永井孝尚ブログ

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私たちは来年、2030年を迎える

今年3月からのコロナ禍で、私たちの暮らしは大きく変わりました。
「早く元に戻らないか?」という声もありますが、もうコロナ前には戻りません。
一旦変わった人の行動は、なかなか元に戻らないからです。
その理由は、逆説的な言い方ですが、多くの人がコロナ禍で「自由さ」を知ってしまったからです。

まず在宅勤務の自由さ。何よりも大きいのは通勤の不要さが消えたこと。
いまや在宅勤務前提を宣言した企業も増えています。

そんな中で、私の知人で地方に住まいを移した人もいます。
「毎晩、知人とオンライン飲み会ができて楽しい」とのこと。

オンライン会議もすっかり当たり前になりました。
「打ち合わせのために客先に移動していたあの時間は、何だったのだろう」と思ってしまいますね。

世界的な思想家であるジャック・アタリは、名著「21世紀の歴史」でこのように書いています。

「いかなる時代であろうとも、人類は他のすべての価値観を差し置いて、個人の自由に最大限の価値を見出してきた」

コロナ禍で「自由さ」を知った人類は、もうその自由さを手放さないでしょう。

そしてその自由さは、デジタルテクノロジーのおかげです。
コロナ禍により、デジタル化が一気に進みました。

今年5月、マイクロソフトのナデラCEOは決算発表で「この2カ月で2年間分のデジタルシフトが進んだ」と言っています。

またマネーフォワードの辻庸介社長は新聞のインタビューで「本来なら10年かかるはずの変化が1~2年で起こるくらいのインパクトをコロナがもたらした」と言っています。

給付金支給に多大なヒトモノカネと数ヶ月もの期間をかけ、「デジタル敗戦」を痛感した日本政府も、デジタル庁構想を進めています。
いま様々なビジネスが、一気にクラウド側にシフトし、そのスピードが加速しつつあります。

今年は2020年ですが、この1年で時計は10倍速で進んでいます。

「私たちは来年、2030年の世界を迎える」

このように考えると、私たちがいまビジネスで何をやるべきなのかが見えてくるのではないでしょうか?

 

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価格戦略でコロナ禍に対抗

コロナ禍でお客さんが激減した飲食店は、あの手この手で何とか乗り切ろうとしています。
そんな中で、価格戦略で乗り切ろうとする店もあります。
ただこのようにいうと、「値下げ?もう限界ですよ」と思うかもしれませんね。
でも値下げだけが価格戦略ではありません。

たとえば飲食店の悩みの一つが、何とかして三密を回避して感染リスクを下げること。
そこである店は入店時間で価格を変えることで、来店客のピークをシフトして三密回避を図っています。
いわゆる「簡易型ダイナミックプライシング」ですね。
ランチセットをこんな価格設定にします。

11:00-12:00 1000円
12:00-13:00 1200円
13:00-14:00 1100円
14:00-15:00 900円

消費者は価格に敏感です。12:00-13:00のピーク時を避けて、空いている時間に来店するようになります。

またサイゼリヤは1円値上げで大きな効果を出しています。
従来の価格戦略の定番は、端数価格(299円とか499円)でした。500円と499円は1円しか違いませんが、消費者500円台と400円台の違いとして認識するので、お得感を感じさせることができます。

これまでサイゼリヤはこの端数価格を徹底して、「ミラノ風ドリア299円」などの価格設定をしていました。
しかしコロナ禍で端数価格戦略はやめ、全て「00円」「50円」のキリの良い価格にしました。ミラノ風ドリアは300円に値上がり、一方でライスは169円から150円に値下げ。メニューの9割が値上げ、1割が値下げです。

狙いは会計時に釣り銭を減らすことです。

社長が店で観察していると、会計で釣り銭の交換で行列が出来ていたので、これを止めた訳ですね。

確かに数人で食事すると、割り勘などで細々とした計算が必要なので端数価格だと手間です。

東洋経済オンラインの記事『サイゼリヤ、社長も驚く「1円値上げ」の成果』によると、会計にかかる総時間は30%減少し、しかも客単価が上がったとのこと。

客単価は700円台前半でしたが、50/100円刻みにしたことで、合計1000円を目安に注文する人が増えたためです。

なんとサイゼリヤ1000円ガチャというサイトも出来ました。サイゼリヤで1000円になるメニューの組合せをランダムに表示してくれます。

サイゼリヤ1000円ガチャ → https://saizeriya-1000yen.herokuapp.com/get

厳しい状況ですが、こんな時こそ知恵の出しどころ。
このような価格戦略であれば、小さい店であれば今日からも出来るのではないでしょうか?

