永井孝尚ブログ

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30年ぶりのアサヒ新スーパードライ号

アサヒスーパードライ発売は、日本が元気だったバブル期前夜の1987年。この時期、アサヒビールは販促の一環で、全国で飛行船「スーパードライ号」を飛ばしました。

当時、空を見上げると、銀色のボディに「スーパードライ」と書かれた飛行船が青い大空に浮かんでいました。40代以降の方は、当時のことを覚えておられる方も多いのではないでしょうか?

この頃、私は東京湾岸の写真撮影に凝っていました。1993年頃、早朝の横浜の大黒ふ頭に停泊しているスーパードライ号を撮影したのが、この写真です。

なかなか存在感があります。

そんなアサヒですが、このたびスーパードライをフルリニューアル。味も変えました。その販促の一環で、日本列島の空に新スーパードライ号を飛ばしています。

「空を見上げようよ!」

というメッセージは、新型コロナで家に籠もりがちだったり、戦争などの暗い話題が多い中、分かりやすいですね。反響も大きいようです。

一方でヒット商品の味を変えるのは、鬼門です。

■1996年、キリンは主力商品ラガービールを生化しました。

当時、キリンは新商品「一番搾り生ビール」がヒットしていましたが、スーパードライが「生売上No.1」を訴求して一番搾りを攻撃してきました。そこでキリンは「スーパードライの生売上No.1は阻止すべし。世の中は熱処理のラガーでなく生を求めている → よってラガーを生にしよう」と考えたようです。

しかしラガービールのファンは「オレのラガーに何してくれた」と激怒。離れてしまいました。これがきっかけで、キリンはビール業界トップシェアの座をアサヒに譲り渡しました。

■1980年代、コカ・コーラも味を変えてニュー・コークを発売しました。

当時、ライバルのペプシが「ペプシチャレンジ」という目隠しテストキャンペーンで、消費者がコークでなくペプシを選んでいる様子をCMで大量に流し、コカ・コーラのシェアを奪い続けていました。

コカ・コーラは「だったら、ペプシよりも美味しくしよう」と素直に考え、消費者テストを重ねて、より美味しいニュー・コークを発売したわけです。

しかしコークファンは「オレのコークに何をする!」と大反発。不買運動にまで発展してしまいました。

そこでコカ・コーラは半年後に誤りを率直に認め、ニューコークを撤回し、オリジナルのコークを「クラシックコーク」という名前で発売しました。これでコークファンが一気に戻り、コカコーラは業績を拡大しました。

では、なぜブランドリニューアルは鬼門なのか?

消費者のブランド認知は、消費者の脳内にあります。ヒット商品ほど、このブランド認知は消費者の脳内に強くこびりついています。

「ブランドは企業の所有物」と勘違いするビジネスパーソンが多いのですが、ブランド認知は消費者の脳内にあるわけですから、ブランドの所有者は消費者です。ですので企業が勝手にブランド認知を書き換えることは、本来はご法度なのです。

当然のことながら、マーケティング巧者のアサヒはすべて熟知した上で、スーパードライをリニューアルし、周到な手を打っているはずです。

新しいスーパードライの味は、SNSを見る限り好評のようです。当初のアサヒの狙いだった「スーパードライを知らない若い世代への訴求」は、ひとまずは順調のようです。

一方でスーパードライのコアファンは、おそらく1990年頃のアサヒ・スーパードライ号を見ていた50〜80代のシニア層でしょう。大多数の彼らは、あまりSNSをやりません。サイレントマジョリティである彼らは、どのように反応しているのでしょうか?

