永井孝尚ブログ

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「戦略作りはコンサルや部下に任せている」はダメです

「あ、戦略作り? コンサルや部下に任せていますね。
ちゃんと私がチェックしてます。OKなら、全社方針にしています」

あからさまにこのようにおっしゃる方は、実は滅多にいません。しかし、

「何よりも現場やお客さんが大好き」
「社内の人間関係もとても大切」
「でも戦略を考えるのは、どうも苦手で…」

というトップは、意外と少なくありません。

現場やお客さんが大好きなことも、社内の人間関係を大切にするのも、素晴らしいことです。とは言っても、会社の戦略作りは外注してはいけません。トップが考えるべきものです。

確かに「より多く、より豊かに」が勝つための方程式だった時代は、目標が明確でした。戦略がなくても一生懸命に仕事をすればビジネスは成功しました。

しかしそんな古き良き時代は20世紀で終わりました。
いまは、いかに見えない顧客ニーズを素早く捉え、ライバルに先んじて市場を制することが必要な時代です。20世紀の勝ちパターンを変えずに一生懸命に仕事をしても、間違った方向に努力していると成果が上がらない

「組織が何を目指すのか?」
「それで勝てるのか?」
「それを具体的にどのような行動で実現するのか?」

これらが明確に問われる時代になりました。
これを決めるのが戦略です。

さらにいえば、戦略を作る力はいまやトップに限らず、ビジネスパーソン一人一人にとってもビジネスの基礎力です。
その肝心かなめのビジネスの基礎力を、トップがコンサルや部下に丸投げしていては、ビジネスがうまくいくわけがありません。

最近は戦略企画部門を廃止する会社も出始めました。戦略はトップ自身、あるいは事業部自身が責任を持って考えるべきもの、という考えが浸透し始めているのでしょう。

トップに限らず、日本のビジネスパーソン一人一人が戦略を作る力を高められれば、日本はもっと元気になります。

私が多くの方々がマーケティング戦略のキモがわかるようにわかりやすいビジネス書を執筆したり、朝活「永井塾」や夜学「永井塾」を行っているのも、そんな戦略策定力を一人一人に身につけていただくお手伝いができればとの想いからです。

戦略作りの外注はやめて、自分が戦略を考えられるようにしましょう。

 

 

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6%値上げで客離れの鳥貴族。11%値上げで離れなかったQBハウス

居酒屋「鳥貴族」は、2017年10月に28年ぶりに価格改定して、全品280円を298円に6%値上げしました。

その後、3月まで15ヶ月連続で前年比で既存店の売上高・客数ともに減り続けています。
さらに値上げ1年が経過した2018年10月以降は、客単価も前年比2-3%減っています。
(以上、鳥貴族IR情報より)

一方で「QBハウス」は今年2月1日に1080→1200円へ11%も値上げしました。
私は昨年8月に当コラムで、「値上げ後も、意外と客離れは少ないのではないか」と書きました。

結果は、値上げ後2月/3月の売上は、既存店は2月は+9.6%。3月は+9.9%。客離れは6%の予想でしたが2%に留まりました。
(以上、QBネットIR情報より)

両者の違いは、何なのでしょうか?

鳥貴族の場合、格安居酒屋は他にも沢山ありました。ですので「安いから鳥貴族に行く」というお客は、「値上げしたから、別の店に行こう」となります。しかも値上げニュースがメディアで大きく伝わったので、実態以上に「高くなった」というイメージが定着してしまいました。
低価格をウリにすると低価格目当てのお客が集まり、低価格目当てのお客はたとえ6%値上げでも離れるということです。

ちなみに家具のニトリが「同じ商品は絶対に値上げはしない」という方針を貫いているのは、この怖さを知っているからです。

 

一方でQBハウスは、大手理髪チェーンでは代替がありません。さらにQBハウスに行くお客は、価格だけでなく「10分でカットできる」という価値も評価しています。ですので11%も値上げしても、意外と客離れが少なかったのでしょう。

 

鳥貴族が28年も280円で頑張ったのは、実に凄いことだと思います。しかし鳥貴族といえども、6%の値上げでこんなに苦しんでいます。

競争が激しい市場で低価格戦略を選んだら、絶対に値上げしてはいけない、ということを、鳥貴族とQBハウスの事例は教えてくれます。
やはり低価格戦略は、できる限り避けるべきだと私は思います。

 

 

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「リスクヘッジ」の名目で、目標分散させてはいけない

戦略は、一つに絞ることが必要です。

しかしともすると私たちは、なかなか戦略を1つに絞り込めません。特に意志決定者の意見が割れたりすると、折衷案として「戦略を1つに絞るのはリスク」と考え、「リスクヘッジ」の名目で、複数の戦略を立てることがあります。

しかし複数の戦略はリスクヘッジとはならずに、逆にリスクが増えます。

 

1941年12月に始まった太平洋戦争は、緒戦の半年間は日本軍は米軍に対して圧倒的に優勢でした。日本軍が劣勢に転じたきっかけは、1942年半ばのミッドウェイ海戦でした。(ミッドウェイは、日本とハワイの中間地点にあります)

ミッドウェイ海戦では、日本軍の目的は2つに分かれていました。

帝国海軍・連合艦隊では、戦略の目的は「米海軍の空母機動部隊の撃滅」でした。当時、米国海軍の空母艦隊は健在だったので、「太平洋の制海権を取るために、彼らを撃滅しなければ」と考えたのです。