あの手この手で、何とか乗り切りたいものです。

 

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大きく成功するには指数関数の世界を見つけ、先手を打つ

世の中の変化がますます激しくなっています。
気がつくと今までとまったく違う世の中になっていることもしばしばあります。
しかしそんな時代に先手を打つ方法があります。

このことを理解するには「指数関数的」の意味を理解することが必要です。
あなたは、次のいずれかの金額をもらえるとしたら、どちらを選ぶでしょうか?

(1) 毎日100万円ずつ積み立て、365日後に受け取る。
(2) 1万円を毎日3%ずつ増やして、365日後に受け取る。

(1)は、30日後は3000万円になり、365日後に3億6500万円です。
(2)は、30日後は2万4272円ですが、365日後は4億8482万円です。

このように指数関数の本質は「最初は小さくても時間が経つと爆発的に増えること」です。
現代の変化は指数関数的になっています。最初は小さな変化にはなかなか気がつきませんが、ふと気がつくと世の中の変化が急激に起こっているように感じてしまいます。

たとえばITの世界では集積回路の素子数が2年毎に倍増するという「ムーアの法則」があります。
コンピューターの心臓部である集積回路の演算能力は、素子数で決まります。
私がIBMに入社した1984年、最上位の大型コンピュータ(IBM 3084モデルQ)は20億円でした。
今はそのマシンよりも高性能のスマホが実質0円です。
コンピュータの演算コストは指数関数的に下がり、ほぼゼロになりました。

現代では同じようなことが様々な分野で起こっています。一例を挙げると、再生可能エネルギーです。
太陽電池の価格は1977年に1ワット当たり76ドルでした。2015年は30セント。200分の1です。
風力発電の風力タービンの生産性は過去25年間で100倍に増え、性能も10倍以上に伸び、コストは大幅に下がりました。
再生可能エネルギーのコストが指数関数的に下がり続けた結果、エネルギー全体の中で締める再生可能エレルギーの比率は、まだ比率は少ないものの2000年以降急増しています。

私たちはモノゴトを直線的に考えるので、この指数関数の概念がなかなか理解できません。

しかし指数関数の世界が教えてくれることは、未来は現在の直線上にはないということです。
未来は、指数関数的な延長線上の先にあります。
グラフの縦の目盛を10, 20, 30, 40と考えるのではなく、1, 10, 100, 1000, 10000と考える必要があるということです。ちなみにこのようなグラフ(図の右側)を片対数グラフといいます。

そして指数関数的な変化が起こり始めている小さな兆しを見つけて、タイミングを見極めて先手を打つことで、大きく成功する可能性があります。

 

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Zoom朝活永井塾 第43回「バイロン・シャープのブランド論」を行いました

9月2日は、第43回の朝活・永井塾でした。今回もZoomでした。全国からのご参加をいただき、有り難うございます。

テーマは「バイロン・シャープのブランド論」でした。

オーストラリアのマーケティング学者・バイロン・シャープは、次のように主張しています。

「『マスマーケティングは終わった』というコトラーは、大間違いだ。むしろマスマーケティングはますます大事である」
「『既存顧客を大切にすべき』というライクヘルドの顧客ロイヤルティの考え方は、大間違いだ。必要なのは新規顧客獲得である」
「注目すべきはブランド愛好者ではない。ブランドに興味がない人である」
「差別化を追うのは大間違いだ。差別化は不要。独自性を追うべきである」

現代のマーケティングの考え方をひっくり返す主張ですが、荒唐無稽なことを言っているわけではありません。
アレンバーグ・バス研究所のマーケティング・サイエンス・ディレクターを務めるバイロン・シャープは、同研究所における50年以上の緻密な調査実績を元に主張しています。彼自身も論文を各種学会誌に100本以上寄稿しています。