果たしてスーパードライの大胆なリニューアルは、吉と出るのか、凶と出るのか。

今後の動きを注目していきたいと思います。

 

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朝活永井塾 第62回『ドラッカー「現代の経営」と「経営者の条件」』を行いました

4月6日は、第62回の朝活・永井塾。テーマは『ドラッカー「現代の経営」と「経営者の条件」』でした。

最近は「ドラッカーは古い」という人もいるようです。読まない人は貴重な学びの機会を逸しているので、ちょっと残念ですね。

私はドラッカーの著書は、経営における聖書であり、論語だと思っています。

ドラッカーが1954年に刊行した著書『現代の経営』は、世界で初めてマネジメントの全体像を示した、王道中の王道と言える経営学の古典です。上下巻で550ページに及ぶ大著ですが、本書からは何冊ものドラッカーの名著が派生しています。

  • 経営戦略は、『創造する経営者』(1964年)
  • ビジネスパーソン自身のマネジメントは、『経営者の条件』(1966年)
  • ビジネスパーソンの体験的入門書は、『マネジメント』(1973年)

といった感じです。

このうち『経営者の条件』もまた、私たちビジネスパーソンが仕事をする上で、具体的なアドバイスが豊富に書かれています。ドラッカーの著書は、いつになっても古くならない不思議な本なのです。 

そこで今回の朝活永井塾では、下記をテキストにして、ドラッカーの考え方を学んでいきました。

『現代の経営』(ピーター・ドラッカー著)
『経営者の条件』(ピーター・ドラッカー著) 

ご参加下さった皆様、有り難うございました。

【プレゼン部分】

またリアルタイムに参加できなかった方々には動画配信をお送りしました。

実はそんなドラッカーに大きな影響を与えたのが、アブラハム・マズロー。そこで次回5月11日(水)の朝活勉強会「永井塾」で、『意外と知らないマズロー「完全なる経営」』がテーマです。申込みはこちらからどうぞ。

2022-04-11 | カテゴリー : nagaijuku | 投稿者 : takahisanagaicom

「仮説思考」で、企画の速度が一ケタ上がる

いまから15年前、私はある1冊の本に衝撃を受けました。その後、その本は私のビジネスマンとしてのパフォーマンスを大きく向上させ、人生を変えるきっかけを与えてくれました。

その本は、これです。

 内田和成著『仮説思考』

本書は2006年に出版されベストセラーになりました。

特に衝撃を受けたのは、次の点です。

■「問題の答えを先に決めつけてしまえ」

私は「まず情報を網羅的に集めて分析した上で解決策を考え、最後に答えを出すべきだ」と考えていました。「最初に答えを決めつける」という発想はそれまで全くありませんでした。

■「決めた答えに必要な部品を集めていけばいい。網羅的に100をやらず、もっともらしい2、3をやる」

答えを決めてから、その検証をするということですね。

■「仮説思考は繰り返せば繰り返すほど経験がものをいうし、精度も上がる」

要は「仮説思考とは、慣れ」ということです。

ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)の日本代表だった内田和成先生は、BCGの戦略コンサルタント達が活用している方法論を本書にまとめたそうです。

その後、この方法を実践した私は、大きく変わりました。

■企画の速度 →1ケタ向上しました。
■企画の品質 →1レベルアップしました。
■インパクト 残業なしで、勤務の傍らで執筆、合唱団運営、毎日ブログ執筆などができるようになりました。

2013年に会社を辞めて独立できたのも、このおかげです。

たいていの問題は、ビジネススピードがあれば解決できます。
そして仮説思考を身に付けると、ビジネススピードは格段にアップします。
結果、仮説思考力でビジネス力が大きくアップします。

ビジネスで必要なのは「問題発見力」と「問題解決力」です。
このうち、日本人は「問題解決力」は超一流ですが、「問題発見」は苦手です。
これはスキルの問題。
仮説思考で、問題発見力を身に付けることができるのです。

ということで、本書は昨年11月に出版した拙著『世界の起業家が学んでいるMBA経営理論の必読書50冊を1冊にまとめてみた』でも紹介させていただきました。

「そうか。仮説思考、ちょっと興味あるなぁ」

という方は、ぜひ本書『仮説検証』をお読みになることを強くオススメします。

 

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「マーケティングなんぞ、やらん」という社長


こんなご相談をいただきました。

「社長に『ウチもマーケティングやりましょうよ』と提案したら、烈火のごとく怒り始めたんですよ。『ウチはそんなものはやらんぞ!』というんです。どうしたもんでしょうか?」

