サブスクモデルだった火縄銃

火縄銃は、戦国時代の新兵器だ。1543年に種子島に漂着したポルトガル人が火縄銃を売った時は二丁で現在の価格に換算すると1億円。実に高価だった。その後、火縄銃は日本各地で生産されるようになった。

この火縄銃に早い時期から目を付けたのが、堺の新興商人・今井宗久だ。武器商人として、諸国大名に火縄銃を売り歩いて儲けていた。

ある日、今井宗久のもとへ部下が駆け込んできた。

「宗久様、大変ですわ。火縄銃の値下がりで、一丁10万円じゃないと売れまへんわ」

当時、火縄銃の価格は下落の一途。戦国時代中頃になると火縄銃は一丁で60万円。安いものは5万円。大量生産のおかげである。
しかし宗久はのんびりと答えた。

「そやろなぁ。いまどき火縄銃なんて誰でも作れるしな」
「…儲かりまへんがな」
「心配あらへん。ちゃんと手ぇ打っとるがな。火縄銃を使うのに必要なのは、何や?」
「…火薬ですな」
「そや。その火薬な、うちらしか売れへんねん」
「は?なんでですか?」
「火薬は、硝石・木炭・硫黄を調合して作るやろ?硝石は日本にはない。中国からの輸入や。硝石の輸入はな。ウチら堺商人の独占や」
「はぁ。確かにそうでしたな」
「だからウチらは鉄砲を売るだけでのうて、『鉄炮薬』ちゅう火薬商品もセット販売しているわけや」
「先を見てますなぁ」
「それにな。ヨソの鉄砲を買うた御武家さんにも、『鉄炮薬』を売っているんや」
「さすが、宗久様や」
「火縄銃一発の鉄炮薬は、米一升分の値段や。まぁ3000円ってとこやな。火縄銃本体で10万円としてな。34発打てば火縄銃より高くなる計算や」
「34発なんてあっという間や。戦場では湯水のように火縄銃使うし、兵の訓練もありますな」
「そや。火縄銃を使う御武家さんが増えるほど、儲かるっちゅう寸法や」

宗久はお茶をすすりながら、ニヤリとした。

「実はな、火縄銃の価格が下がったのは、えらいチャンスやねん。『鉄炮薬』の使用量も増えるしな。本音言うと火縄銃なんてタダで配ってもええくらいや。ま、いやゆるサブスクモデルってヤツやな。儲けるのはこれからや」

 

【参考文献】
■「火縄銃・大筒・騎馬・鉄甲船の威力」(桐野 作人著、新人物往来社)

 

 

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価値の本質を理解していた信長、理解できなかった秀吉

信長が座敷でくつろいでいると、森蘭丸が入ってきた。

「信長様…」
「なんじゃ、蘭丸。申してみい」
「もはや報償で与える領地がほとんどございませぬ」
「そんなことか。ちゃんと考えておるわ。これじゃ」

信長は傍らにあった小さな茶入れを持つと、手にかざして蘭丸に見せた。

「茶器…でございますか?」
「これ一つで、一国分の価値がある」
「なんと、この小さな茶器で!」
「先日も甲斐を攻略した滝川一益に、関東管領の称号と上野一国をくれてやった。なのに一益め、この銘品を恨めしそうに眺めて『珠光小茄子の方がよかった…』とぬかしよったわ。ま。ちゃんと余の教育が効き始めている、ということだな」
「そう言えば、秀吉様も同じようなことをおっしゃってましたね」
「サルめも『信長様から茶道具をごほうびにいただいた。感激で涙が止まらない』とわざわざ書面にしたためて、寄越してきおった」
「すべては目論見とおり、ということでございますか」
「これも堺の商人とつきあい始めた時に、茶の湯が流行っていることを知ったおかげじゃ。『茶の湯は使えるな。そうだ。茶器を恩賞にしよう』と考えた」
「それで千宗易様もおとり立てを?」
「宗易に茶の湯の儀礼を定めさせた上で、『武将ならば、茶道くらいは常識ぞ』と、名物茶器を使った茶会に余の家臣を招き、しっかり教育してやったわ。余の許可がないと、家臣連中は茶会をひらけないようにしてプレミアム感もしっかり高めてやった。 おかげで家臣や豪商達も、余の歓心を買うためにこぞって茶器をプレゼントするようになった」

カラカラカラと高笑いした信長は、ニヤニヤしながら声をひそめた。

「実はな。ここだけの話だが、名物茶器に明確な基準はない。皆が『いい』と思えば『いい』ということだ。そこで目利きに宗易を取り立てた。宗易が『銘品』と認めれば、あっという間にもの凄い値がつく。ま、宗易も堺の茶人たちも商売人だ。あやつらも権力者の余の威光を使えば何でもできる。茶会も主催して儲けているらしいな。おかげで余も武器をふんだんに調達できる。天下布武ももう目前だ」

信長は銘品『珠光小茄子』を目の高さにかざして眺めながら、ニヤリとした。

「しかしなぁ。南蛮の宣教師連中は『単なる粘土の固まりを貴重なダイヤモンドのように有り難がっているのは、なぜだ?』とまったく理解できないようだ。『お前たちも、もう少し『アート』というものを理解した方がいいぞ』と言ってやったが、まぁ、あやつらの気持ちもわからんではない。確かにこれは、粘土の固まりだ。ふっふっふ」

…その十数年後。
本能寺の変で信長は他界。秀吉が権力を握った。

残念ながら秀吉は、無残なほど価値の本質が理解できずに金の茶室などを作って、千利休は「なんと下品な…。信長様の時代が懐かしい」と眉をひそめたりしていた。

そんな秀吉に目を付けたのが、ルソン(フィルピン)と貿易をしていた商売人の呂宋助左衛門。様々な贈り物を秀吉に献上した。その中の一つに「ルソン壷」があった。

「秀吉様、献上品にございます」
「沢山あるな。ん?この壷はなんじゃ?」
「さすが秀吉様、お目が高い。ルソン壷と申しまして、かの国では高名な名品でございます」
「なるほど、これがあの有名なルソン壷か」
「はい。秀吉様もよくご存じの、そのルソン壷でございます」
「そうだ、大名に競売で売ったらどうだ?オレが主催してやる」

秀吉のお墨付きで、貴重な茶入れとして諸大名が先を争い買い求めた。
しかし限定50個。たちまち少なくなり、あわてて秀吉も3つ買った。

実はこのルソン壷、ルソンの現地ではゴミ入れや骨壷としても使われていたありふれた壷で、助左衛門が50個まとめ買いしたもの。真実を知った大名は激怒。ルソン壷のほとんどがたたき壊された。

秀吉の怒りを事前に察知した助左衛門は、余裕でルソンに高飛びして逃げたという。

【参考文献】
■「大系 日本の歴史 8 天下統一」(小学館)
■「日本歴史展望 第7巻 天下びと信長から秀吉へ」(桑田忠親責任編集、旺文社)
■「江戸300年 大商人の知恵」(童門冬二著、講談社+α新書)

 

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修羅場をくぐり抜けた企業への贈り物

会社は、死活問題になるような修羅場に巡り会うことがあります。
しかしその修羅場をくぐり抜けた先には、素晴らしい贈り物が待っています。

たとえば、サウスウエスト航空。日本人にはあまり馴染みがありませんが、万年低迷が続く米国航空業界にあって常に高収益です。

サウスウエストは2019年まで47年連続で黒字でした。9.11で米国航空会社が軒並み赤字の中でも唯一黒字を計上したほど。そんな同社も、コロナ禍で航空需要が蒸発する異常事態には翻弄されました。売上なんと6割減、赤字31億ドル。

米国の航空会社はレイオフは日常茶飯事ですが、従業員第一主義で家族主義のサウスウエストは1967年の創業以来レイオフ(従業員の一時解雇)をしていません。しかしそんな同社も、2020年の年末には、社員に「レイオフの可能性がある」と事前通知するまで追い詰められました。しかし何とか耐え凌ぎ、社員の雇用を守り抜きました。

サウスウエスト航空がこのように「従業員第一主義」「家族主義」という強い企業文化を持つようになったのには、理由があります。

きっかけは、1967年に創業した時、就航前にライバル航空会社は次々と妨害工作を仕掛けてきたこと。まずライバル3社が「航空市場は飽和状態でもう1社の参入余地は全くない」と訴訟。地方裁判所と高等裁判所で裁判を2回戦ったが判決で敗れました。せっかく集めた出資金は訴訟費用で蒸発してしまいました。3度目の戦いとなる最高裁判所で判決は覆り勝利。しかしその後数年間、同社はアレコレと難癖を付けられ、似たような訴訟で苦しみました。

4年後、やっと就航できるようになりましたが、今度はお金がありません。再度資金調達するも、ライバルは出資の引受業者に圧力をかけつつ、就航に抗議の申し立てをしてきました。のちに同社・会長になるケレハーは顧問弁護士として、法廷で相手の弁護士12〜15人に対して1人で戦い続けて勝ちました。

そして1971年6月18日、サウスウエスト航空はついに大空に飛び立ちました。

この草創期の激しい法廷闘争は、社内で強い団結心を生みました。同社社員は毎朝ニュースを見る度に、「我々は生存をかけて戦っている」と実感。一つでも負けると破産です。「生存をかけて戦っている」という強い想いが、強い企業文化を生み出したのです。

共通の理想を実現するために一心に働くとき、人々の間に特別なきずなが生まれます。草創期の同社はまさにそうでした。サウスウエスト社員たちは固いきずなで結ばれ、何度も苦境に追い込まれながらもくぐり抜け、サウスウエストを他社が真似できない優れた組織につくり上げ、この過程で家族のような固い結びつきと強い企業文化が生まれたのです。

企業文化は過去の挑戦・成功・失敗・学んだ教訓を反映して、創り出されます。

サウスウエストのように創業期の修羅場を社員が一致団結して乗り越えた経験は「強い企業文化」という素晴らしい企業の財産になるのです。

現在、現場で修羅場の真っ最中にいる方々も多いと思います。

しかし一致団結してその修羅場をくぐり抜けた先には、「強い企業文化」という贈り物が待っているはずです。

 

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朝活永井塾 第50回「刺さるメッセージの作り方」を行いました

4月7日は、第50回の朝活・永井塾でした。今回もZoomでした。全国からのご参加をいただき、有り難うございます。

テーマは『刺さるメッセージの作り方』でした。

マーケティング・コミュニケーションを成功させるための1つのカギは、メッセージを相手の記憶に焼き付かせること。

しかしこれが意外と難しいのです。ともすると我々は「製品やサービスの強みを訴求すればいい」と考えます。しかしこれだけでは、あまりメッセージは伝わりません。 

チップ・ハースとダン・ハースは、著書「アイデアのちから」で、成功するアイデアは次の6原則を守っている、と述べています。 

①単純明快、②意外性、③具体的、④信頼性、⑤感情に訴求、⑥物語性 

しかしこの原則を守っているマーケティング・コミュニケーションは、意外と少ないのも現実です。 

そこで今回の朝活永井塾では、下記をテキストに刺さるメッセージの作り方を学んでいきました。

 「アイデアのちから」(チップ・ハース&ダン・ハース著)

ご参加下さった皆様、有り難うございました。

【プレゼン部分】

またリアルタイムに参加できなかった方々には動画配信をお送りしました。

次回の朝活勉強会「永井塾」は5月12日(水)。
テーマは「チェーンストア理論」です。申込みはこちらからどうぞ。

イノベーションを「技術革新」と誤訳するのは、もうやめよう


日本では、「イノベーション」を「技術革新」と訳しています。 日本の高度経済成長が始まった1958年の経済白書がきっかけに、この言葉が拡がったと言われています。

しかしこれはイノベーションの概念を正確に反映した訳ではありません。

100年前に「イノベーションこそが経済発展の原動力だ」と喝破し、イノベーションの源流となったシュンペーターは、「イノベーションとは既存知と既存知の新結合である」と述べています。

たとえば2007年に登場したiPhone。
iPhoneは技術面では革新的なことはほとんどありません。携帯電話、タッチパネルのiPod、インターネット端末という「既存技術の組合せ」です。しかしiPhoneのおかげでコンパクトデジカメ、電卓、地図、時計などが世の中から消え、かわりに実に様々な新しいサービスを生み出しました。世の中を大きく変えたイノベーションだったのです。

