセージは、皆様も日本経済新聞の紙面で、本日の夕刊から今週末にかけてご覧になることと思います。

  

今年の世界経営者会議のテーマは、『競争を勝ち抜く「革新力」とは』。

今年も様々な学びが得られることを期待しています。

 

当ブログでもご紹介していきたいと思います。

 

2014-11-11 | カテゴリー : ビジネス | 投稿者 : takahisanagaicom

人々が交流するカフェは、新しいビジネスを生み出していく

2014/11/6の日本経済新聞夕刊の記事「個人経営カフェ 個性で勝負」で、個人経営のカフェが交流の場を生み出している様子が紹介されています。

—(以上、引用)—

 「コーヒー+α」を楽しんで――。個人経営のカフェが打ち出すイベントが人気を集めている。幼児向けの音楽教室を開いたり、ミシンを置いて裁縫ができるようにしたりと内容は様々だ。大手チェーンの出店競争やコンビニのコーヒー強化で、苦しい状況の店舗も少なくないが、地域住民が交流できる場所としてもアピールし、個性で活路を見いだしている。

—(以上、引用)—

 

この記事で紹介されているのは、

■「イダカフェ」(川崎市中原区)

子育て世代の教育熱心な母親が多い地域で、幼児が音楽に合わせて踊りや歌を楽しみ、音感や情操を養うリトミック教室を開催する等、地元の人が気軽に集える場作りをされています。

■「ミシンカフェ&ラウンジnico」(東京都世田谷区)

オーナーの中嶌さんからミシンの指導が受けられます。「カフェで開いている裁縫教室には主婦層が来てくれており、地元住民の交流の場にもなっている」

■その他

民家を改装した店舗で宿泊
果樹園が併設カフェ

記事では、「カフェには好みを同じくする人たちを結びつける魅力がある。人のつながりを築くことで個人カフェの文化を守っていきたい」というイダカフェ・三瓶さんの言葉が紹介されています。

 

歴史的に見ても、人々が交流する場であるカフェは、ビジネスが生まれる場となっています。

たとえば、17世紀に英国で生まれた保険市場ロイズも、そうです。

「コーヒーの歴史」(マーク・ペンダーグラスト著)では、こんな事例が紹介されています。

—(以下、p.40より引用)—

エドワード・ロイドの店は、もともと船員や商人に食事を出していた。ロイドは、客たちに保険を勧めるために店に出入りする保険業者向けに、定期的に「船舶一覧」を作成していた。これがロンドンの有名な保険会社ロイズ社の始まりである。

—(以上、引用)—-

いま、世の中はコーヒーブームですが、このような歴史の流れも踏まえて現代起こっていることを考えてみると、興味深いですね。

 

法人設立&法人口座開設ーオフィス永井の場合

大木さんが起業時の法人口座開設法人登記について書いていましたので、私の場合について書いてみます。

2013年6月に日本IBMを退職し、独立しました。

個人事業主にするか、会社を設立するかは、割とスムーズに決まりました。

私は当初より、法人企業様を対象に講演や研修をご提供することを考えていたのですが、前職で研修発注の際に発注先が株式会社でないと購買処理が色々と大変だったことを実感していました。そこでかなり早い時期から株式会社設立を決めており、オフィス永井株式会社を設立しました。

 

大木さんは起業の登記はご自分で行ったとのことですが、私の場合、会社設立の2013年6月〜7月は、前職の引き継ぎ、退職手続き、著書(『「戦略力」が身につく方法』PHPビジネス新書)執筆、講演ビジネス立ち上げなどで、ほとんど時間が取れませんでした。

そこでお世話になっていた会計事務所に一括で請け負っていただきました。

 

一方で法人口座がないと、法人として売上をあげてもお金が入りません。しかし大手都市銀行の場合、実績がない企業の口座開設はなかなかハードルが高いとも聞いていました。

そこでジャパンネット銀行に口座開設、スムーズに口座開設できました。法人口座維持手数料も不要、振込手数料も少ないので、助かっています。大木さんも書いておられるように、実際の取引でも気にする企業様はまったくありませんでした。

ただ一方で、今年になって「中小企業倒産防止共済」(通称「経営セーフティ共済」)への加入を検討した際、この共済はジャパンネット銀行が代理店になっていないことがわかりました。

このままでは申し込めませんし、今後の金融機関のリスク分散も考え、新たに大手都市銀行に口座を開設することにしました。

大手都市銀行では、ネットバンキングのシステムは、個人口座と法人口座では異なります。検討の結果、Mac使用可能な法人口座を用意しているりそな銀行で開設することにしました。

なお、今回りそな銀行の方とつきあってわかりましたが、経営危機を経験したことで、10年前から支店を17時まで営業したり、最近ではグループ内振込みを24時間365日対応したりと、大手都銀の中でも色々と挑戦を始めておられる様子がわかりました。

 

まだ会社を立ち上げて1年4ヶ月なので、これからも色々と学んでいきたいと思います。

 

2014-11-04 | カテゴリー : ビジネス | 投稿者 : takahisanagaicom

沖縄出張講演でお話しした、「沖縄へのご提言」

昨日のブログで、沖縄政経懇話会21様で講演したことを書きました。

講演の最後にお話しした「沖縄へのご提言」をまとめたいと思います。

エッセンスは、観光業の振興です。

 

世界全体で見ると、国際観光は成長産業です。

下記は2014年度観光白書から引用した、国際観光旅行客の推移です。

Photo  

では、世界の中でどこが増えているのか、というと、アジア地域です。

世界全体の国際観光客受入数の中でアジア太平洋地域が占めるシェアは、2003年から2013年の10年間で、17%から23%に増えています。

Photo_2  

このように特にアジア地域で国際観光客数が急増している中、日本の国際観光客数は、世界33位です。

Photo_3 

・1位のフランスは、8302万人。日本の10倍。
・12位の香港は、2377万人。面積ではるかに小さいのに、日本の3倍。
・23位の韓国は、1114万人。人口と国土面積が半分なのに、日本の1.5倍。

高度成長期までの日本は、国内旅行客需要が大きかったですし、アジアも豊かでなかったので大きな問題はありませんでした。しかし今後、人口減少で国内旅行客からの需要は減少します。

日本にとって、国際観光客の受入はまだまだ伸びしろがありますし、国内市場縮小の観点でも取り組まなければならない課題なのです。

 

このような状況で、沖縄の強みはどこにあるのか?

地理的に、世界の中でも国際観光客が急増している東アジアの中心に位置していることです。

那覇を中心とした1500Kmの同心円内に、ソウル、台北、マニラ、上海、香港、東京が入ります。(下記の図は首相官邸より)

006  

円安の追い風もあって、ここ数年間、日本への観光客が急増しています。日本の「おもてなし」文化はアジア各国からも注目されているのです。

日本人からすると当たり前になっていますが、日本の旅行はとても安心です。

海外を旅行したことがある方はおわかりだと思いますが、なかなか安心して旅行できる国はありません。ある欧州の国に行ったときは、店の勘定が合っているか必ず確認しました。人数をごまかされて過大請求されることが頻繁にあるからですが、日本ではまずこういうことはありません。夜中に安心して歩ける国も、多くはありません。

「日本人は優しい」「日本が好きになった」ということは、日本に観光に来た海外旅行客がよくおっしゃることです。

アジア各国からすぐ近くにある沖縄に、この日本文化があることは、大きな強みでもあります。

2年前に繁華街である国際通りに行った時は、ほとんど日本人観光客でした。今は中国人観光客で賑わっています。中国人観光客のビザを緩和したことによるものだそうです。

つまり、沖縄は「アジアと日本の架け橋」になれるポテンシャルがあるのです。

 

さらに2020年の東京オリンピックで、国を挙げて国際観光客誘致に取り組んでいます。

「それって、2020年までの一過性な需要ではないか?」と思われるかも知れません。

実際には、過去オリンピックを開催した国では、様々な施策を行うことで、オリンピック以降も観光需要が成長しています。(2014年度観光白書から引用)

Photo_4  

オリンピック開催は、外国人旅行客のインバウンド観光にとって追い風になるのです。

 

「天の時、地の利、人の和」という言葉があります。

天の時:アジアの国際観光客数が急増している。加えて日本政府も、東京オリンピック開催で2020年まで国を挙げて観光業振興に本腰を入れる

地の利:東アジアの中心地であり、アジア各国からすると、東京まで行かなくても、身近に日本のおもてなし文化を体験できる。

人の和:沖縄全体で、いかに沖縄の産業を振興させるかを考えている

このように考えると、沖縄の立ち位置を活かして、当面の目標を2020年オリンピック開催に置いて、アジアの観光需要取り込みを図るにはベストなタイミングではないかと思います。

沖縄の半分の面積しかない香港に、日本の3倍もの国際観光客が集まっていることを考えると、市場の潜在規模は極めて高いはずです。

 

そのためには、沖縄の強みを活かして、観光客が「是非沖縄に行ってみたい」と思う「お客様が買う理由」(バリュープロポジション)を創り出すことが必要です。

そして沖縄におられる様々な人たちが自分の強みを徹底的に考えて、様々なターゲット顧客に対して、「是非沖縄に行ってみたい」という理由を数多く創り出していくのです。

たとえば、琉球古武術のことを知れば、少ないながらも「是非学び、体験したい」という人がいるでしょう。

あるいは、リゾートとしての沖縄に魅力を感じる人もいるでしょう。

琉球文化も、素晴らしい観光資源です。

現在検討されているカジノ構想で、是非沖縄に来たいという人もいるでしょう。

そのようなターゲット顧客とニーズを絞込み、「お客様が是非買いたいという理由」を創り上げていく。

それらを数多く作り、情報発信していくことが、沖縄の振興に繋がっていくのではないかと思います。

 

沖縄のますますのご発展を願っております。

  

「2015ロードマップ」の呪縛から解き放たれたIBM…そもそも、なぜIBMは「1株利益 20ドル」を経営目標としたのか?