さらにバイロン・シャープの考え方は、ユニバーサルスタジオジャパン(USJ)V字回復の立役者である森岡毅さんが提唱する「数学マーケティング」の考え方の元にもなっています。

そこで今回の朝活永井塾では下記をテキストに、彼の理論を考えていきました。

「ブランディングの科学」(バイロン・シャープ著)
「確率思考の戦略論」(森岡毅・今西聖貴著)

ご参加下さった皆様、有り難うございました。

【プレゼン部分(プライバシー保護のため永井以外はお顔をボカしています)】

 

 

【質疑応答部分(プライバシー保護のため永井以外はお顔をボカしています)】

またリアルタイムに参加できなかった方々には動画配信をお送りしました。

次回の朝活勉強会「永井塾」は10月7日(水)。
テーマは「両利きの経営」です。申込みはこちらからどうぞ。

熱狂顧客よりも、ライトユーザー

私たちはこう考えがちです。

「注目すべきは熱狂的な顧客だ。たとえばハーレーにはハーレーの刺青をしたり、アップルには新製品が出るたびに徹夜で行列する熱狂的な顧客がいる。そんな熱狂的な顧客を生み出すことを目指すべきだ」

しかしこの考え方は「大間違いだ」という人がいます。それがバイロン・シャープです。
南オーストラリア大学の教授であり、同大学のアレンバーグ・バス研究所のマーケティングサイエンスディレクター。
100本を超える学術論文を発表しています。

彼は豊富なデータをもとに、従来のマーケティングの常識を次々と覆しています。
この熱狂的顧客のテーマについては、彼の「ブランディングの科学」という本で紹介されています。
この本に書いていないデータも補足しつつ、ご紹介します。

まずハーレー。1995年に米国の”American RIDERS”という雑誌で「バイク乗りの真実」というハーレーのオーナーを分析した特集があります。この記事ではハーレーのオーナーを6つに分類しています。

ハーレー命で典型的な熱狂的ハーレーユーザーは“Hard core”と呼ばれる顧客グループです。彼らは全体の9.7%を占めます。低所得で酒を愛し、乗車時にヘルメットなどはせず、収入のほとんどをハーレーの部品に注ぎます。しかしハーレー全体の売上の3.5%しか貢献していません。

大型バイク愛好家は“Hog Heaven”と呼ばれる顧客グループです。彼らは全体の8.7%を占めます。比較的高収入でハーレー全体の売上の9.4%を占めますが、そんなに頻繁にハーレーに乗りません。

全体の39.8%と一番大きな比率を占めるのが“Dream Riders”と呼ばれる「取りあえずハーレー買ってみた客」です。高学歴・高収入で、キチンとヘルメットをかぶり、近所でハーレーを乗り回します。売上の47.7%と半数近くを占めますが、ハーレーへの満足度は低いままです。

つまり熱狂的なハーレー顧客は売上のうちのごく一部。全体の半数があまりハーレーに乗らないライトユーザーなのです。

では、アップルはどうでしょうか? やや古いデータですが、2002〜2003年に米国でパソコンの再購入率を調べたデータがあります。

デル 71%、アップル 55%、HP/コンパック 52%

実はシェアが高いほど再購入率は高くなります。アップルは低いシェアを考えると再購入率は高く健闘していますが、これは他社パソコンと非互換なことで説明できます。熱狂的顧客の影響は見られません。実際、ほとんどのアップルユーザーがMacでやりたいことは、メールや書類作成など。Windowsパソコンと比べて大きな違いはありません。

 

現実には、あのハーレーもアップルも、熱狂的ユーザーは少数派なのです。かく言う私はアップルしか買わない熱狂的ユーザーですが、私は少数派なのですね。

ですのでビジネス的に考えると、最重要なのは熱狂的ユーザーではなく、ブランドのことをあまり深く考えずに売上に大きく貢献するライトユーザーです。

この考え方に基づくと、マーケティング施策も大きく変わります。

マーケティングの常識は、常に変わっていきます。
ひたすら勉強あるのみです。

 

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