「iPhoneってイノベーションじゃないよ。だって何も新しくないじゃん」

という人は、「イノベーション=技術革新」という誤訳を頭から信じているわけです。こういう考え方をしていると、iPhoneのようなイノベーションがなかなか生まれませんよね。

しかしかつて日本には、次々とイノベーションを生み出していた企業がありました。 それはソニーです。

たとえばウォークマン。 元々のコンセプトは「再生専用の携帯カセットプレイヤー」でした。 しかし当時のカセットプレイヤーは、録音機能が必須でした。

「録音機能がないプレイヤー?売れるわけないよ」

…というのが大勢の意見でした。

しかし当時ソニーのトップだった盛田昭夫さんは、こう考えました。

「でも車に付いているカーステレオって、録音機能がなくても、私たちは気にせず使っているよね。車内でそうなんだから、屋外で音楽を聴く場合も、録音機能はいらないんじゃないかな」

実際に発売したら、累計4億台売れました。

ウォークマンもiPhone同様、技術的に新しいモノは何もありません。しかし「一人で音楽を聴く」というライフスタイルを生み出したイノベーションでした。

このようにイノベーションには特徴があります。事後的には理解できるのですが、事前には理解できないのです。

イノベーション前「できるわけないでしょ。もしかして頭悪いの?」
イノベーション後「ああ。あれね。俺も前から考えていたけどね」

もし「我が社には、イノベーションが必要だ」とお考えであれば、「技術革新という言葉は、社内禁止!」にするくらいの意識変革が必要なのではないかと思います。

 

 

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「鬼滅の刃」から学ぶ逃げるが最強の戦略

「鬼滅の刃」をコミックや映画でご覧になった方も多いと思います。
「鬼滅の刃」で最強ラスボス・鬼舞辻無惨は、圧倒的な強さを誇っています。
しかし私は、無惨の凄さは実は戦闘力ではなく、 窮地に追い込まれると恥も外聞もなく一目散に逃げることだと思っています。

潔さを重視する武士道に慣れ親しんだ日本人から見ると「卑怯者!」と思ってしまいますよね。しかしこれは最強の戦略なのです。

このことは、中国の兵法書からもわかります。

中国には様々な兵法書がありますが、共通するのは「戦わずして勝つこと」

戦わなければ損害は避けられます。それに今戦っている敵は、将来の味方かもしれません。そこで中国では武力(力)でなく策略(頭)で勝つために、長年かけて膨大なノウハウを蓄積してきました。

そんな中国の兵法書の中に、策略に特化した「兵法三十六計」があります。
様々な策略を6グループ36種類に分類しています。

実はこの兵法三十六計で36番目の「走為上」が、あの有名な「三十六計逃げるに如かず」です。

中国の兵法書には玉砕戦法はありません。「勝算がない時は戦うな」が基本です。凡庸なトップほど進むだけで退き方を知りませんが、中国ではそんな人物を「匹夫の勇」と呼び軽蔑します。

負けそうな戦いから逃げれば、勝てないが負けません。戦力も温存できます。

三国志の奸雄・曹操の勝率は8割といわれ、圧倒的な強者でした。ライバル劉備は勝率2割以下。曹操の勝因は三つありました。

①兵法書をよく研究していた
②負けた敗因を分析し同じ負け方をしなかった
③「勝てない」とわかると、ためらわずに即撤退した。

研究熱心で、同じ負けをせず、しかも負けそうになるとすぐ逃げる。曹操が強いわけですよね。

日本人は「逃げるのは卑怯」という考えを叩き込まれています。ですから神風特攻隊のような無茶な戦い方もやってしまいます。

中国人は、逃げるのは得意です。不利な状況ではまず逃げることを考えます。そして戦力を温存し、じっくり巻き返しを図ります。

どちらが良いかは、一概にはいえないかもしれません。「当たって砕けろ」で大勝ちもあります。しかし全軍玉砕もあるわけです。

日本人は、逃げることも選択肢の一つとして考えておくと良いのではないでしょうか?

 

 

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信頼関係が強いチームを育む

一日かけて掃除を終えたミキさん。そこへお姑さん登場。指でホコリをすくって一言。

「ミキさんのお掃除、カンペキね」

これで喜ぶ人は、あまりいないのではないでしょうか?
必要なのは言いにくいことでも率直、誠実に話し合える信頼関係です。

ベストセラー「1兆ドルコーチ」で、世界一のコーチであるビル・キャンベルの教えが紹介されています。ビルが重視したのも信頼関係でした。

大学のフットボールチームでコーチだったビルは、選手に親身になりすぎて冷徹になれず、12勝41敗。しかし39歳でビジネス界に遅い転身をすると、深い思いやりとコーチングスキルを持つビルの強みが一気に開花。シリコンバレーのいくつかの会社でCEOを務めました。成功したビルはその後、無給で様々な会社で経営幹部のコーチを行うようになりました。

ビルにとって信頼は常に最優先かつ最重要。信頼とは約束を守り、誠意を尽くし、率直であり、守るべき秘密は守ることです。

ミキさんとお姑さんの間にはかなり感情的なしこりがありそうです。

しかし信頼関係があるチームではお互いに安心して自分の弱さを見せられますし、意見の相違が生じても感情的なしこりはあまり残りません。信頼があれば、少々の意見の相違があっても安心して相手に任せられます。これこそが最高のチーム。だからチーム作りでは何よりも先んじて、信頼を構築しなければいけません。

コーチングで厳しいことがいえるのも、信頼関係の賜物です。ビルは常に100%正直にありのままを話し、厳しいことも率直に臆せず伝え、相手にも率直さを求めました。

部下の力を育てて組織が成果を生み出す上で、コーチングは最有力な方法です。ビルのコーチングの方法は他の人でも学んで実践できるものがほとんどです。

ビルはコーチングを受け容れられる「コーチャブルな人」だけをコーチしました。コーチャブルな資質とは①正直さ、②誠実さ、③あきらめずに努力をいとわない姿勢、そして④常に学ぼうとする意欲です。コーチングでは、通常のビジネスよりもはるかに赤裸々に自分の弱さをさらけ出す必要がありますが、人は自分の欠点を話したがりません。だからこそ、正直さと謙虚さが必要になるのです。

一方でコーチングを受け容れるには、自分に残酷なまでに正直である必要があります。ビルはウソつきは絶対に許しませんでした。ウソつきは他人だけでなく自分にも不正直。だから成長できないのです。

あなたのチームは、信頼関係を築いているでしょうか?

 

 

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今こそ、マズローから学べ

「欲求段階説」で有名なマズローという心理学者がいます。マズローは20世紀後半の心理学を作り直して「人間性心理学」という新領域を打ち立て、様々な分野で数多くの著作があります。

そんなマズローは1960年代初頭、ある企業の仕事をきっかけに経営学と出会い、自分が研究してきた心理学が経営学で大きな可能性を持つことを知りました。「欲求段階説」はその時に生まれた考え方です。

当時の米国は、大量生産時代絶頂期。「モダンタイムズ」でチャップリンが演じたような大工場で労働者は指示されるがまま働いていた時代。労働争議も頻繁に起きていました。

マズローはこう考えました。
「『言うとおり働け』という大量生産のやり方は、ちょっと違うんじゃないか?人間はもの凄い潜在力を持っている。自己実現を目指す個人が組織の使命と一体化して本来持っている創造性を発揮できれば、企業は『完全なる経営』ができるはずだ」

彼のこの時の気づきは1962年に手記としてまとめられ、私たちは名著「完全なる経営」で読むことができます。このマズローの思想は、現代の経営理論に大きな影響を与えました。当時新進気鋭の経営学者だったドラッカーも「本書は私にインパクトを与え続けてくれる知恵の泉」と述べています。

本書で、マズローは36の前提(仮定)を示しています。その中で主なものを紹介します。

①人間は信頼できるものだ
②誰もができるだけ多くの事実について、できるだけ完全な情報を得るべきだ
③すべての人間が達成意欲を持っている
⑤全ての人間は、組織のどこにいる人でも、経営目標を共有し、その目標と一体化できる
⑥社員同士は互いに好意を持っていて、対抗心や嫉妬とは無縁である
⑭人間には耐える力があるし、一般に思われている以上に強靱だ
⑮進歩的な経営管理の下では、人間は向上しうる
⑯人は消耗品と感じるよりも、重要で必要とされる有益な人間であると感じたがっている
⑳人は、ものごとを向上し改善しようとする
㉒人間は、モノではなく、全人格的に扱われることを好む
㉓人は怠けるよりも働くことを好む
㉔誰もが無意味な仕事よりも意味のある仕事を好む
㉕人間は無名の存在であるよりも、個性的で独特の存在である自分自身であることを好む
㉙誰もが公正・公平に評価されたいと望んでいる

彼の思想はマグレガーのX理論・Y理論、その後のドラッカーの思想、さらには1980年代に書かれた「エクセレントカンパニー」「ビジョナリーカンパニー」といった人間を重視する経営書にも大きな影響を与えました。

マズローに心酔したインテル社長だったアンディ・グローブは、OKRという経営手法を生み出しました。このOKRは創業2年目のグーグルで採用され、その後のグーグルの爆発的成長を支えました。

現代で最先端の組織といわれる「ティール組織」の運営ルールを見ると、マズローが考えた「36の前提(仮定)」がかなり取り込まれていることがわかります。

60年前に生まれたマズローの思想は、時間をかけて静かにビジネス界に拡がっています。マズローがいなければビジネスの世界は今とはだいぶ違っていたかもしれません。そのマズローは理論の発展を志していましたが、1970年に62歳の若さで他界しました。誠に残念です。

素晴らしい古典から学べることは、多いですね。

 

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失敗から学べない理由と、その対策


失敗は成功の早道です。しかし組織や人はなかなか失敗から学べません。そこで参考になる一冊が、「失敗の科学」(マシュー・サイド著)です。本書は人が失敗から学べない原因を深掘りし、失敗を活かす方法を示しています。

2世紀、ギリシャの医学者が「瀉血(しゃけつ)」という血液の一部を抜き取る排毒療法を広めました。当時最高の知識を持った学者が善意で生み出した療法ですが、現実には病弱な患者はさらに体力を奪われました。しかし瀉血は19世紀まで一般療法として続きました。医師達は患者が良くなれば「瀉血で治った」、患者が死ねば「瀉血でも救えない…。よほど重病だったのだな」と考え、1700年もの間、一度も治療法を検証しなかったのです。このように失敗が放置され学習しない現象がクローズド・ループ現象です。

心理学者フェスティンガーは、著書「予言が外れるとき」でこの現象が起こる理由を紹介しています。

1954年、フェスティンガーは「12月21日、大洪水で世界は終末を迎える」と予言する教祖が率いるカルト教団があることを知りました。信者たちは家族の反対を振り切り仕事を辞め、教祖と暮らしていました。

「予言が外れた後、信者がどうするんだろう?」と考えたフェスティンガーは、この教団に信者として潜入しました。

私たちは「そりゃ、信者達は霊能者は詐欺師だと非難して、元の生活に戻るでしょ」と考えがちですが、なんと信者たちは全く行動を変えませんでした。予言が外れた後、信者たちはこう主張したのです。

「我々が世界を救ったのだ! 神は我々の信心深さに感心し、第二のチャンスを与えた」

そしてさらに以前よりも熱心な信者になる者すらいました。
信念と異なる事実が出た時、人は次のいずれかの行動を取ります。

①事実を認め、信念を変える。
②事実を否定し信念は変えず、都合の良い解釈を作る。

①がなかなか難しいんですよね。「自分はダメだった」と認めるのを、人は怖がるのです。②を選べば信念を貫けます。信者はすべて捨てて教祖と暮らしていて、今さら後戻りできません。だから教祖を信じ続けたのです。