米国時間2014/10/20、IBMの2014/3Q決算報告が発表されました。売上4%減(対前年)という数字もさることながら、今回、特別に同席したロメッティCEOから、ある発表がありました。

2014/10/21の日本経済新聞夕刊の記事「IBMの呪縛葬ったロメッティCEO」から引用します。

—(以下、引用)—

午前8時からの決算電話説明会ではロメッティ最高経営責任者(CEO)が急きょ出席した。ロメッティCEO自ら説明しなくては説得力に欠く重要事項があったからだ。

「我々はもはや2015年に1株当たり営業利益の目標達成を予想することはない」。IBMが長年、中期目標に掲げてきた「15年までに1株営業益を少なくとも20ドルに増やす」という目標断念を表明した

—(以上、引用)—

当記事で「1株営業益」と表現しているのは、”EPS”、つまり「一株あたり利益」です。

2010年、IBMのパルミサーノ前CEOは「2015年に、EPS(一株利益)20ドルを達成する」と宣言しました。これをIBMは「2015ロードマップ」と呼んでいます。

しかし実際には、IBMはこの宣言の8年前、2002年からEPSを順調に伸ばしてきたのです。下記は、2013 IBM Annual Reportの7ページ目からの引用です。

Ibm2015roadmap  

図では明示していませんが、EPSの2002年実績は2.43ドル。2013年実績は16.28ドル。実に6.7倍です。しかも驚くほどきれいな直線でEPSが伸びてきました。

実はパルミサーノ前CEOは、2007年5月に「2010年にはEPSを10-11ドルにする」と株主に公約していました。その前年・2006年実績は6.06ドルでした。

そして2010年実績は11.52ドル。パルミサーノは見事に公約を達成しました。

そして公約を達成した2010年、パルミサーノは次の目標として「2015年にEPS 20ドルを達成する」と宣言したのです。

つまりIBMは実に10年間以上、全社一丸となってEPS向上を目指してきたのです。

 

では、なぜそもそもIBMは、EPS向上を目指したのか?

そのことを理解するには、先の日経の記事で「1株営業益」と表現している“EPS”について理解することが必要になります。

 

EPS(一株あたり利益)は、こんな式になります。

  EPS = 利益 ÷ 発行済株数

このEPS、単に「株主へ対する利益還元」と思われがちです。

しかし企業のKPIとして、EPSは極めて重要な経営指標なのです。

なぜかというと、上記のEPSの式は、このような式に展開できるからです。

Eps_3  

このように分解してみると、EPSを上げるには次の4つの指標を高めるようにすればよいことがわかります。

売上高利益率(収益性)を高める →高利益率ビジネスの追求
総資産回転率(効率性)を高める →売上向上を、より少ない資産で追求
財務レバレッジ(財務安定性)を高める
一株当り株主資本(企業安定性)を高める →自社株買いし償却する

実はIBMは、2002年から上記施策を忠実に実施してきました。

そしてそれは、先にご覧いただいたEPSの図の左側にも、“Key drivers”として明記されています。

Ibm2015roadmap2

  

この“Key drivers”はEPS向上のための施策です。

Revenue growth (売上拡大) …基盤ビジネスの拡大を図ると共に、高成長ビジネスへ移行し、買収も図る
Operating leverage (業務レバレッジ)…高収益ビジネスへシフトするとともに、世界全体で部門最適化することで生産性向上を図る
Share repurchase (自社株買い) …生み出したキャッシュにより自社株買いの実施する

経営目標に対して、IBMの施策が論理的に首尾一貫していることがよくわかります。

だからこそ、10年以上に渡ってIBMのEPSは向上し続けたのですね。

 

問題は、先の日経の記事にあるように、競争環境が激変しているにも関わらず、「2015年、EPS20ドル達成」という「2015ロードマップ」を公約に掲げているために、株主への利益還元が最優先され、本来は短期的利益を犠牲にしてでも事業変革に投資すべきキャッシュを、自社株買いなどに投資せざるを得なかったことです。

ある意味、手枷足枷があったのです。

 

当ブログで今月書いたエントリー『「戦略」と「計画」は正反対の概念』にあるように、「将来予想から今の行動を決定」する『戦略』と、「将来予想から将来の行動を決定」する『計画』の違いについて、改めて考えさせられる話です。

どういうことかと言うと、「2015ロードマップ」は、『計画』であり、「公約」であり、「ロードマップ」ではありますが、『戦略』ではないからです。

『戦略』とは本来、臨機応変な自由度があるもの。しかしこのIBMの『戦略』が、「2015ロードマップ」という『計画』で制約を受けてしまった、とも言えるのかもしれません。

とは言え、これはあくまで結果論。

2010年当時のIBMの取締役会と経営陣は、「2015ロードマップは必要」との合理的な経営判断があったはずです。そして会社として経営判断がなされた以上、その経営判断の目標に向かって全社一丸となるのは当然のことです。

 

一方でIBMの強みは、「過ちて改めざる、是を過ちという」ことの重要さを熟知し、「変わることを、恐れない」こと。この強みがあるからこそ、IBMは激変するIT業界で100年以上も存続してきたのです。

今回のロメッティCEOが2014年3Q決算報告で、No longer expect to deliver “at least $20 Operating EPS” in 2015 (「もはや2015年にEPS20ドルの目標達成を予想することはない」)と宣言したことで、IBMを10年以上律してきた「2015ロードマップ」の呪縛から、IBMは解放されました。

ロメッティCEOはあわせて、“Will provide view of 2015 in January” (「2015年の展望は、1月に用意する」)と述べています。

IBMで数多くを学ばせていただいた元IBM社員として、今回の決定がIBMらしさを取り戻して経営変革を成し遂げる契機になることを期待したいと思います。

 

2014-10-22 | カテゴリー : ビジネス | 投稿者 : takahisanagaicom

2014年12月6日、読書会で講演します

2014年12月6日(土) 17:00、読書会bizimaで講演を行うことになりました。

わくわく著者イベント『戦略は「1杯のコーヒー」から学べ!』永井孝尚さんのスペシャル読書会!

場所は東京・目黒になります。

既に申込みを受付開始していますので、ご興味がある方はぜひどうぞ。

 

なお、現時点で下記の講演会を予定しています。

10/17(金) BBJ (IBM OB会) (@箱崎。IBM社員 & IBM OB限定)

10/22(水) ジェイカレッジ出版記念講演会 (@虎ノ門。松山真之助さん主催)

11/13(木) ニッポンクラウドワーキンググループ (@大久保)

11/20(木) ITメディアエグゼクティブ勉強会 (@赤坂。企業管理職対象)

 

誠ブログ・オルタナブログ合同オフ会で講演致しました

2014/10/10に行われた誠ブログ・オルタナブログ合同オフ会で、「お客様が買う理由を、いかに作るか?」と題して、講演致しました。

20141010  

『戦略は「1杯のコーヒー」から学べ!』でご紹介したフレームワークをベースにしたもので、普段は90分から2時間でお話しする内容なのですが、かなりエッセンスを凝縮して45分版にしました。

既にブログでもご紹介をいただいています。

■大木豊成さん「市場に「マス」は存在しない。だから、あなたのために作るのです」

■吉田憲人さん「1杯のコーヒーが教えるビジネスの本質(定年退職者必読!)」

■永井千佳さん「「戦略は『1杯のコーヒー』から学べ! 」講演会 勝ち続ける理由とは?」

■久野麻美子さん「ブロガーオフ会報告:「お客様が買う理由を、いかに作るか?」」(2014/10/12 20:44追記)

 

オルタナブロガーの方はほとんどが顔なじみですが、誠ブログの方は初対面の方も多くおられました。

金曜日の夜の貴重な時間にお集まりいただいた皆様、ありがとうございました。

 

東洋経済オンライン連載 第5回目『最も革新的なのは、45年前のコーヒー?』

東洋経済オンライン連載、第5回目が公開されました。

最も革新的なのは、45年前のコーヒー?
スタバ、ブルーボトルだけじゃない革新の物語

Photo  

実は日本では、コーヒー業界のイノベーションがたくさんあります。

その中の大きな一つが、UCC缶コーヒー。

そのアプローチは、実はあのイーロン・マスクの取り組みと相通じるものがあるのです。

今回は、そのことについてご紹介しました。

 

本連載過去4回分の記事も、大きな反響をいただいています。

■連載第1回目『日本人の”コーヒー偏差値”を変えた、あの一杯』
…「いいね」829件、Tweet 188件はてぶ 50件

■連載第2回目『「スタバの次」の時代到来は必然である?』
…「いいね」1866件、Tweet 216件はてぶ 47件

■連載第3回目『”ネスカフェ復権”の裏に「古典的戦略」?』
…「いいね」476件、Tweet 74件はてぶ 6件

■連載第4回目『よみがえったスタバに学ぶ、「らしさ」の経営』
…「いいね」2829件、Tweet 280件はてぶ 28件

 

当初連載5回の予定でしたが、おかげさまでもう少し継続させていただくことになりました。

引き続き、よろしくお願いいたします。

 

経営革新協会で講演をしました

昨日2014/10/9、経営革新協会様「お客様が買う理由を、いかに作るか?」というテーマで90分間講演をしました。

20141009  

中小企業の経営者が約40名参加されました。講演後のアンケートでもコメントを多数いただきました。

・ずっと考え違いをしていたんだと痛感しました。今までお客様を神様のように扱い、お客様の言いなりになって事業を進めてきましたが、それでは心はつかめないのだと学びました。今後はお客様を絶対として考えるのではなく、お客様を中心として考えてすすめていきます。

・バリュープロポジションの具体的な方法が整理できました。非常に参考になりました。失敗を心配する人たちが多く、検証フェーズに行けないことが多い。事例も多く、プロセス、思考、着眼点などが大変わかりやすく、この打開策にたいへん参考になりました。

・過去の方法論と現在の方法論をわかりやすく対比してくださっていたので、とてもわかりやすかったです。また具体的なやり方も提示されていたので、すぐにとりかかることができそうです。

・体系立てて理解できたので、活用可能と思いました。

・若いスタッフとのギャップ感を理解できたような気がする。ニーズの断捨離を意識して新たに事業モデルとして再検討してみたい。

・自社の今後のあり方を考えるヒントがたくさんあり、今後に活かせる内容でした。自社のあり方を見つめ直して新規事業を生み出すヒントになると思います。

・本日のメモおよび本の内容を踏まえ、新商品開発に役立てたいと思いました。

・今の経営についての考え方を、講演を聞いて変えることができた。お客様との対話の仕方を変えることも必要と感じました。

 

経営者の方が多かったので、今日からの自社の経営に当てはめて消化された方が多くおられました。

参加された皆様には感謝申し上げます。

 

東洋経済オンライン連載 第4回目『よみがえったスタバに学ぶ、「らしさ」の経営』

東洋経済オンライン連載、第4回目が公開されました。

よみがえったスタバに学ぶ、「らしさ」の経営
世界中の企業が陥る、「経営合理化」の甘い罠 

20141004  

ありがたいことに、あの超人気サイト・東洋経済オンラインで、総合アクセス2位まで来ています。

 

2000年頃、スタバは「お洒落なカフェ」としてブームになっています。

2014年の今でも、平日の昼間も行列ができています。

しかし2008年頃のスタバを思い出してみると、「ちょっと飽きたなぁ」と感じていた人が多かったのではないでしょうか?