実は、こんな人は少なくありません。

そもそも一言で「マーケティング」といいますが、人によって捉え方は様々です。

「マーケティングって、要は販売促進でしょ」
「広告や宣伝がマーケティングだよね」
「マーケティング、日々やってますよ。ボク、セールスですから」
「市場調査のことだよね」

残念ながら、これはみな大きな勘違いです。

ひらたく言うと、マーケティングとは新たな価値を創り出し、その価値を相手に伝えて、価値を届ける方法です。

販促、広告・宣伝、セールス、市場調査、ブランディングなどは、マーケティング活動の一環です。

ちなみに日本マーケティング協会は1990年にこのように定義しています。

「マーケティングとは、企業および他の組織がグローバルな視野に立ち、顧客との相互理解を得ながら、公正な競争を通じて行う市場創造のための総合的活動である。」

しかし現実にはマーケティングを正しく理解している人は、世の中にはあまりいません。

この社長さんは、恐らく次のように思っている可能性大です。

「マーケティングなんて、要は安いもののブランドイメージを高めて、高い値段で騙して売る方法だ」

確かにこう思っていたら「ウチはそんなものはやらんぞ!」ってなりますよね。でもマーケティングの考えって抽象的なので、なかなか説明してもわかってもらえないもの。なかなか悩ましいですよね。

そこでこんな人に会った時にオススメの方法があります。「マーケティング」という言葉を使わずに、マーケティングの概念を考えながら対話をするのです。こんな感じです。

「そもそも社長って、どんなお客さんの問題を解決しようと思っているんですか?」
「そりゃ、○○○で困っているお客さんだよ。この会社を始めたのも、A社さんがこの問題で困っていたのがきっかけなんだ」
「なるほど、その問題って、ウチの会社でどうやれば解決できるんですか」
「前から取り組んでいた技術があってね。これを使えば△△△できるんだよね」
「いいですね。ではそのお客さんって、この世の中にどのくらいいますかね?」
「オレの感覚ではものすごく多いよ。A社さん以外にも、業界で最低1000社くらいいるんじゃないかな? みんな困っているんだよな」
「どのくらいの効果が出るものなんですか?」
「かなりコスト削減できるんだ。生産コストを1割下げて、生産時間も2割短縮できるね」
「すごいですね。どの位で売れるものなんでしょうか?」
「そうだなぁ。生産コスト削減分の2〜3割程度の価格だったら売れるから、300万円くらいかな」
「案件1件あたり300万円で、最低1000社ですから、30億円くらいの市場規模ってことですね。じゃぁ、そのお客さんにどのようにすれば知ってもらえますかね」
「そうだな。お客さんの社長がよく読んでいる業界紙があるんだ。これで取り上げもらえば、お客さんに知ってもらえると思うな。業界初の商品だから、きっと記者さんも興味があると思うんだ」
「じゃぁ、その業界紙に連絡を取って、取材してもらいましょうよ。私の知り合い経由で頼んでみますよ」
「お! いいね。そうしよう」

かなり端折って書いていますが、こんな感じで社長と会話を続けて、実際に仕事を進めることで、マーケティングの考え方が社内で根付いていきます。成果が出始めたら…

「ところで社長、このやり方を、世の中ではマーケティングって言うらしいですよ」

と言えば、社長も、

「へぇ。オレがいつもやっているやり方が、マーケティングっていうのか」

と思ってくれるかもしれません。

ちなみに先日、獺祭で有名な旭酒造の桜井会長と永井経営塾ゲストライブで対談した時も、桜井会長は「ウチはマーケティング、やらないんですよ」とおっしゃっていましたが、実に自然にマーケティングをやっておられる最強のマーケターでした。マーケティングという言葉を使わなくても、出来る方は当たり前にやっておられるのですね。
→詳細は『本気でお客様を考えれば、自ずから最強のマーケティングになる』

 

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PRは、広告ではありません

「あ、PRね。広告のことでしょ。でもウチは宣伝しないんだよね」

マーケティングの仕事をしている方でも、こんなことを言う人がいます。

これは大きな勘違い。PRと広告は、全く違います。
「正反対」と言っても過言ではありません。
しかし意外と多くの方が、このことをご存じないようです。

PRはパブリック・リレーション(public relation)の略です。
ひらたく言えば「広報活動」のことです。(実際にはより広い概念ですが)