同じ事は、オウム真理教の一連の事件でも起こりました。

フェスティンガーは、この現象を認知的不協和と名付けました。
クローズド・ループ現象は、認知的不協和が引き起こすのです。

「瀉血?世界終末?ずいぶんと非科学的だよねぇ。私はそんなに騙されないよ」と思う私たちも、日々の生活で認知的不協和によるクローズド・ループの罠に陥っています。

「ケーキは今週4個目。でも自分へのご褒美。今日は特別♥」といって、太る人。
「タバコは身体に悪いけど、止めると体重増えるよね」といって、吸い続ける人。
「俺じゃなくて、アイツが選ばれた。これは絶対間違いだ!」といって、怒る人。

自分の信念を変えずに事実の解釈を変え、失敗から学ばない点で全く同じです。
私たちも、知らない間にクローズド・ループに陥っているのです。

かつて哲学者カール・ポパーは、こういいました。

「真の無知とは、知識の欠如ではない。学習の拒絶である」

「失敗は学習のチャンス」という組織文化が根付けば、非難する前に、何が起こったかを調査しようとします。

そこでマシュー・サイドは、いくつかの処方箋を提示しています。

■リーン・スタートアップで、売れるか否かを最初に検証する
■客観的な評価のためのランダム化実験(ABテスト)を行う
■プロジェクト実施前に、プロジェクトが失敗した状態を想定した上で「なぜうまくいかなかったのか?」をチームで事前検証する

人が失敗からなかなか学べないからこそ、失敗を前提に行動する必要があるのです。

 

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「副業」はサラリーマン起業の最強兵器だ

私は日本IBM社員時代、会社の承認をいただいて執筆活動を始めました。有り難いことに「 100円のコーラを1000円で売る方法」をきっかけに様々な仕事のご依頼をいただくようになり、ご依頼に対応するために退職して独立しました。独立は2013年7月ですので、8年間が経ちました。

あくまで結果論ですが、これは経営学で注目されている「ハイブリッド起業」を実践したものでした。

「ビジネススクールで学べない世界最先端の経営学」(入山章栄著)で、このハイブリッド起業のことが紹介されています。

ハイブリッド起業とは、会社勤務と並行して起業する考え方です。

「副業で起業?甘い考えでスタートアップを始めるな。起業して逃げ場をなくし自分を追い込むんだ」とおっしゃる方も、おられるかもしれません。

しかし著名起業家の中にもハイブリッド起業は大勢います。超有名どころでは、アップルの共同創業者スティーブ・ウォズニアック。アップル創業後、しばらくはHP社の技術者でした。

ハイブリッド起業では、起業リスクを軽減できます。これはリアルオプション戦略で説明できます。リアルオプション理論とは、「不確実性が高いと、小規模な部分投資が効く」のがポイント。

起業はそもそも成功確率が低いもの。会社を辞めて起業し、自分の時間とキャリアの全てを賭けると、リスクは非常に高くなります。特に日本では起業を失敗して会社に就職しようとしても、なかなか就職できないのも現実。家族が犠牲になる可能性もあります。

だから必要なのは、起業リスクを軽減すること。今の会社に勤めつつ副業として小さく事業を始めて失敗確率を下げれば、リスクは下がります。

入山先生はご著書で、スウェーデンで1994年にハイテク産業に就職した20歳〜50歳の男性44,613人について、その後の行動を追跡したデータを統計分析し、検証した研究を紹介しています。

7年後の2001年時点で、この44,613人のうち起業したのは5%弱の2,191人。うち966人が会社を辞めないハイブリッド起業。残り1,225人はフルタイム起業でしたが、このうち2割はハイブリッド起業経由。つまりハイブリッド起業は過半数でした。

また「ハイブリッド起業→フルタイム起業」の移行確率は、「会社勤め→フルタイム起業」の確率よりも38倍高い数字でした。さらにハイブリッド起業家が翌年もハイブリッドを続ける確率は54.9%。36.6%は翌年に起業活動をやめ会社の仕事に専念していました。

つまりハイブリッド起業経由ならばフルタイム起業へ移行できる確率が高く、ダメだった場合に元の仕事に戻れる、ということです。低いリスクで起業に挑戦できるのです。

同じことを、起業家であり投資家の田所雅之氏も著書「起業の科学」でおっしゃっています。起業せずに副業ならば、会社維持費は不要。起業のアイデアも余裕と好奇心を持って考えられます。逆に起業してからアイデアを練ろうとすると、早く形にしようとして近視眼的になったり、凝り固まった考えに固執しがち。スタートアップの強みである突飛さやクレージーさも失ってしまいます。

入山先生は、「ハイブリッド起業の研究はまだ初期段階。一般化は慎重になるべき」と述べています。一方で世界的に見て日本は起業が活発ではなく、開業率も低いのが現実。

昨今国内で増えている副業ブームは、起業の起爆剤になる可能性を秘めています。

このように考えると、「副業は収入の補完手段」と考えるのはちょっともったいないかもしれません。むしろ「副業は将来の起業への準備手段」として考えると、人生100年時代を見据えて様々な展望が開けてくるのではないかと思います。

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朝活永井塾 第49回「売る広告」を行いました

3月3日は、第49回の朝活・永井塾でした。今回もZoomでした。全国からのご参加をいただき、有り難うございます。

テーマは『売る広告』でした。

かつてプロモーション活動を行う際には、広告は絶対的な武器でした。しかし情報が溢れている今、広告は必ずしも万能ではなくなりつつあります。

一方でRIZAPのように、広告で大きな成果を上げている事例もあります。 

今後、広告の役割はどうなっていくのでしょうか?そして私たちはプロモーション施策でより多くの人に価値を伝えるためにどうすればいいのでしょうか?

 そこで今回の朝活永井塾では、下記をテキストにサービス・マーケティングの基本を学んでいきました。

 『「売る」広告[新訳]』 デイヴィッド・オグルヴィ著
『ブランドは広告でつくれない 広告vsPR』 アル・ライズほか著
『費用対効果が23%アップする 刺さる広告』 レックス・ブリッグスほか著
『ウソはバレる』 イタマール・サイモンソンほか著

ご参加下さった皆様、有り難うございました。

【プレゼン部分】

またリアルタイムに参加できなかった方々には動画配信をお送りしました。

次回の朝活勉強会「永井塾」は4月7日(水)。
テーマは「刺さるメッセージの作り方」です。申込みはこちらからどうぞ。

2021-03-08 | カテゴリー : nagaijuku | 投稿者 : takahisanagaicom

ベストセラーが生まれる仕組みから学ぶ、売れるビジネスの方法

私は有り難いことにベストセラーを何冊か書く機会をいただきましたが、一方で全く売れない本も書いています。実は評価が高くても、必ずしも売れると限りません。これって考えてみれば、不思議です。

「偶然の科学」(ダンカン・ワッツ著)を読んでいたら、その理由がズバリ書かれていました。 結論からいうと、人気作品になるには、作品の質も大事ですが、それ以上に「運とタイミング」が大切だということです。

ワッツは、あるソーシャルネットワークの協力を得て、こんな実験をしました。

まず会員1万4000人を8グループに分類。会員は無名バンドの曲を聴いて採点し、欲しい曲をダウンロードするようにします。この時、曲名とグループ内のダウンロード回数だけ表示されます。8グループが完全に切り離された状態で、各グループ内の曲の順位がどう変わるかを調べたのです。

つまり8つの仮想的な「パラレルワールド」を作り、それぞれの世界の順位変動を比べてみたのです。

順位が品質だけで決まるのならば、どのグループもほぼ同じ順位になるはず。 しかし結果は、グループ毎に順位はバラバラでした。ある時点で人気な曲はさらに人気になり、不人気な曲はさらに不人気になりました。また最高評価の曲でも1位になれない時もあり、最低評価の曲でも健闘することもありました。ちなみに高評価な曲は、低評価な曲よりも平均して順位が上でした。

これは、肌感覚にとても近い結果ではないでしょうか。

当初のわずかな優位の差が、時間経過で大きく拡がる状況を「累積的優位性」といいます。ワッツの実験でわかるのは、人気の差はわずかな人気のバラツキによる累積的優位性で決まるということです。

モノゴトの結果は一つの要因では決まりません。たとえばベストセラーを生むには、できる限り高品質の本を書くことは大前提。その上で、偶然と小さい行動の積み重ねと個々の相互作用により結果が決まります。

つまり運とタイミングが重要なのです。

現実の社会でも、最初の小さなランダムな変動が次第に大きくなり、長期的に大きな変動をもたらします。中国で蝶が羽ばたくと、海の彼方でハリケーンが発生するという、カオス理論の「バラフライ効果」にも通じる現象が起こるのです。
しかし人は、この「運とタイミング」をなかなか認められません。今があるのは「何らかの必然」と思い込んでしまいます。これは心理学者が「遅い決定論」と呼ぶ傾向です。

さらに「以前から結果はわかっていた」と考える「あと知恵バイアス」もあります。 ワッツは著書で、ある心理学者が実験で被験者に未来を予測させ、結果が出た後に再び面談した結果を紹介しています。多くの被験者は決まって、当たった予測は「自信があった」、外れた予測は「自信はなかった」と語りました。当たった結果だけは「前から分かっていた」とあと知恵で思い込むのです。

何かに成功した人が「私が成功した理由は、○○○と□□□だ」と語ることがありますが、これも「遅い決定論」と「あと知恵バイアス」の産物です。

このように私たちがなかなか過去を正しく評価できないのであれば、どうすればいいのでしょうか?

ワッツは「測定と対応に専念せよ」と提唱しています。

ファッション業界では流行を予測しますが、外れることも少なくありません。そんな中で、ZARAは流行予測を一切せず、「測定と対応」に専念しています。
繁華街など人が集まる場所に調査員を送り、人々が着ているものを観察させ、何が受けるか案を大量に出し、様々な色、生地、スタイルの商品を少量生産し店に届けて何が売れ何が売れないかを測定し、この情報を元に売れる商品の製造を拡大します。新しい衣料のデザインから全世界販売まで2週間で出来る仕組みを構築しています。

現代のビジネスでは、何が起こっているのかを察知し、即対応できることがますます求められているのです。

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情報コレクターを卒業し、時間を武器にせよ

仕事の成果をわけるのは、意志決定です。

そこで多くのビジネスパーソンは「意志決定を間違いなく行うには、情報は多いほどいい」と考えて大量の情報をかき集めます。そして問題を見つけると、さらに答えを求めて情報を集めます。

ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)の元日本代表であり、早稲田大学ビジネススクール教授の内田和成先生は、著書「仮説思考」で「経営陣から現場のビジネスパーソンまでが情報コレクターになっている」と述べています。

この方法でいくら一生懸命に頑張っても、なかなか答えが出ません。
そして時間切れで、手遅れになります。
現代は時間勝負。これでは致命傷です。

過度に頑張らなくても意志決定スピードを上げれば、ビジネスのスピードは一気に加速します。そのための方法はいくつかあります。

数十個の選択肢があれば、そのうち最も正解に近いと思われる2−3個を「答え」と仮説を立てて、検証する「仮説思考」もその一つ。

鍛錬を重ねた剣の達人は、相手の刹那の気配(観察)で攻撃を察知(情勢判断)し、瞬時に抜刀し相手を斬ります(行動)。この動きを組織でも行えるように、社員同士の以心伝心と阿吽の呼吸を重視して、「個の力」を「組織の力」に変える「OODAループ」もその一つ。

戦いで何よりも大事なのは、「スピード」、つまり時間を制すること。スピードがあれば圧倒的に強い敵にも勝てます。いまや時間はヒトモノカネにつぐ第四の経営資源なのです。

「時間」という経営資源はますます希少になります。
時間を武器にできる方法論を、組織に定着させていくことが必要なのだと思います。

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失敗の凄い力「累積淘汰」

進化生物学者リチャード・ドーキンスは著書「盲目の時計職人」で、こんな例を紹介しています。

猿がランダムにタイプライターの鍵盤を打ちシェイクスピアのハムレットの”Methinks it is like a weasel”という一節(28文字)を打ち出すにはどれ位の時間がかかるでしょうか?