実はスタバが挑戦してきた変遷を辿ってみると、企業変革のあり方のヒントが得られるのです。

今回は『戦略は「1杯のコーヒー」から学べ!』でご紹介したスタバの変革の話を、さらに掘り下げて考えてみました。コーヒー業界以外の方々にとっても参考になる部分が多いと思います。ご興味がある方は、是非どうぞ。

 

おかげさまで、本連載過去3回分の記事も、引き続き大きな反響をいただいています。

■連載第1回目『日本人の”コーヒー偏差値”を変えた、あの一杯』
…「いいね」830件、Tweet 188件はてぶ 50件

■連載第2回目『「スタバの次」の時代到来は必然である?』
…「いいね」1859件、Tweet 212件はてぶ 47件

■連載第3回目『”ネスカフェ復権”の裏に「古典的戦略」?』
…「いいね」471件、Tweet 74件はてぶ 6件

 

次回は来週土曜日掲載です。よろしくお願いいたします。

 

東洋経済オンライン連載 第3回目『”ネスカフェ復権”の裏に「古典的戦略」?』

東洋経済オンライン連載、第3回目が公開されました。

“ネスカフェ復権”の裏に「古典的戦略」?
コーヒー×定石が生んだ、新しい儲けの仕組み
  

ネスレ日本は、国内インスタントコーヒー市場で圧倒的なシェアを持っています。しかし1960年代に成長産業だったインスタントコーヒー市場は、ここしばらく穏やかに縮小し続けています。

圧倒的シェアを持つ企業にとって、その市場の縮小は運命を左右する極めて重大な問題です。

この市場でネスレが取った作戦が、ネスカフェ・バリスタであり、ネスカフェ・アンバサダーです。

日本マーケティング協会から「日本マーケティング大賞」を受賞するほどの斬新な戦略ですが、実は古典的な戦略の定石に従ったものです。

「その戦略なら、言われなくても、私も知っている」という人も多いでしょう。

しかし、「その理論なら知っている」ということと、「その理論を、自分の目の前にあるビジネスに当てはめて実現する」ということには、大きな差を生みだすのです。

 

これまでの連載同様、今回も『戦略は「1杯のコーヒー」から学べ!』でご紹介したネスカフェ・アンバサダーの話を、さらに掘り下げて考えてみました。

その考え方は、コーヒー業界以外の方々にとっても参考になる部分が多いのです。

ご興味がある方は、是非どうぞ。

 

大変有り難いことに、本連載はとても大きな反響をいただいています。

■連載第1回目『日本人の”コーヒー偏差値”を変えた、あの一杯』
…「いいね」827件、Tweet 188件はてブ 50件

■連載第2回目『「スタバの次」の時代到来は必然である?』
…「いいね」1848件、Tweet 211件はてぶ 47件

 

連載第2回目の記事は、良記事がたくさんある東洋経済オンラインの中で、掲載当日にアクセス1位をいただきました。

 

これからも連載を続けてまいります。よろしくお願いいたします。

第16回 世界経営者会議 募集開始

日本経済新聞が主催する「第16回 世界経営者会議」の募集が始まりました。今年は11月11日から12日にかけて、東京・帝国ホテルで開催されます。

「世界経営者会議」という名前ですが、世界のトップ経営者による講演と質疑応答で構成されています。私は昨年、初めて参加しました。

参加費64,800円とちょっとお高いですが、私にとってそれだけの価値がある内容でした。

メディアだけではなかなか伝わらない世界の経営の現場で起こっている最新状況を知ることができ、実に勉強になりました。ここで学んだことは、その後の著書や講演・研修などの活動でも役立ちました。

昨年の様子は、当ブログでもご紹介しました。

2013/10/22 …その1: 1日目:「グローバル化」「透明性」「相互信頼」「日本経営の復活」「イノベーション」

2013/10/23 …その2: 1日目: HUBLOT会長の話に、とても共感しました

2013/10/24 …その3: 2日目: GE・イメルト会長、明確なビジョンと戦略

2013/10/27 …その4: 2日目: 富士フイルム・古森重隆会長。写真フィルム市場崩壊の危機に、いかに事業再構築を果たしたか?

2013/10/28 …その5: 2日目: ロンバー・オディエ、アサヒグループ、アルグレア・インベストメント、旭化成

 

今回のテーマは『競争を勝ち抜く「革新力」とは』

定員500名で抽選になります。詳細はこちら

 

東洋経済オンライン連載「コーヒーで読み解くビジネス戦略」開始。第1回目は….

本日から、東洋経済オンラインで、連載「コーヒーで読み解く、ビジネス戦略」が始まりました。

第1回は、

日本人の”コーヒー偏差値”を変えた、あの一杯
セブンカフェ出現で、1万円コーヒーが売れる?

 

連載用のロゴも、東洋経済様にとてもいい感じで作成いただきました。

 

20140913  

昨年、全国1万6千店舗で展開をセブンカフェの登場は、実は日本のコーヒー市場を進化させる上で、極めて重要な意味がありました。

また、コーヒー業界に関わりがなかった多くの企業も、コーヒーに注目しています。

今回は、そのことについて考察しています。

 

本連載では、『戦略は「1杯のコーヒー」から学べ!』をベースに、本書で書ききれなかったコーヒーのビジネス戦略について、さらに深く掘り下げてご紹介します。

本書と併せてお読みいただくと、面白いと思います。

 

鶏肉問題が発生した2014年8月期、ケンタッキーフライドチキンの売上対前年比は、なぜ+0.8%だったのか?

今年7月下旬、中国の食品工場で使用期限切れ鶏肉の問題が発生しました。

昨日(9月9日)発表された日本マクドナルドの2014年8月期の全店売上は、対前年比-25.7%と大幅な落ち込みになりました。(ソース:日本マクドナルド月次セールスレポート)

9月10日の日本経済新聞記事「マクドナルド25%減収」によると、「鶏肉問題の発覚による顧客離れで、売上高が15~20%落ち込む影響があったと同社はみている」としています。調達先が問題を起こした影響は極めて大きかったのですね。

 

一方で同じ鶏肉を扱う日本KFCの2014年8月期の全店店舗当り平均売上高はむしろ対前年比+0.8%と成長しています。(ソース:日本KFCホールディングス 2014年度月次情報)

 

実は日本KFCは、米本社からコストが安い海外鶏肉を使うように繰り返し圧力をかけられていました。

しかし1970年の日本KFC設立メンバーで、四半世紀もの間代表権を持っていた大河原毅氏は、品質保持のために日本産の鶏肉を使い続けるべく、本社と戦い続けました。

2014年9月8日の日本経済新聞記事「品質守った日本KFCの戦い 創業来の信念、災い防ぐ」で、その様子が紹介されています。

—(以下、引用)—

 大河原氏らは鶏肉は品質の劣化が速く、冷凍の輸入品では味が落ちると抵抗した。…コスト面で約4割も差があった。….危機感を抱いた大河原氏が決意したのは米国留学だ。

 副社長時代の80年代前半にハーバード大学で経営学修士(MBA)を取得。….

 当時、米KFCの経営陣では新しい親会社からやってきたMBA取得者が幅を利かせていたが、大河原氏のMBA取得は保身が目的ではない。徹底抗戦へ向けて交渉術を身につけ「同じ土俵で勝負する」ためだった。大河原氏はマーケティング費用をあえて抑え、調達費を賄うことを主張。味が落ちる調理方法の変更に対しても日本人の味覚の繊細さを丁寧に説明した。

….感情論に走ることなく理詰めで鎖国路線を勝ち取った。「四半期決算なら米側の主張が勝つが、本当の競争には勝てない」。以後、米本社からの横やりは減った。

—(以上、引用)—

「交渉相手に勝つためには、ロジックに強いこと」

言われてみれば当たり前のことです。

しかし、このグローバル時代のビジネスリーダーに求められる資質を実際に身につけるために、具体的に行動することが大きな差を生み出します。

 

—(以下、引用)—

日本KFCは国内の養鶏業者のためにサンダース氏が理想としたハーブ飼料をメーカーと共同開発。健康な鶏肉の生産を支援した。「これがなかったら日本の養鶏業はなくなっていた」(日清丸紅飼料)。いつしか大味が持ち味のライバルは撤退。大手は日本KFCのみになった。

…同社は今期、4期ぶりの客数増が見込まれる。大河原氏は2002年に経営から身を引いたが、生前のサンダース氏にこう言葉を掛けられたのを思い出す。「日本だけが私の味を守ってくれている」

—(以上、引用)—

素晴らしいですね。

ただ一方で、世の中ではグローバル調達が賛美されていた時期もあったことも事実。そんな中で、コストがかかる国内調達にこだわっていることは必ずしも高く評価されていなかったかもしれません。

 

自分たちらしさとは何か?何にこだわり続けるのか?

それを守り続けるために、次々と出てくる課題をどのように具体的に解決していくのか?

必要なことは、この繰り返しなのではないかと思います。

 

もう一つ私が感嘆したのは、消費者がすべての鶏肉を敬遠することなく、国内調達している日本KFCには来店している点。それが2014年8月期の売上に数字で表れています。

現代の消費者は、実に賢明です。

 

2014-09-10 | カテゴリー : ビジネス | 投稿者 : takahisanagaicom

「2000億円を稼ぐ1事業よりも、500億円稼ぐ10事業」「1事業で1兆円よりも、100事業で100億円」 — パナソニックとシャープの事業変革より

現代は、これまでのやり方が通用しない、企業にとって厳しい時代になっています。

その大きな要因の一つが、顧客のニーズが洗練され、市場での競争が激しくなっていること。では、どのように取り組めばよいのでしょうか?

本日2014/8/28の日本経済新聞の記事「会社研究 パナソニック(上) 復活へ創業来の事業転換」に、そのヒントがありました。

—(以下、引用)—

 「2000億円の営業利益を稼ぐ4番打者は不要。500億円稼ぐ事業を10そろえるのが目標」と、佐藤基嗣取締役は話す。前期は航空機娯楽システムなど20事業部で売上高営業利益率が5%を超えた。一つ一つの利益規模は大きくないが、1980年代のVTRや90年代の大型ブラウン管テレビが営業利益の大半を稼いだのとは収益構造が変わってきた。

—(以上、引用)—

創業以来の大事業変革に取り組むパナソニックはこのように、「長距離砲のパワーヒッターを育てるのではなく、アベレージ・ヒッターを数多く揃えたい」と考えています。

興味深いことに、日経ビジネス 2014/7/28号でシャープの高橋興三社長も、

1事業で1兆円よりも、100事業で100億円ずつ売る。
新陳代謝が続けばシャープは潰れない。

とおっしゃっています。「液晶テレビ」という一大事業で、栄光と苦労を経験されたシャープならではの言葉です。

 

「なるほど」と思いました。

顧客ニーズが洗練され競争が激化しています。しかし顧客ニーズの洗練に伴い、顧客ニーズは細分化されています。それに伴って市場も小さく細分化されているのです。

こうなると、細分化された小さい市場の顧客ニーズを先取りし、ニーズに最適化した商品をいち早く投入し、市場でダントツのトップシェアを確保することで、競争上、大きく有利に立てます。

小さい市場でダントツトップシェアを確保すれば、他社も容易には参入できなくなるからです。

 

ここで大切なのが、バリュープロポジション。

ターゲットとなる顧客と、その顧客の課題を見極めて、その課題にいかに自社ならではの価値を提供するのかを考えることです。

しかしそうやって作ったバリュープロポジションは、必ずしも正しいとは限りません。

ではどうするか?

