永井孝尚ブログ

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どうすれば高い価格で売れる?

価格戦略の本をご紹介すると、企業のマネージャー、特に営業部長さんたちからこんな質問をいただきます。

「なるほど価格の本ですかぁ。いつも値引き要求ばかりで悩んでいるんですよね。
高い価格で売るためには、どうすればいいんでしょうね」

半分ため息をつきながら、こうおっしゃいます。
そんな時、このようにお答えします。

「まずは、お客様からのご依頼を断れる状況を作ることが、大事だと思いますけど」

安売りせざるを得ない状況は、二通りに考えられます。

1.本当は高く売れるのに、安くしている(実は高付加価値
2.本当に安くしか売れないので、安くしている(実際には低付加価値

お客様からのご依頼を断れるようになると、どうなるでしょうか?

1.の場合、お客様は「困るので提案して欲しい」と依頼してきます。実は安くしすぎなのです。(中には相見積もりの当て馬としてお客様が依頼する場合もありますが、そのような駆け引きはここでは除外して考えます)

2.の場合、お客様は「あ、そう。じゃあ、他社に頼む」となります。この状況を続けている限り、絶対に高く売れません。
お客さんから見て低い価値しか提供していないのに、高く売るのは不可能です。他社の真似をしたり、お客様の課題を把握しないまま製品中心で考えていると、こうなりがちです。

2.の状況に陥っている場合、高い価値を作り上げることが必要です。お客様の課題を考え抜き、自社しか提供できない高い価値を作り上げた上で、お客様が「高いけど、さすがだ」という値ごろ感ある価格をつけるべきなのです。

現実のビジネスの現場では、お付き合いが深いお客様に面と向かって断ると色々と差し障りがあります。とはいえ、「まずはお客様からのご依頼を断れる状況を作る」ことが、高い価格を付けるための第一歩なのです。

 

 

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朝活勉強会「永井塾」第21回「なんで、その価格で売れちゃうの?」を行いました

昨日11月14日(水)、第21回朝活勉強会「永井塾」を行いました。

テーマは「なんで、その価格で売れちゃうの?」

価格戦略は大切ですが、意外と知られていません。特に現代の価格戦略で重要なのは、マーケティング理論だけでなく、行動経済学です。

人は意外と合理的に考えないで行動します。この不合理な行動を理解する上で役立つのが行動経済学なのです。

そこで今回は、11月16日発売の同名の新著から抜粋してお話しし、質疑応答を行いました。

今回も多くの方々にご参加をいただきました。有り難うございました。

次回の朝活勉強会「永井塾」は12月15日(水)。「リーダーシップ、変革、そして企業文化を考える」というテーマで行います。

詳しくはメルマガでご案内していますので、参加希望の方はメルマガにご登録下さい。ご参加をお待ちしております。

低迷したスタバは、「らしさ」を考え抜き、成長している

スターバックスはお洒落で居心地のよいカフェですね。

しかし10年ほど前に、ちょっと感じが変わった時期がありました。ちょうど東京ミッドタウンが出来た頃の時期です。当時、私もスタバに失望することが増えました。味も落ち、狭い店内で肩をすぼめて座らされたりして、居心地がいい空間でなくなったのです。次第にスタバから足が遠のいていました。

実はこれは世界的な現象だったのです。
何が起こっていたのか?この時期に創業者として復帰したハワード・シュルツが書いた「スターバックス再生物語」に、そのことが書かれています。

スタバを創業したシュルツは、2000年まで15年間をかけて成長させ、CEOを退任し会長職に専任していました。

その後もスタバは成長を続けました。10年間で全世界で1000店舗から13000店舗に急拡大しました。

しかし成長の代償が出てきたのが、2007年頃だったのです。

急成長するために、店舗デザインは簡素化され、バリスタは訓練不十分なまま客にコーヒーを淹れるようになり、中には作り置きを出す店もあり、さらに効率化のためにコーヒーの粉を袋詰めして店に出荷するようにしたために、店舗からコーヒー豆を挽く重厚で豊かな香りが失われていました。

成長と効率第一主義で、スタバは自ら「スタバ体験」をコモディティ化したのです。

図のように、2007年には急成長の代償が表面化し、顧客離れが顕著になり、利益も落ち始めました。

CEOに復帰したシュルツは、迅速に手を打ち、現状を改善するとともに、抜本的な変革も行いました。そのベースになったのは「スタバらしさとは何か?」を全従業員で考え続け、原点回帰しつつ、未来志向で新しいスタバを作ることでした。