この時間は計算可能です。
鍵盤の文字数は英字26文字と空白1文字の計27文字。鍵盤を28回ランダムに叩くと、27の28乗(=およそ10の40乗)の組合せができます。つまり10の40乗の組合せの中で、1つだけが正解になります。

猿が鍵盤を叩くのは遅いので、代わりに毎秒44京回の計算ができる世界最速スーパーコンピューター「富嶽」を使って鍵盤を叩くのを超高速シミュレーションしてみても、宇宙誕生から現代までの時間138億年をさらに1億倍した膨大な時間が必要です。

ここでドーキンスは累積淘汰の仕組みを応用してみました。
まず猿が打つようなランダムな文章をパソコンで自動的に生成するプログラムを作成しました。ここで一工夫。プログラムでランダムに文章を作るたびに毎回チェックし、目標の一節に少しでも近いものだけ選び、残りは排除。残った文章にランダムな変化を加え続けてチェック…という作業を続けたのです。

第1世代の文章は、WDLTMNLT DTJBKWIRZREZLMQCO P
全く意味不明です。

第10世代の文章は、MDLDMNLS ITJISWHRZREZ MECS P
まだまだ意味不明。

第20世代の文章は、MELDINLS IT ISWPRKE Z WECSEL
やや似てきました。

第30世代の文章は、METHINGS IT ISWLIKE B WECSEL
だいぶ似てきたました。

第43世代の文章は、METHINKS IT IS LIKE A WEASEL
ここで一致しました。

ドーキンスが使ったのは1980年代の旧式パソコンとBASICという古いソフトですが、結果はわずか30分で出ました。

こんなに速く完成できたのは、各世代毎に行った選択を記憶させ、次世代へ、また次世代へと繋いでいく「累積淘汰」の仕組みを組み込んだからです。

生命が単細胞から複雑な人類に進化したのも、累積淘汰のおかげといわれています。突然変異で様々な個体が生まれ、その中から環境に合う強い個体が自然淘汰で残る、という選択のプロセスを積み重ね、まるで知性がある創造主が作ったかのように生命は急速に進化したのです。

この累積淘汰のカギが、「失敗して、その結果から学びを蓄積すること」なのです。

人間社会も同じです。映画「ハドソン川の奇跡」は、ニューヨーク上空でトラブルに見舞われた航空機がハドソン川に不時着水し、乗員乗客全員が無事に生還した実話です。トム・ハンクスが演じる主人公のモデルになった機長は、こう語っています。

「我々が身につけたすべての航空知識、ルール、操作技術は、どこかで誰かが命を落としたために学ぶことができたものばかりだ」

失敗から学び続けることで、長い時間で見ると実に大きな差が生まれるのです。

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アマゾン、大丈夫でしょうか?

私はネットでモノを買う場合、ほとんどアマゾンを使っています。理由はいろいろです。まずアマゾンプライム会員なので、配送料無料。万が一の場合、返品は実に簡単。加えてほとんどの商品は、アマゾンで探せば大抵は見つかります。

「顧客努力」という概念があります。現代の顧客は極度の「面倒くさがり屋」です。注文で商品が見つからない、返品に手間がかかる、というように「顧客努力」が必要な顧客体験は、顧客ロイヤルティを一気に下げます。その結果、顧客はライバルに逃げるのです。

アマゾンはこの「顧客努力を最小限にする」という顧客体験に徹底的に拘って、長年努力を続けてきた結果、ネット通販で世界最強になりました。

しかし最近、気になることもあります。

先日、私はKey Lightという商品を探していました。Web会議などで使える高品質な照明で、米国では人気です。

日本のアマゾンサイトで”Key Light”で検索すると、似たような商品が沢山表示されました。1つずつ調べましたがどれもKey Lightではなく、中には怪しい中国製もありました。この確認って、とても手間がかかりますよね。

かつての顧客体験を重視するアマゾンならば、即「お探しの商品はありません」と表示されていました。

最近のアマゾンは、こんな体験が続いています。私は一部の商品はMonotaROで買うようになりました。MonotaROでは全て1社で商品を提供しているので、安心だからです。

このようにアマゾンで探している商品が見つからないことが起こるのは「アマゾン広告」のためです。アマゾンは商品を売りたい販売主のために、有償広告を出しているのです。

米国のある調査によると、2020年のアマゾン広告売上は130億ドル(1.5兆円)。対前年度で23.5%成長したと見られています。これは数兆円規模の高成長事業が次々と立ち上がるアマゾンの勢いを感じさせます。

一方で、これまでアマゾンは顧客体験を愚直に徹底的に追求し続ける企業でした。アマゾンのビジネスの中核は「顧客体験」なのです。

折しも創業者ジェフ・ベゾスがCEOを退任します。

アマゾンはもの凄い勢いがあるので、当面は成長が続くでしょう。しかし長期的に成長が続くか否か、ベゾス退任後も「顧客体験を徹底的に追求し続ける企業」であり続けるか否かにかかっていると思います。

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朝活永井塾 第48回「感動よりも当たり前のサービス」を行いました

2月3日は、第48回の朝活・永井塾でした。今回もZoomでした。全国からのご参加をいただき、有り難うございます。

テーマは『感動よりも当たり前のサービス』でした。

私は大企業の商品開発エンジニアとお話しする機会が多いのですが、いつも二つのことに驚かされます。

多くの企業が「期待以上のサービスを提供すれば、顧客は買い続ける」と信じています。しかしそれを「幻 想」と一刀両断するのが、ジョン・グッドマンとマシュー・ディクソンです。

 ジョン・グッドマンは「いまや製品機能だけで差別化するのは難しい。確実にライバルと差別化できる方法が、苦情やトラブルのときの顧客体験(CX)だ」と言っています。 

またマシュー・ディクソンは「現代の顧客は、手間がかからないサービスを望んでいる」と言っています。 これらは、私たちが消費者の立場に立つと納得するのではないでしょうか? 

そこで今回の朝活永井塾では、下記をテキストにサービス・マーケティングの基本を学んでいきました。

『顧客体験の教科書』 (ジョン・グッドマン著)
『おもてなし幻想』(マシュー・ディクソンほか著)

ご参加下さった皆様、有り難うございました。

【プレゼン部分】

なぜいま、CX(顧客体験)なのか?
顧客努力の減少は、売上に直結する

またリアルタイムに参加できなかった方々には動画配信をお送りしました。

次回の朝活勉強会「永井塾」は3月3日(水)。
テーマは「広告の役割は、どうなっていくのか?」です。申込みはこちらからどうぞ。

2021-02-03 | カテゴリー : nagaijuku | 投稿者 : takahisanagaicom

読書の価値

最近、改めて気付いたことがあります。成功した起業家や会社の経営層にいるビジネスパーソンと話す機会が多いのですが、彼らの多くは熱心な読書家なのです。実に多くの本を読み、仕事に活かしています。

彼らがビジネスパーソンとして成功した1つの要因は、読書家だからです。

学びの深さという点では、現場のビジネスでの学びが断トツ一番。しかし自分一人で経験できる量には、限界があります。

しかし自分一人で経験できる量には、限界があります。

読書は、著者が得た学びを短時間で疑似体験できます。
こう考えると、読書は学びのコスパが極めて高い方法です。

しかし現場で得られる深い学びは、言葉にできない「暗黙知」。
一方で本に書かれていることは、言葉で表現できる「形式知」。
本では文字にする過程で、どうしても貴重な暗黙知が抜け落ちます。
そこで重要なのが、深い暗黙知(=学び)が感じられる良書を選ぶこと。

しかし深い学びが得られる良書は、意外と少ないのです。「ベストセラーだから良書」とは限らないのも、なかなか難しいところ。読書では二度と戻らない自分の貴重な時間を投資するのですから、選書がカギです。

そこで役立つのが、目利きのセレクションです。

かのビル・ゲイツは、読書家として昔から有名です。今はGatesNotesBooksというブログで読んだ本を紹介したり、著者と対談しています。

GatesNoteBookで紹介されている良書には邦訳された本も多いので、このようなオススメ本から選ぶのも1つの方法です。思わぬ掘り出し物もあったりします。

私もMBA50冊シリーズで、本をオススメすることが多くなりました。
良書を厳選し、お伝えしていきたいと思います。

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「会議ばかりで仕事できない」というマネジャーの勘違い

私が会社員だった頃、同僚の新任マネジャーがボヤいていました。

「朝から夕方まで会議ばかり。自分の仕事がぜんぜん出来ないんですよね…」

ミーティング、風当たりが強いですよね。
「会議は時間の浪費」と言う人もいます。

経営学者のミンツバーグは29名のマネジャーに丸一日張り付き、観察した結果を「マネージャーの実像」という名著にまとめています。

ミンツバーグが観察したマネジャーは、誰もがこんな感じで仕事をしていました。

朝9時28分。スズキ部長は自販機コーナーでヤマダ君に声をかけ、客先トラブル状況について二言三言交わす。デスクに戻り、秘書のアベさんと一緒に書類の山と格闘。デスクの前を通りかかるトベ君をふと見つけ、「トベ君、あの件は保留ね」と指示。15秒後、アベさんと向き合い「さあ続けよう」。そこに人事のノナカさんが来て、以前指示した件の報告を受ける。数秒後、アベさんとの作業に戻る。すると今度は部下のシマさんが来て「A社さん受注です!」とガッツポーズ。スズキ部長は「グッドジョブ!」とハイタッチ。ここで9時35分。あっという間に7分経過。

マネジャーたちは時間に追われ、細切れ時間の中で仕事を続け、次々来る人たちと話し、時に指示を出しています。多忙な業務をこなし、様々なコミニケーションを繰り返して情報を集め、意志決定しています。

実はこの慌ただしい電話・会議・メールなどのコミュニケーション自体が、仕事そのものなのです。

マネジャーの仕事の多くは、情報やノウハウ提供。言い換えるとマネジャーは組織の情報中枢なのです。

こう考えると膝を交えたミーティングは、実はマネジャーにとって仕事を遂行する貴重な手段であることがわかります。

ミーティングを駆使し、圧倒的な競争力を生み出す会社もあります。


アイリスオーヤマはコロナ禍でいち早くマスクを大増産し、業績を大きく伸ばしました。 迅速対応できた要因の一つは、ミーティングによる意志決定の仕組みです。

多くの企業では、現場からの新商品開発の提案を経営陣が承認するのに数ヶ月かかります。アイリスオーヤマは、毎週月曜に丸一日かけて行う新商品開発会議で、すべて決めます。社長を含む経営陣、開発、営業、広報、物流の全責任者が集まり、開発メンバーの意見を元に細かい部分までその場で話し合って決定。全員が週5日のうち1日拘束されますが、ここで毎週50案件の可否を即決します。結果、圧倒的スピードで商品開発が進むのです。

「ミィーティングばかりで仕事できない」というマネジャーは、厳しい言い方をすると、マネジャーになる前の担当者意識が抜けず、貴重な時間をムダにしているのかもしれません。

むしろミィーティングを情報伝達・ノウハウ提供・意志決定の手段として戦略的に活用すれば、自分が任された組織の生産性は飛躍的に向上するはずです。

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会社のビジョンは、トップが作っても動かない

私たちは「会社のビジョンはトップが作り、社員に申し伝えるもの」と思いがちです。

しかし現実には、「トップが時間をかけて作ったビジョンが、現場社員にまったく知られておらず、実行もされない」ということも多いですよね。

ピーター・センゲは世界的に読まれている名著「学習する組織」の中で、「ビジョンはトップが作って申し伝えるものという先入観は、捨てるべき」と言っています。

低迷するIBMのCEOに就任したガースナーは、IBMをコンピューターメーカーからサービス企業へ変革しました。サービス変革ビジョンが作られたきっかけは、ガースナーと社員との対話から生まれました。ガースナーは著書「巨象は踊る」で、その時のことを書いています。

IBMサービス変革のビジョンは、当時IBMの100%子会社だったISSC社の責任者だったデニー・ウェルシュの構想が元になっています。

ウェルシュは筋金入りのIBM社員でした。彼は子会社トップとして、顧客のITシステム構築からアーキテクチャーの決定、管理運用まで全て引き受ける企業を思い描いていました。「顧客にとって必要ならば、ライバル社の製品も採用すべき」との考えでした。