 

パナソニックの取り組みを紹介している日本経済新聞の同記事に、別のヒントがありました。

—(以下、引用)—

 「電気自動車(EV)の予約状況は」「電池開発のロードマップは」――。大阪府守口市と兵庫県洲本市にあるパナソニック電池部門と米シリコンバレーは毎週、テレビ電話で熱心な質疑応答を交わす。相手は米EVメーカー、テスラ・モーターズの技術者だ。

「顧客の顔が見えるのがプラズマテレビと違う」と伊藤好生専務は話す。テスラとは米国にEV向けの大規模電池工場を建設することで合意したが、一気に作らず段階的に投資する。工場も建物と土地をテスラが、電池の製造設備をパナソニックが分担し、投資リスクを軽減する。顧客との連携強化で、数千億円の投資を繰り返したプラズマテレビ事業のようなやり方を改めた。

—(以上、引用)—

つまり「製品を開発してから、販売に注力する」のではなく、「顧客の状況を頻繁に確認し、仮説検証を行いながら、徐々に製品を仕上げていく」というアプローチを行っているのです。

バリュープロポジションも、このように製品を開発していく過程で、頻繁に顧客に対して検証し、修正していく必要があるのです。

 

売上数兆円の超大企業であるパナソニックやシャープの事業変革は、日経ビジネス・東洋経済・週刊ダイヤモンドなどでも頻繁に特集が組まれています。

超大企業ですが、実際には細分化した市場に取り組んでいます。中小企業にとっても学べるところは大きいと思います。私自身も様々なことを学んでいます。

パナソニックやシャープの皆様のご努力が実ることを祈っております。

 

IBM 6代目CEO ジョン・エイカーズ、逝去

IBMのサイトで、IBM 6代目CEOであるジョン・エイカーズの逝去を伝えています。

An appreciation  John F. Akers   December 28, 1934 – August 22, 2014

私が日本IBMに入社した1984年、IBMのCEOはジョン・オペルで、プレジデントがジョン・エイカーズ。

翌1985年、エイカーズはCEOに就任しました。

当時20代前半で駆け出しの若造だった私から見ると、エイカーズは雲の上の、さらに上にいるお方。さらに当時のIBMは超階層組織。お目にかかる機会はありませんでした。

しかし写真やビデオ、また実際に会った方のお話しを伺うと、まさに「紳士の中の紳士」であり、IBMの文化を体現する方でもありました。

当時のIT業界では、IBMは世界最強。様々な独占禁止法の訴訟を受けていましたが、それらも1983年までにほぼ解決。

独禁法の鎖から解き放たれたIBMが何を仕掛けてくるか、IT業界やマスメディアは注目していました。

その時点で満を持してのCEO就任でした。

 

皮肉なことに、IT業界におけるIBMの相対的な地位はその時がピーク。

その後、PCなどによるダウンサイジングの波が始まり、大型コンピューター中心だったIBMは、企業変革に苦しみ抜くことになります。

1991年に創業以来初の赤字計上。1993年までに累積赤字は150億ドル(1.5兆円)。

そんな中、エイカーズは1993年までIBMを率いました。

そして後任の7代目CEOとして、IBM生え抜きでなく初の外部から招いたトップとなるルー・ガースナーが就任。IBMをサービス・カンパニーへと大変革をしていきます。

 

IBMが素晴らしいのは、今回のアナウンスにもあるように、そのような過去100年の歴史を積極的に肯定し、苦しい時代にも尽力してきた人たちに対して深くリスペクトをしているところです。

エイカーズは、2011年にIBM創立100周年を記念して作成されたビデオ“IBM Centennial Film: 100 X 100”にも、1934年生まれのIBM社員として登場しています。

 

ご冥福をお祈りしております。

 

『モチベーション3.0』(ダニエル・ピンク著) ご褒美をあげても、アイデアがなかなか生まれない理由

『モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか』(ダニエル・ピンク著)を読了しました。

本書は、現代の企業では当たり前になってしまった外発的動機付けと、知識社会で求められる内発的動機付けについて考察した本です。

本書では、モチベーションを次の3つのバージョンに分け、主に2.0と3.0について考察しています。

モチベーション1.0…生存(サバイバル)が目的
モチベーション2.0…アメとムチ=信賞必罰に基づく与えられた動機づけ。ルーチンワーク中心の時代には有効
モチベーション3.0…自分の内面から湧き出る「やる気!」に基づく。

モチベーション2.0(アメとムチ)は、200年前の産業革命の時代に生まれ、さらに1900年代にテイラーによって科学的管理法が編み出され、現代社会に定着しています。

要は「これを達成したら、ご褒美をあげる」という方法です。単純労働のケースではこれは極めて有効でした。

 

一方で、自分が心から夢中になっていることに取り組んでいる場合、「寝ても覚めてもそのことばかり考えてしまう」「やめろと言われても、絶対やる!」という経験がありませんでしょうか?これがモチベーション3.0です。

創造的な思考が求められる知的作業では、心から「やりたい!」と思うモチベーション3.0の状態になると、大きな生産性を生みだします。

本書では、「創造的なアイデアを生みだしたら、お金をあげます」と言われると、逆に生産性が落ちてしまう例をいくつか挙げた上で、次のように紹介しています。

—(以下、p.77より引用)—

外的な報酬は、アルゴリズム的な仕事ーつまり論理的帰結を導くために、既存の常套手段に頼る仕事ーには効果があると気づいた。

だが、右脳的な仕事−柔軟な問題解決や創意工夫、概念的な理解が要求される仕事−に対しては、条件付き報酬はむしろマイナスの影響を与えるおそれがあることも明らかにした。

—(以上、引用)—-

つまりモチベーション2.0(アメとムチ)は、前者(アルゴリズム的な仕事)の場合は有効であり、後者(右脳的な仕事)に適用すると逆に生産性が落ちてしまうのです。

本書ではアメとムチの7つの欠陥についても紹介しています。

—(以下、p.93より引用)—

1.内発的動機づけを失わせる
2.かえって成果が上がらなくなる
3.創造性を蝕む
4.好ましい言動への意欲を失わせる
5.ごまかしや近道、倫理に反する行為を助長する
6.依存性がある
7.短絡思考を助長する

—(以上、引用)—

一方で日本を含む先進国では、多くのビジネスパーソンの仕事では、創造性や複雑な問題解決能力が求められます。

企業はどのように考えればよいのでしょうか?

本書では、社員が自律的にアイデアを生みだして仕事ができるような「モチベーション3.0」の環境を作って企業を成長させた、オーストラリアにあるソフトウェア会社の経営者の言葉を紹介しています。

—(以下、p.136より引用)—

「十分な給与を払わなければ、社員は会社から離れていきます。しかし、それにもまして、金銭は人に意欲を与える要因ではないのです。お金よりも重要なのは、このようにクリエイティブな人をひきつける仕組みなのです」

—(以上、引用)—

 

「成果主義って言うけど、なんとなく違うような気がする」と私たち日本人が違和感を感じていたことが、各種研究を引用しながら明確かつ論理的に体系立てて説明されている点が、本書の価値であると思います。

今後、企業の人事制度やビジネス形態は、モチベーション3.0の世界にどんどんシフトしていきます。

長期的に見ると、そうしない限り企業は優秀な人材を確保して業績を上げられないからです。

さらに新規事業開発や経営変革、企業戦略等を考える上で、会社として社員の仕事をどのようにサポートするかは、避けて通れない課題です。

その観点でも、本書は今後の企業のあり方を考える上で、参考になると思います。

 

ちなみに翻訳は大前研一さんで、とても読みやすくなっています。

 

宇宙ビジネス・電気自動車・太陽エネルギーに挑戦するイーロン・マスクの実像。「モノゴトに魔法はない。志を持って実行するのみ」

「地球と人類を救う経営者」として最近話題のイーロン・マスクを描いた本「イーロン・マスクの挑戦 人類を火星に移住させる」(別冊宝島、2014年8月)を読みました。

1971年生まれのイーロン・マスク。その経歴は凄まじいものです。

1995年に起業したZip2社をその後売却し、2200万ドル(22億円)を手にします。

1999年にX.com社の共同設立者となり、これが2001年にPayPal社となり1億7000万ドル(170億円)を手にします。

この資金を元手に2002年に3つ目の会社として宇宙ロケット開発のスペースX社を起業。「人類を火星に移住させる」と宣言。

2004年に電気自動車会社「テスラモーター社」の会長、さらに太陽光発電の「ソーラーシティ社」の会長になります。

大学時代、イーロンは「人類の将来にとってもっとも大きな影響を与える問題は何か」と考え、「インターネット、持続可能エネルギー、宇宙開発の3つ」と考え、これらの事業を立ち上げています。

絵空事で終わらせていないのが凄い点です。

2010年12月8日、スペースX社が独自開発した宇宙ロケット「ファルコン9」は宇宙船ドラゴンを所定の軌道に投入、地球を2周して大気圏に再突入し、太平洋に着水しました。

スペースX社創業からわずか8年、民間の宇宙船としては史上初です。

打ち上げコストは1/10まで下げました。今後ロケット再利用を図り1/100まで下げることを狙っています。現在、国際宇宙ステーションに物資輸送を行いつつ、火星移住のための準備も進めています。

テスラモーター社では、ポルシェより速くフェラーリより安い電気自動車「ロードスター」を開発し販売。レオナルド・ディカブリオやブラッド・ビットといったセレブリティたちがこぞって購入しています。

本書では、あるロックスターはパーティでイーロンに、「ロードスターに文句がある。以前から持っているポルシェに全く乗らなくなった」と言った様子が描かれています。

さらに第2弾としてセダン型の「モデルS」も開発・販売しています。

さらにテスラ社の車に無料で充電するための新しいインフラとして、ソーラーシティ社により、太陽光発電による充電ステーション「スーパーチャージャー・ステーション」を世界に設立しています。

上記の一つだけの取り組みでも難題ですが、イーロン・マスクは、全て手がけて結果を出しています。

本書では、イーロンの取り組みや考え方も紹介しています。

感銘を受けたのは、何度も何度も失敗を繰り返し、成功への糧としている点。

3回失敗したロケットしかり、納期遅れとコスト増で苦しみ顧客の前払い金を私財で保証までした電気自動車開発しかり。そこにあるのは、「金儲けではなく“人類と地球のため”に働く・考える・行動する」という志です。

一方で、イーロン・マスクの考え方はきわめて合理的で真っ当。しかし実行するのは大変なことです。

—(以下、p.73より抜粋)—

「会社の名前で製品は売れているのだ」と思い込んでいる人がいるが、それは間違っている。まずは、素晴らしい製品があって会社のブランドを築く。ブランドは信頼であり、消費者は信頼に基づいて製品を購入してくれる。製品が先にあるのだ」

—(以上、抜粋)—

強い企業ブランドを持っていると、ついついそのブランド力に頼りがちです。しかし、本来はブランド力に頼らず、素晴らしい製品やサービスを作ることに全力を注ぐべきです。その結果が、さらなるブランドの信頼に繋がるのです。

当たり前のことですが、我々がつい陥りやすい罠について、的確に述べています。

—(以下、p.74より抜粋)—

「自ら積極的に批判に耳を傾けることが大切」である。では、どうやって自ら批判を求めていけばいいのだろうか?

