永井孝尚ブログ

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ダブル・ループ学習でその大前提を疑え

米国でCEOが34人参加するセミナーがありました。このセミナーに「次期CEOを約束されていたけど、『自惚れが強くて横柄だ』という理由でCEOに就任できなかった」というある会社のCOO(実はセミナー指導員が演じる仕掛け人)が登場しました。

そしてセミナー主催者は、参加した34人のCEOたちに「彼の欠点を矯正するために相談相手になって欲しい」と求めました。

CEOたちはCOOに様々なアドバイスをしましたが、COOは「抽象的なので具体的にいって欲しい」などといい、なかなかCEOたちのアドバイスを受け容れません。

色々とアドバイスを試みたCEOたちは業を煮やして口々にこういいました。
「彼は強情だね。『自分を良くしたい』っていうけど、どうも怪しいもんだ」

するとセミナー主催者がこういいました。
「皆さんは誰一人として、『私があなたを助けたいと思っています。私の助言が役立たないと思われるのはなぜでしょうか?』とは尋ねませんでしたね」

CEOたちは一同沈黙してしまいました。確かに彼らは誰一人、自分のアドバイスが相手にどんな影響を与えているかを、相談を求めるCOOに尋ねませんでした。

この話は「組織学習論の父」と称され、世界的に最も影響力がある組織行動学の大家であるクリス・アージリスが、晩年に自身の研究の集大成として刊行した「組織の罠」という本に載っている事例です。

CEOたちは「シングル・ループ思考」に陥っていたのです。
シングル・ループ学習では大前提を微塵も疑わず、その大前提のもとで決められた目標を実現しようと、繰り返し挑戦します。

34人のCEOたちも「自分の経験を活かせば彼を変えられる」と考え、あの手この手で説得を試みましたが、受け容れられませんでした。

こんな時に必要なのが「ダブル・ループ思考」です。
ダブル・ループ学習では、大前提そのものを疑います。目標や戦略があっても「そもそもこれらは本当に正しいのか」と大前提を含めて疑ってかかります。そして大前提に反する事実が出てきたら、躊躇せず大前提を変え、それにあわせて目標や戦略も変えます。

34人のCEOたちも、彼が納得しないとしたら「なぜ彼は納得しないのか。もしかしたら自分が間違っているのではないか」を考えるべきでした。しかし彼らは自分の間違いの可能性は微塵も考えず、「彼は自分を良くしたいというけど、どうも怪しいもんだ」と相手を責めたのです。

このシングル・ループ学習の問題は、至る所で起こります。

例えば「製品売上10%増」という目標が与えられ、目標達成のために何が何でも目標を達成しようとするのも、シングル・ループ思考です。一見、勝ちに徹底的にこだわるので攻撃的に見えますが、実は大前提が変わっても目標や戦略を見直さずに大前提を守り抜こうとする「防御的思考」に陥っています。

ダブル・ループ思考では「製品の売上10%増」という目標が与えられても、「まてよ。製品単体売りでは売上変動が激しい。実はもっといい方法があるんじゃないか?」というように、その大前提そのものを疑います。そしてたとえば「製品を売らずにサブスク・サービスとして提供すれば、短期的に売上が落ちるけど、長期的に安定した収益基盤を築けるのではないか?」というように考えて、製品売りから撤退して新サービスに注力したりします。このようにあえて大前提を見直す「建設的思考」で考えていきます。

このようにダブル・ループ学習に移行するには、事実に基づいて考え、謙虚に学び続けて、大前提を躊躇せずに変えることが必要なのです。

 

    

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大谷翔平に一歩近づく方法

大谷翔平の活躍が止まりません。最近6試合でも、打者としてはホームラン6本、投手として1勝。しかもメジャーリーグです。

ついに米国メディアも「彼は宇宙人に違いない」というようになりました。

確かに大谷は並外れた素質の持ち主です。並み居る大リーグ選手の中でも目立つほど恵まれた大きい身体もあります。

しかし世界は広いですよね。大リーグにも彼と同じ素質を持つ選手は多いはず。
大谷の活躍は素質だけでは説明はつきません。
そんな中で、なぜ大谷は活躍しているのでしょうか?