このウェルシュが描くビジョンは、ガースナーがIBMの顧客時代にまさに求めていたものだったのです。ガースナーはアメックスやナビスコなどの社長としてIBMユーザーでした。

一方でウェルシュは、IBMの企業文化の中でこのビジョンを実現する際の課題も把握していました。

ライバル製品を採用して保守も行うという文化は、当時自前主義を貫いていたIBMの文化とは相容れないものでした。さらにサービス部隊を営業部隊から切り離す必要もありました。営業部隊は、他社製品を少しでも販売する可能性があるサービス担当者が自分たちの顧客に接触するのを許さないからです。

またサービスの事業構造は、製品事業と全く違いました。大型のアウトソーシング契約では、初年度は開発費がかさんで赤字になります。売ればすぐ利益が出る製品事業とは全く異なり、営業の報酬制度や財務管理も大きく変える必要があります。

IBMのサービス変革は、子会社の独立した立場で独自のビジョンを持ち、小規模ながらもIBM社内でビジネスを展開して、サービスビジネスの本質を把握していたウェルシュの構想から始まったのです。

ちょうどこの時期、私はIBM社員でした。当時ガースナーがIBM全社員に送った「ISSCの取り組みは、IBMをサービス企業へ変革する可能性がある」と綴ったメールを読んだことを、今も覚えています。

このように企業を動かし社員に共有されるビジョンは、社員個人のビジョンとの相互作用から生まれるものなのです。

「それはIBMだからできたんでしょ」といわれるかもしれませんが、当時のIBMは、実に複雑な組織でした。たいていの日本企業は、当時のIBMほど複雑ではないと思います。

トップと現場社員が自由闊達に話し合い、地に足がついたビジョンを創り上げたいものです。

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従業員を解雇しなければならない時、知っておきたいこと

コロナ禍で多くの業界が厳しい状況に追い込まれています。
売上の半分以上が消える状況がいつまで続くかわからない…。従業員を数多く抱えている状況では、とても辛いですよね。
中には従業員解雇を決断したお立場の方も多いと思います。

しかし従業員の解雇は、ともするとそれまで大切に育ててきた企業文化を破壊することもあります。たとえば残った従業員は、同僚が解雇されるのを見て、会社に献身しようとしなくなることもあり得ます。

ここで参考になる本があります。
ベン・ホロビッツ著「HARD THINGS」です。米国シリコンバレーの起業家が、次々と襲ってくる悪夢のような数々の出来事を乗り越え、創業後8年目に16億ドル(1800億円)で自分の会社をHPに売却した経験を凝縮した本です。

本書に「人を正しく解雇する方法」という一節があります。

ハイライトをご紹介します。

スタートアップは失敗が多いものです。もともと財務基盤が弱いので、業績が落ちると社員を解雇しなければなりません。米国シリコンバレーは一見ドライに見えますが、彼らも私たちと同じ人間です。共に一生懸命働いた社員を経営者として解雇する立場になることは、つらいものです。

著者のベンは、合計3回の従業員解雇(レイオフ)を行い、最後には企業を復活させました。これはシリコンバレーでも珍しいことだそうです。その理由は、正しい方法で従業員を解雇したからです。

ベンは本書で、その方法を紹介しています。

①まず自分の頭をしっかりさせる。虎の子の社員を解雇するのは、トップには大きな重圧です。こんな時こそ、まずは動揺を鎮めることです。

②「解雇する」と決めたら、実行を先送りしない。実行までの時間は短い方がいい。情報が漏れれば社内に疑心暗鬼が広がり、さらにリカバリーが難しくなります。迅速に実行すべきです。

③解雇の理由を自分の中で明確にする。解雇するのは業績が悪いからです。会社で発生するあらゆることは、全てトップである自分の責任。まず自分の失敗を認めること。ありのまま伝えることが、失われる信頼を少しでも取り戻すことに繋がります。

④管理職を訓練する。マネジャーは自分で部下を解雇しなければなりません。彼らが部下に説明できるように明確にガイドすること。解雇される側の人は、解雇された日のことを細部に渡って必ず覚えています。会社として、それまで一緒に働いた仲間に向き合えるかが問われています。

⑤全従業員に説明する。このメッセージは解雇する人達向けだけではなく、会社に残る人達向けでもあります。会社に残る従業員も、トップが解雇する人達をどう扱うかを常に注視しています。

⑥常に皆の前にいること。「やっと解雇することを伝えた。疲れた。飲むか」これはNGです。トップは去って行く人たちと話すこと。荷物運びを手伝い、彼らの努力に感謝していることを伝えるべきです。

かく言う私も会社員時代、管理職として解雇する側に立ちました。率直にいうと、もう二度と解雇する立場には立ちたくありません。ただ解雇を言い渡す人も辛いかもしれませんが、生活基盤を失う解雇される側の人は、それ以上に辛いものです。

かつての古き良き時代の日本企業は終身雇用でした。残念なことですが、たとえコロナ禍が終わったとしても、今後は従業員解雇は日常的な光景になる可能性もあります。

そのためにも、現場の管理職も含め、多くのビジネスパーソンが正しく解雇する方法を知るべきだと思います。

そして従業員を解雇しなければならない状況を避けるには、常に会社を維持できる売上を上げ続けること。そのためにもマーケティングを学び、価値作りを実現して会社を発展させ続けることがとても大事なのです。

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朝活永井塾 第47回「意外と知らないサービスマーケティングの基礎」を行いました

1月6日は、第47回の朝活・永井塾でした。今回もZoomでした。全国からのご参加をいただき、有り難うございます。

テーマは『意外と知らないサービスマーケティングの基礎』でした。

サービス業がGDPの7割を超えた現代、マーケティングの世界でサービス・マーケティングが注目されています。最近「ものづくりからことづくり」と言われるのも、このサービスビジネスの台頭があります。 

ただサービス・マーケティングの考え方は、意外と知られていません。

サービス・マーケティングは、従来のマーケティングとは大きく異なります。たとえばマーケティングミックスは4Pでなく8Pで考えます。 そこで今回の朝活永井塾では、下記をテキストにサービス・マーケティングの基本を学んでいきました。

 『真実の瞬間』 (ヤン・カールソン著)
『ラブロック&ウィルツのサービス・マーケティング』(クリストファー・ラブロックほか著)

ご参加下さった皆様、有り難うございました。

【プレゼン部分】

またリアルタイムに参加できなかった方々には動画配信をお送りしました。

次回の朝活勉強会「永井塾」は2月3日(水)。
テーマは「感動よりも、当たり前のサービス」です。申込みはこちらからどうぞ。

2021-01-06 | カテゴリー : nagaijuku | 投稿者 : takahisanagaicom

2021年、サービスマーケティングが一気に拡がる

サービスには、コアサービスと補完的サービスがある

今年は、昨年来のコロナ禍の影響が本格的に様々なビジネスシーンに浸透し、サービスマーケティングの考え方が一気に拡がると思います。

サービスマーケティングでは、サービスを「コアサービス」と「補完的サービス」に分かけて考えます。 レストランにたとえてみましょう。

「コアサービス」とは、サービスを提供する際に不可欠なもの。レストランだと「食事」です。
「補完的サービス」とは、サービス提供に伴い補完的に発生するもの。レストランだとワイン、会計、予約、ウェイターなどです。最近はテイクアウトや宅配もありますよね。

競争が激しくなるとコアサービスは次第に似てきます。ここで差別化するのは難しくなります。レストランも、食事だけでは差別化がだんだん難しくなりますよね。

そこで補完的サービスによる差別化が必要になります。予約しやすくしたり、最近ではテイクアウトや宅配サービスで売上を確保するレストランも増えています。

補完的サービスは情報系の業務が多いので、ITを活用することで効率化が図れます。

サービスはITで大きく変わる

たとえばWeb経由で予約や受付ができれば、顧客にとっても楽だし、受付業務も効率化できます。私の家の近所にある耳鼻科では随分と前からWeb受付を始めていました。待ち順番もわかり、ムダな待ち時間もなくなるので、私はいつもこの耳鼻科に通っています。

一方でコアサービスは、多くの場合、物的設備が必要でした。しかしコロナ禍でデジタル化が一気に進み、ここでもIT活用が可能になりました。

たとえばレストランはお店があることが大前提でした。しかしウーバーイーツや出前館が普及したことで、宅配前提・キッチン施設だけで客席を持たないゴーストレストランが急増しています。

また講演・研修も会場で行うことが前提ですが、これも変わってきました。

たとえば朝活永井塾は、4年前に御成門近くで早朝7時から使える貸し会議室を見つけて「ここなら早朝から1時間を確保し、出勤途中に立ち寄っていただいて朝活できる」と考えたことがきっかけで、始めました。しかしコロナ禍で対面ができなくなり、Zoomに切り替えました。このおかげで全国から参加できるようになり、参加者が増えました。さらに昨年末にご案内した永井経営塾ではこれをさらに進め、月定額・完全オンライン化を実現しました。

このようにコロナ禍で進んだデジタル化は、サービスを提供するにあたって、大きな利便性も生み出しました。恐らくコロナ前の状態には戻らないと思います。

今年は、デジタル化によりサービスマーケティングが一気に拡がっていく年になると思います。

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いま、もの凄いチャンスがやって来ている

コロナの変異種拡大で往来制限がかかり、GOTOキャンペーンが禁止されるなど、年末に来て再び閉塞感が強まっています。資金繰りなど、厳しい状況の方もおられると思います。

一方でこんな時こそ、大きな新規事業のチャンスでもあります。

新規事業を成功させるポイントは…

①顧客が困っている課題があること
②他の誰も、まだその解決策を提供していないこと

①と②が何かを考え抜くことで、新規事業のタネを見つけることができ、「あるべき姿」を実現して困っている人達を助けることができます。これらは皆が困っている状況だとよく見えます。逆に万事順調な状況だと、なかなか見えません。

言い換えれば、皆が困っている状況は時代の大きな転換点でもあります。

さらに新規事業を成功させるには、

③今の「コンフォートゾーン」(心地よい状況)を脱し、
④新たなテクノロジーを活用すること

です。

コロナ禍で、私たちは「コンフォートゾーン」から否応なく叩き出されました。 一方でデジタル技術活用も一気に進みました。

10年後、「あのコロナ禍は苦しかったけど、それまで想像もしなかった新しいモノが沢山生まれた時期でもあった」と振り返るようになると思います。

その新しいモノを、自分たちで生み出すか?
あるいは他の人が生み出すのを見ているのか?
それを決めるのが、今のタイミングだと思います。

実は先週来ご案内している「永井経営塾」も、このように考えた新しい挑戦です。リアル対面講演・研修が出来なくなった一方で、オンライン会議が当たり前になったことでこのやり方が可能になり、Kadokawaさんとの協業で進めています。MBA必読書50冊シリーズを皆様の読んでいただいているベストタイミングで企画できたと思いますので、何とか成功させたいと思っています。

実に苦しい時期ですが、よく見ると、いまもの凄いチャンスがやって来ています。一緒に頑張って、この苦しい時期を乗り切りましょう。


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永井経営塾、企画の裏話(オンライン研修の方が、満足度は高かった!)

一昨日12/23に発表した永井経営塾は、早速数多くのお申し込みをいただいております。感謝感激です。有り難うございます!