一方で軍令部では、戦略の目的は「ミッドウェイ島攻略」でした。直前に日本本土が少数の米軍機で空襲されたので、「本土再空襲阻止のために、ミッドウェイ島の攻略が必要だ」と考えたのです。

両者譲らず、戦略の目的は一本化できませんでした。

そこで「米国海軍機動部隊を殲滅するとともに、ミッドウェイ島の攻略を図る」という曖昧な戦略目的が立てられました。

結果は、惨敗。
空母の甲板上で、日本海軍の攻撃機が陸上基地攻撃用爆弾を抱えて攻撃準備していました。しかし「敵空母発見」の方を受けて攻撃用魚雷に1時間かけて換装することになりました。このタイミングで米国海軍急降下爆撃機の爆撃を受けました。爆弾と燃料満載の空母甲板が直撃され、日本海軍の主力空母を4隻喪失してしまいました。

その後、太平洋の制海権を失った日本軍は劣勢に転じ、そのままジリジリと敗戦の道を歩み始めました。

ちなみにこの時の米国海軍の戦略目標は、「日本空母の殲滅」と首尾一貫して明確でした。

 

あいまいな複数の戦略目標を持つことが、リスクヘッジになるどころか、むしろ戦力が分散し、大きなリスクを抱えることになるのです。

しかしこのような意見もあるかもしれません。
「そうは言っても、失敗したときの二の矢、三の矢が必要なのではないか?」

これは全くその通り。二の矢、三の矢を考えることはとても重要です。
しかし、一の矢、二の矢、三の矢は、すべて同じ戦略目標に対して準備するものです。
二の矢、三の矢は、あくまで一の矢が失敗したときにバックアッププランなのです。

 

戦略で一番難しいのが、「選択」です。
難しい選択を避けるから、戦略が失敗してしまうのです。

 

 

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朝活勉強会「永井塾」第26回「良い戦略、悪い戦略」を行いました

今朝、第26回朝活勉強会「永井塾」を行いました。
テーマは「良い戦略、悪い戦略」でした。

よく「この戦略は筋がいい」「この戦略は筋が悪い」と言われますが、前者が「良い戦略」、後者が「悪い戦略」です。
「良い戦略」とは単純明快。シンプルで、状況を見て決定的要素を見極めます。
しかし世の中では「悪い戦略」が圧倒的に多いのが現実。実は私たちは「悪い戦略」を立ててしまうことが少なくありません。

両者の違いを明確に教えてくれるのが、その名もまさに「良い戦略、悪い戦略」という著書を書いたリチャード・P・ルメルトです。日本では知名度が低いルメルトですが、エコノミスト誌は「マネジメントコンセプトと企業プラクティスに対し最も影響力ある25名」に選んでいます。

そこで今回の朝活勉強会「永井塾」では、ルメルト著「良い戦略、悪い戦略」を題材に、戦略のあり方を考えていきました。

多くの方々にご参加をいただき盛況でした。有り難いことに参加者が毎回増え続けています。感謝です!

 

次回の朝活勉強会「永井塾」は5月8日(水)。「人はなぜ動くのか?」というテーマです。
人の問題は、マーケティング戦略や変革で避けて通れません。
ですので経営戦略の上でも、次第に重要な要素になってきています。
そこでエドワード・デシやチクセントミハイなどのポジティブ心理学の考え方を中心に、内発的動機付けについて考えていきます。

詳しくはメルマガでご案内していますので、参加希望の方はメルマガにご登録いただければ幸いです。ご参加をお待ちしております。

 

お宝は、同じ場所にない

かつて「模倣戦略」という戦略がありました。成功している他社商品の模倣をすることで、商品開発のリスクや開発コストを下げようとする戦略です。

しかし現代は、模倣戦略ではなかなか成功できません。
理由は2つあります。

 

一つ目は、ヒット商品の賞味期限が短くなっていることです。
中小企業研究所の調査によると、ヒット商品のライフサイクルは、1970年代では50%以上が5年以上でした。2000年代になると50%以上が2年以下になりました。2004年の調査なので今はもっと短くなっています。

ヒット商品の成功を見て、「自分もやろう」と商品やサービスを開発して売っても、既にヒット商品の旬が終わっていることも多いのです。

 

二つ目は、顧客のニーズが細分化していることです。
勝つのは、細分化したニーズに最適化した商品です。ここで必要なのが、顧客ニーズに関する知識。これは既に顧客に使ってもらっている先行商品の会社が圧倒的に有利です。

模倣戦略で後から商品を出しても、顧客知識が追いつかないのです。

 

「ヒット商品の賞味期限が短くなっている」「ニーズが細分化している」という2つの理由で、模倣戦略は成功しないのです。
模倣戦略の行く末には、激しい価格勝負のレッドオーシャンが待っています。

 

このように考えると、新規事業は「お宝探し」に似ています。

「お宝を見つけた」という人の話しを聞いて、そのお宝の場所に行っても、既にお宝はありません。

だから学ぶべきは、「お宝の場所」ではありません。
「どうやってそのお宝を見つけたのか?」という戦略の考え方です。

 

新商品開発でも、成功した商品を模倣するのではなく、その商品を成功させた戦略を学ぶべきなのです。その戦略の考え方を自分たちの場合に当てはめて考えれば、自分たちらしい成功を導き出すことが出来るのです。

 

 

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