永井孝尚ブログ

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10〜20年前に学んだマーケティングの多くは、既に古い


「マーケティングを20年以上やっている」という人、多いのではないでしょうか? かくいう私もそんな一人です。

しかし10〜20年前のマーケティングの常識は、現代では古くなっているものが少なくありません。たとえば、多くのマーケターの常識は…

・顧客ターゲットを絞り込め。マスマーケティングは大量生産大量販売時代の遺物。
・ご贔屓の得意客を大切にして、顧客生涯価値を最大化せよ。
・マーケティングはSTP+4Pで考えろ。

しかしこの通りにしても上手くいかない経験をしている人も多いと思います。

たとえば顧客ターゲットを絞り込んで「全然売れない」…よくありがちですよね。これは知らない間に大きな機会損失をしているのです。むしろ商品やサービスの性格をカッチリと決め、目立たせた上で、顧客に併せてきめ細かくカスタマイズして「いつでも誰にでも販売します」という戦略の方が成功します。(これは11月10日の当ブログでも書きました)

また行きつけの店があっても、もっといい店が出来れば店を変える人は多いと思います。お客様も同じです。「むしろ非顧客層やライトユーザーを含む幅広い顧客にアプローチすることで、成功確率は高まる」という考え方も生まれています。

また、今一番マーケティングでホットなのはサービスマーケティングです。実はこの分野は米国も追いついておらず、北欧が一番進んでいます。このサービスマーケティングでは、マーケティングミックスを4Pでなく8Pで考えます。

またコトラーが提唱するマーケティング3.0では、いまやSTP+4Pだけで考えても消費者は買わない時代なので、社会課題を考えようとします。SDGsやCSVもこの流れにあります。

時代がもの凄い勢いで変わっているので、マーケティングも進化し続けています。結果、ほんの10年でマーケティングの考え方も陳腐化します。ちなみにコトラーは来年「マーケティング5.0」という本を出すそうです。コトラー先生、速過ぎ…。

ただし現行理論は必ずしも完全に否定されません。
多くの場合は、現行理論は新理論に吸収されていきます。
世の中は弁証法的な議論を通じて、進化を続けているのです。

だから現状に安住せずに、最新理論を常に学び続けて活用すれば、半歩先んじて勝てるようになります。

これはこれから新たにマーケティングを学ぶ人にとっては、むしろ大きなチャンスだと思います。

逆に考えると、影響力が大きいマーケティングのベテランほど最新理論を学ぶ必要があるのかもしれませんね。


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「はじめに」を書くのは最初?最後?

ビジネス書編集者でこうおっしゃる方が、意外とおられるようです。

「まず企画段階で、著者に『はじめに』を書いてもらいます」

うう…。私は真っ先に落とされそうです…。
というのは、私が『はじめに』を書くのはいつも最後の最後なので。

今月出版した「MBAマーケティング必読書50冊」もそうでした。 「はじめに」を書いたのは、50冊分の紹介を全て書き終え、「おわりに」も書き終えた後。 しかも何回も書き直しました。

今回の「はじめに」は合計4ページ。
後半2ページは2〜3回の書き直しでほぼ固まりました。
大変だったのが、最初の2ページ。ゼロから書き直すこと5〜6回。それでも決まらず、バージョンを2つに絞り込み編集者と何回も打ち合わせ。

「ヤバイ。決まらない。見切り発車か?」

…なんて考えも頭をよぎりつつ、また書き直し。

最後の文章は、第三校の校了時(3回目の校正を完了して、印刷機を回す直前)に決まりました。 快く「納得いくまで時間をかけてください」とおっしゃっていただいた編集の皆様には深く感謝です。

なぜこんなに「はじめに」で時間をかけるかというと、ビジネス書の場合、「はじめに」の出来次第で売れ行きが大きく左右されるからです。

書店で観察していると、店内をブラブラと歩くお客さんはこんな感じで本を選んでいます。

①面白そうな本を見つけて、手に取る→表紙やタイトルで判断
②パラパラとめくり「本の感じ」を見る→面白そうか否か、印象で判断
③「はじめに」にサーッと目を通す→著者と自分との相性を判断
④最初の十数ページにサーッと目を通す→本当に読み通せるか、面白いかを判断
⑤納得すると、レジに持っていく→ここでお買い上げ