よく新製品発表などで、記者やメディア関係者を集めて製品説明会を行いますよね。
そして記者たちは新聞・雑誌・Web記事などでその様子を記事にします。
テレビのニュースで流れることもあります。
これは典型的なPRの活動です。

広告とPRを比較すると、こんな違いがあります。

        【広告】   【PR】
伝達手段    広告枠    メディア、SNS
メディア支払い 有り     無料
発信者     企業     メディアや消費者
企業による管理 100%管理可能 全く管理不可
代理店     広告代理店  PR会社
メディア担当者 広告部    記者・編集者
信頼度     低い     比較的高い

このように説明すると、「お。PRって無料なんだな。つまり無料の広告ってことだね。わかった」という人がいたりするのですが、これは大きな勘違いです。

広告とは違って、PRはどんな形で世の中に情報が出るかは管理できません。「まったく無反応」ということは少なくありませんし、伝え方が悪いと大きく誤解された情報が出回り、現場が苦労することもあります。

「だったらメディアに出す情報を事前チェックすればいい」という方もいるのですが、これはまさに「PR=無料の広告」という勘違いです。記者やメディア担当者が客観性を持って報道することが、読者や視聴者に対する信頼感に繋がります。情報発信者に対して第三者のスタンスを維持する必要があるのです。ですのでPRでは基本的に事前チェックはできません。このようなメディアの洗礼を受けた末に世の中に出されるので、PRは信頼度が広告よりも高いのです。

なかには「おカネと手間をかけて発表会をしたのに、どこも取り上げない」と言う人もいます。

記者やメディア担当者は、読者や視聴者にとって価値がある情報を発掘しようとしています。

あなたはニュースを見ていて、「お!これ凄いゾ」と思って見入るのは、どんなニュースでしょうか?
「どこぞの大企業が新商品を発表した…」とかいうニュースは興味ないはずです。「これまでになかった商品」とか「これが欲しかったんだ」「驚いた」「世界最高」といったニュースなら、見ようとするのではないでしょうか?

記者やメディア担当者も同じです。労力をかけて取材をするのは、価値がある情報を世の中に届けたいからです。どこもニュースで取り上げてくれないのは、「ニュースバリューがない」と思われた結果なのです。

実際には、巧みなPR活動で商品を広く世の中に認知させる企業は少なくありません。

その典型がアップル。新商品が出るとこぞってメディアでは詳細を報道します。これは消費者がアップルの新商品情報を求めているからです。

「それ、アップルだからでしょ? 参考にならないよ」という方もおられるかもしれませんね。

しかし資金力に劣る小さな会社や組織だからこそ、ニュースバリューさえあれば、PR活動は実に有効です。

バルミューダの寺尾玄社長は、新商品を出す度に記者会見で商品の思いを語ります。
「子供たちの目を守りたかった。だからBALUMUDA THE LIGHTを作った」
「パンが美味しくなるなら、ご飯も美味しくなるはずだと考えた。だから18ヶ月かけて、BALUMUDA THE GOHANを作った」

鳥取県の平井知事は「ダジャレ知事」で有名です。
「鳥取にはスタバはないですけれども、日本一のスナバ(鳥取砂丘)があります」
「私たちは、カニはあるけど、カネはない。(だから知恵を出している)」

また「日本一の星空の村」として今や全国ブランドの阿智村でプロジェクトリーダーを務める松下さんとお話しした時に、100名以上が記載されているメディア関係者リストを見せていただいたことがあります。松下さんは何か星にまつわる阿智村のニュースがあるたびに、それをメディアで取り上げられやすい形に加工して、プレスリリースにしてこのメディア関係者に送っています。阿智村が「日本一の星空」ブランドを獲得したのは、こんな地道な努力を重ねた結果です。

広告とPRの違いを理解し、PR活動を地道に積み重ねることで、強いブランドが築き上げられるのです。

 

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