ちなみに永井経営塾は、こんな形で行います。

 ■月定額制の完全オンライン。入会すると会員サイトで講義動画を見られます。自宅でもカフェでも、好きな時に好きな場所から参加できます

■ネット上の参加者限定コミュニティに入れます

■私の著書10冊もネット上で読めます

■さらに月1回、自宅から半日Zoomオンラインワークショップに参加可能(プレミアム会員のみ) 

永井経営塾をこのような形に設計したのは、理由があります。 本日はその裏話をお伝えしたいと思います。

昨年末から1年間の予定で、私はある企業様で月イチ土曜日に半日ワークショップ研修(対面)を行っていました。 しかしコロナ禍のため、3月に一旦休止になりました。

 一方、コロナ禍でZoom会議が当たり前になりました。仕事ではかなり使えます。「これなら研修もできる」と考えました。

そこでこの企業様とご相談し、5月からZoomに切り替え、研修を再開したところ驚きました。参加者の満足度が跳ね上がったのです。 

以下は参加者の典型的な声です。ちなみに研修参加者は、Zoom経験がない方々が大多数です。

【Aさんより】「講義動画が、好きな時に好きな場所で何回も見られるので、学びが進む」(それまで講義はワークショップ当日にしていました。オンライン研修のために、事前に講義動画を見るように変更しました。その結果、分からないところは何回も確認できるようになりました) 

【Bさんより】「家族と自分の負担が大幅に減って、助かる」(それまで対面研修のために土曜に全国から集まっていたのですが、オンラインで自宅から参加できるため、ご家族の負担は減り、移動も不要になりました) 

【Cさんより】「ワークショップは、対面よりもネットの方が議論しやすい」(オンラインでお互いの顔が真正面で見えるし、普段話さない人も意外と話しやすい。さらに講師の私の顔や説明資料も大きく見えるようになりました)  

「対面研修よりもオンライン研修の方が、研修の満足度が高い」というのは、実に衝撃的な発見でした。 

ちょうどこの頃、私はKadokawaさんと「永井経営塾」の原案を考えていました。この頃は対面研修を前提に企画していたので、コロナ禍により企画は中断していました。 そこで、こう考えました。

 『永井経営塾も完全オンラインで行えば、参加者に大きな価値があるはずだ。 しかも講義動画を見るだけなら、より多くの人達が参加できるから、リーズナブルな料金で提供できる。「マーケティングで日本を元気にする」という私の願いも、実現に近づくのではないか?』 

そしてKadokawaさんと話合いを繰り返し、今回ご案内している永井経営塾が出来上がりました。 恐らく皆様にも、ご満足をいただけると思います。

12/30(木)までのお申し込みなら1ヶ月500円で体験できますので、この機会に、できるだけ多くの方々に体験していただきたいな、と思います。 

詳細と申込みはこちら

2020-12-24 | カテゴリー : nagaikeieijuku | 投稿者 : takahisanagaicom

読み話し書く能力が必要な理由と身につける方法

最近痛感するのは、「聞き読み話し書いて数字で表現する」という基本的な能力を持っていないビジネスパーソンが少なくないことです。たとえば、

・メールで何を言いたいのかが、わからない。
・話していることにロジックがなく、まとまりもない。
・数字の裏付けがない。主観で書いている。
・人の話しをちゃんと聞いておらず、的外れの答えをする。
・そもそも書いた文章の意味を、読み取れていない。

これって随分と損をしていますよね。

ドラッカーが1954年に書いた経営学最高の古典「現代の経営」を読んでいたら、まさにこのことが書かれていました。かの国でも昔から同じ状況のようです。

—(以下、引用)—

経営管理者は人を操ろうとしてはならない。一人ひとりの仕事について、動機づけし、指導し、組織しなければならない。そのための唯一の道具が、話す言葉であり、書く言葉であり、数字の言葉である。

仕事の成果は、聞き、読み、話し、書く能力にかかっている。

経営管理者に必要なスキルのうち今日の経営管理者に最も欠けているものが、この読み、書き、話し、数字で表す能力である。

経営管理者は、話し言葉や書き言葉によって人を動機づける能力がなければ成功しえない。

—(以上、引用)—

現代人は、命令するだけでは能力を発揮しません。心の底から納得し、内発的な動機付けを持って自ら動くようになれば、放って置いても大きな能力を発揮します。

そのために人の上に立つ人にとって必須なのが、この「聞き読み話し書いて数字で表現する」なのです。

逆に考えれば、地道に「聞き読み話し書いて数字で表現する」能力を身につければ、人の上に立った時に大きな武器になります。

ドラッカーはそのための方法も紹介しています。

—(以下、引用)—

それらの能力は若いときにこそ学んでおかなければならない。

自らの考えを表現する方法、言葉とその意味、文章を書くことを教えることである。

自らの論文についての口頭による説明ほど、若い人が経営管理者になるための準備として有効なものはない。ただし卒業直前の一回だけでなく、常時行わせる必要がある。

—(以上、引用)—

つまり内容をチェックする相手を立てた上で、文章と口頭によるアウトプットが有効だということです。

ドラッカーは「若いときにこそ学ぶべき」と言っていますが、これは現役ビジネスパーソンが能力を鍛える上でも、役立つ箴言だと思います。


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売れるヒントは、そこにある

「売れるヒントが見つからない」
「ウチの強みを活かせないか」

…と悩む人、多いですよね。

ヒントは私たちのすぐ身近にあります。

アート引越センターの創業のきっかけも、身近な観察でした。今年9月、日本経済新聞「私の履歴書」で、アート引越センター創業者の寺田千代乃さんがその時のことを書いています。

1970年代前半、日本はオイルショックの不況の真っ直中でした。
当時寺尾さんの会社は、アルミ製の箱車でオムロンの精密機器輸送の下請けをしていましたが、仕事は減る一方でした。

ある日、家族で車に乗って走っていると、夕立が来ました。道に止まっていたトラックから運転手が降りて、急いでシートをかけています。荷台にあるのは引っ越し荷物のようで、少し濡れています。そこで気がつきました。

「ウチのトラックはアルミ箱車なので、荷物は濡れない。オムロンの仕事は平日限定。引っ越しは週末だから箱車は使える」

ちょうどその頃、新聞で「引っ越し貧乏」という見出しの記事がありました。大阪だけで引っ越しで100億円の出費があることがわかりました。住民基本台帳人口移動報告というデータで調べると、市町村をまたいで移動する人は年間800万人います。

実に多くの人が引っ越ししています。鉱脈を探り当てたのですね。

そこで新たに引っ越し事業を始めました。

当時はスマホがないので、引っ越ししたい人は電話帳で引っ越しを調べます。
そこで電話帳で最初に乗る名前を考えました。 50音順ではひらがなよりカタカナ、文字より「ー」(長音)が先に載ると分かりました。

そこで「アー」で始まる社名を考え、「アート引っ越しセンター」になりました。

その後、「荷造りご無用〜0123」のアート引越センターの躍進は、ご存じの通りです。

会社目線を一旦外して、消費者目線で日常を見てみると、消費者の「お困りごと」は意外と見つかるものです。

たとえばニューヨークのレストランでは屋外で食事が推奨されていますが、ニューヨークは極寒。夜に野外で食事なんてツライですよね。そこである日本食レストランでは、屋外にコタツを並べています。これがニューヨーカーには大人気で予約待ちだそうです。

いま、コロナ禍で「お困りごと」が急増しています。そんな時こそ、自分たちの強みを活かして解決策を考え、新規事業を立ち上げるチャンスなのです。


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「成長よりも生き残り」のセコマから学ぶ新たな企業のあり方

コロナ禍で多くの企業が苦しんでいます。
日本では急速に少子高齢化が進み、環境問題もそろそろ本当にヤバイ状況です。

こんな中、我々はどうすればいいのか?

そのヒントがありました。日経ビジネス2020.12.07号冒頭にある、北海道のコンビニチェーン・セイコーマート(セコマ)の丸谷智保会長へのインタビュー記事です。

セコマは商圏人口900人の過疎地(しかも4割が購買力が小さい高齢者)にも出店しています。こんな地域で店が成立するのは、他に店がなく同じ人が毎日何度も会に来るからです。当然店の利益率はギリギリのところもありますが、丸谷会長は「過疎地では収支トントンで十分」と考えています。

—(以下、抜粋)–

そこに住む人の生活を守らなければ、(農業/林業/水産業などの)生産空間も守られなくなります。「地域おこしよりもまず地域残し」といつも言っているのですが、サステナブルな体制をつくることで地域を残さないと、地域振興のローカルプロモーションもできなくなります。

だから店が必要とされているならば、できる限り応えたい。そのためには要するに赤字にならければいいのです。

…どんなときも地域のため、お客様のためを最優先していれば、商売は続けられると私は考えています。

—(以上、抜粋)—

過疎化が急速に進む北海道で、いまやセコマはなくてはならない生活インフラとなっています。

今後も、想定外の大変動はますます増えていきます。
世界全体で豊かになった21世紀は、20世紀のような経済成長は見込めません。

こんな時代こそ、「成長よりも生き残ること」が何よりも大切です。

「お客様のため」を最優先し、北海道に特化して地域の顧客に密着するセコマは、地域の顧客にとって必要不可欠の存在になっています。

セコマは「21世紀にあるべき企業は何か」という問いに、一つの答えを示していると思います。

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朝活永井塾 第46回「オープン・イノベーション」を行いました

質疑応答の様子です

12月2日は、第46回の朝活・永井塾でした。今回もZoomでした。全国からのご参加をいただき、有り難うございます。

テーマは『オープン・イノベーション 「宝の持ち腐れ」から抜け出すために』でした。

私は大企業の商品開発エンジニアとお話しする機会が多いのですが、いつも二つのことに驚かされます。

1つ目は「こんな凄い技術を持っているんだ!」ということ。日本企業は凄い技術を持っています。

2つ目は、エンジニアの方々が社内に閉じこもって社外の人と会おうとしないため、そんな凄い技術が社外で全く知られておらず、使われもせずに、宝の持ち腐れになっていることです。

「実にもったいないなぁ」といつも思います。

社内だけでイノベーションを進める方法をクローズド・イノベーションと呼びます。「自前主義」とも呼ばれますが、現代では社内だけで成功させるのは難しくなっています。むしろアイデアを世の中とオープンにやり取りするオープン・イノベーションの成功確率の方が高いのです。

このオープン・イノベーションは、ヘンリー・チェスブロウ教授が提唱した概念です。

そこで今回の朝活永井塾では、下記をテキストに、オープン・イノベーションとは何か、その限界と課題は何かをご紹介し、さらに日本企業にとって現実的な解決策であるオープン・クローズ戦略について考えていきました。

「OPEN INNOVATION ハーバード流 イノベーション戦略のすべて」(ヘンリー・チェスブロウ著)

ご参加下さった皆様、有り難うございました。

【プレゼン部分】

オープンイノベーションの考え方

オープン&クローズ戦略の考え方と事例

またリアルタイムに参加できなかった方々には動画配信をお送りしました。

次回の朝活勉強会「永井塾」は来年1月6日(水)。
テーマは「意外と知らない サービス・マーケティング」です。申込みはこちらからどうぞ。

10〜20年前に学んだマーケティングの多くは、既に古い


「マーケティングを20年以上やっている」という人、多いのではないでしょうか? かくいう私もそんな一人です。

しかし10〜20年前のマーケティングの常識は、現代では古くなっているものが少なくありません。たとえば、多くのマーケターの常識は…

・顧客ターゲットを絞り込め。マスマーケティングは大量生産大量販売時代の遺物。
・ご贔屓の得意客を大切にして、顧客生涯価値を最大化せよ。
・マーケティングはSTP+4Pで考えろ。

しかしこの通りにしても上手くいかない経験をしている人も多いと思います。

たとえば顧客ターゲットを絞り込んで「全然売れない」…よくありがちですよね。これは知らない間に大きな機会損失をしているのです。むしろ商品やサービスの性格をカッチリと決め、目立たせた上で、顧客に併せてきめ細かくカスタマイズして「いつでも誰にでも販売します」という戦略の方が成功します。(これは11月10日の当ブログでも書きました)

また行きつけの店があっても、もっといい店が出来れば店を変える人は多いと思います。お客様も同じです。「むしろ非顧客層やライトユーザーを含む幅広い顧客にアプローチすることで、成功確率は高まる」という考え方も生まれています。

また、今一番マーケティングでホットなのはサービスマーケティングです。実はこの分野は米国も追いついておらず、北欧が一番進んでいます。このサービスマーケティングでは、マーケティングミックスを4Pでなく8Pで考えます。

またコトラーが提唱するマーケティング3.0では、いまやSTP+4Pだけで考えても消費者は買わない時代なので、社会課題を考えようとします。SDGsやCSVもこの流れにあります。

時代がもの凄い勢いで変わっているので、マーケティングも進化し続けています。結果、ほんの10年でマーケティングの考え方も陳腐化します。ちなみにコトラーは来年「マーケティング5.0」という本を出すそうです。コトラー先生、速過ぎ…。

ただし現行理論は必ずしも完全に否定されません。
多くの場合は、現行理論は新理論に吸収されていきます。
世の中は弁証法的な議論を通じて、進化を続けているのです。

だから現状に安住せずに、最新理論を常に学び続けて活用すれば、半歩先んじて勝てるようになります。

これはこれから新たにマーケティングを学ぶ人にとっては、むしろ大きなチャンスだと思います。

逆に考えると、影響力が大きいマーケティングのベテランほど最新理論を学ぶ必要があるのかもしれませんね。


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「はじめに」を書くのは最初?最後?