その質問にイーロンは「友人に作った製品を見せるんだよ。そして、『どこが良いかは言わないでいいから、良くないところを教えてくれ』って頼むんだよ」

—(以上、抜粋)—

「批判に謙虚になれ」

当たり前のことですが、言うは易く行うは難し、です。

しかし批判に謙虚に耳を傾ければ、必ずよくなります。日々実践したいことです。

—(以下、p.75より抜粋)—

スペースX社は劇的にコストを引き下げてロケットを作り成功を収めている。しかし、これについてイーロンは「革命的なブレークスルーによってではなく、コツコツと地道な努力を積み重ねることで成し遂げたんだ」とコストダウンの意外な神髄を語ってくれた。

…「われわれの(コストダウンの)考え方そのものが、革命的なブレークスルーなんだ」

—(以上、抜粋)—

「愚直に積み重ねる」ことは日本人のお家芸だと思いがちですが、イーロン・マスクもまさに愚直に積み重ねています。

革新的イノベーションの時代から、持続的イノベーションの時代に変わりつつあることを、イーロン自身、認識しているのかも知れません。

愚直に積み重ねて実行するのに加えて、その先にシンプルな目標を定めて戦略的に考えている点が、イーロンの凄さだと思います。それは次のエピソードに現れています。

—(以下、p.82より抜粋)—

「我々のEV(電気自動車)はエコカーではなく、プレミアムカーだ」

そう宣言したイーロンのEV戦略は独創的だった。

所有することを切望し、持っている人に憧れ、持てば自慢したくなるEVカーを立ち上げ、まずは力ずくにでも世間の注目を集めるというものだった。

…値段も10万ドルを超える高級車だ。それならマスコミは取り上げ、世間も興味をそそられるに違いない。その次には、5万ドル程度のミドルクラスの4ドアセダンを送り出し、そして、最後は、大衆の手に届く2万ドルクラスのエントリー車を大量に生産する。これがイーロンが考えた型破りな戦略だった。

—(以上、抜粋)—

これは最初の電気自動車「ロードスター」を開発していた時の発言です。

最初にプレミアム車で成功し話題を取る。そのためにレーシングカーの名門・英国ロータス社と共同開発契約を締結。

次に経験に基づき蓄積した技術を活かして、ミドルクラスに広げる。

さらに量産効果でエントリー車を量産する。

電気自動車メーカーで、このようにシンプルでわかりやすい戦略的な製品ロードマップを持って明言しているのは、テスラ社だけなのかもしれません。

このようにイーロンの考え方はまさに王道。「モノゴトに魔法はない。志を持って実行するのみ」ということですね。
本書では、戦略的に考え、ものすごい愚直な実行力と交渉力で実現してしまうイーロン・マスクの姿をわかりやすく描いています。

今後日本でも、イーロン・マスクは大きな話題になっていくと思います。いま、要注目の一人だと思います。

ちなみに、テスラは既に日本語サイトがあり、日本でも販売中です。モデルSが823万円。大阪パナソニックセンターで試乗できます。

 

 

大切なのは「大義」。戦国武将も、現代ビジネスパーソンも。

私は戦国武将の歴史小説が好きでよく読みます。

ということで、日本経済新聞夕刊に連載中の「天下家康伝」(火坂雅志著)も読んでいます。

7月25日(金)は、信長亡き後に争っていた秀吉と家康が和解する場面。

上洛した家康に対して、秀吉はこのように語ります。

—(以下、引用)—

「若いころ、食うや食わずの暮らしが長かったせいか、わしは多くの民が腹一杯、飯を食うことのできる世をめざしている。そのために、不得意ないくさも知恵のかぎりを絞って戦い、ここまでどうやら生き抜いてきた。わしがいま、唯一、心の底から恐れているのは、徳川どの。そなたじゃ」

—(以上、引用)—

秀吉は、大義を考えていない明智光秀や柴田勝家は恐れていませんでした。しかし自分と同じく常に大義を考えている家康は、心から恐れていたのです。

 

現代のビジネスパーソンや会社経営者の場合、大義は「世の中にどのような価値を提供するか?」になるでしょう。

会社の売上・利益、自分の給与・待遇だけでなく、「世の中に提供する価値」を常に考えているビジネスパーソンや会社経営者も、強いのです。

 

私は講演や研修で、「事業や製品で、どの顧客のどのような課題に、どのような価値を提供するか」を個人で考えたり、チームで議論するワークショップを行っています。

顧客中心に考えることでビジネスを成功させるためなのですが、本質的には、これも企業の大義を考え抜くことに他なりません。

激動する現代だからこそ、「大義」をしっかり考えたいものです。

 

研修や講演を行う際に必要なもの

前職で人材開発マネージャーを担当していた頃、講師の先生方にお願いして一日セミナーを実施していただくことがよくありました。

ある先生がおっしゃっていました。

先生「一つお願いがあるんだけど。ペットボトルの水1リットル、2本分用意しておいてもらえるかな?」
永井「承知致しました。2リットルも飲むんですか?すごいですね」
先生「丸一日話していると、不思議と飲んでしまうんだよね」
永井「お手洗いが近くなるってことはないんですか?」
先生「それが全然そんなことはないんだよね」

当時は不思議に思いました。

 

その後、私は昨年の7月に独立し、講演や研修を行うようになりましたが、まさにこの先生がおっしゃる通りだと実感しています。

昨日の土曜もあるお客様で、朝9時から夕方6時まで丸一日の研修を行いました。

セミナー前は気合いを入れるためにコーヒー2杯。講演の最中はペットボトルの水2本とコーヒーを3杯飲みました。合計2リットルですね。

まったくお手洗いに行きませんでした。

研修では腹に力を入れて丸一日ずっと話し続けているのですが、話す最中に水分が息として出ているようです。水を飲まないと喉が渇いてしまい、声がかすれることもあります。

 

ということで講演や研修で長時間話す場合、私とってペットボトルの水は必須です。コンビニでお気に入りのミネラルウォーターを買うようにしています。

実際に経験してみないとわからないこともあるのですね。

 

2014-07-27 | カテゴリー : ビジネス | 投稿者 : takahisanagaicom

現代の若い起業家たちに感じる、大きな可能性

東洋経済オンラインに掲載されていた、田原総一朗さんの対談にとても共感しました。

今の起業家は松下さんや盛田さんに似ている
田原総一朗が目にした、スタートアップの最前線

—(以下、引用)—-

共通するのは、事業の興し方が乱暴でないことだ。言葉遣いも割合丁寧だし、服装も普通の格好をしている起業家が多い。ここは堀江貴文の世代とは毛色が違う。

また大学を卒業して、いきなりベンチャーを作るのではなく、まず手頃な企業に就職しているのも、私が出会った起業家たちの特徴だ。そこで生きるノウハウをまず習得し、その後、自分の好きなビジネスを立ち上げている。

彼らが大事にしているのは、金儲けよりもソーシャルインパクトだ。本当はボランティアでやりたいが、それでは長続きしないからと、ソーシャルビジネスという形態で行っている。

—(以上、引用)—-

私も20代・30代の若い起業家にお目にかかる機会がよくあります。

多くの方がキチンとしています。パリッとしたスーツも着こなす方も意外と多く、礼儀作法もしっかりしています。「いかにいい社会を作るか」というビジョンが明確、ちゃんと日々の努力と学びが大切であることを理解し、謙虚に積み重ねておられます。

そして何よりも尊敬できる素晴らしい人間力を持った人が多いと感じています。

 

会社設立の起業のハードル(資本金、手続き等)がここ10年で大きく下がったことも一つの要因なのでしょう。

加えて、日々の会社経営に必要なリソースもクラウドやアウトソーシングを活用すればそれほどかかりません。損益分岐点をかなり低く下げることができるので、ある程度の売上を確保することができれば、会社経営を軌道に乗せることができます。

この結果、私が20代だった20-30年前と比べて、起業はかなり現実性ある選択肢になっていると思います。(かくいう私も起業しました)

 

ということで、この記事で紹介されていた田原総一朗著「起業のリアル」を早速Kindleで購入しました。16名の起業家と田原さんが個別に対談した対談集です。

読むのが楽しみです。

 

2014年上半期の活動のまとめ

今年1月から6月は、こんな活動をしました。

1.講演と研修

合計17回、のべ1,900名に実施しました。公開可能分はこちらに掲載しています。

2.メディア掲載

ラジオ出演1回、寄稿1回、インタビュー2回でした。ちょっと抑え気味でしたね。詳しくはこちら

3.出版

4月に「図解 100円のコーラを1000円で売る方法」を出版しました。

4.2014年後半への準備

新著準備:今年後半の出版を目指して2冊の本に時間をかけていました。一冊は7月末発売の「100円のコーラを1000円で売る方法3コミック版」、もう一冊は全く新しい本です。

新研修プログラム:6月から本格的に開発を開始しました。7月〜9月に、何社かのクライアント様で展開を予定しています。

 

どちらかというと、1-6月は、今年後半のための準備活動が多かったかな、という気がします。

7月も後半に入りましたが、今年後半も明るく楽しく前向きに、張り切ってまいります!