規律のない成長を戦略としてしまったために低迷したスタバは、徹底的に「らしさ」を極め、その後は再び成長しています。

スタバは居心地のよい空間を取り戻し、いまは再び多くのお客さんが来店しています。

企業には、企業ならではの「らしさ」「強み」があります。
「自社らしさとはなにか?」を常に考えることが大切なのです。

一方で、ちょっと気になるのが最近の既存店売上成長率の低下。10年前の2007年の状況に似てきました。飲食業界では「10年間」というのは一つのキーワードのようで、マクドナルドも10年毎に危機に見舞われてきました。
今後が注目されます。

 

 

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商品を大ヒットさせ、すべてを失った代理店の話

その販売代理店は、海外メーカーの家電商品に目を付け、日本国内で大ヒットさせました。この商品は日本で大きな話題になり、一大市場を創り上げました。

その後、その海外メーカーは日本に子会社を作ることになりました。
販売代理店からは、多数の熟練セールスが好条件で新子会社に引き抜かれてしまいました。

そして販売代理店契約が切れたため、販売代理店は自らが育てた大ヒット商品を販売できなくなってしまいました。

販売代理店は「一から出直しだ」と気を取り直し、再び海外でまだ誰も気づかないヒット商品の種を見つけて、日本に紹介して販売をしています。

しかし基本的な取り組み方法はまったく変えていません。

 

何かこの販売代理店の問題か、わかりますでしょうか?

ビジネスというゲームで勝負の勝敗を決めるのは、「付加価値」です。
この付加価値を左右するのは「希少性」です。

海外メーカーは「商品力」という希少性を持っていました。販売代理店はその希少性に目を付けて、日本国内に紹介して販売し、大成功させました。

しかしこの販売代理店も、実は「希少性」を持っています。
「日本市場を熟知し、新商品を発掘してヒットさせる」という類い希なる能力です。

新商品をヒットさせたのも、この希少な能力を発揮したおかげです。
一方でゲームで勝ち続けるためには、この希少性を活かした戦略が必要です。

海外メーカーから見ると、新商品販売開始の時点で、この販売代理店は大きな付加価値(=希少性)を持っていました。

販売代理店が海外メーカーの視点でゲーム全体を俯瞰できれば、たとえば最初の段階で「日本の販売子会社を共同出資して作り、一緒に販売しましょう」と交渉して、新商品が成功した際の成果を分け合う戦略を取ることで、自社の希少性をより活かせた可能性があります。

ちなみにスターバックスコーヒージャパンは、当初はスターバックスとサザビーが50%ずつ出資して始まりました。

この販売代理店は、ビジネスというゲームを俯瞰する視点がないために、「新商品をヒットさせる」という自社の希少な能力が活かせていないのです。そして同じパターンを繰り返しているようにも見えます。

相手から見た自社の希少性を把握していないために、このように希少性を活かせない企業が多いように思います。

「卑怯じゃないか!倫理的ではない」
「極めて浅い考え方だ。ビジネスは信頼関係だ」

…と反発する人もいるかもしれません。

しかししたたかに考え抜き交渉上手な海外企業から見ると、このような企業は「将棋のルールを知らず将棋を指している素人」に見えるのかもしれません。これが現実でもあります。

もちろん、必ずしも相手の真似をする必要はありません。
しかし、相手の手の内を学ぶことも必要だと思います。

 

 

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考えに考え抜いた企画。こだわるべきか?

 

考えに考え抜いて、立てた企画。自分としては自信作です。
さてこの企画、たとえ他の人から異論が出たとしても、徹底的にこだわり続けるべきなのでしょうか?

「自分の企画には頑固にこだわる」のは一見正しいように見えますが、必ずしもそうではないのです。

「戦略の戦略家」として世界的にも著名なリチャード・ルメルトは、著書「良い戦略、悪い戦略」で、このように述べています。

「良い戦略」のためには、最初の案は徹底的に破壊すること

多くの人は、最初に考えた案に固執してしまいます。
しかし最初の案で戦略を立ててしまうのは、「悪い戦略」の典型です。

最初の案に対して、事実を確かめて徹底的に見直し、弱点をあぶり出し、矛盾点を見つけて破壊することで、「良い戦略」が生まれてくるのです。戦略立案には「朝令暮改」が必要なのです。

自分の頭で考えた企画は、「自分の頭」という狭い世界で考えたものです。
それをより広い現実の世界で検証し、新たな発見を元に柔軟に修正し続けることで、「良い戦略」に育っていくのです。

 

 

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