実は大谷は無趣味を公言し、プライベートの時間もほとんど外出しません。彼のすべての行動は、首尾一貫して「二刀流をやり抜く」ことに集中しています。

大谷の強さの根源にあるのは、月並みな言葉で言うと「努力を続ける力」。もともと恵まれた才能に加えて超人的な努力を継続することで、目の肥えた米国メディアに「宇宙人に違いない」といわれるほどの活躍を見せているのです。

このことは、私たちに勇気を与えてくれます。

私たちは「成功には才能が必要不可欠」と考えがちです。
しかし世界を大きく変えた偉人でも、必ずしも天才的な才能の持ち主とは限りません。あのニュートンの推定知能指数は130です。確かに優秀です。でも130の持ち主は人口の2%程度。あなたが高校生だった時の同級生だった、あの優等生と同レベルです。

現実の偉人は、そこそこの才能の持ち主がコツコツ努力を重ねて、世界史に残るような偉大な成果を生んだケースが多いのです。

もちろん才能は重要です。しかしその恵まれた才能も、努力がないと宝の持ち腐れ。

そして人は誰でも、自分が得意なことがあるはず。そして得意なことは、大抵は人よりもちょっとだけ才能があるものです。

先日もこんな事例を紹介しました。

極上コーヒーは障がい者の「強み」から生まれた

得意なことに集中してコツコツ努力を続け、それを10年間継続すれば、どんな人でもその道で一流といわれる人物になるはずです。

私たちも、大谷翔平に一歩でも近づきましょう。

    

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「悪い癖」をやめよう

私、お恥ずかしいことですが悪い癖があります。いつもひと言多いのです。
たとえば何か言われると、必ず「よかれ」と思って

「○○するともっといいですよ」

と必ずひと言付け加えてしまうのです。

この癖、マネジャーとしてはちょっと問題です。「■■をしたい」という部下に、「○○するといいですよ」というと、数%程度はよくなるかもしれませんが、その瞬間に部下のアイデアは私のアイデアで「汚染」されてしまい、部下のやる気は50%下がってしまうかもしれません。

コンサルティングや研修担当の仕事ならば、これはある程度は必要なスキルかもしれません。しかし参加者が「これやりたい」と前向きに考えているのに過度に干渉すると、これはこれで考え物ですよね。

「なくて七癖」といいますが、このように私達は知らぬ間に悪い癖を身につけていて、自分の行動が相手の目にどう映るかを意外と知りません。

経営幹部になるような人たちは、現場社員や中間管理職時代に最適だった仕事のやり方が、経営幹部になると悪い癖に変わってしまうことがあります。

たとえばマネージャーの中には、「自分も意見を出して自由闊達にチームで議論する」という方法で業績を伸ばしてきた人がいます。

この方法は部長レベルでは最適だったかもしれませんが、社長になると組織を停滞させる可能性もあります。
経営トップの言葉の重みは、部長の言葉よりもはるかに重いからです。
意見のつもりでアイデアを出しても、社長の口から出るとそれは瞬間に指示となり、社員は黙って言いなりになります。でも部長時代のやり方が正しいと思い込んでいる本人は、これがわかりません。「成功のパラドックス」ってヤツですね。

米国の大ベストセラー『コーチングの神様が教える「できる人」の法則』(マーシャル・ゴールドスミス著)では、この原因と対策が詳細に書かれています。

ちなみに本書では、「20の悪い癖」と各々の対策が書かれています。

①極度の負けず嫌い
②何かひとこと価値をつけ加えようとする
③善し悪しの判断をくだす。
④人を傷つける破壊的コメントをする
⑤「いや」「しかし」「でも」で文章を始める
⑥自分がいかに賢いかを話す
⑦腹を立てているときに話す
⑧否定、もしくは「うまくいくわけないよ。その理由はね」と言う
⑨情報を教えない
⑩きちんと他人を認めない
⑪他人の手柄を横どりする
⑫言い訳をする
⑬過去にしがみつく
⑭えこひいきする
⑮すまなかったという気持ちを表わさない
⑯人の話を聞かない
⑰感謝の気持ちを表わさない
⑱八つ当たりする
⑲責任回避する
⑳「私はこうなんだ」と言いすぎる

私はリストを見て、つい「うっ、ゴメンナサイ…」とつぶやいてしまいました。

「イタい。コレって自分のことですか」と思う人は多いのではないでしょうか? でも安心して下さい。ほとんどの人はどれか必ず当てはまります。

過去の成功体験は、立場が変わると「単なる迷信」に変わります。しかし多くの人は自分が迷信に囚われていることがわかりません。「このやり方のおかげで自分は成功した」と考えます。そして組織の上に行けば行くほど、この弊害が様々な面で出てしまうのです。

この本の原題(”What You Get Here Won’t Get You There”「今までのやり方では、この先うまくいきませんよ」)は、まさにこの状況を表現しています。