ビジネス書編集者でこうおっしゃる方が、意外とおられるようです。

「まず企画段階で、著者に『はじめに』を書いてもらいます」

うう…。私は真っ先に落とされそうです…。
というのは、私が『はじめに』を書くのはいつも最後の最後なので。

今月出版した「MBAマーケティング必読書50冊」もそうでした。 「はじめに」を書いたのは、50冊分の紹介を全て書き終え、「おわりに」も書き終えた後。 しかも何回も書き直しました。

今回の「はじめに」は合計4ページ。
後半2ページは2〜3回の書き直しでほぼ固まりました。
大変だったのが、最初の2ページ。ゼロから書き直すこと5〜6回。それでも決まらず、バージョンを2つに絞り込み編集者と何回も打ち合わせ。

「ヤバイ。決まらない。見切り発車か?」

…なんて考えも頭をよぎりつつ、また書き直し。

最後の文章は、第三校の校了時(3回目の校正を完了して、印刷機を回す直前)に決まりました。 快く「納得いくまで時間をかけてください」とおっしゃっていただいた編集の皆様には深く感謝です。

なぜこんなに「はじめに」で時間をかけるかというと、ビジネス書の場合、「はじめに」の出来次第で売れ行きが大きく左右されるからです。

書店で観察していると、店内をブラブラと歩くお客さんはこんな感じで本を選んでいます。

①面白そうな本を見つけて、手に取る→表紙やタイトルで判断
②パラパラとめくり「本の感じ」を見る→面白そうか否か、印象で判断
③「はじめに」にサーッと目を通す→著者と自分との相性を判断
④最初の十数ページにサーッと目を通す→本当に読み通せるか、面白いかを判断
⑤納得すると、レジに持っていく→ここでお買い上げ

つまり「はじめに」で本のエッセンスを訴求しないと③の試験をパスできず、落第(=買われない)です。

難しいのは、当たり前のことを書いてもスルーされると言うこと。

「マーケティングは重要です。皆さん学びましょう」

「はじめに」にこんなことを書いても、「当たり前だろ。おととい来やがれ」と言われるのがオチです。(もちろん皆さんは、こんな下品な言葉は絶対に口に出しませんが(笑))

ではどうするか?
「単純明快、意外性があり、具体的で、信頼でき、感情に訴求する物語」をわかりやすく訴求することが必要なのです。

ですのでいつも全てを書き上げた後に、本の内容を踏まえ、四苦八苦しながら「はじめに」を書き上げます。

今月出版した「MBAマーケティング必読書50冊」の「はじめに」も、そうして書き上げました。

果たして、狙い通りになったでしょうか?
発売から10日が過ぎて、読者の皆様からの声をドキドキしながら待っている所です。

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「デジタルって何?」というDX先進企業ニトリの似鳥会長

先週は、毎年参加している世界経営者会議でした。
世界のトップ企業の経営者が何を考えているか、生の声で聞くことができる貴重な場です。

ニトリの似鳥昭雄会長が登壇した時のこと。今回は2部構成でした。

第1部は、一橋大学の楠木健先生との対談。
ニトリはコロナ禍でも成長を続けています。要因の1つが、製造と小売に加え物流・貿易を連携させていること。ニトリの商品は95%が海外生産で、国内に届くまで2-3ヶ月分かかります。コンテナ量は年間17万個と日本一の規模で、大型荷物ではヤマト運輸に次ぐ規模です。そこで物流センターを自社で持ち、倉庫オペレーションに投資してきました。

加えてECにも投資。ニトリのアプリユーザーは通常の2倍買うので、アプリの年内目標は700万ユーザー、将来的にアプリ売上1000億円を目指しています。アプリユーザーの7-8割は店とアプリを使い分けています。

ニトリはこのように生産から顧客に届けるまで、デジタルで一気通貫のシステムを構築しています。まさにDXの先進企業ですね。

第2部は、日本経済新聞社 編集委員兼論説委員の中村直文さんとの対談。似鳥会長と中村さんは取材を通じて昔から既知の仲のようで、対談はリラックスした雰囲気でした。

冒頭、中村さんが『視聴者から「DX移行で一番大切なことは何ですか?」という質問が来ていますが…?』と似鳥会長に尋ねたときのこと。

なんと似鳥会長はこう答えました。

『DX?なにそれ?「デジタルなんとか」って、横文字言葉は難しくてよくわからないんだよ』

そしてこう続けました。

『よくわからないけど、お客様にとって何が大切なのかを考えることですよ。自分の立場に居続けると、お客様の立場で考えるのは難しいですね』

お話しを聞いていて、まさに「我が意を得たり」と思いました。

まさに昨今のDX狂想曲の中で見失われているDXの本質を見たからです。(ちなみにDXとは「デジタル・トランスフォーメーション」の略です。世の中では色々な形で定義されていますが、要は「テクノロジーを使って企業の経営のあり方を根底から変化させること」という意味です)

あたかもDXを魔法のように祭り上げる風潮に、私は危うさを感じていました。

DXはあくまでも手段です。

本来必要なことは、お客様にどんな価値を提供すべきなのかを徹底的に考え抜くこと。
そのための手段として、デジタル化が最も優れた手段ならば、活用する。
最初に考えるべきはDXではなく、「お客様にどんな価値をどのように提供すべきか」だと思います。

「デジタルなんとかって、よくわからないだよ」という似鳥会長こそが、DXの本質を掴んでおられると思った次第です。

 

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マーケティング理論は、進化し続けていく

今週「MBAマーケティング必読書50冊を1冊にまとめてみた」を出版しますが、執筆して身に染みて実感したのは、マーケティング理論が常に進化し続けていると言うことです。

たとえばマーケティングの世界では、かつてマスマーケティングが王道でした。

しかし消費者が洗練されてくるとマスマーケティングは廃れ、「顧客を絞り込め」と言われるようになり、ターゲットマーケティングが主流になっていきました。

現代ではこれがさらに見直され、マスマーケティングに回帰しつつあります。しかしかつてのマスマーケティングからは一段進化しているのです。

元々ターゲットマーケティングの発想は、こうでした。

マス市場は、単一のマーケティングミックス(4P)を展開するマスマーケティングでは攻略できない。
だからマス市場は狙わず、顧客を絞り込む。

しかし現代のマスマーケティングは、こう考えます。

マス市場を、きめ細やかなマーケティングミックス(4P)を駆使したマスマーケティングにより攻略していく。

たとえばUSJはかつて「映画のテーマパーク」というポジショニングでしたが、ファン層は大人の独身女性が中心でした。ターゲット顧客を絞り込み過ぎて集客は伸びず、低迷していました。

そこでポジショニングを「世界最高のエンターテイメントを集めたセレクトショップ」に変え、逆向きジェットコースターでスリルシーカーを集客、さらにファミリー客、ハロウィーン客、加えてハリーポッター、マリオ、ポケモン、ワンピースなどで多くの顧客を集め、復活しました。

このように現代のマスマーケティングは、

・細やかな商品・サービス
・細やかなチャネル
・細やかな販促
・細やかなプライシング

つまりターゲッティングは塩味のようにほんの少しに留め、「いつでも誰にでも販売」という戦略を展開しています。あえて顧客は絞り込まず、マスの様々な顧客にあの手この手で働きかけていくのです。

 

世界は変化し続けているので、このようにマーケティング理論も進化し続けています。

勝負は多くの場合、ほんの半歩の差で決まります。
新たな理論を知り活用できれば、敵に半歩先んじることができ、10回戦って9回勝てるようになります。
最新マーケティング理論を学び使えるようにする意味は、ここにあると思います。

「不易と流行」という言葉がありますが、「MBAマーケティング必読書50冊を1冊にまとめてみた」では、昔から変わらない定番書ともいえる「不易」と、新たな時代にあわせて登場した最新理論の「流行」が学べるマーケティング良書50冊を厳選しました。

本書はこの方針に沿ってわかりやすく仕事で活用できるようにするために、昨年11月から書き始めて、完成まで丸1年間かかりました。
ぜひ多くの方々に役立てて欲しいと願っています。

 

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Zoom朝活永井塾 第45回「バイロン・シャープのブランド論2」を行いました

11月4日は、第45回の朝活・永井塾でした。今回もZoomでした。全国からのご参加をいただき、有り難うございます。

テーマは「バイロン・シャープのブランド論2」でした。

私たちは「『このブランドと言えば、■■■』と思ってもらえるような強いブランディングを作るべきだ」と思いがちです。

しかし「売れるチャンスが狭まるので、それは大間違い。むしろより多くの場面でブランドが想い出される状況を作り出すべきだ」と反論するのが、バイロン・シャープです。

ターゲットマーケティングも同様です。私たちは「市場の特定部分に狙いを絞り込もう」と考えがちです。しかしバイロン・シャープは「不用意に顧客ターゲットを狭めるのは、売れる可能性がある市場を必要以上に切り捨てているだけ」と反論します。

マーケティングは、常に進化しています。

新しいマーケティング理論を学ぶことで、打ち手は増えていきます。
そこで今回の朝活永井塾では、今年8月に出版された下記をテキストに、このテーマを考えていきました。

「ブランディングの科学 新市場開拓篇」(バイロン・シャープ、ジェニー・ロマニウク著)

ご参加下さった皆様、有り難うございました。

【プレゼン部分】

 

またリアルタイムに参加できなかった方々には動画配信をお送りしました。

次回の朝活勉強会「永井塾」は12月2日(水)。
テーマは「オープン・イノベーション」です。申込みはこちらからどうぞ。

2020-11-09 | カテゴリー : nagaijuku | 投稿者 : takahisanagaicom

テーマ設定で、戦略の99%が決まる

様々な戦略立案に関わってきて実感するのは、「どんなテーマに取り組むのか」で、その後の戦略の成否がほぼ決まると言うことです。

いいテーマを設定できたときは、その後の戦略策定→戦略実施がサクサクと進み、狙い通りの成果が出ます。これが「筋がいい戦略」です。

しかしテーマ設定の筋が悪いと、戦略策定に苦しみ、戦略実施も苦しむ上に、成果がなかなか出ません。これが「筋が悪い戦略」です。

このテーマ設定で重要なのが、「問題意識」です。

いま、どんな問題に直面しているのか?
いまの状況は、どうあるべきなのか?
あるべき姿になっていない本当の原因は、どこにあるのか?
その原因は、どのようにすれば解決できるのか?