 

2014-07-21 | カテゴリー : ビジネス | 投稿者 : takahisanagaicom

『デキる・デキない』や『常識』を捨て、『やってみたい』気持ちに従うと、人生が変わる

2014/7/18(金)にIBM OB会であるBBJ主催「若手サロン」があり、参加しました。

今回は、ともに日本IBM 2000年入社組の永田ジョージさん小野裕史さんのご講演でした。

 

永田ジョージさんは日本IBM入社後は、ITエンジニア、社内留学でMBA取得、その後はコンサルタント、営業の仕事をされていました。在職中から都内ライブハウス等でライブを行なっておられました。

2012年に日本IBMを退職され、現在はジャズミュージシャンとしてご活躍中です。CDも3枚リリースされ、精力的にツアーを行っておられます。

 

小野裕史さんは、日本IBM入社5ヶ月後、モバイルベンチャー企業に社員第1号として転職。2008年に同社専務を退任され、ベンチャーキャピタルを立ち上げて現在に至っています。出資企業にはあのfreeeやGroupon Japan、中国ではYeahka、DeNA China等があります。

一方で、35年間まったく運動していない状態から、2009年にWii Fitをきっかけにランニングを開始。5ヶ月後にフルマラソン出場、2年後に中国ゴビ砂漠やエジプトサハラ砂漠の250kmマラソン完走、3年後北極点でフルマラソン完走、南極アイスマラソン100kmの部で世界2位。4年後にチリアタカマ砂漠250kmマラソンのチーム戦で世界1位。そして文藝春秋社より「マラソン中毒者」という本を出版したこと。

 

小野さんのプレゼンに、

『デキる、デキない』や『常識』を捨て、『やってみたい』気持ちに従うことが大切

という言葉がありました。まさに永田さんと小野さんの生き方から、このことを学ばせていただきました。

 

人はともすると、『デキる・デキない』や『常識』で判断し、リスクを避けようとします。しかしこれは、過ぎ去った昔の経験で、未来を恐れているのです。

実際は、未来がどうなるかはわかりません。状況も変わるし、自分自身も、何歳になってもどんどん成長していきます。

未来は変えられるのです。そして変える原動力は『ワクワクすることを、やってみたい』という自分の想い。

だからこそ、『ワクワクすることを、やってみたい』という気持ちが、大切なのですね。今回の講演では、永田さんの場合は音楽、小野さんの場合はマラソンやベンチャーキャピタル経営ですね。

絵にすると、こんな感じです。

Photo  

以前ブログでも書きましたように、人は「これをやらなければ!」と思って仕事を頑張るよりも、「これをやりたい」と思ってやる方が、知的作業ははるかに大きなパフォーマンスを生み出します。現代は知識社会。だから「やりたい」ことをやることが、とても大切なのですね。(ダニエル・ピンクの「モチベーション3.0」ですね)

私も「やってみたい」ということばかりやってきたので、お二人の話にはとても共感しました。

また私はクライアント様に事業戦略の研修や講演を行う機会を多くいただくのですが、企業共通の悩みが「いかに会社として新しいことに挑戦するか」ということです。

これも結局、会社の中で「ワクワクする、やりたいこと」を見つけ出して、挑戦することなのですね。

今回の永田さん・小野さんの講演をお聞きして、個人でも企業でも、『コレをやってみたい』ということが何よりも大切なのだ、ということがよくわかりました。

 

永田さん・小野さんに感謝です。

 

絶対は、ない。ではどうするか?

色々なプロジェクトに取り組んでいます。

 

過去の経験から学び、戦略もキッチリ作り、戦略実行もすべて実施。

仮説も立てて、実際にキッチリ検証。

細心な注意を払って不安な点も徹底的に潰していきます。

 

それでうまく行くか?

実はそれだけやっても、うまく行かないこともあるのですよね。

 

「勝ちパターンはコレ。これまでずっとうまく行ったし」と思っていた経験が、急に時代遅れだったり。

市場や顧客の状況が変わっていて、万全と思っていた戦略に足りない点があったり。

仮説を検証したつもりが、実はちゃんとした検証になっていなかったり。

「これは大丈夫だろう」と思ってあえて優先順位を落としていたことが、実はとても重要だったり。

 

なかなか難しいものです。

リアルのお客様で実際に仮説を検証してみると、検証しないで戦略を実行する場合と比べて、うまく行く確率がだいぶ上がります。

それでも「絶対」はありません。

だから、「失敗する」という前提で考えておくことで、失敗した場合のダメージはだいぶ減ります。
 

難しいものですが、日々の経験や失敗から、謙虚に事実の積み重ねを学び続けるしかないのですね。

「上手に失敗する方法」を学び、小さな失敗を積み重ねることが、大きな失敗を回避するカギなのかな、と言う気がします。

 

イタリアのバールに影響を受けたスターバックスと、日本の喫茶店に影響を受けたサードウェイブ

スターバックスは、イタリアのバールで本場の深煎りエスプレッソを体験したハワード・シュルツが「こんなコーヒーを米国人にも味わって欲しい」と考えて、1980年代に広がりました。

 

一方で最近、米国でコーヒーの「サードウェイブ」と呼ばれる動きがあります。

Blue Bottleは、そのサードウェイブの先駆けとなる存在です。「コーヒー業界のApple」とも呼ばれ、テクノロジー系企業に出資する多くのベンチャーキャピタルがこの会社に出資しています。

「Blue Bottle Coffee 日本上陸、変化するサンフランシスコのスタートアップ文化」によると、Blue Bottle創業者のJames Freemanは、次のように語っています。

—(以下、引用)—

「日本の喫茶店はとても好きで、とてもたくさんのインスパイアがあり、よく訪れています。コーヒーに対する真剣さ、何に対しても均等に気が遣われていて、抜け目がない。Blue Bottleもこうした姿勢でコーヒーを提供できるようにしたいと思って取り組んできました。そのことは、Blue Bottleの素早い成長を助けてくれました。」

—(以上、引用)—

このサードウェイブの源流には、実は日本の古き良き喫茶文化があったのですね。

リンク元の記事では、James Freemanが影響を受けた喫茶店として、銀座のカフェ・ド・ランブル、渋谷の茶亭羽當、表参道の大坊珈琲店が挙げられています。大坊珈琲店は残念ながら閉店しましたが、カフェ・ド・ランブル、茶亭羽當は私もよく行きます。美味しいコーヒーを飲ませてくれます。

 

1980年代にスターバックスがイタリアのバールに影響を受けて大きく広がり、その30年後の現代、今度はサードウェイブが日本の喫茶店に影響を受けて広がり始めているのは、とても興味深いことですね。

 

ちなみに茶亭羽當でいただいたコロンビアです。

Photo  

 

「私の履歴書」ラタン・タタさん:タタ・グループを22年間で17倍に成長させた3つのスローガン

今月の日本経済新聞「私の履歴書」は、インドで最大の財閥タタ・グループ総帥だったのラタン・タタさんです。

ちなみにタタ・グループは、売上高10兆円、参加企業は100社超、社員50万人。創業は1868年ですから、明治元年に生まれた企業なのですね。

5代目会長に就任した1991年から1年半前に退任するまでの22年間で、売上高を17倍に成長させたラタン・タタさんですが、7月1日に掲載された第一回目に、ご自身のスローガンが紹介されています。

■Question the Unquestionable(定説を疑え)
■Always lead never follow(先行せよ、後追いするな)
■Think Big(大きく考えよ)

「まさに今こそ日本で必要なことだ」と思いましたが、考えてみると今の日本に限らず、常にビジネスでは必要なことなのですね。

ご自身も述べておられるとおり、巨大なタタ・グループが大企業病に陥らずに成長し続けた理由は、インド経済の成長という外部要因だけでなく、この考え方に依るところも大きいのでしょう。

毎朝、楽しみに拝読しています。

 

2014-07-10 | カテゴリー : ビジネス | 投稿者 : takahisanagaicom

「進化し続ける人や企業は、謙虚にならざるを得ない」…山万様の嶋田社長から学んだ、謙虚さの意味

当ブログでご紹介してきましたように、山万様で3回の講演を致しました。

第一回となる5/30の講演後、山万様の嶋田社長と初めてお目にかかり、お食事をご一緒する機会をいただきました。

 

40年間かけてユーカリが丘を創り上げた嶋田社長は、とても腰が低い方でした。

実は嶋田社長は、2010年9月13日 放送のカンブリア宮殿に出演なさっています。→放送された番組の概要

この番組で、村上龍さんは編集後記でこのように書いておられます。(リンク先にも書かれています)

—(以下、引用)—-

ユーカリが丘は、地域社会のモデルとなり得る奇跡の街だ。

「こんな街、他にありますかね」と聞くと、「いや、ないと思います」と小さな声で、しかも照れたような表情で、嶋田さんは答えた。

どうしてこんなに謙虚なのだろうと思った。

真の事業家は決して威張らない。成功しても常に改善点を探し続ける。進化し続ける人や企業は、謙虚にならざるを得ないのだ。

本物は謙虚だ 村上龍

—(以上、引用)—-

 

世間で絶賛されている企業であっても、「絶好調だから、この調子で続ければいい」と経営陣や社員が考え、現状維持に陥ってしまうと破綻してしまいます。

いまやテレビ・雑誌といったメディアで成功事例として数多く取り上げられているユーカリが丘ですが、嶋田社長も、「今後を考えた場合、このままではいけない」という強い危機感を持っておられました。

 

「進化し続ける人や企業は、謙虚にならざるを得ない」

私にとって、まさに真の事業家にお目にかかることが出来た、貴重な体験でした。

【連載サマリー】

2014/05/23 奇跡のニュータウン、ユーカリが丘に行ってきました (1)

2014/05/24 奇跡のニュータウン、ユーカリが丘に行ってきました (2)

2014/05/25 奇跡のニュータウン、ユーカリが丘に行ってきました (3)

2014/05/31 ユーカリが丘の開発に尽力されている山万様で、講演しました

2014/06/03 山万様で、第二回目の講演を行いました

2014/06/07 山万様で、第三回目の講演を行いました。3日間で計570名が参加されました 

2014/06/09  「進化し続ける人や企業は、謙虚にならざるを得ない」…山万様の嶋田社長から学んだ、謙虚さの意味

 

高収益の「消耗品ビジネス」が、消耗してしまうリスク

自宅で使用しているプリンターは小さいとは言え業務用。日々しっかり業務をサポートしてくれています。

今週末、累計5,000枚ほど印刷をした末にトナーが切れてしまいました。そこで事前に買っておいたトナーに交換しました。

このプリンターのトナー、メーカー純正品だと2万円です。消耗品は高いのですね。メーカーはこの消耗品ビジネスで結構稼いでいます。

しかし私はメーカー保証がない「汎用品」と言われるトナーを買いました。5,000円でした。アマゾンの評価もまったく問題がなかったために、プリンター購入と同時に事前に購入しておいたものです。

 

トナー交換のために箱を空けると伝票が出てきました。何かと思ったら宅配便の着払い伝票。「交換済トナーカートリッジのリサイクルにご協力ください」とのことで、配送先住所が印刷されています。返送されたカートリッジにトナーを入れて再販しているのですね。