つまり「はじめに」で本のエッセンスを訴求しないと③の試験をパスできず、落第(=買われない)です。

難しいのは、当たり前のことを書いてもスルーされると言うこと。

「マーケティングは重要です。皆さん学びましょう」

「はじめに」にこんなことを書いても、「当たり前だろ。おととい来やがれ」と言われるのがオチです。(もちろん皆さんは、こんな下品な言葉は絶対に口に出しませんが(笑))

ではどうするか?
「単純明快、意外性があり、具体的で、信頼でき、感情に訴求する物語」をわかりやすく訴求することが必要なのです。

ですのでいつも全てを書き上げた後に、本の内容を踏まえ、四苦八苦しながら「はじめに」を書き上げます。

今月出版した「MBAマーケティング必読書50冊」の「はじめに」も、そうして書き上げました。

果たして、狙い通りになったでしょうか?
発売から10日が過ぎて、読者の皆様からの声をドキドキしながら待っている所です。

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「デジタルって何?」というDX先進企業ニトリの似鳥会長

先週は、毎年参加している世界経営者会議でした。
世界のトップ企業の経営者が何を考えているか、生の声で聞くことができる貴重な場です。

ニトリの似鳥昭雄会長が登壇した時のこと。今回は2部構成でした。

第1部は、一橋大学の楠木健先生との対談。
ニトリはコロナ禍でも成長を続けています。要因の1つが、製造と小売に加え物流・貿易を連携させていること。ニトリの商品は95%が海外生産で、国内に届くまで2-3ヶ月分かかります。コンテナ量は年間17万個と日本一の規模で、大型荷物ではヤマト運輸に次ぐ規模です。そこで物流センターを自社で持ち、倉庫オペレーションに投資してきました。

加えてECにも投資。ニトリのアプリユーザーは通常の2倍買うので、アプリの年内目標は700万ユーザー、将来的にアプリ売上1000億円を目指しています。アプリユーザーの7-8割は店とアプリを使い分けています。

ニトリはこのように生産から顧客に届けるまで、デジタルで一気通貫のシステムを構築しています。まさにDXの先進企業ですね。

第2部は、日本経済新聞社 編集委員兼論説委員の中村直文さんとの対談。似鳥会長と中村さんは取材を通じて昔から既知の仲のようで、対談はリラックスした雰囲気でした。

冒頭、中村さんが『視聴者から「DX移行で一番大切なことは何ですか?」という質問が来ていますが…?』と似鳥会長に尋ねたときのこと。

なんと似鳥会長はこう答えました。

『DX?なにそれ?「デジタルなんとか」って、横文字言葉は難しくてよくわからないんだよ』

そしてこう続けました。

『よくわからないけど、お客様にとって何が大切なのかを考えることですよ。自分の立場に居続けると、お客様の立場で考えるのは難しいですね』

お話しを聞いていて、まさに「我が意を得たり」と思いました。

まさに昨今のDX狂想曲の中で見失われているDXの本質を見たからです。(ちなみにDXとは「デジタル・トランスフォーメーション」の略です。世の中では色々な形で定義されていますが、要は「テクノロジーを使って企業の経営のあり方を根底から変化させること」という意味です)

あたかもDXを魔法のように祭り上げる風潮に、私は危うさを感じていました。

DXはあくまでも手段です。

本来必要なことは、お客様にどんな価値を提供すべきなのかを徹底的に考え抜くこと。
そのための手段として、デジタル化が最も優れた手段ならば、活用する。
最初に考えるべきはDXではなく、「お客様にどんな価値をどのように提供すべきか」だと思います。

「デジタルなんとかって、よくわからないだよ」という似鳥会長こそが、DXの本質を掴んでおられると思った次第です。

 

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マーケティング理論は、進化し続けていく

今週「MBAマーケティング必読書50冊を1冊にまとめてみた」を出版しますが、執筆して身に染みて実感したのは、マーケティング理論が常に進化し続けていると言うことです。