これらを考え抜くことで、よい戦略が策定でき、スムーズに実施策に展開でき、サクサクと実行して成果を上げることができます。

言い換えれば、よいテーマを設定するためには、自分自身が抱えている課題を明確にすることです。

いま自分自身が抱えている課題が、戦略の成否を決めるのです。

 

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ほとんどの人は少しの手間を惜しみ、読書で損している

人は自分の体験から、様々な学びを得ます。
しかし体験できる量には、限界があります。そこで役立つのが読書です。

読書による仮想体験は、自分の直接体験と比べて質は劣りますが、限られた時間内で圧倒的な量の学びを得られます。

「学び」という点で、読書は時間当たりのコスパはかなり高い投資です。

読書の学びは、ちょっとしたことで最大化できます。
心理学者アドラーは著書「本を読む本」という本で、そのヒントを紹介しています。一部を引用します。

「ドライブに行くまえに道路地図を調べるようなつもりで、目次を見るとよい。たいていの人は必要に迫られるまで目次を一瞥すらしないのはあきれる」(p.41)

「著者は読者にこれから読む本の種類をわかってもらうことが大切だと考えている。だからこそ手間をいとわず序文を書いたり、表題や目次にくふうを凝らす」(p.73)

私も本を書く時は、目次や序文、さらにタイトルや表紙の帯などは、編集者と相談しながらかなり時間をかけて作り込んでいます。

これらは本当に読んでいただきたい読者に本を届けるためのメッセージなのです。

しかし、目次や序文をあまりチェックせずに本を読み始める人は多いのではないでしょうか?
これらを見ないのは貴重な自分の時間をドブに捨てているようなものです。

私は本を読む際には、序文や目次、あとがきなどをかなり細かくチェックした上で、読み始めるようにしています。
ネット上の書評などもチェックします。ただネット上の書評は、本の内容を正確に紹介せずに思い込みで書いている場合も決して少なくないので、「信頼性は6−7割位だろう」と思いながらチェックしています。

しかしそれでも読み始めて「でもなんか違う」と思うことがあります。
その場合は、その時点でそれ以上読むのは止めます。
読書は自分のかけがえのない時間を使います。
時間を使って読んでも得られるものが少なければ、その時間とかける労力はムダになってしまいます。

「読書は時間投資」という意識は、大切だと思います。

 

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理論を知っていることと、理論を仕事で使えることは、全く違う


マーケティング理論は、誰でも机上で学べます。
理解するのには少し苦労するかも知れませんが、知識として身につけることはできます。
これが「知っている」状態です。

しかしこれでは、仕事で使える状態になっていません。
残念ながら、この段階に留まっているビジネスパーソンは多いように思います。

理論を使えるようにするには、実際に自分の仕事に理論を当てはめて使ってみることです。
これが、実は意外と大変です。これまで使ったことがない思考方法を求められるからです。ちょうど脳内に全く新しい運河を作るのに似ています。

しかし実際に自分の仕事に理論を当てはめて使ってみて、実際に成果を出す体験をすると、次から使いこなせるようになります。

つまりいったん新しい運河を脳内に作れば、次からそこに水が通るようになるわけです。

私もマーケティングの仕事を始めて数年後に、ある事業戦略の立案と実施を担当した時、手探りで色々な人たちの意見を聞きながら、理論に沿って戦略を立てるのに1ヶ月ほどかかったことがあります。この戦略を2年間かけて実施した結果、大きな成果が挙がりました。これがきっかけでマーケティング戦略を立てるパターンを身につけることができました。

今では1時間程度の打ち合わせで、人の話しを聞きながら、コーチングの形で一緒に戦略を考えながら立てられるようになりました。

理論は、知っているだけでは何の価値も生みません。
価値を生み出すには、理論を仕事で使えるようになることです。
そのためには、実際に理論を仕事の実戦で使うことだと思います。

実際に仕事で理論を使って成功すればしめたもの。
一生使える、あなたの大きな武器になるはずです。

 

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なぜ経営幹部は「要は、何なんだ?」と言うのか?

社内外を問わず、経営幹部へプレゼンしている最中に、こう言われた経験がある方は多いのではないでしょうか?

「で。言いたいことは、要は何ですか?」

予想もしなかった質問に、「そもそもは、ですね…」と詳しい経緯の説明を始めてしまい、ますます相手が「?」な顔をしてドツボに嵌まってしまう、という方も少なくないかもしれません。かく言う私も、散々そんな経験をしました。(お恥ずかしい…)

この原因は、経営幹部のことを勘違いしているからです。
多くの人はこう考えて、経営幹部へのプレゼンの準備をします。

「相手は偉い人だ。完璧に準備しよう」
「完璧を期すために、資料は詳細に」
「偉い人だから、すぐにわかる筈」

こうして情報がミッチリ小さい字で詰め込まれた、非常にボリューム感たっぷりのパワポ資料が出来上がります。

一方で、経営幹部はこんな状態であなたのプレゼンを聞いています。

(今朝からこれが8回目の会議だな。疲れたなぁ)
(この後は、役員会だっけ。社長にあの件を報告か。気が重いな)
(あの懸案も未解決だな。あの件も今日中にA部長に確認しなきゃ)

要は朝から仕事が詰まっていて、頭の中で様々な案件を抱えているワケです。
こんな状況で、みっちりと小さい字で書かれたボリューム感あるパワポ資料を見せられたら、どうなるでしょう?

(おいおい。こんなの見せるなよ。ちゃんと整理して見せてよ)

誰だってこう思いますよね。で、こう紳士的におっしゃる訳です。

「で。言いたいことは、要は何ですか?」

ここまでわかれば、解決策がわかると思います。
要はわかりやすく、伝えたいことが相手の頭の中にスーッと入っていくような資料を作ればいいのです。

そのためには資料を作る人が、ちゃんと情報を整理して、シンプルにする必要があります。たとえばパワポ資料を作る場合、

・最初にプレゼン全体で何が言いたいかを、箇条書きで4〜6行程度にまとめる。
 たとえば「問題点→その原因→提案(=解決策)→費用→経営幹部への要望」という感じです。
・その箇条書きに沿って、チャートの順番を見直す。
・不要なチャートを削除し、重複するチャートを一つにまとめる
・詳細すぎる情報(細かいデータ)は見せない。洞察とカギとなる数字だけ示す。
・チャート上の重複情報は一つにまとめる。
・テキストは28ポイント以上の大きな文字で、1行十数文字程度で書く

要は、情報を増やすのではなく、徹底的に削りに削り落とすこと。
目安としては、その業務を全く知らない家族に話しても通じるレベルまでわかりやすくすること。
こうすれば「要は何ですか?」と言われなくなります。

ちなみにアマゾン社内ではパワポは使用禁止。ワードを使ってA4で基本1枚(大がかりなプロジェクトだと6枚)でまとめるルールになっており、会議の冒頭は、全員がこの文書を読む時間だそうです。部下から毎日膨大な報告を受けるジェフ・ベゾスが「何を言いたい資料か分からない」と怒って、この方法を始めたと伝えられています。

経営幹部の立場に立って考えれば、「要は、何なんだ?」と言われることは少なくなります。

 

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Zoom朝活永井塾 第44回「両利きの経営」を行いました

10月7日は、第44回の朝活・永井塾でした。今回もZoomでした。全国からのご参加をいただき、有り難うございます。

テーマは「両利きの経営」でした。

コロナ禍で今までの常識が一気に変わりました。
激しかった市場の変化は、さらに激烈になりました。
そこで多くのビジネスパーソンの悩みが「いかに変わればいいのか?」

私も、多くの方から「どう変わればいいのでしょうか?」というお悩みをよく伺うようになりました。

その多くのお悩みに対応する現実的な処方箋は、既に「両利きの経営」(チャールズ・A・オライリー、マイケル・L・タシュマン著)に書かれているのを、ご存じでしょうか?

著者の二人はイノベーション研究の第一人者として、コンサルタントとして企業に入り、数多くの事例分析をしています。
本書でも実に多くの企業事例に圧倒されます。

新規事業と既存事業とでは、やり方が異なります。
新規事業は、未知の新分野への探索が必要です。リスクが高いので、試行錯誤を通じて失敗から学ぶことが必要です。
既存事業は、既存の組織能力を活用し、確実に効率を追求する深化が必要です。

探索と深化は正反対の考え方が必要なので、両立が難しいのです。
そこで、探索と深化を両立する両利きの経営が必要になります。
いわば「あえて、二兎を追う戦略」です。

企業は既存事業で、実に数多くの強みを育んでいます。
新規事業の探索で、せっかく持っている自社の強みを活かさないのは、実にもったいないこと。そのために両利きの経営には、様々な配慮が必要になります。

そこで今回の朝活永井塾では下記をテキストに、このテーマを考えていきました。

「両利きの経営」(チャールズ・A・オライリー、マイケル・L・タシュマン著)

ご参加下さった皆様、有り難うございました。

【プレゼン部分】

 

またリアルタイムに参加できなかった方々には動画配信をお送りしました。

次回の朝活勉強会「永井塾」は11月4日(水)。
テーマは「バイロン・シャープのブランド論(2)」です。申込みはこちらからどうぞ。

戦略で相手の面子を考え始めると、プロジェクトは失敗する

事業戦略で何よりも重要なのは、首尾一貫性です。

・事業では何を狙うのか?
・そのために顧客のどんな課題に応えるのか?
・その課題への解決策は何か?
・解決策を実現する商品やサービスをどのように提供するのか?
・顧客にどのように伝えるのか?
・顧客にどのチャネルを使って販売するのか?
・価格はどうするのか?

戦略ではこれらが首尾一貫していることが必須です。

筋の悪い戦略は、狙いが明確でなかったり複数あったりします。そして課題も明確でなく、各要素もバラバラ。こんな戦略は、まず失敗します。

往々にして筋の悪い戦略は、戦略を決める段階で、メンバーの面子を考え始めることで生まれます。全員の意見を取り込んで戦略を立てるのは最悪。狙いが複数あったり、曖昧になったり、本来は必要がない要素が入ったりします。

「一生懸命考えた仲間の面子を立てたい」という気持ち、痛いほど分かります。
しかし面子を立てて筋の悪い戦略になり、失敗するのは本末転倒です。

そもそも戦略を考える各メンバーは、「いい戦略を作るには、自分の案は喜んで捨てる」ということを腹から納得することが必要です。

そしてリーダーは「全員の案を平等に取り入れる」という安易な道は選ばず、チームで納得いくまで議論して考え抜き、複数案を元に最も優れた一つの案を生み出すことです。

ここで行うべきは、弁証法の「止揚」という考え方です。
ちょっと難しい言葉ですが、そのキモは決して難しいことではありません。

A案と反対のB案があった場合、妥協案を作るのではなく、徹底的に議論をすることで、より優れたC案を作り出すという考え方です。

たとえばこんな案があったとします。

A案:店舗をリニューアルして、新商品をガンガン売るべきだ
B案:今どき消費者はスマホで買う。店舗では売れない

これだとA案とB案は真っ正面から衝突してします。
そこで私たちは、ついこんな妥協案を考えがちです。

妥協案:店舗をリニューアルして新商品を販促するとともに、並行してスマホでも売る

これだと事業の戦力が分散されてしまいます。これが「筋が悪い戦略」です。

そこで妥協するのではなく、メンバーでA案とB案について率直に議論します。

「店はもう古いよ。新商品を店に置いても、結局店では買わずにスマホで買う人多いでしょ」
「でも、スマホだけでも限界あるよね。商品の実物を触らないと、お客さんは買わないし。店は必要なんじゃない?」
「あ、それなら店で売ることに拘らなければいいんじゃないの?」
「確かに。店はショールーム化すればいいのかもしれないよね」

現実にはこんなに簡単ではないでしょうけれども、本音でこんな議論ができれば、より優れたC案が出来ます

C案:店は商品を見せるショールームに徹して売らない。販売はスマホで行う

実際にこれを実現しているのが、電気自動車のテスラです。
テスラは1000万円以上の車もありますが、本を買う感覚でスマホで買えます。
実物はテスラの店舗で確認できます。

戦略で相手の面子を考えて、妥協案で安易に決めると、筋の悪い戦略が生まれ、プロジェクトは失敗します。
徹底的に議論をして考え抜きましょう。

 

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やっとマーケティングの時代がやってきた?

数週間前、8月18日に日本経済新聞にこんな記事が掲載されました。

「ファミマCMOに足立氏 日本マクドナルドを再建 ポスト新設」

マーケティングを統括するCMO(チーフ・マーケティング・オフィサー)に熟練マーケター就任のニュースが、なんと7段抜き記事です。

一企業のマーケティング責任者就任が、まるで経営トップ就任並の扱いの記事。確実にマーケティングがビジネスの中心になりつつあることを象徴する出来事です。

「マーケティング」がここまで注目を集めた時代は、これまでなかったように思います。

2011年に「100円のコーラを1000円で売る方法」を出版した際に、担当編集者と「本のタイトルに『マーケティング』という言葉を入れると、ビジネスパーソンは『難しそう…』と敬遠して手に取らないので、『マーケティング』という言葉は外しましょう」と話し合っていたことを思うと、わずか10年間で隔世の感がします。

11月に出版する本は、この「マーケティング」という言葉をかなり前面に押し出した本になります。
果たしてどんな反応になるのか?
ワクワクドキドキです。

 

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2020-09-29 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : takahisanagaicom