汎用トナーを販売する会社としては、着払で700-800円程度の配送料を負担してもメーカーの純正トナーカートリッジを入手できるので、十分にペイするわけです。

ユーザーの立場としても使えるモノを捨てるのは躊躇します。送料先方負担でリサイクルしてもらえるならば、ありがたいことです。

汎用品トナーの使用についてはメーカーは非保証ですが、汎用品トナー側では「本トナー使用に伴う故障の修理費用は負担します」としています。

トナーを交換したプリンターは、全く問題なく動いています。

 

メーカーが消耗品で稼ぐ消耗品ビジネスは、ひげそりを安く販売し替え刃で稼ぐ仕組みを作ったジレットで有名になったので「ジレットモデル」とも呼ばれています。

製品本体を販売する際、消費者は価格やスペックを厳しく見るので、主導権は消費者が握っています。一方で一旦買ってしまうと、消費者は消耗品を使い続ける以外の選択肢を持ちませんので、消耗品販売の主導権はメーカーが持っています。

しかし考えてみたら、私が5年前に購入したパナソニックのひげそりは、替え刃を交換することもなく5年間順調に使えています。ひげそりの中には、消耗品が不要の商品も結構あるのです。

 

企業とって消耗品ビジネスは売上をストックビジネス化できることが魅力ですが、消耗品ビジネスと言えども、通常のビジネス同様に常に賞味期限切れのリスクにさらされています。

消耗品ビジネスと言えども、日々顧客の新しい価値を生み続けることに挑戦することが必要なのでしょう。

 

大友克洋「AKIRA」実写版の予告編

素晴らしい出来です。

「早く公開版を見たい」と思いながら、よく見てみたら、これはAKIRA PROJECTで集まった12カ国40人以上のアーティストたちが、クラウドファンディングで2年間・3500ドルかけて作成したものでした。

詳しくはWIREDの記事「世界中のファンが集結してつくった「実写版AKIRA」(予告編)」に書かれています。

それにしても、金田や鉄雄などまさにイメージ通りで、ネオ東京やSOL、鉄雄の覚醒の様子もよく出来ています。英語で作られているのがまたいいですね。

クラウドファンディングでは、共感のもとで才能ある人たちが集まれば、予算の制約を乗り越えて素晴らしいものが生まれる可能性を、垣間見せてくれる作品でした。

 

「志」の大切さ

President Onlineのこんな記事を読みました。

入院中に部下20人が離反、競合会社設立。慰留に努力するか
孫正義が出題、思考力を磨く設問

苦労して立ち上げたビジネスモデルのノウハウがそのまま人と共に流出してしまうのは、とても痛いことですね。

詳細は元記事をご覧いただきたく思いますが、特に私が共感したのは下記です。

—(以下、引用)—

こうした裏切りのストーリーは小説やドラマの定番ですが、裏切った人たちが後々に成功するという筋書きは、あまりありません。結局のところ、目先の利益にとらわれた経営ではいずれ行き詰まり、ともに働く仲間からも見捨てられてしまうのでしょう。

—(以下、引用)—

ここに書かれているソフト流通会社ソフトウィングがどのような会社かは私はわかりません。おそらくソフトバンクを去ってこの会社を作られた方々も、必然的な事情があったのだろうとお察し致します。

一方で記事を拝読して「志」の大切さを再認識しました。

一般論ですが、裏切りをきっかけに集まった人たちが一緒になった組織や集団は、一時的には優位な立場に立てるかもしれません。しかし長い間やっていると、色々なことが起こります。

これを乗り越えられるかどうかは、やはり皆が「高い志」を共有しているかどうかだと思うのです。

 

そもそも自分の会社が「どの顧客の課題」に対して「どのような価値」を生みだそうとしているのか、組織の仲間同士で「志」や「ビジョン」を語り合い、共有することは大切であると改めて思います。

それは「志」や「ビジョン」が、組織の目的だからです。

「利益」(=お金儲け)は本来「志」や「ビジョン」を実現する手段であり、目的ではないはずです。

  

2014-05-28 | カテゴリー : ビジネス | 投稿者 : takahisanagaicom

独立して食っていくためのノウハウ

勤務先を退職して11ヶ月目を迎える今日この頃、こんな記事を拝読しました。

「40歳定年」して食っていく、3つの心構えと5つのノウハウ。そして筆者はなぜ40歳で朝日新聞を辞めたのか

  

タイトルを読み替えると、「独立して食っていくための3つの心構えと5つのノウハウ」ですね。

3つの心構えとは、

(ⅰ)自己中心的(自分勝手)であること
(ⅱ)興味の対象は広くもっておくこと
(ⅲ)不快なことがあってもくよくよと考えないこと(不快なことはすぐに忘れること)

5つのノウハウとは、

(ア)「まずは会社作りに走るな」
(イ)「事務所を借りるかどうかもケースバイケース」
(ウ)「キャッシュフローを意識する」
(エ)「勉強会にはむやみに出るな」「むやみに仲間や友だちはつくるな」
(オ)「共同事業しようには乗るな」

 

自分をふり返ってみて、深く共感しました。一つずつ見ていくと、….

(ⅰ)自己中心的(自分勝手)であること

独立する前から、割と自己主張をするタイプだったと思います。独立してからは、言うべきことは事前に言っておいた方が双方にとって後々よいことが多いので、角が立たない範囲で必ずキッチリとお伝えするように習慣づけるようになりました。

(ⅱ)興味の対象は広くもっておくこと

ご縁やチャンスは思わぬところに転がっていることを実感しています。なるべくアンテナは広くしておき、その上で、必要に応じて取捨選択した方がいいようです。

(ⅲ)不快なことがあってもくよくよと考えないこと(不快なことはすぐに忘れること)

私は若い頃は悲観的に考えることも多かったのですが、40過ぎから楽観的に考え、不愉快なことがあるとすぐに忘れられるようになりました。タイミング的に、このような状態になってから独立してよかったのかもしれませんね。

(ア)「まずは会社作りに走るな」

当初よりクライアント企業様への講演・研修サービスご提供を考えていました。多くのクライアント企業様では法人取引を前提とするので、必然的に私の場合は会社を作りました。

(イ)「事務所を借りるかどうかもケースバイケース」

当面は、クライアント様との打ち合わせは平河町ライブラリーを使用し、執筆や資料作りは平河町ライブラリー・アークヒルズライブラリーと自宅オフィスを使い分けるようにしています。

(ウ)「キャッシュフローを意識する」

「キャッシュフロー」というと大変そうですが、要はお金の出入りの管理ですね。私の場合、「入り」の分は、主に請求書管理になります。

クライアント様と請求額・請求書発行日・支払期限を合意した上で、請求日になるとすぐに請求書を発行し、発行済請求書はすべてPDFで保管、明細を一覧にして管理し、支払期限の入金をチェックするようにしています。一度仕組みを作ってしまえば、案件がまださほど多くないので、簡単です。

(エ)「勉強会にはむやみに出るな」「むやみに仲間や友だちはつくるな」

具体的な知識習得の目的があって、11ヶ月間で勉強会には3-4回参加しました。勉強会参加でネットワーク作りはほとんど意識したことがありませんでした。お付き合いする人数も、結果的にこの記事にある30人程度でしょうか?

自分の経験では、仕事でお世話になったクライアント様からの学びが、圧倒的に多いと感じています。

(オ)「共同事業しようには乗るな」

幸いあまりお声がかかりません。実は腰が重い方なので、お声がけいただいてもなかなか動けないかもしれません。

 

ということで、改めて自分の活動を見直すよい機会をいただきました。

 

2014-05-26 | カテゴリー : ビジネス | 投稿者 : takahisanagaicom

街で高級カフェが急速に増えている

最近、街で1杯1,000円前後のコーヒーが増えています。

先日のブログにも書きましたように、表参道ヒルズのタリーズも「TULLY’S SINGLE ORIGIN」 というサービスを提供しています。この店では、注文毎に豆を挽き、専用マシンで一杯ずつ2分ほどかけて淹れます。

また銀座5丁目にも、ドトール創業者の鳥羽博道氏が開いたロイヤルクリスタルカフェというカフェがあります。ある本でこの店のことを知り、先日行ってみました。地下に豪華な内装の空間が広がり、ゆったりとしたソファもあり、きちんとした身なりの年配女性客が優雅に時間を過ごしておられました。ブレンドコーヒー一杯で1,500円。あまり頻繁に行けそうもないですが、いい店でした。

 

2014/5/20の日本経済新聞・夕刊にも、「カフェ大手で高級感 珍しい豆・居心地重視 コンビニに対抗」という記事が掲載されています。

この記事では、下記の店が紹介されています。

プロント:エチオピア起源の「ゲイシャ種」のアイスコーヒーを発売。数量限定で380円。1本の木から取れる収穫量は通常の半分程度

ドトールコーヒー:丸の内に高級カフェ「カフェ レクセル」を出店。「メキシコ レティロ」など3種類の豆を用意。淹れ方も選べる。1杯400~680円

スターバックス:都内の高級住宅地に「インスパイアード バイ スターバックス」の出店を開始。家具や内装に凝った新業態。近隣住民のリピーター顧客化を狙う。

 

カフェの高級化が急速に進んでいることを実感します。

 

ライフネット生命6周年セミナーに参加。ライフネットは、やはり「直球勝負の会社」だった

昨晩、ライフネット生命の6周年セミナーに参加してきました。

2時間のセミナーでは、最初の45分は会長/CEOの出口さん、社長/COOの岩瀬さん、常務の中田さんが講演。残りの75分は、会場の参加者とのQ&Aでした。

会場にいる200-300名の参加者は、ほとんどが20代から30代の若い方々ばかり。私のようなライフネット生命加入者だけでなく、未加入者や、ライフネット生命に興味があるから参加したという方も多くおられました。

2  

現在、若い人たちの保険加入率が低い状況が続いています。調査によると加入しない理由のトップは保険料金が高いこと。ある調査では、世帯当たり平均年41.6万円の負担になるそうです。

一方で家計節約を考える際に「保険料を見直す」という人はわずか1割。保険料の見直しで家計が節約できることは、まだあまり知られていません。

ネット専業のライフネット生命は、販売費などの間接費を削減して大手生保の半額の保険料を実現。さらに最近は保険料金の引き下げも行っておられます。

 

岩瀬さんが、「創業時、出口さんは『小さいがいい会社にしたい。競争を仕掛ければ業界は必ずよくなる。それが長年お世話になった生保業界への恩返しだ』と語っていた。実際、ライフネット生命が生まれて生保業界の競争は激化したが、それは消費者にとってよいことだ」とおっしゃっていたことが印象的でした。

開業6年が経過しライフネット生命の加入者は12万人になりました。一方で環境が変わり競争が激化することで、ライフネット生命は様々な新しいチャレンジに取り組んでいます。

たとえばスマホの対応。当初のライフネット生命はPC用画面が中心でしたが、最近はスマホユーザーが急激に伸びています。ネットと電話が主な顧客窓口であるライフネット生命にとって、スマホ対応は最重要課題。そこで2013年4月にスマホサイトを全面リニューアル。