たとえばマーケティングの世界では、かつてマスマーケティングが王道でした。

しかし消費者が洗練されてくるとマスマーケティングは廃れ、「顧客を絞り込め」と言われるようになり、ターゲットマーケティングが主流になっていきました。

現代ではこれがさらに見直され、マスマーケティングに回帰しつつあります。しかしかつてのマスマーケティングからは一段進化しているのです。

元々ターゲットマーケティングの発想は、こうでした。

マス市場は、単一のマーケティングミックス(4P)を展開するマスマーケティングでは攻略できない。
だからマス市場は狙わず、顧客を絞り込む。

しかし現代のマスマーケティングは、こう考えます。

マス市場を、きめ細やかなマーケティングミックス(4P)を駆使したマスマーケティングにより攻略していく。

たとえばUSJはかつて「映画のテーマパーク」というポジショニングでしたが、ファン層は大人の独身女性が中心でした。ターゲット顧客を絞り込み過ぎて集客は伸びず、低迷していました。

そこでポジショニングを「世界最高のエンターテイメントを集めたセレクトショップ」に変え、逆向きジェットコースターでスリルシーカーを集客、さらにファミリー客、ハロウィーン客、加えてハリーポッター、マリオ、ポケモン、ワンピースなどで多くの顧客を集め、復活しました。

このように現代のマスマーケティングは、

・細やかな商品・サービス
・細やかなチャネル
・細やかな販促
・細やかなプライシング

つまりターゲッティングは塩味のようにほんの少しに留め、「いつでも誰にでも販売」という戦略を展開しています。あえて顧客は絞り込まず、マスの様々な顧客にあの手この手で働きかけていくのです。

 

世界は変化し続けているので、このようにマーケティング理論も進化し続けています。

勝負は多くの場合、ほんの半歩の差で決まります。
新たな理論を知り活用できれば、敵に半歩先んじることができ、10回戦って9回勝てるようになります。
最新マーケティング理論を学び使えるようにする意味は、ここにあると思います。

「不易と流行」という言葉がありますが、「MBAマーケティング必読書50冊を1冊にまとめてみた」では、昔から変わらない定番書ともいえる「不易」と、新たな時代にあわせて登場した最新理論の「流行」が学べるマーケティング良書50冊を厳選しました。

本書はこの方針に沿ってわかりやすく仕事で活用できるようにするために、昨年11月から書き始めて、完成まで丸1年間かかりました。
ぜひ多くの方々に役立てて欲しいと願っています。

 

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Zoom朝活永井塾 第45回「バイロン・シャープのブランド論2」を行いました

11月4日は、第45回の朝活・永井塾でした。今回もZoomでした。全国からのご参加をいただき、有り難うございます。

テーマは「バイロン・シャープのブランド論2」でした。

私たちは「『このブランドと言えば、■■■』と思ってもらえるような強いブランディングを作るべきだ」と思いがちです。

しかし「売れるチャンスが狭まるので、それは大間違い。むしろより多くの場面でブランドが想い出される状況を作り出すべきだ」と反論するのが、バイロン・シャープです。

ターゲットマーケティングも同様です。私たちは「市場の特定部分に狙いを絞り込もう」と考えがちです。しかしバイロン・シャープは「不用意に顧客ターゲットを狭めるのは、売れる可能性がある市場を必要以上に切り捨てているだけ」と反論します。

マーケティングは、常に進化しています。

新しいマーケティング理論を学ぶことで、打ち手は増えていきます。
そこで今回の朝活永井塾では、今年8月に出版された下記をテキストに、このテーマを考えていきました。

「ブランディングの科学 新市場開拓篇」(バイロン・シャープ、ジェニー・ロマニウク著)

ご参加下さった皆様、有り難うございました。

【プレゼン部分】

 

またリアルタイムに参加できなかった方々には動画配信をお送りしました。

次回の朝活勉強会「永井塾」は12月2日(水)。
テーマは「オープン・イノベーション」です。申込みはこちらからどうぞ。

2020-11-09 | カテゴリー : nagaijuku | 投稿者 : takahisanagaicom