対策は、過去の成功してきた行動を見直すこと。試しに家族や同僚が嫌がるあなたの悪癖や行動を一つ取り上げ、自問自答してみてください。

それを続けるのは以前に何かいいことがあったからでしょうか?
その行動は現在、プラスの結果を出しているでしょうか?
もしマイナスの結果ならば、単なる迷信を正当化しているだけかもしれません。

ドラッカーはこういいました。

「私が今まで出会ったリーダーの半数は、何をすべきか学ぶ必要はない。彼ら学ぶ必要があるのは、何をやめるべきかだ」

私たちは新しいスキルを身につけようと努力しますが、自分の悪い癖はなかなか気がつかず、直そうとしません。

ある意味、単純なことです。
新しいことを始める必要はありません。
今やっていることを、やめるだけです。単純ですけど、なかなか難しいですよね。

たまには悪い癖を見直して感じがいい人になると、幸せになると思います。(…と、私も自戒をこめて反省を続けたいと思います)

   

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運のいい人と悪い人。宝くじの当選確率はどう違う?

世の中にはなぜか運がいい人と、なぜか運が悪い人がいます。

運がいい人は、幸運が次々舞い込みます。
逆に運が悪い人は、不運が次々と襲ってきます。

「なぜこんな違いが起こるんだろう?」と疑問に思ったのが、英国の心理学者リチャード・ワイズマン。ワイズマンは「運」について様々な実験をしています。

当初、彼は「運は予知能力ではないか?」と考え、運がいい人と悪い人に英国の国営宝くじの当選番号を予想してもらう実験をしてみました。

英国の国営宝くじは1〜49の異なる数字を6つ選ぶ仕組みです。実験ではこの数字を予想してもらいました。あわせて、自分が運がいい人か悪い人かを区別できる質問も入れました。この実験には700名以上の応募がありました。

では、結果は?

運のいい人も悪い人も当選率は全く同じでした。
運のいい人が、宝くじに当たるわけではなかったのです。
言い換えれば、運のいい人も、運の悪い人も、幸運を掴む確率は同じでした。

これって不思議ですよね。
実はこの実験で、この謎のヒントがありました。運のいい人は運の悪い人の2倍以上「当選する自信がある」と答えていたのです。

そこでワイズマンは「運は自信と関係があるのかも」と考え、両者の考え方や行動の違いを分析し、運のいい人の4つの法則を見つけました。

第1法則 チャンスを広げる…運のいい人は、人との関係をどんどん広げます
第2法則 直感を信じる…運のいい人は、自分の直感に従います
第3法則 幸運を期待する…運のいい人は、「今後はいいことがある」と楽観的に考えます
第4法則 不運を幸運に変える…運のいい人は、不運が起こるともっと不運な可能性を考えて不運のダメージを減らします

詳しくはリチャード・ワイズマン著「運がいい人の法則」に書いていますので、ご興味がある方はぜひご一読下さい。

前向きかつ楽観的に考えて、運がいい人になりたいですね。

  

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朝活永井塾 第52回「小売再生 リアル店舗の未来はどうなる?」を行いました

6月2日は、第52回の朝活・永井塾でした。全国からのご参加をいただき、有り難うございます。

テーマは『小売再生 リアル店舗の未来はどうなる?』でした。

いまやネットで売れないものはありません。コロナ禍で、小売全体の中に占めるネット通販(Eコマース)の割合は一気に加速しました。テスラも販売はネットに全面移行し、スマホで本を買うのと同じ感覚でテスラ車を購入できます。

こんな時代、リアル店舗はどんな未来を目指すべきなのでしょうか?

小売業界が目指すべき未来の世界を描いたのが、米国のメディアや小売業の経営者から「必読の書」と評される「小売再生 リアル店舗はメディアになる」(ダグ・スティーブンス著)です。

小売は死にません。脱皮中なのです。
ただし現在の小売業界のビジネスモデルはつくり直しになります。

そこで今回の朝活永井塾では、下記をテキストに小売業の未来について学んでいきました。

「小売再生 リアル店舗はメディアになる」(ダグ・スティーブンス著)

ご参加下さった皆様、有り難うございました。

【プレゼン部分】

またリアルタイムに参加できなかった方々には動画配信をお送りしました。

次回の朝活勉強会「永井塾」は7月7日(水)。

テーマは「デジタル時代のプライシング 意外と知らない情報経済の鉄則」です。申込みはこちらからどうぞ。

2021-06-07 | カテゴリー : nagaijuku | 投稿者 : takahisanagaicom