この図の通り、スマホシフトの状況は一目瞭然です。

Photo

さらに保険外交員がいないので、申し込みは顧客自身が行わなければなりません。ともすると途中でわからなくなって挫折してしまうこともあるわけです。そこで「フォローアップ機能」としてメールや電話で申込サポートできるようにしました。

また、商品も多角化しています。終身医療保険を拡充し、女性専用商品も用意。

 

ライフネット生命のマニフェストは、「正直にわかりやすく、安くて、便利に。」です。このマニフェスト通り、このセミナーでも、どんな質問にも丁寧に答え、かつ会社の経営状況も透明にガラス張りしておられました。

「正直にわかりやすく」を会社の経営で徹底することは実に大変ですが、2時間のセミナーを通じて、これを着実に行われている様子がよくわかりました。

 

出口さんは、このように会社の経営に尽力しライフネット生命を立ち上げる一方で、「10人以上集まればどこにでも講演に行く。会社の宣伝になるから」と活発に講演活動をなさっており、加えて本も沢山読まれています。さらに、数多くの本を出版をなさっています。

セミナーが終わり、「すごいことだな」と改めて実感しつつ帰ろうとした時に、「永井さん」と声をかけられました。昔の知り合いがライフネット生命に転職していました。

「出口さん、社外であれだけ活動なさっているのに、すごいですね」と話したところ、その知人もライフネット生命に入社して出口さんの活動の活発さに驚かれたそうです。週末にオフィスへ出勤すると、出口さんもよく仕事をなさっているとのこと。

この日のQ&Aでも出口さんは、「朝起きると、『よし。今日も会社で暴れてやるぞ!』とオフィスに行くのが楽しみになるような会社にしたい」とおっしゃっていました。

会場の至る所で、セミナーをサポートしておられる社員の皆さんからも、その雰囲気は伝わってきました。

そして出口さんご自身、それを体現なさっていると感じました。

 

改めて、「ライフネット生命はまさに『直球勝負の会社』だ」と思った次第です。
 

 

2014-05-20 | カテゴリー : ビジネス | 投稿者 : takahisanagaicom

藤沢久美著「なぜ、川崎モデルは成功したのか?」…日本ならではのオープンイノベーションの姿が、ここにある

藤沢久美著「なぜ、川崎モデルは成功したのか?」を読了しました。

 

この本と出会えて「よかった」と思いました。元気になるからです。

 

そもそも「川崎モデル」とは何でしょうか?本書のオビには、次のように書かれています。

—(以下、オビから引用)—

川崎市から始まる 政府・省庁も注目 新・中小企業支援。

異色公務員集団が大企業や金融機関を巻き込みものづくりの町・川崎市を元気にする!
話題のオープン・イノベーションの最前線!

戦略は、「密着」「おせっかい」「キャラバン隊」

—(以上、引用)—-

本書では川崎モデルの様々な事例が紹介されています。たとえば、ある企業のケース。

墓石業を営むある会社は、川崎市からデザインコンペにエントリーすることを勧められました。そこでこの会社はガラス墓石の開発を検討しました。

そのことを知った川崎市のキャラバン隊の担当者は、ガラス工芸を手がける市内の事業者を紹介。ガラスを使った新たな墓石「シルエット」が誕生し、デザインコンペで優秀賞を受賞しました。(キャラバン隊とは、実際に企業に出向き、支援施策の情報を提供したり、連携先を紹介したりと、色々と世話をする川崎市のチームのことです)

さらにキャラバン隊は販売のために、市内のガラス工芸作家を集めて「メモリアルガラス研究会」を発足し、「かわさきガラスのお墓」が誕生、国の地域資源の認定を受け、この墓石の販売は拡大しています。

本書では、次のように書いています。

「社外の異分野の人々との協働の場を作り、これまでの常識を覆す新たな商品を生み出した。まさにオープンイノベーションだ」(p.210-211)

 

「役所がこんなことまでするのか!?」と驚かれる方もいるのではないでしょうか?この原動力が、熱い想いを持った、川崎市の公務員の方々です。

本書では、藤沢さんの優しい視線で、この川崎モデルに取り組まれてきた人たちの様子が丁寧に描かれています。

 

実はこの川崎モデル、最初から川崎市が組織全体で始めたものではありません。

1990年代中頃、中小企業についてまったくの門外漢だった若手中堅職員が、川崎市の中小企業が置かれた厳しい現実を知り、まず勉強会を立ち上げました。その熱い想いに共鳴した数名の職員が中小企業経営者の訪問や勉強会を繰り返して、徐々に育てていったものです。

現在の川崎市では考えられないことですが、当初は組織としての反対もありました。

たとえば、ものづくり企業の共同体である「ものづくり共和国」のために補助金を申請しようとすると、「共和国は会社ではないので、申請はまかりならん」。

川崎市のサイトからリンクを張ろうとすると「一企業だけにリンクを張るのは不公平なのでまかりならん」。

しかし今では、中小企業の支援をしているコーディネータは、川崎市だけでなく、国や都道府県の補助金までみつけて、申請支援をすることもあります。

もし「自分たちのミッションは、川崎市の中小企業の支援施策の活用推進だ」と考えると、ちょっとあり得ない行動かもしれません。

しかし「自分たちのミッションは、産業育成によるよりよき社会の実現だ」と考えると、至極まっとうな行動です。

自分たちのミッションを考え抜いて、メンバーで共有しているのです。

 

一人一人の熱い想いが大きな動きを生み出し、「川崎モデル」を作り上げている様子を、本書では様々な事例を通じて、活き活きと描いています。たとえば、このように書かれた一節があります。

「『官民連携』という言葉はどこでも耳にするが、連携の肝は人の交流。そして現場で一緒に本気で汗を流すこと。そして学びあうことだと、川崎市と関わる金融機関の皆さんが体験を通じて教えてくれた」(p.193-194)

コーディネーターには成功報酬はありませんが、中小企業支援のためなら徹夜も厭わないし、面倒な作業にも嫌な顔一つせずに取り組みます。その理由は、まさに「志」。コーディネーターのある一人は、このように語っています。

「喜んでもらえるのがうれしくて、喜んでもらえるために、いろいろとしてしまう」(p.72)

「働くとは、どういう意味なのか」ということを考えるきっかけをいただき、元気にさせてくれます。

 

「この本と出会えてよかった」と思った理由は、先の「読むと元気になる」ことに加えて、もう一つあります。

それは本書がアイデアの宝庫であること。現場で格闘してきた人たちならではの、ビジネスの知恵が散りばめられています。是非ご紹介したいのですが、ネタバレになってしまうので、当ブログでは割愛させていただきます。

  

本書には、日本ならではのオープンイノベーションの姿が描かれています。折りを見て、読み返していきたい本だと思いました。

 

藤沢さんは「社長Talk」という社長とのインタビューを、2006年7月14日の第一回放送以来毎週欠かさず続けておられます。→これまでのアーカイブ

また「藤沢久美の社長Talk News」というメルマガも、このたび配信200回を超えました。→登録はこちら

藤沢さんが積み重ねてこられた、この膨大な日々の蓄積があってこそ生まれた骨太な本なのだと実感します。

 

「仕事こそ、ドラマティックな物語だ!」 …どこにも売っていない名著「コミーは物語をつくる会社です。」

こんな本があります。

「コミーは物語をつくる会社です。」(コミー株式会社発行、2013年)

2  

残念ながら、本書は書店では売っていません。

業務用ミラーで国内で圧倒なシェアを持っているコミーが、創業40周年を記念して作った本です。私は有り難いことに、コミーの社長・小宮山栄さんからいただきました。

この本の狙いは、まさに本のタイトル通り。コミーの仕事を通じて、得られた出会いや喜びを、物語にしてまとめたものです。

 

実は会社での仕事は、とてもドラマチックなものです。

小さな仕事にも、必ず何らかの物語があります。しかしともすると、そのような物語のほとんどは、多くの人には知られずに忘れ去られてしまいます。

本書では、たとえば「万引き防止」という市場をいかに発見して、コミーが挑戦してきたかが、とても面白い実話で綴られています。

これは本書のp.72からp.96にある「航空業界参入物語」の出だしのページです。コミーがどのように航空機での業務用ミラーのニーズを見つけて、ボーイングやエアバスに採用されたのか、その試行錯誤の様子がリアルに描かれています。

1  

コミーでは、これらの沢山の物語を小冊子にしてまとめてきました。創業40周年を記念して、今回、これを1冊にまとめたものです。

B5判、合計336ページの読み応えがある本になっています。

 

私はクライアント様とお話ししていると、「社内で、会社の方針や戦略、各部門の活動が、なかなか社員同士で共有できない」というお悩みをお伺いすることがよくあります。

コミーがこのような物語を作るのも、まさにそれが理由です。コミーの社員数は14名と小所帯ですが、逆に小所帯だからこそ、放っておくと仕事が属人化されてしまいます。そこで社員の様々な経験を、物語にして全社員で共有しているのです。

さらにこの物語は、見込み客や既存ユーザーにとっても、優れたマーケティングコミュニケーションの手段になっています。

内容にご興味がある方は、コミーのホームページに「コミーの物語宣言」というページがありますので、ご参照ください。

 

2014-04-20 | カテゴリー : ビジネス | 投稿者 : takahisanagaicom

北城さんが語る、日本の起業家へのメッセージ

私は日本IBM在職中だった2年前、社内研修で日本IBM相談役の北城恪太郞さんにご講演をお願いした際に、北城さんとお話しする機会をいただきました。

その際に北城さんから、「永井さん、『エンジェル税制』って知っている?」というご質問をいただきました。

「起業家を支援するとてもいい税制なんだけどね。今ひとつ知られていなくて、ちょっと残念なんだよね」

ともおっしゃっていました。

 

この「エンジェル税制」をはじめ、北城さんが日本の若い起業家へのメッセージを存分に語っている記事が、掲載されています。

日本IBM 北城恪太郞氏 特別インタビュー

『エンジェル税制』は、2008年に経済産業省が作った、ベンチャーを支援する税制です。

起業する会社に資本金を出資すると、寄付金と同じように所得から控除される、というものです。所得の高い人は100万円投資すると40万円税金が安くなります。世界でもこのような制度はほとんどないそうです。(詳細は本記事参照)

北城さんは、経産省と一緒に自民党の税調の先生方を説得して回り、この法案成立に尽力されたそうです。

 

北城さんは日本IBM会長を退任されてからは、若い人を育てることや若い会社を育てることに注力されています。

この記事も、アントレプレナーについての北城さんの考え方が書かれていて、大変勉強になりました。
 

2014-04-17 | カテゴリー : ビジネス | 投稿者 : takahisanagaicom